説明

画像処理方法、画像処理装置

【課題】隣接するスーパーセルの境界において生じる網点配列の段差の抑制を可能とする技術を提供する。
【解決手段】網点を形成する第1のセル、第1のセルと隣接して配設されて網点を形成する第2のセル、および第1のセルに対して第2のセルよりも離れた位置に配設されて網点を形成する第3のセルを有し、第1のセルの幾何重心と第2のセルの幾何重心とを結ぶ第1の直線が基準線と交差してなす第1の角度と予め設定されたスクリーン角との差分よりも、第1のセルの幾何重心と第3のセルの幾何重心とを結ぶ第2の直線が基準線と交差してなす第2の角度とスクリーン角との差分が小さいスーパーセルを用いて画像処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、それぞれが階調に応じた大きさの網点を形成する複数のセルで構成されたスーパーセルを用いて画像処理を行う画像処理方法および画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二次元的に敷き詰められた複数のセル(網点セル)を用いて、画像の階調を再現する画像処理技術が知られている。各セルは二次元的に敷き詰められた複数の画素から構成されており、これらの画素が示す階調値に応じた大きさの網点を形成する。そして、このような網点を各セルが形成することにより、画像の濃淡が表現されて、画像の階調が再現される。
【0003】
また、複数のセルを二次元的に敷き詰めるにあたっては、所定のスクリーン角を持たせて、これらのセルを配列することが一般的に行なわれている。具体的には、二次元を構成するx−y平面内において、x方向に隣接するセル同士をy方向に画素単位でずらすことで、スクリーン角を持たせたセルの配列が実現される。ただし、このような手法は、画素単位でセルをずらすことでセルの配列方向に角度を持たせるものであるため、このセル配列方向を所望のスクリーン角に一致させることには限界があった。
【0004】
このような問題に対しては、特許文献1で指摘されているように、セルのサイズ(すなわち、セルを構成する画素数)を大きくすることで対応することは可能であるが、その引き換えとして画質が粗くなってしまうという別の問題が発生する。そこで、特許文献1や2では、複数のセルで構成されたスーパーセル単位で画像処理を行うことで、これらの問題の解決が図られている。つまり、特許文献1、2に記載されているように、このような構成では、スーパーセルの各セルにより形成される比較的細かい網点を所定の配列方向に並んで形成することで、細かな画質を維持しつつ、複数の網点の配列方向をスクリーン角に近づけることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−067304号公報
【特許文献2】特許第3481423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スーパーセルを用いた場合であっても、網点の配列方向をスクリーン角と完全に一致させることは困難であり、これらの間には量子化誤差と称される誤差が生じる。そして、このような誤差は、隣接するスーパーセルの境界において次のような問題を引き起こす場合があった。つまり、各スーパーセルでの網点の配列方向がスクリーン角に一致していないために、一のスーパーセルにおける複数の網点の配列と、このスーパーセルに隣接する他のスーパーセルにおける複数の網点の配列とが繋がらず、これらのスーパーセルの境界において網点の配列に段差が生じるという問題があった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、隣接するスーパーセルの境界において生じる網点配列の段差の抑制を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる画像処理方法は、上記目的を達成するために、網点を形成する第1のセル、第1のセルと隣接して配設されて網点を形成する第2のセル、および第1のセルに対して第2のセルよりも離れた位置に配設されて網点を形成する第3のセルを有し、第1のセルの幾何重心と第2のセルの幾何重心とを結ぶ第1の直線が基準線と交差してなす第1の角度と予め設定されたスクリーン角との差分よりも、第1のセルの幾何重心と第3のセルの幾何重心とを結ぶ第2の直線が前記基準線と交差してなす第2の角度とスクリーン角との差分が小さいスーパーセルを用いて画像処理を行うことを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる画像処理装置は、網点を形成する第1のセル、第1のセルと隣接して配設されて網点を形成する第2のセル、および第1のセルに対して第2のセルよりも離れた位置に配設されて網点を形成する第3のセルを有し、第1のセルの幾何重心と第2のセルの幾何重心とを結ぶ第1の直線が基準線と交差してなす第1の角度と予め設定されたスクリーン角との差分よりも、第1のセルの幾何重心と第3のセルの幾何重心とを結ぶ第2の直線が基準線と交差してなす第2の角度とスクリーン角との差分が小さいスーパーセルを記憶する記憶部と、スーパーセルを用いて画像処理を行う画像処理部と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明(画像処理方法、画像処理装置)のスーパーセルでは、第1・第2・第3のセルが配設されている。そして、第1のセルと第2のセルの幾何重心を結ぶ第1の直線とスクリーン角を有する直線の成す第1の角度よりも、第1のセルから第3のセルと第2のセルの幾何重心を結ぶ第2の直線とスクリーン角を有する直線の成す第2の角度が小さい。このようなスーパーセルを用いた場合、各スーパーセルでの網点の配列方向をスクリーン角により近づけることが可能となり、隣接するスーパーセルの境界において生じる網点配列の段差の抑制を図ることができる。
