説明

画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラム

【課題】不要領域か否かを適正に判別し、管腔内画像から不要領域を精度良く抽出すること。
【解決手段】本発明のある実施の形態の画像処理装置1は、一次判別部16と、二次判別部17とを備え、管腔内画像から不要領域の一例であるハレーション領域を抽出する。一次判別部16は、管腔内画像の色情報に基づく色特徴量をもとに、ハレーション候補領域を判別する。二次判別手段17は、ハレーション候補領域の色特徴量とは異なる第2の特徴量である境界特徴量をもとに、ハレーション候補領域がハレーション領域か否かを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内を撮像した管腔内画像を処理する画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者等の被検者の体内に導入されて体内管腔内を観察する医用観察装置として、内視鏡が広く普及している。また、近年では、カプセル型の筐体内部に撮像装置やこの撮像装置によって撮像された画像データを体外に無線送信する通信装置等を備えた飲み込み型の内視鏡(カプセル内視鏡)が開発されている。これらの医用観察装置によって撮像された体内管腔内の画像(管腔内画像)の観察・診断は、多くの経験を必要とするため、医師による診断を補助する医療診断支援機能が望まれている。この機能を実現する画像認識技術の1つとして、管腔内画像から病変等の異常部を自動的に検出することで、重点的に診断すべき画像を示す技術が提案されている。
【0003】
ところで、前述の異常部検出のためには、前処理として、観察・診断に不要な領域、例えばハレーションが発生した領域(ハレーション領域)や管腔の奥側が映った暗部領域、便等の内容物が映った内容物領域等の不要領域を抽出する処理を行い、粘膜等の注目すべき領域を特定する技術が重要となる。例えば、特許文献1には、暗部等の不要領域に影響されずに画像内における病変粘膜等の特定の生体粘膜の存在を検出する技術が開示されている。この特許文献1では、各画素の色情報をもとに不要領域に該当する画素を除外した上で、特定の生体粘膜の存在を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−166939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、特許文献1の技術では、色情報をもとに不要領域に該当する画素を除外している。しかしながら、例えばハレーション領域は、白色病変が映った領域等と色が類似しており、色情報ではこれらを判別することが困難である。同様に、暗部領域は凝固血が映った領域等と色が類似し、内容物領域は黄色く映った粘膜の領域等と色が類似しており、同様の問題が生じる。このため、注目すべき領域を誤って不要領域として抽出してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑み為されたものであって、不要領域か否かを適正に判別し、管腔内画像から不要領域を精度良く抽出することができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するための、本発明のある態様にかかる画像処理装置は、管腔内画像から不要領域を抽出する画像処理装置であって、前記管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量をもとに、不要候補領域を判別する一次判別手段と、前記不要候補領域の前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別する二次判別手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この態様にかかる画像処理装置によれば、管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量をもとに、不要候補領域を判別することができる。そして、不要候補領域の第1の特徴量とは異なる第2の特徴量をもとに、不要候補領域が不要領域か否かを判別することができる。したがって、不要候補領域のうち、不要領域と色が類似する不要領域以外の領域を色情報に基づく第1の特徴量とは異なる第2の特徴量を用いて除外し、不要領域を抽出することができる。したがって、不要領域を適正に判別し、不要領域を精度良く抽出することができるという効果を奏する。
【0009】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理方法は、管腔内画像から不要領域を抽出する画像処理方法であって、前記管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量をもとに、不要候補領域を判別する一次判別工程と、前記不要候補領域の前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別する二次判別工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理プログラムは、管腔内画像から不要領域を抽出するための画像処理プログラムであって、コンピュータに、前記管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量をもとに、不要候補領域を判別する一次判別ステップと、前記不要候補領域の前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別する二次判別ステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不要領域か否かを適正に判別し、管腔内画像から不要領域を精度良く抽出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1における画像処理装置の機能構成を説明するブロック図である。
