説明

画像処理システム及びその制御方法

【課題】再現像処理により高画質な画像補正処理が可能な画像処理システムにおいてユーザによる画像補正の作業が効率良く行えるようにする。
【解決手段】RAW画像データの現像処理を行う現像手段と、現像処理後の画像データに対し画像補正処理を行う手段と、ユーザに画像補正処理の設定値を入力させる手段と、画像補正処理の設定値に基づき前記画像データに対し画像補正処理を行い画像補正処理後の画像データをユーザに提示する手段と、提示される画像と比較して前記画像補正処理により補正された画像の特性を表す値が所定範囲内である画像を前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理によって得るために前記現像手段が用いるべき現像パラメータを、前記入力された画像補正処理の設定値に基づき生成する手段と、を有し、前記現像手段に、前記生成される現像パラメータを用いて前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置で撮影された画像のRAWデータに対して画像処理を行う画像処理システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置で撮影された静止画像又は動画像の保存形式として、撮像素子から読み出された状態の未加工データ(以下、RAW画像データと呼ぶ)を記録する事が可能である。
RAW画像データは、それを撮影した撮像装置に依存するデータであるため、テレビ等の一般的な表示装置で表示するためには現像処理が必要となる。現像処理によりRAW画像データは、JPEG形式、MPEG形式等の一般的な形式の画像データに変換され、テレビ等での表示が可能となる。
現像処理により得られた画像データに対し、明るさやホワイトバランスといった画質調整を行うことができるテレビがある。
【0003】
しかし、RAW画像データを現像して得られるJPEG形式やMPEG形式の画像データは、一般的にRAW画像データよりビット数が低い。そのため、現像処理により得られた画像データに対する画像処理はビット精度が低く、RAW画像データに対し同様の画像処理を行った場合と比較して、画像処理後の画像に画質劣化が生じ易い。
【0004】
デジタルテレビとデジタルカメラとを接続し、デジタルテレビでユーザが指示した不可逆圧縮符号化画像データに対する画像処理を、その画像データに対応するRAWデータに対し行うようデジタルカメラに依頼する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−130534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般にユーザが画像の画質を調整する場合、満足する画質が得られるまで画質パラメータの調整及び調整結果の確認の作業を繰り返し行うことが考えられる。特許文献1の画像処理装置では、RAW画像データの画像処理をデジタルカメラに依頼した場合、デジタルカメラがRAW画像データの画像処理及び現像処理を完了するまで、ユーザは画質調整の結果を確認できない。データ量の多いRAW画像データの画像処理及び現像処理は負荷が高いため、デジタルカメラによるRAW画像データの画像処理及び現像処理が完了するまで時間がかかる。そのため、ユーザは画質パラメータを調整するたびに調整結果が得られるまで待たされることになり、画質調整の作業を効率良く行えない場合が考えられる。
【0007】
また、RAW画像データを現像する現像装置によって、設定可能な現像パラメータの項目や現像パラメータの設定方法が異なるため、ユーザは使用する現像装置毎に異なるユーザインターフェースを介して現像パラメータの設定を行う必要があった。
【0008】
本発明は、現像処理により得られた画像データに対して画像処理を行う画像処理システム及びその制御方法において、画像処理後の画像の画質劣化を抑制すると共にユーザによる画質調整の作業が効率良く行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、現像パラメータに基づきRAW画像データの現像処理を行う現像手段と、
現像処理により得られた画像データに対して画像補正処理を行う画像補正手段と、
ユーザに画像補正処理の設定値を入力させる入力手段と、
入力された画像補正処理の設定値に基づき前記画像データに対して画像補正処理を行うとともに、画像補正処理が行われた後の画像データに基づく画像をユーザに提示する提示手段と、
提示手段が提示する画像と比較して前記画像補正処理により補正された画像の特性を表す値が所定範囲内である画像を、前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理によって得るために前記現像手段が用いるべき現像パラメータを、前記入力手段に入力された画像補正処理の設定値に基づき生成する生成手段と、
前記現像手段に、前記生成手段により生成される現像パラメータを用いて前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理を行わせる再現像手段と、
