説明

画像処理装置、撮像装置、コンピュータ読み取り可能なプログラム

【課題】カラー画像において部分領域ごとにより適正な部分領域の色を算出することのできる画像処理装置、撮像装置、コンピュータ読み取り可能な画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】本発明を例示する画像処理装置は、カラー画像を複数の部分領域に分割し、前記部分領域毎に前記部分領域の色を算出する色評価手段を備えた画像処理装置であって、前記色評価手段は、前記部分領域内の各部を明るさによりグループ分けし、前記部分領域の色をグループ毎に算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、撮像装置、コンピュータ読み取り可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子カメラに搭載されている自動ホワイトバランス調整機能は、電子カメラが取得したカラー画像上の各部の色を評価し、無彩色に近い色を有した領域(無彩色物体の存在領域)を検出し、その領域の色を完全な無彩色に近づけるためのホワイトバランスゲインを算出し、それをカラー画像の全体へ乗算するものである。
【0003】
通常、電子カメラが取得するカラー画像の画素数は膨大なので、カラー画像上の各部の色を評価する際には、カラー画像を予め複数の部分領域に分割しておき、個々の部分領域を1単位として扱っている(特許文献1等を参照。)。これによってホワイトバランス調整に要する演算量を大幅に削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3889867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上のホワイトバランス調整では、例えば1つの部分領域内に互いに異なる2種類の色が存在していると、それらの色の中間色がその部分領域の色とみなされてしまう。そのような中間色は、その部分領域に実際には存在していなかった色なので、前述した領域の検出精度を低下させ、ひいてはホワイトバランス調整の成功率を低下させる虞がある。
【0006】
本発明は、カラー画像において部分領域ごとにより適正な部分領域の色を算出することのできる画像処理装置、撮像装置、コンピュータ読み取り可能な画像処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を例示する画像処理装置は、カラー画像を複数の部分領域に分割し、前記部分領域毎に前記部分領域の色を算出する色評価手段を備えた画像処理装置であって、前記色評価手段は、前記部分領域内の各部を明るさによりグループ分けし、前記部分領域の色をグループ毎に算出する。
【0008】
また、本発明を例示する撮像装置は、被写体のカラー画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段で取得されたカラー画像を処理する前記画像処理装置とを備える。
【0009】
また、本発明を例示するコンピュータ読み取り可能なプログラムは、カラー画像を複数の部分領域に分割し、前記部分領域毎に前記部分領域の色を算出する色評価手順を含むコンピュータ読み取り可能なプログラムであって、前記色評価手順では、前記部分領域内の各部を明るさによりグループ分けし、前記部分領域の色をグループ毎に算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カラー画像において部分領域ごとにより適正な部分領域の色を算出することのできる画像処理装置、撮像装置、コンピュータ読み取り可能な画像処理プログラムが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電子カメラの概略構成を示すブロック図。
【図2】撮影に関する画像処理エンジン18の動作フローチャート。
【図3】ステップS13を説明する図。
【図4】ステップS15を説明する図。
【図5】ステップS17を説明する図。
【図6】ステップS17’を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下、本発明の一の実施形態を説明する。
【0013】
図1は、電子カメラの概略構成を示すブロック図である。図1に示すとおり、電子カメラ11は、撮像光学系12と、レンズ駆動部13と、絞り14と、絞り駆動部15と、カラー撮像素子16と、AFE17と、画像処理エンジン18と、第1メモリ19と、第2メモリ20と、メディアI/F21と、通信I/F22と、モニタ23と、レリーズ釦24とを有しており、この中でレンズ駆動部13、絞り駆動部15、AFE17、第1メモリ19、第2メモリ20、メディアI/F21、通信I/F22、モニタ23、レリーズ釦24の各々は、画像処理エンジン18に接続されている。
