説明

画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】原稿の読み取り時に発生する他の画像ノイズの影響を受けずに、走査光の光路上のゴミによって生じ得る筋状の画像ノイズの高精度な検知を可能とする画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体を提供すること。
【解決手段】本発明の画像処理装置は、原稿の代わりに、画像処理装置が備える走査光を反射する部材をスキャンして検知用画像データを生成し、当該検知用画像データの副走査方向に連続する任意の数の画素を検知範囲として、副走査方向に延在する画像ノイズを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像ノイズの検出技術に関し、より詳細には、原稿の読み取り時に形成される画像ノイズを検出する画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MFP(Multiple Function Peripheral)等の画像処理装置を使用して原稿をスキャニングし、コピー処理やFAX送信、ネットワークを介した画像データの配信等が行われている。このような画像処理装置は、読み取るべき原稿をADF(Auto Document Feeder)で搬送し、搬送中の原稿に光を照射し、その反射光をCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサで受光して画像データを生成する。しかしながら、このような画像処理装置は、CCDイメージセンサが受光する走査光の光路上に埃や塵等のゴミが存在する場合、そのままの状態で原稿をスキャニングすると、生成された画像データに副走査方向に延在する筋状の画像ノイズを形成してしまう。
【0003】
この点につき、スキャニング時に生じる筋状の画像ノイズを検出する様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1は、副走査方向に延在する筋状の画像ノイズを検知する画像読取装置を開示する。この画像読取装置は、副走査方向に連続する3列の主走査ラインの画素からノイズが検出されると、これらのラインに副走査方向に筋状の画像ノイズが発生していると判断して検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、原稿をスキャニングして画像データを生成する場合、筋状の画像ノイズ以外にも、微少な画像ノイズが点在したドット状の画像ノイズなどの他の画像ノイズが画像データ上に形成されることがある。上述した従来の検出技術を採用する画像処理装置では、このような他の画像ノイズによる影響を考慮していないため、当該画像ノイズを筋状の画像ノイズと誤って判断してしまう虞がある。さらに、ドット状の画像ノイズが画像データ内に形成されることにより、図7に示すように、筋状の画像ノイズとドット状の画像ノイズとの濃淡差が小さくなり、筋状の画像ノイズの検出精度が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、原稿の読み取り時に発生する他の画像ノイズの影響を受けずに、走査光の光路上のゴミによって生じ得る筋状の画像ノイズの高精度な検知を可能とする画像処理装置、方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、原稿の代わりに、画像処理装置が備える走査光を反射する部材をスキャンして検知用画像データを生成し、当該検知用画像データの副走査方向に連続する任意の数の画素を検知範囲として、副走査方向に延在する画像ノイズを検知する。これにより、原稿の読み取り時に発生する他の画像ノイズの影響を受けずに、光路上のゴミによって生じ得る筋状の画像ノイズを高精度に検知することができる。
【0007】
本発明は、検知用画像データを生成し、当該検知用画像データの副走査方向に連続する任意の数の画素を検知範囲として、副走査方向に延在する画像ノイズを検知する方法、プログラムおよび記録媒体提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の画像処理システムの実施形態を示す図。
【図2】本実施形態の画像処理装置に含まれるスキャナ補正部が有する機能手段の詳細を示す図。
【図3】本実施形態の画像処理装置のスキャナ補正部に含まれる検知部の回路図。
【図4】本実施形態の画像処理装置が、副走査方向に延在する画像ノイズを検知する方法を示す概念図。
