説明

画像処理による水位観測システム

【課題】観測点の数が不足していると共に、各ポイントでの相対的水位の測定であるため、現時点での観測だけで将来の水位予測ができない。
【解決手段】CCTVカメラ等の撮影手段1と、撮影手段1からの画像データを静止画像として取得する静止画像取得手段2と、画像処理により水位を計測する水位計測手段3と、水位を縦断的に表示する水位表示手段4と、河川管理者に警告を発する警告・配信手段5とを備える。撮影手段1は、河川等の所定水域を監視すべく設置されている既存のCCTVカメラを主として利用し、静止画像取得手段2は、水面と河川内に存する構造物等の計測対象物とを写した前記撮影手段1からの画像データを静止画像として取得する。水位計測手段3は、CCTV等の画像処理により水面の検出を行って水面の位置と事前に計測した三次元空間情報若しくは参照用画像を用いて水位の計測を行う水位計測装置6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の横断的な水量を計算し、加えて標高を基にした絶対的な水位情報によ
り河川の流量、流速をその流域に沿って縦断的に把握することで、より精度の高い災害情
報を提供できる有用な水位観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川、海、湖沼等では、水位の上昇による災害発生の防止やダムの流量制御等の
ために、常時、水位を計測しており、かつ、計測結果を長期に亘って保存している。また
、河川における水位観測にあっては、固定した水位観測所にて定期的な観測を機械的に行
っているのが現状である。
【0003】
例えば、斯かる機械的な水位観測としては、浮子を水面に浮かべて、浮子の位置を吊し
たロープの動きを滑車の回転量で計測するようにした水位自動記録計が挙げられる。この
水位自動記録計の浮子は、河川に近い陸上に深い井戸を堀り、井戸と河川を地下水道で繋
ぐことで河川の水面と井戸の水面の高さが一致するようにしており、更には、水中に丈夫
な鉄管を立てて鉄管の中に浮子を上下させるようにしたものもある(例えば、特許文献1
参照)。その他、超音波を使用して水位を計測する方式(超音波方式)や、精密な計器を
介して水圧を計測する方式(水圧方式)なども既に案出されている。
【特許文献1】特開平7−114416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の機械的な水位観測にあっては、観測点の数が不足してい
ると共に、各ポイント、ポイントでの相対的水位の測定であるため、現時点での観測だけ
で将来の水位予測ができず、その結果、河川の流量、流速をその流域に沿って縦断的に観
測することができないといった問題がある。
【0005】
また、上述した従来の機械的な水位観測では、水の汚れなどによって浮子等の動作不良
がしばしば発生してしまうなど、計測水位の信頼性に問題があり、更に、超音波方式では
、計測精度に限界がある上に、計測サイト毎に配置するために計測システムの建設費が高
くなってしまうといった問題がある。
【0006】
しかも、上述した従来の何れの方式(機械方式、超音波方式、水圧方式)にあっても、
精密な計器を風水害の影響をもろに受ける環境下に設置するために、故障の発生による保
守管理に大変な手間を必要とし、かつ、故障の間は、災害時のデータが一切取得できなく
なるといった問題点がある。また、量水板との計測値の更正(キャリブレーション)が必
須であり、更正ずれを生じると計測水位の信頼性が低下してしまうといった課題がある。
【0007】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたもので、機械的な水位観測を一切使
用することなく、河川の横断的な水量を計算し、加えて標高を基にした絶対的な水位情報
により河川の流量、流速をその流域に沿って縦断的に把握することで、より精度の高い災
害情報を予測できる、有用な画像処理による水位観測システムを提供することを目的とし
たものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の如き従来の問題点を解決し、所期の目的を達成するため本発明の要旨とする構成
は、河川、ダム、湖沼等の所定水域を監視するために設置されているCCTVカメラ若し
くはデジタルカメラ等の撮影手段を利用して水位を観測する水位観測システムにおいて、
ネットワークを介して伝送されてくる水面と河川内に存する構造物等の計測対象物とを写
