説明

画像処理装置、画像処理プログラム、及び画像処理方法

【課題】レンダリング時間を短縮しつつ、分割された領域の境界部分の画像の連続性を保つことが可能な画像処理装置、画像処理プログラム、及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】オブジェクトの画像を複数の領域に分割する分割手段と、前記分割された複数の領域のうち、レンダリング対象となる領域を含みこの領域より大きい所定範囲内の領域外の画像を簡素化した上で、当該レンダリング対象となる領域ついてレンダリングを行うレンダリング手段と、前記レンダリングされた各領域の画像を合成する合成手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトの画像を複数の領域に分割し、分割された複数の領域毎にレンダリングを行い、レンダリングされた各領域の画像を合成する画像処理装置等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な3次元形状をレンダリングする場合、そのままの形状をレンダリングすると画像生成にかかる時間が長くなってしまう。このような画像生成にかかる時間を短縮するために、注目している領域以外の3次元形状を、簡略化した形状に置き換えた上でレンダリングを行う手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、サイズの大きい画像をレンダリングする場合、画像を複数の領域に分割し、夫々についてレンダリングし、合成するという手法が知られている。この手法では、例えば、複数の領域を同時に計算可能な並列計算環境において用いられる。
【特許文献1】特許第2667835号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した2つの手法を組み合わせることでレンダリングにかかる時間を短縮することができるが、この2つの手法を組み合わせた場合、複数に分割された領域の境界において形状が大きく変化することになり、境界部分の画像の連続性が失われてしまい、違和感が生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題等に鑑みてなされたものであり、レンダリング時間を短縮しつつ、分割された領域の境界部分の画像の連続性を保つことが可能な画像処理装置、画像処理プログラム、及び画像処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、オブジェクトの画像を複数の領域に分割する分割手段と、前記分割された複数の領域のうち、レンダリング対象となる領域を含みこの領域より大きい所定範囲内の領域外の画像を簡素化した上で、当該レンダリング対象となる領域ついてレンダリングを行うレンダリング手段と、前記レンダリングされた各領域の画像を合成する合成手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記レンダリング手段は、前記レンダリング対象となる領域における3次元形状の詳細度を計算し、その詳細度に応じて前記簡略化を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、コンピュータを、オブジェクトの画像を複数の領域に分割する分割手段、前記分割された複数の領域のうち、レンダリング対象となる領域を含みこの領域より大きい所定範囲内の領域外の画像を簡素化した上で、当該レンダリング対象となる領域ついてレンダリングを行うレンダリング手段、及び、前記レンダリングされた各領域の画像を合成する合成手段として機能させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、オブジェクトの画像を複数の領域に分割する分割工程と、前記分割された複数の領域のうち、レンダリング対象となる領域を含みこの領域より大きい所定範囲内の領域外の画像を簡素化した上で、当該レンダリング対象となる領域ついてレンダリングを行うレンダリング工程と、前記レンダリングされた各領域の画像を合成する合成工程と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オブジェクトの画像を複数の領域に分割し、前記分割された複数の領域のうち、レンダリング対象となる領域を含みこの領域より大きい所定範囲内の領域外の画像を簡素化した上で、当該レンダリング対象となる領域ついてレンダリングを行うように構成したので、レンダリング時間を短縮しつつ、分割された領域の境界部分の画像の連続性を保つことができ、従って、違和感が生じさせないことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、3DCG(Computer Graphic)システムに対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0012】
先ず、本実施形態に係る3DCGシステムSの構成及び機能概要について、図1を用いて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る3DCGシステムSの概要構成の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、3DCGシステムSは、モデリング装置1と、簡略・レンダリングパラメータ入力装置2と、簡略・レンダリング不足パラメータ生成装置3と、レンダリングシーン生成装置4と、複数の画像生成装置5n(n=1,2・・・)と、画像合成装置6と、を備えて構成されている。なお、これらの装置は、例えば、画像製作現場に設置されているとともに、LAN(Local Area Network)や専用ケーブル等を介して相互に接続され互にデータの送受信が可能になっている。
【0015】
なお、レンダリングシーン生成装置4と、複数の画像生成装置5nと、画像合成装置6とは、一例として画像処理装置を構成する。
【0016】