【図5】他の実施形態に係る画像処理装置のスキャナ補正部に含まれる検知部が行うγ補正による入力画像の反射率の変化を示す図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る画像処理装置のスキャナ補正部に含まれる検知部の回路図。
【図7】筋状の画像ノイズとドット状の画像ノイズとの濃淡差を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態をもって説明するが、本発明は、後述する実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明の画像処理システムの実施形態を示す。画像処理システム100は、ネットワーク130を介して接続された画像処理装置110と、情報処理装置140とを含んで構成される。
【0010】
画像処理装置110は、印刷機能やスキャニング機能、コピー機能等を搭載したMFPとして構成され、原稿をスキャンして画像データを生成し、画像データを用紙に印刷し、画像データをFAX送信し、および/またはネットワーク130を介して情報処理装置140に配信する。また、画像処理装置110は、ネットワークプリンタとして機能し、情報処理装置140から受信する印刷データを用紙に印刷する。
【0011】
画像処理装置110は、プロセッサ、RAM、HDDなどを含んで実装されており、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)などのOSの制御下で、アセンブラ、C、C++、JAVA(登録商標)、JavaScript(登録商標)などのプログラミング言語で記述されたプログラムを実行し、後述する本実施形態の各機能手段を当該印刷装置上に実現する。また、画像処理装置110は、必要に応じて、Firefox(登録商標)といったブラウザプログラムを実装し、HTML、XHTML、XMLなどのマークアップ言語で記述された構造化文書を使用してデータ共有を行うことができる。さらに、画像処理装置110は、NETBIOS、NETBIOS over TCP、TCP/IP、WSD、UDPなどのプロトコルで、例えばSNMP(Simple Network Management Protocol)などを使用して情報処理装置140との間のデータ通信が可能である。
【0012】
情報処理装置140は、オフィスなどに配置されるPC等の情報処理装置であり、画像処理装置110に対して印刷データ等を送信して印刷させ、および/または、画像処理装置110からスキャニングで生成された画像データを取得する。情報処理装置140は、シングルコアやマルチコアなどのCPUを搭載し、RAM、ROM、ハードディスク装置、ネットワークインタフェースカード(NIC)を含み、Windows(登録商標)、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)、Mac OS(登録商標)等の情報処理装置140に実装可能なOSの下で、画像処理装置110との間でデータの送受信を行う。
【0013】
ネットワーク130は、1000Base−Tや1000Base−TXなどのイーサネット(登録商標)、光ネットワーク、IEEE802.11などの規格の無線ネットワークを含んで構成することができるネットワークである。また、ネットワーク130は、LANの他、VPN(Virtual Private Network)などによるセキュア環境下で構築されたインターネットなどの広域ネットワークを含んで構成されていてもよい。
【0014】
図1に示す実施形態では、画像処理装置110は、スキャナ111と、スキャナ補正部112と、圧縮処理部113とを含んで構成される。
【0015】
スキャナ111は、光源装置や反射ミラー、CCDイメージセンサ等を含んで構成されており、ADFによって搬送された原稿122をスキャニングしてアナログ形式の画像データを作成し、これにA/D変換を施して、デジタル形式の画像データ(以下、「原稿画像データ」とする。)を生成する。また、スキャナ111は、原稿122をスキャニングせずに、原稿122が搬送される位置の上部に設置され、かつ搬送中の原稿122に照射すべき走査光を反射可能な部材である白色のガイドをスキャンして、アナログ形式の画像データを作成し、これにA/D変換を施して、画像ノイズ検知用の画像データ(以下、「検知用画像データ」とする。)を生成する。スキャナ111は、これらの原稿画像データおよび検知用画像データをスキャナ補正部112に渡す。
【0016】
本実施形態では、スキャナ111は、原稿122をスキャンして原稿画像データを生成する前に、予備的なスキャニングを行って検知用画像データを生成する。他の実施形態では、原稿122をスキャンして原稿画像データを生成した後に、予備的なスキャニングを行って検知用画像データを生成してもよい。
