説明

画像処理システム、印刷システム、制御装置、画像処理方法およびプログラム

【課題】ラスタライズ処理中にRIP装置の記憶部の空き容量が不足することを防止する。
【解決手段】画像処理システム3の制御装置1は、画像データを複数のタスクに分割して複数のRIP装置2に割り当てる。画像処理システム3では、未割当タスクのラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、当該未割当タスクの処理済みデータを格納するために使用されると予想されるRIP装置2の記憶部21の使用量である予想未割当使用量、および、RIP装置2の割当済みタスクのラスタライズ処理が全て終了した時点における記憶部21の空き容量の予測値である予測空き容量が求められる。そして、予想未割当使用量が予測空き容量よりも小さい場合に未割当タスクがRIP装置2に割り当てられる。これにより、当該タスクのラスタライズ処理中に、RIP装置2の記憶部21の空き容量が不足することを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のRIP装置に複数のタスクを割り当てる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像データにラスタライズ処理を行って印刷装置に出力する画像処理システムでは、画像データを複数のタスクに分割して複数のRIP(Raster Image Processing)装置へと送り、複数のRIP装置において並行してラスタライズ処理を行う技術が利用されている。RIP装置は、ラスタライズ処理が終了した処理済みタスクを一時的に格納し、印刷順序に従って印刷装置へと出力する。
【0003】
特許文献1の分散画像処理システムでは、ネットワークを介してクライアントからの印刷要求を受けた画像処理装置が、他の画像処理装置に対して、画像処理の一部または全部を分散委託する技術が開示されている。当該分散画像処理システムでは、印刷要求を受けた画像処理装置により、他の画像処理装置に係る情報の取得が行われる。取得される情報は、他の画像処理装置のメモリーおよびハードディスクにおける使用領域および解放領域(使用可能領域)、並びに、画像処理開始までの待ち時間である。当該分散画像処理システムでは、上記の情報に基づいて最も効率良く処理可能な画像処理装置に処理が委託される。
【0004】
特許文献2では、分散処理システムにおける空き資源管理装置が開示されている。当該分散処理システムでは、複数の計算機のCPU負荷、メモリ空き領域およびディスク空き領域が、空き資源管理装置に記録される。当該分散処理システムにおいてメモリ資源の確保が要求されると、必要資源量を確保でき、空メモリの容量が最も大きく、かつ、CPU負荷が小さい計算機が選定される。また、ディスク資源の確保が要求されると、空ディスクの容量が最も大きい計算機が選定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−323351号公報
【特許文献2】特開平8−221372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のような画像処理システムでは、画像処理装置のハードディスクにおける使用可能領域の容量(すなわち、空き容量)が、画像処理が委託されるタスクの処理済みデータを記憶するために必要な容量よりも大きいと、当該画像処理装置にタスクが委託される。しかしながら、当該画像処理装置において、既に画像処理が実行中のタスクが存在する場合、先のタスクの画像処理の進行に従ってハードディスクの空き容量は減少するため、委託されたタスクを並行処理している途中でハードディスクの空き容量が不足し、委託されたタスクの画像処理にエラーが発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数のRIP装置に複数のタスクを割り当てる際に、ラスタライズ処理中にRIP装置の記憶部の空き容量が不足することを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、画像データにラスタライズ処理を行って印刷装置に出力する画像処理システムであって、複数のタスクに分割された画像データのラスタライズ処理を行って複数の処理済みデータを一時的に格納するとともに印刷順序に従って印刷装置へと出力する複数のRIP装置と、前記複数のタスクを前記複数のRIP装置に割り当てる制御装置とを備え、前記制御装置が、割り当てが未確定の一のタスクについて、ラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、前記一のタスクの処理済みデータを格納するために使用されると予測されるRIP装置の記憶部の予測未割当使用量を求め、一のRIP装置に既に割り当てられている少なくとも1つのタスクである割当済みタスクのラスタライズ処理が終了した時点で、前記割当済みタスクの処理済みデータが、前記一のRIP装置の前記記憶部において占有すると予測される予測既割当使用量を、前記一のRIP装置の記憶部の容量から減算することにより求められる予測空き容量を取得し、前記予測未割当使用量が前記予測空き容量よりも小さい場合に、前記一のタスクを前記一のRIP装置に割り当てる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理システムであって、前記予測未割当使用量が、1ページ分の処理済みデータの格納に必要とされるRIP装置の記憶部の使用量として予め設定された単位使用量に、前記一のタスクの総ページ数を積算することにより求められる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像処理システムであって、前記予測既割当使用量が求められる際に、前記割当済みタスクのうちラスタライズ処理が行われていない未処理タスクについて、1ページ分の処理済みデータの格納に必要とされるRIP装置の記憶部の使用量として予め設定された単位使用量に、前記未処理タスクの総ページ数を積算することにより、前記未処理タスクのラスタライズ処理が終了した時点で前記未処理タスクの処理済みデータが前記一のRIP装置の前記記憶部において占有すると予測される予測使用量を求める。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理システムであって、前記予測既割当使用量が求められる際に、前記割当済みタスクのうちラスタライズ処理中の処理途上タスクについて、前記処理途上タスクのうちラスタライズ処理が完了した完了ページの処理済みデータの格納に使用された前記一のRIP装置の前記記憶部の使用量を、前記完了ページのページ数で除算し、さらに、前記処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、前記処理途上タスクの予測使用量が求められる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理システムであって、前記予測既割当使用量が求められる際に、前記割当済みタスクのうちラスタライズ処理中の処理途上タスクについて、前記処理途上タスクのうちラスタライズ処理が完了した完了ページのページ数が、予め定められた閾値以上のときに、前記完了ページの処理済みデータの格納に使用された前記一のRIP装置の前記記憶部の使用量を、前記完了ページのページ数で除算し、さらに、前記処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、前記処理途上タスクの予測使用量が求められ、前記処理途上タスクの前記完了ページのページ数が前記閾値未満のときに、1ページ分の処理済みデータの格納に必要とされるRIP装置の記憶部の使用量として予め設定された単位使用量に、前記処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、前記処理途上タスクの前記予測使用量が求められる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像処理システムであって、前記一のRIP装置の前記予測空き容量が、前記一のRIP装置において求められる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理システムであって、前記制御装置が、前記複数のRIP装置について、所定の優先順位に基づいて処理能力が高い順に予測空き容量を取得して前記予測未割当使用量と比較する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、印刷システムであって、請求項1ないし7のいずれかに記載の画像処理システムと、前記画像処理システムからの出力に従って印刷を行う印刷装置とを備える。
【0016】
請求項9に記載の発明は、複数のタスクに分割された画像データのラスタライズ処理を行って複数の処理済みデータを一時的に格納するとともに印刷順序に従って印刷装置へと出力する複数のRIP装置に、前記複数のタスクを割り当てる制御装置であって、割り当てが未確定の一のタスクについて、ラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、前記一のタスクの処理済みデータを格納するために使用されると予測されるRIP装置の記憶部の予測未割当使用量を求める予測未割当使用量取得部と、一のRIP装置に既に割り当てられている少なくとも1つのタスクである割当済みタスクのラスタライズ処理が終了した時点で、前記割当済みタスクの処理済みデータが、前記一のRIP装置の記憶部において占有すると予測される予測既割当使用量を、前記一のRIP装置の前記記憶部の容量から減算することにより求められる予測空き容量を取得する予測空き容量取得部とを備え、前記予測未割当使用量が前記予測空き容量よりも小さい場合に、前記一のタスクを前記一のRIP装置に割り当てる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、画像データを複数のタスクに分割して複数のRIP装置に割り当て、前記複数のRIP装置により、前記複数のタスクのラスタライズ処理を行って複数の処理済みデータを一時的に格納するとともに印刷順序に従って印刷装置へと出力する制御装置の画像処理方法であって、a)割り当てが未確定の一のタスクについて、ラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、前記一のタスクの処理済みデータを格納するために使用されると予測されるRIP装置の記憶部の予測未割当使用量を求める工程と、b)一のRIP装置に既に割り当てられている少なくとも1つのタスクである割当済みタスクのラスタライズ処理が終了した時点で、前記割当済みタスクの処理済みデータが、前記一のRIP装置の記憶部において占有すると予測される予測既割当使用量を、前記一のRIP装置の前記記憶部の容量から減算することにより求められる予測空き容量を取得する工程と、c)前記予測未割当使用量が前記予測空き容量よりも小さい場合に、前記一のタスクを前記一のRIP装置に割り当てる工程とを備える。
