説明

画像処理装置、画像処理システム及び画像処理プログラム

【課題】並列印刷する画像情報を分割管理する管理情報の情報量を減らし、管理情報の検索時間を短縮して印刷再開制御を効率良く実施可能にする。
【解決手段】分割管理部163は、並列印刷指示された複数のジョブを連続紙Pに左右2列で並列印刷する並列印刷データを、左側の文書の頁長と右側の文書の頁長の最大公約数の長さのバンド単位に分割して管理し、保証バンド管理部164は並列印刷データに基づくバンド単位の並列印刷実行中、用紙ジャムが発生した時に印刷保証する保証バンドの管理を行う。並列印刷実行中、用紙ジャムが検出されると、印刷再開制御部165は、保証バンド管理部164が管理する保証バンドを読込み、分割管理部163が管理する該保証バンドより先の各列共通で左右両方とも頁境界を持つバンドをリカバリー開始ポイントと決定し、並列印刷を再開させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理システム及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙などの連続紙を用いる印刷装置において、複数の印刷ジョブ(印刷される画像情報を含む印刷情報)で印刷指示された画像情報をひとつの連続紙の幅方向にそれぞれ並べて配置して印刷する方式が知られている。
【0003】
連続紙に対する複数ジョブの並列印刷の例として、特許文献1には、特定のジョブに関しての幅方向展開指示を受け付けると、ロール紙の幅、印刷済みのジョブの用紙サイズ、該特定のジョブの用紙サイズに基づいて、ロール紙上で既に印刷済みのジョブの幅方向の隣接位置に該特定のジョブが印刷できるか否かを判断し、該特定のジョブが印刷できると判断すると、該ロール紙上で該既に印刷済みのジョブの該幅方向の隣接位置に該特定のジョブを印刷するプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2000−71991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数の印刷ジョブで印刷指示された画像情報をひとつの連続紙の幅方向にそれぞれ並べて配置して印刷(並列印刷)する場合に、並列印刷する画像情報を分割管理する管理情報の情報量を減らし、管理情報の検索時間を短縮して異常発生後の印刷再開制御を効率良く実施できる画像処理装置、画像処理システム及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の画像処理装置の発明は、印刷される画像情報を含む印刷情報に基づき前記印刷情報で印刷指示された画像情報を連続印刷する際に、複数の前記印刷情報をひとつの連続紙の幅方向にそれぞれ並べて配置して前記画像情報を前記連続紙に印刷するように印刷画像情報を生成する画像情報生成手段と、前記画像生成手段により生成された前記印刷画像情報を、前記ひとつの連続紙の幅方向に配置された複数の画像情報の頁の前記連続紙の長さ方向長から求められる最大公約数の長さを有する領域に分割して管理する分割管理手段と、前記分割管理手段により管理される前記領域単位の並列印刷が実行される毎に、該並列印刷された領域に対応して、印刷が保証される保証領域と、前記保証領域に続く非保証領域とを区別して管理する管理手段と、前記印刷画像情報に基づく画像形成部による並列印刷の実行中、前記画像形成部の異常が検出された場合、前記管理手段により管理される前記保証領域と、前記分割管理手段により分割管理される前記印刷画像情報の領域情報とに基づき、前記画像形成部の異常復旧後の印刷再開開始領域を決定する印刷再開開始領域決定手段とを具備する。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、前記分割管理手段は、分割管理する前記印刷画像情報の前記各領域のうち、前記2以上の列それぞれの印刷画像情報の頁境界に一致する前記領域に対応して、各列別に頁の境界があること示す頁境界情報を更に管理する。
【0008】
請求項3記載の発明は、上記請求項2記載の発明において、前記印刷再開開始領域決定手段は、前記分割管理手段により管理される前記異常発生時に前記保証領域に対応する領域から順に1つ先の領域へと移行して前記頁境界情報を検索し、前記各列の印刷画像情報に共通の領域であって、前記各列共に前記頁境界情報が検出された領域を前記印刷再開開始領域として決定する。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記印刷再開開始領域として決定された前記領域から、該領域よりも前に前記頁境界情報が検出された前記2以上の列のうちのいずれかの列の当該頁境界情報が検出された領域までを印刷再開時の重複頁と判定する判定手段と、前記印刷再開開始領域から前記印刷画像情報の印刷を再開する際、前記判定手段により判定された前記重複頁に頁が不要であることを示す不要印画像を付加して出力制御する出力制御手段とを具備する。
【0010】
請求項5記載の発明は、上記請求項3記載の発明において、前記印刷再開開始領域として決定された前記領域から、該領域よりも前に前記頁境界情報が検出された前記2以上の列のうちのいずれかの列の当該頁境界情報が検出された領域までを印刷再開時の重複頁と判定する判定手段と、前記印刷再開開始領域から前記印刷画像情報の印刷を再開する際、前記判定手段により判定された前記重複頁を削除して出力制御する出力制御手段とを具備する。
【0011】
請求項6記載の発明は、上記請求項2記載の発明において、前記印刷再開開始領域決定手段は、前記分割管理手段により管理される前記異常発生時に前記保証領域に対応する領域から順に1つ先の領域へと移行して前記頁境界情報を検索し、前記2以上の列のうちのいずれかの列の印刷画像情報の領域で前記頁境界情報が検出され、その後、他の各列全てで順次該当する列の印刷画像情報の領域で前記頁境界情報が検出された場合、最後に前記頁境界情報が検出された列の領域を前記印刷再開開始領域として決定する。
【0012】
請求項7記載の画像処理システムの発明は、印刷される画像情報を含む印刷情報で前記画像情報の印刷を指示する指示装置と、ひとつの連続紙を送り出す送出し装置と、前記指示装置から前記印刷情報で印刷指示された前記画像情報を前記送出し装置から送り込まれる前記連続紙に連続印刷する画像処理を行う画像処理装置と、前記画像情報が連続印刷された前記連続紙を取り込む取込み装置とを有し、前記画像処理装置は、印刷される画像情報を含む前記印刷情報に基づき該印刷情報で印刷指示された前記画像情報を連続印刷する際に、複数の前記印刷情報を前記ひとつの連続紙の幅方向にそれぞれ並べて配置して前記画像情報を前記連続紙に印刷するように印刷画像情報を生成する画像情報生成手段と、前記画像生成手段により生成された前記印刷画像情報を、前記ひとつの連続紙の幅方向に配置された複数の画像情報の頁の前記連続紙の長さ方向長から求められる最大公約数の長さを有する領域に分割して管理する分割管理手段と、前記分割管理手段により管理される前記領域単位の並列印刷が実行される毎に、該並列印刷された領域に対応して、印刷が保証される保証領域と、前記保証領域に続く非保証領域とを区別して管理する管理手段と、前記印刷画像情報に基づく画像形成部による並列印刷の実行中、前記画像形成部の異常が検出された場合、前記管理手段により管理される前記保証領域と、前記分割管理手段により分割管理される前記印刷画像情報の領域情報とに基づき、前記画像形成部の異常復旧後の印刷再開開始領域を決定する印刷再開開始領域決定手段とを具備する。
【0013】
請求項8記載の画像処理プログラムの発明は、コンピュータを、印刷される画像情報を含む印刷情報に基づき前記印刷情報で印刷指示された画像情報を連続印刷する際に、複数の前記印刷情報をひとつの連続紙の幅方向にそれぞれ並べて配置して前記画像情報を前記連続紙に印刷するように印刷画像情報を生成する画像情報生成手段、前記画像生成手段により生成された前記印刷画像情報を、前記ひとつの連続紙の幅方向に配置された複数の画像情報の頁の前記連続紙の長さ方向長から求められる最大公約数の長さを有する領域に分割して管理する分割管理手段、前記分割管理手段により管理される前記領域単位の並列印刷が実行される毎に、該並列印刷された領域に対応して、印刷が保証される保証領域と、前記保証領域に続く非保証領域とを区別して管理する管理手段、前記印刷画像情報に基づく画像形成部による並列印刷の実行中、前記画像形成部の異常が検出された場合、前記管理手段により管理される前記保証領域と、前記分割管理手段により分割管理される前記印刷画像情報の領域情報とに基づき、前記画像形成部の異常復旧後の印刷再開開始領域を決定する印刷再開開始領域決定手段として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の画像処理装置の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、並列に印刷する文書を分割管理する情報の情報量を減らし、短い検索時間でリカバリー開始ポイントを決定できる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明において、並列配置された各列の頁境界を区切りにしてリカバリー開始ポイントを決定できる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明において、リカバリーに際し、各列のリカバリー後先頭頁の先端を一致させて印刷再開できる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明において、リカバリー出力中のマークが印刷された頁が重複印刷部分であることをすぐに認識することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項3記載の発明において、リカバリーに際し、用紙ジャム発生時に印刷が保証されていた頁を重複印刷せずに済む。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項2記載の発明において、リカバリーに際し、いずれかの列のリカバリー後先頭頁先端と他列の隣接頁のバンド分割画像先端を一致させて印刷再開できる。