【0017】
スキャナ補正部112は、スキャナ111が生成した画像データから画像ノイズを検知して、種々の画像処理を施す機能手段である。スキャナ補正部112は、検知用画像データを使用して画像ノイズを検知し、その検知結果を利用して、原稿画像データに対して画像ノイズの除去処理等の画像処理を施す。なお、スキャナ補正部112の詳細については、図2を参照して詳細に説明する。
【0018】
本実施形態では、白色ガイドをスキャンして生成した検知用画像データを使用して画像ノイズを検知するが、他の実施形態では、他の色のガイドをスキャンして生成した検知用画像データを使用して画像ノイズを検知してもよい。さらに、他の実施形態では、白紙または1の色から成る用紙をスキャンして生成した検知用画像データを使用して画像ノイズを検知してもよい。
【0019】
圧縮処理部113は、スキャナ補正部112が画像処理を施した原稿画像データを圧縮し、汎用バス114を介してコントローラ115に送信する。
【0020】
また、画像処理装置110は、コントローラ115と、画像データバッファ116と、NIC117とを含んで構成される。
【0021】
コントローラ115は、画像処理装置110の全体制御を行う機能手段である。コントローラ115は、ユーザが発行する各種要求、例えば、原稿の複写要求、印刷データの印刷要求、画像データの配信要求に応じて、各要求に対応する処理を実行する。
【0022】
原稿を複写する場合、コントローラ115は、圧縮処理部113から受信した原稿画像データを画像データバッファ116にバッファリングした後、画像データバッファ116からFIFO形式で原稿画像データを取得し、汎用バス114を介して伸張処理部118に渡す。
【0023】
原稿画像データを配信する場合、コントローラ115は、圧縮処理部113から受信した原稿画像データを画像データバッファ116にバッファリングした後、画像データバッファ116からFIFO形式で原稿画像データを取得して伸張する。コントローラ115は、伸張した原稿画像データを、JPEGやTIFF、GIF等の種々の画像データ形式にフォーマット変換すると共に解像度を変換し、NIC117に渡す。NIC117は、当該原稿画像データを、ネットワーク130を介して配信先である情報処理装置140やFAX送信先に送信する。
【0024】
印刷データを印刷出力する場合、コントローラ115は、NIC117を介して情報処理装置140から受信したPDL(Page Description Language)で記述された印刷データを解析し、ビットマップ形式の画像データを生成する。そして、コントローラ115は、当該画像データを圧縮し、汎用バス114を介して伸張処理部118に渡す。
【0025】
さらに、画像処理装置110は、伸張処理部118と、プリンタ補正部119と、プロッタ120とを含んで構成される。
【0026】
伸張処理部118は、コントローラ115から渡された圧縮済みの画像データを伸張し、プリンタ補正部119に渡す。プリンタ補正部119は、プロッタ120の有する種々の特性に応じて、伸張された画像データに対して種々の画像処理を施して、画像データに含まれる文字等の構成要素の判読性を向上させる。具体的には、プリンタ補正部119は、プロッタ120の周波数特性に応じて画像データにγ補正を施すと共に、画像データの濃度変化をエッジ量として検出する。そして、プリンタ補正部119は、プロッタ120の階調特性や当該エッジ量に応じて、ディザ処理や誤差拡散処理等の量子化を行い、階調補正を行う。プロッタ120は、プリンタ補正部119が画像処理した画像データを用紙等の印刷媒体に印刷して出力用紙124を排出する。
【0027】
図1に示す実施形態では、画像データを圧縮または伸張する機能手段として圧縮処理部113および伸張処理部118を備えているが、汎用バス114の帯域が充分に広く、画像データバッファ116の容量に余裕がある場合には、これらの機能手段を省略することもできる。
【0028】
図2は、本実施形態の画像処理装置に含まれるスキャナ補正部が有する機能手段の詳細を示す図である。以下、図2を参照して、スキャナ補正部112の機能構成について説明する。
【0029】
スキャナ補正部112は、検知部200と、像域分離部202と、変換部204と、フィルタ処理部206と、色補正部208と、文字補正部210とを含む。
【0030】
検知部200は、スキャナ111が生成した検知用画像データに画像ノイズが含まれているか検知し、原稿画像データから画像ノイズを除去する機能手段である。なお、検知部200の詳細については、図3を参照して詳細に説明する。