【0018】
請求項11に記載の発明は、CPU、メモリ、入力受付部を備えたコンピュータにおいて実行可能であり、画像データを複数のタスクに分割して複数のRIP装置に割り当て、前記複数のRIP装置に、前記複数のタスクのラスタライズ処理を行わせて複数の処理済みデータを一時的に格納させるとともに印刷順序に従って印刷装置へと出力させる制御装置を前記コンピュータで実現するためのプログラムであって、前記プログラムをCPUがメモリにおいて実行することにより、a)割り当てが未確定の一のタスクについて、ラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、前記一のタスクの処理済みデータを格納するために使用されると予測されるRIP装置の記憶部の予測未割当使用量を求める工程と、b)一のRIP装置に既に割り当てられている少なくとも1つのタスクである割当済みタスクのラスタライズ処理が終了した時点で、前記割当済みタスクの処理済みデータが、前記一のRIP装置の前記記憶部において占有すると予測される予測既割当使用量を、前記一のRIP装置の前記記憶部の容量から減算することにより求められる予測空き容量を取得する工程と、c)前記予測未割当使用量が前記予測空き容量よりも小さい場合に、前記一のタスクを前記一のRIP装置に割り当てる工程とを前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、ラスタライズ処理中にRIP装置の記憶部の空き容量が不足することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】印刷システムの構成を示す図である。
【図2】制御装置の構成を示す図である。
【図3】制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】タスクの割り当ての流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る印刷システム5の構成を示す図である。印刷システム5は、画像処理システム3および印刷装置4を備える。画像処理システム3は、画像データにラスタライズ処理を行って印刷装置4に出力するシステムである。印刷装置4は、画像処理システム3からの出力に従って、画像データに対応する画像を印刷媒体上に印刷する装置である。なお、印刷装置4における「印刷」は、有版印刷および無版印刷のいずれであってもよく、以下の説明では、インクジェット方式により無版にて画像を記録することをいう。
【0022】
画像処理システム3は、制御装置1、および、それぞれが制御装置1に接続される複数のRIP(Raster Image Processing)装置2を備える。複数のRIP装置2は、印刷装置4に接続される。制御装置1は、印刷装置4にて印刷が行われる予定の画像データを複数のタスクに分割し、当該複数のタスクを複数のRIP装置2に割り当てる。各タスクには、画像データに基づいて印刷される印刷物の複数のページの一部である1以上のページに対応するデータが含まれる。複数のRIP装置2は、複数のタスクに分割された画像データのラスタライズ処理を行って複数の処理済みデータを生成し、当該複数の処理済みデータをそれぞれの記憶部21に一時的に格納するとともに所定の印刷順序に従って印刷装置4へと出力する。各RIP装置2では、複数のタスクの画像処理を並行して行うことが可能である。
【0023】
図2は、制御装置1の構成を示す図である。制御装置1は、各種演算処理を行うCPU11、基本プログラムを記憶するROM12および各種情報を記憶するRAM13をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行う固定ディスク15、各種情報の表示を行うディスプレイ16、操作者からの入力を受け付けるキーボード17aやマウス17b等の入力受付部17、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体10から情報の読み取りを行ったり記録媒体10に情報の書き込みを行う読取/書込装置18、並びに、外部との通信を行う通信部19が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
【0024】
制御装置1では、事前に読取/書込装置18を介して記録媒体10からプログラム100が読み出され、固定ディスク15に記憶される。プログラム100は、通信部19を介して制御装置1に読み込まれてもよい。そして、プログラム100が、CPU11によりRAM13等において実行されることにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、制御装置1が、複数のRIP装置2に対する複数のタスクの割り当てを行う。
【0025】
