説明

画像処理装置、不正利用防止方法、不正利用防止プログラム、及びそのプログラムを記録した記録媒体

【課題】管理コストをかけず、利用者の操作性を低下させることなく、機能の不正利用が防止できる画像処理装置、不正利用防止方法、不正利用防止プログラム、及びそのプログラムを記録した記録媒体を提供する。
【解決手段】画像処理装置100は、不正利用判定時に用いる照合データ31Dを保持する保持手段31と、受信した印刷ジョブから印刷要求者の利用者情報を取得する解析手段22と、利用者情報と照合データ31Dの登録情報とを照合する照合手段23と、利用者情報を印刷機能の許可利用者の照合データ31Dとして登録する登録手段24と、を有し、照合手段23が、印刷要求者を新規利用者と判定した場合、登録手段24が、解析結果の利用者情報を照合データ31Dとして登録し、照合手段23が、印刷要求者を登録利用者と判定した場合、照合結果に基づき、印刷処理及び/又は不正利用判定時の異常処理の実行を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置の不正利用を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置では、機器の不正利用を防止する機能を有している。例えば、特許文献1には、予め利用許可された利用者の情報を管理サーバに登録しておき、画像処理装置において、利用者が印刷機能を利用する際に、受け付けた利用者情報と管理サーバ内の登録情報とを照合することで、不正利用を防止する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の方法では、不正利用防止のために管理コストがかかり、利用者の操作性を低下させるといった問題がある。
【0004】
例えば、特許文献1に開示される方法では、不正利用防止のために、管理者が許可利用者の情報を事前に登録しなければならない。そのため、許可利用者の管理作業が煩雑化し、管理コストがかかってしまう。一方、利用者は、機能利用時に利用者情報を入力するといった操作を行わなければならない。そのため、機能利用時の操作段階が多く、操作性を低下させてしまう。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題点を鑑み提案されたものであり、管理コストをかけず、利用者の操作性を低下させることなく、機能の不正利用を防止できる画像処理装置、不正利用防止方法、不正利用防止プログラム、及びそのプログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像処理装置は、所定のデータ伝送路を介して、印刷ジョブを送信する情報処理装置と接続される画像処理装置であって、当該装置が有する印刷機能の不正利用判定時に用いる照合データを所定の記憶領域に保持する保持手段と、受信した印刷ジョブをデータ解析し、印刷要求者の利用者情報を取得する解析手段と、解析結果として取得された利用者情報と前記照合データの登録情報とを照合する照合手段と、解析結果として取得された利用者情報を印刷機能の許可利用者の照合データとして登録する登録手段と、を有し、前記照合手段が、解析結果として取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在しないと判定した場合、前記登録手段が、解析結果として取得された利用者情報を前記照合データとして登録し、前記照合手段が、解析結果として取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在すると判定した場合、印刷処理及び/又は異常処理の実行を制御することを特徴とする。
【0007】
このような構成によって、本発明に係る画像処理装置は、受信した印刷ジョブを解析し、印刷ジョブを要求した利用者の利用者情報を取得する。画像処理装置は、印刷ジョブを送信した利用者が、印刷機能を初めて利用する利用者の場合、取得した利用者情報を、当該装置が備える記憶装置の所定の記憶領域に記録し、不正利用判定時に用いる許可利用者の照合データとして登録する。また、画像処理装置は、印刷ジョブを送信した利用者が、以前に印刷機能を利用したことのある利用者の場合、取得した利用者情報と照合データの登録情報とを照合し、許可利用者による機能利用(不正利用)か否かを判定する。画像処理装置は、利用者の判定結果に基づき、印刷処理(正常時の処理)と不正利用判定時の異常処理(エラー処理)の実行を制御する。
【0008】
これによって、本発明に係る画像処理装置では、管理者が、煩雑な許可利用者の管理作業を行わなくてよく、利用者に対する機能利用時の操作を簡便にできる。その結果、管理コストをかけず、利用者の操作性を低下させることなく、機能の不正利用を防止できる。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る不正利用防止方法は、当該画像処理装置が有する印刷機能の不正利用判定時に用いる照合データを所定の記憶領域に保持する保持手段を有し、所定のデータ伝送路を介して、印刷ジョブを送信する情報処理装置と接続される画像処理装置における不正利用防止方法であって、受信した印刷ジョブをデータ解析し、印刷要求者の利用者情報を取得する解析手順と、前記解析手順により取得された利用者情報と前記照合データの登録情報とを照合する照合手順と、前記解析手順により取得された利用者情報を印刷機能の許可利用者の照合データとして登録する登録手順と、を有し、前記照合手順が、前記解析手順により取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在しないと判定した場合、前記登録手順が、前記解析手順により取得された利用者情報を前記照合データとして登録し、前記照合手順が、前記解析手順により取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在すると判定した場合、印刷処理及び/又は異常処理の実行を制御することを特徴とする。
【0010】
このような手順によって、本発明に係る不正利用防止方法は、受信した印刷ジョブを解析し、印刷ジョブを要求した利用者の利用者情報を取得し、印刷ジョブを送信した利用者が、印刷機能を初めて利用する利用者の場合、取得した利用者情報を不正利用判定時に用いる許可利用者の照合データとして登録し、一方で、印刷ジョブを送信した利用者が、以前に印刷機能を利用したことのある利用者の場合、取得した利用者情報と照合データの登録情報とを照合し、許可利用者による機能利用(不正利用)か否かを判定し、利用者の判定結果に基づき、印刷処理(正常時の処理)と不正利用判定時の異常処理(エラー処理)の実行を制御すると言う動作を実現する。
【0011】