【0031】
像域分離部202は、検知部200が出力した原稿画像データを、黒色の文字のエッジに相当する領域(以下、「黒文字エッジ領域」とする。)、黒色以外の文字のエッジに相当する領域(以下、「色エッジ文字領域」とする。)、および/またはその他の領域に分離する。具体的には、像域分離部202は、画像データを構成する各画素について、パターンマッチング等を用いて該当する領域を判断し、各領域を固有に識別する像域識別信号を各画素に付与する。後述する機能手段は、当該像域識別信号を使用して、画像データの領域の種別を判定することができる。
【0032】
変換部204は、像域分離部202が領域判定した原稿画像データにγ補正を施して反射率データから濃度データに変換する。
【0033】
フィルタ処理部206は、変換部204が変換した原稿画像データに対して、画像データの領域の種類に応じたフィルタリングを施す。具体的には、フィルタ処理部206は、像域識別信号を使用して領域の種類を判断する。そして、原稿画像データのうちの黒文字エッジ領域および色エッジ文字領域には鮮鋭化処理を施し、文字の判読性を向上させる。一方、その他の領域、すなわち、写真などを含む領域については、当該領域内の濃度変化をエッジ量とし、当該エッジ量に応じて平滑化処理や鮮鋭化処理を施して、写真に含まれる文字の判読性を向上させる。
【0034】
色補正部208は、RGB色形式の原稿画像データをCMYBk色形式の原稿画像データに変換する。具体的には、画像処理装置110が出力すべき出力画像がカラー画像の場合、フィルタ処理部206は、原稿画像データの黒文字エッジ領域をBk単色に変換する。黒文字エッジ領域以外の領域、すなわち、色エッジ文字領域またはその他の領域については、フィルタ処理部206は、RGB色形式の原稿画像データを一次濃度マスキング法等でCMY色形式に変換し、CMY色形式の原稿画像データを下色除去(UCR:Under Color Replacement)してBkデータを生成し、これらのデータを統合してCMYBk色形式の原稿画像データを生成する。
【0035】
出力画像がモノクロ画像の場合、フィルタ処理部206は、下記の数式1を用いて原稿画像データをBk単色の輝度データに変換する。
【0036】
【数1】

ここで、R,G,Bは、それぞれ原稿画像データを構成する1の画素の赤色、緑色、青色の輝度値を示す。Yは、輝度データに変換された当該1の画素の輝度値を示す。
【0037】
文字補正部210は、色補正部208が補正した原稿画像データについて、像域識別信号を使用して当該原稿画像データに含まれる領域の種類を判断し、黒文字エッジ領域および色エッジ文字領域にγ補正を施して、文字部分のコントラストを強調する。
【0038】
図3は、本実施形態の画像処理装置のスキャナ補正部に含まれる検知部の回路図を示す。以下、図3を参照して、検知部200について説明する。
【0039】
検知部200は、γ補正部301,302,303と、平均化部304,305,306と、加算器307と、セレクタ308とを含む。
【0040】
γ補正部301,302,303は、スキャナ111が生成したRGB色形式の検知用画像データを入力データとして、所定のルックアップテーブルにより各色成分にγ補正を施す機能手段である。γ補正部301,302,303は、それぞれR色形式の検知用画像データ、G色形式の検知用画像データ、B色形式の検知用画像データにγ補正を施す。本実施形態では、入力データをそのまま出力するルックアップテーブルが使用され、入力データである検知用画像データに変更を加えることなく、平均化部304,305,306に出力する。他の実施形態では、γ補正部301,302,303を省略してもよい。
【0041】
平均化部304,305,306は、γ補正部301,302,303が出力した検知用画像データについて、当該検知用画像データを構成する画素のうち同一の副走査ラインを構成する幾つかの画素の輝度値を平均化する機能手段である。平均化部304,305,306は、それぞれR色形式の検知用画像データ、G色形式の検知用画像データ、B色形式の検知用画像データについて、副走査方向に整列する8の画素の輝度値を平均化する。他の実施形態では、読み取るべき画像データの大きさに応じて、例えば、画像サイズが大きい場合には、副走査方向に整列する16の画素の輝度値を平均化してもよい。
【0042】
このように、平均化部304,305,306が、種々の画像ノイズを含む検知用画像データの副走査方向に整列する画素を平均化することにより、ドット状の画像ノイズを除去し、副走査方向に延在する筋状の画像ノイズを正確に検知できるようにする。
【0043】
