説明

画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置

【課題】移動体に搭載したカメラの画像を処理し、画像情報のみを用いて、対象物への焦点合わせを実現する画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置を提供する。
【解決手段】本発明は、取得画像中の色調変化を表わす第一特徴量を用いて、合焦対象画像を抽出し、該合焦対象画像におけるコントラスト変化を表わす第二特徴量を用いて、合焦の判定を行い、判定結果を用いて、該撮像手段の焦点を調節することを特徴とする。
【効果】本発明によれば、画像情報のみを用いて、画像の焦点を自動的に合わせることができ、水中検査装置の操作性が向上するものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中カメラで撮影した画像を処理する画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置に係り、特に、原子炉内を検査する水中検査装置,原子炉内のシュラウドや圧力容器の他、ジェットポンプ等の炉内機器を目視点検する遊泳型の水中検査装置に用いるのに好適な画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体に搭載したカメラの撮影画像処理に関し、第1に、被写体のコントラスト情報から合焦状態に応じた映像形成を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、第2に、被写体のコントラストを強調し、対象物の視認性を向上させる技術が公開されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、水中検査装置に搭載した撮像装置で取得した映像の振れを抑制し、視認性を向上させる技術が公開されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−97637号公報
【特許文献2】特開平5−219420号公報
【特許文献3】特開2006−224863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、合焦状態におけるユーザの合焦達成感を満足させるために、映像の周波数特性を調整し映像形成を行うものである。しかしながら、本発明で対象としている水中検査装置は、対象箇所の状態を検査するため、検査員の主観的達成感とは関係無く、対象箇所の焦点を合わせる必要がある。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、コントラストを強調することを目的としたものであり、写真の複写,印刷の際に、画像を強調するために行われるものである。しかしながら、本発明の画像処理は、自動焦点を行うためになされるものであり、特許文献2に記載のターゲットを強調するための技術とは、目的,手段が異なる。
【0008】
また、特許文献3に記載の技術は、水中検査装置で撮影した映像の画像振れを安定化させるものである。画像の上下左右の振れを補正するものであるが、前後方向の振れに伴う焦点の振れを補正することはできない。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決するために、画像情報のみを用いて、対象物への焦点合わせを実現する画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、取得画像中の色調変化を表わす第一特徴量を用いて、合焦対象画像を抽出し、該合焦対象画像におけるコントラスト変化を表わす第二特徴量を用いて、合焦の判定を行い、判定結果を用いて、該撮影手段の焦点を調節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像情報のみを用いて、画像の焦点を自動的に合わせることができ、水中検査装置の操作性が向上するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1による水中検査作業中における水中検査装置の機器配置を示す図である。
【図2】本発明の実施例1における、検査用ビークルの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1における、焦点制御機構を示す図である。
【図4】本発明の実施例1における、焦点制御の処理フローを示す図である。
【図5】本発明の実施例1における、焦点制御の実施前後における画像イメージを示す図である。
【図6】本発明の実施例1における、焦点制御に用いる画像パラメータの例を示す図である。
【図7】本発明の実施例2における、水中カメラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図6を用いて、本発明の一実施形態による水中検査装置の構成及び動作について説明する。本実施形態の水中検査装置は、原子炉内の欠陥検査、特に構造物を目視検査する際に用いられるものである。
【実施例1】
【0014】
最初に、図1を用いて、本実施形態による水中検査装置を用いた水中検査作業時の機器配置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水中検査装置を用いた水中検査作業時の機器配置図である。
【0015】
原子炉1内には、シュラウド2,上部格子板3,炉心支持板4,シュラウドサポート5等の構造物がある。また、原子炉1の上部には、作業スペースであるオペレーションフロア6があり、また同じく上方には、燃料交換装置7がある。