【図2】図2は、管腔内画像の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、管腔内画像内の画素値の変化を説明する図である。
【図4】図4は、実施の形態1の画像処理装置が行う処理手順を示す全体フローチャートである。
【図5】図5は、境界特徴量算出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、ハレーション候補領域の一例を示す模式図である。
【図7】図7は、図6に示すハレーション候補領域の境界における法線方向ラインプロファイルの一例を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態2における画像処理装置の機能構成を説明するブロック図である。
【図9】図9は、管腔内画像の一例を示す模式図である。
【図10】図10は、管腔内画像内の画素値の変化を説明する図である。
【図11】図11は、実施の形態2の画像処理装置が行う処理手順を示す全体フローチャートである。
【図12】図12は、勾配特徴量算出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態3における画像処理装置の機能構成を説明するブロック図である。
【図14】図14は、実施の形態3の画像処理装置が行う処理手順を示す全体フローチャートである。
【図15】図15は、飽和領域判別処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図16】図16は、本発明を適用したコンピューターシステムの構成を示すシステム構成図である。
【図17】図17は、図16のコンピューターシステムを構成する本体部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0014】
ここで、本実施の形態の画像処理装置は、例えば内視鏡やカプセル内視鏡等の医用観察装置が被検者の体内の消化管等の管腔内を撮像した画像(管腔内画像)を処理するものであり、具体的には、粘膜等の注目すべき領域を特定し、例えば病変領域や出血領域等の異常部領域を抽出する際の前処理として、管腔内画像から不要領域を抽出する処理を行うものである。不要領域とは、注目すべき領域とはならず、観察・診断に不要な領域のことをいい、例えばハレーション領域や暗部領域、内容物領域等を含む。ハレーション領域とは、ハレーションが発生した領域のことをいう。また、管腔内画像は、前述のように消化管等の管腔内を医用観察装置によって撮像した画像であるが、管腔の奥側は医用観察装置からの距離が遠く、照明光が届きにくいために暗い領域として現れる。暗部領域とは、この管腔の奥側が映った暗い領域のことをいう。内容物領域とは、管腔内を浮遊する便等の内容物が映った領域のことをいう。なお、本実施の形態において、医用観察装置によって撮像される管腔内画像は、例えば、各画素においてR(赤),G(緑),B(青)の各色成分に対する画素レベル(画素値)を持つカラー画像である。
【0015】
(実施の形態1)
先ず、実施の形態1の画像処理装置の構成について説明する。図1は、実施の形態1の画像処理装置1の機能構成を説明するブロック図である。実施の形態1の画像処理装置1は、図1に示すように、画像取得部11と、入力部12と、表示部13と、記録部14と、演算部15と、画像処理装置1全体の動作を制御する制御部19とを備える。この画像処理装置1は、管腔内画像から不要領域としてハレーション領域を抽出する処理を行う。
【0016】
画像取得部11は、医用観察装置によって撮像された管腔内画像の画像データを取得するためのものであり、この画像取得部11によって取得された画像データは記録部14に記録され、演算部15によって処理された後、必要に応じて適宜表示部13に表示される。画像取得部11は、例えば医用観察装置がカプセル内視鏡の場合等のように医用観察装置との間の画像データの受け渡しに可搬型の記録媒体が使用される場合であれば、この記録媒体を着脱自在に装着して保存された管腔内画像の画像データを読み出すリーダ装置で構成される。また、医用観察装置によって撮像された管腔内画像の画像データを保存しておくサーバを適所に設置し、このサーバから取得する構成の場合には、画像取得部11を、サーバと接続するための通信装置等で構成する。そして、この画像取得部11を介してサーバとデータ通信を行い、管腔内画像の画像データを取得する。また、この他、内視鏡等の医用観察装置からの画像信号をケーブルを介して入力するインターフェース装置等で構成してもよい。
【0017】
