説明

画像処理方法

【課題】 綴じ部の影を含む画像を矩形のブロックに格子状に区切って補正する場合に、選択した矩形ブロックのサイズやアスペクト比の最適化が十分ではなく、また補正値メモリを使い切らないために補正画像の品位が低下することがあった。
【解決手段】 影の輝度補正値について綴じ目に沿う方向と綴じ目と直行する方向の変化の割合の統計量を求めて、輝度補正ブロック内での縦横の変化量が同程度になるように、綴じ目に沿う方向に長くなる様に格子間隔を決定する。またメモリに補正値が格納可能な範囲となる格子点数とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイメージスキャナ、複写機、複合機等の画像読み取り装置において読み取った画像データを補正するための画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、書籍や雑誌などの中綴じ製本されている原稿を読み取り、あるいは複写する場合には、イメージスキャナや複写機等の透明原稿台上に原稿面を下にした見開き状態で原稿を載置して、原稿台の下側から画像を読み取っている。この時、見開き状態で置かれた原稿の左右のページの境界付近である綴じ部に生じる影を画像処理により輝度補正するための画像処理方法が、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−54289
【特許文献2】特開2003−69824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術では、綴じ部の天地方向に離れた2つの位置で輝度補正値テーブルを求めて、2つのテーブルから任意の位置での輝度補正値テーブルを補間演算で算出する。すなわち補正対象画像の1ライン毎に各ラインの全ての画素位置での輝度補正値を演算する必要がある。従って補正後の画像品位が高い一方で、複写機や複合機(以降ではMFPと呼ぶ)のコピー動作時に実施する影補正として機器に組み込むためには、回路規模が大きくコスト面で負担となっていた。
【0005】
また、特許文献2に開示されている従来技術は、読み取り画像を複数のブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の中で最も輝度値の高い画素の輝度値を当該各ブロックの代表値として使って輝度補正処理を行うブロックのサイズやブロックのアスペクト比の適切な決定方法が開示されていないため、補正値テーブルが有効に使い切られずに補正画質の最適化が行われない。
【0006】
従って、本発明は、背景部に写真や図柄が配置され、あるいはカラー印刷された製本原稿であっても、図柄や写真を残したままに綴じ部の影による輝度むらを好適に補正しつつ、補正値メモリをより有効に使うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理方法は、製本原稿を読取って得た原稿画像データに含まれる綴じ部の影を補正する画像処理装置における画像補正方法であって、前記原稿画像データから影の範囲を含む影画像データを抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出した影画像データを、輝度分布に基づいて、格子線間の輝度変化の互いに直交する方向の比が正方形の格子の場合よりも小さく、かつ、格子点に対応した補正値を格納するメモリの容量に収まる格子点数である格子線間隔を決めることにより、格子状に分割する分割工程と、前記分割工程で格子状に分割された各領域の輝度を基に算出した補正値を、該領域に対応した格子点の補正値として、前記メモリに格納する格納工程と、前記原稿画像データの影の範囲の各画素の輝度の補正値を、各画素の位置に対応する前記メモリに格納された格子点の補正値から算出する算出工程と、前記算出工程で算出された補正値を用いて前記原稿画像データの各画素の輝度を補正する補正工程と、を有する画像補正方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、製本原稿が傾いて読取られた画像の場合でも、画像補正の単位となる格子で分割されたブロック内での補正ムラを最小にしながら、傾きのある影やハの字状の影の範囲全体を効果的に補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】影補正処理画像ブロックサイズの算出手順を説明するフローチャートである。