した前記撮影手段からの画像データを静止画像として取得する静止画像取得手段と、CC
TV等の画像処理により水面の検出を行って水面の位置と事前に計測した三次元空間情報
若しくは参照用画像を用いて水位を計測する水位計測手段と、複数の地点の水位情報を同
時に計測してまとめ、平面的及び/又は縦断的な水位表示を行う水位表示手段と、河川管
理者や防災担当者等の関係者に災害に対する警告を行う警告・配信手段との全て又はいず
れかを選択又は組み合わせた画像処理による水位観測システムに存する。
【0009】
また、前記水位計測手段は、取得した前記画像データと三次元空間情報とを合成する画
像情報合成部と、被写体の緯度、経度、標高の群からなる少なくとも一つの属性情報を表
示した画像の各画素に付与する属性情報付与部と、画像データから被写体表面の輝度情報
を取得する輝度情報取得部と、輝度情報に基づいて物の種類や状態を判別する物性判別部
と、被写体表面の緯度、経度、標高の群からなる三次元表面情報を抽出する三次元表面情
報抽出部と、該三次元表面情報抽出部で得た被写体表面の属性情報を二次元画面上に描く
属性情報描画部と、被写体の三次元空間情報に対して意味付けされた空間データを作成す
る意味情報作成部と、二次元画像の各画素を同一の空間データ又は同一の三次元情報毎に
分類する画素情報分類部と、等高線毎に取得した輝度情報に基づいて輝度情報変化曲線を
作成する変化曲線作成部と、輝度情報変化曲線に基づいて被写体の液面境界線の標高情報
を抽出する液面境界情報抽出部との全て又はいずれかを選択又は組み合わせてなる水位計
測装置を備えるのが良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成され、河川情報をその流域に沿って流量・流速を縦断的に把
握することができるため、防災システムに対しリアルタイムな災害予測情報を提供できる
といった効果を奏するものである。
【0011】
換言すれば、水位の時系列的な変動を表示することで、将来的な水位変化を推測できる
ため、河川管理者や防災担当者などが時々刻々と変わる雨量、水位などの河川情報から的
確なる水防活動を行うために必要な系統だった情報をリアルタイムに配信できるため、災
害対策上、極めて効率的かつ効果的である。
【0012】
特に、国、地方自治体などが構築しているLAN上に、常時、送信されているCCTV
カメラの映像データから、水位観測に用いるカメラの静止画像を一定時間間隔で抽出して
自動的にシステムに取り込み、平常時も洪水時もリアルタイムで水位を計測することがで
きる他、パソコン上に表示されているCCTVカメラの分布図から任意のCCTVカメラ
を選択して、任意の時刻においてリアルタイムで水位を計測し結果を表示できるといった
効果を奏する。
【0013】
しかも、 CCTVカメラの静止画像を短時間で複数取得し、計測した水位を平均化することにより、波などによる周波数を除去し、水位計測精度を高めることができる。
【0014】
また、本発明の水位観測システムは、連続自動観測モードへの設定や、任意のCCTV
カメラを選択するだけの簡単操作で、直ちに水位等の観測結果が得られるなど、パソコン
画面上の地図や一覧を利用して容易に行えると共に、水位観測対象地点毎に画像処理を求
めた水位を河川毎にまとめて、データベースとして保存・活用できるのみならず、従来の
水位観測所の水位データを加えて、河川の上流から河口までの縦断的な水位変動を、地図
上や時系列グラフ、一覧表などで分かり易く表示できるといった効果をも兼備するもので
ある。
【0015】
更に、計測した水位と危険水位や警戒水位などとを比較し、それらを上回った場合には
河川流域の平面図上に水位と一定水位以上になったことを示す警告マークを表示すること
や、警告音などにより、河川管理者に氾濫の危険がある地点を明示できる他、水位の時系
列的変動を表示することで、将来的な水位変化を推測する補助データとして提供すること
もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ネットワークを介して伝送されてくる水面と河川内に存する構造物等の計測対象物とを
写した前記撮影手段からの画像データを静止画像として取得する静止画像取得手段と、C
CTV等の画像処理により水面の検出を行って水面の位置と事前に計測した三次元空間情
報若しくは参照用画像を用いて水位を計測する水位計測手段と、複数の地点の水位情報を
