説明

画像処理装置、及び画像処理方法

【課題】 より高い画質を実現することができる画像処理装置、及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る画像処理装置は、複数の画素がマトリクス状に配置された液晶パネルに表示する画像を処理する画像処理装置であって、前記液晶パネルの温度を検出する温度センサと、映像信号を受信する受信部と、前記受信部により受信した前記映像信号の連続する前フレーム及び後フレームの階調の組み合わせに応じた電圧を出力する電圧値テーブルと、前記前フレーム及び前記後フレームの階調の組み合わせと、前記温度センサにより検出された前記温度とに応じたゲインを出力するゲインテーブルと、前記電圧値テーブルから出力された前記電圧と、前記ゲインテーブルから出力された前記ゲインとに基づいてオーバードライブを行い、オーバードライブされた電圧を前記液晶パネルに出力するオーバードライブ出力部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の映像を表示することができる液晶表示装置が一般的に普及している。液晶表示装置は、マトリクス状に配列された複数の画素を備える液晶表示パネルと、この液晶パネルを照明するバックライトとを備える。液晶表示装置は、液晶表示パネルの各画素毎に電圧を印加することにより、各画素の階調(輝度)を制御することが出来る。
【0003】
液晶表示装置は、表示する1画面(フレーム)毎に画素に印加する電圧を制御することにより、連続して各画素の階調(輝度)を変化させることができる。しかし、液晶分子の応答速度によっては、液晶パネルの画面の変化が遅くなる場合がある。この為、視聴者に残像などとして認識される場合がある。そこで、目標の輝度(階調)により早く変化させる為に、一時的に輝度(階調)に応じた電圧値より高いまたは低い電圧を画素に印加するオーバードライブが実用化されている。
【0004】
また、液晶分子は、温度によって応答特性が変化する。この為、温度によってオーバードライブを実行する程度を切り替える技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−158472号公報
【特許文献2】特開2007−148369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶分子の応答特性と温度との関係は、前後のフレームの輝度(階調)によっても変化する。即ち、低輝度(階調)から高輝度(階調)に画素を変化させる場合と、中程度の輝度(階調)からこの輝度(階調)とは異なる中程度の輝度(階調)に変化させる場合とで、液晶分子の応答特性と温度との関係が異なる。この為、従来の技術によると、液晶の温度によっては適切な制御を行うことができず、画面にチラつき及び残像などが生じる可能性があるという課題がある。
【0007】
そこで、より高い画質を実現することができる画像処理装置、及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る画像処理装置は、複数の画素がマトリクス状に配置された液晶パネルに表示する画像を処理する画像処理装置であって、前記液晶パネルの温度を検出する温度センサと、映像信号を受信する受信部と、前記受信部により受信した前記映像信号の連続する前フレーム及び後フレームの階調の組み合わせに応じた電圧を出力する電圧値テーブルと、前記前フレーム及び前記後フレームの階調の組み合わせと、前記温度センサにより検出された前記温度とに応じたゲインを出力するゲインテーブルと、前記電圧値テーブルから出力された前記電圧と、前記ゲインテーブルから出力された前記ゲインとに基づいてオーバードライブを行い、オーバードライブされた電圧を前記液晶パネルに出力するオーバードライブ出力部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、一実施形態に係る画像処理装置について説明する為の図である。
【図2】図2は、一実施形態に係るオーバードライブ処理部について説明する為の図である。
【図3】図3は、一実施形態に係るオーバードライブ処理部について説明する為の図である。
【図4】図4は、一実施形態に係るオーバードライブ処理部について説明する為の図である。
【図5】図5は、一実施形態に係るオーバードライブ処理部について説明する為の図である。
【図6】図6は、一実施形態に係るオーバードライブ処理部について説明する為の図である。
【図7】図7は、一実施形態に係るオーバードライブ処理部について説明する為の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照しながら、一実施形態に係る画像処理装置、及び画像処理方法ついて詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る画像処理装置100の例を示す。