【0020】
請求項7記載の画像処理システムの発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、並列に印刷する文書を分割管理する情報の情報量が少なく、短時間にリカバリー開始ポイントを決定できるシステムを構築できる。
【0021】
請求項8記載の画像処理プログラムの発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、並列に印刷する文書を分割管理する情報の情報量を減らし、短時間でリカバリー開始ポイントを決定するように印刷装置を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態に係る印刷システムの全体構成を示す図。
【図2】印刷装置の装置本体部の機能構成を示すブロック図。
【図3】画像形成部の詳細構成を制御部の機能構成とともに示す概念図。
【図4】実施例1に係る印刷装置の並列印刷処理動作を示すフローチャート。
【図5】図4のステップS110における分割管理処理動作を示すフローチャート。
【図6】ジョブ1〜10が指定された並列印刷指示内容を示す概念図。
【図7】図6に示す並列印刷指示に基づく並列印刷するジョブの配置例を示す図。
【図8】図7に示したジョブ配置に基づく並列印刷データの展開例を示す概念図。
【図9】並列印刷データを分割管理する分割管理テーブルの構成例を示す図。
【図10】図4のステップS111における並列印刷処理の詳細を示すフローチャート。
【図11】図10のステップS210の保証バンド算出処理の詳細を示すフローチャート。
【図12】保証バンド管理テーブルの管理情報の登録内容と登録情報項目の説明図。
【図13】図4のステップS120におけるリカバリー処理の詳細フローチャート。
【図14】実施例1に係るリカバリー開始ポイント決定イメージを示す図。
【図15】図14で決定されたリカバリー開始ポイントからのリカバリー出力例を示す図。
【図16】実施例1における並列印刷時の並列印刷指示受付処理を示すフローチャート。
【図17】実施例2に係るリカバリー処理の詳細フローチャート。
【図18】実施例2に係るリカバリー開始ポイント決定イメージを示す図。
【図19】図14で決定されたリカバリー開始ポイントからのリカバリー出力例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る印刷システム100の全体構成を示す図である。
【0025】
この印刷システム100は、PC(パーソナル・コンピュータ)等から成るホスト端末5と、ホスト端末5に接続され、該ホスト端末5からの並列印刷指示に基づき該並列印刷指示対象の複数のジョブ(文書)を連続紙Pに並列に印刷する印刷装置10とにより構成される。
【0026】
印刷装置10は、印刷装置本体部10aと、バッファ装置20A及び20B、前処理装置30A及び後処理装置(同、取込み装置)30Bを具備して構成される。
【0027】
印刷装置10は、連続紙Pとして、例えば、ロール紙を用い、該ロール紙は、前処理装置30Aの送り出しローラに巻かれていて、該送り出しローラから、バッファ装置20A、印刷装置本体部10aの用紙搬送路、バッファ装置20Bを通って後処理装置30Bの巻取りローラ間に掛け渡される。
【0028】
バッファ装置20Aは、前処理装置30Aと印刷装置本体部10aの用紙搬送路前端との間でロール紙に張力(テンション)を付与し、バッファ装置20Aは、後処理装置30Bと印刷装置本体部10aの用紙搬送路後端との間でロール紙にテンションを付与する。
【0029】
上述の如く掛け渡された連続紙Pは、並列印刷時、印刷装置本体部10内において用紙搬送路中を図1に矢印で示す方向に搬送され、並列印刷指示された複数のジョブの並列印刷が実行される。
【0030】
ここで、印刷装置本体部10aの用紙搬送路後端(画像の転写完了位置)からバッファ装置20Bを経て後処理装置30Bの巻き始め位置(保証位置)までの用紙搬送路長は、後述するように、画像形成部の異常〔本実施形態では連続紙Pの紙詰まり(用紙ジャム)を例として説明する。〕が発生した時に印刷保証する印刷保証バンドを管理するのに必要なバンド数を算出するための総パス長として設定される。
【0031】
なお、本実施例では、保証位置を後処理装置30Bの巻き始め位置としたが、これに限られないことはいうまでもない。印刷装置10の画像形成方式が、例えば、電子写真方式であれば、定着処理以降であれば保証位置とすることができる。また、印刷装置10の画像形成方式が、例えば、インクジェット方式であれば、インクが紙等の記録媒体に塗布された以降であれば保証位置とすることができる。インクジェット方式でインク塗布後の乾燥工程があれば、保証位置はそれ以降でもかまわない。
【0032】
なお、連続紙Pの用紙ジャムを検出する機構としては、例えば、印刷装置本体部10aの転写完了位置の下流側の用紙搬送路中に発光素子及び受光素子等から構成される用紙ジャム検出センサ17が配置される。
【0033】
この用紙ジャム検出センサ17の検出出力に基づき上記転写完了位置から保証位置までの区間で連続紙Pの紙ジャムが検出された場合、上述した保証バンドを目安にして用紙ジャム解除後(リカバリーが必要な異常の復旧後)の並列印刷の再開制御が行なわれる。
【0034】
印刷装置10の印刷装置本体部10a、及びホスト端末5は、それぞれCPU(Central Processing Unit)、主記憶手段としてのメモリであるROM(Read Oniy Memory)やRAM(Random Access Memory)、周辺記憶手段としてのハードディスク、入力インタフェース、通信インタフェース等から構成されている。
【0035】
図2は、印刷装置10の印刷装置本体部10aの機能構成を示すブロック図である。
【0036】
図2に示すように、印刷装置本体部10aは、ホスト端末5との通信に係るインタフェースを司るホストインタフェース(I/F)部11、ホストI/F部11を通じてホスト端末5から受信される並列印刷指示等の印刷命令(コマンド)や動作プログラム等の各種情報を記憶する記憶部12、ホストI/F部11を通じてホスト端末5から受信される並列印刷命令(コマンド)に基づく画像処理を行う画像処理部13、画像処理部13が上記コマンドを処理して出力する並列印刷データ〔ラスター(ビットマップ)画像データ〕に基づき連続紙P上に複数ジョブの画像を並列に印刷(画像形成)する画像形成部14、操作ガイダンスや動作状態等の各種情報を表示する表示部と、キーボードやマウス等の入力デバイスから成る入力部から成る表示/操作部15、装置全体の制御を行う制御部16を具備して構成される。
【0037】
図3は、画像形成部14の詳細構成を制御部16の機能構成とともに示す概念図である。
【0038】
図3に示すように、画像形成部14は、バッファ装置20A、20B間で連続紙Pを矢印方向に搬送する用紙搬送手段(図示せず)を有し、該用紙搬送手段による用紙搬送路に臨んで、例えば、黄(Y:Yellow),マゼンタ(M:Magenta),シアン(C:Cyan),黒(K:Black)の各色のトナー(Y),(M),(C),(K)を用いて、それぞれ、Y色,M色,C色,K色の画像(トナー像)を形成する画像形成ユニット140Y,140M,140C,140Kを備えて構成される。
【0039】
各画像形成ユニット140(140Y,140M,140C,140K)は、それぞれ、画像処理部13から入力される当該各ユニットに対応する色成分(Y成分,M成分,C成分,K成分)の画像信号(印刷データ)に基づき各露光部にてレーザ光による画像露光を行ない、該画像露光により各色成分の画信号に応じた静電潜像を各感光体ドラム上に形成し、該各感光体ドラム上に形成された上記静電潜像に各色の現像部にて該当する色のトナーを供給して当該各色のトナー像を形成し、該各色のトナー像を転写ベルト上に重ね合わせ転写し、更にこの重ね合わせ画像を加熱、加圧によりロール紙上に定着させることで画像の印刷を行う。
【0040】
本実施形態の印刷装置10において、制御部16は、ホスト端末5からの複数のジョブ(文書)を連続紙Pの幅方向に並列に印刷することを指示する並列印刷指示に基づき、上述した画像処理部13及び各色の画像形成ユニット140を制御して該並列印刷指示された複数のジョブを連続紙Pの幅方向の各列にそれそれ配置して並列印刷する制御を行う機能部であり、図2及び図3に示す如く、並列配置部161、印刷制御部162、分割管理部163、保証バンド管理部164、印刷再開制御部165を具備して構成される。