同時に計測してまとめ、平面的及び/又は縦断的な水位表示を行う水位表示手段と、河川
管理者や防災担当者等の関係者に災害に対する警告を行う警告・配信手段とを備える。
【実施例1】
【0017】
次に、本発明の実施の一例を図面を参照しながら説明する。図中Aは、本発明に係る画
像処理による水位観測システム(以下、単に「本水位観測システム」という)であり、こ
の本水位観測システムAは、図1に示すように、CCTVカメラ等の撮影手段1と、該撮
影手段1からの画像データを静止画像として取得する静止画像取得手段2と、画像処理に
より水位を計測する水位計測手段3と、水位を縦断的に表示する水位表示手段4と、河川
管理者等に警告を発する警告・配信手段5とを備えている。
【0018】
撮影手段1は、河川、ダム、湖沼等の所定水域を監視するために設置されている既存の
CCTVカメラを主として利用するものであり、必要に応じてデジタルカメラ等を使用し
て映像データを送信できることは云うまでもない。
【0019】
また、静止画像取得手段2は、例えば、光ファイバネットワークを介して伝送されてく
る被写体、すなわち、水面と河川内に存する構造物等の計測対象物(反射ターゲットを含
む)とを写した前記撮影手段1からの画像データを静止画像として取得するものである。
【0020】
更に、水位計測手段3は、CCTV等の画像処理により水面の検出を行って水面の位置
と事前に計測した後述の三次元空間情報若しくは参照用画像を用いて水位の計測を行う後
述の水位計測装置6を備えている。
【0021】
また、水位表示手段4は、複数の地点の水位情報を同時に計測してまとめ、縦断的に水
位表示を行うものであり、対象河川(本川、支川別々)の縦断面図上に、CCTVカメラ
名称、時刻、水位を表示する他、橋梁などの主な構造物や距離標、堤防高、警告水位など
も表示されるため、上下流全体の中からどの地点が越水などの危険があるかを俯瞰するこ
とができる。
【0022】
更に、警告・配信手段5は、河川管理者や防災担当者等の関係者に対し災害に対する警
告を行うものであるが、延いては、河川管理者や防災担当者などが、時々刻々と変わる雨
量、水位などの河川情報から的確なる水防活動を行うために必要な系統だった情報として
リアルタイムに配信できるようにプログラム化しても良い。
【0023】
特に、警戒水位に達した場合又は達すると予想される場合などには、災害予測情報とし
て自動的にアラーム信号を関連河川水域を含む地域のプラットフォームに報知し、洪水等
の危険を知らせると共に、避難勧告・避難誘導を促すことができるように構築しても良い

【0024】
因に、配信手段は、例えば、雨に関する河川情報や洪水ハザードマップの関連情報など
を配信サーバより自動的に発信させるものであり(データ配信)、インターネット、パソ
コン通信、ネットワークが利用できる既存のプラットフォーム(パソコン、デジタル情報
家電機器、携帯電話機、PHS、カーナビゲーション等)を利用するものである。
【0025】
一方、水位計測装置6は、取得したデジタル画像と被写体の三次元空間情報とを合成す
る画像情報合成部6aと、被写体の緯度、経度、標高の群からなる少なくとも一つの属性
情報を表示されたデジタル画像の各画素に付与する属性情報付与部6bと、デジタル画像
から被写体表面の輝度情報を取得する輝度情報取得部6cと、輝度情報に基づいて物の種
類や状態を判別する物性判別部6dと、被写体表面の緯度、経度、標高の群からなる三次
元表面情報抽出部6eと、三次元表面情報抽出部6eで得た被写体表面の属性情報を二次
元画像上に描く属性情報描画部6fと、被写体の三次元空間情報に対して意味付けされた
空間データを作成する意味情報作成部6gと、二次元画像の各画素を同一の空間データ又
は同一の三次元空間情報毎に分類する画素情報分類部6hとを備えている。
【0026】
更に、属性情報描画部6fは、被写体上の同じ標高属性を結ぶ等高線を描いており、輝
度情報取得部6cは、デジタル画像に付与された等高線毎に輝度情報を取得しており、取
得した輝度情報に基づいて輝度情報変化曲線を作成する変化曲線作成部6iと、輝度情報
変化曲線に基づいて被写体の液面境界線の標高情報を抽出する液面境界情報抽出部6jと
を備えている。
【0027】
また、液面境界情報抽出部6jでは、一定区間を指定して平均度変化曲線をスキャニン
グし、スキャニングした区間における曲線のパラメータから、上述の事前に定義したモデ
ル曲線形状と最も相関する区間を検出する。更に、事前に定義した曲線特徴を参照して、