【図2】綴じ代影補正を行いながら原稿画像を読み取るMFPの動作フローチャートである。
【図3】正方形ブロック内の補正量特性を演算するための重み係数を示す図である。
【図4】補正処理画像ブロックと格子点での補正値演算範囲の関係を示す図である。
【図5】第2の実施例における補正処理画像ブロックサイズの選択手順を説明するフローチャートである。
【図6】綴じ目で発生している影の輪郭線を近似する直線を説明する図である。
【図7】第3の実施例における補正処理画像ブロックサイズの選択手順を説明するフローチャートである。
【図8】影補正範囲の算出方法を説明するために輝度補正値の分布を説明する図である。
【図9】本発明の綴じ部影補正処理を行うMFPを構成するブロック図である。
【図10】本発明の綴じ部影補正処理を行う画像処理回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明ではそれぞれが製本原稿読み取りの主走査と副走査、あるいは原稿画像データの画素の列方向と行方向に平行で互いに直行する格子線により、綴じ部影部分を矩形形状のブロックに分割して補正を行う。一般に原稿台に置かれた製本原稿は傾きを持つので以下の説明では、互いに交差する2組の格子線のうちで綴じ目の方向と成す角度が小さい格子線の方向を、綴じ目に沿った格子線の方向と呼ぶ。
【実施例1】
【0011】
以下に図とフローチャートを参照しつつ、本発明に関する第1の実施例を説明する。図9は本発明の綴じ部影補正処理を行う画像の読取手段と印字手段とを複合して有する画像処理装置としてのマルチファンクションプリンター(MFP)を構成するブロック図の一例である。操作パネル(920)よりコピー動作開始指示を受けたCPUコントローラー(930)は光源点灯回路(904)を制御して光源(903)により原稿(901)を照明する。同時にモーター駆動回路によりスキャナーモーターを駆動して光源とイメージセンサー(905)が搭載された非図示の読み取りキャリッジを副走査方向に移動させつつ、レンズ(902)がイメージセンサー上に結像させた画像を電気信号へ変換する。イメージセンサーから出力されるアナログ信号は増幅器(906)とAD変換器(907)を経由してデジタル画像データへ変換される。デジタル画像データは入力画像処理回路(908)に入り以下に詳しく説明する処理により綴じ部影の輝度補正処理が行われ、補正後の画像はバッファーメモリ(909)に一時保存される。ここまでが画像読取手段の部分である。
【0012】
次に印字手段の部分を説明する。バッファーメモリに保存された補正画像は、出力画像処理回路(912)により印字ヘッドの特性などに合わせた処理がされて印字ヘッド駆動回路(913)から複数のノズルを持つインク印字ヘッド(914)の各ノズルの印字動作に変換される。並行して印字用紙を給送紙モーター(918)でインク印字ヘッドの長さで間欠駆動しながら、インク印字ヘッドが搭載された非図示のヘッドキャリッジを用紙駆動方向と直行する方向へキャリッジモーター(919)により往復動作駆動する。キャリッジ移動と用紙給送と同期して、印字ヘッドからインクの吐出を行い、影補正が成された画像の印字が行われる。
【0013】
また読み取り画像のメモリ保存が支持された場合には、バッファーからカードメモリンターフェース(921)へ送られる。あるいは外部情報機器(950)からの読み取り動作指示がインターフェース回路(910)を介して受信した場合には、コピー動作時と同様にしてバッファーメモリ(909)に一時保存された補正後の画像は、インターフェース回路により送出される。
【0014】
図10は入力画像処理回路の内部構成を説明するブロック図である。入力画像データ(1001)は画像処理回路1(1010)により、照明の輝度むらやイメージセンサーの画素ばらつき特性を補正し色空間の変換を行って、影輝度補正を行う回路(1020)へ入力される。コピーの本動作あるいは本スキャン動作に先だって、CPUコントローラーが綴じ部影を解析して算出した影輝度補正値は、制御手段であるCPUコントローラーによって補正値テーブル記憶回路(1023)のメモリに保存される。
【0015】