【0041】
並列配置部161は、ホスト端末5からの並列印刷指示に基づき並列印刷対象の複数のジョブを連続紙Pの幅方向に予め決められている数の列数で並列に印刷するためのジョブの並列配置を決定する。
【0042】
なお、本実施の形態では、連続紙Pの幅方向に並列に印刷する列の数は、例えば、2列に決められているものとする。
【0043】
以下の説明において、連続紙Pの搬送方向に向かって左側に印刷される列を基準側の列、右側に印刷される列を並列側の列という。
【0044】
印刷制御部162は、画像処理部13を制御し、並列印刷指示された各ジョブの画像データ〔PDL(Page Description Language)データ〕から、該各ジョブが、並列配置部161により決定された配置に従がって連続紙Pの幅方向の基準側または並列側の各列のそれぞれに配置され、各ジョブの頁が連続紙Pの長さ方向に連続に配置されて当該各ジョブを並列印刷する並列印刷データを生成させ、該生成された並列印刷データを画像形成部14に入力して並列印刷させる制御を行う。
【0045】
なお、この並列印刷データは、例えば、画像処理部13に設けられる描画メモリ135上に、並列印刷する各ジョブの各頁が並列配置部161により決定された配置に従がって頁単位に展開されたラスター画像(ビットマップ)データである。
【0046】
分割管理部163は、印刷制御部162の制御下で画像処理部13により描画メモリ135上にレンダリングされた並列印刷データを、当該並列印刷データの副走査方向に、基準側の列に配置されたジョブの頁長と並列側のジョブの頁長の最大公約数の長さを有するバンドに分割して管理する。
【0047】
すなわち、本実施の形態において、バンドとは、並列印刷する画像データを管理するために該画像データが長さ方向(副走査方向)に分割された所定の長さ(上記の如く、各列の頁長の最大公約数の長さ)の領域のことをいう。
【0048】
なお、本実施形態の「ジョブの頁長」は、各列に配置されたジョブ(文書)を構成する頁の連続紙Pの長さ方向(搬送方向)、つまり、描画メモリ135上の展開画像における副走査方向の“長さ”であり、連続紙Pの幅方向、つまり、描画メモリ135上の展開画像における主走査方向の“幅”と区別される。
【0049】
以下、「ジョブの頁長」とは、当該ジョブを構成する頁の連続紙Pの長さ方向(展開画像の副走査方向)の長さをいうものとする。
【0050】
なお、「ジョブの頁長」は、例えば、並列印刷指示時に当該ジョブに対して指定された頁サイズ等から求めることができる。
【0051】
上述した並列印刷データのバンド(領域)単位の分割管理を実現する具体的方法として、分割管理部163は、描画メモリ135に展開された並列印刷データの副走査方向の読出しバンド位置を指定するバンドポインタを、上記バンド単位の長さに相当するアドレス長刻みの副走査方向読出しアドレスに対応して分割管理テーブル(TB)125に保持、管理する。
【0052】
保証バンド管理部164は、画像処理部13により生成されて描画メモリ135に展開され、分割管理部163により管理されるバンド単位に順次読み出される並列印刷データに基づく並列印刷の実行中、連続紙Pの用紙ジャムが発生した場合に既に印刷済のどのバンドまでが再印刷を必要としないバンド(印刷が保証されるバンド)であるかを保証バンド管理テーブル(TB)126を用いて管理する。
【0053】
具体的には、例えば、利用者から、図1に示す構成中、転写完了位置から保証位置までの用紙総長に相当する「用紙パス長」の設定を受付け、転写完了位置にあるバンドから上記用紙パス長分先にあるバンドまでを非保証バンドとし、それより先の各バンドを印刷保証バンドとして管理する。
【0054】
印刷再開制御部165は、印刷制御部162による上記並列印刷データに基づく上記バンド単位の並列印刷の実行中、用紙ジャム検知センサ17(図1参照)の検知出力に基づき用紙ジャム検出部171で連続紙Pの用紙ジャムが検出された場合、保証バンド管理部164により保証バンド管理テーブル126を用いて管理される印刷保証バンドと、分割管理部163により分割管理テーブル125を用いて管理される上記並列印刷データの上記印刷保証バンド近傍のバンド位置とに基づいて印刷再開バンドを決定し、該印刷再開バンドから上記並列印刷を再開させる制御を行う。
【0055】
以下、本実施形態に係わる印刷システム100の並列印刷処理について実施例を挙げて詳細に説明する。
【実施例1】
【0056】
図4は、実施例1に係る印刷装置10の並列印刷処理動作を示すフローチャートである。
【0057】
本実施例の印刷装置10では、ホスト端末5から並列印刷指示を受け付けると(ステップS100YES)、並列配置部161が、並列印刷指示された複数のジョブの印刷属性(頁サイズ、印刷枚数等)を取得し(ステップS101)、該取得した印刷属性に基づいて、各ジョブをそれぞれ基準側か並列側に配置して並列印刷するためのジョブの配置を決定する(ステップS102)。
【0058】
並列印刷するジョブの配置決定方法としては、例えば、頁毎にミシン目が入っていて折り畳むことが可能な連続紙(ファンフォールド紙)にも対処すべく、当該ファンフォールド紙の1頁分の物理用紙長を定義(記憶部12に保持する)しておく場合には、並列印刷指示された複数のジョブ中、定義されている上記物理用紙長の頁長を有するジョブを左側の列に配置し、その以外の頁長を有するジョブを右側の列に配置する方法がある。
【0059】
また、別の方法としては、並列印刷対象全ジョブの合計の長さを列の数(この例では、基準側と並列側の2列)で割って、ジョブの合計の長さが各列で同等の長さとなるように配置する方法がある。
【0060】
一例として、ホスト端末5から図6に示すジョブ1〜10を指定した並列印刷指示を受け付けた場合の並列印刷時のジョブ配置例を図7に示している。
【0061】
この場合、並列配置部161は、ジョブ(文書)1,2,4,7,9,10の1頁毎の頁長(例えば、a1とする)が共に6インチで、ジョブ(文書)3,5,6,8の1頁毎の頁長(同、a2する)が共に9インチであることを認識(例えば、各ジョブに対してホスト端末5から指定された上記頁サイズ等から認識する)して、図7に示す如く、6インチの頁長のジョブ1,2,4,7,9,10を基準側(左側)に印刷し、6インチの頁長のジョブ3,5,6,8を並列側(右側)に印刷する配置を決定する。
【0062】
上記ステップS102で基準側と並列側の各列に対するジョブの配置が決定された後、印刷制御部162は、並列印刷指示された全ジョブを並列配置部161により決定されたジョブの配置に従がって並列印刷する並列印刷データを画像処理部13で生成させ、描画メモリ135に展開させる(ステップS103)。
【0063】
図8は、図7に示したジョブ配置でジョブ1〜10を並列印刷する並列印刷データの描画メモリ135に対する展開例を示す概念図である。
【0064】
図8の例では、並列印刷対象の全てのジョブ1〜10がラスター頁画像データとして展開されているが、描画メモリ135の記憶容量によっては、該記憶容量に納まるジョブを順次展開するようにしても良い。
【0065】
上述した画像展開処理に合わせて、分割管理部163は、上記ステップS102で決定されたジョブの配置と、基準側及び並列側の各列ジョブについての上記ステップS102で求めた頁長a1,a2に基づいて、上記描画メモリ135上に展開された並列印刷データの分割管理処理を行う(ステップS110)。
【0066】
図5は、図4のステップS110における分割管理処理動作を示すフローチャートである。
【0067】
この分割管理処理において、分割管理部163は、まず、基準側に配置した各ジョブの1頁毎の頁長a1(副走査方向の長さ)と、並列側に配置した各ジョブの1頁毎の頁長a2(副走査方向の長さ)を取得し(ステップS1101)、これら両者の頁長a1,a2の最大公約数gcd(a1,a2)を算出する(ステップS1102)。
【0068】
次に、上記ステップS1102で算出した最大公約数〔gcd(a1,a2)〕の値に対応する描画メモリ135における副走査方向のアドレス長(アドレス間隔)を分割管理の単位バンド長として求める(ステップS1103)。
【0069】
そして、この求めたバンド長(アドレス間隔)刻みの副走査アドレスを、描画メモリ135に展開された並列印刷データの副走査方向の読出しバンド位置を指定するバンドポインタに対応して分割管理テーブル125に格納する(ステップS1104)。
【0070】
引き続き、分割管理部163は、並列配置部161により決定された並列印刷するジョブの配置と、上記ステップS1103で求めたバンド長に基づいて、描画メモリ135に展開されている並列印刷データについてバンドの区切り毎に、基準側と並列側の各列の頁の境界が存在するか否かを順に調査していく(ステップS1105)。
【0071】
そして、該調査の結果に基づき、バンドの区切りでいずれか一方または両方の列で頁の境界が検出された場合には、分割管理テーブル125の該頁の境界が検出された列の当該バンドの区切り(バンドポインタ)に対応する頁境界情報を頁の境界があることを示す値(例えば、“1”)に設定し、バンドの区切りでいずれの列でも頁の境界が検出されなかった場合には、当該バンドの区切り(バンドポインタ)に対応する頁境界情報を頁の境界がないことを示す値〔例えば、“0(零)1”〕に設定する(ステップS1106)。