【0016】
原子炉1内に進入させた検査用ビークル8は、ビークル用ケーブル9を介して、制御装置10に接続される。制御装置10は、検査用ビークル8を水中で泳動させて航行させるための電力を供給するとともに、検査対象箇所において目視検査を実施するために、映像の通信を行う。また、制御装置10には表示装置11が接続され、検査用ビークル8に搭載した撮像手段からの画像を表示する。さらに、制御装置10にはコントローラ12を接続し、ビークル操作員13aが操作する。なお、燃料交換装置7の上では、操作補助員13bがビークル用ケーブル9を捌く。
【0017】
制御装置10は、その内部に、検査用ビークル8の位置移動を制御する位置制御手段と、検査用ビークル8に搭載された撮像手段により撮像された画像を、表示装置11に表示するための表示画像を生成する画像表示処理手段とを備えている。
【0018】
次に、図2および図3を用いて、本実施形態による水中検査装置に用いる検査用ビークル8の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による水中検査装置に用いる検査用ビークル8の構成を示す鳥瞰図である。
【0019】
検査用ビークル8には、前部に撮像手段としてカメラユニット20を搭載している。なお、カメラユニット20内部には、カメラおよび照明が収納されている。図1に示したビークル操作員13aは、カメラユニット20からの映像を確認しながら、検査用ビークル8の移動等を操作できる構成となっている。
【0020】
また、上下に移動するための昇降用スラスタ21と、前後に進行するための推進用スラスタ22と、左右に移動及び旋回するための並進旋回用スラスタ23a,23bを搭載している。ここで、並進旋回用スラスタ23a,23bは、左右に移動させる場合には同一方向に回転させ、旋回させる場合には逆方向に回転させる。
【0021】
図3は、図2のカメラユニット20の内部に搭載したカメラ部の詳細と、画像処理回路の構成を示す図である。
【0022】
CCDカメラの前部にレンズ31を取り付け、レンズ31をレンズ駆動モータ32で移動させて、焦点を合わせる構造としている。なお、レンズ駆動モータ32は、リニア駆動超音波モータが望ましいが、直線駆動できるアクチュエータであれば良い。CCDカメラ30の映像は、画像キャプチャ33で取り込み、合焦判定回路34で画像処理をして合焦判定し、モータドライバ35に指令値を与えて、レンズ駆動モータ32を動作させる。
【0023】
次に、図4から図6を用いて、本実施形態による画像処理方法の手順および概念について説明する。
【0024】
図4を用いて、画像処理方法の手順を説明する。処理を開始(ステップ40)後、画像キャプチャ33で画像をキャプチャする(ステップ41)。その画像に対し、対象領域を抽出する処理をする(ステップ42)。次に、抽出した対象領域に対し、合焦判定信号を抽出し(ステップ43)、その値を評価(ステップ44)して前回の合焦判定信号よりも値が小さければ、モータドライバを駆動(ステップ45)、値が大きければ合焦しているものと判断し(ステップ46)、処理を終了する(ステップ47)。
【0025】
ステップ42における対象領域の抽出処理は、撮影画像中の色調変化を表わす第一特徴量を画像全体について算出し、その変化量が予め設定した値を越えている領域を対象領域とするものである。ここで、第一特徴量および第二特徴量について、図5および図6を用いて説明する。図5は撮影画像のイメージを示しており、上図は焦点が合っていない状態、下図は焦点が合っている(合焦)している状態を示している。合焦していない画像50において、合焦していない検査対象物51が存在するものとする。合焦判定に用いる映像ライン52は、画像の上部から下部までスキャンする。図6は、取得画像の第一特徴量及び第二特徴量の例を示している。図6における線図60は、図5における合焦していない画像50内で、合焦判定に用いる映像ライン52上の第一特徴量について、合焦判定に用いる映像ライン52上の値をプロットしたものである。第一特徴量としては、例えば、RGB変換後の赤色信号(R)若しくは緑色信号(G)若しくは青色信号(B)、若しくはYUV変換後の色差信号(U若しくはV)、若しくはHIS変換後の色相信号(H)、若しくは、それ以外でも、画像の色調変化を表わす性質を持つものであれば、全て適用可能である。線図60において、変化量が予め設定した値以上ある部分(61)が存在した場合、合焦対象物があるものと判断し、図4のステップ43で、合焦判定信号抽出処理を行う。図6における線図62は、図5における合焦していない画像50内で、合焦判定に用いる映像ライン52上の第二特徴量について、合焦判定に用いる映像ライン52上の値をプロットしたものである。線図62において、線図60で変化量が予め設定した値以上ある部分(61)と同一点の値(63)を評価する。線図62の他の部分と比較し、変化が無いため、合焦していないと判定する。そこで、モータドライバを駆動(ステップ45)し、再度、合焦判定信号を抽出し(ステップ43)、その値を評価(ステップ44)する。図6の線図64は、図5で、合焦している画像53における合焦判定に用いる映像ライン52上の第二特徴量を示したものである。線図64において、図5の合焦している検査対象物に相当する第二特徴量(65)は、変化量が大きい。ステップ44の合焦判定においては、第二特徴量の変化量を評価し、予め設定した値を越えた場合に、合焦したと判定する。