画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラム
【課題】 データ検出の精度を上げることができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】 画像中に等間隔に埋め込まれた情報(図中、黒、灰色の四角で示す。)を読取るために、画像処理装置は、画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所(図中、ドットで示す。)のデータの状態を判定する。データ初期位置を変化させることで、同期判定を行ない、情報を取出すべき箇所を決定する。
【解決手段】 画像中に等間隔に埋め込まれた情報(図中、黒、灰色の四角で示す。)を読取るために、画像処理装置は、画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所(図中、ドットで示す。)のデータの状態を判定する。データ初期位置を変化させることで、同期判定を行ない、情報を取出すべき箇所を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムに関し、特に2次元に配列された画像中の情報を読出すことができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、MFP(Multi Function Peripheral)やLBP(Laser Beam Printer)などに用いられる技術として、文書画像の背景に地紋パターンとしてデータを埋め込む技術が知られている。このような技術は、「文書用電子透かし」などと呼ばれる。
【0003】
下記特許文献1は、透かし情報埋め込み装置に関連する技術を開示しており、1つのデータ信号を一定のエリアに繰り返し埋めたユニットパターンを作成することを開示している。
【特許文献1】特開2004−128845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データを地紋パターンとして埋め込んだプリント物をスキャナでスキャンし、埋め込まれたデータを検出する際、スキャン画像の(若干の)伸び縮みや傾きなどが発生する場合がある。このような場合でも、データの検出を可能とすることが望ましい。
【0005】
また、文字や画像によりデータが消失した部分や、加筆されたことによりデータが消失した部分があっても、埋め込まれたデータの検出を可能とすることが望ましい。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、データ検出の精度を上げることができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、画像処理装置は、画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理装置であって、画像中の情報が存在する部分を判定するために、画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定手段と、判定手段の判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定手段とを備える。
【0008】
好ましくは画像処理装置は、決定手段で決定された箇所から情報を取出す取出手段をさらに備える。
【0009】
好ましくは判定手段は、XY方向それぞれ等間隔に画像中のデータを読出す読出手段を備え、決定手段は、読出手段の読出し位置を変更した状態で複数回の読出しを行ない、複数回の読出しの中で、最も情報があることを示すデータの読出しを行なうことができた読出し位置に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する。
【0010】
好ましくは判定手段は、画像に対して膨張処理を行なった後に判定を行なう。
好ましくは判定手段は、判定するデータの初期位置、間隔、および方向の少なくとも1つを変更し、複数の条件の下でデータの状態を判定する。
【0011】
好ましくは判定手段は、本来情報が存在する間隔よりも広い間隔を空けて複数箇所のデータの状態を判定する。
【0012】
この発明の他の局面に従うと、画像処理方法は、画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理方法であって、画像中の情報が存在する部分を判定するために、画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定ステップと、判定ステップの判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定ステップとを備える。
【0013】
この発明のさらに他の局面に従うと、画像処理プログラムは、画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理プログラムであって、画像中の情報が存在する部分を判定するために、画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定ステップと、判定ステップの判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に従うと、画像中の情報が存在する部分を判定するために、画像中において2方向に渡って間隔を空けて複数箇所のデータの状態が判定され、その判定結果に基づいて情報を取出すべき箇所が決定される。これにより、データ検出の精度を上げることができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態における画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
図を参照して画像処理装置は、CPU、ハードディスクドライブ、メモリ、および各種インタフェースなどから構成されるPC(Personal Computer)101と、ユーザの入力を受付けるマウス103およびキーボード105と、画像の処理結果を表示するモニタ107と、各種記録媒体との間でプログラムや画像データなどの情報の授受を行なう外部記憶装置109と、原稿から画像データを読込むスキャナ111とから構成される。
【0017】
また、PC101内部のハードディスクやメモリなどの記憶媒体には、画像処理ソフトウェア101aが記憶される。画像処理ソフトウェア101aがPC101のCPUにより実行されることで、画像処理が行なわれる。
【0018】
この画像処理装置は、スキャナ111により地紋パターンなどのデータが埋め込まれた印刷物を読取り、その画像を処理することで、埋め込まれたデータを再現する。
【0019】
図2は、図1の画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図を参照して画像処理装置に含まれるPC101は、入出力インタフェース151と、記憶装置155と、CPUやメモリ153とを含んでいる。また、記憶装置155は、処理演算部157と、OS(Operating System)159とを含んでいる。
【0020】
マウス103やキーボード105により入力されたユーザ指示は、入出力インタフェース151を介してPC101に入力される。また、入出力インタフェース151を介してPC101からモニタ107に信号が送られることにより画像データの表示が行なわれる。スキャナ111からのスキャン画像も、入出力インタフェース151を介してPC101に入力される。