【0014】
撮像光学系12は、フォーカシングレンズを含む複数のレンズで構成されている。撮像光学系12の焦点位置は、画像処理エンジン18からの指示に応じてレンズ駆動部13が調整する。また、絞り14は、カラー撮像素子16に入射する単位時間当たりの光量を調節する。この絞り14の開口量は、画像処理エンジン18からの指示に応じて絞り駆動部15が調整する。
【0015】
カラー撮像素子16は、例えば単板式のカラー撮像素子であって、カラー撮像素子16上に設けられたカラーフィルタの配列は、例えばベイヤ配列である。カラー撮像素子16は、撮影時、撮像光学系12が形成する被写体像を撮像して撮像画像の画像信号を生成する。このカラー撮像素子16から出力された画像信号はAFE17に入力される。
【0016】
AFE17は、カラー撮像素子16から出力される画像信号に対してアナログ信号処理を施すアナログフロントエンド回路である。このアナログ信号処理には、相関二重サンプリング、画像信号のゲインの調整、画像信号のA/D変換などが含まれる。このAFE17から出力されたデジタルの画像信号は画像処理エンジン18に入力される。
【0017】
画像処理エンジン18は、電子カメラ11の動作を統括的に制御するプロセッサであると共に、撮影時、A/D変換後の画像信号に対して各種の画像処理(ホワイトバランス調整処理、色補間処理、階調変換処理、輪郭強調処理、色変換処理など)を施す画像処理回路でもある。画像処理の1種であるホワイトバランス調整は、画像処理エンジン18に設けられた色評価部25と、ゲイン算出部26と、ホワイトバランス調整部27とによって実行される。色評価部25、ゲイン算出部26、ホワイトバランス調整部27の動作の詳細は、後述する。
【0018】
なお、画像処理エンジン18は、電子カメラ11の記録モードが通常記録モードであるときには、全ての画像処理が施された撮像画像のデータ(通常形式の撮像画像データ)を取得し、電子カメラ11の記録モードがRAW記録モードであるときには、全ての画像処理のうち色補間処理のみが施された撮像画像のデータ(RAW形式の撮像画像データ)を取得する。
【0019】
第1メモリ19は、揮発性の記憶媒体(SDRAMなど)で構成されており、画像処理エンジン18による画像処理の前工程や後工程で撮像画像を一時的に記憶する。一方、第2メモリ20は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体で構成されており、画像処理エンジン18によって実行されるプログラムを長期的に記憶する。
【0020】
メディアI/F21は、不揮発性の記憶媒体28を着脱可能に接続する。また、メデイアI/F21は、記憶媒体28に対し、画像処理後の撮像画像のデータ(ここでは、通常形式の撮像画像データ又はRAW形式の撮像画像データ)を書き込んだり、記憶媒体28から撮像画像のデータ(ここでは、通常形式の撮像画像データ又はRAW形式の撮像画像データ)を読み込んだりする。
【0021】
記憶媒体28は、ハードディスクや、半導体メモリを内蔵したメモリカードなどで構成される。なお、図1に示したのは、記憶媒体28の一例としてのメモリカードである。
【0022】
通信I/F22は、有線または無線の公知の通信回線を介して接続された外部装置とのデータ送受信を、所定の通信規格に準拠して制御する。
【0023】
モニタ23は、画像処理エンジン18の制御下で、記憶媒体28に書き込まれた撮像画像の再生表示を行う。
【0024】
レリーズ釦24は、撮影時、AF動作開始の指示入力と、撮像動作開始の指示入力とをユーザーから受け付ける。
【0025】
次に、撮影に関する画像処理エンジン18の動作の流れを説明する。
【0026】
図2は、撮影に関する画像処理エンジン18の動作フローチャートである。ここでは、電子カメラ11のオートホワイトバランス機能がオンされ、電子カメラ11の記録モードが通常記録モードに設定されていると仮定する。
【0027】
ステップS11:画像処理エンジン18は、レリーズ釦24が押下されたか否かを判別し、レリーズ釦24が押下された場合はステップS12に移行し、レリーズ釦24が押下されていない場合はステップS11を繰り返す。なお、絞り14の開口量と撮像光学系12の焦点位置とは、レリーズ釦24の押下より前の時点(例えばレリーズ釦24が半押しされた時点)で調節が完了しているものとする。
【0028】
