説明

画像処理装置、撮像装置、画像処理プログラム及び画像処理方法

【課題】重像画像は観賞に耐えられないという問題があった。
【解決手段】ある実施形態に係る画像処理装置は、重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得する重像間変形取得部104と、取得された重像間の変形情報を基に、重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成する画像変形部105と、重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得する信号強度関係取得部106と、取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う信号処理部107と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影された被写体の像が多重になっている重像画像の重像状態を復元する画像処理装置及び画像処理方法、及びその画像処理装置を備える撮像装置、並びにコンピュータをそのような画像処理装置として機能させる画像処理プログラムに関する。
【0002】
なお、本明細書中において、「重像画像」とは、被写体の像が多重になっている画像全般を表し、具体的には、撮像装置により被写体を多重に結像することで撮影された画像、または電気的、光学的な作用により被写体の像が多重となっているゴースト画像、フレア画像、または複数枚の画像の位置合わせを行い、その複数枚の画像の重ね合わせを行った際に、位置合わせ処理の失敗により被写体の像が多重になってしまった画像等を表す。また、「多重」とは、少なくとも一部が重なっている状態を意味する。
【背景技術】
【0003】
カメラなどの撮像装置で撮像を行う場合に、撮像装置内に被写体の像を多重に撮影する機構を具備し、被写体の像を多重像の形で撮影し、その重像画像の重像間の変位を計測することで、被写体までの距離を計測するなどの技術が提案されている。例えば、特許文献1では透明板に映る2重像を用いて距離計測を行う手法を開示している。また、特許文献2では、複数開口を持つ絞りを利用することにより2重像を取得し、距離計測を行う手法を開示している。
【0004】
また、従来、建物などによる電波の反射の影響でテレビの画像が多重に映るゴースト画像のゴーストを除去する場合には、特許文献3に開示されているように、ゴースト除去用基準信号(GCR信号:Ghost Cancel Reference信号)等を用いたゴースト除去手法が用いられていた。
【0005】
また、カメラなどの撮像装置で撮像を行う場合に、逆光や強い光がレンズ表面や内部で反射・散乱を起こし生じるフレア現象による多重像生成が知られているが、このような現象を生じさせないために、カメラレンズ周りにレンズフードを装着するなどの工夫が行われる。
【0006】
さらに、従来、複数枚画像の位置合わせ処理を行い、その複数枚画像の重ね合わせ処理を行った場合に、位置合わせ処理の失敗から、重ね合わせ後の画像に重像が現れることがあったが、そのような場合は、重像間をぼかし、画像を補正するという処理を行っていた。
【特許文献1】特開2006−329897号公報
【特許文献2】特開平7−135597号公報
【特許文献3】特開2000−156799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば上記の特許文献に開示されるごとく、撮像装置により撮像された重像画像に基づいて撮像位置から被写体までの被写体距離を計測することは確かに可能であるが、被写体距離を計測するために撮像された重像画像は観賞に耐えられないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が多重になっていない復元画像を生成できる画像処理装置、撮像装置、画像処理プログラム及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像処理装置の一態様は、
被写体の像が多重になっている重像画像の入力処理を行う画像入力部と、
上記画像入力部により入力された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得する重像間変形取得部と、
上記重像間変形取得部により取得された重像間の変形情報を基に、上記画像入力部により入力された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成する画像変形部と、
上記画像入力部により入力された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得する信号強度関係取得部と、
上記信号強度関係取得部により取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う信号処理部と、
を具備することを特徴とする。
この態様によれば、例えば、後述する(7)式に示すように、信号強度関係情報を用いて、重像画像を幾何的に変形して生成された複数の変形画像の加算処理を行うことによって、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が多重になっていない復元画像を生成できる。
また、本発明の撮像装置の一態様は、
被写体の光束を結像する撮影光学系と、
上記撮影光学系内において被写体の像を多重に結像させる多重結像部と、
上記撮影光学系からの光を電気信号に変換し、該変換した電気信号から画像信号を生成する画像信号生成部と、
上記撮影光学系、多重結像部及び画像信号生成部により生成された、少なくとも2つ以上の像を多重に有する重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得する重像間変形取得部と、
上記重像間変形取得部により取得された重像間の変形情報を基に、上記重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成する画像変形部と、
上記重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得する信号強度関係取得部と、
上記信号強度関係取得部により取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う信号処理部と、
を具備することを特徴とする。
この態様によれば、例えば、後述する(7)式に示すように、信号強度関係情報を用いて、重像画像を幾何的に変形して生成された複数の変形画像の加算処理を行うことによって、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が多重になっていない復元画像を生成できる。
また、本発明の画像処理プログラムの一態様は、
被写体の像が多重になっている重像画像の入力処理を行うステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得するステップと、
上記取得された重像間の変形情報を基に、上記入力された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成するステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得するステップと、
上記取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行うステップと、
をコンピュータに発揮させることを特徴とする。