【0021】
なお、記憶装置155の機能の少なくとも一部を、外部記憶装置が負担するようにしてもよい。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施の形態において用いられる画像処理装置を含むMFPの構成を示すブロック図である。
【0023】
図を参照してMFPは、MFP本体201と、操作パネル部203と、スキャナ部205と、プリンタ部207とを含む。MFP本体201は、スキャナ部205により読取られた画像データに対して地紋パターンなどの埋め込みを行なう画像処理ハードウェア201aを含んでいる。地紋パターンが埋め込まれた画像データは、プリンタ部207でプリントされる。
【0024】
またMFPは、スキャナ部205により地紋パターンなどのデータが埋め込まれた印刷物を読取り、その画像を処理することで、埋め込まれたデータを再現することも可能である。
【0025】
本実施の形態においては、縦横の2方向にデータを並べることで地紋パターンを作成し、それを原稿画像に埋め込んだものをプリント物とする。すなわち、データは2次元に配列される。プリント物を画像処理装置で読取り、画像データとした後に、画像データ上で2方向に同期を取ることで、埋め込まれたデータを取り出すこととしている。
【0026】
図4は、本実施の形態における画像処理装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【0027】
ここでは、ステップS101での処理は図3のMFPが実行するものとし、ステップS103での処理は図1の画像処理装置が実行するものとする。
【0028】
MFPにおいては、スキャナ部205などを介して入力された画像に対し、埋め込む情報Iがデータ列として入力される。MFPは、そのデータ列をドットパターンとして画像の背景に埋め込む(S101)。これにより、印刷物Pが作成される。
【0029】
その後、印刷物Pがスキャンされ、画像処理されることで埋め込まれたデータの検出、およびその表示が行なわれる(S103)。
【0030】
図5は、ドットパターンが埋め込まれた画像(およびその印刷物)の具体例を示す図である。
【0031】
図中における灰色部分が、埋め込まれたドットパターンを示している。このように、データは、一見して分からないように埋め込まれる。
【0032】
次に、データを埋め込む処理の詳細説明を行なう。
図6は、「0」を表わす画像データの具体例を示す図であり、図7は、「1」を表わす画像データの具体例を示す図である。
【0033】
データ「0」の場合には図6のドットパターン、データ「1」の場合には図7のドットパターンを用いるものとして、埋め込む情報のデータ列に従い、画像の背景にドットパターンを順次埋め込む。
【0034】
この例では、1ビット(「0」または「1」)の表現に、16×16画素のパターン(以下、「データセル」と表記する。)を使用している。600dpiでデータセルを埋め込むとすると、このデータセルは一辺16/600インチ(0.068cm)と非常に小さくなる。これにより、プリント結果の印刷物の背景は、図5のように一見グレーに見える。
【0035】
図8は、埋め込む4ビットデータの具体例を示す図である。
実際のドット配置例として、図8のように4ビット分のデータを、32×32画素の領域に埋め込んだ場合を想定する。
【0036】
図9は、図8のデータをドットに変換した状態を示す図である。
図8のデータをデータセルで表わす場合には、ドットが印刷物に図9のように埋め込まれることになる。このような埋め込み処理が上下左右に繰返して行われることで、図5のように印刷物の背景に一様にデータセルがプリントされる。
【0037】
次に、データを検出する処理の詳細を説明する。
図10は、図4のステップS103の内容を示すフローチャートである。
【0038】
図を参照して、図5のような印刷物をスキャンしたことで得られた画像データDに対し、ステップS201において全画素に対するパターンマッチング処理を行なう。なお、この例では、パターンマッチングの前に既知の方法にてすでに原稿の傾きや向きは補正されているものとする。
【0039】
パターンマッチング処理の一例として、単純類似度と呼ばれる処理を以下に記載するが、同じような効果を提供できる処理であれば、他の処理を用いても良い。
【0040】
単純類似度は、標準パターンc=(c1,c2, ... ,c289)と、入力パターンx=(x1,x2, ... ,x289)との2つのベクトルのなす角が、小さいほど類似していると判断する方法である。すなわち、下記の式1において、2つのベクトルのなす角のcos(余弦)を計算し、それが「1」に近づくほど、一致しているものとする。具体的には、式1の計算結果がしきい値以上であれば、パターンが一致していると判断する。
【0041】
c・x / (|c|×|x|) ・・・(式1)
(ここで、“・”はベクトルの内積を示し、“| |”はベクトルの大きさを示す。)
図11は、データ0の標準パターンを示す図であり、図12はデータ1の標準パターンを示す図である。
【0042】
ここでの処理では、図11の17×17画素のパターンをデータ0の標準パターンとし、パターンマッチングにより特定のしきい値以上の値が算出されると、この17×17画素のパターンの中央の画素の画素値を「0」(濃いグレー)とする。同様に図12の17×17画素のパターンをデータ1の標準パターンとし、パターンマッチングにより特定のしきい値以上の値が算出されると、この17×17画素のパターンの中央の画素の画素値を「1」(薄いグレー)とする。どちらの標準パターンにおいても算出結果がしきい値以下なら、中央の画素の画素値を「2」(白)とする。
【0043】
図13は、パターンマッチングの処理により得られた画像を示す図である。
図に示されるように、画像中において「0」が濃いグレーのドットで、「1」が薄いグレーのドットで表わされている。
【0044】
次に、図10のステップS203において、ドットの膨張処理を行なう。
図14は、ドットの膨張処理で用いられるフィルタを示す図である。
【0045】
このフィルタは、7×7の49画素から構成されており、中央の画素を便宜的に黒で示しており、それ以外の画素を便宜的にグレーで示している。49画素中の最小値を有する画素の値で黒画素の値を置き換える処理を全画素に対して行なう。
【0046】
図15は、膨張処理を行なった結果を示す図である。
図に示されるように、膨張処理により図13のドットが拡大された画像が得られる。なお、膨張処理においては、フィルタの大きさによってドットを膨張させるサイズを変更できる。このため、例えば5×5のサイズの計25画素のフィルタを用いると、図15の例よりも膨張量を少なくすることもできる。
【0047】
図10のステップS205で、同期の取れる条件を探し、ステップS207で、同期の取れたところからデータを取出す。
【0048】
図16は、データ取出しにおける座標系を示す図である。
図に示されるように、画像の左上を原点とし、右をX、下をYで示す座標系を考える。データを埋め込んだときには、図6、7のように16×16画素のパターンを使用しているため、図13や図15で検出すべきデータも、おおよそXY方向とも16画素間隔で並ぶことになる。
【0049】
つまり、埋め込まれたデータは、
X= n×16+ X0
Y= m×16+ Y0 ・・・(式2)
の場所に存在する可能性が高い。
【0050】