なお、本実施形態では、画像処理装置100は、コンテンツに基づいて映像を液晶表示装置に表示させるものと仮定して説明する。
【0012】
画像処理装置100は、放送入力端子101、チューナ111、復調部112、信号処理部113、通信インターフェース114、音声処理部121、音声出力端子122、映像処理部131、OSD処理部132、表示処理部133、映像出力端子135、制御部150、操作入力部161、受光部162、カードコネクタ164、USBコネクタ166、及びディスクドライブ170を備える。
【0013】
放送入力端子101は、例えばアンテナ110により受信されるディジタル放送信号が入力される入力端子である。アンテナ110は、例えば、地上ディジタル放送信号、BS(broadcasting satellite)ディジタル放送信号、及び/または、110度CS(communication satellite)ディジタル放送信号を受信する。即ち、放送入力端子101には、放送信号により供給される番組などのコンテンツが入力される。
【0014】
放送入力端子101は、受信したディジタル放送信号をチューナ111に供給する。チューナ111は、ディジタル放送信号用のチューナである。チューナ111は、アンテナ110から供給されるディジタル放送信号のチューニング(選局)を行う。チューナ111は、チューニングしたディジタル放送信号を復調部112に送信する。
【0015】
復調部112は、受信するディジタル放送信号の復調を行う。復調部112は、復調したディジタル放送信号(コンテンツ)を信号処理部113に入力する。即ち、アンテナ110、チューナ111、及び復調部112は、コンテンツを受信する受信手段として機能する。
【0016】
信号処理部113は、ディジタル放送信号(動画のコンテンツデータ)に対して信号処理を施す信号処理手段として機能する。信号処理部113は、復調部112から供給されるディジタル放送信号に、信号処理を施す。即ち、信号処理部113は、ディジタル放送信号を映像信号、音声信号、及びその他のデータ信号に分離する。信号処理部113は、音声処理部121に音声信号を供給する。また、信号処理部113は、映像処理部131に映像信号を供給する。さらに、信号処理部113は、制御部150、及び/またはOSD処理部132にデータ信号を供給する。
【0017】
通信インターフェース114は、例えばHDMI(High Definition Multimedia Interface)(登録商標)端子などの、コンテンツを受信可能なインターフェースを備える。通信インターフェース114は、ディジタル映像信号、及びディジタル音声信号などが多重化されたコンテンツを他の機器から受信する。通信インターフェース114は、他の機器から受信したディジタル信号(コンテンツ)を信号処理部113に供給する。即ち、通信インターフェース114は、コンテンツを受信する受信手段として機能する。
【0018】
信号処理部113は、通信インターフェース114から受信するディジタル信号に信号処理を施す。例えば、信号処理部113は、ディジタル信号をディジタル映像信号とディジタル音声信号とデータ信号とに分離する。信号処理部113は、音声処理部121にディジタル音声信号を供給する。また、信号処理部113は、映像処理部131にディジタル映像信号を供給する。さらに、信号処理部113は、制御部150、及び/またはOSD処理部132にデータ信号を供給する。
【0019】
なお、信号処理部113は、通信インターフェース114に入力されるコンテンツと、放送入力端子101に入力されるコンテンツとのいずれかを選択し、処理を行う。即ち、信号処理部113は、ディジタル放送信号とディジタル信号のいずれかに対して信号の分離処理を行う。
【0020】
音声処理部121は、信号処理部113から受信した音声信号を、スピーカ200により再生可能なフォーマットの音声信号に変換する。音声処理部121は、音声信号を音声出力端子122に出力する。音声出力端子122は、供給される音声信号を装置外部に出力する。これにより、音声出力端子122に接続されるスピーカ200は、供給される音声信号に基づいて音を再生する。
【0021】
映像処理部131は、信号処理部113から受信した映像信号を、ディスプレイ300で再生可能なフォーマットの映像信号に変換する。即ち、映像処理部131は、信号処理部113から受信した映像信号を、ディスプレイ300で再生可能なフォーマットの映像信号にデコード(再生)する。また、映像処理部131は、OSD処理部132から供給されるOSD信号を映像信号に重畳する。映像処理部131は、映像信号を表示処理部133に出力する。