【0072】
図7に示す分割管理処理について具体的な例を挙げて説明する。
【0073】
ここでは、図6に示す如くのジョブ1〜10に対する並列印刷指示を受付けて図7に示す如くの基準側と並列側のジョブの配置が決定され、該ジョブの配置で並列印刷するための図8に示す如くの並列印刷データが描画メモリ135上に展開される状況下において、該並列印刷データを分割管理するための図9に示す如くの分割管理テーブル125が構築される場合について説明する。
【0074】
この場合、図7に示す如くに決定された並列印刷ジョブ1〜10の配置に基づいて図7のステップS1101では基準側のジョブ1,2,4,7,9及び10の頁長a1と並列側のジョブ3,5,6及び8のジョブ長b1として、それぞれ6インチと9インチが取得され、ステップS1102では両者(a1とa2)の最大公約数として3インチが求められる。
【0075】
ステップS1103では、図7に示すジョブ配置に従がう図8に示す描画メモリ8への並列印刷データの展開状況から、描画メモリ135の副走査方向に上記ステップS1102で求めた最大公約数である3インチ間隔に相当する副走査アドレスy0,y1,y2,y3,…,y12が求められ、ステップS1104ではこれら副走査アドレスy0,y1,y2,y3,…,y12が、図9に示す分割管理テーブル125のアドレスポインタBp1,Bp2,Bp3,Bp4,…,Bp13に対応して登録される。
【0076】
続くステップS1105では、バンド区切り毎の頁境界の検出処理によって、基準側(左側)については副走査アドレスy2,y4,y6,y8,y10,y12のアドレス位置が頁境界であることが認識され、かつ、並列側(右側)についてはアドレスy3,y6,y9,y12の位置が頁境界であると認識される。
【0077】
これにより、ステップS1106では、図9に示す分割管理テーブル125の頁境界情報欄中、基準側(左側)の欄については、頁境界が検出されたアドレスy2,y4,y6,y8,y10,y12に当たるバンドポインタBp3,Bp5,Bp7,Bp9,Bp11及びBp13に対応して頁境界であることを示す“1”が登録される。
【0078】
また、分割管理テーブル125の並列側(右側)の欄については、頁境界が検出されたアドレスy3,y6,y9,y12に当たるバンドポインタBp4,Bp7,Bp10,Bp13に対応して頁境界であることを示す“1”が登録される。
【0079】
なお、ここでは頁境界でないことを示す“0”については図示を省略している。
【0080】
このように、バンドポインタBp1,Bp2,Bp3,Bp4,…,Bp13に対応して副走査方向に3インチ刻みの副走査アドレスを登録した分割管理テーブル125によれば、図8に示す如くに展開されたジョブ1〜10の並列印刷データを副走査方向に3インチのバンド(領域)単位に分割して並列印刷を行うことができる。
【0081】
以上の如くの分割管理処理(図5参照)により図9に例示する情報内容を有する分割管理テーブル125が構築されることにより、印刷装置10は、図4のステップS111以降の並列印刷動作に移行する。
【0082】
すなわち、図4において、ステップS110での分割管理処理(詳細は図5参照)により分割管理テーブル125(図9参照)が構築された後、印刷制御部162は、バンドポインタを順に繰り上げていきながら、分割管理テーブル125に当該バンドポインタBpに対応して格納されるアドレスに基づき、描画メモリ135から該バンドポインタに対応するアドレス以降の1バンド内の並列印刷データ(ラスター画像データ)を順に読み出して並列印刷させる制御を行う(ステップS111)。
【0083】
上記バンドポインタBpに基づいて基準側から並列側までの幅の上記1バンド単位の並列印刷が実行されるのに合わせて上述した用紙ジャム検出部171により用紙ジャムが検出されたか否かを監視する(ステップS112)。
【0084】
ここで、用紙ジャムが検出されなかった場合(ステップS112NO)、次のバンドポインタがあるかどうかを判定し(ステップS114)、次のバンドポインタがある場合は(ステップS114YES)、描画メモリ135内の当該バンドポインタに対応するアドレス以降の1バンドの並列印刷データに基づく並列印刷を続け(ステップS111)、この間、次のバンドポインタがないと判定されると(ステップS114NO)、並列印刷処理を終了する。
【0085】
一方、描画メモリ135内のあるバンドポインタBpに対応するバンドの並列印刷データに基づく並列印刷の完了後(ステップS111)、用紙ジャム検出部171により用紙ジャムが検出された場合(ステップS112YES)、印刷制御部162は当該用紙ジャム発生時のバンドポインタBpに対応するバンドの並列印刷を停止する(ステップS113)。
【0086】
その後、例えば、利用者により行なわれる復旧作業(用紙ジャムの解除作業:ステップS150)が完了し、印刷再開指示の操作があるまで待機する。
【0087】
待機中、印刷再開指示操作があった場合、印刷再開制御部165は、用紙ジャムが発生した時に既に印刷が保証されていた保証バンド区間までさかのぼって該区間内の各バンドのいずれが印刷を再開するバンドとして適切かを決定する印刷再開(リカバリー)処理(ステップS120)を実施する。
【0088】
ステップS120でのリカバリー処理が完了すると、印刷制御部162は、バンドポインタの値を上記リカバリー処理により決定された印刷再開バンドに対応するバンドポインタの値にセットし(ステップS130)、その後、ステップS111以降の処理に進み、該バンドポインタが指示する印刷再開バンドからの並列印刷を再開する。
【0089】
図10は、図4のステップS111における並列印刷処理の詳細を示すフローチャートである。
【0090】
この並列印刷処理において、印刷制御部162は、まず、出力バンドポインタNの値を初期値“0(零)”に初期化(ステップS201)した後、“1”を加算した値にインクリメントし(ステップS202)、該インクリメント後のバンドポインタNに対応するバンドの並列印刷データを描画メモリ135から読み出し(ステップS203)、該読み出した並列印刷データに基づいて該Nバンド目の画像を並列印刷する(ステップS204)。
【0091】
次に、当該Nバンド目の印刷(画像転写)が完了した旨の通知を受けたか否かを監視し(ステップS205)、画像転写が完了した旨の通知を受けた場合(ステップS205YES)、保証バンド算出処理に移行する(ステップS210)。
【0092】
この保証バンド算出処理は、画像形成部14の転写完了位置(図1参照)で転写完了したバンドが、その後の各バンドの印刷により後処理装置30Bに巻き取られる連続紙P上の保証位置(図1参照)を通過し終えた場合に当該バンドを保証バンドとして登録する(転写完了位置から保証位置までの区間の印刷済バンドは非保証バンドとして扱う)処理であり、後で図11を参照して詳述する。
【0093】
上記ステップS210の保証バンド算出処理が完了すると、印刷制御部162は、出力バンドポインタNをインクリメントし(ステップS220)、ステップS203以降の処理を実行する。
【0094】
図10における並列印刷処理によれば、並列配置部161で決定された配置に従がって描画メモリ135に展開される基準側及び並列側の各列の並列印刷データが出力バンドポインタNにより指示される順番でバンド単位に並列に印刷される。
【0095】
図11は、図10のステップS210における保証バンド算出処理の詳細を示すフローチャートである。
【0096】
この保証バンド算出処理を実施するには、事前にリカバリーバンド数の設定処理を行う必要がある。
【0097】
リカバリーバンド数の設定処理(図11右上参照)において、保証バンド管理部164は、利用者による、例えば、表示/操作部15を用いた用紙パス長Lの入力を受付け、該入力された用紙パス長Lを設定する(ステップS231)。
【0098】
または、画像形成部の異常が生じたときのバッファ装置20Bの状態から用紙パス長Lを求めてもよい。バッファ装置20Bもバッファ装置20Aと同様、用紙の張力を調整するものであり、バッファ装置20B内の用紙の張力調整機構の位置関係から用紙パス長Lを求めることもできる。張力調整機構は、図1に記載のバッファ装置20B内に図示される部分19で、これが図中の上下方向に移動することにより、用紙の張力を調整する。
【0099】
用紙パス長Lは、例えば、図1に示すシステム構造において、画像形成プロセス上、最後の画像形成ユニット(この例では、黒色画像形成ユニット140K)の画像転写完了位置からその下流側方向に後処理装置30Bの規定の巻取り位置(保証位置)までの用紙の長さに相当する。
【0100】
次に、保証バンド管理部164は、設定された用紙パス長Lを、上述した分割管理処理(図4のステップS110:詳細は図5参照)で求めたバンド長(並列印刷データの分割管理単位:例えば、図8の例では3インチ)で除算してリカバリーバンド数Rを求める(ステップS232)。
【0101】
ステップS232で求めた除算結果に小数点がある場合には、該小数点以下を切上げてリカバリーバンド数Rを算出する(ステップS233)。
【0102】