ここで、X0,Y0は、16の倍数に常に加算する一定値(以下、「データ初期位置」という。)で、ここでは例えばそれぞれ0〜15の値を取るものとする。
【0051】
先ず、(X0,Y0)=(0,0)の条件において、図15の画像上において式2で計算される座標値のデータが「0」または「1」になる個数をカウントする。ここで、式2のn,mは、それぞれ画像全体を網羅するまで変化させる。このカウントされた個数は、データ初期位置(X0,Y0)=(0,0)の条件で、どれだけデータ0もしくはデータ1と重なったかを示す「データとの同期度数」を表すことになる。
【0052】
同様に、(X0,Y0)=(0,1)、(X0,Y0)=(0,2)、…、(X0,Y0)=(15,14)、(X0,Y0)=(15,15)まで繰り返し、同期度数を算出し、同期度数が最も高いデータ初期位置の条件を、同期が取れた条件と判定する。
【0053】
図17は、同期が取れた条件におけるデータ初期位置を示す図である。
図17は、図15の画像の左上の一部のみを示している。また、小さなドットで示される位置は、同期度数のカウントを行なう位置(検出ポイント)を示している。このドット上のデータ値を、順次読取っていくことで、埋め込まれてあるデータを拾い出すことができる。
【0054】
図18は、読取りミスが行なわれた状況を示す図であり、図19は、間違ってデータが判定された状態を示す図である。図18においては、本来あるべきところにデータが記載されていなかった場合を示しており、図19においては、本来データが無いところにデータがあると判定されてしまった場合を示している。
【0055】
本来であれば画像中にデータは縦横2方向に整列しているため、同期を取ることで、データが欠落しているところ(読取りミスがあったところ)や、データの存在を誤判定したところを的確に処理することができる。従って、一部のデータに読取りミスがあった場合でも、その箇所のデータが不明であることが判り、間違いのあるデータは読み飛ばすことができる。
【0056】
図20は、同期が取れていない条件におけるデータ初期位置を示す図である。
図に示されるように、小さなドットで示される検出ポイントが、検出すべきデータとうまく重なっていない。これにより、図20の状態では、データの読取りが不可能となる。
【0057】
なお、図13、図15に示されるスキャン画像においては、理想的にはデータ同士の間隔は16画素となるが、紙が浮いてスキャンされたりするなどの理由で、間隔が異なっている場合もある。その場合には、この間隔を16画素の近傍で変更して、最も同期の取れる条件を探すことで、最適な同期条件を得ることができる。
【0058】
このような場合には、下記の式3を用い、変数I,Jを15.9、16、16.1のそれぞ3通りに変更し、最も同期度数の多いところを探して同期が取れたとし、データを取出す。
【0059】
X= n×I+ X0
Y= m×J+ Y0 ・・・(式3)
なお、式3において、I=15.9、J=15.9の場合には、
X= n×159/10+ X0
Y= m×159/10+ Y0 ・・・(式4)
という計算式を用い、割り算“/”においては切り捨てをすることで、全体として見たときにおおよそ15.9の小数値を持つ間隔にすることができる(X,Yの座標値は、整数値となる)。
【0060】
なお、データの初期値も変更し、同期度数の最も高い条件を探すことになるため、(I,J,X0,Y0)=(15.9, 15.9, 0, 0),(I,J,X0,Y0)=(15.9, 15.9, 0, 1)、…、(I,J,X0,Y0)=(15.9, 15.9, 15, 15)、…、(I,J,X0,Y0)=(15.9, 16, 0, 0)、(I,J,X0,Y0)=(15.9, 16, 0, 1)、…、(I,J,X0,Y0)=(16.1, 16.1, 15, 15)までの、3×3×16×16=2304通り分の処理を行なう。
【0061】
図21は、間隔の同期が取れない例を示す図である。
この例の場合には、式3のX,Yに相当する小さなドットと、データを示す四角形とが異なった間隔で並んでいる。このため、どのような初期位置(X0,Y0)であろうとうまく同期が取れないことがわかる。このような場合には、上記の方法で変数I,Jの値を調整することで同期を取ることが可能となる。
【0062】
なお、スキャンした画像をX,Y方向に(例えば500×500画素の)複数のブロックに分割し、本実施の形態の処理を各ブロックごとに繰り返して、データを取り出すようにしてもよい。このようにすることで、紙の一部が浮いてその一部分のデータだけが異なった間隔になっている場合などにも、うまく対応できる。
【0063】
また、データの埋め込み方法として、1ページの画像データに同じデータを繰返して複数回埋め込むようにしても良い。このようにすることで、一部のデータが欠損した場合にも正しいデータを再現できる可能性が高まる。
【0064】
また、上記実施の形態では同期を取りやすくするため膨張処理を行なったが、膨張処理を行なわず、図13の画像データに対して直接同期を取るような処理を行なうこともできる。この場合、データは取りにくくなるが、高速に処理できるというメリットがある。
【0065】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態における画像処理装置の構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰返さない。
【0066】
本実施の形態では、同期を取る処理を高速に行なうために、同期を取る間隔を広くすることを特徴としている。埋め込まれたデータの同期を取る処理を数個おきに行なっても、同期の取れる条件を特定できるからである。この実施の形態では、同期を取るときには式2の代わりに、
X= n×16×3+ X0
Y= m×16×3+ Y0 ・・・(式5)
を用いるものとする。すなわち、n,mにそれぞれ3をかけることで、データを2個ずつ飛ばして同期を取ることとする。3の値を大きくすると、より高速に同期処理を行なうことができる。
【0067】
図22は、第2の実施の形態における同期を取る処理を示す図である。
図22に示されるように、XY方向とも3個おきに0または1のデータと重なるか否かをカウントするだけでよいので、高速に判定を行なうことができるという効果がある。
【0068】
なお、同期を判定した結果からデータを取出す際は、全データを取出す必要があるために、式5ではなく、式2を用いてデータを取出すものとする。
【0069】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態における画像処理装置の構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰返さない。
【0070】
本実施の形態では、データの傾き角度(方向)を考慮して同期を取ることを特徴としている。
【0071】
図23は、パターンマッチング後の画像の例を示す図である。
ここではパターンマッチング後の画像が、図23のように傾いた状態で得られたとする。この図23の画像には、データの存在しない領域(図中丸で囲まれる領域)がある。これは文字や画像がある領域、またはプリント後に加筆した文書がある箇所などであり、データの検出ができない領域である。
【0072】
図24は、図23のデータに膨張処理を行なった状態を示す図である。
図24の状態から同期を判定する処理を行なうが、本実施の形態においては傾き角度が不明である場合には、傾き角度も同期を取る際のパラメータとして、同期度数の高い条件を探すものである。