読み取り動作中には、入力画像データと同期して変化する主走査画素位置情報CX(1003)と副走査位置情報CY(1004)に従って補正値生成回路(1022)が、補正値テーブルを参照しつつ該当座標の補正値を算出する。この演算では補正値テーブル作成時の格子点間隔を本スキャン時の解像度に一致させるための変換を行いつつ、補正処理ブロックの4頂点となる格子点の補正値から補間処理演算を行う。算出された輝度補正値GXYを受けた輝度補正回路(1021)は画像データに対して画素位置(CX,CY)の影輝度に適した輝度補正を行い、画像処理回路2(1030)へ補正後のデータを送出する。
【0016】
輝度補正回路の補正はすでに知られている入力画像データと輝度補正値GXYとの算術演算処理による構成や、予め補正効果の検証により実験的に作成した複数の輝度補正テーブルを輝度補正値GXYにより切り替える構成により実施する。画像処理回路2では使用目的に合わせた画像サイズへの変倍処理などが行われて、入力画像処理回路からの出力画像データ(1002)として送出される。
【0017】
続いて、図2に従って綴じ部影補正の動作を説明する。まず、目的とする解像度での本スキャン動作に先だって低解像度で原稿台全面を読み取るプリスキャン(201)を行う。プリスキャンの解像度は、原稿台全面の画像データを非圧縮でメモリに一時保存が可能で、原稿範囲の検出や綴じ部影補正の検出精度と解析処理に要する時間から予め実験的に決定される。次にプリスキャンにより得た原稿台全面画像から原稿範囲抽出(202)を行って原稿の範囲の特定を行い、検出された原稿の範囲において輝度分布を解析することで、綴じ部の影の有無と方向や各画素位置での影輝度の補正値を算出する(203)。
【0018】
綴じ部の影の解析は、画像データの下地画素と見なせる画素に注目し、副走査方向に隣接する画素間の輝度の変化を主走査ライン毎に積算し、この積算値を副走査方向で累積して得られる波形を解析して得る。これは、本出願人が既に特許文献1で開示している解析手法を用いる。ここで、補正値として、補正のために読取った画像データの各画素の輝度に乗算する値を求める。解析結果において綴じ部影領域の有無を判断し(204)、輝度補正影が必要な影が検出されなかった場合には、綴じ部影補正回路(1020)へ補正オフの設定を行う(209)。
【0019】
ステップ204で影の輝度補正が必要な綴じ部影領域が存在すると判断した場合には、影の輝度補正を行う範囲の影画像データを抽出する(205)。図8を参照して、ステップ203で得られた影の補正値から影輝度補正範囲の演算を説明する。図8は原稿領域(801)の中央付近に上側の浮き上がりが大きな綴じ部の輝度補正値情報の一例である。特許文献1で開示されている技術により、綴じ部の上下方向に離れた2つの位置LineAとLineBのそれぞれ近傍での輝度補正値テーブルfa(i)とfb(i)がステップ203で得られている。
【0020】
図中で●により表示されている2点、PaLとPaRはLineAの位置での影の輝度補正が必要となる位置、すなわち影の輪郭点である。同様にPbL、PbRは、LineBの位置での影の輪郭点である。PaLとPbLは影の左側の輪郭線上の点であるから輪郭線を直線近似してPaLとPbLを通る直線を延長し、原稿範囲と交差する2点(図中の○で示されるPcLとPdLの座標を求める。具体的には図の横方向の座標をi、縦方向の座標をjとして各点の座標(i,j)を次の様に表記すると、
PnL=(InL、JnL) ただし、n=a,b,c,d
次式により原稿輪郭における上下の左の影輪郭点が求められる。
【0021】
IcL=IaL+(IbL−IaL)×(JbL−JcL)/(JbL−JaL)(式1)
IdL=IaL+(IbL−IaL)×(JbL−JdL)/(JbL−JaL)(式2)
左側の影の輪郭についても同様な表記をすることにより、原稿輪郭における上下の右の影輪郭点が次式で求められる。
IcR=IaR+(IbR−IaR)×(JbR−JcR)/(JbR−JaR)(式3)
IdR=IaR+(IbR−IaR)×(JbR−JdR)/(JbR−JaR)(式4)
補正値生成回路(1022)の構成を簡易化するために、影の輝度補正処理の適用範囲は影の範囲を含む矩形とするので、補正領域の左端位置ILと右端位置IRは、
IL=min(IcL,IdL) (式5)
IR=max(IcR,IdR) (式6)
により求められる。なおmin()は最小値、max()は最大値を返す演算子とする。
【0022】
この結果、矩形影領域(802)の範囲が影を補正する領域として抽出される。