を有する画像処理システムである。
【0010】
本発明は、現像パラメータに基づきRAW画像データの現像処理を行う現像工程と、
現像処理により得られた画像データに対して画像補正処理を行う画像補正工程と、
ユーザに画像補正処理の設定値を入力させる入力工程と、
入力された画像補正処理の設定値に基づき前記画像データに対して画像補正処理を行うとともに、画像補正処理が行われた後の画像データに基づく画像をユーザに提示する提示工程と、
提示工程で提示する画像と比較して前記画像補正処理により補正された画像の特性を表す値が所定範囲内である画像を、前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理によって得るために前記現像工程において用いるべき現像パラメータを、前記入力工程で入力された画像補正処理の設定値に基づき生成する生成工程と、
前記現像工程において、前記生成工程において生成される現像パラメータを用いて前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理を行わせる再現像工程と、
を有する画像処理システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、現像処理により得られた画像データに対して画像処理を行う画像処理システム及びその制御方法において、画像処理後の画像の画質劣化を抑制すると共にユーザによる画質調整の作業が効率良く行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係る画像処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る画像処理システムの動作を説明する図である。
【図3】実施例に係る表示装置で選択可能なガンマ補正を説明する図である。
【図4】実施例2に係る画像処理システムの概略構成を示す図である。
【図5】実施例2に係る画像処理システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
本実施例では、動画像のRAW画像データを現像処理する現像装置と、現像処理により得られた画像データの画像処理及び表示を行う表示装置(画像処理装置)と、から構成される画像処理システムについて説明する。
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る画像処理システム10の概略を示す図である。
画像処理システム10は、現像装置100と表示装置200とケーブル300により構成されており、ケーブル300によって現像装置100と表示装置200とが接続されて
いる。
【0015】
現像装置100は、RAW画像データをMPEG形式等の表示装置200で表示可能な形式に変換する現像処理が可能な装置である。本実施例の現像装置100はパーソナルコンピュータ(以下、PCと呼ぶ)であるものとする。しかし、現像装置100はPCに限るものではなく、例えば、RAW画像データの現像処理機能を有するデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等であっても良い。また、現像装置100は表示装置200と画像データ及び制御情報の通信が可能である。
【0016】
表示装置200は、画像データの表示、及び、画像データに対するガンマ補正やホワイトバランス補正等の画像処理が可能である。また、表示装置200は現像装置100と画像データ及び制御情報の通信が可能である。
【0017】
ケーブル300は、現像装置100と表示装置200との間で画像データ及び制御情報の通信を行うためのデジタルインターフェースである。本実施例では、ケーブル300として、HDMI(High Definition Multimedia Interface)規格のケーブルを採用する。ケーブル300は、HDMIケーブルに限らず、例えばLANケーブルやUSBケーブル等でも良い。なお、現像装置100と表示装置200との間の画像データや制御情報の通信手段として、ケーブル300による有線通信に代えて、或いは有線通信と併用して、無線通信を用いても良い。その場合、現像装置100及び表示装置200には無線信号の送受信装置が備わる。
【0018】
現像装置100は、現像処理部101、現像パラメータ生成部102、記録部103、再生部104を備える。
現像処理部101は、記録部103に格納されているRAW画像データに対し、現像パラメータに基づく現像処理を行う(現像手段)。現像パラメータとは、デモザイク処理、ガンマ補正処理、ホワイトバランス調整処理等の現像処理で使用するパラメータである。現像処理の実行後、現像処理部101は、現像処理により得られた画像データをMPEG形式に符号化圧縮し、符号化圧縮により得られた画像データを記録部103に格納する。なお、ここでは符号化圧縮形式をMPEG形式としたが、符号化圧縮形式はこれに限るものではなく、例えばモーションJPEG等でも良い。
【0019】
現像パラメータ生成部102は、不図示のキーボード等の入力装置を介してユーザにより入力される指示や、表示装置200から入力される指示に基づいて、RAW画像データの現像処理に必要な現像パラメータを生成する。
