説明

画像処理装置、および画像処理装置の制御方法

【課題】汚れ、サイン、または記録媒体の背景などを想定しても、磁気インク文字を読み取る際に、読み取る時間を短縮させる。
【解決手段】明度平均値判定部82で、明度PVが閾値th以上の場合、ノイズがないまたは少ないと判断して、単純2値化処理部83において単純な2値化処理を実施し、明度PVが閾値th未満と判断した場合、ノイズがあるまたは多いと判断して、複雑2値化処理部84において複雑な2値化処理を実施する。言い換えると、すべての文字枠に対して複雑な2値化処理を実施する複雑2値化処理部84を、ノイズがあるまたは多いと判断した場合のみ適用する。このため、文字枠の複雑な2値化処理である複雑2値化処理ステップの実施頻度を低下させ、単純な2値化処理である単純2値化処理ステップの実施頻度を増加させるので、制御方法を単純化させ、2値化処理に要する時間を短縮させることが可能な小切手読取装置1を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、および画像処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小切手などの記録媒体に、磁性物質を含んだインクで印刷されて記録された文字(磁気インク文字)を読み取る文字認識技術の一つに、磁気インク文字認識(MICR:Magnetic Ink Character Recognition)がある。磁気インク文字(MICR文字)には、いくつかのフォントがあり、E−13B文字、CMC−7文字が挙げられる。
記録媒体に印刷されて記録された磁気インク文字を、2値化して光の回折による濃淡のムラなどの影響による不良部の有無を判定して、光学的に検査する装置および方法が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−209798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気インク文字が印刷されて記録された位置または範囲である文字枠の中において、磁気インク文字以外に汚れ、サイン、または記録媒体の背景などが存在していると、磁気インク文字を認識(読み取る)際に、汚れ、サイン、または記録媒体の背景などを想定した複雑な2値化処理を実行する必要があり、磁気インク文字を認識するまでに時間がかかるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる画像処理装置は、記録媒体に形成された磁気インク文字の文字枠の明度の平均値を算出する明度平均値算出部と、前記明度の平均値が閾値以上か未満かを判定する明度平均値判定部と、前記文字枠の単純な2値化処理を実施する単純2値化処理部と、前記文字枠の複雑な2値化処理を実施する複雑2値化処理部とを備え、前記明度平均値判定部で、前記明度が前記閾値以上の場合、前記単純2値化処理部において前記単純な2値化処理を実施し、前記明度が前記閾値未満と判断した場合、前記複雑2値化処理部において前記複雑な2値化処理を実施することを要旨とする。
【0007】
これによれば、明度平均値判定部で、明度が閾値以上の場合、明るいまたは白い、あるいはノイズがないまたは少ないと判断して、単純2値化処理部において単純な2値化処理を実施し、明度が閾値未満と判断した場合、暗いまたは黒い、あるいはノイズがあるまたは多いと判断して、複雑2値化処理部において複雑な2値化処理を実施する。言い換えると、すべての文字枠に対して複雑な2値化処理を実施する複雑2値化処理部を、ノイズがあるまたは多いと判断した場合のみ適用し、ノイズがないまたは少ないと判断し場合、単純2値化処理部を適用する。このため、文字枠の複雑な2値化処理である複雑2値化処理ステップの実施頻度を低下させ、単純な2値化処理である単純2値化処理ステップの実施頻度を増加させるので、制御方法を単純化させ、2値化処理に要する時間を短縮させることが可能な画像処理装置を得ることができる。
【0008】
[適用例2]本適用例にかかる画像処理装置の制御方法は、記録媒体に形成された磁気インク文字の文字枠の明度の平均値を算出する明度平均値算出ステップと、前記明度の平均値が閾値以上か未満かを判定する明度平均値判定ステップと、前記文字枠の単純な2値化処理を実施する単純2値化処理ステップと、前記文字枠の複雑な2値化処理を実施する複雑2値化処理ステップとを備え、前記明度平均値判定ステップで、前記明度が前記閾値以上の場合、前記単純2値化処理ステップを実施し、前記明度が前記閾値未満と判断した場合、前記複雑2値化処理ステップを実施することを要旨とする。
【0009】
これによれば、明度平均値判定ステップで、明度が閾値以上の場合、明るいまたは白い、あるいはノイズがないまたは少ないと判断して、単純2値化処理ステップを実施し、明度が閾値未満と判断した場合、暗いまたは黒い、あるいはノイズがあるまたは多いと判断して、複雑2値化処理ステップを実施する。言い換えると、すべての文字枠に対して複雑な2値化処理を実施する複雑2値化処理ステップを、ノイズがあるまたは多いと判断した場合のみ実施し、ノイズがないまたは少ないと判断し場合、単純2値化処理ステップを実施する。このため、文字枠の複雑な2値化処理である複雑2値化処理ステップの実施頻度を低下させ、単純な2値化処理である単純2値化処理ステップの実施頻度を増加させるので、画像処理装置の制御方法を単純化させることができる。さらには、画像処理装置の制御方法に要する2値化処理の時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の小切手読取装置を示す外観斜視図。
【図2】実施形態の小切手読取装置の内部構造を示す説明図。
【図3】実施形態の小切手読取装置の制御系を示すブロック図。
【図4】実施形態の光学文字認識部の動作を示すフローチャート。
【図5】実施形態の2値化した文字列対応領域画像データを所定の座標系に展開した状態の一例を模式的に示す図。
【図6】実施形態のラベリング処理の実行時における光学文字認識部の動作を示すフローチャート。
【図7】実施形態のバンド幅検出処理の実行時における光学文字認識部の動作を示すフローチャート。
【図8】実施形態の文字列対応領域画像データ上に確定文字枠を表示した様子を示す図。
【図9】実施形態の生成された文字列画像データを示す図。
【図10】実施形態の磁気インク文字に係る画像および確定文字枠を示す概略図。
【図11】実施形態の光学文字認識部の2値化処理の制御系を示す概略ブロック図。
【図12】実施形態の2値化の動作を示すフローチャート。
【図13】実施形態の複雑2値化処理ステップの動作を示すフローチャート。
【図14】実施形態のエッジ強度を算出する模式図。
【図15】実施形態のスムース値を算出する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の本発明の実施形態では、画像処理装置として小切手読取装置1を一例に挙げ、図面を参照して説明する。
【0012】
(実施形態)
図1は、本実施形態の小切手読取装置1を示す外観斜視図である。