これによって、本発明に係る不正利用防止方法では、管理コストをかけず、利用者の操作性を低下させることなく、機能の不正利用が防止可能な環境を提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受信した印刷ジョブから利用者情報を取得し、機能を初めて利用する利用者であった場合、取得した利用者情報を照合データとして登録し、以降、該利用者が機能を利用する場合、取得した利用者情報と照合データの登録情報とを照合し、不正利用か否かを判定することで、管理コストをかけず、利用者の操作性を低下させることなく、機能の不正利用を防止する画像処理装置、不正利用防止方法、不正利用防止プログラム、及びそのプログラムを記録した記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る不正利用防止機能の構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る解析取得情報の設定画面例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る照合データの例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る不正利用防止の処理手順例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る不正利用防止機能の構成例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る異常処理の設定画面例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る更新条件の設定画面例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る照合データの例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る不正利用防止の処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下「実施形態」という)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る印刷システム1の構成例を示す図である。
図1には、画像処理装置100と、1又は複数の情報処理装置200〜200(以降総称する場合「情報処理装置200」という)とが、ネットワークなどのデータ伝送路N(例えば「LAN:Local Area Network」)で接続されるシステム構成例が示されている。
【0016】
画像処理装置100は、例えば、MFP(Multifunction Peripheral)やLP(Laser Printer)などの印刷機能を有する機器である。一方、情報処理装置200は、例えば、画像処理装置100に対して印刷ジョブを送信し、印刷機能の実行を要求する機器であり、例えば、PC(Personal Computer)などである。
【0017】
以上のように、本実施形態に係る印刷システム1では、上記システム構成により、印刷サービスを提供することができる。なお、印刷システム1は、画像処理装置100と情報処理装置200とを、それぞれ複数有する構成であってもよい。
【0018】
<ハードウェア構成>
次に、上記画像処理装置100のハードウェア構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る画像処理装置100のハードウェア構成例を示す図である。
図2に示すように、画像処理装置100は、コントローラ110、操作パネル120、プロッタ130、及びスキャナ140などを備え、それぞれが相互にバスBで接続されている。
【0019】
操作パネル120は、表示部及び入力部を備えており、機器情報などの各種情報をユーザに提供したり、動作設定や動作指示などの各種ユーザ操作を受け付けたりする。プロッタ130は、画像形成部を備えており、用紙に出力画像を形成する。出力画像を形成する方式には、例えば、電子写真プロセスやインクジェット方式などがある。スキャナ140は、原稿を光学的に読み取り、読み取り画像を生成する。
【0020】
コントローラ110は、CPU(Central Processing Unit)111、記憶装置112、ネットワークI/F113、及び外部記憶I/F114などを備えており、それぞれが相互にバスBで接続されている。
【0021】
CPU111は、プログラムを実行することで装置全体を制御する。また、記憶装置112は、上記プログラムや各種データ(例えば「画像データ」)を格納し保持する。記憶装置112には、例えば、揮発性のメモリであるRAM(Random Access Memory)、不揮発性のメモリであるROM(Read Only Memory)、及び大容量の記憶領域を備えたHDD(Hard Disk Drive)などがある。RAMは、CPU111のワークエリア(プログラムやデータが一時的に読み出される記憶エリア)として機能する。ROMやHDDは、プログラムや各種データの格納先として用いられる。これにより、画像処理装置100では、CPU111がROMに格納されたプログラムをRAM上に読み出し、プログラムを実行する。
【0022】
ネットワークI/F113は、画像処理装置100をネットワークなどの所定のデータ伝送路Nに接続するためのインタフェースである。外部記憶I/F114は、外部記憶装置にあたる記録媒体114aを接続するためのインタフェースである。記録媒体114aには、例えば、SDメモリカード(SD memory card)やUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)などがある。これにより、画像処理装置100は、外部記憶I/F114を介して、記録媒体114aに格納されたプログラムやデータを読み取る。
【0023】
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置100では、上記ハードウェア構成により、印刷機能を含む各種画像処理サービス(画像処理機能)を提供することができる。
【0024】
<不正利用防止機能>
本実施形態に係る不正利用防止機能について説明する。
本実施形態に係る画像処理装置100では、受信した印刷ジョブを解析し、印刷ジョブを要求した利用者の利用者情報を取得する。画像処理装置100は、印刷ジョブを送信した利用者が、印刷機能を初めて利用する利用者の場合、取得した利用者情報を、当該装置が備える記憶装置(HDD)の所定の記憶領域に記録し、不正利用判定時に用いる許可利用者の照合データとして登録する。また、画像処理装置100は、印刷ジョブを送信した利用者が、以前に印刷機能を利用したことのある利用者の場合、取得した利用者情報と照合データの登録情報とを照合し、許可利用者による機能利用(不正利用)か否かを判定する。画像処理装置100は、利用者の判定結果に基づき、印刷処理(正常時の処理)と不正利用判定時の異常処理(以下単に「異常処理」という)の実行を制御する。本実施形態に係る画像処理装置100は、このような不正利用防止機能を有している。
【0025】
従来の方法では、不正利用防止のために、管理者が許可利用者の情報を事前に登録しなければならないため、許可利用者の管理作業が煩雑化し、管理コストがかかってしまう。一方、利用者は、機能利用時に利用者情報を入力するといった操作を行わなければならないため、機能利用時の操作段階が多く、操作性を低下させてしまう。
【0026】
そこで、本実施形態に係る画像処理装置100では、受信した印刷ジョブから利用者情報を取得し、機能を初めて利用する利用者であった場合、取得した利用者情報を照合データとして登録し、以降、該利用者が機能を利用する場合、取得した利用者情報と照合データの登録情報とを照合し、不正利用か否かを判定する仕組みとした。
【0027】
これにより、本実施形態に係る画像処理装置100では、管理者が、煩雑な許可利用者の管理作業を行わなくてよく、利用者に対する機能利用時の操作を簡便にできる。その結果、本実施形態に係る画像処理装置100では、管理コストをかけず、利用者の操作性を低下させることなく、機能の不正利用を防止できる。
【0028】
以下に、本実施形態に係る不正利用防止機能の構成とその動作について説明する。
図3は、本実施形態に係る不正利用防止機能の構成例を示す図である。
図3に示すように、本実施形態に係る不正利用防止機能は、データ通信部11、設定部21、データ解析部22、情報照合部23、情報登録部24、照合データ保持部31、印刷処理部41、及び異常処理部42などを有している。