この態様によれば、例えば、後述する(7)式に示すように、コンピュータにより、信号強度関係情報を用いて、重像画像を幾何的に変形して生成された複数の変形画像の加算処理を行うことによって、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が多重になっていない復元画像を生成できる。
また、本発明の画像処理方法の一態様は、
被写体の像が多重になっている重像画像の入力処理を行うステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得するステップと、
上記取得された重像間の変形情報を基に、上記入力された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成するステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得するステップと、
上記取得された信号強度関係情報を基に、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像を加算処理して、被写体の像が多重になっていない復元画像を生成するステップと、
を具備することを特徴とする。
この態様によれば、例えば、後述する(7)式に示すように、信号強度関係情報を用いて、重像画像を幾何的に変形して生成された複数の変形画像の加算処理を行うことによって、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が多重になっていない復元画像を生成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が多重になっていない復元画像を生成できる画像処理装置、撮像装置、画像処理プログラム及び画像処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。なお、同図において、実太線の矢印は映像信号の流れを、実細線の矢印は制御信号の流れを、破線の矢印はその他の信号の流れを、それぞれ示している。
【0013】
本撮像装置は、多重結像部101を含む撮影光学系100、撮像部102、記録部103、重像間変形取得部104、画像変形部105、信号強度関係取得部106、信号処理部107、合焦点制御部108、AFモータ109、出力部110、制御部111、及び外部I/F部112から構成される。
【0014】
撮影光学系100は、被写体の光束を結像するものであり、多重結像部101は、上記撮影光学系100内において被写体の像を多重に結像させるものである。この時の、多重結像部101の実際の構成は、例えば特許文献1に記載されているように透明板に映る2重像を撮影するという構成としても良い。撮像部102は、上記撮影光学系からの光を電気信号に変換し、該変換した電気信号から画像信号を生成するものであり、上記撮影光学系100、多重結像部101及び撮像部102より、少なくとも2つ以上の像を多重に有する重像画像が生成される。記録部103は、この生成された重像画像を記録するものである。
【0015】
重像間変形取得部104は、上記記録部103に記録された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得するものである。画像変形部105は、上記重像間変形取得部104により取得された重像間の変形情報を基に、上記記録部103に記録された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成するものである。本明細書中において、「変形画像」とは、このように素の画像に対して変形処理を施して幾何学的に変形させた画像を指すものとする。なお、変位量がない変形、すなわち単位行列を施す変形も1回の変形処理に含ませても良い。この場合、単位行列の変形処理が施された画像も上述の「変形画像」に含まれる。
【0016】
また、信号強度関係取得部106は、上記記録部103に記録された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得するものである。信号処理部107は、上記信号強度関係取得部106で取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行って、復元画像を得るものである。
【0017】
また、合焦点制御部108は、上記重像間変形取得部104により取得された重像間の変形情報を基に被写体距離を求め、AFモータ109は、上記撮影光学系100が被写体に合焦するように、AFモータ109を制御するものである。
【0018】
出力部110は、上記信号処理部107で求められ、上記記録部103に記録された復元画像を出力するものである。
【0019】
制御部111は、外部I/F部112からの指示に応じて、上記記録部103、重像間変形取得部104、画像変形部105、信号強度関係取得部106、信号処理部107、合焦点制御部108を制御するものである。外部I/F部112は、レリーズスイッチや各種ボタン、スイッチ等の入力部材や、LED等の表示部材などのユーザインタフェースである。
【0020】
以下、このような構成における各部の動作を詳細に説明する。
【0021】
撮影光学系100に含まれる多重結像部101により、被写体の像は光学的に多重に結像される。この多重結像部101により多重に結像された被写体の像は、撮像部102により撮像され、電気信号へと変換され、重像画像の画像信号が生成される。
【0022】
この撮像部102において撮像された重像画像は、記録部103へと記録される。
【0023】
以下、上記記録部103において記録された重像画像の復元処理が行われる。
【0024】
ここで、本発明の理解を助けるために、まずはじめに、重像画像の復元処理の原理的説明を行う。ここでは、重像画像に含まれる重像の数を2つに限定し説明を行う。即ち、重像画像は図2(A)に示すような2重像画像となる。ただし、重像画像が3つ以上の重像を含む場合も、以下の原理的説明の拡張により、容易に復元可能である。
【0025】
上記撮影光学系100(多重結像部101)及び撮像部102において撮影された重像画像の画像生成モデルは、以下の(1)式のようになる。
【数1】

【0026】
ここで、yは重像画像、zは重像になる前の画像(復元したい画像)、αは重像画像に含まれる重像間の相対強度(信号強度関係情報)で、0≦α<1である。Iは単位行列である。A(L)は変形量Lだけ画像を変形させるシステム行列である。上記(1)式により2重像を生成している。
【0027】
上記(1)式の2重像を生成するシステム行列
【数2】

【0028】
の逆行列は、
【数3】

【0029】
と書ける。ここで、Kは画像の変形回数を表す。ただし、n=0からKまでの画像変形となるので、実際の変形回数はK+1回となる。復元を行う場合、Kには少なくとも1以上の数を指定しなければならない。
【0030】
上記(3)式より重像画像復元を行うための復元式は、以下の(4)式のようになる。
【数4】

【0031】
この(4)式より画像復元を行うためには、重像画像に対して複数の変形{A(L)}による変形処理を施し、その変形量を(−α)した後で、加算処理を行えばよい事が分かる。また、加算処理後に(1+α)倍をしてやれば、画像の明るさの正規化を行うことが可能となる。
【0032】
以下、図1に示す構成に沿った、画像復元処理の説明を行う。
【0033】