入力部12は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等によって実現されるものであり、入力信号を制御部19に出力する。表示部13は、LCDやELディスプレイ等の表示装置によって実現されるものであり、制御部19の制御のもと、管腔内画像を含む各種画面を表示する。
【0018】
記録部14は、更新記録可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵或いはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記録媒体およびその読取装置等によって実現されるものであり、画像処理装置1を動作させ、この画像処理装置1が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、このプログラムの実行中に使用されるデータ等が記録される。例えば、記録部14には、画像取得部11によって取得された管腔内画像の画像データが記録される。また、記録部14には、管腔内画像からハレーション領域を抽出するための画像処理プログラム141が記録される。
【0019】
演算部15は、CPU等のハードウェアによって実現され、管腔内画像を処理してハレーション領域を抽出するための種々の演算処理を行う。この演算部15は、一次判別手段としての一次判別部16と、二次判別手段としての二次判別部17とを含む。一次判別部16は、管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量である色特徴量をもとに、不要候補領域の一例であるハレーション候補領域を判別する。二次判別部17は、色特徴量とは異なる第2の特徴量をもとにハレーション候補領域がハレーション領域か否かを判別する。この二次判別部17は、境界特徴量算出手段としての境界特徴量算出部171と、境界特徴判別手段としての境界特徴判別部18とを備える。ここで、第2の特徴量は、ハレーション候補領域の境界近傍における画素値の変化をもとに算出される値である。例えば、実施の形態1では、境界特徴量算出部171が、第2の特徴量としてハレーション候補領域の境界の内側の領域と外側の領域とを含む領域の境界特徴量を算出する。この境界特徴量算出部171は、エッジ強度算出手段としてのエッジ強度算出部172と、曲率算出手段としての曲率算出部173とを備える。エッジ強度算出部172は、境界特徴量の1つとして、ハレーション候補領域の境界におけるエッジ強度を算出する。また、曲率算出部173は、別の境界特徴量として、ハレーション候補領域の境界における法線方向ラインプロファイルの曲率を算出する。境界特徴判別部18は、境界特徴量すなわちエッジ強度および法線方向ラインプロファイルの曲率をもとに、ハレーション候補領域がハレーション領域か否かを判別する。
【0020】
制御部19は、CPU等のハードウェアによって実現される。この制御部19は、画像取得部11によって取得された画像データや入力部12から入力される入力信号、記録部14に記録されるプログラムやデータ等をもとに画像処理装置1を構成する各部への指示やデータの転送等を行い、画像処理装置1全体の動作を統括的に制御する。
【0021】
次に、実施の形態1におけるハレーション領域の抽出原理について説明する。図2は、管腔内画像の模式図である。また、図3は、管腔内画像内の画素値の変化を説明する図であり、図2中に破線で示すラインL11上の画素値の変化曲線L13を示している。ハレーション領域は、管腔内画像において白色の領域として現れる。そこで、先ず、管腔内画像から白色領域をハレーション候補領域として抽出する。例えば、図2に示す管腔内画像では、白色領域である2つのハレーション候補領域41,42を示している。
【0022】
ところで、前述のように、ハレーション候補領域は、管腔内画像の白色領域であるが、管腔内画像には、ハレーション領域以外にも例えば白色病変等の領域がハレーション領域と類似する白色の領域として現れる。この白色病変等の領域は、ハレーション領域とは異なり、観察・診断時に注目すべき領域となる。例えば、図2において、一方のハレーション候補領域41がハレーション領域であり、他方のハレーション候補領域42が白色病変の領域であったとする。
【0023】
ここで、ハレーション領域は、撮影対象面からの反射光の減衰が少ない領域であり、このハレーション領域以外の領域より高い画素値を持つ。このため、ハレーション領域は、その境界を境にして内側の領域と外側の領域とで画素値の変動が大きいという特徴がある。例えば、図3に示す画素値の変化曲線L13に示すように、図2に示すハレーション領域であるハレーション候補領域41の境界部分411,412では画素値が急峻に変化しているのに対し、白色病変の領域であるハレーション候補領域42の境界部分421,422では、画素値の変化が緩やかである。そこで、実施の形態1では、白色領域を抽出することで得たハレーション候補領域の境界付近の画素値の変化に着目することで、各ハレーション候補領域がハレーション領域か否かを判別してハレーション領域を抽出する。
【0024】
次に、実施の形態1の画像処理装置1が行う具体的な処理手順について図4を参照して説明する。ここで説明する処理は、演算部15が記録部14に記録された画像処理プログラム141を実行することにより実現される。
【0025】
図4に示すように、先ず演算部15は、処理対象の管腔内画像I(x,y)を取得する(ステップa1)。ここでの処理によって、演算部15は、画像取得部11によって取得され、記録部14に記録された処理対象の管腔内画像I(x,y)を読み出して取得する。xおよびyは、管腔内画像における各画素位置の座標を示す。