【0029】
データ通信部11は、情報処理装置200との間でデータ通信を行う機能部である。データ通信部11は、例えば、情報処理装置200から送信された印刷ジョブを受信したり、情報処理装置200に対して、不正利用判定結果や印刷結果などの各種情報を送信したりする。
【0030】
設定部21は、印刷ジョブの解析結果として取得する情報(以下「解析取得情報」という)を設定する機能部である。設定部21は、例えば、図4に示すようなGUI(Graphical User Interface)を提供し、管理者からの設定を受け付ける。
【0031】
図4は、本実施形態に係る解析取得情報の設定画面例を示す図である。
(A)には、解析取得情報として利用者を識別する情報(以下「利用者識別情報」という)を設定する画面W1(以下「設定画面W1」という)の例、(B)には、解析取得情報として利用者に関する情報(以下「利用者関連情報」という)を設定する画面W2(以下「設定画面W2」という)の例が示されている。
【0032】
設定画面W1では、「ログオンユーザ名」、「ユーザID」、「印刷元ホスト名」、「印刷元ホストIPアドレス(Internet Protocol address)」などの取得情報が選択可能となっている。(A)に示す設定画面W1では、これらの選択項目のうち、情報処理装置200にログオンしている利用者名を表す"ログオンユーザ名"を利用者識別情報として取得する設定がなされている。また、設定画面W2では、「アイコン名」、「印刷元ホストIPアドレス」、「印刷元ホストMACアドレス(Media Access Control address)」、「ドライバ種類」などの取得情報が選択可能となっている。(B)に示す設定画面W2では、これらの選択項目のうち、印刷ジョブを生成した情報処理装置200が有するプリンタドライバ(印刷データ変換プログラム)のアイコン名を表す"アイコン名"、印刷ジョブを送信した情報処理装置200に割り当てられるネットワーク設定値を表す"印刷元ホストIPアドレス"、プリンタドライバの種類を識別する"ドライバ種類"などの複数の情報を利用者関連情報として取得する設定がなされている。
【0033】
管理者は、このような設定画面W1,W2を介して、不正利用防止の情報照合に用いる利用者情報(照合時に必要な情報)を予め設定しておくことができる。
【0034】
図3の説明に戻る。設定部21は、上記設定画面W1,W2を介して設定された利用者識別情報の指定や利用者関連情報の指定などを、印刷ジョブの解析取得情報の設定として受け付ける。設定部21は、受け付けた設定をデータ解析部22に渡す。これにより、データ解析部22には、印刷ジョブ解析時に取得する情報が設定される。
【0035】
データ解析部22は、受信した印刷ジョブをデータ解析する機能部である。印刷ジョブは、主に、利用者情報や印刷条件情報などの定義データであるヘッダデータと、印刷処理で実行される描画コマンドや画像データである印刷データとを含む。ヘッダデータは、例えば、PJLデータ(Printer Job Language data)などであり、印刷データは、例えば、PDLデータ(Page Description Language data)などである。よって、データ解析部22では、主に、ヘッダデータを解析対象とする。
【0036】
データ解析部22は、設定部21により受け付けた設定に従ってヘッダデータを解析し、解析取得情報を得る。データ解析部22は、ヘッダデータを解析し、解析取得情報として設定された利用者識別情報や利用者関連情報の定義データを抽出し、これらの情報を取得する。データ解析部22は、解析取得情報を照合部21に渡す。
【0037】
情報照合部23は、解析取得情報(取得した利用者情報)と不正利用防止の照合データとして登録されている登録情報とを照合する機能部である。情報照合部23は、次のように情報照合を行う。
【0038】
情報照合部23は、照合データ保持部31にアクセスし、解析取得情報の利用者識別情報に基づき、印刷ジョブを要求した利用者(以下「印刷要求者」という)が、照合データ内に登録された利用者(以下「登録済み利用者」という)か否かを判定する。情報照合部23は、印刷要求者の利用者識別情報が照合データ内に存在しない場合、印刷機能を初めて利用する利用者(以下「新規利用者」という)であると判定する。一方、情報照合部23は、印刷要求者の利用者識別情報が照合データ内に存在する場合、以前に印刷機能を利用したことのある利用者(以下「許可利用者」という)であると判定する。つまり、情報照合部23では、まず、印刷要求者が印刷機能の新規利用者か否かを判定する。
【0039】
ここで、情報照合部23が、印刷要求者が印刷機能の新規利用者であると判定した場合、情報登録部24に対して解析取得情報を渡し、照合データの登録を要求する。
【0040】
情報登録部24は、解析取得情報を照合データとして登録する機能部である。情報登録部24は、照合データ保持部31にアクセスし、保持される照合データ31Dに対して、受け付けた要求に従った所定のデータ操作を行う。なお、照合データ保持部31は、例えば、画像処理装置100が備える記憶装置(HDD)の所定の記憶領域にあたる。
【0041】
ここで、照合データ保持部31が保持する照合データについて説明する。
図5は、本実施形態に係る照合データ31Dの例を示す図である。
図5に示すように、照合データ31Dは、利用者識別及び利用者関連の各情報項目が対応づけられており、利用者ごとに管理されている。
【0042】
[利用者識別]項目は、利用者識別情報を登録する項目であり、項目値は、例えば、"ログオンユーザ名"(UserXX)などの利用者識別情報などである。また、[利用者関連]項目は、利用者関連情報を登録する項目であり、項目値は、例えば、"アイコン名"(PRINTERXX)、"印刷元ホストIPアドレス"(192.168.XX.XXX)、"ドライバ種類"(DRIVERXX)などの利用者関連情報などである。
【0043】
このように、照合データ31Dは、設定部21により設定された解析取得情報からなるデータである。よって、管理者は、設定部21により、どのような利用者情報を解析取得情報とするかを設定することで、照合データ31Dの情報項目の構成を設定することになる。
【0044】
図3の説明に戻る。情報登録部24は、情報登録部24は、上記照合データ31Dに対し、データ登録要求に従って、解析取得情報の利用者識別情報と利用者関連情報とを対応づけ、該当情報項目値の記憶領域に記録し(書き込み)、照合データ31Dとして登録する。情報登録部24は、印刷要求者の照合データを登録後、印刷処理部41に対して該利用者の印刷ジョブの実行を要求する。
【0045】
これにより、本実施形態に係る画像処理装置100では、印刷要求者が印刷機能の新規利用者であった場合、受信した印刷ジョブの解析取得情報が、次回から用いる不正利用防止の照合データ31Dとして自動的に登録される。よって、本実施形態に係る画像処理装置100では、不正利用防止の情報照合に用いる利用者情報(照合時に必要な情報)を、不正利用防止機能の実行前に設定しておくだけでよく、管理者が許可利用者の情報を利用者ごとに事前登録しなくてもよい。その結果、管理者が、煩雑な許可利用者の管理作業を行わなくてよい。
【0046】