記録部103は、撮影により得られたRAW画像データ、現像処理部101による現像処理により得られた画像データ、現像パラメータ生成部102から出力された現像パラメータのデータ等を記録する。記録部103は、ハードディスクや不揮発メモリ等により構成される。
再生部104は、現像処理により得られたMPEG形式の画像データを、記録部103から読み出してデコードし、再生して表示装置200に出力する。
【0020】
表示装置200は、入力部201、画像処理部202、表示パネル203、制御部204を備える。
画像処理部202は、入力部201から入力された画像データに対して、ノイズ除去、ガンマ補正、エッジ強調、ホワイトバランス補正等の画像処理(画像補正処理)を施す(画像補正手段)。これらの画像処理は、制御部204から指示された画質パラメータの設定値(画像補正処理の設定値)に基づいて実行する。画像処理部202は、画像処理後の画像データを表示パネル203(提示手段)に出力し、画像処理後の画像データに基づく画像をユーザに提示する。
【0021】
制御部204は、ユーザからの画質調整指示を受け、ユーザの指示に基づく画質調整を行うための画質パラメータを画像処理部202に設定する。本実施例では、ユーザは、表示パネル203に表示される画像を確認しながら、不図示のリモコン(入力手段)を操作することにより、画質調整の指示を表示装置200に入力することができるものとする。更に、制御部204は、表示装置200にてユーザが指示した画質パラメータの設定情報(画像補正処理の設定値)を、表示装置200と接続されている現像装置100へ送信する。
【0022】
図2は、本実施例における画像処理システム10の動作を説明する図である。以下、図2を参照して本実施例の動作を説明する。
現像装置100内の記録部103には、撮影により得られたRAW画像データと、RAW画像データから現像処理により得られたMPEG形式の画像データと、現像処理に用いた現像パラメータのデータが格納されている。本実施例では、RAW画像データは16ビットの画像データであり、MPEG形式の画像データは8ビットの画像データであるものとする。
【0023】
ユーザが記録部103に記録されたMPEG形式の画像データを再生する場合、現像装置100の記録部103に格納されているMPEG形式の画像データが読み込まれ、その一覧表示であるタイトルリストが生成され、表示パネル203に表示される(S401)。ユーザは、表示されたタイトルリストから所望の画像データを選択し、その画像データの再生開始を指示する。
【0024】
再生部104は、ユーザの再生指示を受けると、記録部103に保存されている画像データのうちユーザが選択したMPEG形式の画像データのデコード、再生、及び表示装置200への出力の処理を開始する(S402)。
【0025】
以下、表示装置200の動作に関して説明を行う。
表示装置200が起動する際、画像処理部202には画質パラメータの初期値(初期画質パラメータ)が設定されているものとする。
現像装置100から出力された画像データは、入力部201を介して表示装置200に入力される(S403)。表示装置200に入力された画像データは画像処理部202により初期画質パラメータに基づいた画像処理が施され、表示パネル203に表示される。
【0026】
制御部204は、リモコンによるユーザからの画質調整指示の入力の有無を監視する。ユーザからの画質調整指示が入力された場合、制御部204は、画像処理部202に対してユーザの画質調整指示に基づいた画質パラメータの設定を行う(S404)。
【0027】
例えば、ユーザがガンマ補正を指示した場合について説明する。
本実施例の表示装置200では、ユーザは、図3に示す3種類のガンマ補正の設定から一のガンマ補正の設定を選択することで、表示装置200にガンマ補正処理の指示を入力することができるものとする。表示装置200は、3種類のガンマ補正の設定を提示し、そのうちから一のガンマ補正の設定を選択するためのGUIを作成し、表示パネル203に表示する。ユーザは、表示パネル203に表示されるGUIに対し、リモコンによる操作を行うことにより、所望のガンマ補正の設定を選択する指示を表示装置200に入力することができる。ここでは、ガンマ補正の初期画質パラメータ(表示装置200の起動時に設定されているパラメータの初期値)は、図3(b)に示す設定値(γ=1.0)とする。
【0028】
ユーザがリモコンを操作して、ガンマ補正の設定値を図3(b)に示す初期値から図3
(a)に示す設定値(γ=0.8)に変更するよう指示したとする。図3(a)に示すガンマ補正の設定値(画質パラメータ)はγ=0.8である。ユーザによる当該指示の入力に基づき、制御部204は、画像処理部202にガンマ補正の設定値としてγ=0.8を設定する。画像処理部202は、γ=0.8の設定値に基づきガンマ補正処理を行い、補正後の画像が表示パネル203に表示される(S404)。
【0029】