【0011】
このとき、第1のセルが階調値の増大に応じて網点を大きくするパターンと、第3のセルが階調値の増大に応じて網点を大きくするパターンとが異なるように構成しても良い。これによって、スーパーセルにおける網点の配列方向をスクリーン角により近づけることが可能となり、隣接するスーパーセルの境界において生じる網点配列の段差をより効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像処理技術を適用可能な画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】隣接するスーパーセルの境界で発生する段差を模式的に表した図。
【図4】スーパーセルのサイズの調整処理を説明する説明図。
【図5】サイズ調整前のスーパーセルを示す図。
【図6】図5のスーパーセルを構成する複数のセルの詳細を示す図。
【図7】スーパーセルのサイズ調整処理を示す図。
【図8】スーパーセルのサイズ調整処理を示す図。
【図9】スーパーセルのサイズ調整処理を示す図。
【図10】スーパーセルのサイズ調整処理を示す図。
【図11】スーパーセルのサイズ調整処理を示す図。
【図12】スーパーセルのサイズ調整処理を示す図。
【図13】サイズ調整前と後のそれぞれで実際に形成した画像を比較した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明にかかる画像処理技術を適用可能な画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0014】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0015】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0016】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0017】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0018】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0019】
現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0020】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0021】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0022】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され駆動ローラー82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラーは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0023】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラー85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0024】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。この下流ガイドローラー86は、一次転写ローラー85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラー85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0025】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラー82と二次転写ローラー121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0026】
二次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0027】