なお、第二特徴量としては、カラー画像のコントラストを示す性質を有する量であり、YUV変換後の輝度信号(Y)、若しくはHIS変換後の彩度信号(S)若しくは輝度信号(I)、若しくは、それ以外でも、画像のコントラストや輝度を表わす性質を持つものであれば全て適用可能である。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、取得画像中の色調変化を表わす第一特徴量を用いて、合焦対象画像を抽出し、該合焦対象画像におけるコントラスト変化を表わす第二特徴量を用いて、合焦の判定を行い、判定結果を用いて撮像手段の焦点を調節することにより、画像情報のみを用いて、検査対象物に焦点を合わせることが可能になる。その結果、目視検査における対象物への焦点合わせを容易にできるようになる。また、水中検査装置に搭載したカメラの画像における合焦を安定化させることが可能になり、目視点検における検査効率を向上できる。
【実施例2】
【0027】
次に、図7を用いて、本発明の他の実施形態による水中検査装置の構成及び動作について説明する。本実施形態による水中検査装置を用いた水中検査作業時の機器配置は、図1において、検査用ビークル8の代わりに、水中カメラ70を用い、ビークル用ケーブルの代わりにケーブルを内包した保持治具71を用いている点が異なり、他の構成,画像処理方法,表示方法は同一である。水中カメラ70には、カメラユニット72とランプユニット73a,73bを搭載しており、カメラユニット72で撮影した映像を、制御装置10において画像処理を行い、表示装置11にて表示をする。
【0028】
本実施形態は、第一の実施形態と同一目的を達成しようとするものであるが、カメラを搭載する機器が、泳動型である検査用ビークル8と異なり、上下左右方向の振れは小さい。ただし、対象物までの距離は、時々刻々と変化し、合焦制御は必要となるため、本発明における図4のフローを用いた合焦制御が有効となる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、画像情報のみを用いた、合焦制御を可能になり、固定型の撮影装置を用いた場合でも、検査効率の向上が計れる。
【符号の説明】
【0030】
1 原子炉
2 シュラウド
3 上部格子板
4 炉心支持板
5 シュラウドサポート
6 オペレーションフロア
7 燃料交換装置
8 検査用ビークル
9 ビークル用ケーブル
10 制御装置
11 表示装置
12 コントローラ
20 カメラユニット
21 昇降用スラスタ
22 推進用スラスタ
23a,23b 並進旋回用スラスタ
30 CCDカメラ
31 レンズ
32 レンズ駆動モータ
70 水中カメラ
71 保持治具
72 カメラユニット
73a,73b ランプユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載した撮像手段により撮影された取得画像に対し、焦点を合わせる画像処理方法であって、
該取得画像中の色調変化を表わす第一特徴量を用いて、合焦対象画像を抽出し、該合焦対象画像におけるコントラスト変化を表わす第二特徴量を用いて、合焦の判定を行い、判定結果を用いて、該撮像手段の焦点を調節することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記第一特徴量は、カラー画像の色調を示す性質を有する量であり、RGB変換後の赤色信号(R)若しくは緑色信号(G)若しくは青色信号(B)、若しくはYUV変換後の色差信号(U若しくはV)、若しくはHIS変換後の色相信号(H)、のいずれかに該当する量であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記第二特徴量は、カラー画像のコントラストを示す性質を有する量であり、YUV変換後の輝度信号(Y)、若しくはHIS変換後の彩度信号(S)若しくは輝度信号(I)、のいずれかに該当する量であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
移動体に搭載した撮像手段により撮影された取得画像に対し、焦点を合わせる画像表示処理装置であって、
該取得画像中の色調変化を表わす第一特徴量を用いて、合焦対象画像を抽出する手段と、該合焦対象画像におけるコントラスト変化を表わす第二特徴量を用いて、合焦の判定を行う合焦判定手段と、該合焦判定手段における判定結果を用いて、該撮像手段の焦点を調節する焦点調節手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
三次元に泳動可能な駆動機構と水中において構造物を視認できる撮像手段を有する検査用ビークルと、前記撮像手段での撮影画像の焦点を合焦させ、出力された画像を表示する画像表示処理手段とを有する水中検査装置であって、
前記画像表示処理手段は、該撮影画像中の色調変化を表わす第一特徴量を用いて、合焦対象画像を抽出する手段と、該合焦対象画像におけるコントラスト変化を表わす第二特徴量を用いて、合焦の判定を行う合焦判定手段と、該合焦判定手段における判定結果を用いて、該撮像手段の焦点を調節する焦点調節手段を備えることを特徴とする水中検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−137706(P2012−137706A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291540(P2010−291540)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】