画像処理部202では、現像装置100における現像処理により得られた8bitの画像データに対してガンマ補正等の画像処理を行う。このように現像処理により得られた画像データに対し画像処理部202で画像処理を行って得られる画像を、ここではプレビュー画像と呼ぶ。
【0030】
一方、RAW画像データを現像する際にもガンマ補正等の画質調整の画像処理を行うことが可能である。この現像処理時の画像処理では、16bitのRAW画像データに対して画像処理を行い、画像処理を行った後に8bitにビットダウンする。このように、現像処理時にガンマ補正等の画質調整(画質補正)の画像処理を行って得られた画像データに対しビット深度の変換処理を行ってプレビュー画像と同じビット数に落とした画像を、ここでは現像処理時補正画像と呼ぶ。
【0031】
現像処理時補正画像もプレビュー画像もいずれもビット深度の等しい(ここでは8bit)画像データである。しかしながら、現像処理時補正画像は、プレビュー画像と比較して、画質調整の画像処理(画像補正処理)が高ビットの画像データに対し実行された画像データであるので、画質劣化が起こり難い。ガンマ補正に限らず、現像処理時にRAW画像データに対する画像処理により実施可能な画質調整は、現像処理時にRAW画像データに対して行う方が、現像処理後の画像データに対して行うよりも、画質劣化の少ない調整結果が得られる。
【0032】
S404においてユーザの画質調整指示により表示装置200が画像処理を行った結果得られる画像は、プレビュー画像である。従って現像処理時補正画像と比較して画質調整による画質劣化が大きい。しかしながら、画像鑑賞のためではなく、画質調整結果(例えば画質調整後の画像の階調性やホワイトバランス等)の確認のためであれば、多少の画質劣化は許容できると考えられる。プレビュー画像を得るための画像処理は8bitの画像データに対する処理であるから、16bitのRAW画像データに対する処理である現像処理時補正画像を得るための画像処理よりも処理負荷が軽い。従って、画質調整結果をプレビュー画像で確認するようにすれば、現像処理時補正画像で確認する場合よりも、ユーザは、画質調整の結果をすぐに確認することができるという利点がある。従って、ユーザは、満足できる画質が得られるまで、画質パラメータの調整及び調整結果の確認を効率良く繰り返し行うことができる。
【0033】
ユーザは、所望の画質となる画質パラメータを決定すると、その画質パラメータの設定情報を現像装置100に送信するよう指示する。この指示は、例えば、ユーザが画像データの再生停止を指示することにより表示装置200に入力される。或いは、画質パラメータの調整を行うGUIに、画質パラメータの決定を指示するためのGUI部品を表示し、リモコンの操作によりGUIで画質パラメータの決定及び現像装置100への送信の指示を入力できるようにしてもよい。
【0034】
制御部204はケーブル300の通信線を通じて、ユーザが決定した画質調整を行うための画質パラメータの設定情報を現像装置100に送信する。上記例示したガンマ補正の画質調整では、制御部204は、
画質調整前γ=1.0 ・・・(式1)
画質調整後γ=0.8 ・・・(式2)
という画質パラメータ設定情報を現像装置100に送信する(S405)。
【0035】
現像装置100は、表示装置200から送信された画質パラメータ設定情報を受信し(S406)、画質パラメータ設定情報を解析する(S407)。この解析は、現像装置100が有するCPU(不図示)が行う。そして、現像装置100は、画質パラメータ設定情報を解析した結果得られた、ユーザが表示装置200の表示画像に対して行った画質調整の指示内容に基づき、ユーザが行った画質調整が現像処理時に実行可能な画質調整であるか否かを判定する。すなわち、ユーザが表示装置200において行った画像補正処理により得られたプレビュー画像と同等の補正がなされた画像データを現像装置100の行う現像処理によって得ることができるか否かを判定する。プレビュー画像と同等の補正がなされた画像データとは、例えば階調性やホワイトバランス等の画質調整処理により調整(補正)された画像の特性を表す値が、プレビュー画像と比較して所定範囲内である画像データである。現像装置100は、判定結果を表示装置200に送信する(S408)。ユーザが行った画質調整が現像処理時に実行可能な画質調整である場合、画質パラメータ設定情報を現像パラメータに変換することが可能である。すなわち、ユーザが入力した画質パラメータ設定情報(画像補正処理の設定値)に基づき、当該画質パラメータによる画像補正と同等の補正がなされた画像データを現像処理によって得るための現像パラメータを生成することができる。
【0036】
表示装置200の制御部204は、現像装置100から送信された前記判定結果を受け(S409)、表示パネル203にメッセージを表示する。