情報照合部23の説明に戻る。情報照合部23が、印刷要求者が印刷機能の新規利用者でないと判定した場合には、照合データ31D内に印刷要求者に該当する登録情報が存在することになる。よって、情報照合部23は、解析取得情報の利用者識別情報から照合データ31Dにおける印刷要求者の利用者関連情報(登録情報)を特定する。情報照合部23は、特定した利用者関連情報と、解析取得情報の利用者関連情報とを照合する。情報照合部23は、照合結果に基づき、許可利用者による機能利用か否か(不正利用)を判定する。情報照合部23は、照合結果が「一致」の場合、許可利用者による機能利用である(正常な印刷機能利用)と判定する。一方、情報照合部23は、照合結果が「不一致」の場合、許可利用者による機能利用でない(不正な印刷機能利用)と判定する。情報照合部23は、許可利用者の判定結果(不正利用判定結果)に基づき、印刷処理部41及び/又は異常処理部42に対して処理の実行を要求する。つまり、情報照合部23は、照合結果に基づき、印刷処理と異常処理の実行を制御する。
【0047】
これにより、本実施形態に係る画像処理装置100では、受信した印刷ジョブの解析取得情報と照合データ31Dの登録情報とが自動的に照合される。よって、本実施形態に係る画像処理装置100では、利用者が機能利用時に利用者情報を入力するといった操作を行わなくてよい。その結果、利用者に対する機能利用時の操作を簡便にできる。
【0048】
なお、本実施形態では、許可利用者の判定(不正利用判定)において、複数の項目値を有する利用者関連情報を照合する例を示した。この場合、2通りの許可利用者の判定方法(不正利用判定方法)が挙げられる。
【0049】
例えば、利用者関連情報の項目値が「AND」条件で設定されている場合には、項目値のいずれか1つでも不一致であれば、許可利用者による機能利用でない(不正な印刷機能利用)と判定する。また、例えば、利用者関連情報の項目値が「OR」条件で設定されている場合には、項目値のいずれか1つでも一致すれば、許可利用者による機能利用である(正常な印刷機能利用)と判定する。このような判定方法の条件は、設定部21により、解析取得情報とともに設定すればよい。
【0050】
印刷処理部41は、受信した印刷ジョブを実行する機能部である。印刷処理部41は、例えば、PDLパーサ(印刷データ処理プログラム)などにより実現される機能である。印刷処理部41は、印刷ジョブの印刷データから画像処理装置100が備えるプロッタ130で処理可能なデータ(ラスタイメージデータ:ビットマップデータ)を生成する。よって、プロッタ130では、印刷処理部41から転送された生成データに基づき、画像形成が行われる。
【0051】
異常処理部42は、不正利用に対する異常処理を実行する機能部である。異常処理部42は、例えば、印刷ジョブを送信した情報処理装置200に対して、不正利用の旨を通知する。この場合、異常処理部42は、不正利用と判定された印刷利用者の解析取得情報に含まれる利用者関連情報の"印刷元ホストIPアドレス"に基づき、不正利用の旨を示す通知情報をメッセージ送信する。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る不正利用防止機能は、上記各機能部が連携動作することにより実現される。なお、本実施形態に係る不正利用防止機能は、画像処理装置100に搭載(インストール)されるプログラム(不正利用防止機能を実現するソフトウェア)が、演算装置(CPU)により、記憶装置(ROM)からメモリ(RAM)上に読み出され、以下の処理が実行されることで実現される。
【0053】
本実施形態に係る不正利用防止機能の詳細な動作(機能部群の連携動作)について、処理手順を示すフローチャートを用いて説明する。
【0054】
《不正利用防止処理》
図6は、本実施形態に係る不正利用防止の処理手順例を示すフローチャートである。なお、図6には、管理者により、設定部21を介して、利用者識別情報及び利用者関連情報が解析取得情報として設定されている場合の例である。
【0055】
図6に示すように、画像処理装置100は、データ通信部11により、情報処理装置200から印刷ジョブを受信すると(ステップS101:YES)、データ解析部22により、受信した印刷ジョブを解析する(ステップS102)。このとき、データ解析部22は、設定部22による設定に従って、印刷ジョブのヘッダデータを解析し、抽出した該当定義データから、利用者識別情報及び利用者関連情報を取得する。データ解析部22は、解析結果として取得した利用者識別情報及び利用者関連情報を、情報照合部23に渡す。
【0056】
画像処理装置100は、情報照合部23により、照合データ保持部31にアクセスし、保持される照合データ31Dを参照する(ステップS103)。このとき、情報照合部23は、解析結果として取得した利用者識別情報に基づき、照合データ31Dを参照する。
【0057】
画像処理装置100は、情報照合部23により、照合データ31D内の該当利用者識別情報の有無から、印刷要求者が登録済み利用者か否かを判定する(ステップS104)。
【0058】
画像処理装置100は、情報照合部23が、印刷要求者が登録済み利用者でない(新規利用者である)と判定した場合(ステップS104:NO)、情報登録部24により、解析結果として取得した利用者識別情報及び利用者関連情報を、印刷利用者の照合データ31Dとして登録する(ステップ105)。このとき、情報登録部24は、照合データ保持部31にアクセスし、利用者識別情報と利用者関連情報とを対応づけ、該当情報項目値の記憶領域に記録し、照合データ31Dとして登録する。情報登録部24は、印刷処理部41に対して、印刷要求者の印刷ジョブの実行を要求する。その結果、画像処理装置100では、印刷処理部41により、データ解析部22から受け取った印刷ジョブが実行され、印刷処理が行われる(ステップS106)。
【0059】
一方、画像処理装置100は、情報照合部23が、印刷要求者が登録済み利用者である(新規利用者でない)と判定した場合(ステップS104:YES)、同機能部23により、解析結果として取得した利用者関連情報と照合データ31Dの登録情報とを照合する(ステップS107)。このとき、情報照合部23は、解析結果として取得した利用者関連情報と照合データ31D内の該当利用者識別情報に対応づけられた利用者関連情報とを照合し、照合結果に基づき、許可利用者による機能利用か否か(不正利用)を判定する(ステップS108)。
【0060】
画像処理装置100は、情報照合部23による照合結果が「一致」の場合(ステップS108:YES)、許可利用者による機能利用である(正常な印刷機能利用)と判定し、印刷処理部41に対して、印刷要求者の印刷ジョブの実行を要求する。その結果、画像処理装置100では、印刷処理部41により、データ解析部22から受け取った印刷ジョブが実行され、印刷処理が行われる(ステップS106)。
【0061】
一方、画像処理装置100は、情報照合部23による照合結果が「不一致」の場合(ステップS108:NO)、許可利用者による機能利用でない(不正な印刷機能利用)と判定し、異常処理部42に対して、不正利用に対する異常処理の実行を要求する。その結果、画像処理装置では、異常処理部42により、不正利用の旨を示す通知情報のメッセージ送信が実行され、異常処理が行われる(ステップS109)。
【0062】
<まとめ>
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置100によれば、データ通信部11により受信した印刷ジョブをデータ解析部21により解析し、印刷要求者の利用者情報を取得する。画像処理装置100は、情報照合部23により、印刷要求者が新規利用者と判定された場合、情報登録部24により、取得した利用者情報を照合データ保持部31に記録し、不正利用判定時に用いる許可利用者の照合データ31Dとして登録する。また、画像処理装置100は、情報照合部23により、印刷要求者が登録済み利用者として判定された場合、取得した利用者情報と照合データ31Dの登録情報とを照合し、許可利用者による機能利用か否かを判定する。画像処理装置100は、情報照合部23による照合結果に基づき、印刷処理部41による印刷処理と異常処理部42による異常処理の実行を制御する。