検出された区間から最も相関する標高位置を検出する。
【0028】
ここで、被写体のデジタル画像から輝度情報を取得し、河川の水位を特定する方法につ
いて簡単に説明すると、前記属性情報描画部6fにより、デジタル画像上に等高線が描か
れると共に、前記輝度情報取得部6cによりデジタル画像から被写体表面の輝度情報が取
得される。斯かる輝度情報は、等高線毎に平均輝度値が求められ、標高方向沿いの平均輝
度変化曲線(輝度情報の連続データ曲線)のグラフ(図示せず)が作成される。
【0029】
そして、斯かる平均輝度変化曲線から、河川水位に対応する等高線の位置を検出するわ
けであるが、それは、図13に示すように、この平均輝度変化曲線において水面境界を検
出した際、急激な輝度の減衰が惹起する輝度特徴点から、河川水位に対応するローカルパ
ターンの位置を検出することによって、デジタル画像から水位を素早く検出することがで
きるのである。
【0030】
このように、本発明の水位観測システムでは、デジタル画像から得た輝度情報に基づい
て河川水位を求めることができるので、気象条件の違い(特に夜間における照度の低下)
によって、画像が読み取り難くなる場合であっても、より精度の高い画像解析が可能とな
る。
【0031】
しかも、本発明の水位観測システムでは、河川のデジタル画像毎に平均輝度を求めてい
るので、水平方向の観測幅が長くなればなるほど、等高線に代表された被写体表面上の水
平線方向の輝度情報を強調でき、デジタル画像上のノイズを効果的に削除することもでき
るのである。
【0032】
このように構成される本発明の水位観測システムは、例えば、河川敷に固定された監視
カメラ(CCTVカメラ)によって取得した被写体のデジタル画像をケーブル(図示せず)
を介して河川事務所Bに送信せしめ、取得した被写体の画像信号はパソコン等の受信装置
からハードディスクなどのデータ保存媒体に保存されると共に、モニタ画面に表示され、
更に、デジタル画面上で所定範囲を指定することで、斯かる範囲に一定間隔の等高線が描
かれ、上述した画像処理により水位観測を行うものである。
【0033】
具体的には、時刻(T)と(T+Δt)におけるデジタル画像から、被写体表面上の標
高沿いの平均輝度変化曲線を別々に算出する。次いで、輝度情報を経時的に計測したデー
タを蓄積する輝度情報取得部6cに蓄積された時刻(T)における輝度情報に基づき、時
刻(T)の水位に対応したローカル曲線パターンを参照して、時刻(T+Δt)の曲線か
ら形状が最も相関する曲線区間を抽出する。この抽出した区間内における平均輝度の最小
値に対応する標高位置が、その時刻(T+Δt)における水位とされる。
【0034】
このように、物性判別部6dにおいて輝度情報取得部6cに蓄積された過去の輝度情報
に基づき河川水位を測定できるので、予め入力したデータに基づいて河川水位を測定する
場合に比して、より精度の高い測定を行うことができるのである。
【0035】
更に、固定された撮影手段1から取得される時系列なデジタル画像を処理する場合は、
新しい画像を読み込む毎に、固定された各パラメータを繰り返し計算するのではなく、輝
度情報パラメータのみ式に代入して画像解析結果を算出することで、デジタル画像の高速
処理を実現することができる。
【0036】
また、計測している河川等の水位が予め設定した高さ以上になった場合は、河川水位の
測定頻度を高めるようにプログラムしているので、リアルタイムな水位情報が得られ、例
えば、避難誘導、避難勧告或いは警戒警報の発令やダムの放流による河川流量の調整等、
適切かつ迅速な対応が可能となる。
【0037】
次に、本水位観測システムの操作手順について更に詳しく説明する。まず、本水位観測
システムを河川事務所Bに導入する前に、水位観測対象として利用できるCCTVカメラ
の情報収集、三次元空間情報などの測量、対象構造物のモデル作成、各種パラメータの設
定などを行う必要がある(システムの導入)。
【0038】
次いで、水位観測対象・CCTVカメラの選定を行う。CCTVカメラは、設定位置を
チェックし、それぞれの画像を見ながら計測の対象構造物を決定する。CCTVカメラの
設置位置は、例えば、河川を管理している河川事務所などの設備管理部門から情報を頂き
、事務所管内図や地形図などから設置位置周辺に橋梁などの水位観測対象として利用でき
る構造物があるかを確認する。尚、河川全体を見て、位置に偏りがないかを確認する必要
がある。
【0039】