次に、保証バンド管理部164は、上記ステップS232、あるいはステップS233により求めたリカバリーバンド数Rを、例えば、図12(a)に示す如くの複数項目の情報〔分割管理単位のバンド長、リカバリーバンド数R、出力バンド(N+1)、転写完了バンド(N)、保証バンドG〕を管理する保証バンド管理テーブル126のリカバリーバンドR数の値として登録する(ステップS234)。
【0103】
保証バンド管理テーブル126にリカバリーバンド数Rを登録した状態で、保証バンド処理を実行するには、まず、保証バンドGの値を初期値“0(零)”に初期化する(ステップS211)。
【0104】
次に、保証バンド管理部164は、保証バンド管理テーブル126から登録済のリカバリーバンド数Rを読み込んで保持したうえで(ステップS212)、転写完了しているバンドNを読み出し(ステップS213)、「(N−R)>1」を満足するか否かをチェックする(ステップS214)。
【0105】
ここで、「(N−R)>1」を満足しない場合(ステップS214NO)は、ステップS216に進み、「(N−R)>1」を満足する場合(ステップS214YES)は、保証バンド管理テーブル126の保証バンドGの値を算出した(N−R)の値に更新し(ステップS215)、その後、ステップS216に進む。
【0106】
ステップS216では、現在設定されているバンドポインタN〔転写完了バンドに対応するバンドポインタNより「1」大きい値〕が示すバンド(Nバンド目)の転写が完了した旨の通知を受信したかどうかをチェックし、該Nバンド目が転写完了した旨の通知を受信した場合(ステップS216YES)、ステップS213に進んで該転写完了バンドNを読込み、「(N−R)>1」を満足するか否かをチェックする(ステップS214)。
【0107】
上記ステップS213〜S216の処理は、バンドポインタNが順次インクリメントされて並列印刷が実行されている間続けられ、この間、転写完了バンドが“1”ずつ増えるに従って保証バンド管理テーブル126における保証バンドGの値も“1”ずつ増えていく。
【0108】
図11に示した保証バンド算出処理による保証バンド管理テーブル126を用いた保証バンドGの管理の具体例について図12を参照して説明する。
【0109】
図12(a)は、例えば、用紙パス長Lとして“21”インチが設定され、分割管理バンド長が“3”インチである場合に、リカバリーバンド数Rとして「21/3=7」バンドが算出される場合の保証バンド管理テーブル126の管理情報の登録内容を示している。
【0110】
この場合、保証バンド管理テーブル126には、バンド長、リカバリーバンド数Rとして、それぞれ、「3(インチ)」、「7」の値(固定値)が保持されている。
【0111】
ここで、アドレスポインタN(N=「13」)のバンド(13バンド目)が印刷中であるとすると、保証バンド管理テーブル126の出力バンド(N)の値としては「13」が保持され、転写完了バンドの値としては「12」が保持される。
【0112】
この時、リカバリーバンド数R(R=「7」)と、出力バンドN(N=「12」)とから、保証バンドGとして、G=(N−R)=(12−7)=「5」が求められ、保持される。
【0113】
すなわち、図12(a)に示す保証バンド管理テーブル126は、図12(b)に示す如く、13バンド目の並列印刷実行中、その時点で画像転が完了している12バンド目から上記用紙パス長L分先の保証位置までの7バンド区間を非保証バンドとして扱い、該非保証バンドより一つ先の5バンド目を保証バンドGとするバンド管理を実現する。
【0114】
なお、本実施形態では、非保証バンド(リカバリーバンド数R)が7バンド区間存在するため、図11のステップS214においては、8バンド目が転写完了した時に保証バンドGは1バンド目となり、以後、1バンド単位の並列印刷がなされる毎に保証バンドGの値が“1”ずつ更新されていく。
【0115】
かかる保証バンド管理テーブル126と、上述した分割管理テーブル125を有することにより、印刷再開制御部165は、並列印刷実行中、用紙ジャム検出部171で連続紙Pの用紙ジャムが検出された場合、保証バンド管理テーブル126から保証バンドGの値を読取る一方、分割管理テーブル125を参照して該保証バンドGより先に出力され、かつ、基準側、及び並列側の両方の列に頁の境界があるバンドを特定し、該バンドをリカバリー開始バンドとして再出力させるリカバリー処理を実現できる。
【0116】
このリカバリー処理(図4のステップS120)の詳細について図13に示すフローチャートを参照して詳述する。
【0117】
図13に示すリカバリー処理において、印刷再開制御部165は、用紙ジャムが検出されて並列印刷が停止される(図4のステップS112,S113)と、保証バンド管理テーブル126の当該時点での管理情報の値を保持させ(ステップS301)、利用者により用紙ジャムを解除する復旧作業(ステップS130)が実施され、印刷再開指示操作がなされるまで待機する。
【0118】
待機中、利用者により印刷再開指示操作がなされると(ステップS302YES)、印刷再開制御部165は、出力バンドポインタNの値を、保証バンド管理テーブル126に保持されている保証バンドG(用紙ジャム発生時の保持値)の値に“1”加算した値(G+1)にセットする(ステップS303)。
【0119】
次に、印刷再開制御部165は、分割管理テーブル125(図9参照)に保持されている頁境界情報のうち、ステップS303でセットされた出力バンドポインタN(N=G+1)が示すバンドに対応する頁境界情報欄を参照し、左側(基準側)の列の頁境界情報(この例では、“1”)が記憶されているか否かをチェックする(ステップS304)。
【0120】
ここで、左側の列の頁境界情報が記憶されていない場合(ステップS304NO)はステップS306に進む。
【0121】
また、左側の列の頁境界情報が記憶されている場合(ステップS304YES)は、基準側頁境界情報検出フラグを“オン”に設定し(ステップS305)、その後、ステップS306に進む。
【0122】
ステップS306では、分割管理テーブル125の上記出力バンドポインタN(N=G+1)が示すバンドに対応する頁境界情報欄を参照し、右側(並列側)の列の頁境界情報が記憶されているか否かをチェックする(ステップS306)。
【0123】
ここで、右側の列の頁境界情報が記憶されていない場合(ステップS306NO)はステップS308に進み、他方、右側の列の頁境界情報が記憶されている場合(ステップS306YES)は、並列側頁境界情報検出フラグを“オン”に設定し(ステップS307)、ステップS308に進む。
【0124】
ステップS308では、上記ステップS304〜S307までの頁境界情報のチェック結果をもとに、当該出力バンドポインタN(N=G+1)に対応する基準側頁境界情報検出フラグと並列側頁境界情報検出フラグをチェックし、左右(基準側、及び並列側)両方の頁境界情報検出フラグが“オン”であるかどうかを判定する。
【0125】
ここで、当該出力バンドポインタN(N=G+1)に対応する左右両方の頁境界検出フラグが“オン”でない〔基準側、及び並列側のいずれか一方、若しくは両方の頁境界情報検出フラグが“オフ”〕と判定された場合(ステップS308NO)、全ての頁境界情報検出フラグを初期化(“オフ”に)したうえで、出力バンドポインタNを(N−1)の値にセットする(ステップS309)。
【0126】
次いで、ステップS304の処理に移行し、その後、ステップS308の処理まで進んで当該出力バンドポインタNに対応する左右両方の頁境界情報検出フラグが“オン”であるかどうかをチェックし、ここで左右両方の頁境界情報検出フラグが“オン”でないと判定される(ステップS308NO)間は、全フラグを初期化したうえで、出力バンドポインタNの値を順に“1”減算し(ステップS309)、ステップS304以降の処理を続行する。
【0127】
この間、ステップS308において、当該出力バンドポインタNに対応する左右両方の頁境界情報検出フラグが“オン”であると判定されると(ステップS308YES)、この時の出力バンドポインタNの値をリカバリー開始(印刷再開)ポイントと決定し(ステップS310)、該リカバリー開始ポイント〔バンドポインタBp(R)〕を印刷制御部162に通知する。
【0128】
印刷制御部162は、図4のステップS130において、該通知されたリカバリー開始ポイント〔Bp(R)〕の値を出力バンドポインタNにセットし、図4におけるステップS111以降の並列印刷を再開させる。
【0129】
次に、上記リカバリー処理(図13参照)によりリカバリー開始ポイントを決定する具体的な例について説明する。
【0130】
図14は、図6に示したジョブ1〜10に対する並列印刷指示に基づき、基準側に頁長6インチの各ジョブ1,2,4,7,9,10が配列され、並列側に頁長9インチの各ジョブ3,5,6,8が配置された並列印刷データ(図8参照)を3インチのバンド長毎に並列印刷していく時に、バンドポインタNが(N=9)のバンドが保証位置(図1参照)を通過するタイミングで連続紙Pの用紙ジャムが検出された場合のリカバリー開始ポイント決定イメージを示している。
【0131】
この場合、保証バンド管理テーブル126により管理される保証バンドGの値は「8」(転写完了している8バンド目に対応する値)となっている。
【0132】
これにより、印刷再開制御部165は、図13のステップS303〜S308間で、出力バンドポインタNを〔N=(G+1)=(8+1)=9〕にセットし、バンドポインタN(N=9)に対応するバンド(左右の列に共通するバンド)上で左右両方の列に頁境界情報が存在する条件を満たすかどうかを検索する。