【0063】
これによって、本実施形態に係る画像処理装置100では、管理者が利用者の煩雑な管理作業を行わなくてよく、利用者に対する機能利用時の操作を簡便にできる。その結果、本実施形態に係る画像処理装置100では、管理コストをかけず、利用者の操作性を低下させることなく、機能の不正利用を防止できる。
【0064】
[第2の実施形態]
厳格に不正利用を防止することを考えれば、第1の実施形態で示したように、許可利用者の判定結果(照合結果)に基づき、印刷要求者の印刷ジョブの実行を行うか否かを制御することが望ましい。
【0065】
しかし、実際の不正利用防止機能の運用は、導入先の環境に依存することから、不正利用防止機能にある程度の柔軟性が求められる。例えば、管理者は、印刷機能の利用者の利便性に悪影響を及ぼすことのない程度で不正利用防止機能を運用したい。このような場合、不正利用防止機能では、不正利用と判定された際に、単に印刷処理を行わず不正利用の情報通知を印刷要求者に行うのではなく、例えば、印刷処理を継続しながら、不正利用と判定された印刷要求者の処理を記録するなどの異常処理のバリエーションが求められる。
【0066】
また、導入先の環境では、利用者が印刷時に使用する情報処理装置が変更されることも考えられる。このような場合、不正利用防止機能では、情報処理装置の変更に伴い不正利用と判定された場合であっても、所定の条件を満たせば、照合データの登録情報を自動的に更新するなどのデータ処理が求められる。
【0067】
そこで、本実施形態に係る画像処理装置では、不正利用と判定された際に実行する印刷処理及び/又は異常処理と照合データの登録情報の更新条件とを設定可能な仕組みとした。
【0068】
これにより、本実施形態に係る画像処理装置では、管理作業の簡便性や利用者の利便性を低下させることなく不正利用防止機能を運用でき、機能の不正利用を抑制できる。
【0069】
なお、以降では、第1の実施形態と異なる事項についてのみ説明を行う。同じ事項については、同一参照符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
<不正利用防止機能>
図7は、本実施形態に係る不正利用防止機能の構成例を示す図である。
図3に示した機能構成との違いは、印刷機能の利用履歴を記録する利用履歴記録部25と、照合データ31Dの登録情報を更新する条件(以下「更新条件」という)を判定する更新条件判定部26と、を有する点である。また、設定部21が、データ解析部22の他に、異常処理部42及び更新条件判定部26に制御情報を設定する点においても異なる。
【0071】
設定部21は、例えば、図8や図9に示すようなGUIを提供し、管理者からの設定を受け付ける。
【0072】
図8は、本実施形態に係る異常処理の設定画面例を示す図である。
(A)及び(B)には、不正利用に対する異常処理の指定情報(以下「異常処理指定情報」という)を設定する画面W31,W32(以下「設定画面W31,W32」という)の例が示されている。
【0073】
設定画面W31では、「利用者に通知」、「管理者に通知」、「処理を記録」、「登録情報を更新」などの不正利用と判定された際に実行する異常処理が選択可能となっている。(A)に示す選択画面W31では、これらの選択項目のうち、印刷要求者(利用者)に対して不正利用の旨を通知する異常処理の設定がなされている。また、設定画面W32では、「印刷を継続」、「印刷を禁止」、「モノクロ印刷」、「両面印刷」などの不正利用と判定された際に実行する印刷処理が設定可能となっており、「利用者に通知」、「管理者に通知」、「処理を記録」、「登録情報を更新」などの不正利用と判定された際に実行する異常処理が設定可能となっている。(B)に示す設定画面W32では、印刷処理を実行し、その処理を記録し、かつ所定の条件を満たせば照合データ31Dの登録情報を更新する異常処理の設定がなされている。
【0074】
このように、不正利用に対する異常処理の設定は、幾つかのバリエーションを有している。設定画面W31は、不正利用と判定された際の印刷処理に関する設定を受け付けないことから、管理者が、不正利用防止機能を厳格に運用したい場合に用いればよい。一方、設定画面W32は、不正利用と判定された際の印刷処理及び異常処理に関する設定を受け付けることから、管理者が、ある程度の柔軟性をもって不正利用防止機能を運用したい場合に用いればよい。
【0075】
管理者は、このような設定画面W31,W32を介して、不正利用と判定された際に実行する印刷処理及び/又は異常処理を、不正利用防止機能の運用に応じて設定することができる。
【0076】
図9は、本実施形態に係る更新条件の設定画面例を示す図である。
図9には、照合データ31Dの登録情報の更新条件を設定する画面W4(以下「設定画面W4」という)の例が示されている。
【0077】
設定画面W4は、設定画面W32の選択項目「登録情報を更新」が選択され、[詳細]ボタンが押下された際に提供される画面である。
【0078】
設定画面W4では、「利用回数がN回以上」、「利用期間がN日間以上」、「利用頻度がN%以上」、「印刷元ホストIPアドレスの範囲」、「常に更新」などの更新条件が設定可能となっている。図9に示す設定画面W4では、不正利用と判定された場合であっても、印刷機能の利用回数がN回以上又は印刷機能の利用期間がN日間以上であれば、解析取得情報に基づき照合データ31Dの登録情報を更新する更新条件の設定がなされている。
【0079】
管理者は、このような設定画面W4を介して、照合データ31Dの登録情報の更新条件を、不正利用防止機能の運用に応じて設定することができる。
【0080】
なお、図8や図9に示したとおり、上記設定画面W31,W32,W4では、項目を複数選択することも可能である。つまり、管理者は、複数の処理や複数の更新条件を組み合わせて、不正利用機能を運用することができる。ただし、選択項目の組み合わせによっては、排他制御される。例えば、不正利用と判定された際に実行する印刷処理を指定する選択項目については、「印刷を継続」と「印刷を禁止」との選択可否が排他制御される。
【0081】
図7の説明に戻る。設定部21は、上記設定画面W31,W32,W4を介して設定された印刷処理及び/又は異常処理の指定や照合データ31Dの登録情報の更新条件の指定などを、不正利用と判定された際に実行する処理の制御設定として受け付ける。設定部21は、受け付けた設定を異常処理部42及び/又は情報照合部23に渡す。具体的には、印刷処理及び/又は異常処理の指定は、制御情報として異常処理部42に渡される。また、照合データ31Dの登録情報の更新条件の指定は、制御情報として更新条件判定部26に渡される。これにより、異常処理部42には、不正利用と判定された際に実行する印刷処理及び/又は異常処理が設定される。また、更新条件判定部26には、照合データ31Dの登録情報の更新条件が設定される。
【0082】
その結果、異常処理部42は、情報照合部23で不正利用と判定されると、設定部21により受け付けた設定に従って異常処理を実行する。また、異常処理部42は、設定部21から、不正利用と判定された際に印刷を継続する制御設定を受け取った場合に、印刷処理部41に対して印刷処理の実行を要求する。また、異常処理部42は、設定部21から、不正利用と判定された際に照合データ31Dの登録情報を更新する制御設定を受け取った場合に、該当利用者の利用者識別情報を更新条件判定部26に渡し、更新条件判定処理の実行を要求する。
【0083】
ここで、本実施形態に係る照合データ31Dについて説明する。