ユーザによる画質調整が現像処理時に実行可能である(画質パラメータ設定情報を現像パラメータに変換可能である)との判定結果の場合、制御部204は、表示パネル203に、再現像処理を行うかどうかをユーザに問い合わせるメッセージを表示する(S410)。このメッセージは、例えば、「調整したガンマ補正は、再現像によりさらに高画質に行うことが可能です。再現像しますか?」等のようなメッセージである。再現像とは、ユーザが表示装置200で画質調整した画像データに対応するRAW画像データの現像を、画質パラメータ設定情報を変換して得られる現像パラメータを用いて改めて行うことである。表示装置200は、再現像処理の実行要否の指示をユーザに入力させるためのGUIを含む画像を表示パネル203に表示し、リモコン操作を介したユーザによる指示の入力を受け付ける。
【0037】
ユーザから再現像処理の実行指示を受け付けると、制御部204は再現像処理依頼を現像装置100に送信する(S411)。また、制御部204は、画像処理部202に、ユーザによる画質調整前の画質パラメータ(式1)(初期画質パラメータ)を設定する(S415)。
【0038】
以下、現像装置100の動作について説明を行う。
現像装置100内の不図示のCPUは、表示装置200からの再現像処理依頼を受けると(S412)、S406で表示装置200から受け取った画質パラメータ設定情報(式1・式2)を現像パラメータ生成部102に送信する。現像パラメータ生成部102は、記録部103に格納されている現像パラメータと画質パラメータ設定情報(式1・式2)に基づき、S404でユーザが画像データに対し行った画質調整指示を現像パラメータに変換する(S413)(生成手段)。
【0039】
S413で得られた新しい現像パラメータに基づき、現像処理部101は、S402で表示装置200に送信され、S404でユーザが画質調整を行った画像データに対応するRAW画像データの現像処理を行う(再現像処理)(S414)(再現像手段)。その後、現像処理部101は、再現像処理により得られた画像データをMPEG形式に符号化圧縮し、圧縮された画像データを記録部103に格納する。
【0040】
以上の処理が完了した後、S401と同様にユーザがタイトルリストの表示を指示すると、再現像処理により得られたMPEG形式の画像データがタイトルリスト追加されて表示される。
ユーザがタイトルリストから当該再現像処理により得られたMPEG画像データを選択して再生を指示すると、S402と同様に、再生部104は当該MPEG画像データのデコード及び再生を開始する。
【0041】
このとき再生され表示装置200に表示される画像は、ユーザが指定した設定値(γ=0.8)でガンマ補正処理が施された画像である。よって、この表示画像は、S404においてユーザの画質調整指示により表示装置200の画像処理部202がガンマ補正処理して得られたプレビュー画像と同等の階調性を有する画像である。そして、このとき表示画像は、RAW現像処理時に高ビットのRAW画像データに対し現像装置100にてガンマ補正処理が行われて得られた画像である。よって、プレビュー画像と比較して疑似輪郭等の画質劣化が少なく、ユーザは高画質で画質調整後の画像を鑑賞することが可能となる。
【0042】
本実施例のシステムによれば、ユーザは、表示装置200においてビット数の低い画像データに対し画質調整を行い、軽負荷の画像処理により素早く画像処理結果が得られるプレビュー画像で画質調整結果を確認しながら、効率良く画質調整を行うことができる。また、ユーザが決定した画質調整を表す画質パラメータの設定情報を現像パラメータに変換して現像装置100によりRAW画像データの再現像を行うことにより、ユーザは、指示した画質調整が施されたより高画質の画像を鑑賞することができる。
【0043】
また、本実施例のシステムによれば、再現像処理で用いられる現像パラメータは、表示装置200から送信される画質パラメータに基づき現像装置100にて生成される。そのため、ユーザは、現像装置100の機種毎の現像パラメータの項目や現像パラメータの設定方法の相違を意識することなく、表示装置200が提供する共通のユーザインターフェース(GUIやリモコン等)を用いて画質調整の指示を入力できる。
【0044】
(実施例2)
実施例1の画像処理システムでは、現像装置100と表示装置200との間の画像データ、画質パラメータのデータ、制御情報等の受け渡しは、ケーブル300によって行われた。これに対し、実施例2の画像処理システムでは、ケーブル300の代わりに、SDカード等の可搬の記録媒体を用いて画像データ、画質パラメータのデータ、制御情報等を現像装置100と表示装置200の間で受け渡しする画像処理システムを説明する。
【0045】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例2を説明する。
図4は、本発明の実施例2に係る画像処理システム20の概略を示す図である。
画像処理システム20は、現像装置100と表示装置200から構成されており、画像データや画質パラメータのデータ等の受け渡しをSDカード等の可搬の記録媒体を用いて行う。本実施例の現像装置100はPCであるものとする。実施例1と同様、現像装置100はデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等のRAW画像データの現像処理機能を有する撮像装置でも良い。本実施例の現像装置100及び表示装置200を構成する各機能部のうち、実施例1の現像装置100及び表示装置200の各機能部と同じ処理を実行するものについては実施例1と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0046】