【0073】
この例では、初期位置と傾き角度の2種類をパラメータとして、同期を取る場合を例に示す。下記式6は、本実施の形態において式2に代えて用いられる式である。
【0074】
【数1】
【0075】
例えば傾きを±20度まで検出できるようにしておく場合には、傾き角度θを−20度〜20度の範囲で1度おきに変更していき、同期度数を算出するものとする。また、初期位置X0,Y0は第1の実施の形態と同様に、0〜15の範囲で、変更するものとする。
【0076】
この条件で、(θ, X0, Y0)=(−20, 0, 0)、(θ, X0, Y0)=(−20, 0, 1)、…、(θ, X0, Y0)=(−20, 15, 15)、(θ, X0, Y0)=(−19, 0, 0)、…、(θ, X0, Y0)=(20, 15, 15)まで、41×16×16=10496通りの中から、同期度数の最も高いケースを同期が取れたと判定し、その条件においてデータを取出す。
【0077】
図25は、同期が取れる場合の処理結果を示す図であり、図26は、比較のための傾き角度の同期が取れない場合の処理結果を示す図である。
【0078】
なお、既知の方法によって画像のおおよその傾き角度が検出角として分かっているが、その精度が足りない場合には、その検出角の近傍でのみ、最も同期の取れる条件を探すようにしてもよい。
【0079】
すなわち、2度程度の粗さで検出角が18度と分かっている場合において、同期を取るには精度が足りないときには、17,18,19度の3通りを試すことにより同期度数を判定し、同期を取った後にデータを検出しても良い。
【0080】
[実施の形態における効果]
上記実施の形態によると、文書画像にドットを印字しデータを埋め込むタイプの電子透かし技術において、埋め込まれたデータと同期の取れたところを取出すことで、スキャン画像の伸び縮みや傾きがあってもデータ読み出しが可能となるという効果がある。また、文字や画像が存在する部分や、加筆されたことによりデータが消失した部分があっても、対応できるという効果がある。また、ノイズ(意図せずプリントされた余計なドットなど)に強い検出処理ができるという効果がある。
【0081】
なお、埋め込むデータとしては、データの出所を特定するためのIDデータ、印刷機器のIPアドレス、プリンタID、印刷の日時などのデータ、コピーを禁止するなどの制御データ、原本であることを保証するためのデータなどが考えられる。
【0082】
また、上述の実施の形態における処理は、ソフトウエアによって行なっても、ハードウエア回路を用いて行なってもよい。
【0083】
また、上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。
【0084】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態において用いられる画像処理装置を含むMFPの構成を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態における画像形成装置の実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】ドットパターンが埋め込まれた画像(およびその印刷物)の具体例を示す図である。
【図6】「0」を表わす画像データの具体例を示す図である。
【図7】「1」を表わす画像データの具体例を示す図である。
【図8】埋め込む4ビットデータの具体例を示す図である。
【図9】図8のデータをドットに変換した状態を示す図である。
【図10】図4のステップS103の内容を示すフローチャートである。
【図11】データ0の標準パターンを示す図である。
【図12】データ1の標準パターンを示す図である。
【図13】パターンマッチングの処理により得られた画像を示す図である。
【図14】ドットの膨張処理で用いられるフィルタを示す図である。
【図15】膨張処理を行なった結果を示す図である。
【図16】データ取出しにおける座標系を示す図である。
【図17】同期が取れた条件におけるデータ初期位置を示す図である。
【図18】読取りミスが行なわれた状況を示す図である。
【図19】間違ってデータが判定された状態を示す図である。
【図20】同期が取れていない条件におけるデータ初期位置を示す図である。
【図21】間隔の同期が取れない例を示す図である。
【図22】第2の実施の形態における同期を取る処理を示す図である。
【図23】パターンマッチング後の画像の例を示す図である。
【図24】図23のデータに膨張処理を行なった状態を示す図である。
【図25】同期が取れる場合の処理結果を示す図である。
【図26】傾き角度の同期が取れない場合の処理結果を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
101 PC、101a 画像処理ソフトウェア、107 モニタ、109 外部記憶装置、111 スキャナ、151 入出力インタフェース、155 記憶装置、157 処理演算部、201 MFP本体、201a 画像処理ハードウェア、203 操作パネル部、205 スキャナ部、207 プリンタ部。
【技術分野】
【0001】
この発明は画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムに関し、特に2次元に配列された画像中の情報を読出すことができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、MFP(Multi Function Peripheral)やLBP(Laser Beam Printer)などに用いられる技術として、文書画像の背景に地紋パターンとしてデータを埋め込む技術が知られている。このような技術は、「文書用電子透かし」などと呼ばれる。
【0003】
下記特許文献1は、透かし情報埋め込み装置に関連する技術を開示しており、1つのデータ信号を一定のエリアに繰り返し埋めたユニットパターンを作成することを開示している。
【特許文献1】特開2004−128845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データを地紋パターンとして埋め込んだプリント物をスキャナでスキャンし、埋め込まれたデータを検出する際、スキャン画像の(若干の)伸び縮みや傾きなどが発生する場合がある。このような場合でも、データの検出を可能とすることが望ましい。
【0005】
また、文字や画像によりデータが消失した部分や、加筆されたことによりデータが消失した部分があっても、埋め込まれたデータの検出を可能とすることが望ましい。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、データ検出の精度を上げることができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、画像処理装置は、画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理装置であって、画像中の情報が存在する部分を判定するために、画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定手段と、判定手段の判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定手段とを備える。
【0008】