【0026】
続いて、一次判別部16は、ステップa1で取得した管腔内画像I(x,y)の色特徴量をもとに、管腔内画像I(x,y)内のハレーション候補領域U(i)を抽出する(ステップa3)。前述のように、ハレーション領域は、管腔内画像において白色の領域として現れる。そこで、実施の形態1では、管腔内画像の色情報(R値,G値,B値)を色特徴量として用い、白色領域に属する画素の識別を行う。そして、識別した白色領域に属する画素について公知のラベリング処理を行うことで、ハレーション候補領域U(i)を抽出する。
【0027】
具体的な処理手順は先ず、管腔内画像I(x,y)を構成する画素毎にそのR値、G値、およびB値のそれぞれを予め設定される所定の閾値と比較し、R値、G値、およびB値の全ての値が閾値以上か否かを判定する。そして、R値、G値、およびB値の全ての値が閾値以上と判定した画素を白色領域に属する画素として仮の画素値「0」を割り当てる。一方、R値、G値、およびB値の中に1つでも閾値未満の値がある画素には仮の画素値「1」を割り当てる。
【0028】
その後、以上のようにして管腔内画像I(x,y)の各画素に割り当てた仮の画素値をもとにラベリング処理を行い、ハレーション候補領域を抽出する(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,181p)。すなわち先ず、仮の画素値が「0」である画素を連結成分毎(隣接する同一画素値の画素群)に区切る。そして、区切った画素群毎に各々を識別するための固有のラベルを付すことによって、仮の画素値が「0」である画素群のそれぞれをハレーション候補領域とする。このとき、一次判別部16は、各ハレーション領域に各々を識別するためのインデックスiを割り振る。例えば、インデックスiとして各ハレーション領域に通し番号(1≦i≦Max_i)を割り振り、ハレーション候補領域U(i)とする。
【0029】
なお、本例では、各画素の色情報(R値,G値,B値)を色特徴量として用い、ハレーション候補領域を抽出することとしたが、白色領域を抽出できればよく、その手法はこれに限定されるものではない。例えば、各画素のR値,G値,B値を色相(Hue),彩度(Saturation),輝度(Lightness/Luminance/Intensity)の3つの成分からなるHSI色空間に写像し、I値(輝度の値)を予め設定される所定の閾値と比較するようにしてもよい。そして、I値が閾値以上と判定した画素を白色領域に属する画素として識別した後、同様にラベリング処理を行ってハレーション候補領域を抽出することとしてもよい。
【0030】
続いて、一次判別部16は、管腔内画像I(x,y)中にハレーション候補領域が存在するか否かを判別する。ステップa3の処理の結果ハレーション候補領域が抽出されなかった場合には、ハレーション候補領域が存在しないと判別し(ステップa5:No)、本処理を終える。ステップa3の処理の結果ハレーション候補領域が抽出された場合にはハレーション候補領域が存在すると判別し(ステップa5:Yes)、ステップa7に移行する。
【0031】
そして、ステップa7では、処理対象とするハレーション候補領域のインデックスiを「1」に設定する。そして、境界特徴量算出部171が境界特徴量算出処理を実行し、処理対象のハレーション候補領域U(i)の境界特徴量を算出する(ステップa9)。
【0032】
実施の形態1では、上記したように境界を境にして内側の領域と外側の領域とで画素値の変動が大きいというハレーション領域の特徴に基づき、ハレーション候補領域U(i)がハレーション領域であるか否かを判別するための基準として境界特徴量を算出する。そして、この境界特徴量をもとに、互いに色が類似する白色領域として現れるハレーション領域と白色病変等の領域とを識別する。
【0033】
図5は、境界特徴量算出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。図5に示すように、境界特徴量算出処理では、境界特徴量算出部171は先ず、公知の輪郭追跡処理を行い、処理対象のハレーション候補領域U(i)の境界に相当する画素(以下、「境界画素」と呼ぶ。)b(j)を検出する(ステップb1)。輪郭追跡とは、領域の外周部に相当する画素を順に追跡して境界画素を検出する手法であり、本例では、例えば8近傍で連結性を判断する輪郭追跡(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,178p)を行う。jは、境界画素の各々を識別するためのインデックスであり、境界画素の隣接関係を示している。
【0034】
そして、境界特徴量算出部171は、次式(1),(2)に従い、境界画素b(j)毎に処理対象のハレーション候補領域U(i)の境界に対する法線ベクトルn(j)を算出する(ステップb3)。ここで、式(1),(2)において、nx(j)は、法線ベクトルn(j)のx成分を表し、ny(j)は、法線ベクトルn(j)のy成分を表す。また、bx(j)は、境界画素b(j)のx座標を表し、by(j)は、境界画素b(j)のy座標を表す。ここで、上記した輪郭追跡処理は、ハレーション候補領域U(i)の外周部に相当する画素を右回りに追跡する処理であるため、法線ベクトルは、その向きがハレーション候補領域U(i)の外側を向く向きで得られる。