本実施例の現像装置100と実施例1における現像装置100とで異なる構成は、記録媒体105である。ここでは記録媒体105について説明する。
記録媒体105は、現像装置100に着脱可能なSDカード等の記録媒体であり、現像
処理部101でMPEG形式に符号化圧縮された画像データが記録される。
【0047】
本実施例の表示装置200と実施例1における表示装置200とで異なる構成は、再生部205及び記録媒体206である。ここでは再生部205と記録媒体206について説明する。
再生部205は、現像により得られたMPEG形式の画像データを、記録媒体206から読み出してデコードし、再生して画像処理部202に出力する。記録媒体206は、表示装置200に着脱可能なSDカード等の記録媒体であり、現像装置100における現像処理により得られたMPEG形式等の画像データが記録されており、記録されているデータは表示装置200により読み出される。
記録媒体105と記録媒体206とは同規格又は互換性のある規格の記録媒体である。現像装置100から取り外された記録媒体105が、記録媒体206として表示装置200に取り付けられることで、現像装置100から表示装置200へのデータの受け渡しが行われる。また、表示装置200から取り外された記録媒体206が、記録媒体105として現像装置100に取り付けられることで、表示装置200から現像装置100へデータの受け渡しが行われる。
【0048】
図5は、本実施例における画像処理システム20の動作を説明する図である。以下、図5を参照して本実施例における現像装置100及び表示装置200の動作を説明する。図5において、ユーザが表示装置200でプレビュー画像を確認しながら画質調整を行うステップ(S905)は、図2のS404と同等である。現像装置100が表示装置200から送信される画質パラメータの設定情報を解析するステップ(S909)は、図2のS407と同等である。当該画質パラメータの設定情報を現像パラメータに変換するステップ(S913)は、図2のS413と同等である。変換して得られた現像パラメータを用いて前記ステップS905で画質調整した画像データに対応するRAW画像データを現像するステップ(S914)は、図2のS414と同等である。表示装置200の画質パラメータをユーザによる画質調整が行われる前の設定(初期画質パラメータ)に戻すステップ(S915)は、図2のS415と同等である。これら実施例1の図2で説明したステップと同じ処理を行うステップについては、詳細な説明を省略する。
【0049】
以下、表示装置200の動作に関して説明を行う。
ユーザは、現像装置100で現像されたMPEG形式の画像データが記録された記録媒体105(SDカード等)を現像装置100から取り出し(S901)、記録媒体206として表示装置200に取り付ける(S902)。
【0050】
表示装置200は、記録媒体206に記録されている画像データを読み出し、当該画像データの一覧であるタイトルリストを生成し、表示パネル203に表示する。ユーザは、タイトルリストから所望の画像データを選択することにより、記録媒体206に記録された画像データの再生開始の指示を表示装置200に入力する(S903)。制御部204は、ユーザが選択した画像データの再生を開始するとともに、画像処理部202に初期画質パラメータを設定する(S904)。
【0051】
ユーザからの画質調整指示が入力された場合、制御部204は、画像処理部202に対してユーザの指示に基づいた画質パラメータの設定を行う(S905)。
ユーザが決定した画質調整の記録媒体206への記録を表示装置200に指示すると、制御部204は、画質パラメータの設定情報(式1・式2)を画像データと関連付けて、記録媒体206に記録する(S906)。実施例1と同様、ユーザが画像データの再生停止を指示すると画質パラメータの設定情報の記録指示がなされるようにしても良いし、画質パラメータの設定情報の記録を指示するためのGUIを表示し、ユーザによる操作を受け付けるようにしても良い。
【0052】
以下、現像装置100の動作に関して説明を行う。
ユーザは、画質パラメータ設定情報が画像データに関連付けて記録された記録媒体206を表示装置200から取り出し(S907)、それを記録媒体105として現像装置100に挿入する(S908)。
【0053】
現像装置100では、記録媒体105に画質パラメータ設定情報のデータが記録されているか否かを確認し、画質パラメータ設定情報のデータが有る場合は画質パラメータ設定情報を解析する(S909)。この処理は現像装置100が有するCPU(不図示)が実行する。そして、現像装置100は、記録媒体105に記録された画質パラメータ設定情報が現像パラメータに変換可能であるかどうかを判定し、判定結果を現像装置100に接続されている不図示のモニタに表示する(S910)。画質パラメータ設定情報を現像パラメータに変換可能であるとは、ユーザによる画質調整と同等の画質調整を現像処理時に実行可能であることである。画質パラメータ設定情報には、ユーザが表示装置200においてどのような画質調整を行ったかに関する情報が格納されている。現像装置100がデジタルカメラやデジタルビデオカメラの場合、デジタルカメラやデジタルビデオカメラに備わるモニタに前記判定結果の表示を行っても良い。