小切手読取装置1は、シート状の記録媒体である小切手4に対し、小切手4に記録された磁気インク文字(MICR文字)の読み取りや、小切手4の両面の画像の読み取り、小切手4に対する裏書きに係る所定の画像の記録等の処理を行う装置である。
小切手読取装置1は、本体ケース2と、この上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。
蓋ケース3には、上から見た場合にU形状をした細幅の垂直溝からなる小切手4の搬送路5が形成されており、この搬送路5の一方の端は広幅の垂直溝からなる小切手供給部6に連通しており、搬送路5の他方の端は左右に分岐して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1小切手排出部7および第2小切手排出部8に繋がっている。
【0013】
小切手4の表面4aには、所定の模様が形成された背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、その下端部分には、図1に示すように、長辺方向に延びる磁気インク文字列4Aが記録されている。磁気インク文字列4Aは、複数の磁気インク文字が横方向に並んで形成されている。
また、小切手4の裏面4bには、裏書き欄が形成されている。この裏書き欄には、記録装置56(図2参照)によって、裏書きに係る所定の画像が記録される。
小切手4は、上端4eが上方に位置し下端4fが下方に位置するように上下方向が揃えられ、かつ、表面4aがU形状の搬送路5の外側を向くように表裏が揃えられた状態(図1に示す状態)で、小切手供給部6に挿入される。小切手供給部6に挿入された小切手4は、後端4dを先頭として搬送路5に送り出される。
小切手供給部6から送り出された小切手4は、搬送路5に沿って搬送されながら、表面4aの画像である表面画像、および裏面4bの画像である裏面画像が読み取られ、さらに、表面4aに記録されている磁気インク文字列4Aが磁気的に読み取られる。そして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、裏書きに係る所定の画像の記録が行われた後に、第1小切手排出部7に排出される。一方、読み取りが失敗した小切手4については、裏書きに係る所定の画像が記録されることなく、第2小切手排出部8に排出される。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0014】
図2は、小切手読取装置1の内部構造を示す説明図である。
小切手供給部6には、小切手4を搬送路5に送り出すための小切手送り出し機構10が配置されている。小切手送り出し機構10は、繰り出しローラー11、送り出しローラー12、この送り出しローラー12に押し付けられているリタードローラー13、送り出し用モーター14、および小切手押し付け用のホッパー15を備えている。
送り出し用モーター14が駆動すると、小切手供給部6に入れた小切手4がホッパー15によって繰り出しローラー11の側に押し付けられ、この状態で、繰り出しローラー11および送り出しローラー12が同期回転する。
繰り出しローラー11によって小切手4は送り出しローラー12とリタードローラー13の間に送り込まれる。リタードローラー13には所定の回転負荷が与えられており、送り出しローラー12に直接に接触している一枚の小切手4のみが他の小切手4から分離されて搬送路5に送り出される。
搬送路5は上述したようにU形状をしており、小切手供給部6に繋がっている直線状の上流側搬送路部分21と、第1、第2小切手排出部7、8に繋がっており、僅かに折れ曲がった状態で延びている下流側搬送路部分23と、これらの間を繋ぐ湾曲搬送路部分22とを備えている。
【0015】
小切手供給部6から搬送路5に送り出された小切手4を当該搬送路5に沿って搬送する小切手搬送機構30は、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36と、これらに押し付けられて連れ回りする第1、第2、第3、第4、第5、および第6押圧ローラー41,42,43,44,45,46と、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36を回転駆動するための搬送用モーター37とを備えている。第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36は同期して回転するようになっている。搬送用モーター37として、例えばステッピングモーターが用いられている。このため、ステッピングモーターを駆動するステップ数により、小切手4の搬送量を知ることができる。
第1搬送ローラー31〜第3搬送ローラー33は、上流側搬送路部分21における上流端、その中程の位置、および湾曲搬送路部分22との境界位置にそれぞれ配置されている。第4搬送ローラー34は湾曲搬送路部分22における下流側の位置に配置されている。第5搬送ローラー35および第6搬送ローラー36は、下流側搬送路部分23における中程の位置および下流端にそれぞれ配置されている。
【0016】
上流側搬送路部分21における第1搬送ローラー31および第2搬送ローラー32の間には、その上流側から磁気インク文字着磁用の磁石51、表面側コンタクトイメージスキャナー52、および裏面側コンタクトイメージスキャナー53が配置されている。表面側コンタクトイメージスキャナー52は、搬送路5を搬送される小切手4の表面4aに対向し、表面4aの画像である表面画像を読み取る。裏面側コンタクトイメージスキャナー53は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bに対向し、裏面4bの画像である裏面画像を読み取る。
【0017】
また、第2搬送ローラー32および第3搬送ローラー33の間には、磁気インク文字の読み取り用の磁気ヘッド54が配置されており、磁気ヘッド54には、当該ヘッドに小切手4を押し付けるための押圧ローラー55が対峙している。
下流側搬送路部分23における第5搬送ローラー35および第6搬送ローラー36の間には、裏書きに係る所定の画像の記録用の記録装置56が配置されている。記録装置56は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bの適切な位置に、適切な方向で所定の画像を記録可能な、印刷ヘッドやスタンプなどを備えている。
【0018】
搬送路5には、小切手搬送制御のための各種センサーが配置されている。磁石51の手前側の位置には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。裏面側コンタクトイメージスキャナー53と第2搬送ローラー32の間には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。第4搬送ローラー34の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、この検出器によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手4が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。第5搬送ローラー35の手間側の位置には、記録装置56によって裏書きされる小切手4の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、第6搬送ローラー36の下流側の位置、すなわち、搬送路5から第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に分岐している分岐路9の位置には、これらに排出される小切手4を検出するための排出検出器65が配置されている。