上記記録部103に記録されている重像画像は、重像間変形取得部104に伝送され、重像間の変位量(重像間の変形情報)の取得が行われる。この取得においては、重像画像のヘッダ情報に重像間の変形情報や重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報の記載がある場合はそれを利用する。これに対して、重像間の変形量が未知である場合は、重像間変形取得部104において重像間の変位量の推定が行われる。重像間の変位量の推定は、例えば重像画像の自己相関関数値の計算によって行われる。自己相関関数の計算式の例を、以下の(5)式に示す。
【数5】

【0034】
ここで、y,yはそれぞれτだけ位置がずれた重像画像、iは画像座標、Ωは計算範囲、
【数6】

【0035】
はy,yの計算範囲内での平均値を表す。
【0036】
図3に自己相関関数の例を示す。自己相関数値を計算後、重像間の相関値を表す第2ピークを検出することで、重像間の変位量(重像間の変形情報)を計算している。
【0037】
なお、ここでは1次元空間において自己相関関数の算出を行っている。例えば、重像画像の重像間の変位の方向が既知である場合は、このように重像間の変位の方向に沿った1次元探索により重像間の変位を探索することができる。このような情報は、例えば、上記特許文献1に記載されているような透明板に映る2重像を撮影するという構成であれば、光学的キャリブレーション手法により、重像間の変位の方向を予め取得可能であるので、それを利用する。また、重像画像の重像間変位の方向が未知である場合は、2次元空間における、自己相関関数値の探索を行い、第2ピークの検出を行えば良い。
【0038】
上記重像間変形取得部104で取得された重像間の変形情報は、画像変形部105及び合焦点制御部108へ伝送される。
【0039】
合焦点制御部108へ送られた変形情報は、当該合焦点制御部108に保持されている変形情報と被写体距離との対応関係より、被写体距離へと変換される。この対応関係は、例えば、変形情報と被写体距離との間の関係をキャリブレーションにより求めておき、その関係を合焦点制御部108のルックアップテーブル上に記載しておく。求められた被写体距離量から、合焦点制御部108は、撮影光学系100が被写体に合焦するように、AFモータ109を制御する。
【0040】
一方、画像変形部105では、上記記録部103に記録されている重像画像と上記重像間変形取得部104で取得された重像間の変形情報とを用いて、重像画像に対して変形処理を施す。
【0041】
その変形処理としては、上記(4)式で示したように、複数の変形{A(L)}(ただし、n=0,1,…,K)を行う。ここで、Lは上記重像間変形取得部104で取得された変形情報である。
【0042】
ここで、n=0の時の変形は、以下の(6)式に示すように、
【数7】

【0043】
となり、変位量は無い変形となる。
【0044】
例えば、変形情報Lが平行移動を表す変形量で、L=(2,3)[pixel]であった場合、{A(L)}(ただし、n=0,1,…,K)は、n=0のとき(0,0)の平行移動変形(実際は変形しない)、n=1のとき(2,3)の平行移動変形、n=2のとき(4,6)の平行移動変形、n=Kの時(2K,3K)の平行移動変形となる。
【0045】
ここでは簡単な変形処理の例として、平行移動を例に挙げたが、実際の変形処理は平行移動処理によらず例えば、平行移動処理+拡大処理、アフィン変形処理、射影変形処理等より自由度の高い変形処理を行うが、そのような場合でも、同様な枠組みにより変形処理を行うことが可能である。
【0046】
このようにして上記画像変形部105における画像変形処理によって生成された複数枚の変形画像は、次に、信号処理部107に送られ、実際の復元処理が行われる。また、その信号処理部107には、信号強度関係取得部106において取得される重像間の信号強度関係情報も伝送する。
【0047】
なお、上記信号強度関係取得部106で取得される信号強度関係情報は、撮影光学系100に含まれる、レンズやハーフミラーにおける反射率等により決定する値なので、予め撮影光学系100における光学的キャリブレーションにおいて求めておくのが好ましい。ただし、撮影の都度その強度関係を測定してもかまわないし、また外部I/F部112を介してユーザが指定しても良いものとする。
【0048】
信号処理部107に伝送された、上記信号強度関係取得部106において取得された信号強度関係情報と上記画像変形部105において生成された複数枚の変形画像とを用いて、以下の式(7)により画像の復元処理を行う。
【数8】

【0049】
ここで、信号強度情報αは、信号強度の関係を0≦α<1で表わしている。重像間の信号強度が同一である場合は、α=1であるが、実際のシステム設計では0<α<1であることが好ましい。また、({A(L)}y)は複数の変形処理で変形された複数の変形画像を表している。({A(L)}y)を、(−α)を考慮しながら複数枚加算し、加算後に(1+α)を掛け合わせることで、復元画像zを生成することができる。
【0050】
以上のようにして、重像画像の復元画像を生成する。図2(B)は、図2(A)の2重像画像から生成された復元画像を示している。このようにして生成された復元画像は、上記記録部103へ転送・記録された後、出力部110を介して鑑賞用のリソースとして利用することができる。
【0051】
なお、以上の説明は、重像間の変位を一つの変位として行ってきたが、実際は重像画像を部分毎の部分画像に分け、部分画像上で上記手法を行ってもかまわないものとする。重像画像を複数の部分画像に分け復元処理を行うと、重像間が複雑な動きを持つ場合でも、良好に復元処理を行うことが可能となる。この場合、部分画像として復元処理が行われた復元結果を、最終的に統合する処理を別途行う必要がある。この統合処理を、信号処理部107に含んでいてもかまわないものとする。
【0052】
このような重像画像を部分画像に分けた形で復元処理を行う方法を、図4のフローチャートを使って説明する。
【0053】
即ち、まず、重像間変形取得部104は、記録部103に記録された重像画像を読み込む(ステップS1)。この時、重像画像のヘッダ情報に重像間の変形情報や信号強度関係情報の記載があれば、以下のステップS3及びステップS4で利用するために、ヘッダ情報を読み込んでおく。
【0054】
次に、重像間変形取得部104は、重像画像の部分画像領域を指定する(ステップS2)。ここで、部分画像は、重像画像よりも小さい領域の任意の大きさをとって良い。ここでは、10×10[pixel]の領域とする。
【0055】
そして、重像間変形取得部104は、部分画像領域における重像間の変形量(変形情報)を取得する(ステップS3)。この変形情報は、上記ステップS1で読み込んだヘッダ情報に記載がある場合はそれを利用する。記載がない場合は、重像画像全体及び部分画像領域を用いて、自己相関関数を計算することでその変形量を求める。ここで、予めキャリブレーションを行い、重像間の変形の方向が既知である場合は、その方向に沿った自己相関関数の計算・探索により変形量を求める。未知の場合は、2次元空間による自己相関関数の計算・探索により変形量を求める。
【0056】
次に、信号強度関係取得部106は、部分画像領域における重像間の信号強度関係情報の取得を行う(ステップS4)。この信号強度関係情報は、上記ステップS1で読み込んだヘッダ情報に記載がある場合は、それを利用する。予め、光学的なキャリブレーションにより既知となっていればその値を利用する。
【0057】
その後、制御部111は、複数の画像変形処理を行う場合のパラメータnを0に初期化する(ステップS5)。
【0058】
そして、画像変形部105は、部分画像の変形処理を行う(ステップS6)。変形量は{A(L)}であり、Lは上記ステップS3で取得された重像間の変形情報である。
【0059】
その後、制御部111は、n>Kであるかの判定を行う(ステップS7)。n>Kでない場合には、n=n+1とし(ステップS8)、上記ステップS6へ戻る。