図10は、本実施形態に係る照合データ31Dの例を示す図である。
図10に示すように、照合データ31Dは、利用者識別及び利用者関連の各情報項目に、利用履歴の情報項目が対応づけられており、利用者ごとに管理されている。
【0084】
[利用履歴]項目は、印刷機能の利用履歴(以下「利用履歴情報」という)が記録される項目であり、項目値は、例えば、最初の利用日付と最終の利用日付とを含む利用期間の日付情報、利用回数情報、印刷元ホストである情報処理装置200のネットワーク設定情報などである。
【0085】
このように、[利用履歴]項目の項目値には、利用履歴記録部25により、照合データ31Dの登録情報を更新するか否かの条件判定に用いる情報(更新条件を判定するために必要な情報)が記録される。なお、利用履歴記録部25は、利用日付を当該装置が備える内部時計からの取得値により記録する。また、利用履歴記憶部25は、利用回数を印刷処理部41からの取得値により記録する。
【0086】
図7の説明に戻り、更新条件判定部26による更新条件判定処理について説明する。
まず、ここで、本実施形態で想定する照合データ31Dの登録情報を更新する場面について説明する。例えば、図10に示す照合データ31Dを情報照合時に用いた場合、次のような判定結果が想定される。
【0087】
利用者01(User01)が、使用する情報処理装置200を、IPアドレス"192.168.XX.XX1"が割り当てられた情報処理装置200から、IPアドレス"192.168.XX.XX2"が割り当てられた情報処理装置200に変更したとする。この場合、情報照合部23は、利用者01により送信された印刷ジョブから取得した利用者関連情報と、照合データ31D内で該当する利用者関連情報とを照合すると、"印刷元ホストIPアドレス"の項目値と、取得した利用者関連情報のIPアドレス値とが異なることから、許可利用者による機能利用でないと判定してしまう。
【0088】
また、正規の利用者01よりも先に利用者01になりすました不正利用者が、印刷機能の利用を要求した場合、不正利用者により送信された印刷ジョブの解析取得情報に基づき、照合データ31Dが登録される。この場合、情報照合部23は、利用者01により送信された印刷ジョブから取得した利用者関連情報と照合データ31D内で該当する利用者関連情報とを照合すると、登録された利用者関連情報の項目値と取得した利用者関連情報の項目値とが異なることから、許可利用者による機能利用でないと判定してしまう。
【0089】
上記のとおり、このような場面では、許可利用者である利用者01からの印刷機能利用が、不正利用とされてしまう。
【0090】
従来では、このような場面に対応するため、管理者が、利用者の環境変化に応じて、その都度、照合データ31Dの該当項目値を更新しなければならず、煩雑な管理作業が強いられる。
【0091】
そのため、本実施形態では、利用者の環境変化や不正利用者の機能利用要求の受付などに伴い、正規の利用者(許可利用者)に対して不正利用が判定された場合であっても、設定された更新条件を満たせば、自動的に照合データ31Dの該当項目値を更新する。
【0092】
更新条件判定部26は、次のような更新条件判定処理を行う。
まず、更新条件判定部26では、情報照合部23により不正利用と判定された印刷要求者の利用履歴情報を、利用者識別情報と対応づけて照合データ31Dと異なる記憶領域に記録し、一時的に保持する。更新条件判定部26は、不正利用と判定された印刷要求者の利用者識別情報に基づき、一時的に保持している利用履歴情報を参照する。更新条件判定部26は、設定部21により受け付けた更新条件の設定に従って、参照した利用履歴情報に基づき、設定された更新条件が満たされているか否かを判定する。更新条件判定部26は、設定された更新条件が満たされていれば、情報登録部24に対して、不正利用と判定された際に受信した印刷ジョブの解析取得情報(不正利用と判定された印刷要求者の利用者情報)に基づく照合データ31Dの登録情報の更新を要求する。
【0093】
例えば、更新条件判定部26は、「利用回数がN回以上」の更新条件が設定されている場合、参照した利用履歴情報の利用回数が、予め設定されている閾値N以上か否かを判定する。また、更新条件判定部26は、「利用期間がN日間以上」の更新条件が設定されている場合、一時的に保持している利用履歴情報の利用期間(最初の利用日付から前回利用(最終)の利用日付までの日数)が、予め設定されている閾値N以上か否かを判定する。その結果、更新条件判定部26は、閾値N以上であった場合に、情報登録部24に対して、不正利用と判定された際の解析取得情報による登録情報の更新を要求する。
【0094】
例えば、更新条件判定部26は、「印刷元ホストIPアドレスの範囲」の更新条件が設定されている場合、一時的に保持している利用履歴情報のIPアドレス値が、予め設定されている範囲[192.168.XX.X11−X20]に該当するか否かを判定する。その結果、更新条件判定部26は、範囲内であった場合(設定範囲に該当した場合)に、情報登録部24に対して、不正利用と判定された際の解析取得情報による登録情報の更新を要求する。
【0095】
また、更新条件判定部26は、「利用頻度がN%以上」の更新条件が設定されている場合、更新条件判定部26は、照合データ31Dに記録された利用履歴情報の利用回数と一時的に保持している利用履歴情報の利用回数とを総和した値により、それぞれの利用回数を除算して利用頻度を算出する。つまり、更新条件判定部26は、同一利用者において、不正利用と判定されなかった場合と不正利用と判定された場合との合計利用回数に対し、不正利用と判定された場合の利用回数が占める割合を利用頻度として算出する。更新条件判定部26は、算出した利用頻度が、閾値N以上か否かを判定する。その結果、更新条件判定部26は、閾値N以上であった場合に、情報登録部24に対して、不正利用と判定された際の解析取得情報による登録情報の更新を要求する。
【0096】
このように、本実施形態に係る画像処理装置100では、不正利用と判定された際に実行する印刷処理及び/又は異常処理を設定可能とし、不正利用と判定された際に管理者が所望する処理が実行されることから、利用者の利便性を低下させることなく、不正利用防止機能を運用することができる。また、本実施形態に係る画像処理装置100では、照合データ31Dの更新条件を設定可能とし、更新条件を満たせば登録情報が自動更新されることから、管理作業の簡便性を低下させることなく、不正利用防止機能を運用することができる。
【0097】
以上のように、本実施形態に係る不正利用防止機能は、上記各機能部が連携動作することにより実現される。
【0098】
本実施形態に係る不正利用防止機能の詳細な動作(機能部群の連携動作)について、処理手順を示すフローチャートを用いて説明する。
【0099】
《不正利用防止処理》
図11は、本実施形態に係る不正利用防止の処理手順例を示すフローチャートである。なお、図11には、管理者により、設定部21を介して、不正利用と判定された際に実行する印刷処理「印刷を継続」、及び異常処理「処理を記録」、「登録情報を更新」が制御情報として設定されている場合の例である。また、管理者により、設定部21を介して、不正利用と判定された際の照合データ31Dの登録情報の更新条件「利用回数がN回以上」が制御情報として設定されている場合の例である。
【0100】
図11に示す処理手順と図6に示した処理手順との違いは、ステップS207からS211までの処理である。よって、ステップS201からS206までの処理については、その説明を省略する。
【0101】