ステップS12:画像処理エンジン18は、カラー撮像素子16を駆動することにより、撮像光学系12が現時点で捕らえている被写体の画像信号を取得する。その画像信号は、AFE17をパイプライン式に通過してから第1メモリ19に1フレーム分の画像としてバッファリングされる。
【0029】
ステップS13:画像処理エンジン18の色評価部25は、第1メモリ19にバッファリングされた画像を、図3(A)に模式的に示すとおり複数の部分領域に分割する。分割数は、例えば、横方向に16、縦方向に16である。この場合、画像は256個の部分領域Asに分割される。因みに、縦方向の分割数と横方向の分割数とが等しい場合、個々の部分領域Asの縦横比は画像の縦横比と同じ(例えば3:4)になる。個々の部分領域Asには、図3(B)に模式的に示すとおり複数の画素ブロックPbが二次元状に配列されている。1つの部分領域Asにおける画素ブロックPbの配列数は、例えば、横方向に128個、縦方向に96個である。個々の画素ブロックPbは、前述したカラーフィルタの1単位に対応しており、4種類の画素(赤画素、第1緑画素、第2緑画素、青画素)をベイヤ配列の規則で配列してなる。この中で赤画素は、前述したカラーフィルタの赤フィルタに対応する画素であり、第1緑画素及び第2緑画素は、前述したカラーフィルタの2つの緑フィルタに対応する画素であり、青画素は、前述したカラーフィルタの青フィルタに対応する画素である。
【0030】
ステップS14:画像処理エンジン18の色評価部25は、各部分領域Asの各画素ブロックPbの輝度値Yを個別に算出する。画素ブロックPbの輝度値Yは、画素ブロックPbの赤画素の値Rと、画素ブロックPbの第1緑画素の値Grと、画素ブロックPbの第2緑画素の値Gbと、画素ブロックPbの青画素の値Bとを、Y=a×R+b×Gr+c×Gb+d×Bの式へ当てはめることによって算出される。なお、この式におけるa、b、c、dは、前述したカラーフィルタの各フィルタの波長透過特性によって決まる所定の係数である。
【0031】
ステップS15:画像処理エンジン18の色評価部25は、画像上の各部分領域Asについて以下の処理(a)〜(d)を実行する。なお、画像処理エンジン18の内部メモリには、部分領域As毎に記憶領域が用意されており、その記憶領域の値は以下の処理(a)〜(d)の実行に先立ちクリアされる。
【0032】
(a)色評価部25は、部分領域Asの端に位置する画素ブロックPbに着目する。以下、着目している画素ブロックPbを「着目画素ブロックPb」と称す。
【0033】
(b)色評価部25は、着目画素ブロックPbの輝度値Yに基づき、その着目画素ブロックPbの属するグループ(所属グループ)を以下の8つのグループの中から見出す。
【0034】
・第1グループ:輝度値Yが0〜512の範囲に収まるような画素ブロックのグループ。
【0035】
・第2グループ:輝度値Yが512〜1024の範囲に収まるような画素ブロックのグループ。
【0036】
・第3グループ:輝度値Yが1024〜1536の範囲に収まるような画素ブロックのグループ。
【0037】
・第4グループ:輝度値Yが1536〜2048の範囲に収まるような画素ブロックのグループ。
【0038】
・第5グループ:輝度値Yが2048〜2560の範囲に収まるような画素ブロックのグループ。
【0039】
・第6グループ:輝度値Yが2560〜3072の範囲に収まるような画素ブロックのグループ。
【0040】
・第7グループ:輝度値Yが3072〜3584の範囲に収まるような画素ブロックのグループ。
【0041】
・第8グループ:輝度値Yが3584〜4095の範囲に収まるような画素ブロックのグループ。
【0042】
なお、これらのグループに対応して、個々の部分領域Asの記憶領域には、図4の下部に示すとおり、第1グループに関する記憶領域(赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタB、輝度用レジスタY、カウンタN)と、第2グループに関する記憶領域(赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタB、輝度用レジスタY、カウンタN)と、第3グループに関する記憶領域(赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタB、輝度用レジスタY、カウンタN)と、第4グループに関する記憶領域(赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタB、輝度用レジスタY、カウンタN)と、第5グループに関する記憶領域(赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタB、輝度用レジスタY、カウンタN)と、第6グループに関する記憶領域(赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタB、輝度用レジスタY、カウンタN)と、第7グループに関する記憶領域(赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタB、輝度用レジスタY、カウンタN)と、第8グループに関する記憶領域(赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタB、輝度用レジスタY、カウンタN)とが存在する。
【0043】
(c)色評価部25は、着目画素ブロックPbの赤画素の値Rを、着目ブロックPbの所属グループの赤用レジスタへ書き込み、着目画素ブロックPbの第1緑画素の値Grを、その所属グループの第1緑用レジスタへ書き込み、着目画素ブロックPbの第2緑画素の値Gbを、その所属グループの第2緑用レジスタへ書き込み、着目画素ブロックPbの青画素の値Bを、その所属グループの青用レジスタへ書き込み、着目画素ブロックPbの輝度値Yを、その所属グループの輝度用レジスタへ書き込む。さらに、色評価部25は、その所属グループのカウンタの値をインクリメントする。
【0044】
(d)色評価部25は、着目画素ブロックPbを部分領域As内で移動させながら手順(b)、(c)を繰り返す。その結果、図4に示した例では、部分領域Asのうち比較的明るい物体(雪山)を表す画素ブロックPbbrightは第7グループに分類され、部分領域Asのうち比較的暗い物体(青空)を表す画素ブロックPbdarkは、第2グループに分類されることになる。
【0045】
この場合、第7グループの赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタBは、部分領域Asにおける雪山の平均色度値を表し、第2グループの赤用レジスタR、第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGb、青用レジスタBは、部分領域Asにおける青空の平均色度値を表す。また、第7グループの輝度用レジスタYは雪山の積算輝度値を示し、第7グループのカウンタNは雪山の面積値を示す。また、第2グループの輝度用レジスタYは青空の積算輝度値を示し、第2グループのカウンタNは青空の面積値を示する。
【0046】
ステップS16:画像処理エンジン18の色評価部25は、画像上の各部分領域Asについて以下の処理(e)〜(i)を実行する。
【0047】
(e)色評価部25は、部分領域Asに関する各グループのカウンタの値を閾値と比較し、カウンタの値が閾値に満たないようなグループ(すなわち面積値の小さいグループ)を、後述する代表グループの候補から除外する。図4に示した例において、例えばカウンタN、Nの値が閾値より小さかったとすると、第1グループ及び第8グループが代表グループの候補から除外される。
【0048】
(f)色評価部25は、除外後に残ったグループの中で最も高輝度なグループを、部分領域Asの代表グループとして選出する。図4に示した例において、例えば第1グループ及び第8グループが代表グループの候補から除外されていたとすると、第7グループが部分領域Asの代表グループとして選出される。
【0049】
(g)色評価部25は、代表グループ(図4では第7グループ)の平均色度値(R/G、B/G)を、部分領域Asの代表色度値として出力する。ここで、代表グループ(図4では第7グループ)の平均色度値(R/G、B/G)を規定するRは、代表グループ(図4では第7グループ)の赤用レジスタ(図4では赤用レジスタR )の値であり、平均色度値(R/G、B/G)を規定するGは、代表グループ(図4では第7グループ)の第1緑用レジスタGr及び第2緑用レジスタGbの平均値(図4では第1緑用レジスタGr、第2緑用レジスタGbの平均値)であり、平均色度値(R/G、B/G)を規定するBは、代表グループ(図4では第7グループ)の青用レジスタ(図4では青用レジスタB )の値である。したがって、図4に例示した部分領域Asに関しては、雪山の平均色度値が部分領域Asの代表色度値として出力される。この代表色度値には、青空の色度は全く反映されない。
【0050】
(h)色評価部25は、代表グループ(図4では第7グループ)の平均輝度値を、部分領域Asの代表輝度値として出力する。ここで、代表グループ(図4では第7グループ)の平均輝度値は、代表グループ(図4では第7グループ)の輝度用レジスタ (図4では輝度用レジスタY)の値を、代表グループ(図4では第7グループ)のカウンタ (図4ではカウンタN)の値で除算したものである。したがって、図4に例示した部分領域Asに関しては、雪山の平均輝度値が、部分領域Asの代表輝度値として出力される。この代表輝度値には、青空の輝度は全く反映されない。