【0133】
ここで、上記条件を満たさない(頁境界は左側の列のみ)ことが認識されると、次に出力バンドポインタNの値を“1”減じてバンドポインタN(N=8)に対応するバンドの頁境界情報をチェックする。
【0134】
ここでも上記条件を満たさない(頁境界は基準側、並列側ともなし)ことが認識されると、更に出力バンドポインタNの値を“1”減じてバンドポインタN(N=7)に対応するバンド(左右の列に共通するバンド)の頁境界情報をチェックする。
【0135】
ここでは、当該バンド上で左右両方の列に頁境界情報が存在する条件を満たすものと認識され、リカバリー開始ポイント〔(Bp(R)〕を出力バンドポインタN(N=7)のバンドに決定する。
【0136】
その後は、図4のステップS130で出力バンドポインタNを上記リカバリー開始ポイント〔(Bp(R)〕に対応する「7」に設定し、印刷制御部162が該出力バンドポインタN(N=7)のバンドからの並列印刷を再開する。
【0137】
上述したように、本実施例では、並列印刷の実行中に用紙ジャム等、リカバリーが必要な異常が検出されると、保証バンド管理テーブル126が保持している保証バンドGの一つ後のバンド〔バンドポインタN(N=G+1)のバンド〕から順に1つづさかのぼって(移行して)各バンド(左右共通のバンド)に対応して左右両方の列とも頁境界があるか否かをチェックしていき、左右両方の列ともに頁境界があるバンド(但し、左右共通バンド)が存在する場合、該バンド(非保証バンド外のバンド)を印刷再開開始バンドとして決定する。
【0138】
かかるリカバリー処理によれば、例えば、図14に示す例の場合、バンドポインタN(N=7)をリカバリー開始ポイントとして並列印刷を再開すると、基準側の列のジョブ7に当たる1頁分の画像が再度出力されることになる。
【0139】
この場合において、リカバリー開始ポイントから再出力する際に1頁分の画像が再出力されるジョブ7の並列印刷データに頁が不要であることを示す頁不要マーク、具体例としては、頁のダブリ(重複)があることを示す図15に示す「×」頁重複指示マークを付加して出力することが考えられる。
【0140】
かかる出力を得るための印刷再開制御部165の制御機能については、例えば、用紙ジャム検出時の保証バンドGの一つ後からバンドを順にさかのぼって検索する(図14参照)際、左右両方の列に共通の頁の境界があるバンドまでの間にいずれか一方の列に対応する頁境界情報が検出された場合に該頁境界に対応するバンドポインタを当該列に対応して記憶しておき(頁境界情報検出フラグの検出履歴として残しておく)、その後、左右両方の列に共通の頁の境界があるバンド(リカバリー開始ポイントとなるバンド)が検出された場合、上記頁境界情報検出フラグの検出履歴に基づき、その前に未頁境界情報が検出された列の、上記リカバリー開始ポイントのバンドから当頁境界情報が検出されたバンドまでの頁のラスター画像データに上述した頁重複指示マークを付加して出力する印刷制御機能を追加すれば良い。
【0141】
図15は、図14に例示した処理により決定されたリカバリー開始ポイントに基づいてリカバリー印刷を実施した場合のリカバリー出力例を示す概念図である。
【0142】
このリカバリー出力を得るために、印刷再開制御部165は、図14においてバンドポインタN(N=9)に対応するバンドから順にバンドをさかのぼって頁境界情報を検索する(図13のステップS303〜S307参照)際、まず初めに当該バンドポインタN(N=9)に対応して左側の列に対応する頁境界情報を検出することにより当該バンドポインタN(N=9)に対応する左頁境界情報フラグを“オン”にし(頁境界情報検出フラグの検出履歴として残しておく)、その後、バンドポインタN(N=7)に対応して左右両方の列に対応する頁境界情報を検出することにより当該バンドポインタN(N=7)に対応する左頁境界情報フラグ、及び右頁境界情報フラグをともに“オン”にする。
【0143】
これにより、図13のステップS308でバンドポインタN(N=7)に対応する左頁境界情報フラグ、及び右頁境界情報フラグの両方が“オン”であることを認識することにより、ステップS310で当該バンドポインタN(N=7)をリカバリー開始ポイントとして決定する。
【0144】
その後の処理は図13には示してはいないが、上記リカバリー開始ポイント決定後、該リカバリー開始ポインタまでの間の各バンドポインタに対応する頁境界情報検出フラグの検出履歴をチェックする。
【0145】
このチェックの結果、バンドポインタN(N=9)に対応する左頁境界情報フラグのみが“オン”であることを認識することにより、左側(基準側)の列の、リカバリー開始ポイントとして決定されたバンドポインタN(N=7)に対応するバンドから頁境界情報検出フラグが“オン”であることが検出されたバンドポインタN(N=9)までのバンド(2バンド)を占めるジョブ7をリカバリー時重複頁と判定する。
【0146】
これにより、印刷再開制御部165は、上記重複頁(ジョブ7)のラスター画像データに頁重複指示マークに相当する画像を付加し、その後、上記リカバリーポイントのバンドからのリカバリー印刷を実施する。
【0147】
その結果、図15に示す如く、左側の列のジョブ6の頁先端部と、右側の列のジョブ7の頁先端部が同一副走査ライン上に並ぶ画像位置から印刷開始され、重複頁であるジョブ7に当該ジョブ画像に頁重複指示マークMの画像が併せ形成された再印刷出力を得る。
【0148】
なお、図15の例では、頁重複指示マークとして印〔バツ(×)印〕を付加しているが、該頁重複マークは、要は利用者にリカバリー印刷された頁のうちの不要頁を認識させ得るものであれば良く、例えば、「重複」等の文字が記されたマークでも構わない。
【0149】
また、不要頁を認識させるという観点からは、上記処理により判定された重複頁(図15の例ではジョブ7に当たる頁)を削除してからリカバリー印刷を開始するようにしても良い。
【0150】
ところで、図4に示す並列印刷処理は、並列に印刷する列数が2列で、6インチ、9インチの頁長がそれぞれ指定された各ジョブが並列印刷対象となっている場合の例を挙げているが、これら各ジョブの並列印刷実行中に、別の複数のジョブに対する並列印刷指示が受付けられることもあり得る。
【0151】
図16は、本実施例の印刷装置10における並列印刷時の別の並列印刷指示の受付処理を示すフローチャートである。
【0152】
なお、図16の処理は、例えば、図4に示すフローチャート中、ステップS114で次のバンド有りと判定(ステップS114YES)された後の処理として挿入されることを想定している。
【0153】
この場合において、図4のステップS100で既に印刷指示を受け付けた各ジョブ(例えば、図6に示すジョブ1〜10)については、ステップS101以降の一連の処理ステップを経て並列印刷実施中であるものとする。
【0154】
この並列印刷の実行中、印刷制御部162は、図4のステップS112で用紙ジャムが検出されず(ステップS112NO)、続くステップS113で次のバンドがあると判定される(ステップS114YES)毎に、別の並列印刷指示が受け付けられたか否かをチェックする(ステップS501YES)。
【0155】
ここで、並列印刷実行中に別のジョブに対する並列指示が受付けられていないと判定された場合(ステップS501NO)、図4のステップS111における次バンドの並列印刷処理に移行する。
【0156】
一方、並列印刷実行中に別のジョブに対する並列印刷指示が受付けられたと判定された場合(ステップS501YES)、印刷制御部162は、該受付けられた並列印刷指示に基づく印刷対象の各ジョブの印刷属性(頁サイズ、枚数等)をチェックして当該各ジョブの頁長を取得する(ステップS502)。
【0157】
次に、その取得した各ジョブの頁長と、並列印刷実行中のジョブ配置に基づいて現在設定しているバンド長とを照合し(ステップS503)、現在設定中のバンド長が有効であるか否かを判定する(ステップS504)。
【0158】
ここで、現在設定中のバンド長が有効である(例えば、取得した各ジョブの頁長が設定されているバンド長で割り切れる)と判定された場合(ステップS504YES)、並列配置部161は、上記ステップS502で取得した各ジョブの頁長に基づき、当該各ジョブを基準側、あるいは並列側のいずれかの列の最後のジョブに繋げて配置する(ステップS505)。
【0159】
ステップS505において上記ステップS501で並列印刷指示を受け付けた各ジョブを並列印刷実行中の該当する列のジョブに繋げて配置した後、図4のステップS111に進み、以降、当該繋げて配置した各ジョブも含めて現在設定中のバンド長単位に並列印刷を行う。
【0160】
これに対して、例えば、取得した各ジョブの頁長が設定されているバンド長で割り切れないことにより、現在設定中のバンド長が有効でないと判定された場合(ステップS504NO)、並列印刷制御部162は、実行中の並列印刷が終了したかどうかを監視する(ステップS506)。
【0161】
ここで、実行中の並列印刷が終了した場合(ステップS506YES)、図4のステップS102に進み、上記ステップS501で並列印刷指示を受け付けた各ジョブ(並列印刷実行中に並列印刷指示されたジョブ)を基準側と並列側とで並列印刷するジョブ配置を決定する。