【0060】
これに対して、n>Kである場合には、複数の変形処理により生成された複数の変形部分画像の加算処理を行う(ステップS9)。この時、上記ステップS4で取得された重像間の信号強度情報を考慮する。加算処理の実際は、上記(7)式と同様である(yが部分画像となっているところが異なる)。
【0061】
そして、重像間変形取得部104は、全領域の処理が終了したかの判定を行う(ステップS10)。ここで、全領域の処理が終了していない場合には、部分画像の領域を変更して(ステップS11)、上記ステップS2へ戻る。
【0062】
而して、全領域の処理が終了したならば、信号処理部107は、復元処理が行われた全ての部分画像の統合処理を行う(ステップS12)。実際の統合処理としては、例えば、復元処理が行われた全ての部分画像を、元の重像画像と同一の画像空間において加算して貼り合わせる処理を行い、その張り合わせた画像に対し、ピクセル単位で張り合わせた回数の数で割り算を行い、平均化処理を行うという処理を採っても良い。例えば、10×10[pixel]の部分画像を、1[pixel]毎に移動させながら取得し復元処理を行い、その結果を再び元の重像画像と同一の画像空間に加算しながら張り合わせた場合、ピクセル毎に100で割った値を最終的な復元画像の画素値とする。
【0063】
そして、信号処理部107は、上記ステップS12において統合処理が行われた重像画像の復元結果を最終出力として、記録部103に信号出力して、記録する。
【0064】
以上のように、本第1実施形態によれば、重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得し、該重像間の変形情報を基に、上記重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成し、また、上記重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得して、その信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行うことで、被写体の像が重なっていない復元画像を得ることができる。
【0065】
すなわち、本実施の形態1によれば、重像画像を幾何的に変形せしめるとともにその変形により生成された複数の変形画像を加算することによって、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が多重になっていない復元画像を生成できる。
【0066】
従って、例えば上記特許文献1及び特許文献2に開示されているように撮像装置において重像画像を撮影し距離計測を行う場合でも、重像画像の復元処理を行うことで、観賞用として良好な画像を生成することが可能となる。
【0067】
ところで、従来では、上記特許文献3に開示されているように、例えば、重像画像の一種であるゴースト画像に含まれるゴーストを除去するためにGCR信号を用いるような場合、そのGCR信号を受信している際にはゴースト除去が可能であるが、既にゴースト画像として撮影された映像リソースについては、後から追ってゴースト除去を行うことは不可能であった。
【0068】
さらに、従来では、ゴースト画像に含まれる重像の状態をモデル化し、その逆過程を再現した復元処理によるゴースト除去の手法は、そもそも提案されていなかった。
【0069】
さらに、従来では、重像画像の一種であるフレア画像に含まれる重像の状態をモデル化し、その逆過程を再現した復元処理によるフレア除去の手法も、そもそも提案されていなかった。
【0070】
さらに、従来では、例えば、複数枚の画像の位置合わせ処理及び重ね合わせ処理を行った際、重ね合わせ後に多重像となってしまったときの、ぼかしによる補正は良好な画像補正を行うことができなかった。
【0071】
本第1実施形態によれば、例えば、ゴースト除去時にGCR信号などの基準信号をわざわざ用意する必要なく、簡単な変形処理を施すことによって良好なゴースト除去を行うことが可能となる。また、GCR信号などの基準信号を用意する必要がないため、既にゴースト画像として撮影された映像リソースについても、簡単な変形処理を施すことによって、後から追ってゴースト除去を行うことが可能となる。さらに、本第1実施形態によれば、ゴースト画像に含まれる重像の状態をモデル化し、その逆過程を再現した復元処理、すなわち、本第1実施形態に係る変形処理および加算処理によるゴースト除去を行うため、簡便かつ高精度にゴーストの除去を行うことが可能となる。
【0072】
また、例えば、フレア除去時にフレア画像に含まれる重像の状態をモデル化し、その逆過程を再現した復元処理によるフレア除去を行うことができるため、簡便かつ高精度にフレアの除去を行うことが可能となる。
【0073】
また例えば、複数枚の画像の位置合わせ及び重ね合わせ処理を行った場合に、重ね合わせ後に多重像になった場合でも、ぼかしによる補正等を行うことなく、多重像の状態をモデル化しその逆過程を再現した復元処理による、多重像の復元を行うことができるため、従来よりも高画質な画像補正を行うことが可能となる。
【0074】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。なお、同図において、実太線の矢印は映像信号の流れを、実細線の矢印は制御信号の流れを、破線の矢印はその他の信号の流れを、それぞれ示している。
【0075】
本画像処理装置は、入力部200、記録部201、重像間変形取得部202、画像変形部203、信号強度関係取得部204、信号処理部205、出力部206、制御部207、及び外部I/F部208から構成される。
【0076】
入力部200は、画像の入力処理を行うものである。記録部201は上記第1実施形態における記録部103に、重像間変形取得部202は上記第1実施形態における重像間変形取得部104に、画像変形部203は上記第1実施形態における画像変形部105に、信号強度関係取得部204は上記第1実施形態における信号強度関係取得部106に、信号処理部205は上記第1実施形態における信号処理部107に、出力部206は上記第1実施形態における出力部110に、制御部207は上記第1実施形態における制御部111に、外部I/F部208は上記第1実施形態における外部I/F部112に、それぞれ対応するものである。
【0077】
以下、このような構成における各部の動作を詳細に説明する。
【0078】
入力部200において入力された重像画像は、記録部201へと記録される。この入力部200において入力される画像は、任意の画像の入力が可能であるとし、重像画像に限定されない。重像画像でない場合でも、記録部201に記録が行われた後、出力部206において出力処理を行うことができる。重像画像である場合は、重像間変形取得部202、画像変形部203、信号強度関係取得部204、及び信号処理部205を介して重像画像の復元処理が行われる。
【0079】
ここで、重像画像とは、被写体の像が多重になっている画像全般を表し、具体的には、撮像装置により被写体を多重に結像することで撮影された画像、または電気的、光学的な作用により被写体の像が多重となっているゴースト画像、フレア画像、または複数枚の画像の位置合わせを行い、その複数枚の画像の重ね合わせを行った際に、位置合わせ処理の失敗により被写体の像が多重になってしまった画像等を表す。
【0080】
重像画像の復元処理の原理的仕組みは、第1実施形態において前述した通りである。
【0081】
以下、図5に示す構成に沿った、画像復元処理の説明を行う。
【0082】