また、河川事務所の災害対策室などに設置されているCCTVカメラのコントロール装
置や表示装置を使用して、カメラの回転やズームを行いながら対象構造物が適切な方向、
範囲で撮影できるか否かを確認する。
【0040】
因に、カメラの撮影方向については、逆光や照明光が直接映像に入る場合は、対象物の
輝度が低くなるため、水位計測度劣化の原因となる。範囲については、拡大できれば良い
というものではなく、後述する画像マッチングするためのマッチングポイントを含めて水
面が撮影できるかどうかを検討する。例えば、橋脚を対象とする場合は、平水時の水面が
かかる橋脚下部からマッチングポイントに利用する橋桁までを一枚の画像として撮影でき
る大きさにすることが望ましい。
【0041】
次いで、三次元空間情報データと参照用画像を取得する。具体的には、対象構造物周辺
と河川事務所B内において、図2乃至図5に示すように、構造物の三次元データである計
測用画像7と画像マッチング13に使用する参照用画像8を取得する。
【0042】
対象構造物の三次元データは、対象構造物の形状によって地上レーザスキャナ9かトー
タルステーション10の何れかを選択する。因に、対象構造物の形状が円筒形や複雑な場
合は地上レーザスキャナ9を、略フラットな平面の場合はトータルステーション10によ
る測量法を用いるのが良い。
【0043】
次いで、対象構造物の近くに基準点を任意に設定して地上レーザスキャナ9或いはトータルステーション10を設置し、対象構造物及び周辺に設置した反射ターゲットの位置を計測する。また、河川の距離標などと基準点との位置関係を測定する。これらの測量結果から、対象物及び反射ターゲットの三次元絶対座標11を求める。
【0044】
参照画像8は、対象構造物と反射ターゲットが写っている状態でのCCTVカメラを固
定し、数十分のデータを撮影する。太陽の動きや周辺の照明光などによって逆光や影の映
り具合が変化する場合は、変化に応じて一日のうち数回データ取得を行う。尚、計測用画
像(三次元データ)7及び参照画像8は、可能な限り、水位が低い平水時に取得すること
が望ましい。
【0045】
次いで、地形透視モデルを作成する。具体的には、三次元データである計測用画面7と
、参照用画像8とを反射ターゲットを介して結合し、地形透視モデルを作成する。取得し
た三次元データから不要な部分を除き、三つの計測点を一つの単位とした不正規三角網(
TIN)モデルによる対象構造物の三次元表面データ12を作成する。
【0046】
尚、三次元表面データ12は、可能な限りCCTVカメラから見たイメージになるよう
にしておくのが望ましい。参照画像8に写っている反射ターゲットと三次元表面データ1
2の反射ターゲットが重なるように参照用画像8を幾何補正し、参照用画像8の各画素と
三次元表面データ12の絶対座標とをリンクさせる。
【0047】
次いで、システムに表示する水系全体の基図,CCTVカメラの設置位置、本川及び支
川の縦断図を作成し、参照用画像8や地形透視モデルと共に、システムに入力する(事務所への導入)。例えば、参照用画像上の特徴点(構造物の角、リベットなど)を、計測用画像7とのマッチングポイントとして設定する。また、画像輝度値を求める範囲の設定を行う。
【0048】
また、本水位観測システムでは、警告条件として「指定水位」「警戒水位」「危険水位
」などを設定することができる。しかし、CCTVカメラ設置位置には、これらが設定さ
れていない場合が多いため、河川事務所と協議の上、警告条件とする水位を決定する。各
種設定の後にシステムをLANに接続し、CCTVカメラ画像の取り込みなどの処理が行
えるか否かを試験する。
【0049】
尚、これらの作業は、河川事務所の協力を得ながら、受託者がシステムの導入時に一回
だけ実施する。河道の改修や構造物の変化などがあった場合は、必要に応じて受託者が修
正を行うものである。
【0050】
次いで、常時、水位観測を行う場合は、ソフトウエアを起動し、水位観測を行うCCT
Vカメラを決定して映像を確認し、静止画像の取り込みを行った後で、自動観測モードの
設定を行うことで、簡単に常時水位観測を行うことができる。
【0051】
具体的には、ソフトウエアを起動させると、図6に示すように、水系全体の流域図14
とCCTVカメラの設置位置15、名称16が表示される。尚、水位観測が可能な場合は
黒丸マークで設置位置が表現されたり、同時に左の観測サイト17のリストに名称が表示
される。
【0052】
次いで、流域図14或いは観測サイトリスト17から見たいCCTVカメラを選択し、