モデリング装置1は、レンダリングシーン生成装置4に供給される、CGで表現する3次元のオブジェクト(対象物)のモデルデータ(形状データ)を生成する装置であり、汎用または専用のCAD装置や、CGソフトのモデリング機能がインストールされたコンピュータ、或いは3次元形状入力装置などが適用可能である。
【0017】
上記モデルデータの内容としては、例えば、オブジェクトの形状を特定するモデルデータ(例えば、オブジェクトの頂点座標、線分、面等のデータ等、またはポリゴンデータ(オブジェクトを構成する多角形の頂点座標等)等)や、オブジェクトの材質、色彩、模様等を特定するテクスチャ、反射率等のデータ等が含まれる。
【0018】
簡略・レンダリングパラメータ入力装置2は、レンダリングの設定値である簡略パラメータを入力する装置であり、上記CAD装置や、CGソフトのカメラ設定機能がインストールされたコンピュータなどが適用可能である。上記簡略パラメータは、例えばマウスやキーボードなどの入力デバイスを利用して入力され、簡略・レンダリング不足パラメータ生成装置3に出力される。
【0019】
簡略・レンダリング不足パラメータ生成装置3は、簡略・レンダリングパラメータ入力装置2からの簡略パラメータの不足を補う装置であり、標準的な設定値や簡略化の度合いを自動的に算出して不足を補うようになっている。簡略パラメータの不足が補われ、最終的に設定されたパラメータは、レンダリングシーン生成装置4に供給される。
【0020】
ここで、本明細書において、パラメータとは、あるオブジェクトの画像を生成したときに当該画像におけるそのオブジェクトの表示態様(例えば、表示のされ方、見え方、写り方等)を規定する、例えばアングル(詳細には、例えば、視点の位置、視線方向、視野角等)やライティング(詳細には、例えば、光源の種類、位置、色成分、輝度等)等といった要素がレンダリング処理のために数値化されたデータのことをいう。
【0021】
レンダリングシーン生成装置4(分割手段の一例)は、例えばコンピュータにより構成され、モデリング装置1から供給されたモデルデータと、簡略・レンダリング不足パラメータ生成装置3から供給されたパラメータとによってオブジェクトの画像の領域を分割し、レンダリングできるようにデータ整備を行う装置であり、当該レンダリングシーン生成装置4により作成された各画像の分割画像データ及びそのパラメータは、夫々画像生成装置5nに供給される。
【0022】
各画像生成装置5n(レンダリング手段の一例)は、例えばコンピュータにより構成され、レンダリングシーン生成装置4から供給された分割画像データにおける3次元のオブジェクトをレンダリングする装置である。例えば、レンダリングシーン生成装置4からのパラメータに基づいて、分割画像データにおける3次元のオブジェクトに対して、射影変換、クリッピング、隠面消去、シェーディング、テクスチャマッピング等を含むレンダリング処理が施されレンダリングされた画像が生成され、画像合成装置6に供給される。これにより、高精細な3次元形状を高速及びメモリ使用量を少なく抑えてレンダリングすることができる。また、レンダリングを並列化することができるので、ハードウェアの増設による高速化が期待できる。
【0023】
なお、各画像生成装置5nは、CAD装置の表示機能やCGソフトのレンダリング機能に当たる。
【0024】
画像合成装置6(合成手段の一例)は、例えばコンピュータにより構成され、複数の領域に分割されてレンダリングされた画像を合成する装置であり、単純にタイル状に貼り合わせるだけでなく、境界(継ぎ目)部分をぼかして接続することで自然な画像を生成することもできる。
【0025】
次に、以上の3DCGシステムSの構成において、本発明の特徴的な処理について説明する。
【0026】
図2は、3DCGシステムSにおけるレンダリング処理の一例を示すフローチャートである。図3乃至図7は、上記レンダリング処理途中における画像の一例を示す図である。
【0027】
先ず、図3に示すように、オブジェクトの画像が複数の領域に分割される(ステップS1)。図3の例では、画像が9つに分割されているが、幾つに分割するかは任意である。ここで、複数の領域への分割は、描画領域を水平、垂直に分割する手法のほか、3次元形状の特定部分が表示される領域もある(例えば、円柱、直方体、球、三角柱が表示される部分を領域とすることで、オブジェクトの形状の簡略レベルの設定が容易になる)。
【0028】
このように分割された夫々の領域について、レンダリング対象となる3次元形状の詳細度が計算され、その詳細度に応じて3次元形状の簡略化(予め用意された簡単な形状への入れ替えにより簡略化してもよい)が行われ(ステップS2)、夫々の領域毎にレンダリングが行われる(ステップS3)。こうして生成された複数のレンダリング画像が合成され、最終的な画像が得られる(ステップS4)。
【0029】
例えば、図4に示すように、レンダリング対象となる領域(以下、「詳細モデル領域」という)R4以外の領域R1及びR2〜R9が簡素化(言い換えれば、省略モデルへの変更)され(詳細モデル領域は詳細な画像)、図5に示すように、レンダリングされている。こうして、各詳細モデル領域R1〜R9毎にレンダリング処理が施され、全ての領域についてのレンダリング画像が生成された後、図6に示すように、合成されることになる。このように、詳細モデル領域だけ高精細な画像とし、それ以外の領域を簡略化することで、メモリ使用量を抑えてレンダリングすることができる。このとき、領域の境界部分の形状が急激に変化するので、当該境界部分の画像の連続性が失われ、合成したときに違和感が生じ、これは、各レンダリング画像の合成時、領域の境界部周辺の画像について、混合率を連続的に変化させるなどによって滑らかに合成することで解消できる。しかし、詳細モデル領域以外の簡素化した領域におけるオブジェクトが反射により詳細モデル領域に写り込んでいる場合、写り込んでいるオブジェクトが簡素化されたものになってしまい違和感が生じ、これは、上記のように混合率を連続的に変化させるなどによって解消できない。
【0030】