ステップ205で抽出した矩形領域について、さらに格子線により複数の輝度補正ブロックに格子状に分割し(205)、格子点での補正値を演算して(207)、補正値テーブルに格納する(208)処理について図4を参照して説明する。図4aは製本原稿の見開き画像の例であり、図示の領域401は、台形状に生じている綴じ部の影範囲を含む長方形範囲であり、図8の補正値分布図の矩形影領域(802)に相当する。長方形の補正範囲401を、図4bの様に画像の横方向(以降、X方向と呼ぶ)と画像の縦方向(以降、Y方向と呼ぶ)に平行な格子線で分割する。
【0023】
一般に原稿台に置かれた原稿は傾きを持つので、格子線のうちで綴じ目の方向と成す角度が小さい格子線の方向を、綴じ目に沿った格子線の方向と呼ぶ。図4ではY方向が綴じ目に沿う方向である。図4bは格子線により影領域がY方向に長さh、X方向に幅wのサイズの補正処理ブロックに分割されることを説明する図である。補正ブロックのサイズhとwは、影を効果的に補正可能となる様にステップ206で選択されるが、その処理の詳細については後に図1を参照して説明する。補正処理ブロックの境界線が格子線、補正処理ブロックの頂点が格子点であり、2次元の補正値テーブルの値としては各格子点での補正値を持つ。
【0024】
補正ブロックのサイズhとwは、それぞれ長さ方向と幅方向の格子線間隔に対応する。長さ方向の格子線と、幅方向の格子線は直交する。各格子点の補正値は、格子点を中心とする矩形範囲内に含まれる画素の輝度補正値から算出される(ステップ207)。例えば、格子点G(4,3)の補正値は、高さAh,幅Awの補正値演算領域(斜線が引かれた402の矩形領域)内の輝度補正値の算術平均により演算される。また、隣接する格子点相互の補正値の変化を滑らかにするため、Ah,Awは格子点間隔h、wよりも大きな値とすることも可能である。すなわち、
Ah=h+2m 式(7)
Aw=w+2n 式(8)
となるAh,Awとする。但し、m、nは0≦m<(h/2)、0≦n<(w/2)の条件で実験的に予め選択される定数である。各格子点での補正値が全て演算されて補正値テーブルに格納した後に、綴じ部影補正回路(1020)へ補正オンの設定を行って、ステップ208を終了する。なお、影補正が適用される範囲の補正画像結果が補正領域外の隣接領域の画像と滑らかにつながるように、格子点はステップ205で抽出された影補正領域からブロック1つだけ影の外側まで配置することが望ましい。
【0025】
ステップ208または209で影輝度補正回路(1020)の準備が完了するので、本スキャンを開始する(210)。先に設定された補正回路のオン・オフ設定と補正値テーブル等に従って、読み取り画像データの影領域を影輝度補正回路が明るく補正する(211)。以上の処理で得られた影輝度補正後の画像データが入力画像処理回路(908)から出力され、メモリカードへの保存、コピー印字、PC出力へ送信など(212)により影輝度補正処理が完了する。
【0026】
続いて、ステップ206で実行される補正処理ブロックサイズの選択処理について、図1のフローチャートと図4を参照して詳細に説明する。影範囲内の局所的なX方向の輝度変化特性とY方向の輝度変化特性を比較するために、影を含む矩形領域401を正方形の領域に分割する(ステップ101)。後の工程にて、この正方形ブロックの大きさsを補正処理ブロックサイズの短辺の長さの初期値として使用するため、分割する大きさは領域数が2次元補正テーブルとして使用可能な格子点数の数十倍〜数百倍の数となる様に分割することが望ましい。続いて、各正方形ブロック内での補正値変化量の絶対値を横方向(X方向)と縦方向(Y方向)で算出する。例えば、正方形ブロックが一辺3画素の場合には、図3aに示す重み係数を各画素に掛けて積算した値の絶対値Vxと、図3bに示す重み係数を各画素に掛けて積算した値の絶対値Vyとの比(Rij)を全ての正方形ブロック内で演算する(ステップ102)。
Rij=Vx(i,j)/Vy(i,j) 式(9)
なおiはX方向のブロック位置、jはY方向のブロック位置である。またサイズが5画素の場合には、図3c、図3dの重み係数を使用する。図4aの例では、綴じ部の影範囲内における輝度は、綴じ目に沿う方向(Y方向)では少なく、綴じ目と直行する方向(X方向)では大きいために多くの正方形ブロックで、Rは1よりも大きな値となる。平均的な特性値を得るために、全ての正方形ブロックで演算したRijの中央値Rmedを選択する(ステップ103)。
【0027】