記録部201に記録されている重像画像は、重像間変形取得部202に伝送され、重像間の変位量(重像間の変形情報)の取得が行われる。この取得においては、重像画像のヘッダ情報に重像間変位情報や重像間の信号強度の関係示す信号強度関係情報の記載がある場合はそれを利用する。これに対して、重像間の変形量が未知である場合は、重像間変形取得部202において重像間の変位量の推定が行われる。重像間の変位量の推定は、例えば重像画像の自己相関関数値の計算によって行われる。自己相関関数の計算式の例は、上述した(5)式の通りである。
【0083】
また、自己相関関数の例は、図3に示すようなものである。自己相関数値を計算後、重像間の相関値を表す第2ピークを検出することで、重像間の変形情報を計算している。
【0084】
なお、ここでは1次元空間において自己相関関数の算出を行っている。例えば、重像画像の重像間の変位の方向が既知である場合は、このように重像間の変位の方向に沿った1次元探索により重像間の変位を探索することができる。このような情報は、例えば、記録部201に記録されている重像画像のヘッダ情報等に記載しておき、その情報を読み取ることで既知とすることができる。また、重像画像の重像間変位の方向が未知である場合は、2次元空間における、自己相関関数値の探索を行い、第2ピークの検出を行えば良い。
【0085】
上記重像間変形取得部202で取得された画像間の変形情報は、画像変形部203へ伝送される。
【0086】
画像変形部203では、上記記録部201に記録されている重像画像と上記重像間変形取得部202で取得された重像間の変形情報とを用いて、重像画像に対して変形処理を施す。
【0087】
その変形処理としては、上記(4)式で示したように、複数の変形{A(L)}(ただし、n=0,1…,,K)を行う。ここで、Lは重像間変形取得部202で取得された変形情報である。
【0088】
ここで、n=0の時の変形は、上記(6)式となり、変位量は無い変形となる。
【0089】
例えば、変形情報Lが平行移動を表す変形量で、L=(2,3)[pixel]であった場合、{A(L)}(ただし、n=0,1,…,K)はn=0のとき(0,0)の平行移動変形(実際は変形しない)、n=1のとき(2,3)の平行移動変形、n=2のとき(4,6)の平行移動変形、n=Kの時(2K,3K)の平行移動変形となる。
【0090】
ここでは簡単な変形処理の例として、平行移動処理を例に挙げたが、実際の変形処理は平行移動処理によらず例えば、平行移動処理+拡大処理、アフィン変形処理、射影変形処理等より自由度の高い変形処理を行うが、そのような場合でも、同様な枠組みにより変形処理を行うことが可能である。
【0091】
このようにして上記画像変形部203における画像変形処理によって生成された複数枚の変形画像は、次に、信号処理部205に送られ、実際の復元処理が行われる。また、その信号処理部205には、信号強度関係取得部204において取得される重像間の信号強度の関係を伝送する。
【0092】
なお、上記信号強度関係取得部204で取得される信号強度の関係は、予め重像画像のヘッダ情報として含まれていることが好ましい。ただし、重像画像が入力されたその都度強度関係を測定してもかまわないし、また外部I/F部208を介してユーザが指定しても良いものとする。
【0093】
信号処理部205に伝送された、上記信号強度関係取得部204において取得された信号強度の関係と上記画像変形部203において生成された複数枚の変形画像とを用いて、上記(7)式により画像の復元処理を行う。
【0094】
上述したように、上記(7)式の信号強度情報αは、信号強度の関係を0≦α<1で表わしており、重像間の信号強度が同一である場合は、α=1であるが、実際のシステム設計では0<α<1であることが好ましい。また、({A(L)}y)は複数の変形処理で変形された複数の変形画像を表しており、({A(L)}y)を、(−α)を考慮しながら複数枚加算し、加算後に(1+α)を掛け合わせることで、復元画像zを生成することができる。
【0095】
以上のようにして、重像画像の復元画像を生成する。生成された復元画像は、記録部201へ転送・記録され、出力部206を介して鑑賞用のリソースとして利用することができる。
【0096】
なお、本第2実施形態においても、重像間の変位を一つの変位として行うだけでなく、上記第1実施形態で説明したように、実際は重像画像を部分毎の部分画像に分け、部分画像上で上記手法を行ってもかまわないものとする。重像画像を複数の部分画像に分け復元処理を行うと、重像間が複雑な動きをもつ場合でも、良好に復元処理を行うことが可能となる。この場合、部分画像として復元処理が行われた復元結果を、最終的に統合する処理を別途行う。この統合処理を、信号処理部205に含んでいてもかまわないものとする。
【0097】
上記重像画像を部分画像に分けた形で復元処理を行う方法は、上記第1実施形態において図4のフローチャートを用いて説明したのと同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0098】
以上のように、上記第1実施形態のように撮影装置に組み込むのではなく、画像処理装置を単体として構成することで、該画像処理装置を持たない撮影装置で撮影された重像画像等、外部から入力される重像画像から復元画像を得ることができるようになる。
【0099】
以上、第1及び第2実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0100】
例えば、上記実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータがこのプログラムを実行することによって、上記機能を実現することも可能である。
【0101】
(付記)
前記の具体的実施形態から、以下のような構成の発明を抽出することができる。
【0102】
(1) 被写体の像が多重になっている重像画像の入力処理を行う画像入力部と、
上記画像入力部により入力された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得する重像間変形取得部と、
上記重像間変形取得部により取得された重像間の変形情報を基に、上記画像入力部により入力された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成する画像変形部と、
上記画像入力部により入力された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得する信号強度関係取得部と、
上記信号強度関係取得部により取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う信号処理部と、
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【0103】
(対応する実施形態)
この(1)に記載の画像処理装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。それらの実施形態において、一例として、撮影光学系100,多重結像部101,撮像部102及び入力部200が上記画像入力部に、重像間変形取得部104及び重像間変形取得部202が上記重像間変形取得部に、画像変形部105及び画像変形部203が上記画像変形部に、信号強度関係取得部106及び信号強度関係取得部204が上記信号強度関係取得部に、信号処理部107及び信号処理部205が上記信号処理部に、それぞれ対応する。
【0104】
(作用効果)