図3は、図2に示すCPU11がプログラム100に従って動作することにより、CPU11、ROM12、RAM13、固定ディスク15等が実現する制御装置1の機能構成を示すブロック図である。図3中の予想未割当使用量取得部71、予測空き容量取得部72およびタスク割当部74は、CPU11等により実現される機能であり、制御記憶部73は、固定ディスク15等により実現される機能である。なお、これらの機能は専用の電気的回路により実現されてもよく、部分的に電気的回路が用いられてもよい。
【0026】
次に、図4を参照しつつ、画像処理システム3におけるタスクの割り当ての流れについて説明する。以下の説明では、各RIP装置2に既に割り当てられているタスクを「割当済みタスク」という。また、割り当てられるRIP装置2が未確定のタスクを「未割当タスク」という。
【0027】
制御装置1では、まず、一の未割当タスクについて、ラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、当該未割当タスクの処理済みデータを格納するために使用されると予想されるRIP装置2の記憶部21の使用量である予想未割当使用量が、予想未割当使用量取得部71により求められる(ステップS11)。予想未割当使用量は、1ページ分の処理済みデータの格納に必要とされるRIP装置2の記憶部21の使用量として予め設定された単位使用量に、未割当タスクの総ページ数を積算することにより求められる。単位使用量は、制御装置1の制御記憶部73、および、各RIP装置2の記憶部21に予め記憶されている。
【0028】
続いて、制御装置1の予測空き容量取得部72により、複数のRIP装置2に対し、RIP装置2の予測空き容量の問い合わせが順次行われる。予測空き容量とは、RIP装置2の割当済みタスクのラスタライズ処理が全て終了した時点における記憶部21の空き容量の予測値である。予測空き容量の問い合わせは、複数のRIP装置2において、所定の優先順位に基づいて処理能力が高い順に行われる。具体的には、複数のRIP装置2の画像処理速度が予め制御装置1に登録されており、当該処理速度の速い順に予測空き容量の問い合わせが行われる。
【0029】
予測空き容量の問い合わせでは、まず、一のRIP装置2が制御装置1の予測空き容量取得部72により選択される(ステップS12)。1回目の選択では、最も優先順位が高いRIP装置2が選択される。次に、選択されたRIP装置2(以下、「選択RIP装置」という。)に対し、予測空き容量の問い合わせが行われる(ステップS13)。選択RIP装置では、選択RIP装置の割当済みタスクのラスタライズ処理が終了した時点で当該割当済みタスクの処理済みデータが選択RIP装置の記憶部21において占有すると予測される予測既割当使用量が求められる(ステップS14)。
【0030】
ステップS14では、割当済みタスクのうち、ラスタライズ処理が終了している処理終了タスクについては、当該処理終了タスクの処理済みデータが記憶部21において現在占有している使用量が取得される。また、割当済みタスクのうち、ラスタライズ処理が行われていない未処理タスクについては、記憶部21に予め記憶されている単位使用量に未処理タスクの総ページ数を積算することにより、未処理タスクのラスタライズ処理が終了した時点で当該未処理タスクの処理済みデータが選択RIP装置の記憶部21において占有すると予測される予測使用量が求められる。
【0031】
割当済みタスクのうち、ラスタライズ処理中の処理途上タスクについては、処理途上タスクのうちラスタライズ処理が完了した完了ページの処理済みデータの格納に使用された選択RIP装置の記憶部21の使用量を、完了ページのページ数で除算し、さらに、除算した結果に処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、処理途上タスクのラスタライズ処理が終了した時点で当該処理途上タスクの処理済みデータが選択RIP装置の記憶部21において占有すると予測される予測使用量が求められる。
【0032】
選択RIP装置では、割当済みタスクの各タスクの使用量および予測使用量が合計されることにより、予測既割当使用量が求められる。そして、選択RIP装置の記憶部21の容量から予測既割当使用量が減算されることにより、割当済みタスクのラスタライズ処理が全て終了した時点における選択RIP装置の空き容量の予測値である予測空き容量が求められる(ステップS15)。なお、記憶部21の容量とは、記憶部21においてタスクの処理済みデータの格納に利用可能な領域の容量を意味する。
【0033】
選択RIP装置において求められた当該選択RIP装置の予測空き容量は、制御装置1の予測空き容量取得部72に送られる。制御装置1では、取得された選択RIP装置の予測空き容量と、ステップS11において求められた未割当タスクの予想未割当使用量とが、タスク割当部74により比較される(ステップS16)。
【0034】
予想未割当使用量が予測空き容量以上である場合、ステップS12に戻り、制御装置1により、上述の優先順位に基づいて次のRIP装置2が選択され、選択RIP装置に対して予測空き容量の問い合わせが行われる。選択RIP装置では、割当済みタスクの予測既割当使用量、および、選択RIP装置の予測空き容量が求められ、制御装置1へと予測空き容量が送られる(ステップS12〜S15)。制御装置1では、選択RIP装置の予測空き容量とステップS11において求められた未割当タスクの予想未割当使用量とが、タスク割当部74により比較される(ステップS16)。そして、予想未割当使用量が予測空き容量よりも小さい場合、タスク割当部74により当該未割当タスクが選択RIP装置に割り当てられる(ステップS17)。