【0162】
その後は、この並列印刷実行中に並列印刷指示された各ジョブに関する、図4のステップS103での並列印刷データの生成、同ステップS110での各列に配置されるジョブの頁長の最大公約数に基づくバンド長算出処理を経て、同ステップS111以降の当該並列印刷データのバンド長単位の並列印刷を実行する。
【0163】
図16に示した並列印刷実行中の並列印刷指示受付け処理によれば、例えば、図6に示す並列印刷指示に基づくジョブ1〜10の並列印刷実行中、図16のステップS501で並列印刷指示が受け付けられた各ジョブも、6インチと9インチの頁長を有するものが混在している場合には、並列配置部161が、6インチの頁長が指定されたジョブはそれまで通りに基準側(左側)の列に配置する一方で、9インチの頁長が指定されたジョブについても並列側(右側)の列に配置する(いずれの列も当該列の最後のジョブの最終頁に続く位置に)ことにより、当該後で並列印刷指示された各ジョブの描画メモリ135に展開された頁イメージについても既に並列印刷実行中の各ジョブ(この例では、図6〜8に示す10個のジョブ1〜10)と同様、3インチ長のバンド単位に分割管理して用紙ジャム発生時のリカバリー制御に対処できる。
【0164】
これに対して、上記10個のジョブ1〜10の並列印刷実行中に並列印刷指示された各ジョブが、例えば、5インチと10インチの頁長がそれぞれ指定されたジョブである場合、実行中の並列印刷に対して設定されているバンド長(3インチ)が有効でないと認識され、これにより並列配置部161が、後で受付けた並列印刷指示に係る各ジョブを2列にして並列印刷するためのジョブの並列配置(例えば、頁長が5インチのものは左側、頁長が10インチのものは右側)を新たに決定し、次いで保証バンド管理部164が該配置で並列印刷するラスター画像データの分割管理バンド長(5インチ)を設定することにより、印刷制御部16による当該バンド長単位での並列印刷を実行できる。
【実施例2】
【0165】
実施例2に係る印刷装置10は、制御部16(図2、図3参照)における印刷再開制御部165の機能構成が実施例1と異なる。
【0166】
図17は、実施例2に係わる印刷装置10の印刷再開制御部(便宜的に、165bと呼称)におけるリカバリー処理を示すフローチャートである。
【0167】
図17において、実施例1に係るリカバリー処理(図13参照)の各処理ステップと同様の処理ステップには同様のステップ符号を付している。
【0168】
図17に示すリカバリー処理において、印刷再開制御部165bは、ステップS304〜S307の一連の処理中、基準側と並列側の左右それぞれの列について頁境界情報を検出した場合には当該検出した列の頁境界情報検出フラグを“オン”にし、ステップS308bに移行する。
【0169】
ステップS308bでは、上記ステップS304〜S307の処理後の基準側頁境界情報検出フラグと並列側頁境界情報検出フラグをチェックし、左右(基準側、及び並列側)両方の頁境界情報検出フラグが“オン”であるかどうかを判定する。
【0170】
ここで、左右両方の頁境界検出フラグが“オン”でないと判定された場合(ステップS308bNO)、上記ステップS304〜S307の処理により保持した各列の頁境界情報検出フラグ〔“オン”状態〕を保持したまま出力バンドポインタNを(N−1)の値にセットする(ステップS309)。
【0171】
引き続き、ステップS304の処理に移行し、その後、ステップS304〜S307を経てステップS308bまで進み、ここで左右両方の頁境界情報検出フラグが“オン”でないと判定される(ステップS308bNO)間は、出力バンドポインタNの値を順に“1”減算し(ステップS309)、ステップS304以降の処理を続行する。
【0172】
この間、ステップS308bにおいて、左右両方の頁境界情報検出フラグが“オン”であると判定されると(ステップS308bYES)、この時の出力バンドポインタN〔すなわち、左右のいずれか一方の列が先に頁境界情報検出フラグが“オン”となり、その後にもう一方の列が頁境界検出フラグが“オン”となった場合には、後で(最後に)頁境界情報検出フラグが“オン”となったバンドポインタN〕〕の値をリカバリー開始(印刷再開)ポイントと決定する(ステップS310b)。
【0173】
その後は実施例1と同様(図13参照)、図4のステップS130に進み、上記ステップS310bで決定したリカバリー開始ポイント〔Bp(R)〕の値を出力バンドポインタNにセットし、ステップS111以降の並列印刷を再開する。
【0174】
次に、図17に示した本実施例のリカバリー処理によりリカバリー開始ポイントを決定する具体的な例について説明する。
【0175】
図18は、図6に示したジョブ1〜10に対する並列印刷指示に基づき、基準側に頁長6インチの各ジョブ1,2,4,7,9,10が配列され、並列側に頁長9インチの各ジョブ3,5,6,8が配置された並列印刷データ(図8参照)を3インチのバンド長毎に並列印刷していく時に、バンドポインタNが(N=6)のバンドが保証位置(図1参照)を通過するタイミングで連続紙Pの用紙ジャムが検出された場合のリカバリー開始ポイント決定イメージを示している。
【0176】
この場合、保証バンド管理テーブル126により管理される保証バンドGの値は「5」(転写完了している5バンド目に対応する値)となっている。
【0177】
これにより、印刷再開制御部165bは、図17のステップS303〜S308間で、出力バンドポインタNを〔N=(G+1)=(5+1)=6〕にセットしたうえで、バンドポインタN(N=6)に対応するバンド上で左右(基準側、及び並列側)両方に頁境界情報が存在する条件を満たすかどうかを検索する。
【0178】
ここで、上記条件を満たさない(左右両方の列に頁境界なし)ことを認識すると、次に出力バンドポインタNの値を“1”減じてバンドポインタN(N=5)に対応するバンドの頁境界情報をチェックする。
【0179】
ここでも上記条件を満たさない(頁境界は左側のみあり)ことを認識すると、出力バンドポインタNの値を更に“1”減じてバンドポインタN(N=4)に対応するバンドの頁境界情報をチェックする。
【0180】
ここでは、当該バンド上で左右両方に頁境界情報が存在する条件を満たすと判定され、リカバリー開始ポイント〔(Bp(R))を出力バンドポインタN(N=4)に対応するバンドに決定する。
【0181】
その後は、図4のステップS130で出力バンドポインタNを上記リカバリー開始ポイント〔(Bp(R))に対応する「4」に設定し、印刷制御部162が該出力バンドポインタN(N=4)のバンドからの並列印刷を再開する。
【0182】
図19は、図18に例示した処理により決定されたリカバリー開始ポイントに基づいてリカバリー印刷を実施した場合のリカバリー出力例を示す概念図である。
【0183】
このリカバリー出力を得るために、印刷再開制御部165bは、図18に示す如くバンドポインタN(N=6)に対応するバンドから順にバンドをさかのぼって頁境界情報を検索する(図17のステップS303〜S309参照)際、初めにバンドポインタN(N=5)に対応して左側(基準側)の列に対応する頁境界情報を検出することにより当該バンドポインタN(N=5)に対応する左頁境界情報フラグを“オン”にし、その後、バンドポインタN(N=4)に対応して右側(並列側)の列に対応する頁境界情報を検出することにより当該バンドポインタN(N=4)に対応する右頁境界情報フラグを“オン”にする。
【0184】
これにより、図17のステップS308bでバンドポインタN(N=4)に対応する左頁境界情報フラグ、及び右頁境界情報フラグの両方が“オン”であることを認識することにより、ステップS310bで当該バンドポインタN(N=4)をリカバリー開始ポイントとして決定する。
【0185】
図18に示す配置を有する並列印刷データについて、上記の如くリカバリー開始ポイントとして決定されたバンドポインタN(N=4)のバンドから印刷を再開すると、図19に示すように、左側の列のジョブ2の頁後半部先端と、右側の列のジョブ5の頁先端部が同一副走査ライン上に並ぶ画像位置から順に副走査方向へ各列並列に印刷された再出力を得る。
【0186】
上述したように、本実施例では、並列印刷の実行中に用紙ジャムが検出されると、バンド管理テーブル12が保持している保証バンドGの一つ後のバンド〔バンドポインタN(N=G+1)のバンド〕から順に1つづさかのぼって、各バンドに対応して頁境界があるか否かを基準側、及び並列側の各列毎にチェックしていき、基準側、及び並列側の列ともに頁境界があるバンド(但し、左側と右側で共通バンドでないことを許容する)が存在する場合、該バンドをリカバリー開始バンドとして決定する。
【0187】
この他、本発明は、上記し、且つ図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0188】
例えば、上記実施形態では、並列印刷対象の全ての文書(ジョブ)がそれぞれ1頁で構成される例を挙げているが、複数の頁で構成されている文書が混在する場合の並列配置、分割管理、並列印刷にも適用できる。
【0189】
また、上記実施形態では、連続紙Pとしてロール紙を前提に説明したが、ファンフォールド紙等の連続紙を用いても良い。
【0190】
また、上記実施形態では、連続紙Pの幅方向の列数が2列の場合について述べたが3列以上の複数列で並列印刷する場合にも適用できる。