【0022】
OSD処理部132は、信号処理部113から強雨されるデータ信号、及び/または制御部150から供給される制御信号に基づいて、GUI(グラフィック ユーザ インタフェース)画面、字幕、時刻、または他の情報などを画面に重畳して表示する為のOSD信号を生成する。
【0023】
表示処理部133は、例えば、制御部150からの制御に基づいて、受信した映像信号に対して色味、明るさ、シャープ、コントラスト、またはその他の画質調整処理を行う。さらに、表示処理部133は、オーバードライブ処理部134を備える。オーバードライブ処理部134は、連続して入力される映像信号に基づいてオーバードライブを行う。表示処理部133は、画質調整及びオーバードライブを施した映像信号を映像出力端子135に出力する。これにより、映像出力端子135に接続されるディスプレイ300は、供給される映像信号に基づいて映像を表示する。
【0024】
ディスプレイ300は、例えば、マトリクス状に配列された複数の画素を備える液晶表示パネルと、この液晶パネルを照明するバックライトとを備える液晶表示装置などを備える。ディスプレイ300は、画像処理装置100から供給される映像信号に基づいて映像を表示する。
【0025】
なお、画像処理装置100は、映像出力端子135の代わりに、ディスプレイ300を装置内部に備える構成であってもよい。また、画像処理装置100は、音声出力端子122の代わりに、スピーカ200を装置内部に備える構成であってもよい。
【0026】
制御部150は、画像処理装置100の各部の動作を制御する制御手段として機能する。制御部150は、CPU151、ROM152、RAM153、及びEEPROM154などを備えている。制御部150は、操作入力部161から供給される操作信号に基づいて、種々の処理を行う。
【0027】
CPU151は、種々の演算処理を実行する演算素子などを備える。CPU151は、ROM152、またはEEPROM154などに記憶されているプログラムを実行することにより種々の機能を実現する。
【0028】
ROM152は、画像処理装置100を制御する為のプログラム、及び各種の機能を実現する為のプログラムなどを記憶する。CPU151は、操作入力部161から供給される操作信号に基づいて、ROM152に記憶されているプログラムを起動する。これにより、制御部150は、各部の動作を制御する。
【0029】
RAM153は、CPU151のワークメモリとして機能する。即ち、RAM153は、CPU151の演算結果、CPU151により読み込まれたデータなどを記憶する。
【0030】
EEPROM154は、各種の設定情報、及びプログラムなどを記憶する不揮発性メモリである。
【0031】
操作入力部161は、例えば、操作キー、キーボード、マウス、タッチパッドまたは操作入力に応じて操作信号を生成する事ができる他の入力装置などを備える入力手段である。例えば、操作入力部161は、操作入力に応じて操作信号を生成する。操作入力部161は、生成した操作信号を制御部150に供給する。
【0032】
なお、タッチパッドは、静電センサ、サーモセンサ、または他の方式に基づいて位置情報を生成するデバイスを含む。また、画像処理装置100がディスプレイ300を備える場合、操作入力部161は、ディスプレイ300と一体に形成されるタッチパネルなどを備える構成であってもよい。
【0033】
受光部162は、例えば、リモートコントローラ163からの操作信号を受信するセンサなどを備える。受光部162は、受信した操作信号を制御部150に供給する。リモートコントローラ163は、ユーザの操作入力に基づいて操作信号を生成する。リモートコントローラ163は、生成した操作信号を赤外線通信により受光部162に送信する。なお、受光部162及びリモートコントローラ163は、電波などの他の無線通信により操作信号の送受信を行う構成であってもよい。
【0034】
カードコネクタ164は、例えば、動画コンテンツを記憶するメモリカード165と通信を行う為のインターフェースである。カードコネクタ164は、接続されるメモリカード165から動画のコンテンツデータを読み出し、制御部150に供給する。
【0035】
USBコネクタ166は、USB機器167と通信を行う為のインターフェースである。USBコネクタ166は、接続されるUSB機器167から供給される信号を制御部150に供給する。
【0036】
例えば、USB機器167がキーボードなどの操作入力機器である場合、USBコネクタ166は、操作信号をUSB機器167から受け取る。USBコネクタ166は、受け取った操作信号を制御部150に供給する。この場合、制御部150は、USBコネクタ166から供給される操作信号に基づいて種々の処理を実行する。