この分岐路9には、駆動モーター67(図3参照)によって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くための部材である。
【0019】
図3は、小切手読取装置1の制御系を示す概略ブロック図である。
制御部71は、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の各部を中枢的に制御するものであり、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えている。
制御部71は、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、送り出し用モーター14、搬送用モーター37を駆動して小切手4(図1参照)を一枚ずつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部71による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64および排出検出器65からの検出信号に基づいて行われる。
小切手4の搬送に伴って、表面側コンタクトイメージスキャナー52、および裏面側コンタクトイメージスキャナー53は、搬送路5を搬送される小切手4の表面の画像、裏面の画像をそれぞれ読み取り、読み取った画像を示す画像データを制御部71に出力する。制御部71は、これら画像データを、ホスト側制御部73に出力する。
また、磁気ヘッド54は、制御部71の制御の下、通過する磁気インク文字列4A(図1参照)によって形成される磁界の変化によって発生する起電力を検出し、検出信号として信号処理回路74に出力する。
信号処理回路74は、増幅器や、ノイズ除去用のフィルター回路、A/D変換器等を備え、磁気ヘッド54から入力された検出信号を、増幅し、波形整形し、データとして制御部71に出力する。制御部71は、信号処理回路74から入力された検出信号を示すデータを、ホスト側制御部73に送信する。
操作部75は、本体ケース2(図1参照)に形成された電源スイッチや、操作スイッチ等の各種スイッチを備え、これらスイッチに対するユーザーの操作を検出し、制御部71に出力する。
【0020】
小切手読取装置1には、通信ケーブル72を介してホストコンピューター70が接続されている。
ホストコンピューター70は、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えて構成されたホスト側制御部73を備えている。ホスト側制御部73は、光学文字認識部80を備えている。
このホスト側制御部73には、各種情報を表示可能な表示器76と、キーボード、マウス等の入力デバイスが接続された操作部77と、EEPROMやハードディスク等の書き換え可能に各種データを記憶する記憶部78と、が接続されている。
記憶部78は、小切手読取装置1から入力された小切手4の表面画像や、裏面画像を示すデータや、検出信号を示すデータを記憶する。
本実施形態では、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、制御部71が小切手読取装置1の各部を制御する。具体的には、ホスト側制御部73は、そのCPUがROMに記憶されたプログラムを実行して、制御部71を制御するための制御データを生成し、生成した制御データを小切手読取装置1の制御部71に対して出力することにより、小切手読取装置1の各部を制御する。本実施形態では、ホストコンピューター70と、小切手読取装置1とが協働して、画像処理装置として機能する。
【0021】
このように、本実施形態に係る小切手読取装置1には、磁気インク文字列4Aを磁気的に読み取る磁気ヘッド54のほか、小切手4の表面を光学的に読み取る表面側コンタクトイメージスキャナー52を備えている。そして、ホストコンピューター70のホスト側制御部73が備える光学文字認識部80は、表面側コンタクトイメージスキャナー52の読み取り結果に基づいて、磁気インク文字列4Aを構成する磁気インク文字のそれぞれについて、光学的な認識を行う。
磁気インク文字とは、所定のフォント、例えばCMC−7、E−13Bに準拠して、小切手4に磁気印刷された文字のことであり、1つの磁気インク文字は、予め定められた複数の文字種類のうちのいずれか1つの文字種類に対応している。そして、磁気インク文字の認識とは、読み取った磁気インク文字のそれぞれについて、各磁気インク文字の文字種類を確定し、または、当該磁気インク文字の文字種類を確定できないことを検出することである。
光学文字認識部80による光学文字認識は、磁気インク文字認識と併せて必ず行うようにしてもよく、また、磁気インク文字認識が失敗した場合に行うようにしてもよい。
以下、光学文字認識部80の動作について詳述する。
【0022】
図4は、光学文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
この光学文字認識部80の機能は、ホスト側制御部73のCPUがROMに記憶されたプログラムを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
CMC−7では、磁気インク文字の形状として、数字10個、英大文字26個、および特殊記号5個の合計41個の文字の文字種類に対応する形状が用意されている。
以下の説明では、ある1つの小切手4について、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aの認識を実行する際の光学文字認識部80の動作を示しているものとする。そして、表面側コンタクトイメージスキャナー52により、当該小切手4の表面の画像が読み取られ、表面画像データとして制御部71からホスト側制御部73に出力されているものとする。
【0023】
図4を参照し、光学文字認識部80は、小切手4の表面に係る表面画像データを取得する(ステップSA1)。
次いで、光学文字認識部80は、表面画像データから、文字列対応領域に対応する領域を切り出して、文字列対応領域画像データを生成する(ステップSA2)。ここで、文字列対応領域とは、小切手4において規格により磁気インク文字列4Aが印刷される領域と規定された領域のことである。従って、磁気インク文字列4Aを示す画像は、文字対応領域データに必ず含まれているものの、磁気インク文字列4Aを高い精度で認識するためには、文字対応領域データにおける磁気インク文字列4Aが示す画像の領域をある程度厳密に特定する必要がある。
次いで、光学文字認識部80は、文字列対応領域画像データを、2値化する(ステップSA3)。これにより、文字列対応領域画像データにおいて、ドットマトリクス状に配置された各画素は、黒色を示す値、または白色を示す値のいずれかの値を保持した状態となる。