続いて、補正ブロックサイズの検証を行うための初期値となるアスペクト比Rmedの最小サイズの矩形を求める(104)。短辺サイズとして1を選択しても良いが、輝度変化特性を検査した時の正方形ブロックの大きさs以下の数値を選択して演算のループ回数を減らすことが可能であるので、補正ブロックサイズの初期値として、Aw0=s、Ah0=s×Rmedとする。このサイズは、各正方形ブロック内での補正値変化量の絶対値の横方向(X方向)と縦方向(Y方向)の平均的な比率の逆数の関係となる。また、分割の格子で表わすと、格子線の横方向の格子線間隔がs、縦方向の格子線間隔がs×Rmedで、それぞれ等間隔である。Ah0については整数へ丸める演算を行う。
【0028】
Aw0とAh0を、補正テーブルに収まる格子点数で最大となる矩形ブロックサイズを探す初期値として使用する(105)。以下の説明ではAwとAhを検査中の矩形ブロックサイズとして表記し、Aw=Aw0、Ah=Ah0とする。ステップ106で、Aw、Ahにより影の領域を分割する。影の領域をブロックで分割した時に生じる端数画素は1ブロックへ切り上げると共に、先に記載した様に影領域の外側に補正なしとなる格子点を配置して、影の境界部分における補正結果が自然につながる様にする。
【0029】
続いてAw、Ahで分割した時に必要となる格子点数を求め(107)、補正値テーブルのメモリ容量の上限サイズを超えているか否かを検査する(ステップ108)。もし、超過している場合には、Aw、Ahをそれぞれ2倍に拡大し(ステップ109)、ステップ106から繰り返す。ステップ108で格子点数が補正値テーブルに収まる数になっていた場合には、AwとAhを補正ブロックサイズとして採用してブロックサイズ算出を終了する。
【0030】
以上の処理によって選択された補正処理ブロックサイズAw×Ahの範囲では、X方向の補正量変化とY方向の補正量変化がほぼ同じ程度になるため、2次元補正値テーブルのメモリ容量を最も有効に使って輝度補正された画像データの補正むらを低減することが可能となる。
【0031】
なお図2を参照した処理フローの説明で低解像度のプリスキャンにより解析のための画像を取得したが、高解像度での本スキャン画像を保存可能なメモリが利用可能な場合には、最小限の画像補正のみで本スキャンしたメモリ画像から縮小して作成することが可能である。その場合には、本スキャン画像から縮小変倍した解析画像から求めた補正テーブルを入力画像処理回路(908)に設定した後に、メモリ上の本スキャン画像を入力画像処理回路へ入力して影輝度補正を行った補正画像を出力する。プリスキャンと本スキャンの2回の読み取り動作を行う場合にはブック原稿の押さえ方が変化すると適切な補正が掛からない場合も起こり得るが、本スキャン画像とその縮小画像を利用できる場合には補正効果の不適合が発生しない補正が可能となる。
【実施例2】
【0032】
図5に従って本発明に関する第2の実施例を説明する。第1の実施例と異なる補正処理ブロックサイズを選択する処理を図5のフローチャートを用いて詳しく説明する。また図6は台形形状で綴じ部に生じた影を説明する図であり、以降、図中で影の左側の境界線を近似する直線を601,影の右側の境界線を近似する直線を602と記載する。
【0033】
ステップ501で、直線601と直線602を決定する。例えば補正値が×1.0を超える画素位置を結ぶ直線を直線近似により求めることで決定する。直線601と直線602の傾きKlとKrを算出し(ステップ502)、KlとKrの絶対値の大きい方を影の傾き値Kとして選択する(ステップ503)。予め実験的にもとめたKの閾値(図では、1/10として例示)とKを比較して(ステップ504)、大きな場合には補正ブロックのアスペクト比を1:4(実施例1の表記で表せば、Rmed=4)とする(ステップ505)。続いてアスペクト比1:4の最小の矩形サイズであるAw0=1,Ah0=4を初期値として選択する(506)。Kが閾値よりも小さい場合には、アスペクト比を1:8(同じく、Rmed=8)として(ステップ507)、矩形サイズ初期値をAw0=1,Ah0=8とする。
【0034】
矩形サイズの初期値Aw0,Ah0決定した後の処理は、図1のAからステップ105を続けて処理する。ステップ105以降については実施例1で説明したのでここでは繰り返さない。以上説明した様に、影の輪郭線から求めた影の傾きが小さい場合には細長い補正ブロックを使用して綴じ目と直行する方向の格子点密度を高め、影の傾きが大きな場合には綴じ目方向に沿った格子点密度を増加して各補正ブロックの上下で生じる補正むらを低減する。