【0037】
また、例えば、USB機器167が動画のコンテンツデータを記憶する記憶装置である場合、USBコネクタ166は、コンテンツをUSB機器167から取得することができる。USBコネクタ166は、取得したコンテンツを制御部150に供給する。
【0038】
ディスクドライブ170は、例えば、コンパクトディスク(CD)、ディジタルバーサタイルディスク(DVD)、ブルーレイディスク(BD)、または動画のコンテンツデータを記録可能な他の光ディスクMを装着可能なドライブを有する。ディスクドライブ170は、装着される光ディスクMからコンテンツを読み出し、読み出したコンテンツを制御部150に供給する。
【0039】
また、画像処理装置100は、図示しない電源部を備える。電源部は、画像処理装置100の各部に電力を供給する。電源部は、例えば、ACアダプタなどを介して供給される電力を変換し各部へ供給する。また、電源部は、バッテリーを備えていても良い。この場合、電源部は、ACアダプタなどを介して供給される電力をバッテリーに充電する。電源部は、バッテリーに充電されている電力を画像処理装置100の各部に供給する。
【0040】
また、画像処理装置100は、さらに他のインターフェースを備えていても良い。インターフェースは、例えば、Serial−ATA、LANポートなどである。画像処理装置100は、インターフェースにより接続される機器に記録されているコンテンツを取得し、再生することができる。また、画像処理装置100は、再生した音声信号及び映像信号を、インターフェースにより接続される機器に出力することが出来る。
【0041】
また、画像処理装置100がインターフェースを介してネットワークに接続される場合、画像処理装置100は、ネットワーク上の動画のコンテンツデータを取得し、再生することができる。
【0042】
またさらに、画像処理装置100は、ハードディスク(HDD)、ソリッドステイトディスク(SSD)、または半導体メモリなどの記憶装置を備えていても良い。この記憶装置が動画のコンテンツデータを記憶する場合、画像処理装置100は、この記憶装置に記憶されているコンテンツを読み出し、再生することが出来る。また、画像処理装置100は、この記憶装置に例えば放送信号、またはネットワークなどにより供給されるコンテンツを記憶することができる。
【0043】
図2は、図1に示すオーバードライブ処理部134の例を示す。
図2に示すように、オーバードライブ処理部134は、電圧値テーブル1341、フレームメモリ1342、温度センサ1343、ゲインテーブル1344、及び乗算器1345を備える。
【0044】
表示処理部133は、上記したように画質調整などを施した映像信号(入力信号)をオーバードライブ処理部134に入力する。オーバードライブ処理部134に入力された入力信号は、電圧値テーブル1341、フレームメモリ1342、及びゲインテーブル1344に供給される。
【0045】
電圧値テーブル1341は、連続する2フレーム(前フレーム及び後フレーム)内のある画素の階調(輝度)と、電圧値の値とを対応付けて記憶する。電圧値テーブル1341は、例えば、図3に示される構成を備える。
【0046】
図3の縦軸は、ある画素の前フレームにおける輝度(階調)値を示す。また、図3の横軸は、ある画素の後フレームにおける輝度(階調)値を示す。またさらに、図3の各マス目(セル)の中に示されている数字は、上記の画素に印加する電圧値を示す。
【0047】
フレームメモリ1342は、1フレーム分の画素の輝度(階調)値を記憶する。即ち、フレームメモリ1342は、受信した入力信号を1フレーム分記憶する。連続してフレームメモリ1342に入力信号が供給される場合、フレームメモリ1342は、逐次1フレーム分の入力信号を上書きする。さらに、フレームメモリ1342は、入力信号を受信した場合、既に記憶している入力信号を電圧値テーブル1341及びゲインテーブル1344に出力する。
【0048】
これにより、あるフレーム(後フレーム)の入力信号と、このフレームの1つ前のフレーム(前フレーム)の入力信号とが電圧値テーブル1341及びゲインテーブル1344に供給される。
【0049】
電圧値テーブル1341は、前フレームのある画素の階調値と、後フレームの同じ画素の階調値とに対応する電圧値を出力する。すなわち、電圧値テーブル1341は、ある画素の前フレームの階調値と後フレームの階調値との組み合わせに応じた電圧値を出力する。
【0050】
温度センサ1343は、ディスプレイ300の温度を検出する。例えば、温度センサ1343は、ディスプレイ300の液晶パネルの温度などを検出する。温度センサ1343は、検出した温度の値をゲインテーブル1344に出力する。
【0051】