【0054】
ユーザによる画質パラメータ設定情報を現像パラメータに変換可能との判定結果であれば、現像装置100に接続された、或いは現像装置100に備わるモニタ(不図示)に、再現像処理の実行要否をユーザに問い合わせるメッセージを表示する(S911)。再現像処理とは、実施例1と同様、画質パラメータを変換して得られる現像パラメータを用いて、S905でユーザが画質調整した画像データに対応するRAW画像データの現像を行うことである。
【0055】
ユーザが再現像処理を指示した場合(S912)、現像装置100内の不図示のCPUは、画質パラメータ設定情報(式1・式2)を現像パラメータ生成部102に送信する。現像パラメータ生成部102は、記録部103に格納されている現像パラメータと画質パラメータ設定情報(式1・式2)から、画質パラメータ設定情報の内容を反映させた新たな現像パラメータを作成する(S913)。
【0056】
作成された新しい現像パラメータを用いて、現像処理部101はRAW画像データを再現像処理する(S914)。現像処理部101は、再現像処理により得られた画像データをMPEG形式に符号化圧縮し、圧縮により得られたMPEG形式の画像データを記録媒体105に格納する。
【0057】
ユーザは、以上の再現像処理により得られたMPEG形式の画像データが記録された記録媒体105を現像装置100から取り出し(S901)、表示装置200に挿入し(S902)、タイトルリストから選択して再生指示する(S903)。この再現像処理により得られたMPEG形式の画像データは、S905でユーザがプレビュー画像に対して行った画質調整と同等の画質調整が施された画像であり、且つ、プレビュー画像と比較して画質劣化が少ない高画質な画像である。実施例1で説明したように、S905におけるプレビュー画像を利用した画質パラメータの調整及び調整結果の確認は、RAW画像データに対して画質調整を行うよりも処理負荷が軽く、ユーザは効率的に画質調整を行うことができる。データ量の多い動画像のRAWデータの場合に、両者の処理負荷の相違はより顕著である。本実施例の画像処理システムによれば、動画像の画質調整も効率良く行うことができ、且つ、最終的にRAW画像データから再現像して得られる高画質な画像を鑑賞することができる。
【0058】
本実施例に記載のシステムによれば、実施例1と同様に、ユーザはプレビュー画像を確
認しながら効率良く画質調整を行うことができる。さらに、当該画質調整の内容を反映させた現像処理を行うことにより、ユーザの意図した画質調整がなされ、且つプレビュー画像に比べて画質劣化の少ない、高画質の画像表示が可能である。また、ユーザが、現像装置の相異によらずに、共通のユーザインターフェースを介して画質調整を行うことが可能な点も実施例1と同様である。
【0059】
実施例1及び実施例2において、画質パラメータ設定情報を現像パラメータへ反映可能か否かの解析や判断、画質パラメータ設定情報に基づく新たな現像パラメータの生成は現像装置100で行う構成としている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、表示装置200で前述の解析や新たな現像パラメータの生成を行い、表示装置200から現像装置100へ当該新たな現像パラメータを送信してもよい。そして、現像装置100が当該送信された現像パラメータを用いて再現像処理を行う構成であっても良い。
【0060】
また、上記実施例では、RAW画像データが動画像のRAWデータである場合を例に説明したが、本発明においてRAW画像データは静止画像のRAWデータであっても良い。ユーザによる画質調整をプレビュー画像を用いて行うことによるデータ量や処理負荷の軽減の効果は、RAWデータのデータ量が大きい動画像においてより顕著である。プレビュー画像による画質調整は処理負荷が軽く、画質調整結果を得るのに要する待ち時間がRAW画像データに対して画質調整を行う場合より短いため、ユーザは、所望の画質を得られるまでストレスなく繰り返し画質調整を行うことができる。ユーザが最終的に決定した画質調整パラメータに基づいてのみ、処理負荷の重いRAW画像データに対する画質調整処理が行われるので、最小限の処理負荷で高画質の画質調整結果が得られる。
【符号の説明】
【0061】
100 現像装置、101 現像処理部、102 現像パラメータ生成部、200 表示装置、201 入力部、202 画像処理部、203 表示パネル、204 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像パラメータに基づきRAW画像データの現像処理を行う現像手段と、
現像処理により得られた画像データに対して画像補正処理を行う画像補正手段と、
ユーザに画像補正処理の設定値を入力させる入力手段と、