前記した駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラー121のバックアップローラーとしての機能も兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラー121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0028】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラー83と一体的に構成されている。
【0029】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリーがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、各メモリー内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0030】
以上が、本発明にかかる画像処理技術を実施可能な画像形成装置の概略構成である。続いて、本発明にかかる画像処理技術の一例について説明する。この画像処理は、主としてメインコントローラーMCにより実行される。つまり、メインコントローラーMCは、外部から画像信号を受け取ると、画像信号に対応する画像内の各画素のRGB成分の階調レベルを示したRGBデータを、対応するCMYK成分の階調レベルを示したCMYK階調データへ変換する。ここで、入力RGB階調データは例えば1画素1色成分あたり8ビット(つまり256階調を表す)であり、出力CMYK階調データも同様に1画素1色成分あたり8ビット(つまり256階調を表す)である。ここで、画素は、エンジン部EGの解像度により、色材(トナー)が紙面上に印刷される最小単位である。
【0031】
さらに、メインコントローラーMCは、階調再現処理を実行する。この階調再現処理は、二次元的に敷き詰められた複数の画素で構成されるセルを用いたものであり、具体的には、セルの各画素に対応付けられた閾値とCMYK階調データとを画素毎に比較することで、階調値に応じた大きさの網点をセル毎に形成するものである。ここで、網点とは、1つあるいは複数の画素により形成されて、面積階調を表す単位である。特に、この実施形態では、特許文献2に記載されているような、複数のセルを組み合わせて構成されるスーパーセルを用いて階調再現処理を実行する。
【0032】
ただし、このようなスーパーセルを用いた階調再現処理では、いわゆる量子化誤差のために、網点の配列方向がスクリーン角に必ずしも一致しない。その結果、上述したように、隣接するスーパーセルSCの境界において網点dtの配列Daに段差bpが生じるという問題があった(図3)。
【0033】
図3は、隣接するスーパーセルの境界で発生する段差を模式的に表した図である。ここで、同図に示すx軸は主走査方向に向いており、y軸は副走査方向に向いている。また、本実施形態では、スクリーン角とはx軸に対して取られた角度とする。同図に示す例では、x−y面内において二次元的に4つのスーパーセルSCが敷き詰められている。また、各スーパーセルSCにおいて、斜め破線で示す方向に複数の網点dtが並んでいる。ただし、量子化誤差に起因してこの網点の配列Daはスクリーン角に対して傾いており、その結果、隣接するスーパーセルSCの境界においてスーパーセルSCの網点の配列Daが連続せず、これらの間でy方向に段差bpが生じている。このような段差bpはy方向のみならずx方向にも発生し得る。そして、このような段差bpは、最終的な画像において、y方向あるいはx方向に延びる縞模様として現れてしまう。
【0034】
このような問題に対応すべく、本実施形態のメインコントローラーMCは、スーパーセルSCのサイズを調整することで、網点の配列をスクリーン角に近づけて、段差bpの発生を抑制している(図4)。ここで、図4は、スーパーセルのサイズの調整処理を説明する説明図である。同図において、直線La(第1の直線)は、セルCL1の幾何重心とセルCL2の幾何重心とを結ぶ仮想直線であり、直線Lbは、セルCL2の幾何重心とセルCL3の幾何重心とを結ぶ仮想直線であり、直線Lc(第2の直線)は、セルCL1の幾何重心とセルCL3の幾何重心とを結ぶ仮想直線であり、直線Lsは、x軸(基準線)に対してスクリーン角を有する仮想直線である。まず、スーパーセルSCのサイズがx方向に2セルCL分である場合、すなわち図4のスーパーセルSC1について考えると、この場合、網点dtの配列方向はセルCL1、CL2の配列方向となるが、これらセルCL1、CL2の配列Laは、スクリーン角を有する直線Lsに対して、比較的大きな角度θαを有する(なお、セルCL1、CL2の配列Laとx軸が交差して成す角が本発明の「第1の角度」に相当する)。一方、スーパーセルSCのサイズがx方向に6セルCL分である場合、すなわち図4のスーパーセルSC2について考えると、この場合、網点dtの配列方向はセルCL1、CL3の配列方向となるが、これらセルCL1、CL3の配列Lcは、スクリーン角を有する直線Lsに対して、比較的小さな角度θβを有する(なお、セルCL1、CL3の配列Lcとx軸が交差して成す角が本発明の「第2の角度」に相当する)。すなわち、スーパーセルSC1に比べてスーパーセルSC2では、網点の配列Da(=Lc)がよりスクリーン角に近づくことがわかる。このように、スーパーセルSCのサイズを調整することで、網点の配列Da(=Lc)とスクリーン角を近づけることができる。そこで、この実施形態では、スーパーセルSCのサイズを調整することとしたものである。