【0035】
本実施例では影の傾きとして、影の輪郭を近似する直線を特徴量として使ったが、これに加えて綴じ目の中心を近似する直線を加えて、最も大きな傾きを選択することも可能である。また、ステップ504では、傾きの大きさにより2種類のブロックを選択したが、閾値を2つ以上へ増加して、それぞれの条件についてもっとも望ましい補正効果を得られるアスペクト比を予め実験的に求めて、選択する様にしても良い。
【0036】
以上、説明した様に、影の傾きを代表する直線の傾きによって2次元輝度補正処理ブロックのアスペクト比を切り替える処理により、少ない演算量で最適な補正効果を得ることが可能となる。
【実施例3】
【0037】
本発明に関する第3の実施例を説明する。第1および第2の実施例と異なる補正処理ブロックサイズを選択する処理を図7のフローチャートを用いて詳しく説明する。影の解析結果の綴じ目の方向が縦方向と横方向のいずれに近いかの情報を参照して、綴じ目に沿う方向にサイズ4、直行する方向にサイズ1を矩形サイズ(Aw,Ah)の初期値として選択する(ステップ701)。以下、Ahを長辺側とした場合について説明する。ステップ702で、Aw、Ahにより影の領域を分割する。影の領域をブロックで分割した時に生じる端数画素は1ブロックへ切り上げると共に、先に記載した様に影領域の外側に補正なしとなる格子点を配置して、影の境界部分における補正結果が自然につながる様にする。
【0038】
続いてAw、Ahで分割した時に必要となる格子点数を求め(703)、補正値テーブルの上限サイズを超えているか否かを検査する(ステップ704)。もし、超過している場合には、矩形の長辺Ahのみを2倍に拡大し(ステップ705)、アスペクト比1:8へ変更して、ステップ702と同様にAw、Ahにより影の領域を分割する(706)。Aw、Ahで分割した時に必要となる格子点数を求め(707)、補正値テーブルのメモリ容量の上限サイズを超えているか否かを検査する(ステップ708)。もし、超過している場合には、矩形の短辺Awのみを2倍に拡大し(ステップ709)、アスペクト比1:4へ変更して、ステップ702から繰り返す。ステップ704または708で格子点が補正値テーブルに収まる場合には、その時のAw,Ahを補正ブロックサイズとして選択する(ステップ710)。
【0039】
補正ブロックサイズを一定のアスペクト比で比例的に拡大する場合、実施形態の様に順次2倍ずつ拡大すると、1回のサイズ変更で格子点数が4分の1へ減少するために、補正値テーブルの3/4近い領域が使われない場合が生じる。本実施例によれば補正ブロックサイズを、1×4、1×8、2×8、2×16、4×16、・・・とアスペクト比を切り替えながら拡大することにより常に補正値テーブルの1/2以上を利用することが可能となる。
【0040】
実施例1または実施例2についても、ブロックサイズ候補の決定後に、ブロックサイズの縦または横の長さを1/2へ変更して、補正値テーブルに収まるかを検証することによって補正値テーブルの利用率を改善が可能である。本実施例では簡単な解析でそれらの結果に近い効果を得ることが出来る。
【0041】
なお、上記の説明では、処理の各ステップをCPUコントローラー(930)が処理する構成を説明したが、各ステップの各々をハード回路で構成し、各々の処理手段とすることもできる。
【符号の説明】
【0042】
401 綴じ部影を含む矩形範囲
402 格子点での補正値演算領域
601 綴じ部影の左側輪郭線
602 綴じ部影の左側輪郭線
801 綴じ部影を含む原稿領域
802 綴じ部影を含む最小の矩形範囲
1021 輝度補正値に基づいて画像データの輝度を補正する輝度補正回路
1022 画像データの座標情報と解像度情報に基づいて補正値テーブルの値から輝度補正値を生成する補正値生成回路
1023 格子点における補正値を格納する補正値テーブル記憶回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製本原稿を読取って得た原稿画像データに含まれる綴じ部の影を補正する画像処理装置における画像補正方法であって、