好ましくは画像処理装置は、決定手段で決定された箇所から情報を取出す取出手段をさらに備える。
【0009】
好ましくは判定手段は、XY方向それぞれ等間隔に画像中のデータを読出す読出手段を備え、決定手段は、読出手段の読出し位置を変更した状態で複数回の読出しを行ない、複数回の読出しの中で、最も情報があることを示すデータの読出しを行なうことができた読出し位置に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する。
【0010】
好ましくは判定手段は、画像に対して膨張処理を行なった後に判定を行なう。
好ましくは判定手段は、判定するデータの初期位置、間隔、および方向の少なくとも1つを変更し、複数の条件の下でデータの状態を判定する。
【0011】
好ましくは判定手段は、本来情報が存在する間隔よりも広い間隔を空けて複数箇所のデータの状態を判定する。
【0012】
この発明の他の局面に従うと、画像処理方法は、画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理方法であって、画像中の情報が存在する部分を判定するために、画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定ステップと、判定ステップの判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定ステップとを備える。
【0013】
この発明のさらに他の局面に従うと、画像処理プログラムは、画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理プログラムであって、画像中の情報が存在する部分を判定するために、画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定ステップと、判定ステップの判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に従うと、画像中の情報が存在する部分を判定するために、画像中において2方向に渡って間隔を空けて複数箇所のデータの状態が判定され、その判定結果に基づいて情報を取出すべき箇所が決定される。これにより、データ検出の精度を上げることができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態における画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
図を参照して画像処理装置は、CPU、ハードディスクドライブ、メモリ、および各種インタフェースなどから構成されるPC(Personal Computer)101と、ユーザの入力を受付けるマウス103およびキーボード105と、画像の処理結果を表示するモニタ107と、各種記録媒体との間でプログラムや画像データなどの情報の授受を行なう外部記憶装置109と、原稿から画像データを読込むスキャナ111とから構成される。
【0017】
また、PC101内部のハードディスクやメモリなどの記憶媒体には、画像処理ソフトウェア101aが記憶される。画像処理ソフトウェア101aがPC101のCPUにより実行されることで、画像処理が行なわれる。
【0018】
この画像処理装置は、スキャナ111により地紋パターンなどのデータが埋め込まれた印刷物を読取り、その画像を処理することで、埋め込まれたデータを再現する。
【0019】
図2は、図1の画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図を参照して画像処理装置に含まれるPC101は、入出力インタフェース151と、記憶装置155と、CPUやメモリ153とを含んでいる。また、記憶装置155は、処理演算部157と、OS(Operating System)159とを含んでいる。
【0020】
マウス103やキーボード105により入力されたユーザ指示は、入出力インタフェース151を介してPC101に入力される。また、入出力インタフェース151を介してPC101からモニタ107に信号が送られることにより画像データの表示が行なわれる。スキャナ111からのスキャン画像も、入出力インタフェース151を介してPC101に入力される。
【0021】
なお、記憶装置155の機能の少なくとも一部を、外部記憶装置が負担するようにしてもよい。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施の形態において用いられる画像処理装置を含むMFPの構成を示すブロック図である。
【0023】
図を参照してMFPは、MFP本体201と、操作パネル部203と、スキャナ部205と、プリンタ部207とを含む。MFP本体201は、スキャナ部205により読取られた画像データに対して地紋パターンなどの埋め込みを行なう画像処理ハードウェア201aを含んでいる。地紋パターンが埋め込まれた画像データは、プリンタ部207でプリントされる。
【0024】
またMFPは、スキャナ部205により地紋パターンなどのデータが埋め込まれた印刷物を読取り、その画像を処理することで、埋め込まれたデータを再現することも可能である。
【0025】
本実施の形態においては、縦横の2方向にデータを並べることで地紋パターンを作成し、それを原稿画像に埋め込んだものをプリント物とする。すなわち、データは2次元に配列される。プリント物を画像処理装置で読取り、画像データとした後に、画像データ上で2方向に同期を取ることで、埋め込まれたデータを取り出すこととしている。
【0026】
図4は、本実施の形態における画像処理装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【0027】
ここでは、ステップS101での処理は図3のMFPが実行するものとし、ステップS103での処理は図1の画像処理装置が実行するものとする。
【0028】
MFPにおいては、スキャナ部205などを介して入力された画像に対し、埋め込む情報Iがデータ列として入力される。MFPは、そのデータ列をドットパターンとして画像の背景に埋め込む(S101)。これにより、印刷物Pが作成される。
【0029】
その後、印刷物Pがスキャンされ、画像処理されることで埋め込まれたデータの検出、およびその表示が行なわれる(S103)。
【0030】
図5は、ドットパターンが埋め込まれた画像(およびその印刷物)の具体例を示す図である。
【0031】
図中における灰色部分が、埋め込まれたドットパターンを示している。このように、データは、一見して分からないように埋め込まれる。
【0032】
次に、データを埋め込む処理の詳細説明を行なう。
図6は、「0」を表わす画像データの具体例を示す図であり、図7は、「1」を表わす画像データの具体例を示す図である。
【0033】
データ「0」の場合には図6のドットパターン、データ「1」の場合には図7のドットパターンを用いるものとして、埋め込む情報のデータ列に従い、画像の背景にドットパターンを順次埋め込む。
【0034】
この例では、1ビット(「0」または「1」)の表現に、16×16画素のパターン(以下、「データセル」と表記する。)を使用している。600dpiでデータセルを埋め込むとすると、このデータセルは一辺16/600インチ(0.068cm)と非常に小さくなる。これにより、プリント結果の印刷物の背景は、図5のように一見グレーに見える。
【0035】
図8は、埋め込む4ビットデータの具体例を示す図である。