図8は、円柱が鏡に写り込んでいる場合に上記領域分割手法でレンダリング処理を施したときの様子を示す図である。この場合、図8(B)に示すように、詳細モデル領域R4に対してレンダリング処理を施すと、簡素化された領域R5における円柱Mが簡素化された状態で詳細モデル領域R4におけるレンダリング結果に反映されてしまっている。
【0031】
そこで、図7に示すように、本実施形態においては、各画像生成装置5nは、詳細モデル領域R4を含みこの領域R4より大きい所定範囲内の領域R4z(ラインLで囲まれる領域)外の画像を簡素化した上で、当該詳細モデル領域ついて図5に示すように、レンダリングするようになっている。つまり、高精細な画像とする領域を、詳細モデル領域R4より大きい所定範囲内の領域R4zまで拡大させた(その他の領域は簡略化)上で(つまり、形状の簡素化の境界を各分割領域の境界よりも外側にとる)、詳細モデル領域R4に対してレンダリング処理を施すように構成すれば、上記問題を解消することができる。高精細な画像とする領域をどの範囲まで拡大するかは、オブジェクトの写り込み具合等により適宜設定されるが、例えば、図7に示すように、詳細モデル領域R4における縦方向の距離の40〜50%の距離だけ外側の領域に拡張させ、且つ詳細モデル領域R4における横方向の距離の40〜50%の距離だけ外側の領域に拡張させた範囲とすることが好適である(ただし、分割領域がない部分R0については除く)。
【0032】
図9は、円柱が鏡に写り込んでいる場合に高精細な画像とする領域を拡大させた上でレンダリング処理を施したときの様子を示す図である。この場合、図9に示すように、詳細モデル領域R4を含む領域R4zまで高精細な画像になっているので、詳細モデル領域R4に対してレンダリング処理を施すと、当該領域R4zにおける円柱Mが高精細のままで詳細モデル領域R4におけるレンダリング結果に反映されることになる。
【0033】
以上説明したように、上記実施形態によれば、オブジェクトの画像を複数の領域に分割し、分割された複数の領域のうち、レンダリング対象となる領域を含みこの領域より大きい所定範囲内の領域外の画像を簡素化した上で、当該レンダリング対象となる領域ついてレンダリングを行うように構成したので、レンダリング時間を短縮しつつ、分割された領域の境界部分の画像の連続性を保つことができ、従って、違和感が生じさせないことができる。特に、レンダリング対象となる領域以外の簡素化した領域におけるオブジェクトが、レンダリング対象となる領域に写り込んでいる場合であっても、違和感が生じさせることがないという効果を有する。
【0034】
なお、本発明は、静止画やCGアニメーションなど、精細な3次元形状を描画するすべての場面に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る3DCGシステムSの概要構成の一例を示す図である。
【図2】3DCGシステムSにおけるレンダリング処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】レンダリング処理途中における画像の一例を示す図である。
【図4】レンダリング処理途中における画像の一例を示す図である。
【図5】レンダリング処理途中における画像の一例を示す図である。
【図6】レンダリング処理途中における画像の一例を示す図である。
【図7】レンダリング処理途中における画像の一例を示す図である。
【図8】円柱が鏡に写り込んでいる場合に領域分割手法でレンダリング処理を施したときの様子を示す図である。
【図9】円柱が鏡に写り込んでいる場合に高精細な画像とする領域を拡大させた上でレンダリング処理を施したときの様子を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 モデリング装置
2 簡略・レンダリングパラメータ入力装置
3 簡略・レンダリング不足パラメータ生成装置
4 レンダリングシーン生成装置
5n 複数の画像生成装置
6 画像合成装置
S 3DCGシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトの画像を複数の領域に分割する分割手段と、
前記分割された複数の領域のうち、レンダリング対象となる領域を含みこの領域より大きい所定範囲内の領域外の画像を簡素化した上で、当該レンダリング対象となる領域ついてレンダリングを行うレンダリング手段と、
前記レンダリングされた各領域の画像を合成する合成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記レンダリング手段は、前記レンダリング対象となる領域における3次元形状の詳細度を計算し、その詳細度に応じて前記簡略化を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
コンピュータを、
オブジェクトの画像を複数の領域に分割する分割手段、
前記分割された複数の領域のうち、レンダリング対象となる領域を含みこの領域より大きい所定範囲内の領域外の画像を簡素化した上で、当該レンダリング対象となる領域ついてレンダリングを行うレンダリング手段、及び、
前記レンダリングされた各領域の画像を合成する合成手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項4】
オブジェクトの画像を複数の領域に分割する分割工程と、
前記分割された複数の領域のうち、レンダリング対象となる領域を含みこの領域より大きい所定範囲内の領域外の画像を簡素化した上で、当該レンダリング対象となる領域ついてレンダリングを行うレンダリング工程と、
前記レンダリングされた各領域の画像を合成する合成工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−146111(P2009−146111A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321913(P2007−321913)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】