【0024】
図5は、2値化した文字列対応領域画像データを所定の座標系に展開した状態の一例を模式的に示す図である。
文字列対応領域画像データは、各画素がドットマトリクス状に配置されたデータであるため、これら画像データを座標系に展開することにより、各画素の座標は、座標系において原点として定義された位置からの相対的な位置によって一意に定義される。
図5を参照し、文字列対応領域画像データが示す画像には、磁気インク文字列4Aを示す画像P1が含まれている。磁気インク文字列4Aに係る画像P1は、複数の磁気インク文字を示す画像P2が磁気インク文字列4Aの長手方向(Y軸方向)に並んで構成されている。また、文字列対応領域画像データが示す画像には、磁気インク文字列4Aを示す画像P1のほか、サインに係る画像P3、汚れに係る画像P4等が含まれている。
なお、本実施形態では、所定の座標系におけるX軸、およびY軸と、文字列対応領域画像データとの位置関係は、図5に示す状態であるものとする。すなわち、文字列対応領域画像データは、座標系の第1象限において、磁気インク文字列4Aの長手方向が、Y軸が延びる方向と一致し、また、磁気インク文字列4Aの幅方向が、X軸が延びる方向と一致するように、座標系に展開されるものとする。
【0025】
文字列対応領域画像データを2値化した後、光学文字認識部80は、ラベリング処理を行う(ステップSA4)。
【0026】
図6は、ステップSA4のラベリング処理の実行時における光学文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
図6に示すラベリング処理(ステップSA4)において、まず、光学文字認識部80は、文字列対応領域画像データから、当該画像データに含まれているブロックを検出する(ステップSB1)。
詳述すると、まず、光学文字認識部80は、文字列対応領域画像データを構成する各画素を走査し、黒色を示す値を保持する画素(以下、「黒画素」という。同様に白色を示す値を保持する画素を「白画素」という。)を検出する。黒画素を検出した場合、光学文字認識部80は、当該黒画素に連続している全ての黒画素を検出する。当該黒画素に連続している全ての黒画素とは、白画素によって断絶されることなく、連鎖的に隣接する全ての黒画素のことを言い、例えば、図5において符号A、A1、A2で示される黒画素のかたまりのことである。このようにして検出される連続した黒画素のかたまりが1つの「ブロック」に該当する。光学文字認識部80は、文字列対応領域画像データを構成する各画素を走査し、文字列対応領域画像データが示す画像に含まれるブロックの全てを検出する。
ここで、各文字種類に対応する磁気インク文字のそれぞれの画像は、1つの連続する黒画素のかたまりから構成されている。そして、磁気インク文字の画像となり得、また、磁気インク文字の画像の一部となり得る黒画素のかたまりについて、かたまりを構成する画素の数の最小値と、最大値とは、一意に定められる。
これを踏まえ、光学文字認識部80は、文字列対応領域画像データが示す画像に含まれる連続する黒画素のかたまりのうち、かたまりを構成する画素の数が、上記最小値を下回るか、または上記最大値を上回る場合は、該当するかたまりについては、「ブロック」としない。これにより、例えば、図5を参照して、画素の数が上記最小値を下回るかたまりA1や、画素の数が上記最大値を上回るかたまりA2は、「ブロック」として検出されない。
このようにしてブロックを検出(特定)することにより、検出(特定)されるブロックから、磁気インク文字を示す画像を構成する可能性がない黒画素のかたまりに係るものを除外することができる(ステップSB2)。
【0027】
文字列対応領域画像データに含まれるブロック(かたまりA)を検出した後、光学文字認識部80は、複数のブロックのうちから、以下のステップSB3〜ステップSB7の処理を実行する対象となるブロックを特定する。以下の説明では、ステップSB2で特定されたブロックを「処理対象ブロック」という。以下のステップSB3〜ステップSB7の処理は、検出したブロックのそれぞれについて、1回ずつ実行されることとなる。
検出したブロックから処理対象ブロックを特定した後、光学文字認識部80は、処理対象ブロックのブロック枠を検出する(ステップSB3)。
詳述すると、ブロック枠とは、処理対象ブロックを囲う矩形の枠のことであり、X軸方向に延びる2辺と、Y軸方向に延びる2辺とで構成される。ブロック枠のX軸方向に延びる2辺の長さは、ブロックのX軸方向の長さに対応して規定され、また、ブロック枠のY軸方向に延びる2辺の長さは、ブロックのY軸方向の長さに対応して規定される。図5を参照し、例えば、符号BWで示す枠が、対応するブロックのブロック枠に該当する。
なお、ブロック枠を検出するとは、座標系におけるブロック枠の位置を示す情報(例えば、ブロック枠の四隅のそれぞれの座標)を検出することである。
【0028】
次いで、光学文字認識部80は、検出したブロック枠が、1つの磁気インク文字の文字枠である可能性があるか否かを判別する(ステップSB4)。
詳述すると、1つの磁気インク文字の文字枠とは、文字列対応領域画像データの磁気インク文字を示す画像を、上記のブロック枠と同様にして囲う枠のことである。
CMC−7には、磁気インク文字の形状として、数字10個、英大文字26個、および特殊記号5個の合計41個の文字の文字種類に対応する形状が用意されている。41種類の文字種類のそれぞれの画像の文字枠について、文字枠のX軸方向に延びる辺の縦辺長、Y軸方向に延びる辺の横辺長、およびX軸方向に延びる辺の縦辺長とY軸方向に延びる辺の横辺長との比(以下、「縦横比」という)は、それぞれ定まる。従って、ブロック枠が磁気インク文字の文字枠である場合に、当該ブロック枠が取り得るX軸方向に延びる辺の縦辺長の範囲、Y軸方向に延びる辺の横辺長の範囲、および縦横比の範囲は、定まる。これを踏まえ、ステップSB4では、処理対象ブロックのブロック枠の、X軸方向に延びる辺の縦辺長、Y軸方向に延びる辺の横辺長、および縦横比を検出し、これらが、上記の各範囲内に収まっているか否かが判別される。
【0029】
ステップSB4において、ブロック枠が文字枠に該当する可能性があると判別した場合(ステップSB4:YES)、光学文字認識部80は、このブロック枠を候補文字枠KM(KM1、KM2、図5参照)として特定し(ステップSB5)、処理手順をステップSB8に移行する。
ステップSB8では、ステップSB1で検出した全てのブロックが処理対象ブロックとなったか否かが判別され、全てのブロックが処理対象ブロックとなっていない場合(ステップSB8:NO)、光学文字認識部80は、処理手順をステップSB2へ移行し、全てのブロックが処理対象ブロックとなった場合(ステップSB8:YES)、ラベリング処理(ステップSA4)を終了する。
【0030】
一方、ステップSB4において、ブロック枠が文字枠に該当する可能性がないと判別した場合(ステップSB4:NO)、処理対象ブロックに隣接して周囲に存在するブロックの中に、処理対象ブロックと統合可能なブロックがあるか否かを判別する(ステップSB6)。