前記原稿画像データから影の範囲を含む影画像データを抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出した影画像データを、輝度分布に基づいて、格子線間の輝度変化の互いに直交する方向の比が正方形の格子の場合よりも小さく、かつ、格子点に対応した補正値を格納するメモリの容量に収まる格子点数である格子線間隔を決めることにより、格子状に分割する分割工程と、
前記分割工程で格子状に分割された各領域の輝度を基に算出した補正値を、該領域に対応した格子点の補正値として、前記メモリに格納する格納工程と、
前記原稿画像データの影の範囲の各画素の輝度の補正値を、各画素の位置に対応する前記メモリに格納された格子点の補正値から算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された補正値を用いて前記原稿画像データの各画素の輝度を補正する補正工程と、
を有する画像補正方法。
【請求項2】
前記分割工程において、前記格子線間隔は、前記綴じ部の綴じ目に沿う方向と格子線との成す角度が小さい方の格子線の間隔が、他の間隔よりも小さく決められることを特徴とする請求項1に記載の画像補正方法。
【請求項3】
前記分割工程において、前記格子線間隔は、前記其々の方向で等間隔に決められることを特徴とする請求項2に記載の画像補正方法。
【請求項4】
前記分割工程において、前記格子線で正方形に分割された場合の領域内の2つの格子線の方向の影の輝度変化の比率の逆数に、前記格子線間隔を決めることを特徴とする請求項3に記載の画像補正方法。
【請求項5】
前記分割工程において、前記影の輪郭線を近似する直線と、前記綴じ部の綴じ目に沿う方向との成す角度が小さい格子線と、の成す角度により前記格子線間隔を選択することを特徴とする請求項2に記載の画像補正方法。
【請求項6】
前記分割工程において、前記格子線間隔は、あらかじめ定めた格子線間隔で分割した場合に前記メモリの容量に収まらない格子点数となる場合は、前記格子線間隔の直交する各々の格子線間隔を順次2倍の間隔にしてゆき、収まる格子点数で前記格子線間隔を決めることを特徴とする請求項3に記載の画像補正方法。
【請求項7】
前記抽出工程に用いる原稿画像データは低解像度で前記製本原稿を読取って得た原稿画像データであり、前記算出工程と補正工程で用いる原稿画像データは高解像度で前記製本原稿を読取って得た原稿画像データであることを特徴とする請求項1に記載の画像補正方法。
【請求項8】
前記算出工程と補正工程で用いる原稿画像データは高解像度で前記製本原稿を読取って得た原稿画像データであり、前記抽出工程に用いる原稿画像データは前記高解像度で前記製本原稿を読取って得た原稿画像データを縮小した画像データであることを特徴とする請求項1に記載の画像補正方法。
【請求項9】
前記補正工程で処理された原稿画像データを保存する保存工程をさらに有する請求項1に記載の画像補正方法。
【請求項10】
前記補正工程で補正されて出力された原稿画像データを印字手段で印字する工程をさらに有する請求項1に記載の画像補正方法。
【請求項11】
製本原稿を読取って原稿画像データを得る画像読取手段と、
前記原稿画像データから影の範囲を含む影画像データを抽出する抽出手段と、
補正値を格納するメモリ手段と、
前記抽出手段で抽出した影画像データを、輝度分布に基づいて、格子線間の輝度変化の互いに直交する方向の比が正方形の格子の場合よりも小さく、かつ、前記メモリ手段の容量に収まる格子点数である格子線間隔を決めることにより、格子状に分割する分割手段と、
前記分割手段で格子状に分割された各領域の輝度を基に算出した補正値を、該領域に対応した格子点の補正値として、前記メモリ手段に格納する制御手段と、
前記原稿画像データの影の範囲の各画素の輝度の補正値を、各画素の位置に対応する前記メモリ手段に格納された格子点の補正値から算出する算出手段と、
前記算出手段で算出された補正値を用いて前記画像データの各画素の輝度を補正する補正手段と、
を有する画像処理装置。
【請求項12】
前記補正手段で補正されて出力された原稿画像データを印字する印字手段を有することを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−142724(P2012−142724A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293022(P2010−293022)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】