ゲインテーブル1344は、連続する2フレーム(前フレーム及び後フレーム)内のある画素の階調(輝度)と、関数とを対応付けて記憶する。即ち、ゲインテーブル1344は、前フレームと後フレームとの組み合わせごとに関数を記憶する。ゲインテーブル1344は、例えば、図4に示される構成を備える。
【0052】
図4の縦軸は、ある画素の前フレームにおける輝度(階調)値を示す。また、図4の横軸は、ある画素の後フレームにおける輝度(階調)値を示す。またさらに、図4の各マス目(セル)の中に示されている各記号A乃至Yは、それぞれ図5に示されるような関数を示す。
【0053】
図5は、ゲインテーブル1344の関数の例を示す。
図5に示される縦軸は、ゲインの値を示す。また、図5に示される横軸は、温度センサ1343により検出された温度を示す。ここでは、関数A、関数G及び関数Mの例が示されている。なお、液晶分子は、低温であるほど応答特性が低下する為、関数A、関数G及び関数Mは、液晶パネルが低温である場合に高い値を出力し、液晶パネルが高温である場合に低い値を出力するように設定される。これは、図4に示される他の関数も同様である。
【0054】
ゲインテーブル1344は、前フレームのある画素の輝度(階調)値と、後フレームの同じ画素の輝度(階調)値とに対応する関数を参照する。さらに、ゲインテーブル1344は、参照している関数に温度センサ1343により検出された温度の値を代入することにより、ゲインの値を算出する。ゲインテーブル1344は、算出したゲインの値を出力する。
【0055】
乗算器1345は、電圧値テーブル1341の出力と、ゲインテーブル1344の出力とを乗算する。即ち、乗算器1345は、電圧値テーブル1341から出力された電圧値と、ゲインテーブル1344から出力されたゲインとを乗算する。乗算器1345は、乗算された値を出力信号として出力する。
【0056】
なお、電圧値テーブル1341は、上記した電圧値を特定する処理をフレーム中の各画素毎に行う。また、ゲインテーブル1344は、上記したゲインを特定する処理をフレーム中の各画素毎に行う。また、乗算器1345は、電圧値テーブル1341及びゲインテーブル1344から出力される信号を逐次乗算する。
【0057】
上記の処理により、オーバードライブ処理部134は、1フレーム分の映像信号をオーバードライブすることができる。さらに、オーバードライブ処理部134は、映像信号のフレームが入力される毎に上記のオーバードライブを行う。これにより、オーバードライブ処理部134は、オーバードライブを施した映像信号を逐次出力することができる。
【0058】
図6は、オーバードライブの例について示す。
図6の上のグラフは、輝度と時間との関係を示す。また、図6の下のグラフは、電圧と時間との関係を示す。
【0059】
グラフ601は、オーバードライブを施さなかった場合の輝度の変化を示す。この場合、図6に示されるように、1フレームの遅い時間で輝度が目標とする輝度に達する。この場合、液晶パネルの画素には、映像信号に応じた値、即ち、目標とする輝度に応じた電圧が1フレームの表示時間の間印加される。
【0060】
これに対し、グラフ602は、オーバードライブが施された場合の輝度の変化を示す。この場合、図6に示されるように、1フレームの早い時間で輝度が目標とする輝度に達する。この場合、液晶パネルの画素には、グラフ603により示される電圧が印加される。
【0061】
グラフ603は、フレームの先頭から時間Tの間、目標とする輝度に応じた電圧値より高い電圧が液晶パネルの画素に印加されることを示している。即ち、オーバードライブ処理部134は、電圧値テーブル1341から出力された電圧値とゲインテーブル1344から出力されたゲインとが乗算された値の電圧が時間Tの間に画素に印加されるようにオーバードライブを行う。
【0062】
また、オーバードライブ処理部134は、フレームの先頭から時間Tが経過した後に、目標とする輝度(階調)に応じた値の電圧が画素に印加されるように処理する。これにより、オーバードライブ処理部134は、液晶の画素が1フレーム中のより早い時間で目標の輝度(階調)に変化させることができる。
【0063】
上記したように、本実施形態に係る画像処理装置100は、前フレームの輝度(階調)と後フレームの輝度(階調)との組み合わせに基づいて電圧値を特定する電圧値テーブル1341と、前フレームの輝度(階調)と後フレームの輝度(階調)との組み合わせと温度とに基づいてゲインを特定するゲインテーブル1344とを備える。画像処理装置100は、ディスプレイ300の温度を検出し、検出した温度とゲインテーブル1344とに基づいてゲインを特定する。さらに、画像処理装置100は、電圧値テーブル1341から出力される電圧値と、ゲインとに基づいて、オーバードライブによる補正後の電圧値を算出する。