実際のドット配置例として、図8のように4ビット分のデータを、32×32画素の領域に埋め込んだ場合を想定する。
【0036】
図9は、図8のデータをドットに変換した状態を示す図である。
図8のデータをデータセルで表わす場合には、ドットが印刷物に図9のように埋め込まれることになる。このような埋め込み処理が上下左右に繰返して行われることで、図5のように印刷物の背景に一様にデータセルがプリントされる。
【0037】
次に、データを検出する処理の詳細を説明する。
図10は、図4のステップS103の内容を示すフローチャートである。
【0038】
図を参照して、図5のような印刷物をスキャンしたことで得られた画像データDに対し、ステップS201において全画素に対するパターンマッチング処理を行なう。なお、この例では、パターンマッチングの前に既知の方法にてすでに原稿の傾きや向きは補正されているものとする。
【0039】
パターンマッチング処理の一例として、単純類似度と呼ばれる処理を以下に記載するが、同じような効果を提供できる処理であれば、他の処理を用いても良い。
【0040】
単純類似度は、標準パターンc=(c1,c2, ... ,c289)と、入力パターンx=(x1,x2, ... ,x289)との2つのベクトルのなす角が、小さいほど類似していると判断する方法である。すなわち、下記の式1において、2つのベクトルのなす角のcos(余弦)を計算し、それが「1」に近づくほど、一致しているものとする。具体的には、式1の計算結果がしきい値以上であれば、パターンが一致していると判断する。
【0041】
c・x / (|c|×|x|) ・・・(式1)
(ここで、“・”はベクトルの内積を示し、“| |”はベクトルの大きさを示す。)
図11は、データ0の標準パターンを示す図であり、図12はデータ1の標準パターンを示す図である。
【0042】
ここでの処理では、図11の17×17画素のパターンをデータ0の標準パターンとし、パターンマッチングにより特定のしきい値以上の値が算出されると、この17×17画素のパターンの中央の画素の画素値を「0」(濃いグレー)とする。同様に図12の17×17画素のパターンをデータ1の標準パターンとし、パターンマッチングにより特定のしきい値以上の値が算出されると、この17×17画素のパターンの中央の画素の画素値を「1」(薄いグレー)とする。どちらの標準パターンにおいても算出結果がしきい値以下なら、中央の画素の画素値を「2」(白)とする。
【0043】
図13は、パターンマッチングの処理により得られた画像を示す図である。
図に示されるように、画像中において「0」が濃いグレーのドットで、「1」が薄いグレーのドットで表わされている。
【0044】
次に、図10のステップS203において、ドットの膨張処理を行なう。
図14は、ドットの膨張処理で用いられるフィルタを示す図である。
【0045】
このフィルタは、7×7の49画素から構成されており、中央の画素を便宜的に黒で示しており、それ以外の画素を便宜的にグレーで示している。49画素中の最小値を有する画素の値で黒画素の値を置き換える処理を全画素に対して行なう。
【0046】
図15は、膨張処理を行なった結果を示す図である。
図に示されるように、膨張処理により図13のドットが拡大された画像が得られる。なお、膨張処理においては、フィルタの大きさによってドットを膨張させるサイズを変更できる。このため、例えば5×5のサイズの計25画素のフィルタを用いると、図15の例よりも膨張量を少なくすることもできる。
【0047】
図10のステップS205で、同期の取れる条件を探し、ステップS207で、同期の取れたところからデータを取出す。
【0048】
図16は、データ取出しにおける座標系を示す図である。
図に示されるように、画像の左上を原点とし、右をX、下をYで示す座標系を考える。データを埋め込んだときには、図6、7のように16×16画素のパターンを使用しているため、図13や図15で検出すべきデータも、おおよそXY方向とも16画素間隔で並ぶことになる。
【0049】
つまり、埋め込まれたデータは、
X= n×16+ X0
Y= m×16+ Y0 ・・・(式2)
の場所に存在する可能性が高い。
【0050】
ここで、X0,Y0は、16の倍数に常に加算する一定値(以下、「データ初期位置」という。)で、ここでは例えばそれぞれ0〜15の値を取るものとする。
【0051】
先ず、(X0,Y0)=(0,0)の条件において、図15の画像上において式2で計算される座標値のデータが「0」または「1」になる個数をカウントする。ここで、式2のn,mは、それぞれ画像全体を網羅するまで変化させる。このカウントされた個数は、データ初期位置(X0,Y0)=(0,0)の条件で、どれだけデータ0もしくはデータ1と重なったかを示す「データとの同期度数」を表すことになる。
【0052】
同様に、(X0,Y0)=(0,1)、(X0,Y0)=(0,2)、…、(X0,Y0)=(15,14)、(X0,Y0)=(15,15)まで繰り返し、同期度数を算出し、同期度数が最も高いデータ初期位置の条件を、同期が取れた条件と判定する。
【0053】
図17は、同期が取れた条件におけるデータ初期位置を示す図である。
図17は、図15の画像の左上の一部のみを示している。また、小さなドットで示される位置は、同期度数のカウントを行なう位置(検出ポイント)を示している。このドット上のデータ値を、順次読取っていくことで、埋め込まれてあるデータを拾い出すことができる。
【0054】
図18は、読取りミスが行なわれた状況を示す図であり、図19は、間違ってデータが判定された状態を示す図である。図18においては、本来あるべきところにデータが記載されていなかった場合を示しており、図19においては、本来データが無いところにデータがあると判定されてしまった場合を示している。
【0055】
本来であれば画像中にデータは縦横2方向に整列しているため、同期を取ることで、データが欠落しているところ(読取りミスがあったところ)や、データの存在を誤判定したところを的確に処理することができる。従って、一部のデータに読取りミスがあった場合でも、その箇所のデータが不明であることが判り、間違いのあるデータは読み飛ばすことができる。
【0056】
図20は、同期が取れていない条件におけるデータ初期位置を示す図である。
図に示されるように、小さなドットで示される検出ポイントが、検出すべきデータとうまく重なっていない。これにより、図20の状態では、データの読取りが不可能となる。
【0057】
なお、図13、図15に示されるスキャン画像においては、理想的にはデータ同士の間隔は16画素となるが、紙が浮いてスキャンされたりするなどの理由で、間隔が異なっている場合もある。その場合には、この間隔を16画素の近傍で変更して、最も同期の取れる条件を探すことで、最適な同期条件を得ることができる。
【0058】
このような場合には、下記の式3を用い、変数I,Jを15.9、16、16.1のそれぞ3通りに変更し、最も同期度数の多いところを探して同期が取れたとし、データを取出す。
【0059】
X= n×I+ X0
Y= m×J+ Y0 ・・・(式3)
なお、式3において、I=15.9、J=15.9の場合には、
X= n×159/10+ X0
Y= m×159/10+ Y0 ・・・(式4)
という計算式を用い、割り算“/”においては切り捨てをすることで、全体として見たときにおおよそ15.9の小数値を持つ間隔にすることができる(X,Yの座標値は、整数値となる)。
【0060】