この(1)に記載の画像処理装置は、重像画像(y)に含まれる重像間の変形情報(L)を取得し、該重像間の変形情報を基に、上記重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像({A(L)}y)を生成し、また、上記重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報(α)を取得して、その信号強度関係情報を用いて、例えば、上記(7)式のように上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う。なお、変位量がない変形、すなわち単位行列を施す変形も1回の変形処理に含ませてもよい。この場合、単位行列の変形処理が施された画像も上述の「変形画像」に含まれる。
従って、この(1)に記載の画像処理装置によれば、例えば、上記(7)式に示すように、信号強度関係情報(α)を用いて、重像画像(y)を幾何的に変形して生成された複数の変形画像({A(L)}y)の加算処理を行うことによって、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が重なっていない復元画像(z)を得ることができる。
【0105】
(2) 上記画像変形部は、上記変形処理として、画像の平行移動処理を行うことを特徴とする(1)に記載の画像処理装置。
【0106】
(対応する実施形態)
この(2)に記載の画像処理装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。
【0107】
(作用効果)
この(2)に記載の画像処理装置によれば、重像画像のうち最も発生率の高いものを簡単な処理で高速に復元することができる。
【0108】
(3) 上記画像変形部は、上記変形処理として、画像の拡大処理及び平行移動処理を合わせた変形を行うことを特徴とする(1)に記載の画像処理装置。
【0109】
(対応する実施形態)
この(3)に記載の画像処理装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。
【0110】
(作用効果)
この(3)に記載の画像処理装置によれば、多重になった被写体間に平行且つ拡大/縮小の関係がある重像画像から復元画像を得ることができる。
【0111】
(4) 上記重像間変形取得部は、予め取得した上記重像画像上の重像間変位の変位方向を利用して、重像間の変形情報を取得することを特徴とする(1)乃至(3)の何れかに記載の画像処理装置。
【0112】
(対応する実施形態)
この(4)に記載の画像処理装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。
【0113】
(作用効果)
この(4)に記載の画像処理装置によれば、高速且つ正確な変形情報を取得できる。
【0114】
(5) 上記画像変形部は、上記重像画像に対する、上記予め取得した重像間変位の変位方向に沿った変形処理を行うことを特徴とする(4)に記載の画像処理装置。
【0115】
(対応する実施形態)
この(5)に記載の画像処理装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。
【0116】
(作用効果)
この(5)に記載の画像処理装置によれば、高速且つ正確に復元を行うことが可能である。
【0117】
(6) 上記重像間変形取得部、上記画像変形部、上記信号強度関係取得部及び上記信号処理部は、画像の一部である部分領域毎にそれぞれ処理を行うことを特徴とする(1)乃至(5)の何れかに記載の画像処理装置。
【0118】
(対応する実施形態)
この(6)に記載の画像処理装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。
【0119】
(作用効果)
この(6)に記載の画像処理装置によれば、重像間が複雑な動きを持つ場合でも、良好に復元処理を行うことが可能となる。
【0120】
(7) 上記重像間変形取得部、上記画像変形部、上記信号強度関係取得部及び上記信号処理部は、画像の一部である部分領域毎にそれぞれ処理を行い、上記部分領域毎の処理結果を統合することで画像全体の復元画像を生成することを特徴とする(1)乃至(5)の何れかに記載の画像処理装置。
【0121】
(対応する実施形態)
この(7)に記載の画像処理装置に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。
【0122】
(作用効果)
この(7)に記載の画像処理装置によれば、重像間が複雑な動きを持つ場合でも、良好に復元処理を行うことが可能となる。
【0123】
(8) 被写体の光束を結像する撮影光学系と、
上記撮影光学系内において被写体の像を多重に結像させる多重結像部と、
上記撮影光学系からの光を電気信号に変換し、該変換した電気信号から画像信号を生成する画像信号生成部と、
上記撮影光学系、多重結像部及び画像信号生成部により生成された、少なくとも2つ以上の像を多重に有する重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得する重像間変形取得部と、
上記重像間変形取得部により取得された重像間の変形情報を基に、上記重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成する画像変形部と、
上記重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得する信号強度関係取得部と、
上記信号強度関係取得部により取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う信号処理部と、
を具備することを特徴とする撮像装置。
【0124】
(対応する実施形態)
この(8)に記載の撮像装置に関する実施形態は、第1実施形態が対応する。その実施形態において、一例として、撮影光学系100が上記撮影光学系に、多重結像部101が上記多重結像部に、撮像部102が上記画像信号生成部に、重像間変形取得部104が上記重像間変形取得部に、画像変形部105が上記画像変形部に、信号強度関係取得部106が上記信号強度関係取得部に、信号処理部107が上記信号処理部に、それぞれ対応する。
【0125】
(作用効果)
この(8)に記載の撮像装置は、撮像した重像画像(y)に含まれる重像間の変形情報(L)を取得し、該重像間の変形情報を基に、上記重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像({A(L)}y)を生成し、また、上記重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報(α)を取得して、その信号強度関係情報を用いて、例えば、上記(7)式のように上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う。なお、変位量がない変形、すなわち単位行列を施す変形も1回の変形処理に含ませてもよい。この場合、単位行列の変形処理が施された画像も上述の「変形画像」に含まれる。
従って、この(8)に記載の撮像装置によれば、例えば、上記(7)式に示すように、信号強度関係情報(α)を用いて、重像画像(y)を幾何的に変形して生成された複数の変形画像({A(L)}y)の加算処理を行うことによって、被写体の像が多重になっている重像画像を撮像しても、被写体の像が重なっていない復元画像(z)を得ることができる。
【0126】
(9) 上記画像変形部は、上記変形処理として、画像の平行移動処理を行うことを特徴とする(8)に記載の撮像装置。
【0127】
(対応する実施形態)
この(9)に記載の撮像装置に関する実施形態は、第1実施形態が対応する。
【0128】
(作用効果)
この(9)に記載の撮像装置によれば、重像画像のうち最も発生率の高いものを簡単な処理で高速に復元することができる。