【0064】
この構成により、画像処理装置100は、前後のフレームの輝度(階調)の組み合わせと、液晶の温度とに応じて、より高い精度でオーバードライブを行うことができる。これにより、液晶の温度に応じてより適切な値の電圧を印加することができる。これにより、ディスプレイ300により表示される映像の画質の向上、チラつき及び残像などの低減を実現することができる。この結果、より高い画質を実現することができる画像処理装置、及び画像処理方法を提供することができる。
【0065】
なお、ディスプレイ300が赤、青、及び緑などの複数の色の画素が複数配列されたカラー表示可能な液晶表示装置である場合、オーバードライブ処理部134は、色毎に異なる電圧値テーブル1341、及びゲインテーブル1344を備える構成であってもよい。
【0066】
また、ディスプレイ300の表示速度を2倍駆動、4倍駆動などで切り替え可能な場合、オーバードライブ処理部134は、駆動速度毎に異なる電圧値テーブル1341、及びゲインテーブル1344を備える構成であってもよい。即ち、オーバードライブ処理部134は、映像信号の1フレームの長さ毎に異なる電圧値テーブル1341、及びゲインテーブル1344を備える構成であってもよい。
【0067】
この構成により、オーバードライブ処理部134は、例えば、立体表示(3D表示)などのより液晶の応答特性が要求される場合であってもチラつき及び残像などを低減させることができる。
【0068】
また、オーバードライブ処理部134は、複数の温度センサ1343を備える構成であってもよい。この場合、ディスプレイ300の液晶パネルを複数の領域に分割し、オーバードライブ処理部134は、分割された領域毎に温度を検出する。オーバードライブ処理部134は、分割された領域に含まれる画素の前後フレームの輝度(階調)と、この画素が含まれる領域から検出した温度とに基づいてゲインを算出する。これにより、オーバードライブ処理部134は、液晶パネルの温度に応じて、より適切なゲインを特定することができる。
【0069】
また、上記の実施形態では、ゲインテーブル1344は、連続する2フレームの画素の輝度(階調)と、関数とを対応付けて記憶する構成であるとして説明したが、この構成に限定されない。例えば図7に示されるように、ゲインテーブル1344は、連続する2フレームの画素の輝度(階調)の組み合わせとゲインの値とが対応付けられたテーブルを温度毎に備える構成であってもよい。
【0070】
図7は、ゲインテーブル1344の他の例を示す。
図7に示されるように、ゲインテーブル1344は、複数のテーブル1344A、1344B、1344Cなどを備える。ゲインテーブル1344は、さらに他のテーブルを備えていてもよい。
【0071】
図7の各テーブルの縦軸は、ある画素の前フレームにおける輝度(階調)値を示す。また、図7の各テーブルの横軸は、ある画素の後フレームにおける輝度(階調)値を示す。またさらに、図7の各マス目(セル)の中に示されている数字は、それぞれゲインの値を示す。
【0072】
各テーブルは、それぞれ温度センサ1343により検出される値に対応付けられている。即ち、オーバードライブ処理部134は、温度センサ1343により検出した温度に応じてゲインテーブル1344からテーブルを選択する。さらに、オーバードライブ処理部134は、前フレームの輝度(階調)と後フレームの輝度(階調)とに基づいて選択したテーブルからゲインの値を読み出す。オーバードライブ処理部134は、読み出したゲインの値と、電圧値テーブル1341から出力される値とを乗算して出力する。
【0073】
この構成によっても、オーバードライブ処理部134は、液晶パネルの温度に応じて、適切なゲインの値を特定することができる。
【0074】
また、上記の実施形態では、オーバードライブ処理部134は、ゲインテーブル1344から出力されたゲインの値と、電圧値テーブル1341から出力された電圧値とを乗算すると説明したが、この構成に限定されない。オーバードライブ処理部134は、電圧値テーブル1341から出力された電圧値にゲインテーブル1344から出力されたゲインの値を加算する構成であってもよい。
【0075】
なお、電圧値テーブル1341内の電圧の値、及びゲインテーブル1344内の関数またはゲインの値は、画像処理装置100に接続されるディスプレイ300の液晶の特性に応じて適宜設定されるものであり、実施例で説明した値に限定されるものではない。
【0076】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0078】