【0035】
なお、スーパーセルSCのサイズが適切であるか否かは、次のようにして評価することができる。すなわち、注目するセルCL(図4ではセルCL2)から、略スクリーン角だけ傾いて並ぶスーパーセルSC両端のセルCL1、CL3まで延びる仮想直線をそれぞれLa、Lbとし、仮想直線Laとスクリーン角を有する直線Lsとの成す角をθaとし、仮想直線Lbとスクリーン角を有する直線Lbとの成す角をθbとしたとき、
条件1:|θa−θb|<δ1
条件2:θa+θb<δ2
を満たしているかを判断すれば良い。ここで、δ1、δ2は0に近い値である。つまり、条件1を満たしており、|θa−θb|が0に近い場合は、網点dt(セルCL)の配列は直線性が良いことを示し、θa+θbが0に近い場合は、網点dt(セルCL)の配列の角度はスクリーン角に近いことを示す。そこで、スーパーセルSCの各セルCLそれぞれについて、条件1、2が満たされているか否かを判断することで、当該スーパーセルSCのサイズが適切であるか否かを評価することができる。
【0036】
続いて、メインコントローラーMCで実際に実行されるより具体的な、スーパーセルSCのサイズ調整処理について説明する。図5は、サイズ調整前のスーパーセルを示す図である。また、図6は、図5のスーパーセルを構成する複数のセルの詳細を示す図であり、図6の「CLc」の欄は、図5の中央において太線で境界が示されたセルCLcの詳細構成を示しており、図6の「CLa」「CLb」の各欄は、スクリーン角で並んで図5のスーパーセルの両端A、Bに位置するセルCLa、CLbの詳細構成を示している。なお、図5では、セルを構成する各画素の閾値が併記されている。これらの図から判るように、調整前のスーパーセルSCは、画素数、形状および閾値が互いに異なる複数種類のセルから構成されており、メインコントローラーMCに内蔵されるメモリーに予め記憶されている。
【0037】
そして、メインコントローラーMCは、図7〜図12に示す動作を実行して、スーパーセルSCのサイズを図6の状態から調整する。図7〜図12は、スーパーセルのサイズ調整処理を示す図であり、セルCLに代えて、各セルCLが形成する網点が示されている。このサイズ調整処理では、基点となる基点網点dt0からx方向に延びる直線L0に対してy方向に所定距離範囲内にある探査範囲Rdが設定される。そして、この探査範囲Rdの中から直線L0に近接する近接網点dt1、dt2、dt3、dt4が抽出される。具体的には、例えば、直線L0から所定距離以内にある網点dtを近接網点として抽出すれば良い。
【0038】
そして、以下の幅
幅W1:基点網点dt0から近接網点dt1までの幅、
幅W2:基点網点dt0から近接網点dt2までの幅、
幅W3:基点網点dt0から近接網点dt3までの幅、
幅W4:基点網点dt0から近接網点dt4までの幅
がスーパーセルSCのx方向への幅の候補として設定される(図8)。
【0039】
そして、x方向に幅W1〜W4を有するスーパーセルSCをx方向に複数敷き詰めた(タイリングした)場合に、x方向に隣接するスーパーセルSCの境界で発生する網点配列Daの段差bpが所定の許容値Δbp以下であるか否かを評価する。幅W1、W2、W4を有するスーパーセルSCをタイリングした場合には、隣接するスーパーセルSCの境界において、網点の配列Daの間に段差bpが発生している(bp>Δbp)。これに対して、幅W3を有するスーパーセルSCをタイリングした場合には、隣接するスーパーセルSCの境界において、網点の配列Daの段差bpがほとんど抑えられている(bp<Δbp)。そこで、メインコントローラーMCは、スーパーセルSCのx方向への幅をW3に設定する。また、メインコントローラーMCは、スーパーセルのy方向への幅も同様にして設定する。そして、こうしてサイズ調整がされた長方形状のスーパーセルSCを用いて、階調再現処理が実行される。
【0040】
図13は、サイズ調整前と後のそれぞれで実際に形成した画像を比較した図である。同図上段の「調整前」の欄に示すように、サイズ調整前のスーパーセルSCでは、y方向に延びる白い縦縞およびx方向に延びる白い横縞が形成画像に現れている。これに対して、同図下段の「調整後」の欄に示すように、サイズ調整後のスーパーセルSCでは、これらの縦縞および横縞の発生が抑制されている。
【0041】
以上のように、この実施形態では、略スクリーン角で並んでスーパーセルSCの両端に位置する両端セルCL1、CL3と、これら両端セルCL1、CL3の間に位置してセルCLに隣接するセルCL2とが、次の関係を具備している。すなわち、図4に示すように、セルCL1の幾何重心とセルCL2の幾何重心を結ぶ直線Laとスクリーン角を有する仮想直線Lsの成す角度θαよりも、セルCL1の幾何重心とセルCL3の幾何重心を結ぶ仮想直線Lcとスクリーン角を有する仮想直線Lcの成す角度θβが小さい。このようなスーパーセルSCを用いた場合、各スーパーセルSCでの網点dtの配列方向をスクリーン角により近づけることが可能となり、隣接するスーパーセルSCの境界において生じる網点配列Daの段差bpの抑制を図ることができる。