なお、データの初期値も変更し、同期度数の最も高い条件を探すことになるため、(I,J,X0,Y0)=(15.9, 15.9, 0, 0),(I,J,X0,Y0)=(15.9, 15.9, 0, 1)、…、(I,J,X0,Y0)=(15.9, 15.9, 15, 15)、…、(I,J,X0,Y0)=(15.9, 16, 0, 0)、(I,J,X0,Y0)=(15.9, 16, 0, 1)、…、(I,J,X0,Y0)=(16.1, 16.1, 15, 15)までの、3×3×16×16=2304通り分の処理を行なう。
【0061】
図21は、間隔の同期が取れない例を示す図である。
この例の場合には、式3のX,Yに相当する小さなドットと、データを示す四角形とが異なった間隔で並んでいる。このため、どのような初期位置(X0,Y0)であろうとうまく同期が取れないことがわかる。このような場合には、上記の方法で変数I,Jの値を調整することで同期を取ることが可能となる。
【0062】
なお、スキャンした画像をX,Y方向に(例えば500×500画素の)複数のブロックに分割し、本実施の形態の処理を各ブロックごとに繰り返して、データを取り出すようにしてもよい。このようにすることで、紙の一部が浮いてその一部分のデータだけが異なった間隔になっている場合などにも、うまく対応できる。
【0063】
また、データの埋め込み方法として、1ページの画像データに同じデータを繰返して複数回埋め込むようにしても良い。このようにすることで、一部のデータが欠損した場合にも正しいデータを再現できる可能性が高まる。
【0064】
また、上記実施の形態では同期を取りやすくするため膨張処理を行なったが、膨張処理を行なわず、図13の画像データに対して直接同期を取るような処理を行なうこともできる。この場合、データは取りにくくなるが、高速に処理できるというメリットがある。
【0065】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態における画像処理装置の構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰返さない。
【0066】
本実施の形態では、同期を取る処理を高速に行なうために、同期を取る間隔を広くすることを特徴としている。埋め込まれたデータの同期を取る処理を数個おきに行なっても、同期の取れる条件を特定できるからである。この実施の形態では、同期を取るときには式2の代わりに、
X= n×16×3+ X0
Y= m×16×3+ Y0 ・・・(式5)
を用いるものとする。すなわち、n,mにそれぞれ3をかけることで、データを2個ずつ飛ばして同期を取ることとする。3の値を大きくすると、より高速に同期処理を行なうことができる。
【0067】
図22は、第2の実施の形態における同期を取る処理を示す図である。
図22に示されるように、XY方向とも3個おきに0または1のデータと重なるか否かをカウントするだけでよいので、高速に判定を行なうことができるという効果がある。
【0068】
なお、同期を判定した結果からデータを取出す際は、全データを取出す必要があるために、式5ではなく、式2を用いてデータを取出すものとする。
【0069】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態における画像処理装置の構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰返さない。
【0070】
本実施の形態では、データの傾き角度(方向)を考慮して同期を取ることを特徴としている。
【0071】
図23は、パターンマッチング後の画像の例を示す図である。
ここではパターンマッチング後の画像が、図23のように傾いた状態で得られたとする。この図23の画像には、データの存在しない領域(図中丸で囲まれる領域)がある。これは文字や画像がある領域、またはプリント後に加筆した文書がある箇所などであり、データの検出ができない領域である。
【0072】
図24は、図23のデータに膨張処理を行なった状態を示す図である。
図24の状態から同期を判定する処理を行なうが、本実施の形態においては傾き角度が不明である場合には、傾き角度も同期を取る際のパラメータとして、同期度数の高い条件を探すものである。
【0073】
この例では、初期位置と傾き角度の2種類をパラメータとして、同期を取る場合を例に示す。下記式6は、本実施の形態において式2に代えて用いられる式である。
【0074】
【数1】
【0075】
例えば傾きを±20度まで検出できるようにしておく場合には、傾き角度θを−20度〜20度の範囲で1度おきに変更していき、同期度数を算出するものとする。また、初期位置X0,Y0は第1の実施の形態と同様に、0〜15の範囲で、変更するものとする。
【0076】
この条件で、(θ, X0, Y0)=(−20, 0, 0)、(θ, X0, Y0)=(−20, 0, 1)、…、(θ, X0, Y0)=(−20, 15, 15)、(θ, X0, Y0)=(−19, 0, 0)、…、(θ, X0, Y0)=(20, 15, 15)まで、41×16×16=10496通りの中から、同期度数の最も高いケースを同期が取れたと判定し、その条件においてデータを取出す。
【0077】
図25は、同期が取れる場合の処理結果を示す図であり、図26は、比較のための傾き角度の同期が取れない場合の処理結果を示す図である。
【0078】
なお、既知の方法によって画像のおおよその傾き角度が検出角として分かっているが、その精度が足りない場合には、その検出角の近傍でのみ、最も同期の取れる条件を探すようにしてもよい。
【0079】
すなわち、2度程度の粗さで検出角が18度と分かっている場合において、同期を取るには精度が足りないときには、17,18,19度の3通りを試すことにより同期度数を判定し、同期を取った後にデータを検出しても良い。
【0080】
[実施の形態における効果]
上記実施の形態によると、文書画像にドットを印字しデータを埋め込むタイプの電子透かし技術において、埋め込まれたデータと同期の取れたところを取出すことで、スキャン画像の伸び縮みや傾きがあってもデータ読み出しが可能となるという効果がある。また、文字や画像が存在する部分や、加筆されたことによりデータが消失した部分があっても、対応できるという効果がある。また、ノイズ(意図せずプリントされた余計なドットなど)に強い検出処理ができるという効果がある。
【0081】
なお、埋め込むデータとしては、データの出所を特定するためのIDデータ、印刷機器のIPアドレス、プリンタID、印刷の日時などのデータ、コピーを禁止するなどの制御データ、原本であることを保証するためのデータなどが考えられる。
【0082】
また、上述の実施の形態における処理は、ソフトウエアによって行なっても、ハードウエア回路を用いて行なってもよい。
【0083】
また、上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。
【0084】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態において用いられる画像処理装置を含むMFPの構成を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態における画像形成装置の実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】ドットパターンが埋め込まれた画像(およびその印刷物)の具体例を示す図である。