加算器307は、平均化部304,305,306が出力する平均化された各色成分の検知用画像データを加算して輝度データを生成する。セレクタ308は、平均化部306または加算器307から取得した画像データを選択的に解像度変換部311に出力する。具体的には、画像処理装置110がカラー画像を出力する場合、セレクタ308は、平均化部306の出力データを解像度変換部311に出力する。一方、モノクロ画像を出力する場合には、セレクタ308は、加算器307が生成した輝度データを解像度変換部311に出力する。
【0044】
また、検知部200は、解像度変換部309,310,311と、主走査方向検知部312,313,314と、副走査方向検知部315,316,317と、補正部318と、判定部319とを含む。
【0045】
解像度変換部309,310,311は、検知用画像データの主走査方向の解像度を変換する。具体的には、解像度変換部309,310,311は、それぞれ平均化部304,305またはセレクタ308から受信した画像データの主走査方向の解像度を、当該解像度よりも低い解像度に変換する。本実施形態では、解像度変換部309,310,311による変換後の主走査方向の解像度は、コントローラ115が行う解像度変換の解像度と同一である。これにより、画像ノイズを希釈化することができる。なお、副走査方向の解像度は変更しない。
【0046】
主走査方向検知部312,313,314は、検知用画像データの主走査ライン上で主走査方向に延在する画像ノイズが存在するか否か検知する機能手段である。主走査方向検知部312,313,314は、それぞれ解像度変換部309,310,311から受信した画像データの各主走査ラインについて、画像データの端部に位置する画素から順に対象画素とその周辺画素との濃度差を用いて、画像ノイズの検知を行う。
【0047】
具体的には、主走査方向検知部312,313,314は、(1)対象画素の濃度が閾値(thd1)以上であり、かつ、対象画素の濃度が同一の主走査ラインにおける直前の画素の濃度よりも閾値(thdd)以上高い場合、または(2)同一の主走査ラインにおける直前の画素が画像ノイズであると判定されており、かつ、対象画素の濃度が閾値(thd2)以上である場合に、対象画素が画像ノイズであると判断する。
【0048】
ここで、閾値(thd1)および閾値(thd2)は、走査光の光路上に存在するゴミによって生じる筋状の画像ノイズの濃度を示す値である。閾値(thd1)および閾値(thd2)の値は、当該閾値を使用する主走査方向検知部312,313,314によってそれぞれ異なり、主走査方向検知部312,313,314は、それぞれ筋状の画像ノイズのR色成分、G色成分、B色成分の画素値を閾値として使用する。なお、閾値(thd1)は、閾値(thd2)よりも大きい値である。また、閾値(thdd)は、対象画素と、同一の主走査ラインにおける直前の画素との濃度の差分を示す値であり、8bitで表現可能な256階調の実施形態では、10程度の値、例えば、6〜12の値を取り得る。
【0049】
副走査方向検知部315,316,317は、検知用画像データの副走査ライン上で副走査方向に延在する画像ノイズが存在するか否か検知する機能手段である。副走査方向検知部315,316,317は、それぞれ主走査方向検知部312,313,314から受信した画像データの各副走査ラインについて、当該画像データを構成する各画素の反射率を利用して画像ノイズの検知を行う。
【0050】
具体的には、副走査方向検知部315,316,317は、副走査ラインを構成する連続する任意の数の画素の反射率の平均値が所定の閾値以上であるか否か判断することにより、副走査方向に延在する画像ノイズの有無を判断する。本実施形態では、平均化部304が一度に平均化する画素数の2倍以上の画素数を、副走査方向検知部315,316,317が一度に検知する範囲とする。
【0051】
副走査方向検知部315,316,317は、検知用画像データ内の総ての副走査ラインに対する検知が終了すると、副走査方向に延在する画像ノイズが存在する旨の通知を判定部319に送信すると共に、当該画像ノイズが存在する画素の位置座標を送信する。
【0052】
補正部318は、検知用画像データを用いた画像ノイズの検知結果に基づいて、原稿画像データを補正する機能手段である。具体的には、補正部318は、原稿画像データを構成する画素のうち、主走査方向検知部312,313,314および副走査方向検知部315,316,317によって画像ノイズが存在すると判定された対象画素の画素値を補正する。本実施形態では、補正部318は、画像ノイズが存在する対象画素の画素値を、その周辺画素の画素値の平均値で置換することにより補正することができる。