詳述すると、処理対象ブロックのブロック枠が、文字枠に該当する可能性がない場合、処理対象ブロックは、単独で、1つの磁気インク文字に対応するブロックではないものの、制御文字を構成する複数の部位のいずれかに対応するブロックである可能性がある。そして、処理対象ブロックが、制御文字を構成する複数の部位のいずれかに対応するブロックである場合、この処理対象ブロックの周囲に、この処理対象ブロックに隣接して、当該制御文字を構成する他のブロックが存在していることとなる。そして、処理対象ブロックと統合可能なブロックとは、1つの制御文字を構成可能な程度に、処理対象ブロックに対して近接した他のブロックのことであり、ステップSB6では、処理対象ブロックと統合可能なブロックが存在するか否かを判別している。
なお、以下の説明では、1の制御文字を構成する1の部位に対応するブロックと、他の部位に対応するブロックとを対応づけることを、「統合」と表現するものとする。
【0031】
ステップSB6において、処理対象ブロックと統合可能なブロックがない場合(ステップSB6:NO)、光学文字認識部80は、処理対象ブロックのブロック枠を候補文字枠KMとして特定することなく、処理手順をステップSB8へ移行する。これは、処理対象ブロックは、磁気インク文字に係るブロックではなく、また、制御文字に係る磁気インク文字を構成する部位に係るブロックでもないためである。
一方ステップSB6において、処理対象ブロックと統合可能なブロックがある場合(ステップSB6:YES)、光学文字認識部80は、統合処理を実行する(ステップSB7)。
【0032】
ステップSB7の統合処理により、処理対象ブロックを含む、1つの制御文字に対応するブロック群(統合ブロック)を検出した後、光学文字認識部80は、この統合ブロック全体のブロック枠を候補文字枠KMとして特定し(ステップSB5)、処理手順を上述したステップSB8へ移行する。
【0033】
図5では、ラベリング処理(ステップSA4)を実行することによって、検出された候補文字枠を符号KMで示している。図5に示すように、候補文字枠KMは、制御文字に関しては、制御文字を構成する各部位に対応するブロックを囲む適切なものとなる。
一方で、ラベリング処理では、1つのブロックのブロック枠が、辺の長さや、縦横比の関係上、磁気インク文字の文字枠となる可能性がある限りにおいて、例えば、候補文字枠KM2に示すように、1つの磁気インク文字に正常に対応していないブロック枠であっても、候補文字枠KM(KM2)として特定される。
【0034】
図4に示したラベリング処理(ステップSA4)において、候補文字枠KMを検出した後、光学文字認識部80は、バンド幅検出処理を行う(ステップSA5)。
【0035】
図7は、バンド幅検出処理の実行時における光学文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
図7を参照し、バンド幅検出処理(ステップSA5)において、まず、光学文字認識部80は、ラベリング処理(ステップSA4)で検出した候補文字枠KMの中から、ステップSC2以下の所定の処理を実行する対象となる候補文字枠KMを特定する(ステップSC1)。すなわち、ステップSC2以下の所定の処理は、候補文字枠KMのそれぞれについて、1回ずつ行われることとなる。以下の説明では、ステップSC1で特定した候補文字枠KMを「処理対象候補文字枠」というものとする。
次いで、光学文字認識部80は、処理対象候補文字枠に対応するブロック(処理対象候補文字枠で囲まれたブロック)について、光学文字認識を行う(ステップSC2)。
光学文字認識は、ブロックが示す画像の文字種類を確定し、またはブロックが示す画像の文字種類を確定できないことを判別する処理であり、例えば、41種類の文字種類のそれぞれに対応するビットマップパターンと、処理対象候補文字枠によって切り出される画像データとを比較することにより行われる。
次いで、光学文字認識部80は、処理対象候補文字枠に対応するブロックの光学文字認識が成功(ブロックが示す画像の文字種類が確定)したか否かを判別する(ステップSC3)。
成功した場合(ステップSC3:YES)、光学文字認識部80は、処理対象候補文字枠を確定文字枠として特定し(ステップSC4)、処理手順をステップSC5へ移行する。すなわち、確定文字枠とは、光学文字認識が成功した磁気インク文字に係る画像の文字枠のことである。
一方で、光学文字認識が失敗した場合(ステップSC3:NO)、光学文字認識部80は、処理対象候補文字枠を確定文字枠として特定することなく、処理手順をステップSC5へ移行する。
ステップSC5では、ラベリング処理で検出された候補文字枠KMの全てが処理対象候補文字枠となったか否かが判別され、全てが処理対象候補文字枠となっていない場合(ステップSC5:NO)、光学文字認識部80は、処理手順をステップSC1へ移行し、一方、候補文字枠KMの全てが処理対象候補文字枠となった場合(ステップSC5:YES)、処理手順をステップSC6へ移行する。
【0036】
図8は、文字列対応領域画像データ上に確定文字枠を表示した様子を示す図である。
図8において、符号DMで示す枠が、確定文字枠に該当する。
図8に示すように、磁気インク文字列4Aの磁気インク文字に係る画像P2のそれぞれについて、確定文字枠DMが検出される。一方で、画像P5、および画像P6に示すように、磁気インク文字と汚れとが連続一体的に結合して形成されたブロックについては、ステップSC2における光学文字認識の結果、認識が失敗するため(ステップSC3:NO)、対応する確定文字枠DMが検出されない。
【0037】
ステップSC6において、光学文字認識部80は、ステップSC3において文字認識に成功したと判別されたものが、所定の個数以上あるか否かを判別する。
所定の個数以上存在する場合(ステップSC6:YES)、光学文字認識部80は、バンド下端値を検出する(ステップSC7)。
【0038】
以下の説明では、説明の便宜のため、確定文字枠DMの4辺のうち、Y軸方向に延びる2辺について、Y軸に近い辺を「確定文字枠DMの下端」と、また、Y軸から遠い辺を「確定文字枠DMの上端」と、表現するものとする。
ステップSC7において、光学文字認識部80は、確定文字枠DMのうち、その下端4fが、最もY軸に近い位置に位置している確定文字枠DMを特定する。
そして、光学文字認識部80は、特定した確定文字枠DMの下端4fのX軸方向の値を検出し、検出した値をバンド下端値とする。
【0039】
次いで、光学文字認識部80は、バンド上端値を検出する(ステップSC8)。
詳述すると、光学文字認識部80は、確定文字枠DMのうち、最もY軸との離間距離が大きい上端4eを有する確定文字枠DMを特定する。
そして、光学文字認識部80は、特定した確定文字枠DMの上端4eのX軸方向の値を検出し、検出した値をバンド上端値とする。
【0040】
次いで、光学文字認識部80は、ステップSC7で検出したバンド下端値と、ステップSC8で検出したバンド上端値との間に論理的な矛盾があるか否かを判別する(ステップSC9)。
論理的な矛盾とは、例えば、バンド上端値よりも、バンド下端値が大きいことや、また、バンド上端値とバンド下端値との差が想定される値よりも著しく小さく、または大きいことである。