【0035】
以上に説明したように、印刷システム5の画像処理システム3では、未割当タスクの予想未割当使用量、および、RIP装置2の予測空き容量が求められ、予想未割当使用量が予測空き容量以上である場合には未割当タスクの割り当ては行われず、予想未割当使用量が予測空き容量よりも小さい場合に未割当タスクが当該RIP装置2に割り当てられる。これにより、未割当タスクが割り当てられたRIP装置2において、当該タスクのラスタライズ処理中にRIP装置2の記憶部21の空き容量が不足してタスクの処理エラーが発生してしまうことを防止することができる。
【0036】
ステップS11では、1ページ分の処理済みデータの格納に必要とされるRIP装置2の記憶部21の使用量に未割当タスクの総ページ数が積算されることにより、予想未割当使用量を容易に求めることができる。ステップS14では、選択RIP装置の割当済みタスクのうち未処理タスクの予測使用量が、単位使用量に未処理タスクの総ページ数を積算することにより容易に求められる。その結果、割当済みタスクの予測既割当使用量を容易に求めることができ、選択RIP装置の予測空き容量を容易に求めることができる。
【0037】
また、ステップS14では、割当済みタスクのうち処理途上タスクの予測使用量が、処理途上タスクのラスタライズ処理が完了した完了ページの処理済みデータによる記憶部21の使用量を、完了ページのページ数で除算し、さらに、除算した結果に処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、高精度に求められる。その結果、割当済みタスクの予測既割当使用量を高精度に求めることができ、選択RIP装置の空き容量の予測精度を向上することができる。
【0038】
画像処理システム3では、RIP装置2の予測空き容量が当該RIP装置2により求められることにより、予測空き容量を制御装置1で求める場合に比べて、制御装置1にかかる処理負荷を低減することができる。なお、制御装置1の処理能力に余裕がある場合には、RIP装置2から制御装置1に、記憶部21の容量、割当済みタスクの処理状態やページ数等の情報が送られ、予想空き容量取得部72によりRIP装置2の予測空き容量が求められてもよい。
【0039】
画像処理システム3では、上述のように、複数のRIP装置2に対し、所定の優先順位に基づいて処理能力が高い順に予測空き容量が取得されて未割当タスクの予測未割当使用量と比較され、予想未割当使用量が予測空き容量よりも小さい場合に未割当タスクの割り当てが行われる。このように、複数のRIP装置2のうち処理能力が高いRIP装置2を優先的に使用することにより、画像処理システム3による画像データのラスタライズ処理の効率を向上することができる。
【0040】
ステップS14における予測既割当使用量の算出では、割当済みタスクのうちラスタライズ処理中の処理途上タスクの予測使用量は、例えば、上述の方法とは異なる以下の方法にて求められてもよい。処理途上タスクの予測使用量の他の算出方法では、まず、処理途上タスクのうちラスタライズ処理が完了した完了ページのページ数が、予め定められた閾値と比較される。閾値は、例えば、3ページとされる。
【0041】
そして、完了ページのページ数が閾値以上のときには、上記と同様に、完了ページの処理済みデータの格納に使用された選択RIP装置の記憶部21の使用量を、完了ページのページ数で除算し、さらに、除算した結果に処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、処理途上タスクの予測使用量が求められる。一方、完了ページのページ数が閾値未満のときには、予め設定された単位使用量に、処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、処理途上タスクの予測使用量が求められる。
【0042】
画像データのタスクでは、当該タスクに含まれる複数のページのうち、最初の数ページの処理済みデータのデータ量が、他のページの処理済みデータのデータ量に比較して極端に大きい場合や小さい場合がある。例えば、1ページ目のみがカラー写真等の画像を含む場合、1ページ目のデータ量が他のページのデータ量よりも大きくなる。また、1ページ目に文書のタイトルのみが印刷される場合等、1ページ目のデータ量が他のページのデータ量よりも小さくなる。処理途上タスクがこのようなタスクの場合、1ページ目のラスタライズ処理が完了した時点で、完了ページの処理済みデータの使用量に基づいて予測使用量を求めると、予測使用量が過大または過小となる可能性がある。
【0043】
そこで、上述のように、完了ページ数と閾値との比較結果に応じて処理途上タスクの予測使用量の算出方法を変更することにより、処理途上タスクの予測使用量を高精度に求めることができる。その結果、選択RIP装置の割当済みタスクの予測既割当使用量を高精度に求めることができ、選択RIP装置の空き容量の予測精度をより向上することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0045】
ステップS11において求められる予想未割当使用量は、必ずしも、単位使用量に未割当タスクの総ページ数を積算した値には限定されず、例えば、未割当タスクのデータ量に基づいて求められてもよい。ステップS14では、未処理タスクの予測使用量は、必ずしも、単位使用量に未処理タスクの総ページ数を積算した値には限定されず、例えば、未処理タスクのデータ量に基づいて求められてもよい。