【数1】

【0035】
続いて、エッジ強度算出部172が、ステップb3で各境界画素b(j)のそれぞれについて算出した法線ベクトルn(j)をもとに、処理対象のハレーション候補領域U(i)の境界におけるエッジ強度を算出する(ステップb5)。具体的には、エッジ強度算出部172は、次式(3)〜(7)に従ってエッジ強度Eを算出する。ここで、式(3)〜(7)において、IR(x,y)は、管腔内画像I(x,y)内の座標(x1,y1)および(x2,y2)で表される画素位置の画素のR値を表す。また、Nbは、境界画素b(j)の総数を表し、k1は、任意の定数である。また、x1、x2、y1、およびy2は全て整数とし、算出時に四捨五入を行うことで整数化することとする。
【数2】

【0036】
なお、本例では、法線ベクトルを用いてハレーション候補領域U(i)の境界におけるエッジ強度Eを算出することとしたが、エッジ強度の算出手法はこれに限定されるものではない。例えば、公知のソーベル(Sobel)フィルタ(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,116p)を用いてエッジ強度を算出することとしてもよい。ソーベルフィルタとは、微分と平滑化を行う既知の手法である。また、本例では、全ての境界画素b(j)についてエッジ強度Eを算出することとしたが、エッジ強度Eを算出する境界上の部位は1箇所以上であればよい。すなわち、エッジ強度Eを算出する部位(どの境界画素b(j)についてエッジ強度Eを算出するのか)は適宜選択でき、選択した境界上の部位についてエッジ強度Eを算出することとしてよい。
【0037】
続いて、曲率算出部173が、ステップb3で各境界画素b(j)のそれぞれについて算出した法線ベクトルn(j)をもとに、処理対象のハレーション候補領域U(i)の境界における法線方向ラインプロファイルの曲率を算出する(ステップb7)。
【0038】
ここで、法線方向ラインプロファイルの曲率の算出原理について説明する。図6は、処理対象のハレーション候補領域U(i)の一例を示す模式図であり、図6中において、ハレーション候補領域U(i)の境界上に存在する境界画素b(j)の1つであるP21について図5のステップb3で算出した法線ベクトルn(j)であるV2を示している。また、図7は、横軸を図6中に破線で示すラインL21上の画素位置とし、縦軸を該当する各画素の画素値として図6中のラインL21に沿った画素値の変化曲線L23を示したものである。実施の形態1において、法線方向ラインプロファイルとは、境界画素の法線方向に存在する画素の画素値の変化のことをいう。例えば、図6に示す境界画素P21の法線方向ラインプロファイルは、法線ベクトルV2に沿ったラインL21上の画素値の変化、すなわち図7に示す変化曲線L23のことをいう。そして、図5のステップb7では、境界画素毎の法線方向ラインプロファイルの曲率をもとに、処理対象のハレーション候補領域U(i)の境界における法線方向ラインプロファイルの曲率を算出する。個々の境界画素の法線方向ラインプロファイルの曲率は、例えば境界画素P21に着目すれば、この境界画素P21の画素値と、法線ベクトルV2に沿ったラインL21上の画素であって、境界画素P21を挟んで両側に存在する画素P22,P23の画素値とを用いて算出する。
【0039】
実際には、図5のステップb7において曲率算出部173は、次式(8)に従って法線方向ラインプロファイルの曲率Mを算出する。ここで、式(8)中のx1,x2,y1,y2は、上記した式(4)〜(7)で得られる値と同一の値である。
【数3】

【0040】
そして、法線方向ラインプロファイルの曲率Mを算出したならば、図4のステップa9にリターンし、その後ステップa11に移行する。この境界特徴量算出処理の結果、処理対象のハレーション候補領域U(i)の境界特徴量として、この処理対象のハレーション候補領域U(i)の境界におけるエッジ強度Eおよび法線方向ラインプロファイルの曲率Mが得られる。
【0041】
なお、本例では、全ての境界画素b(j)について法線方向ラインプロファイルの曲率Mを算出することとしたが、法線方向ラインプロファイルの曲率Mを算出する境界上の部位は1箇所以上であればよい。すなわち、法線方向ラインプロファイルの曲率Mを算出する部位(どの境界画素b(j)について法線方向ラインプロファイルの曲率Mを算出するのか)は適宜選択でき、選択した境界上の部位について法線方向ラインプロファイルの曲率Mを算出することとしてよい。また、本例では、管腔内画像I(x,y)内の画素のR値IR(x,y)を用いてエッジ強度Eおよび法線方向ラインプロファイルの曲率Mを算出することとしたが、境界特徴量として算出する値やその算出手法はこれに限定されるものではない。すなわち、境界特徴量は、ハレーション候補領域U(i)の境界における画素値の変動に応じた値であれば他の値であってもよく、他の算出手法で得た値であってもよい。
【0042】
そして、ステップa11では、境界特徴判別部18が、ステップa9の境界特徴量算出処理の結果境界特徴量として算出されたエッジ強度Eおよび法線方向ラインプロファイルの曲率Mをもとに、処理対象のハレーション候補領域U(i)がハレーション領域であるか否かを判別する。具体的には、境界特徴判別部18は、図5のステップb5で算出したエッジ強度Eが予め設定される所定の閾値以上であり、且つ、図5のステップb7で算出した法線方向ラインプロファイルの曲率Mが予め設定される所定の閾値以上の場合に、処理対象のハレーション候補領域U(i)をハレーション領域と判別する。