図11に示すように、画像処理装置100は、情報照合部23が、印刷要求者が登録済み利用者である(新規利用者でない)と判定した場合(ステップS204:YES)、同機能部23により、解析結果として取得した利用者関連情報と照合データ31Dの登録情報とを照合する(ステップS207)。このとき、情報照合部23は、解析結果として取得した利用者関連情報と照合データ31D内の該当利用者識別情報に対応づけられた利用者関連情報とを照合し、照合結果に基づき、許可利用者による機能利用か否か(不正利用)を判定する(ステップS208)。
【0102】
画像処理装置100は、情報照合部23による照合結果が「不一致」の場合(ステップS208:NO)、許可利用者による機能利用でない(不正な印刷機能利用)と判定し、異常処理部42に対して、不正利用に対する異常処理の実行を要求する。その結果、画像処理装置では、異常処理部42により、設定部21により受け付けた設定に従って異常処理が実行される(ステップS209)。
【0103】
このとき、異常処理部42は、不正利用と判定された際に印刷を継続する制御設定に従って、印刷処理部41に対し、印刷処理の実行を要求する。その結果、画像処理装置100では、不正利用と判定された場合であっても、印刷処理部41により、データ解析部22から受け取った印刷ジョブが実行され、印刷処理が行われる。
【0104】
また、異常処理部42は、不正利用と判定された際に実行された印刷処理(不正利用と判定された印刷要求者の処理)を記録する制御設定に従って、利用履歴記録部25に対し、印刷機能の利用履歴の記録処理を要求する。その結果、画像処理装置100では、利用履歴記録部25により、印刷処理部41で実行された印刷処理が記録される。
【0105】
また、異常処理部42は、不正利用と判定された際に照合データ31Dの登録情報を更新する制御設定を受け取った場合に、該当利用者の利用者識別情報を更新条件判定部26に渡し、更新条件判定処理の実行を要求する。その結果、画像処理装置100では、更新条件判定部26により、照合データ31Dの登録情報の更新条件が満たされているか否かが判定される(ステップS210)。
【0106】
このとき、更新条件判定部26は、情報照合部23により不正利用と判定された印刷要求者の利用履歴情報を、利用者識別情報と対応づけて一時的に保持する。更新条件判定部26は、不正利用と判定された印刷要求者の利用者識別情報に基づき、一時的に保持している利用履歴情報を参照する。更新条件判定部26は、利用回数がN回以上の更新条件設定に従って、参照した利用履歴情報の利用回数が閾値N以上か否かを判定する。更新条件判定部26は、利用回数が閾値N以上であった場合、更新条件が満たされていると判定する。
【0107】
画像処理装置100は、更新条件判定部26により、更新条件が満たされていると判定された場合(ステップS210:YES)、情報登録部24に対して、不正利用と判定された際に受信した印刷ジョブの解析取得情報に基づく照合データ31Dの登録情報の更新を要求する。その結果、画像処理装置100では、情報登録部24により、解析取得情報による登録情報の更新処理が実行される(ステップS211)。つまり、情報登録部24は、解析取得情報によって照合データ31Dの該当登録情報を上書きする。
【0108】
なお、画像処理装置100では、更新条件判定部26により、更新条件が満たされていないと判定された場合(ステップS210:NO)、照合データ31Dの登録情報の更新処理が行われない。
【0109】
<まとめ>
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置100によれば、データ通信部11により受信した印刷ジョブをデータ解析部21により解析し、印刷要求者の利用者情報を取得する。画像処理装置100は、情報照合部23により、印刷要求者が新規利用者と判定された場合、情報登録部24により、取得した利用者情報を照合データ保持部31に記録し、不正利用判定時に用いる許可利用者の照合データ31Dとして登録する。また、画像処理装置100は、情報照合部23により、印刷要求者が登録済み利用者として判定された場合、取得した利用者情報と照合データ31Dの登録情報とを照合し、許可利用者による機能利用か否かを判定する。画像処理装置100は、情報照合部23による照合結果に基づき、印刷処理部41による印刷処理と異常処理部42による異常処理の実行を制御する。
【0110】
その中で、画像処理装置100では、照合結果から不正利用と判定された場合、印刷処理及び/又は異常処理の制御設定に従って、印刷処理部41及び異常処理部42による処理が実行される。また、画像処理装置100では、照合結果から不正利用と判定された場合、照合データ31Dの登録情報の更新条件設定に従って、更新条件判定部26により更新条件が判定され、情報登録部24により判定結果に基づき照合データ31Dの登録情報が更新される。
【0111】
これによって、本実施形態に係る画像処理装置100では、第1の実施形態と同様の効果を奏するとともに、管理作業の簡便性や利用者の利便性を低下させることなく不正利用防止機能を運用でき、機能の不正利用を抑制できる。
【0112】
ここまで、上記実施形態の説明を行ってきたが、上記実施形態に係る「不正利用防止機能」は、図を用いて説明を行った各処理手順を、動作環境(プラットフォーム)にあったプログラミング言語でコード化したプログラムが、画像処理装置100が備える演算装置(CPU)により実行されることで実現される。
【0113】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体114aに格納することができる。これにより、例えば、上記プログラムは、外部記憶I/F114を介して、画像処理装置100にインストールすることができる。また、画像処理装置100は、ネットワークI/F113を備えていることから、電気通信回線を用いて上記プログラムをダウンロードし、インストールすることもできる。
【0114】
また、上記実施形態では、不正利用を防止する対象機能として印刷機能を例に説明を行ったが、この限りでない。例えば、画像処理装置100が有する各種画像処理機能を対象としてもよい。よって、本実施形態に係る画像処理装置100は、例えば、画像読み取り機能を有する機器などであってもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、情報処理装置200についてPCなどを例に説明を行ったが、この限りでない。例えば、PDA(Personal Digital Assistant)などの情報端末であってもよい。
【0116】
また、上記不正利用防止機能は、例えば、プルプリントシステムにも適用できる。プルプリントシステムとは、情報処理装置200からの印刷ジョブを管理サーバに蓄積し、画像処理装置100から管理サーバに蓄積された印刷ジョブを取得し、取得した印刷ジョブを実行することで、印刷サービスを実現するシステムである。この場合、上記不正利用防止機能は管理サーバが有することになり、印刷処理部41からは、管理サーバに接続される画像処理装置100に対して、許可された印刷ジョブ(不正利用と判定されなかった利用者の印刷ジョブ)が送信され、印刷ジョブの実行が要求されることになる。よって、上記不正利用防止機能は、管理サーバなどのような装置であっても実現可能である。
【0117】
最後に、上記実施形態に挙げた形状や構成に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した要件に、本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0118】
1 印刷システム
11 データ通信部
21 設定部
22 データ解析部
23 情報照合部
24 情報登録部
25 利用履歴記録部