【0051】
(i)色評価部25は、代表グループ(図4では第7グループ)のカウンタ (図4ではカウンタN)の値を、部分領域Asにおける代表グループの面積値として出力する。なお、代表グループの面積値は、部分領域Asにおいて代表色度値と同等の色度を有した部分の出現頻度を表している。
【0052】
ステップS17:画像処理エンジン18のゲイン算出部26は、図5に示すとおり、部分領域Asの各々を、各々の代表色度値に応じて色度図上へ写像する。図5においては、色度図上の各点が、各部分領域Asの写像先を示している。この色度図上には、無彩色検出範囲Dが規定されており、無彩色検出範囲Dは、幾つかの光源下における無彩色物体の色度範囲(黒体放射軌跡の近傍の範囲)に相当する。
【0053】
ステップS18:画像処理エンジン18のゲイン算出部26は、無彩色検出範囲Dの内部に位置する写像先の重心座標を算出する。この際、ゲイン算出部26は、代表輝度値の大きな部分領域Asの写像先ほど、大きな重み値を付加し、面積値の大きな部分領域Asの写像先ほど、大きな重み値を付加する。
【0054】
ステップS19:画像処理エンジン18のゲイン算出部26は、ステップS18で算出した重心座標に基づき、画像へ施すべきホワイトバランス調整のホワイトバランスゲインを取得して出力する。例えば、ホワイトバランスゲインは、その重心座標の逆数に設定される。
【0055】
ステップS20:画像処理エンジン18のホワイトバランス調整部27は、ステップS19で取得されたホワイトバランスゲインを、第1メモリ19にバッファリングされている画像の全ての赤画素及び青画素へ乗算することにより、ホワイトバランス調整を実施する。
【0056】
ステップS21:画像処理エンジン18は、ホワイトバランス調整後の画像に対して、ホワイトバランス調整以外の各画像処理(色補間処理、階調変換処理、輪郭強調処理、色変換処理など)を施す。
【0057】
ステップS22:画像処理エンジン18は、画像処理後の画像へデータ圧縮処理を施してから、予め決められた形式の画像ファイルを作成する。そして、画像処理エンジン18は、その画像ファイルをメディアI/Fへ受け渡し、フローを終了する。これによって画像ファイルが記憶媒体28へ保存されることになる。
【0058】
以上、本実施形態の色評価部25は、部分領域As内の複数の画素ブロックPbを輝度値によってグループ分けし、画素ブロックPbの値R、Gr、Gb、Bをグループ毎に積算することにより、部分領域Asの色度値をグループ毎に算出する(図4)。
【0059】
ここで、同一の部分領域As内に色度値の異なる2つの物体(例えば図4のような雪山と青空)が存在していた場合、それら2つの物体の間では、色度値が異なるだけでなく輝度値も異なるはずである。
【0060】
したがって、部分領域As内の複数の画素ブロックPbを輝度値によってグループ分けすれば、それら複数の画素ブロックPbを色度値によってグループ分けしたのと同等の効果が得られる。しかも、色度値によってグループ分けするよりも、輝度値によってグループ分けする方が演算量は少なくて済む。なぜなら、係数の乗算及び加算からなる輝度値の算出は、除算を伴う色度値の算出より簡単だからである。
【0061】
したがって、本実施形態の色評価部25は、部分領域As内に存在する複数の色を簡単に個別評価することができる。
【0062】
しかも、本実施形態の色評価部25は、1つの部分領域Asに関するグループうち比較的高輝度なグループをその部分領域Asの代表グループとして選出するので(ステップS16)、部分領域Asの色評価を適正に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態の色評価部25は、1つの部分領域Asに関するグループの中で面積値の小さいものを代表グループの候補から除外するので(ステップS16)、部分領域Asの色評価を、より適正に行うことができる。
【0064】
したがって、本実施形態の色評価部25は、画像上の各部の色を簡単かつ適正に評価することができる。これにより、ゲイン算出部26が特殊な演算を行わなくとも、ホワイトバランス調整の成功率は高く維持される。
【0065】