【0046】
また、ステップS14では、割当済みタスクに含まれる処理終了タスクが少ない場合等、単位使用量に割当済みタスクの総ページ数を積算した値が予測既割当使用量とされてもよい。この場合、RIP装置2の予測既割当使用量は大きめに求められ、予測空き容量は小さめに求められるため、当該RIP装置2に新たに割り当てられるタスクのラスタライズ処理中に記憶部21の空き容量が不足して処理エラーが発生することを、より確実に防止することができる。
【0047】
ステップS15では、予測空き容量は、実質的に記憶部21の容量から予測既割当使用量を減算することにより求められるのであれば、例えば、記憶部21の現状の空き容量(すなわち、記憶部21の容量から、処理終了タスクおよび処理途上タスクの処理済みデータが記憶部21において現在占有している使用量を減算したもの)から、処理途上タスクの未処理ページの処理済みデータおよび未処理タスクの処理済みデータの予測使用量を減算することにより求められてもよい。
【0048】
画像処理システム3では、例えば、複数のRIP装置2の処理能力等の仕様がほぼ同程度である場合、複数のRIP装置2からの予測空き容量の取得は、必ずしも処理能力が高い順に行われる必要はない。
【0049】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0050】
1 制御装置
2 RIP装置
3 画像処理システム
4 印刷装置
5 印刷システム
11 CPU
12 ROM
13 RAM
17 入力受付部
21 記憶部
71 予想未割当使用量取得部
72 容量取得部
100 プログラム
S11〜S17 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データにラスタライズ処理を行って印刷装置に出力する画像処理システムであって、
複数のタスクに分割された画像データのラスタライズ処理を行って複数の処理済みデータを一時的に格納するとともに印刷順序に従って印刷装置へと出力する複数のRIP装置と、
前記複数のタスクを前記複数のRIP装置に割り当てる制御装置と、
を備え、
前記制御装置が、
割り当てが未確定の一のタスクについて、ラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、前記一のタスクの処理済みデータを格納するために使用されると予測されるRIP装置の記憶部の予測未割当使用量を求め、
一のRIP装置に既に割り当てられている少なくとも1つのタスクである割当済みタスクのラスタライズ処理が終了した時点で、前記割当済みタスクの処理済みデータが、前記一のRIP装置の前記記憶部において占有すると予測される予測既割当使用量を、前記一のRIP装置の記憶部の容量から減算することにより求められる予測空き容量を取得し、
前記予測未割当使用量が前記予測空き容量よりも小さい場合に、前記一のタスクを前記一のRIP装置に割り当てること、
を特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理システムであって、
前記予測未割当使用量が、1ページ分の処理済みデータの格納に必要とされるRIP装置の記憶部の使用量として予め設定された単位使用量に、前記一のタスクの総ページ数を積算することにより求められることを特徴とする画像処理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理システムであって、
前記予測既割当使用量が求められる際に、前記割当済みタスクのうちラスタライズ処理が行われていない未処理タスクについて、1ページ分の処理済みデータの格納に必要とされるRIP装置の記憶部の使用量として予め設定された単位使用量に、前記未処理タスクの総ページ数を積算することにより、前記未処理タスクのラスタライズ処理が終了した時点で前記未処理タスクの処理済みデータが前記一のRIP装置の前記記憶部において占有すると予測される予測使用量を求めることを特徴とする画像処理システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記予測既割当使用量が求められる際に、前記割当済みタスクのうちラスタライズ処理中の処理途上タスクについて、前記処理途上タスクのうちラスタライズ処理が完了した完了ページの処理済みデータの格納に使用された前記一のRIP装置の前記記憶部の使用量を、前記完了ページのページ数で除算し、さらに、前記処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、前記処理途上タスクの予測使用量が求められることを特徴とする画像処理システム。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記予測既割当使用量が求められる際に、前記割当済みタスクのうちラスタライズ処理中の処理途上タスクについて、
前記処理途上タスクのうちラスタライズ処理が完了した完了ページのページ数が、予め定められた閾値以上のときに、前記完了ページの処理済みデータの格納に使用された前記一のRIP装置の前記記憶部の使用量を、前記完了ページのページ数で除算し、さらに、前記処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、前記処理途上タスクの予測使用量が求められ、