矛盾がない場合(ステップSC9:NO)、光学文字認識部80は、所定の座標系のX軸において、バンド下端値と、バンド上端値とで挟まれる範囲に多少のマージンを付けた範囲を、バンド幅として検出し(ステップSC10)、検出したバンド幅で文字対応領域画像データを切り出して、文字列画像データを生成する(ステップSC11)。
【0041】
図9は、ステップSC11で生成された文字列画像データを示す図である。
図9に示すように、上述した手法によりバンド幅を検出すると共に、検出したバンド幅に基づいて文字列対応領域画像データを切り出して文字列画像データを生成することにより、図9に示すように、文字列画像データは、磁気インク文字列4Aが配置された領域について、磁気インク文字列4Aの幅の大きさ相当に切り出されたデータとなる。これにより、文字列画像データから磁気インク文字列4Aの周囲に存在していた汚れに係る画像等を極力排除でき、特に、図8と図9とにおける画像P5、および画像P6の比較において明らかなように、磁気インク文字に係る画像と連続一体的に形成された汚れに係る画像も文字列画像データから除外された状態となる。
【0042】
検出した確定文字枠DMを利用して、バンド上端値、およびバンド下端値を算出し、これらの値に基づいてバンド幅を検出する場合、検出したバンド幅の値の信頼性を確保するためには、ハンド幅検出の前提となる確定文字枠DMがある程度の個数存在することが求められる。これを踏まえ、ステップSC6(図7参照)において、文字認識に成功したブロックの個数(=検出された確定文字枠DMの個数)が、バンド幅の信頼性を確保できるような所定の個数以上あるか否かを判別し、所定の個数を下回る場合(ステップSC6:NO)は、光学文字認識部80は、他の手法でバンド幅を検出する予備バンド幅検出処理(ステップSC12)を実行する。
また、検出したバンド上端値と、バンド下端値に論理的な矛盾がある場合(ステップSC9:YES)、バンド幅を検出することが不可能なため、光学文字認識部80は、予備バンド幅検出処理(ステップSC12)を実行する。
【0043】
予備バンド幅検出処理(ステップSC12)により、バンド幅を検出した後、光学文字認識部80は、検出したバンド幅で文字列対応領域画像データを切り出して、文字列画像データを生成する(ステップSC11)。
このように、本実施形態では、ステップSC6において、認識に成功したブロックの個数が所定の個数を下回ったと判別されたり、算出したバンド上端値、およびバンド下端値に論理的な矛盾があったりした場合であっても、予備バンド幅検出処理により、バンド幅が検出される構成となっている。
【0044】
ステップSA5のバンド幅検出処理(図4参照)によりバンド幅を検出し、文字列画像データ(図9参照)を生成した後、光学文字認識部80は、光学文字認識処理を実行する(ステップSA6)。
この光学文字認識処理では、光学文字認識部80は、文字列画像データに基づいて、磁気インク文字の画像の可能性があるブロックの検出、ブロックごとのパターンマッチングによる文字認識等、光学文字認識に係る一連の処理が実行され、改めて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の光学的な認識が実行される。
【0045】
図10は、磁気インク文字に係る画像および確定文字枠DMを示す概略を示す概略図である。
MICR文字のフォントの一つであるE−13Bは、数字10個(「0」〜「9」)、ならびに4つの制御文字(トランジット記号(TRANSIT SYMBOL)、アマウント記号(AMOUNT SYMBOL)、オン−アス記号(ON-US SYMBOL)、およびダッシュ記号(DASH SYMBOL))の合計14個の文字を有する磁気インク文字である。
14個のE−13B文字それぞれの画像の文字枠(確定文字枠DM)において、文字枠(確定文字枠DM)のX軸方向(縦軸方向)に延びる辺の長さ(縦辺長)、Y軸方向(横軸方向)に延びる辺の長さ(横辺長)、および縦辺長と横辺長との比(以下、「縦横比」という)は、それぞれ定まる。そして、縦辺長と、E−13Bの複数種類の文字の大きさとを比較することにより、文字高Hが規定される。
図10では、ドットマトリクス状に形成されたマス目のそれぞれが、文字枠(確定文字枠DMまたは磁気インク文字列4A)を構成する画素のそれぞれを示している。
【0046】
ここでは、上述したステップSA3について、図を参照して詳述する。
図11は、光学文字認識部80の2値化処理の制御系を示す概略ブロック図である。図11に示すように、光学文字認識部80は、明度平均値算出部81と、明度平均値判定部82と、単純2値化処理部83と、複雑2値化処理部84と、文字背景判別部86とを備えている。複雑2値化処理部84は、エッジ閾値算出部841と、ダーク閾値算出部842と、大津閾値算出部843と、ブライト閾値算出部844とを備えている。また、光学文字認識部80には、図示省略したラベリング処理(ステップSA4)を行うラベリング部、バンド幅検出処理(ステップSA5)を行うバンド幅検出処理部、および光学文字認識処理(ステップSA6)を行う光学文字認識処理部を備えている。
【0047】
図12は、2値化(SA3)の動作を示すフローチャートである。
図12に示すように、2値化(ステップSA3)は、明度平均値算出ステップ(S101)、明度平均値判定ステップ(S102)、単純2値化処理ステップ(S103)、および複雑2値化処理ステップ(S104)を備えている。
【0048】
記録媒体に形成された磁気インク文字の文字枠(確定文字枠DMまたは磁気インク文字列4A)の明度PV(図14参照)の平均値を算出する明度平均値算出ステップ(S101)を実施する。
詳しくは、明度平均値算出部81において、記録媒体である小切手4の表面4aに複数の磁気インク文字が横方向に並んで形成(記録または印刷)されている確定文字枠DMまたは磁気インク文字列4Aの明度PVの平均値を算出する。
【0049】
明度平均値判定部82において、明度PVの平均値が閾値th以上か未満かを判定する明度平均値判定ステップ(S102)を実施する。閾値thは、小切手4の表面4a(特に、確定文字枠DMまたは磁気インク文字列4A)に記録された磁気インク文字のサイズもしくは濃淡、ならびに小切手4の表面4aの所定の模様が形成された背景のほかに、汚れ、および/またはサインなどにより、適宜決定することができる。
明度(輝度値)PVが閾値th以上(S102:Yes)の場合、明るいまたは白い、あるいはノイズがないまたは少ないと判断して、単純2値化処理部83において、単純な2値化処理である単純2値化処理ステップ(S103)を実施する。
明度(輝度値)PVが閾値th未満(S102:No)と判断した場合、暗いまたは黒い、あるいはノイズがあるまたは多いと判断して、複雑2値化処理部84において、複雑な2値化処理である複雑2値化処理ステップ(S104)を実施する。
【0050】
単純2値化処理ステップ(S103)または複雑2値化処理ステップ(S104)を実施した後、上述したラベリング処理(ステップSA4)、バンド幅検出処理(ステップSA5)、および光学文字認識処理(ステップSA6)を実施する。