入力された画像補正処理の設定値に基づき前記画像データに対して画像補正処理を行うとともに、画像補正処理が行われた後の画像データに基づく画像をユーザに提示する提示手段と、
提示手段が提示する画像と比較して前記画像補正処理により補正された画像の特性を表す値が所定範囲内である画像を、前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理によって得るために前記現像手段が用いるべき現像パラメータを、前記入力手段に入力された画像補正処理の設定値に基づき生成する生成手段と、
前記現像手段に、前記生成手段により生成される現像パラメータを用いて前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理を行わせる再現像手段と、
を有する画像処理システム。
【請求項2】
前記現像手段の現像処理により得られる画像データは、RAW画像データよりビット深度の少ない画像データである請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記現像手段と、前記生成手段と、前記再現像手段と、を有する現像装置と、
前記画像補正手段と、前記入力手段と、前記提示手段と、を有する表示装置と、
現像装置から表示装置へ画像データを送信すると共に、表示装置から現像装置へ画像補正処理の設定値の情報を送信する通信手段と、
により構成される請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記現像手段と、前記再現像手段と、を有する現像装置と、
前記画像補正手段と、前記入力手段と、前記提示手段と、前記生成手段と、を有する表示装置と、
現像装置から表示装置へ画像データを送信すると共に、表示装置から現像装置へ前記生成手段の生成する現像パラメータの情報を送信する通信手段と、
により構成される請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記現像手段と、前記生成手段と、前記再現像手段と、着脱可能な記録媒体に対し画像データの書き込み及び画像補正処理の設定値の情報の読み出しを行う手段と、を有する現像装置と、
前記画像補正手段と、前記入力手段と、前記提示手段と、着脱可能な前記記録媒体に対し画像データの読み出し及び画像補正処理の設定値の情報の書き込みを行う手段と、を有する表示装置と、
を有し、現像装置と表示装置との間で前記記録媒体を介して画像データ及び画像補正処理の設定値の情報が受け渡しされる請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記現像手段と、前記再現像手段と、着脱可能な記録媒体に対し画像データの書き込み及び前記生成手段の生成する現像パラメータの情報の読み出しを行う手段と、を有する現像装置と、
前記画像補正手段と、前記入力手段と、前記提示手段と、前記生成手段と、着脱可能な前記記録媒体に対し画像データの読み出し及び前記生成手段の生成する現像パラメータの情報の書き込みを行う手段と、を有する表示装置と、
を有し、現像装置と表示装置との間で前記記録媒体を介して画像データ及び前記生成手段の生成する現像パラメータの情報が受け渡しされる請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記提示手段は、前記再現像手段による現像処理により得られた画像データに対して、前記入力手段により入力された画像補正処理の設定値に基づく画像補正処理を行わずに、当該画像データに基づく画像の提示を行う請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項8】
現像パラメータに基づきRAW画像データの現像処理を行う現像工程と、
現像処理により得られた画像データに対して画像補正処理を行う画像補正工程と、
ユーザに画像補正処理の設定値を入力させる入力工程と、
入力された画像補正処理の設定値に基づき前記画像データに対して画像補正処理を行うとともに、画像補正処理が行われた後の画像データに基づく画像をユーザに提示する提示工程と、
提示工程で提示する画像と比較して前記画像補正処理により補正された画像の特性を表す値が所定範囲内である画像を、前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理によって得るために前記現像工程において用いるべき現像パラメータを、前記入力工程で入力された画像補正処理の設定値に基づき生成する生成工程と、
前記現像工程において、前記生成工程において生成される現像パラメータを用いて前記画像データに対応するRAW画像データの現像処理を行わせる再現像工程と、
を有する画像処理システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−147303(P2012−147303A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4780(P2011−4780)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】