前記処理途上タスクの前記完了ページのページ数が前記閾値未満のときに、1ページ分の処理済みデータの格納に必要とされるRIP装置の記憶部の使用量として予め設定された単位使用量に、前記処理途上タスクの総ページ数を積算することにより、前記処理途上タスクの前記予測使用量が求められることを特徴とする画像処理システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記一のRIP装置の前記予測空き容量が、前記一のRIP装置において求められることを特徴とする画像処理システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記制御装置が、前記複数のRIP装置について、所定の優先順位に基づいて処理能力が高い順に予測空き容量を取得して前記予測未割当使用量と比較することを特徴とする画像処理システム。
【請求項8】
印刷システムであって、
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像処理システムと、
前記画像処理システムからの出力に従って印刷を行う印刷装置と、
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項9】
複数のタスクに分割された画像データのラスタライズ処理を行って複数の処理済みデータを一時的に格納するとともに印刷順序に従って印刷装置へと出力する複数のRIP装置に、前記複数のタスクを割り当てる制御装置であって、
割り当てが未確定の一のタスクについて、ラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、前記一のタスクの処理済みデータを格納するために使用されると予測されるRIP装置の記憶部の予測未割当使用量を求める予測未割当使用量取得部と、
一のRIP装置に既に割り当てられている少なくとも1つのタスクである割当済みタスクのラスタライズ処理が終了した時点で、前記割当済みタスクの処理済みデータが、前記一のRIP装置の記憶部において占有すると予測される予測既割当使用量を、前記一のRIP装置の前記記憶部の容量から減算することにより求められる予測空き容量を取得する予測空き容量取得部と、
を備え、
前記予測未割当使用量が前記予測空き容量よりも小さい場合に、前記一のタスクを前記一のRIP装置に割り当てることを特徴とする制御装置。
【請求項10】
画像データを複数のタスクに分割して複数のRIP装置に割り当て、前記複数のRIP装置により、前記複数のタスクのラスタライズ処理を行って複数の処理済みデータを一時的に格納するとともに印刷順序に従って印刷装置へと出力する制御装置の画像処理方法であって、
a)割り当てが未確定の一のタスクについて、ラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、前記一のタスクの処理済みデータを格納するために使用されると予測されるRIP装置の記憶部の予測未割当使用量を求める工程と、
b)一のRIP装置に既に割り当てられている少なくとも1つのタスクである割当済みタスクのラスタライズ処理が終了した時点で、前記割当済みタスクの処理済みデータが、前記一のRIP装置の記憶部において占有すると予測される予測既割当使用量を、前記一のRIP装置の前記記憶部の容量から減算することにより求められる予測空き容量を取得する工程と、
c)前記予測未割当使用量が前記予測空き容量よりも小さい場合に、前記一のタスクを前記一のRIP装置に割り当てる工程と、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
CPU、メモリ、入力受付部を備えたコンピュータにおいて実行可能であり、画像データを複数のタスクに分割して複数のRIP装置に割り当て、前記複数のRIP装置に、前記複数のタスクのラスタライズ処理を行わせて複数の処理済みデータを一時的に格納させるとともに印刷順序に従って印刷装置へと出力させる制御装置を前記コンピュータで実現するためのプログラムであって、
前記プログラムをCPUがメモリにおいて実行することにより、
a)割り当てが未確定の一のタスクについて、ラスタライズ処理が終了して処理済みデータが生成されたと仮定した場合に、前記一のタスクの処理済みデータを格納するために使用されると予測されるRIP装置の記憶部の予測未割当使用量を求める工程と、
b)一のRIP装置に既に割り当てられている少なくとも1つのタスクである割当済みタスクのラスタライズ処理が終了した時点で、前記割当済みタスクの処理済みデータが、前記一のRIP装置の前記記憶部において占有すると予測される予測既割当使用量を、前記一のRIP装置の前記記憶部の容量から減算することにより求められる予測空き容量を取得する工程と、
c)前記予測未割当使用量が前記予測空き容量よりも小さい場合に、前記一のタスクを前記一のRIP装置に割り当てる工程と、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−73570(P2013−73570A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214179(P2011−214179)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】