【0051】
まず、単純な2値化処理である単純2値化処理ステップ(S103)について、説明する。
単純2値化処理ステップ(S103)は、判別分析法または大津の2値化と称されるもので、単純2値化処理部83において、分離度の値が最大になる閾値tを決定し、自動的に文字枠(確定文字枠DMまたは磁気インク文字列4A)の単純な2値化処理を実施する。
詳しくは、分離度(σb2/σw2)は、σb2/σw2=σb2/(σt2−σb2)で表され、全分散σt(Total Variance)は閾値tに関係なく一定であるため、クラス間分散σb2が最大となる閾値tを決定する。または、クラス内分散σw2は、σw2=ω1×ω2(m1−m22/(ω1+ω22で表され、分母の(ω1+ω22は閾値tに関係なく一定であるため、全分散σt、クラス間分散σb2、およびクラス内分散σw2に関係なく、黒い領域および白い領域のヒストグラムをもとに、画素数ωt,ω1,ω2と明度(輝度値)PVの平均値m1,m2とからクラス間分散σb2が最大となる閾値tを決定する。
ここで、明度(輝度値)PVが閾値tよりも小さい(暗いまたは黒い)の画素数をω1、明度(輝度値)PVの平均をm1、分散をσ1とし、明度(輝度値)PVが閾値tよりも大きい(明るいまたは白い)の画素数をω2、明度(輝度値)PVの平均をm2、分散をσ2とし、画像全体の画素数をωt、明度(輝度値)PVの平均をmt、分散をσtと示す。そして、クラス間分散σb2は、σb2=(ω1×σ12+ω2×σ22)/(ω1+ω2)で表され、全分散σt2は、クラス間分散σb2とクラス内分散σw2との和(σt2=σb2+σw2)で表される。
【0052】
次に、文字枠(確定文字枠DMまたは磁気インク文字列4A)の複雑な2値化処理を実施する。複雑な2値化処理である複雑2値化処理ステップ(S104)について、以下に説明する。
図13は、複雑2値化処理ステップ(S104)の動作を示すフローチャートである。複雑2値化処理部84において、図13に示す動作をする。
図13に示すように、複雑2値化処理ステップ(S104)は、エッジ強度決定ステップ(S201)、明度比較ステップ(S202)、明度最小値算出ステップ(S203)、複数閾値算出ステップ(S204)、および文字背景判別ステップ(S205)を備えている。
【0053】
図14は、エッジ強度EVを算出する模式図である。図中に示すアスタリスク(*)は、各画素の明度PVの値を略式的に示すものであり、それぞれのアスタリスク(*)はそれぞれの値を示すものとする。
文字枠(確定文字枠DM)を構成する各画素の中から注目する注目画素(図14に示す斜線部)の明度PV(Pixel Value)に対するエッジ強度EV(Edge Value)を算出(導出)して決定するエッジ強度決定ステップ(S201)を実施する。具体的には、注目画素を中心とするn×m(nおよびmは自然数)の領域としての5×5の領域dm5×5(図14に太実線で囲った領域)に対して、エッジ抽出フィルターEAFを適用し、注目画素の明度PV(Pixel Value)に対するエッジ強度EVを算出する。
ここで、エッジ強度EVは、0(zero)未満の場合は0(zero)に、255を超える場合は255にする。
【0054】
次に、エッジ強度EVと注目画素の明度PVとを比較する明度比較ステップ(S202)を実施する。
そして、エッジ強度EVが、注目画素の明度PVより大きいと判断した場合、エッジと判断し、エッジと判断した注目画素を中心とするn×m(nおよびmは自然数)の領域としての3×3の領域dm3×3(図14に破線で囲った領域)における明度PVの最小値MinPV(Minimum Pixel Value)を算出する明度最小値算出ステップ(S203)を実施する。その後、複数閾値算出ステップ(S204)を実施する。
また、エッジ強度EVが、注目画素の明度PV未満と判断した場合、複数閾値算出ステップ(S204)を実施する。
【0055】
以下に示すように、複数の判別閾値を算出する複数閾値算出ステップ(S204)を実施する。ここで算出する複数の判別閾値は、以下に示すエッジ閾値ETh(Edge Threshold)、ダーク閾値DTh(Dark Threshold)、大津閾値OTh(Otsu Threshold)、およびブライト閾値BTh(Bright Threshold)である。
図13に示すように、複数閾値算出ステップ(S204)は、エッジ閾値算出ステップ(S221)、ダーク閾値算出ステップ(S222)、大津閾値算出ステップ(S223)、およびブライト閾値算出ステップ(S224)を備えている。
【0056】
エッジ閾値算出部841において、エッジ閾値算出ステップ(S221)を実施する。
詳しくは、エッジと判断した注目画素のエッジ強度EVの平均値AveEV(Average Edge Value)を算出する。そして、エッジ強度EVの平均値AveEVの3分の1を、エッジ閾値EThとして算出する。
【0057】
そして、ダーク閾値算出部842において、ダーク閾値算出ステップ(S222)を実施する。
明度PVの最小値MinPVの平均値AveMinPV(Average Minimum Pixel Value)を算出する。詳しくは、エッジと判断した注目画素を中心とする3×3の領域(図14に破線で示した領域)における明度PVの最小値MinPVの平均値AveMinPVを算出する。さらに、平均値AveMinPV未満であって最小値MinPVの最大値MaxPVを1.2倍した値(1.2×MaxPV)を、ダーク閾値DThとして算出する。
【0058】
また、大津閾値算出部843において、大津閾値算出ステップ(S223)を実施する。詳しくは、画像全体に対する判別分析法(大津の2値化)による大津閾値OThを算出する。ここで、判別分析法は、上述の単純2値化処理ステップ(S103)の方法と同様である。
【0059】
そして、ブライト閾値算出部844において、ブライト閾値算出ステップ(S224)を実施する。詳しくは、閾値OThを0.4倍した値(0.4×OTh)を、ブライト閾値BThとして算出する。
【0060】
以上のようにして算出した複数の判別閾値としてのエッジ閾値ETh(Edge Threshold)、ダーク閾値DTh(Dark Threshold)、大津閾値OTh(Otsu Threshold)、およびブライト閾値BTh(Bright Threshold)を引用して、各画素に対して2値化し、文字背景判別ステップ(S205)を実施する。詳しくは、以下の条件により、文字背景判別部86において、注目画素が文字であるか背景であるかを判別する。
【0061】
具体的には、注目画素の明度PVが閾値OThを超える(PV>OTh)ことに加えてエッジ閾値EThが平均値AveEV未満(ETh<AveEV)である場合、255つまり背景であると判別する。
【0062】
そして、エッジ強度EVが明度PVを超える(EV>PV)、もしくはエッジ強度EVがエッジ閾値EThを超える(EV>ETh)ことに加えて明度PVが閾値BTh未満(PV<BTh)である場合、0(zero)つまり文字であると判別する。
【0063】