なお、本実施形態の色評価部25は、1つの部分領域Asにつき代表グループを1つずつしか選出しなかったが、1つの部分領域Asにつき2以上の代表グループを選出してもよい。また、選出される代表グループの個数は、部分領域Asによって異なっても構わない。例えば、色評価部25は、1つの部分領域Asのグループのうち、カウンタの値が閾値以上である全てのグループを代表グループとして選出してもよい。その場合、画像処理エンジン18は、上述したステップS16〜S18の代わりに後述するステップS16’〜S18’を実行すればよい(後述する変形例を参照。)。
【0066】
また、本実施形態の色評価部25は、1つの部分領域Asに関するグループのうち比較的高輝度なグループを代表グループとして選出したが(ステップS16)、比較的広面積なグループを代表グループとして選出してもよい。
【0067】
また、上述した実施形態の色評価部25は、全ての画素ブロックの値をレジスタへ書き込んだが、書き込みに要する処理を削減するために、個々の画素ブロックの色度を予め算出しておき、その色度が無彩色検出範囲Dに収まっていた場合にのみ、その画素ブロックの値をレジスタへ書き込むこととしてもよい。なお、その場合は、ゲイン算出部26による処理の一部(写像に関する処理)を省略することができる。
【0068】
また、上述した実施形態の色評価部25は、最も低輝度なグループの輝度範囲の下限値を0としたが、0より大きい所定値に設定することで、黒つぶれした画素ブロックを評価対象から除外してもよい。
【0069】
また、上述した実施形態の色評価部25は、最も高輝度なグループの輝度範囲の上限値を4095としたが、4095より小さい所定値に設定することで、飽和した画素ブロックを評価対象から除外してもよい。
【0070】
また、上述した実施形態の色評価部25は、輝度のグループ数を8としたが、8以外の他の数としてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態の色評価部25は、4種類の画素からなる画素ブロックを1単位として扱ったが、演算量を削減するために2以上の画素ブロックからなる画素ブロック群を1単位として扱ってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態の画像処理エンジン18は、ホワイトバランス調整処理の対象を、撮影時に記憶媒体28へ保存される画像(保存用画像)としたが、撮影前確認用にモニタ23へ表示すべき画像(スルー画像)としてもよい。また、ホワイトバランス調整処理の対象を、過去の撮影で記憶媒体28へ保存された画像(保存済み画像)としてもよい。
【0073】
また、ホワイトバランス調整処理の対象が、保存用画像又はスルー画像である場合、上述した実施形態の色評価部25は、色の評価対象を、ホワイトバランス調整処理の対象とは異なる画像としてもよい。例えば、上述したカラー撮像素子16とは別に設けられた分割測光センサ(カラー撮像素子の一種)で取得された画像としてもよい。因みに、このような分割測光センサは、一眼レフタイプの電子カメラに設けられていることが多い。
【0074】
また、上述した実施形態の画像処理エンジン18の動作プログラムの一部又は、カラーの撮影画像を扱う他の電子機器、例えば、ディジタルフォトフレームやプリンタなどのCPUに実行させてもよい。或いは、汎用のコンピュータのCPUに実行させてもよい。また、CPUに実行させるべき動作プログラムは、CD−ROMなどの記憶媒体、又はインターネットなどの通信網を介してCPUの搭載先機器へインストールされてもよい。
【0075】
[代表グループを複数化する場合の変形例]
ステップS16’:画像処理エンジン18の色評価部25は、画像上の各部分領域Asについて以下の処理(e’)〜(i’)を実行する。
【0076】
(e’)色評価部25は、各グループのカウンタの値を閾値と比較し、カウンタの値が閾値に満たないようなグループを代表グループの候補から除外する。
【0077】
(f’)色評価部25は、除外後に残ったグループの全部を、部分領域Asの各代表グループとして選出する。
【0078】
(g’)色評価部25は、各代表グループの平均色度値を、部分領域Asの各代表色度値として出力する。
【0079】
(h’)色評価部25は、各代表グループの平均輝度値を、部分領域Asの各代表輝度値として出力する。
【0080】
(i’)色評価部25は、各代表グループのカウンタの値を、部分領域Asにおける各代表グループの面積値として出力する。
【0081】
ステップS17’:画像処理エンジン18のゲイン算出部26は、図6に示すとおり、部分領域Asの各々を、各々の代表色度値に応じて色度図上へ写像する。但し、ここでは1つの部分領域Asが複数の代表色度値を有している可能性もあるので、図6において米印で示すとおり、1つの部分領域Asが複数点へ写像される可能性もある。つまり、本ステップの写像は、部分領域As毎に行われるのではなく、代表グループ毎に行われる。これによって、代表グループの各々が、各々の平均色度値に応じて色度図上へ写像されることになる。