【0191】
また、上記実施形態では、前処理装置と、該前処理装置から送り込まれて複数の文書が並列に印刷された連続紙を後処理する後処理装置とを有する印刷装置への適用例を挙げているが、これに限らず、連続紙(ロール紙、ファンフォールド紙等)を用いて複数の文書を既定列数で並列印刷するプリンタや複合機等の各種の画像処理装置にも適用できる。
【0192】
また、上記実施形態では、CPUや、ROMあるいはRAMなどの記憶手段を有するコンピュータで実現され、複数の文書を、連続紙Pにその幅方向に規定数の列で並列に印刷するプリンタ等の画像処理装置(上記記憶手段)に画像処理プログラムを実装し、該プログラムに基づき、該コンピュータを、並列印刷画像情報を生成する画像情報生成手段(印刷制御部162、画像処理部13)、並列印刷画像情報を各列文書のそれぞれの頁長の最大公約数の長さを有する領域に分割して管理する分割管理手段(分割管理部163)、印刷の再開が必要な異常の発生時に印刷が保証される保証領域を管理する管理手段(保証バンド管理部164)、異常の検出時、管理手段が管理する保証領域と分割管理手段による上記並列印刷画像情報の分割管理領域に基づいて印刷再開開始領域を決定する印刷再開開始領域決定手段(印刷再開制御部165)等として機能させるようにしているが、当該画像処理プログラムをCDROM等の記憶媒体に格納して提供するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明は、ロール紙等の連続紙に複数のジョブを既定の列数で並列に印刷する印刷装置などの画像処理装置や画像処理システム、及びこれら装置あるいはシステムに実装する画像処理プログラムに適用できる。
【符号の説明】
【0194】
100…印刷システム、5…ホスト端末(PC:パーソナル・コンピュータ)、10…印刷装置、10a…印刷装置本体部、11…ホストインタフェース(I/F)部、12…記憶部、125…分割管理テーブル(TB)、126…保証バンド管理テーブル(TB)、13…画像処理部、135…描画メモリ、14…画像形成部、140Y,140M,140C,140Y…画像形成ユニット、15…表示/操作部、16…制御部、161…並列配置部、162…印刷制御部、163…分割管理部、164…保証バンド管理部、165…印刷再開制御部、17…用紙ジャム検出センサ、171…用紙ジャム検出部、20A,20B…バッファ装置、30A…前処理装置、30B…後処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷される画像情報を含む印刷情報に基づき前記印刷情報で印刷指示された画像情報を連続印刷する際に、複数の前記印刷情報をひとつの連続紙の幅方向にそれぞれ並べて配置して前記画像情報を前記連続紙に印刷するように印刷画像情報を生成する画像情報生成手段と、
前記画像生成手段により生成された前記印刷画像情報を、前記ひとつの連続紙の幅方向に配置された複数の画像情報の頁の前記連続紙の長さ方向長から求められる最大公約数の長さを有する領域に分割して管理する分割管理手段と、
前記分割管理手段により管理される前記領域単位の並列印刷が実行される毎に、該並列印刷された領域に対応して、印刷が保証される保証領域と、前記保証領域に続く非保証領域とを区別して管理する管理手段と、
前記印刷画像情報に基づく画像形成部による並列印刷の実行中、前記画像形成部の異常が検出された場合、前記管理手段により管理される前記保証領域と、前記分割管理手段により分割管理される前記印刷画像情報の領域情報とに基づき、前記画像形成部の異常復旧後の印刷再開開始領域を決定する印刷再開開始領域決定手段と
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記分割管理手段は、
分割管理する前記印刷画像情報の前記各領域のうち、前記2以上の列それぞれの印刷画像情報の頁境界に一致する前記領域に対応して、各列別に頁の境界があること示す頁境界情報を更に管理する
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記印刷再開開始領域決定手段は、
前記分割管理手段により管理される前記異常発生時に前記保証領域に対応する領域から順に1つ先の領域へと移行して前記頁境界情報を検索し、前記各列の印刷画像情報に共通の領域であって、前記各列共に前記頁境界情報が検出された領域を前記印刷再開開始領域として決定する
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記印刷再開開始領域として決定された前記領域から、該領域よりも前に前記頁境界情報が検出された前記2以上の列のうちのいずれかの列の当該頁境界情報が検出された領域までを印刷再開時の重複頁と判定する判定手段と、
前記印刷再開開始領域から前記印刷画像情報の印刷を再開する際、前記判定手段により判定された前記重複頁に頁が不要であることを示す不要印画像を付加して出力制御する出力制御手段と
を具備する請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記印刷再開開始領域として決定された前記領域から、該領域よりも前に前記頁境界情報が検出された前記2以上の列のうちのいずれかの列の当該頁境界情報が検出された領域までを印刷再開時の重複頁と判定する判定手段と、
前記印刷再開開始領域から前記印刷画像情報の印刷を再開する際、前記判定手段により判定された前記重複頁を削除して出力制御する出力制御手段と
を具備する請求項3記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記印刷再開開始領域決定手段は、
前記分割管理手段により管理される前記異常発生時に前記保証領域に対応する領域から順に1つ先の領域へと移行して前記頁境界情報を検索し、前記2以上の列のうちのいずれかの列の印刷画像情報の領域で前記頁境界情報が検出され、その後、他の各列全てで順次該当する列の印刷画像情報の領域で前記頁境界情報が検出された場合、最後に前記頁境界情報が検出された列の領域を前記印刷再開開始領域として決定する
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項7】
印刷される画像情報を含む印刷情報で前記画像情報の印刷を指示する指示装置と、ひとつの連続紙を送り出す送出し装置と、前記指示装置から前記印刷情報で印刷指示された前記画像情報を前記送出し装置から送り込まれる前記連続紙に連続印刷する画像処理を行う画像処理装置と、前記画像情報が連続印刷された前記連続紙を取り込む取込み装置とを有し、
前記画像処理装置は、
印刷される画像情報を含む前記印刷情報に基づき該印刷情報で印刷指示された前記画像情報を連続印刷する際に、複数の前記印刷情報を前記ひとつの連続紙の幅方向にそれぞれ並べて配置して前記画像情報を前記連続紙に印刷するように印刷画像情報を生成する画像情報生成手段と、
前記画像生成手段により生成された前記印刷画像情報を、前記ひとつの連続紙の幅方向に配置された複数の画像情報の頁の前記連続紙の長さ方向長から求められる最大公約数の長さを有する領域に分割して管理する分割管理手段と、
前記分割管理手段により管理される前記領域単位の並列印刷が実行される毎に、該並列印刷された領域に対応して、印刷が保証される保証領域と、前記保証領域に続く非保証領域とを区別して管理する管理手段と、
前記印刷画像情報に基づく画像形成部による並列印刷の実行中、前記画像形成部の異常が検出された場合、前記管理手段により管理される前記保証領域と、前記分割管理手段により分割管理される前記印刷画像情報の領域情報とに基づき、前記画像形成部の異常復旧後の印刷再開開始領域を決定する印刷再開開始領域決定手段と
を具備する画像処理システム。
【請求項8】
コンピュータを、
印刷される画像情報を含む印刷情報に基づき前記印刷情報で印刷指示された画像情報を連続印刷する際に、複数の前記印刷情報をひとつの連続紙の幅方向にそれぞれ並べて配置して前記画像情報を前記連続紙に印刷するように印刷画像情報を生成する画像情報生成手段、
前記画像生成手段により生成された前記印刷画像情報を、前記ひとつの連続紙の幅方向に配置された複数の画像情報の頁の前記連続紙の長さ方向長から求められる最大公約数の長さを有する領域に分割して管理する分割管理手段、
前記分割管理手段により管理される前記領域単位の並列印刷が実行される毎に、該並列印刷された領域に対応して、印刷が保証される保証領域と、前記保証領域に続く非保証領域とを区別して管理する管理手段、
前記印刷画像情報に基づく画像形成部による並列印刷の実行中、前記画像形成部の異常が検出された場合、前記管理手段により管理される前記保証領域と、前記分割管理手段により分割管理される前記印刷画像情報の領域情報とに基づき、前記画像形成部の異常復旧後の印刷再開開始領域を決定する印刷再開開始領域決定手段
として機能させるための画像処理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−76373(P2012−76373A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223959(P2010−223959)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】