【図6】「0」を表わす画像データの具体例を示す図である。
【図7】「1」を表わす画像データの具体例を示す図である。
【図8】埋め込む4ビットデータの具体例を示す図である。
【図9】図8のデータをドットに変換した状態を示す図である。
【図10】図4のステップS103の内容を示すフローチャートである。
【図11】データ0の標準パターンを示す図である。
【図12】データ1の標準パターンを示す図である。
【図13】パターンマッチングの処理により得られた画像を示す図である。
【図14】ドットの膨張処理で用いられるフィルタを示す図である。
【図15】膨張処理を行なった結果を示す図である。
【図16】データ取出しにおける座標系を示す図である。
【図17】同期が取れた条件におけるデータ初期位置を示す図である。
【図18】読取りミスが行なわれた状況を示す図である。
【図19】間違ってデータが判定された状態を示す図である。
【図20】同期が取れていない条件におけるデータ初期位置を示す図である。
【図21】間隔の同期が取れない例を示す図である。
【図22】第2の実施の形態における同期を取る処理を示す図である。
【図23】パターンマッチング後の画像の例を示す図である。
【図24】図23のデータに膨張処理を行なった状態を示す図である。
【図25】同期が取れる場合の処理結果を示す図である。
【図26】傾き角度の同期が取れない場合の処理結果を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
101 PC、101a 画像処理ソフトウェア、107 モニタ、109 外部記憶装置、111 スキャナ、151 入出力インタフェース、155 記憶装置、157 処理演算部、201 MFP本体、201a 画像処理ハードウェア、203 操作パネル部、205 スキャナ部、207 プリンタ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理装置であって、
前記画像中の前記情報が存在する部分を判定するために、前記画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定手段とを備えた、画像処理装置。
【請求項2】
前記決定手段で決定された箇所から情報を取出す取出手段をさらに備えた、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
XY方向それぞれ等間隔に画像中のデータを読出す読出手段を備え、
前記決定手段は、
前記読出手段の読出し位置を変更した状態で複数回の読出しを行ない、前記複数回の読出しの中で、最も前記情報があることを示すデータの読出しを行なうことができた読出し位置に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記画像に対して膨張処理を行なった後に判定を行なう、請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記判定するデータの初期位置、間隔、および方向の少なくとも1つを変更し、複数の条件の下でデータの状態を判定する、請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定手段は、本来情報が存在する間隔よりも広い間隔を空けて複数箇所のデータの状態を判定する、請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理方法であって、
前記画像中の前記情報が存在する部分を判定するために、前記画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定ステップと、
前記判定ステップの判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定ステップとを備えた、画像処理方法。
【請求項8】
画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理プログラムであって、
前記画像中の前記情報が存在する部分を判定するために、前記画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定ステップと、
前記判定ステップの判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定ステップとをコンピュータに実行させる、画像処理プログラム。
【請求項1】
画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理装置であって、
前記画像中の前記情報が存在する部分を判定するために、前記画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定手段とを備えた、画像処理装置。
【請求項2】
前記決定手段で決定された箇所から情報を取出す取出手段をさらに備えた、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
XY方向それぞれ等間隔に画像中のデータを読出す読出手段を備え、
前記決定手段は、
前記読出手段の読出し位置を変更した状態で複数回の読出しを行ない、前記複数回の読出しの中で、最も前記情報があることを示すデータの読出しを行なうことができた読出し位置に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記画像に対して膨張処理を行なった後に判定を行なう、請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記判定するデータの初期位置、間隔、および方向の少なくとも1つを変更し、複数の条件の下でデータの状態を判定する、請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定手段は、本来情報が存在する間隔よりも広い間隔を空けて複数箇所のデータの状態を判定する、請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理方法であって、
前記画像中の前記情報が存在する部分を判定するために、前記画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定ステップと、
前記判定ステップの判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定ステップとを備えた、画像処理方法。
【請求項8】
画像中の2次元に配列された情報を読出す画像処理プログラムであって、
前記画像中の前記情報が存在する部分を判定するために、前記画像中において2方向に渡って間隔を空けて、複数箇所のデータの状態を判定する判定ステップと、
前記判定ステップの判定結果に基づいて、情報を取出すべき箇所を決定する決定ステップとをコンピュータに実行させる、画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−333123(P2006−333123A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154380(P2005−154380)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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