【0082】
ステップS18’:画像処理エンジン18のゲイン算出部26は、無彩色検出範囲Dの内部に位置する写像先の重心座標を算出する。この際、ゲイン算出部26は、平均輝度値の大きな代表グループの写像先ほど、大きな重み値を付加し、面積値の大きな代表グループの写像先ほど、大きな重み値を付加する。
【符号の説明】
【0083】
11…電子カメラ、12…撮像光学系、13…レンズ駆動部、14…絞り、15…絞り駆動部、16…カラー撮像素子、17…AFE、18…画像処理エンジン、19…第1メモリ、20…第2メモリ、21…メディアI/F、22…通信I/F、23…モニタ、24…レリーズ釦、25…色評価部、26…ゲイン算出部、27…ホワイトバランス調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像を複数の部分領域に分割し、前記部分領域毎に前記部分領域の色を算出する色評価手段を備えた画像処理装置であって、
前記色評価手段は、
前記部分領域内の各部を明るさによりグループ分けし、前記部分領域の色をグループ毎に算出する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記色評価手段は、
前記部分領域において比較的明るいグループの色を前記部分領域の代表色として出力する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記色評価手段は、
前記部分領域において閾値以上の面積を有しかつ比較的明るいグループの色を前記部分領域の代表色として出力する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記色評価手段は、
前記部分領域における各グループの色を前記部分領域の代表色として出力する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記色評価手段は、
前記部分領域において比較的広面積なグループの色を前記部分領域の代表色として出力する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項5の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記色評価手段が前記部分領域毎に出力した前記代表色に基づき、前記カラー画像へ施すべきホワイトバランス調整の調整量を算出する調整量算出手段を更に備えた
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項2〜請求項5の何れか一項に記載の画像処理装置において、
前記色評価手段は、
前記部分領域において代表色の算出元となったグループの面積を前記代表色の出現頻度として出力し、
前記色評価手段が前記部分領域毎に出力した前記代表色と、前記色評価手段が前記代表色毎に出力した前記出現頻度とに基づき、前記カラー画像へ施すべきホワイトバランス調整の調整量を算出する調整量算出手段を更に備えた
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
被写体のカラー画像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段で取得された前記カラー画像を処理する請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の画像処理装置と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
カラー画像を複数の部分領域に分割し、前記部分領域毎に前記部分領域の色を算出する色評価手順を含むコンピュータ読み取り可能なプログラムであって、
前記色評価手順では、
前記部分領域内の各部を明るさによりグループ分けし、前記部分領域の色をグループ毎に算出する
ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能なプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−188087(P2011−188087A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49125(P2010−49125)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】