【0053】
判定部319は、副走査方向検知部315,316,317の検知結果から、原稿画像データに副走査方向に延在する画像ノイズが形成される可能性を判定する。判定部319は、その判定結果および画像ノイズが存在する画素の位置座標をスキャナ111に送信して、原稿の読み取り位置を変更させることができる。また、画像処理装置110のオペレーションパネルの制御部に判定結果を送信し、画像データ内に画像ノイズが形成される可能性がある旨の警告をオペレーションパネル上に表示させてもよい。さらに、画像処理装置110の他の機能手段が画像データを処理する場合、判定部319の判定結果および画像ノイズが存在する画素の位置座標を利用して、当該画像データ中の画像ノイズが存在する画素を画像処理の対象領域から除外することもできる。
【0054】
本実施形態では、出力画像がカラー画像である場合、主走査方向検知部312,313,314が、上述した画像ノイズの検知を行う。そして、副走査方向検知部315,316,317が、上述した画像ノイズの検知を行う。次いで、補正部318は、RGB形式の原稿画像データのうち、副走査方向検知部315,316,317が、画像ノイズが存在すると判断した色形式の検知用画像データの画素に対応する原稿画像データの画素に対して補正を行う。例えば、副走査方向検知部315が、R色形式の検知用画像データの特定の画素に画像ノイズが存在すると判断した場合には、補正部318は、当該画素に対応するR色形式の原稿画像データの画素に対して補正を行う。また、副走査方向検知部316,317が、G色形式およびB色形式の検知用画像データの特定の画素に画像ノイズが存在すると判断した場合には、補正部318は、当該画素に対応するG色形式およびB色形式の原稿画像データの画素に対して補正を行う。そして、判定部319は、副走査方向検知部315,316,317のいずれかの検知結果が、画像ノイズが存在することを示す場合には、原稿画像データに副走査方向の画像ノイズが形成されると判定する。
【0055】
一方、出力画像がモノクロ画像である場合、主走査方向検知部314が、加算器307の生成した輝度データを用いて画像ノイズの検知を行う。そして、副走査方向検知部317が、加算器307の生成した輝度データを用いて画像ノイズの検知を行う。なお、副走査方向検知部315,316は、画像ノイズの検知を行わない。副走査方向検知部317が、検知用画像データの特定の画素に画像ノイズが存在することを検知すると、補正部318は、当該画素に対応するRGB形式の原稿画像データの画素に対して補正を行う。次いで、判定部319は、副走査方向検知部317の検知結果が、画像ノイズが存在することを示す場合、すなわち、G色形式の画像データに画像ノイズが存在する場合には、原稿画像データに副走査方向の画像ノイズが形成されると判定する。
【0056】
図4は、本実施形態の画像処理装置が、副走査方向に延在する画像ノイズを検知する方法を示す概念図である。以下、図4を参照して、副走査方向に延在する画像ノイズを検知する方法について説明する。
【0057】
図4は、画像処理装置110のスキャナ補正部112が副走査方向に平均化する範囲である平均化範囲402は、画像データ400内の副走査方向に連続する8の画素40〜47であり、画像ノイズの検知範囲404は、画像データ400内の副走査方向に連続する16の画素40〜55であることを示す。
【0058】
画像データ400中の画素40,43は濃度の高い画像ノイズを示し、画素41,42,44〜47は濃度の低い画像ノイズを示し、画素48〜55は画像ノイズの無い画素を示す。濃度の高い画像ノイズの画素の反射率が10%とし、濃度の低い画像ノイズの画素の反射率が60%とし、画像ノイズの無い画素の反射率が80%とし、副走査方向に延在する画像ノイズを検知する閾値の値を50%とした場合、検知範囲404における反射率の平均値は63.75%となる。この値は、上記閾値が示す反射率よりも高いため、画像処理装置110は、検知範囲404に副走査方向に延在する画像ノイズが存在しないと判断する。
【0059】
一方、図4に示す実施形態において、検知範囲を平均化範囲402(画素40〜47)と同じ範囲とした場合、反射率の平均値は、上記閾値よりも低い47.5%となる。このため、実際には、当該検知範囲に濃度の低い6の画像ノイズと濃度の高い2の画像ノイズ、すなわち、ゴミが2カ所存在するのみで、副走査方向に延在する画像ノイズが存在しないにも関わらず、画像処理装置110は、筋状の画像ノイズが存在すると誤って判断してしまうことになる。したがって、本実施形態の画像処理装置のように、検知範囲を平均化範囲の2倍以上とすることにより、副走査方向に延在する筋状の画像ノイズの検知精度を向上させることができる。