「映像再生」ボタン18を押すことで、図7に示すように、現在撮影されているCCTV
映像20を確認することができる。
【0053】
尚、自動水位観測モードに設定するには、再生している映像から静止画像を取り込み、
静止画像キャプチャボタン19を押し、図8に示すように、画像解析ウインドウ21を表
示する。次に、自動観測モード設定ボタン22を押すか、自動観測設定タブの自動観測モ
ード23のONチェックボックスにチェックを入れ、画像ウインドウの解析状態の更新ボ
タン24を押す。因に、複数のCCTVカメラについて自動観測を行う場合は、上記の作
業を個々のカメラについて繰り返すす必要があることは云うまでもない。
【0054】
因に、斯かる水位の観測データを確認する方法としては、A.流域平面図、B.単一観
測地点の水位変動図(ハイドログラフ)、C.各河川の水位縦断面図、D.単一観測地点
の最新水位情報の四つが挙げられる。それぞれの特徴について下記に示すが、何れの方法
でも一定以上の水位になった場合に警告を表示するようにプログラムされている。
【0055】
A.流域平面図
流域平面図25は、図9に示すように、対象水系の流域全体を含む地形図上に、CCT
Vカメラ設置位置をマークしたもので、流域全体を俯瞰的に確認することができる。マー
クは、青色(水位観測中、警告水位以下)、黒色(水位観測準備中)、赤色(水位観測中
、警告水位以上)、灰色(水位観測不可)に色分けされている。また、合わせてCCTV
カメラ名称や水位、時刻などを表示することもできる。
【0056】
B.ハイドログラフ(単一観測地点の水位変動図)
ハイドログラフ26は、図10に示すように、水位の変化を時系列的に確認することが
できる。設定によって1分毎の平均値、10分毎の平均値、1時間毎の平均値の3種類の
グラフを選択して見ることができる。また、堤防高や河床高の他、計画高水位、危険水位
、特別警戒水位、警戒水位、指定水位など、河川管理者が地方自治体などに情報提供する
上で必要な水位などを表示しており、水位の時系列変化から今後の変動を河川管理者が予
測しながら対処することができる。
【0057】
C.各河川の水位縦断面図
水位縦断面図27は、図11に示すように、対象河川(本川、支川別々)の縦断面図上
に、CCTVカメラ名称16、時刻28、水位29を表示したものである。また、縦断図
には、橋梁などの主な構造物や距離標、堤防高、警告水位などが表示されているため、上
下流全体の中からどの地点が越水などの危険があるかを俯瞰することができる。
【0058】
D.単一観測地点の最新水位情報
最新水位情報30は、図12に示すように、水位と警告水位までの差を数値で表示する
。図8〜図11に比べて、流域全体を見ることができないが、例えば、計画高水位まで8
.87メートルと具体的な数字として確認することができるため、洪水予警報の発令など
に有効な基礎データとなる。
【0059】
ここで、本水位観測システムの自動水位観測モードについて簡単に説明する。まず、画
像取り組みとしては、数秒〜数十秒毎に水位観測を行っている全ての(CCTVカメラに
よる)画像をシステムに取り込む。
【0060】
画像マッチング13では、取り込んだ画像(計測用画像7)と参照用画像8とを自動的
にマッチングさせる。予め参照用画像8上の特徴点をマッチングポイントとして設定して
おき、計測用画像7から同一点を三箇所以上自動的に抽出させ、アフィン変換式13aを
求める(図2参照)。
【0061】
次いで、アフィン変換式13aを用いて計測用画像7と地形透視モデルとをリンク13
bさせ、画像解析用の水位抽出モデル13cを作成(水位抽出モデルの作成)し、次いで、
予め設定した画像輝度抽出範囲から、同一標高の画像毎に平均画像度値を計算し輝度変化
曲線を求める(画像輝度値の抽出)。
【0062】
次いで、水位を計測する。具体的には、輝度変化曲線からピーク輝度などの特徴点を求
めて自動的に水位を観測するもので、図13に示すように、輝度特徴点=水面境界を示す
ものであるが、照明光の方向や対象物の色、付着物などによって特徴点の形状の認識を自
動的に変更することができるように工夫されている。
【0063】
次いで、自動水位観測モードを停止したい場合は、自動観測を停止したいCCTVカメ
ラを選択し、画面右下の自動観測設定タブ31から自動抽出モード23のチェックボック
スのチェックを外し、画像ウインドウの解析状態の更新ボタン24をクリックするだけで
簡単に停止できる(図11参照)。尚、本水位観測システム(ソフトウェア)を終了したい