【0129】
(10) 上記画像変形部は、上記変形処理として、画像の拡大処理及び平行移動処理を合わせた変形を行うことを特徴とする(8)に記載の撮像装置。
【0130】
(対応する実施形態)
この(10)に記載の撮像装置に関する実施形態は、第1実施形態が対応する。
【0131】
(作用効果)
この(10)に記載の撮像装置によれば、多重になった被写体間に平行且つ拡大/縮小の関係がある重像画像から復元画像を得ることができる。
【0132】
(11) 上記重像間変形取得部は、予め取得した上記重像画像上の重像間変位の変位方向を利用して、重像間の変形情報を取得することを特徴とする(8)乃至(10)の何れかに記載の撮像装置。
【0133】
(対応する実施形態)
この(11)に記載の撮像装置に関する実施形態は、第1実施形態が対応する。
【0134】
(作用効果)
この(11)に記載の撮像装置によれば、高速且つ正確な変形情報を取得できる。
【0135】
(12) 上記画像変形部は、上記重像画像に対する、上記予め取得した重像間変位の変位方向に沿った変形処理を行うことを特徴とする(11)に記載の撮像装置。
【0136】
(対応する実施形態)
この(12)に記載の撮像装置に関する実施形態は、第1実施形態が対応する。
【0137】
(作用効果)
この(12)に記載の撮像装置によれば、高速且つ正確に復元を行うことが可能である。
【0138】
(13) 上記重像間変形取得部、上記画像変形部、上記信号強度関係取得部及び上記信号処理部は、画像の一部である部分領域毎にそれぞれ処理を行うことを特徴とする(8)乃至(12)の何れかに記載の撮像装置。
【0139】
(対応する実施形態)
この(13)に記載の撮像装置に関する実施形態は、第1実施形態が対応する。
【0140】
(作用効果)
この(13)に記載の撮像装置によれば、重像間が複雑な動きを持つ場合でも、良好に復元処理を行うことが可能となる。
【0141】
(14) 上記重像間変形取得部、上記画像変形部、上記信号強度関係取得部及び上記信号処理部は、画像の一部である部分領域毎にそれぞれ処理を行い、上記部分領域毎の処理結果を統合することで画像全体の復元画像を生成することを特徴とする(8)乃至(12)の何れかに記載の撮像装置。
【0142】
(対応する実施形態)
この(14)に記載の撮像装置に関する実施形態は、第1実施形態が対応する。
【0143】
(作用効果)
この(14)に記載の撮像装置によれば、重像間が複雑な動きを持つ場合でも、良好に復元処理を行うことが可能となる。
【0144】
(15) 被写体の像が多重になっている重像画像の入力処理を行うステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得するステップと、
上記取得された重像間の変形情報を基に、上記入力された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成するステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得するステップと、
上記取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行うステップと、
をコンピュータに発揮させることを特徴とする画像処理プログラム。
【0145】
(対応する実施形態)
この(15)に記載の画像処理プログラムに関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。
【0146】
(作用効果)
この(15)に記載の像処理プログラムは、コンピュータにより、重像画像(y)に含まれる重像間の変形情報(L)を取得し、該重像間の変形情報を基に、上記重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像({A(L)}y)を生成し、また、上記重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報(α)を取得して、その信号強度関係情報を用いて、例えば、上記(7)式のように上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う。なお、変位量がない変形、すなわち単位行列を施す変形も1回の変形処理に含ませてもよい。この場合、単位行列の変形処理が施された画像も上述の「変形画像」に含まれる。
従って、この(15)に記載の画像処理プログラムによれば、コンピュータにより、例えば、上記(7)式に示すように、信号強度関係情報(α)を用いて、重像画像(y)を幾何的に変形して生成された複数の変形画像({A(L)}y)の加算処理を行うことによって、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が重なっていない復元画像(z)を得ることができる。
【0147】
(16) 被写体の像が多重になっている重像画像の入力処理を行うステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得するステップと、
上記取得された重像間の変形情報を基に、上記入力された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成するステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得するステップと、
上記取得された信号強度関係情報を基に、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像を加算処理して、被写体の像が多重になっていない復元画像を生成するステップと、
を具備することを特徴とする画像処理方法。
【0148】
(対応する実施形態)
この(16)に記載の画像処理方法に関する実施形態は、第1及び第2実施形態が対応する。
【0149】
(作用効果)
この(16)に記載の像処理方法は、重像画像(y)に含まれる重像間の変形情報(L)を取得し、該重像間の変形情報を基に、上記重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像({A(L)}y)を生成し、また、上記重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報(α)を取得して、その信号強度関係情報を用いて、例えば、上記(7)式のように上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う。なお、変位量がない変形、すなわち単位行列を施す変形も1回の変形処理に含ませてもよい。この場合、単位行列の変形処理が施された画像も上述の「変形画像」に含まれる。
従って、この(16)に記載の画像処理方法によれば、例えば、上記(7)式に示すように、信号強度関係情報(α)を用いて、重像画像(y)を幾何的に変形して生成された複数の変形画像({A(L)}y)の加算処理を行うことによって、被写体の像が多重になっている重像画像から被写体の像が重なっていない復元画像(z)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。
【図2】図2(A)は、2重像画像の例を示す図であり、図2(B)は、図2(A)の2重像画像から生成された復元画像を示す図である。
【図3】図3は、自己相関関数の例を示す図である。
【図4】図4は、第1実施形態において重像画像を部分画像に分けた形で復元処理を行う方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0151】