【0043】
なお、本例では、ハレーション候補領域の境界におけるエッジ強度Eおよび法線方向ラインプロファイルの曲率Mを算出することとした。そして、算出したエッジ強度Eおよび法線方向ラインプロファイルの曲率Mを境界特徴量として用い、ハレーション候補領域がハレーション領域であるか否かを判別することとしたが、判別の手法はこれに限定されるものではない。すなわち、ハレーション候補領域の境界を境にした画素値の変動をもとにハレーション領域を判別できればよく、エッジ強度Eのみを境界特徴量として用い、ハレーション領域か否かの判別を行うこととしてもよい。あるいは、法線方向ラインプロファイルの曲率Mのみを境界特徴量として用い、ハレーション領域か否かの判別を行うこととしてもよい。また、エッジ強度Eや法線方向ラインプロファイルの曲率M以外の境界特徴量を用いてハレーション領域か否かの判別を行うこととしてもよい。
【0044】
以上のように処理対象のハレーション候補領域U(i)がハレーション領域か否かの判別を終えたならば、インデックスiがMax_i未満か否かを判定する。そして、Max_i未満であれば(ステップa13:Yes)、インデックスiをインクリメントして更新し(ステップa15)、次のハレーション候補領域U(i)についてステップa9〜ステップa13の処理を行う。一方、インデックスiがMax_i未満ではなく、全てのハレーション候補領域を処理した場合には(ステップa13:No)、本処理を終える。
【0045】
以上説明したように、実施の形態1では、先ず第1の特徴量である色特徴量をもとに管腔内画像からハレーション候補領域を抽出することとした。そして、抽出したハレーション候補領域のそれぞれについて色特徴量とは異なる第2の特徴量として境界特徴量を算出することとした。具体的には、境界を境にして内側の領域と外側の領域とで画素値の変動が大きいというハレーション領域の特徴に基づき、境界特徴量としてハレーション候補領域の境界におけるエッジ強度および法線方向ラインプロファイルの曲率を算出することとした。そして、この境界特徴量をもとに各ハレーション候補領域がハレーション領域か否かを判別してハレーション領域を抽出することとした。この実施の形態1によれば、白色領域として抽出したハレーション候補領域のうち、ハレーション領域と色が類似する白色病変の領域といったハレーション領域以外の領域を除外してハレーション領域を抽出することができる。したがって、不要領域の一例であるハレーション領域を適正に判別し、ハレーション領域を精度良く抽出することができるという効果を奏する。
【0046】
以上のようにしてハレーション領域が抽出された管腔内画像に対しては、例えば病変領域や出血領域等の異常部領域を抽出する処理等が実施され、適宜表示部13に表示されて医師等のユーザに提示される。具体的には、管腔内画像は、例えば異常部領域を他の領域と識別可能に表した画像として表示部13に表示される。あるいは、異常部領域を含む管腔内画像が、診断すべき画像として表示部13に表示される。このとき、実施の形態1を適用することで抽出したハレーション領域を除外して注目すべき領域を特定し、この注目すべき領域の中から異常部領域を抽出することができるので、高精度な異常部検出が実現できる。
【0047】
(実施の形態2)
先ず、実施の形態2の画像処理装置の構成について説明する。図8は、実施の形態2の画像処理装置1bの機能構成を説明するブロック図である。なお、実施の形態1で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付する。実施の形態2の画像処理装置1bは、図8に示すように、画像取得部11と、入力部12と、表示部13と、記録部14bと、演算部15bと、画像処理装置1b全体の動作を制御する制御部19とを備える。この画像処理装置1bは、管腔内画像から不要領域として暗部領域を抽出する処理を行う。
【0048】
記録部14bには、管腔内画像から暗部領域を検出するための画像処理プログラム141bが記録される。
【0049】
また、演算部15bは、一次判別手段としての一次判別部16bと、二次判別手段としての二次判別部17bとを含む。一次判別部16bは、管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量である色特徴量をもとに、不要候補領域の一例である暗部候補領域を判別する。二次判別部17bは、色特徴量とは異なる第2の特徴量をもとに暗部候補領域が暗部領域か否かを判別する。この二次判別部17bは、勾配特徴量算出手段としての勾配特徴量算出部28bと、勾配特徴判別手段としての勾配特徴判別部29bとを備える。ここで、第2の特徴量は、暗部候補領域の境界近傍における画素値の変化をもとに算出される値である。例えば、実施の形態2では、勾配特徴量算出部28bが、第2の特徴量として暗部候補領域の周囲領域(外側近傍)の勾配特徴量を算出する。この勾配特徴量算出部28bは、勾配方向算出手段としての勾配方向算出部281bと、集中度算出手段としての集中度算出部282bとを備える。勾配方向算出部281bは、暗部候補領域の周囲における勾配方向を算出する。また、集中度算出部282bは、勾配方向算出部281bによって算出された暗部候補領域の周囲における勾配方向をもとに、勾配特徴量として勾配の集中度を算出する。勾配特徴判別部29bは、勾配特徴量すなわち勾配の集中度をもとに、暗部候補領域が暗部領域か否かを判別する。