26 更新条件判定部
31 照合データ保持部(D:照合データ)
41 印刷処理部
42 異常処理部
100 画像処理装置
110 コントローラ(制御基板)
111 CPU(演算装置)
112 記憶装置(ROM,RAM,HDD)
113 ネットワークI/F
114 外部記憶I/F(a:記録媒体)
120 操作パネル
130 プロッタ
140 スキャナ
200 情報処理装置
B バス
N データ伝送路(ネットワーク)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2009−157531号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のデータ伝送路を介して、印刷ジョブを送信する情報処理装置と接続される画像処理装置であって、
当該装置が有する印刷機能の不正利用判定時に用いる照合データを所定の記憶領域に保持する保持手段と、
受信した印刷ジョブをデータ解析し、印刷要求者の利用者情報を取得する解析手段と、
解析結果として取得された利用者情報と前記照合データの登録情報とを照合する照合手段と、
解析結果として取得された利用者情報を印刷機能の許可利用者の照合データとして登録する登録手段と、を有し、
前記照合手段が、解析結果として取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在しないと判定した場合、前記登録手段が、解析結果として取得された利用者情報を前記照合データとして登録し、
前記照合手段が、解析結果として取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在すると判定した場合、印刷処理及び/又は異常処理の実行を制御することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
解析結果として取得する利用者情報を設定する取得情報設定手段を有し、
前記解析手段は、
受信した印刷ジョブのデータから、前記取得情報設定手段により設定された利用者情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記登録手段は、
前記取得情報設定手段による設定に従って取得された利用者情報に含まれる印刷要求者の利用者識別情報と利用者関連情報とを対応づけ、許可利用者の照合データとして登録することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記照合手段は、
前記保持手段にアクセスし、解析結果として取得された利用者識別情報から前記照合データにおける印刷要求者の利用者関連情報を特定し、解析結果として取得された利用者関連情報と特定した利用者関連情報との照合結果に基づき、許可利用者による機能利用か否かを判定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記印刷処理は、
前記登録手段により前記照合データが登録された場合、及び/又は、前記照合手段による照合結果が一致し、許可利用者による機能利用であると判定された場合に実行されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記異常処理は、
前記照合手段による照合結果が不一致で、許可利用者による機能利用でないと判定された場合に実行されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
実行する前記印刷処理及び/又は前記異常処理を設定する実行処理設定手段を有し、
前記印刷処理及び/又は前記異常処理は、
前記照合手段により許可利用者による機能利用でないと判定された場合に、
前記実行処理設定手段により設定された処理が実行されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
利用者による印刷機能の利用履歴情報を所定の記憶領域に記録する記録手段と、
前記照合データの登録情報の更新条件を設定する更新条件設定手段と、
前記照合データの登録情報を更新するか否かを判定する更新条件判定手段と、を有し、
前記更新条件判定手段は、
前記照合手段により許可利用者による機能利用でないと判定された場合に、
前記記録手段により記録された印刷要求者の利用履歴情報に基づき、前記更新条件設定手段により設定された更新条件が満たされているか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記登録手段は、
前記更新条件判定手段により更新条件が満たされていると判定された場合に、
解析結果として取得された利用者情報により、前記照合データの登録情報を更新することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
当該画像処理装置が有する印刷機能の不正利用判定時に用いる照合データを所定の記憶領域に保持する保持手段を有し、所定のデータ伝送路を介して、印刷ジョブを送信する情報処理装置と接続される画像処理装置における不正利用防止方法であって、
受信した印刷ジョブをデータ解析し、印刷要求者の利用者情報を取得する解析手順と、
前記解析手順により取得された利用者情報と前記照合データの登録情報とを照合する照合手順と、
前記解析手順により取得された利用者情報を印刷機能の許可利用者の照合データとして登録する登録手順と、を有し、
前記照合手順が、前記解析手順により取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在しないと判定した場合、前記登録手順が、前記解析手順により取得された利用者情報を前記照合データとして登録し、
前記照合手順が、前記解析手順により取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在すると判定した場合、印刷処理及び/又は異常処理の実行を制御することを特徴とする不正利用防止方法。
【請求項11】
当該画像処理装置が有する印刷機能の不正利用判定時に用いる照合データを所定の記憶領域に保持する保持手段を有し、所定のデータ伝送路を介して、印刷ジョブを送信する情報処理装置と接続される画像処理装置における不正利用防止プログラムであって、
コンピュータを、
受信した印刷ジョブをデータ解析し、印刷要求者の利用者情報を取得する解析手段と、
前記解析手段により取得された利用者情報と前記照合データの登録情報とを照合する照合手段と、
前記解析手段により取得された利用者情報を印刷機能の許可利用者の照合データとして登録する登録手段として機能させ、
前記照合手段が、前記解析手段により取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在しないと判定した場合、前記登録手段が、前記解析手段により取得された利用者情報を前記照合データとして登録し、
前記照合手段が、前記解析手段により取得された利用者情報に該当する前記登録情報が前記照合データに存在すると判定した場合、印刷処理及び/又は異常処理の実行を制御するように動作させる不正利用防止プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記憶した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−128703(P2012−128703A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280072(P2010−280072)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】