【0060】
図5は、他の実施形態に係る画像処理装置のスキャナ補正部112の検知部200に含まれるγ補正部301,302,303が行う画像処理による入力画像の反射率が変化の様子を示す図である。本実施形態では、図5に示すように、γ補正部301,302,303は、スキャニングで生じ得る濃度の高いドット状の画像ノイズを考慮し、入力画像を構成する画素のうち所定の反射率よりも低い画素の反射率を補正する。
【0061】
具体的には、副走査方向検知部315,316,317が画像ノイズの検知で使用する閾値から、濃度の高い画像ノイズを考慮した値αを減算した値を所定の反射率とし、これよりも低い反射率を有する画素の反射率を当該所定の反射率に補正する。例えば、図4に示す画像データ400を入力画像として補正する場合、閾値を50%とし、αを10%とすると、γ補正部301,302,303は、濃度の高い画像ノイズに該当する画素の反射率10%を40%に補正する。そして、副走査方向検知部315,316,317が補正後の検知用画像データを使用して画像ノイズの検知を行う場合、平均化範囲402(画素40〜47)を検知範囲とすると、当該検知範囲の反射率の平均値は55%となる。この値は、上記閾値が示す反射率よりも高いため、副走査方向検知部315,316,317は、当該検知範囲に副走査方向に延在する画像ノイズが存在しないと判断する。
【0062】
一方、上述した反射率の補正を施さない場合、図4に示す実施形態において、平均化範囲402(画素40〜47)を検知範囲とすると、図4を参照して説明したように、反射率の平均値は、上記閾値よりも低い47.5%となる。このため、副走査方向検知部315,316,317は、副走査方向に延在する画像ノイズが当該検知範囲に存在すると誤って判断してしまう。したがって、本実施形態のように、画像ノイズの検知を行う前に入力画像である検知用画像データに対して、上述した反射率の補正を施すことにより、画像ノイズの検知範囲が平均化範囲と同一の大きさである場合でも、濃度の高いドット状の画像ノイズの影響を受けることなく、副走査方向に延在する画像ノイズの検知精度を向上させることができる。
【0063】
他の実施形態では、画像処理装置110が、検知用画像データに対して反射率の補正を施した後に、図4に示す平均化範囲402の2倍以上の範囲を検知範囲として、画像ノイズの検知を行うようにしてもよい。
【0064】
図6は、本発明の他の実施形態に係る画像処理装置のスキャナ補正部に含まれる検知部の回路図である。以下、図6を参照して、出力画像がモノクロ画像である場合に画像ノイズを検知する実施形態である検知部600について、図3に示す検知部200との相違点を中心に説明する。
【0065】
検知部600は、γ補正部601,602,603と、加算器604と、γ補正部605と、平均化部606と、解像度変換部607と、主走査方向検知部608と、副走査方向検知部609と、補正部610と、判定部611とを含む。
【0066】
γ補正部601,602,603は、RGB色形式の検知用画像データを入力データとして、所定のルックアップテーブルを用いてγ補正を施す。加算器604は、γ補正部601,602,603が補正した各色形式の画像データを加算して輝度データを生成する。本実施形態のγ補正部601,602,603および加算器604は、上述した数式1に示す方法で輝度データを生成する。
【0067】
γ補正部605は、輝度データ形式の画像データに対して、図5を参照して説明したγ補正部301,302,303によるγ補正と同様のγ補正を施す。
【0068】
平均化部606は、γ補正部605が補正した輝度データ形式の検知用画像データについて、当該検知用画像データを構成する画素のうち同一の副走査ラインを構成する幾つかの画素の輝度値を平均化する。本実施形態では、平均化部606は、平均化部304,305,306と同様に、副走査方向に整列する8の画素を平均化する。他の実施形態では、読み取るべき画像データの大きさに応じて、例えば、画像サイズが大きい場合には、副走査方向に整列する16の画素の輝度値を平均化してもよい。
【0069】
解像度変換部607は、平均化部606が平均化した輝度データ形式の検知用画像データの主走査方向の解像度を変換する。具体的には、解像度変換部607は、解像度変換部309,310,311と同様に、平均化部606から受信した検知用画像データの解像度を、これよりも低い解像度に変換する。これにより、画像ノイズを希釈化することができる。
【0070】