【0050】
次に、実施の形態2における暗部領域の抽出原理について説明する。図9は、管腔内画像の模式図である。また、図10は、管腔内画像内の画素値の変化を説明する図であり、図9中に破線で示すラインL31上の画素値の変化曲線L32を示している。医用観察装置が管腔の奥側を向いた状態で撮像した管腔内画像には、図9に示すように、管腔の奥が暗部領域51として映る。この暗部領域51は、管腔内画像において黒色の領域として現れる。そこで、先ず、管腔内画像から黒色領域を暗部候補領域として抽出する。例えば、図9に示す管腔内画像では、暗部候補領域として抽出される暗部領域51およびこの暗部領域51とは別の黒色領域52を示している。
【0051】
ところで、前述のように、暗部候補領域は、管腔内画像の黒色領域であるが、管腔内画像には、暗部領域以外にも例えば凝固血等の領域が暗部領域と類似する黒色の領域として現れる。この凝固血等の領域は、暗部領域とは異なり、観察・診断時に注目すべき領域となる。例えば、図9において、暗部領域51とは別の黒色領域52が凝固血等の領域であったとする。
【0052】
ここで、暗部領域は、管腔内において撮影面に対して遠方の領域であるため、その周囲における画素値の変化が暗部領域の方へ傾いているという特徴がある。例えば、図10に示す画素値の変化曲線L32に示すように、図9の暗部領域51の周囲(暗部領域51の外側近傍)の領域511,512では、それぞれ図10中に矢印A511,A512に示すようにその画素値が暗部領域51の方向に向かって減少しており、暗部領域51の周囲では、その全域で画素値の変化が暗部領域51の方へ傾いている。これに対し、凝固血等の領域である黒色領域52の場合、黒色領域52の周囲(黒色領域52の外側近傍)の例えば図9中に向かって右側の領域522では、図10中に矢印A522に示すようにその画素値が黒色領域52の方向に向かって減少しているものの、左側の領域521では、矢印A521に示すようにその画素値が黒色領域52とは反対の方向に向かって減少している。すなわち、黒色領域52の左側の領域521では、この黒色領域52よりも左側に存在する暗部領域51に向かって画素値が減少している。そこで、実施の形態2では、黒色領域を抽出することで得た暗部候補領域の周囲における画素値の変化、より詳細には画素値の変化が傾く方向に着目することで、各暗部候補領域が暗部領域か否かを判別して暗部領域を抽出する。
【0053】
次に、実施の形態2の画像処理装置1bが行う具体的な処理手順について図11を参照して説明する。ここで説明する処理は、演算部15bが記録部14bに格納された画像処理プログラム141bを実行することにより実現される。
【0054】
図11に示すように、先ず演算部15bは、処理対象の管腔内画像I(x,y)を取得する(ステップc1)。xおよびyは、管腔内画像における各画素位置の座標を示す。続いて、一次判別部16bは、ステップc1で取得した管腔内画像I(x,y)の色特徴量をもとに、管腔内画像I(x,y)内の暗部候補領域U(i)を抽出する(ステップc3)。前述のように、暗部領域は、管腔内画像において黒色の領域として現れる。そこで、実施の形態2では、管腔内画像の色情報(R値,G値,B値)を色特徴量として用い、黒色領域に属する画素の識別を行う。そして、識別した黒色領域に属する画素について公知のラベリング処理を行うことで、暗部候補領域U(i)を抽出する。
【0055】
具体的な処理手順は先ず、管腔内画像I(x,y)を構成する画素毎にそのR値、G値、およびB値のそれぞれを予め設定される所定の閾値と比較し、R値、G値、およびB値の全ての値が閾値以下か否かを判定する。そして、R値、G値、およびB値の全ての値が閾値以下と判定した画素を黒色領域に属する画素として仮の画素値「0」を割り当てる。一方、R値、G値、およびB値の中に1つでも閾値より大きい値がある画素には仮の画素値「1」を割り当てる。
【0056】
その後、このようにして管腔内画像I(x,y)の各画素に割り当てた仮の画素値をもとにラベリング処理を行い、暗部候補領域を抽出する。ラベリング処理は、実施の形態1と同様にして行い、仮の画素値が「0」である画素を連結成分毎に区切った画素群のそれぞれを暗部候補領域とする。このとき、一次判別部16bは、各暗部領域に各々を識別するためのインデックスiとして通し番号(1≦i≦Max_i)を割り振り、暗部候補領域U(i)とする。
【0057】
なお、本例では、各画素の色情報(R値,G値,B値)を色特徴量として用い、暗部候補領域を抽出することとしたが、黒色領域を抽出できればよく、その手法はこれに限定されるものではない。例えば、各画素のR値,G値,B値をHSI色空間に写像し、I値(輝度の値)を予め設定される所定の閾値と比較するようにしてもよい。そして、I値が閾値以下と判定した画素を黒色領域に属する画素として識別した後、同様にラベリング処理を行って暗部候補領域を抽出することとしてもよい。
【0058】
続いて、一次判別部16bは、管腔内画像I(x,y)の中に暗部候補領域が存在するか否かを判別する。ステップc3の処理の結果暗部候補領域が抽出されなかった場合には、暗部候補領域が存在しないと判別し(ステップc5:No)、本処理を終える。ステップc3の処理の結果暗部候補領域が抽出された場合には暗部候補領域が存在すると判別し(ステップc5:Yes)、ステップc7に移行する。