【0042】
換言すれば、この実施形態では、スーパーセルSCでの網点の配列Daが量子化誤差によりスクリーン角から外れることで、スーパーセルSCの境界で網点の配列Daに段差bpが発生するといった問題を、スーパーセルSCのサイズを調整することで抑制することを可能としている。
【0043】
ちなみに、このような量子化誤差に起因した問題の発生を抑制するにあたっては、PWM(Pulse Width Modulation)技術を用いることもで考えられる。ただし、本実施形態では、スーパーセルSCのサイズ調整によりかかる問題に効果的に対処することができるため、PWMを行なうためにPWM用のモジュール等を設けるには及ばず、その結果、構成の簡素化が可能になるとも言える。
【0044】
また、上記実施形態では、略スクリーン角で並んでスーパーセルSCの両端に位置する両端セルCLa、CLbの間で、階調値の増大に応じて網点を大きくするパターンが互いに異なっている。これによって、スーパーセルSCにおける網点dtの配列方向をスクリーン角により近づけることが可能となり、隣接するスーパーセルSCの境界において生じる網点配列Daの段差bpをより効果的に抑制することが可能となる。
【0045】
このように、上記実施形態では、セルCL1が本発明の「第1のセル」に相当し、セルCL2が本発明の「第2のセル」に相当し、セルCL3が本発明の「第3のセル」に相当し、メインコントローラーMCが本発明の「記憶部」、「画像処理部」あるいは「画像処理装置」に相当している。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、メインコントローラーMCが、スーパーセルSCのサイズ調整処理を実行していた。しかしながら、メインコントローラーMC以外の機能部で、スーパーセルSCのサイズ調整処理を実行するように構成しても良い。
【0047】
また、スーパーセルSCを構成するセルCLの種類についても上述のものに限られず、種々の変更を適宜行なうことが可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、本発明を適用可能な解像度については特に言及しなかった。しかしながら、本発明は、例えば2400dpi(dots per inch)×2400dpiよりも高い解像度の印刷エンジンや、1200dpi×1200dpiの解像度と2400dpi×2400dpiの解像度の間で解像度を切換可能なマルチ解像度印刷エンジン等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
CL、CL1、CL2、CL3…セル、 EC…エンジンコントローラー、 HC…ヘッドコントローラー、 MC…メインコントローラー、 SC、SC1、SC2…スーパーセル、 bp…段差、 dt0…基点網点、 dt1、dt2、dt3、dt4…近接網点dt、
dt…網点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網点を形成する第1のセル、前記第1のセルと隣接して配設されて網点を形成する第2のセル、および前記第1のセルに対して前記第2のセルよりも離れた位置に配設されて網点を形成する第3のセルを有し、
前記第1のセルの幾何重心と第2のセルの幾何重心とを結ぶ第1の直線が基準線と交差してなす第1の角度と予め設定されたスクリーン角との差分よりも、前記第1のセルの幾何重心と前記第3のセルの幾何重心とを結ぶ第2の直線が前記基準線と交差してなす第2の角度と前記スクリーン角との差分が小さいスーパーセルを用いて画像処理を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記第1のセルが階調値の増大に応じて網点を大きくするパターンと、前記第3のセルが階調値の増大に応じて網点を大きくするパターンとが異なる請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
網点を形成する第1のセル、前記第1のセルと隣接して配設されて網点を形成する第2のセル、および前記第1のセルに対して前記第2のセルよりも離れた位置に配設されて網点を形成する第3のセルを有し、前記第1のセルの幾何重心と第2のセルの幾何重心とを結ぶ第1の直線が基準線と交差してなす第1の角度と予め設定されたスクリーン角との差分よりも、前記第1のセルの幾何重心と前記第3のセルの幾何重心とを結ぶ第2の直線が前記基準線と交差してなす第2の角度と前記スクリーン角との差分が小さいスーパーセルを記憶する記憶部と、
前記スーパーセルを用いて画像処理を行う画像処理部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−178658(P2012−178658A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39626(P2011−39626)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】