主走査方向検知部608は、解像度変換部607が解像度を変換した輝度データ形式の検知用画像データについて、その主走査ライン上に主走査方向に延在する画像ノイズが存在するか否か検知する機能手段である。主走査方向検知部608は、当該検知用画像データの各主走査ラインについて、検知用画像データの端部に位置する画素から順に、対象画素とその周辺画素との濃度差を利用して画像ノイズの検知を行う。
【0071】
副走査方向検知部609は、主走査方向検知部608が画像ノイズの検知を行った検知用画像データについて、その副走査ラインに副走査方向に延在する画像ノイズが存在するか否か検知する機能手段である。副走査方向検知部609は、当該検知用画像データの各副走査ラインについて、副走査方向検知部315,316,317と同様に、当該検知用画像データを構成する各画素の反射率を利用して画像ノイズの検知を行う。
【0072】
補正部610は、補正部318と同様に、主走査方向検知部608および副走査方向検知部609の検知結果に基づいて、RGB色形式の原稿画像データを補正する。具体的には、補正部610は、主走査方向検知部608および副走査方向検知部609が、画像ノイズが存在すると判断したとき、原稿画像データの総ての色成分について、画像ノイズに該当する画素を、その周辺画素の画素値の平均値で置換して補正することができる。
【0073】
これまで本実施形態につき説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の構成要素を変更若しくは削除し、または本実施形態の構成要素を他の構成要素を追加するなど、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
100…画像処理システム、110…画像処理装置、111…スキャナ、112…スキャナ補正部、113…圧縮処理部、114…汎用バス、115…コントローラ、116…画像データバッファ、117…NIC、118…伸張処理部、119…プリンタ補正部、120…プロッタ、122…原稿、124…出力用紙、130…ネットワーク、140…情報処理装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【特許文献1】特開2008−99129号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿をスキャンして画像データを生成する画像処理装置であって、前記画像処理装置は、
画像データを生成するスキャナ手段と、
前記スキャナ手段が生成する画像データに画像ノイズが存在するか否か検知する検知手段と
を含み、
前記スキャナ手段は、前記原稿の代わりに、前記画像処理装置が備える走査光を反射する部材をスキャンして検知用画像データを生成し、
前記検知手段は、前記検知用画像データの副走査方向に連続する任意の数の画素を検知範囲として、副走査方向に延在する画像ノイズを検知する、画像処理装置。
【請求項2】
前記検知手段は、
前記検知用画像データを構成する副走査方向に整列した複数の画素の画素値を平均化する平均化手段を含み、
前記検知手段は、前記平均化手段が一度に平均化する範囲の少なくとも2倍以上の範囲を検知範囲として画像ノイズの検知を行う、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記検知用画像データを構成する画素のうち反射率の低い画素の反射率が増加するように補正した画像データに対して画像ノイズを検知する、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
原稿をスキャンして画像データを生成する画像処理装置が実行する方法であって、前記方法は、前記画像処理装置が、
前記原稿の代わりに、前記画像処理装置が備える走査光を反射する部材をスキャンして検知用画像データを生成するステップと、
前記検知用画像データの副走査方向に連続する任意の数の画素を検知範囲として、副走査方向に延在する画像ノイズを検知するステップと
を含む、方法。
【請求項5】
画像処理装置に対して、請求項4に記載のステップを実行させるためのコンピュータ実行可能なプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載されたプログラムを記録したコンピュータ可読な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−244210(P2012−244210A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109052(P2011−109052)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】