場合は、メニューから「ファイル」−「終了」を選び、「終了」ボタンをクリックするだ
けで良い。
【0064】
尚、本発明の水位観測システムは、本実施例に限定されることなく、本発明の目的の範
囲内で自由に設計変更し得るものであり、本発明はそれらの全てを包摂するものである。
【0065】
例えば、河川情報のデータベースは、GIS(地理情報システム:Geographi
c Information System)による地図データの整備に対応しており、
ネットワーク上で河道データを取得する河道データ取得機能と水文データ取得機能とを有
し、河道水位の計算や横断図の表示に必要となる河川諸元データを整備するものであり、
必要に応じて下述する氾濫原データベース、流出解析機能、河道水位予測機能、破堤点流
入量計算機能、氾濫解析機能若しくはフィードバック補正機能などを付設せしめても良い

【0066】
更に、レーダ雨量情報、テレメータ雨量・水位・水質・ダム諸量等情報、光ファイバセ
ンサによる堤体変状・堤体内水位・河川水位・内水位、GISによる地図情報、GPS(
Global Positioning System)等による位置情報及びCCTV
、デジタルカメラ、移動体からの動画像・静止画像情報等のデータを収集すると共に、洪
水、氾濫、土砂災害等の予測等を行い、その結果と過去のデータが蓄積されているデジタ
ルアーカイブのデータを適宜参照分析して、アラーム情報、避難誘導支援情報も含めて、
衛星(CS)系、地上系等のネットワーク(インターネットを含む)を介して、パソコン
、デジタル情報家電機器、携帯電話機、PHS、カーナビゲーション等のプラットフォー
ムに配信できるように構築しても良い。
【0067】
因に、氾濫原データベースとは、国土空間データ基盤の整備に対応し、ネットワーク上
で氾濫原に関するデータを取得する氾濫原データ取得機能を有するものでる。この氾濫原
データ取得機能は、得られた土地情報から浸水深を計算すると共に、避難路の算出に用い
、具体的には、氾濫解析に必要となる氾濫原の標高や土地利用のデータ、また、避難計画
の検討に必要な避難場所の位置や属性データを整備するものである。
【0068】
また、流出解析機能は、上流域平均雨量の予測値又は実測値或いは任意に設定した雨量
の値を指標に、河川に流入する流量を計算する河川流入量計算手段を備えるのが良い。
【0069】
更に、河道水位予測機能とは、流出解析と河道不定流の二つのモデルからなり、過去に
おける主要洪水の降雨や基本高水流量の算定に用いられた計画降雨など、任意に設定され
た降雨により流出解析計算を行う。これにより求められた流出量を用いて河道内は不定流
計算により水位を計算するものである。
【0070】
また、破堤点流入量計算機能とは、破堤地点から氾濫原に流入する流量を計算するもの
で、破堤地点の河道水位、氾濫原の水位、破堤幅から横越流公式を用いて計算する。尚、
破堤幅やその広がり方は、例えば、土木研究所のマニュアルに基づいている。
【0071】
更に、氾濫解析機能とは、任意の破堤地点から氾濫原に流入する流量を用いて氾濫解析
を行うものであり、氾濫解析手法としては、例えば、氾濫流の運動を厳密に再現できる二
次元不定流モデルが挙げられる。
【0072】
また、フィードバック補正機能としては、例えば、現地からの情報を基に計算する現地
情報フィードバック機能、浸水センサーによる浸水深から計算する水深フィードバック機
能、人工衛星等の観測データによる氾濫面積から計算する氾濫面積フィードバック機能、
内水ポンプの排出量から計算する内水排水量フィードバック機能などが挙げられ、破堤時
において刻々と変化する各種の観測情報を氾濫予測計算の初期値としてフィードバックし
、氾濫解析を高精度に行うものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る画像処理による水位観測システムの概略を示す全体説明図である。
【図2】同水位観測システムにおける水位抽出モデルの作成を示すフローチャートである。
【図3】同水位観測システムにおける画像マッチング参照用画像の取得を示す説明図である。
【図4】同水位観測システムにおける地形透視モデルの作成を示す説明図である。
【図5】同水位観測システムにおける参照用画像と計測用画像のマッチングを示す説明図である。
【図6】同水位観測システムにおける流域図画面を示す説明図である。
【図7】同水位観測システムにおけるCCTV映像画面を示す説明図である。