または、スムース値を算出する模式図(図15)に示すように、注目画素を中心とする11×11の領域dm11×11に対して、ガウシアンフィルターGF(Gaussian Filter)を適用し、注目画素の明度PV(Pixel Value)に対するスムース値SV(Smooth Value)を算出する。ここで、スムース値SVは、0(zero)未満の場合は0(zero)に、255を超える場合は255にする。
注目画素の明度PVがスムース値SVを0.8倍した値(0.8×SV)未満(PV<0.8×SV)、もしくは明度PVがスムース値SV未満(PV<SV)であることに加えて明度PVがダーク閾値DTh以下(PV≦DTh)である場合において、明度PVが32未満(PV<32)であれば0(zero)つまり文字であると判別し、明度PVが32以上(PV≧32)であれば255つまり背景であると判別する。
ここで、図15に示すアスタリスク(*)は、図14のアスタリスク(*)と同様に、各画素の明度PVの値を略式的に示すものであり、それぞれのアスタリスク(*)はそれぞれの値を示すものとする。
【0064】
以上のようにして、単純な2値化処理である単純2値化処理ステップ(S103)に比べて、複雑な2値化処理である複雑2値化処理ステップ(S104)を実施する。
【0065】
上述のように、文字背景判別ステップ(S205)を実施した後、上述したラベリング処理(ステップSA4)、バンド幅検出処理(ステップSA5)、および光学文字認識処理(ステップSA6)を実施する。これにより、磁気インク文字の認識を実現する。
【0066】
本実施形態によれば、明度平均値判定部82で、明度PVが閾値th以上の場合、明るいまたは白い、あるいはノイズがないまたは少ないと判断して、単純2値化処理部83において単純な2値化処理を実施し、明度PVが閾値th未満と判断した場合、暗いまたは黒い、あるいはノイズがあるまたは多いと判断して、複雑2値化処理部84において複雑な2値化処理を実施する。言い換えると、すべての文字枠に対して複雑な2値化処理を実施する複雑2値化処理部84を、ノイズがあるまたは多いと判断した場合のみ適用し、ノイズがないまたは少ないと判断し場合、単純2値化処理部83を適用する。このため、文字枠の複雑な2値化処理である複雑2値化処理ステップ(S104)の実施頻度を低下させ、単純な2値化処理である単純2値化処理ステップ(S103)の実施頻度を増加させるので、制御方法を単純化させ、2値化処理に要する時間を短縮させることが可能な小切手読取装置1を得ることができる。
【0067】
そして、明度平均値判定ステップ(S102)で、明度(輝度値)PVが閾値th以上(S102:Yes)の場合、明るいまたは白い、あるいはノイズがないまたは少ないと判断して、単純2値化処理ステップ(S103)を実施し、明度(輝度値)PVが閾値th未満(S102:No)と判断した場合、暗いまたは黒い、あるいはノイズがあるまたは多いと判断して、複雑2値化処理ステップ(S104)を実施する。言い換えると、すべての文字枠(確定文字枠DMまたは磁気インク文字列4A)に対して文字枠の複雑な2値化処理を実施する複雑2値化処理ステップ(S104)を、ノイズがあるまたは多いと判断した場合のみ実施し、ノイズがないまたは少ないと判断し場合、単純2値化処理ステップ(S103)を実施する。このため、文字枠の複雑な2値化処理である複雑2値化処理ステップ(S104)の実施頻度を低下させ、単純な2値化処理である単純2値化処理ステップ(S103)の実施頻度を増加させるので、小切手読取装置1の制御方法を単純化させることができる。さらには、小切手読取装置1の制御方法に要する2値化処理の時間を短縮させることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…小切手読取装置、2…本体ケース、3…蓋ケース、4…小切手、4A…磁気インク文字列、4a…表面、4b…裏面、4d…後端、4e…上端、4f…下端、5…搬送路、6…小切手供給部、7…第1小切手排出部、8…第2小切手排出部、9…分岐路、10…小切手送り出し機構、11…繰り出しローラー、12…送り出しローラー、13…リタードローラー、14…送り出し用モーター、15…ホッパー、21…上流側搬送路部分、22…湾曲搬送路部分、23…下流側搬送路部分、30…小切手搬送機構、31…第1搬送ローラー、32…第2搬送ローラー、33…第3搬送ローラー、34…第4搬送ローラー、35…第5搬送ローラー、36…第6搬送ローラー、37…搬送用モーター、41,42,43,44,45,46…押圧ローラー、51…磁石、52…表面側コンタクトイメージスキャナー、53…裏面側コンタクトイメージスキャナー、54…磁気ヘッド、55…押圧ローラー、56…記録装置、61…用紙長検出器、62…重送検出器、63…ジャム検出器、64…印刷検出器、65…排出検出器、66…切り替え板、67…駆動モーター、70…ホストコンピューター、71…制御部、72…通信ケーブル、73…ホスト側制御部、74…信号処理回路、75…操作部、76…表示器、77…操作部、78…記憶部、80…光学文字認識部、81…明度平均値算出部、82…明度平均値判定部、83…単純2値化処理部、84…複雑2値化処理部、841…エッジ閾値算出部、842…ダーク閾値算出部、843…大津閾値算出部、844…ブライト閾値算出部、86…文字背景判別部、A,A1,A2…かたまり、KM,KM1,KM2…候補文字枠、P1,P2,P3,P4,P5,P6…画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に形成された磁気インク文字の文字枠の明度の平均値を算出する明度平均値算出部と、
前記明度の平均値が閾値以上か未満かを判定する明度平均値判定部と、
前記文字枠の単純な2値化処理を実施する単純2値化処理部と、
前記文字枠の複雑な2値化処理を実施する複雑2値化処理部とを備え、
前記明度平均値判定部で、前記明度が前記閾値以上の場合、前記単純2値化処理部において前記単純な2値化処理を実施し、
前記明度が前記閾値未満と判断した場合、前記複雑2値化処理部において前記複雑な2値化処理を実施することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
記録媒体に形成された磁気インク文字の文字枠の明度の平均値を算出する明度平均値算出ステップと、
前記明度の平均値が閾値以上か未満かを判定する明度平均値判定ステップと、
前記文字枠の単純な2値化処理を実施する単純2値化処理ステップと、
前記文字枠の複雑な2値化処理を実施する複雑2値化処理ステップとを備え、
前記明度平均値判定ステップで、前記明度が前記閾値以上の場合、前記単純2値化処理ステップを実施し、前記明度が前記閾値未満と判断した場合、前記複雑2値化処理ステップを実施することを特徴とする画像処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−160043(P2012−160043A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19517(P2011−19517)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】