100…画像処理装置、101…放送入力端子、110…アンテナ、111…チューナ、112…復調部、113…信号処理部、114…通信インターフェース、121…音声処理部、122…音声出力端子、131…映像処理部、132…OSD処理部、133…オーバードライブ処理部、134…表示処理部、135…映像出力端子、150…制御部、151…CPU、152…ROM、153…RAM、154…EEPROM、161…操作入力部、162…受光部、163…リモートコントローラ、164…カードコネクタ、165…メモリカード、166…USBコネクタ、167…USB機器、170…ディスクドライブ、200…スピーカ、300…ディスプレイ、1341…電圧値テーブル、1342…フレームメモリ、1343…温度センサ、1344…ゲインテーブル、1345…乗算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素がマトリクス状に配置された液晶パネルに表示する画像を処理する画像処理装置であって、
前記液晶パネルの温度を検出する温度センサと、
映像信号を受信する受信部と、
前記受信部により受信した前記映像信号の連続する前フレーム及び後フレームの階調の組み合わせに応じた電圧を出力する電圧値テーブルと、
前記前フレーム及び前記後フレームの輝度の組み合わせと、前記温度センサにより検出された前記温度とに応じたゲインを出力するゲインテーブルと、
前記電圧値テーブルから出力された前記電圧と、前記ゲインテーブルから出力された前記ゲインとに基づいてオーバードライブを行い、オーバードライブされた電圧を前記液晶パネルに出力するオーバードライブ出力部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記ゲインテーブルは、前記温度センサにより検出された温度に応じたゲインを算出する為の関数と、前記前フレーム及び前記後フレームの階調の組み合わせと、を対応付けて記憶する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記オーバードライブ出力部は、前記電圧値テーブルから出力された前記電圧と、前記ゲインテーブルから出力された前記ゲインとを乗算し、乗算した電圧を前記液晶パネルに出力する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ゲインテーブルは、前記映像信号が複数の色毎の信号を有する場合、前記温度センサにより検出された温度に応じたゲインを算出する為の関数と、前記前フレーム及び前記後フレームの階調の組み合わせとを前記色毎に対応付けて記憶する、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ゲインテーブルは、前記温度センサにより検出された温度に応じたゲインを算出する為の関数と、前記前フレーム及び前記後フレームの階調の組み合わせとを前記映像信号の1フレームの長さ毎に対応付けて記憶する、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記オーバードライブ出力部は、前記電圧値テーブルから出力された前記電圧と、前記ゲインテーブルから出力された前記ゲインとを加算し、加算した電圧を前記液晶パネルに出力する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ゲインテーブルは、前記前フレーム及び前記後フレームの階調の組み合わせと、前記ゲインとを温度毎に対応付けて記憶する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記オーバードライブ出力部から出力された電圧に基づいて画像を表示する液晶パネルをさらに具備する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
複数の画素がマトリクス状に配置された液晶パネルに表示する画像を処理する画像処理装置に用いられる画像処理方法であって、
前記液晶パネルの温度を検出し、
映像信号を受信し、
受信した前記映像信号の連続する前フレーム及び後フレームの階調の組み合わせに応じた電圧を出力し、
前記前フレーム及び前記後フレームの階調の組み合わせと、検出された前記温度とに応じたゲインを出力し、
前記電圧と、前記ゲインとに基づいてオーバードライブを行い、オーバードライブされた電圧を前記液晶パネルに出力する、
画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−220941(P2012−220941A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90321(P2011−90321)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】