100…撮影光学系、 101…多重結像部、 102…撮像部、 103,201…記録部、 104,202…重像間変形取得部、 105,203…画像変形部、 106,204…信号強度関係取得部、 107,205…信号処理部、 108…合焦点制御部、 109…AFモータ、 110,206…出力部、 111,207…制御部、 112,208…外部I/F部、 200…入力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の像が多重になっている重像画像の入力処理を行う画像入力部と、
上記画像入力部により入力された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得する重像間変形取得部と、
上記重像間変形取得部により取得された重像間の変形情報を基に、上記画像入力部により入力された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成する画像変形部と、
上記画像入力部により入力された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得する信号強度関係取得部と、
上記信号強度関係取得部により取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う信号処理部と、
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
上記画像変形部は、上記変形処理として、画像の平行移動処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記画像変形部は、上記変形処理として、画像の拡大処理及び平行移動処理を合わせた変形を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記重像間変形取得部は、予め取得した上記重像画像上の重像間変位の変位方向を利用して、重像間の変形情報を取得することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記画像変形部は、上記重像画像に対する、上記予め取得した重像間変位の変位方向に沿った変形処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記重像間変形取得部、上記画像変形部、上記信号強度関係取得部及び上記信号処理部は、画像の一部である部分領域毎にそれぞれ処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記重像間変形取得部、上記画像変形部、上記信号強度関係取得部及び上記信号処理部は、画像の一部である部分領域毎にそれぞれ処理を行い、上記部分領域毎の処理結果を統合することで画像全体の復元画像を生成することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
被写体の光束を結像する撮影光学系と、
上記撮影光学系内において被写体の像を多重に結像させる多重結像部と、
上記撮影光学系からの光を電気信号に変換し、該変換した電気信号から画像信号を生成する画像信号生成部と、
上記撮影光学系、多重結像部及び画像信号生成部により生成された、少なくとも2つ以上の像を多重に有する重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得する重像間変形取得部と、
上記重像間変形取得部により取得された重像間の変形情報を基に、上記重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成する画像変形部と、
上記重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得する信号強度関係取得部と、
上記信号強度関係取得部により取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行う信号処理部と、
を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
上記画像変形部は、上記変形処理として、画像の平行移動処理を行うことを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
上記画像変形部は、上記変形処理として、画像の拡大処理及び平行移動処理を合わせた変形を行うことを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項11】
上記重像間変形取得部は、予め取得した上記重像画像上の重像間変位の変位方向を利用して、重像間の変形情報を取得することを特徴とする請求項8乃至10の何れかに記載の撮像装置。
【請求項12】
上記画像変形部は、上記重像画像に対する、上記予め取得した重像間変位の変位方向に沿った変形処理を行うことを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
上記重像間変形取得部、上記画像変形部、上記信号強度関係取得部及び上記信号処理部は、画像の一部である部分領域毎にそれぞれ処理を行うことを特徴とする請求項8乃至12の何れかに記載の撮像装置。
【請求項14】
上記重像間変形取得部、上記画像変形部、上記信号強度関係取得部及び上記信号処理部は、画像の一部である部分領域毎にそれぞれ処理を行い、上記部分領域毎の処理結果を統合することで画像全体の復元画像を生成することを特徴とする請求項8乃至12の何れかに記載の撮像装置。
【請求項15】
被写体の像が多重になっている重像画像の入力処理を行うステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得するステップと、
上記取得された重像間の変形情報を基に、上記入力された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成するステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得するステップと、
上記取得された信号強度関係情報を用いて、上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像の加算処理を行うステップと、
をコンピュータに発揮させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項16】
被写体の像が多重になっている重像画像の入力処理を行うステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の変形情報を取得するステップと、
上記取得された重像間の変形情報を基に、上記入力された重像画像に対して少なくとも2回以上の変形処理を施して幾何的に変形させることによって、少なくとも2枚以上の変形画像を生成するステップと、
上記入力された重像画像に含まれる重像間の信号強度の関係を示す信号強度関係情報を取得するステップと、
上記取得された信号強度関係情報を基に上記変形処理により生成された少なくとも2枚以上の変形画像を加算して、被写体の像が多重になっていない復元画像を生成するステップと、
を具備することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−134357(P2009−134357A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307902(P2007−307902)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】