【図8】同水位観測システムにおける画像解析ウインドウ画面を示す説明図である。
【図9】同水位観測システムにおける流域平面図画面を示す説明図である。
【図10】同水位観測システムにおけるハイドログラフ表示画面を示す説明図である。
【図11】同水位観測システムにおける河川縦断面図画面の表示を示す説明図である。
【図12】同水位観測システムにおける水位最新情報画面を示す説明図である。
【図13】同水位観測システムにおける画像処理による水位抽出表を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1 撮影手段
2 静止画像取得手段
3 水位計測手段
4 水位表示手段
5 警告・配信手段
6 水位計測装置
6a 画像情報合成部
6b 属性情報付与部
6c 輝度情報取得部
6d 物性判別部
6e 三次元表面情報抽出部
6f 属性情報描画部
6g 意味情報作成部
6h 画素情報分類部
6i 変化曲線作成部
6j 液面境界情報抽出部
7 計測用画像
8 参照用画像
9 地上レーザスキャナ
10 トータルステーション
11 三次元絶対座標
12 三次元表面データ
13 画像マッチング
13a アフィン変換式
13b リンク
13c 水位抽出モデル
14 水系全体の流域図
15 CCTVカメラの設置位置
16 名称
17 観測サイト
18 映像再生ボタン
19 静止画像キャプチャボタン
20 CCTV映像
21 画像解析ウインドウ
22 自動観測モード設定ボタン
23 自動観測モード
24 更新ボタン
25 流域平面図
26 ハイドログラフ
27 水位縦断面図
28 時刻
29 水位
30 最新水位情報
31 自動観測設定タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川、ダム、湖沼等の所定水域を監視するために設置されているCCTVカメラ若しくはデジタルカメラ等の撮影手段を利用して水位を観測する水位観測システムにおいて、
ネットワークを介して伝送されてくる水面と河川内に存する構造物等の計測対象物(以
下、単に被写体という)とを写した前記撮影手段からの画像データを静止画像として取得
する静止画像取得手段と、CCTV等の画像処理により水面の検出を行って水面の位置と
事前に計測した三次元空間情報若しくは参照用画像を用いて水位を計測する水位計測手段
と、複数の地点の水位情報を同時に計測してまとめ、平面的及び/又は縦断的な水位表示
を行う水位表示手段と、河川管理者や防災担当者等の関係者に災害に対する警告を行う警
告・配信手段との全て又はいずれかを選択又は組み合わせてなることを特徴とする画像処
理による水位観測システム。
【請求項2】
前記水位計測手段は、取得した前記撮影手段からの画像データと三次元空間情報とを合成する画像情報合成部と、被写体の緯度、経度、標高の群からなる少なくとも一つの属性情報を表示した画像の各画素に付与する属性情報付与部と、画像データから被写体表面の輝度情報を取得する輝度情報取得部と、輝度情報に基づいて物の種類や状態を判別する物性判別部と、被写体表面の緯度、経度、標高の群からなる三次元表面情報を抽出する三次元表面情報抽出部と、該三次元表面情報抽出部で得た被写体表面の属性情報を二次元画面上に描く属性情報描画部と、被写体の三次元空間情報に対して意味付けされた空間データを作成する意味情報作成部と、二次元画像の各画素を同一の空間データ又は同一の三次元情報毎に分類する画素情報分類部と、等高線毎に取得した輝度情報に基づいて輝度情報変化曲線を作成する変化曲線作成部と、輝度情報変化曲線に基づいて被写体の液面境界線の標高情報を抽出する液面境界情報抽出部との全て又はいずれかを選択又は組み合わせてなる水位計測装置を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の画像処理による水位観測システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−57994(P2008−57994A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231907(P2006−231907)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(599143438)株式会社ベーシックエンジニアリング (4)
【出願人】(000173577)財団法人河川情報センター (11)
【Fターム(参考)】