【0059】
そして、ステップc7では、処理対象とする暗部候補領域のインデックスiを「1」に設定する。そして、勾配特徴量算出部28bが勾配特徴量算出処理を実行し、処理対象の暗部候補領域U(i)の勾配特徴量を算出する(ステップc9)。
【0060】
実施の形態2では、上記したように周囲における画素値の変化が暗部領域の方へ傾いているという暗部領域の特徴に基づき、暗部候補領域U(i)が暗部領域であるか否かを判別するための基準として勾配特徴量を算出する。そして、この勾配特徴量をもとに、互いに色が類似する黒色領域として現れる暗部領域と凝固血等の領域とを識別する。
【0061】
図12は、勾配特徴量算出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。図12に示すように、勾配特徴量算出処理では、勾配特徴量算出部28bは先ず、図5のステップb1と同様の処理を行って処理対象の暗部候補領域U(i)の境界画素b(j)を検出する(ステップd1)。そして、勾配特徴量算出部28bは、図5のステップb3と同様の処理を行い、境界画素b(j)毎に処理対象の暗部候補領域U(i)の境界に対する法線ベクトルn(j)を算出する(ステップd3)。
【0062】
続いて、勾配特徴量算出部28bは、ステップd3で各境界画素b(j)のそれぞれについて算出した法線ベクトルn(j)をもとに、境界画素b(j)毎にその法線方向に存在する画素(以下、「法線方向画素」と呼ぶ。)A(j)を設定する(ステップd5)。実施の形態1で説明したように、ステップd3で算出される法線ベクトルn(j)は、それぞれ処理対象の暗部候補領域U(i)の外側を向く向きで得られる。ここでは、この法線ベクトルn(j)の向き、すなわち、処理対象の暗部候補領域U(i)の外側に所定距離離れた画素を法線方向画素A(j)として設定する。
【0063】
実際には、ステップd5において勾配特徴量算出部28bは、次式(9),(10)に従って法線方向画素A(j)を設定する。ここで、式(9),(10)において、Ax(j)は、法線方向画素A(j)のx座標を表し、Ay(j)は、法線方向画素A(j)のy座標を表す。また、k2は、任意の定数である。また、Ax(j)およびAy(j)はそれぞれ整数とし、算出時に四捨五入を行うことで整数化することとする。
【数4】

【0064】
続いて、勾配方向算出部281bが、ステップd5で各境界画素b(j)のそれぞれについて設定した法線方向画素A(j)毎に、勾配方向ベクトルg(j)を算出する(ステップd7)。ここで、勾配方向ベクトルg(j)とは、各法線方向画素A(j)を基点としたベクトルであって、法線方向画素A(j)の周囲において最も画素値が小さい画素の方向を指すベクトルである。
【0065】
具体的には、勾配方向算出部281bは先ず、法線方向画素A(j)を中心とした3×3の画素範囲を構成する画素毎に、次式(11)に従って差分値d(x,y)を算出する。ここで、式(11)において、xおよびyは、法線方向画素A(j)を中心とした3×3の画素範囲内の画素の座標を示している。ただし、Ax(j)≠xであり、Ay(j)≠yである。
【数5】

【0066】
そして、この法線方向画素A(j)を中心とした3×3の画素範囲内の画素の中から、差分値d(x,y)が最も大きい画素を選出する。
【0067】
その後、次式(12),(13)に従い、差分値d(x,y)が最も大きいとして選出した画素の座標(mxj,myj)と、法線方向画素A(j)の座標との差分を算出し、勾配方向ベクトルg(j)とする。これにより、法線方向画素A(j)の周囲における勾配方向が得られる。ここで、式(12),(13)において、gx(j)は、勾配方向ベクトルg(j)のx成分を表し、gy(j)は、勾配方向ベクトルg(j)のy成分を表す。以上の処理を法線方向画素A(j)毎に行い、各法線方向画素A(j)のそれぞれについて勾配方向ベクトルg(j)を算出する。
【数6】

【0068】
なお、本例では、8方向に離散化された勾配方向ベクトルg(j)を算出することで法線方向画素A(j)の周囲における勾配方向を取得することとしたが、法線方向画素A(j)の周囲における勾配方向が取得できればその算出手法は限定されない。例えば、次式(14),(15)に従って連続的な勾配方向ベクトルg(j)を算出することで法線方向画素A(j)の周囲における勾配方向を取得することとしてもよい。ここで、式(14),(15)において、Δxf(Ax(j),Ay(j))は、法線方向画素A(j)についてx方向に沿ってソーベルフィルタを適用した結果を表し、Δyf(Ax(j),Ay(j))は、y方向に沿ってソーベルフィルタを適用した結果を表している。本変形例のようにソーベルフィルタを適用して連続的な勾配方向ベクトルg(j)を算出する手法によれば、上記したように8方向に離散化された勾配方向ベクトルg(j)を算出する場合よりも高精度に勾配方向ベクトルg(j)を算出することができる。
【数7】

【0069】
そして、集中度算出部282bが、各境界画素b(j)のそれぞれについて算出した法線ベクトルn(j)と勾配方向ベクトルg(j)とをもとに、処理対象の暗部候補領域U(i)の周囲における勾配の集中度を算出する(ステップd9)。勾配の集中度とは、勾配方向ベクトルg(j)がどの程度暗部候補領域U(i)を向いているのかを示す値である。上記したように、暗部領域の周囲では、その全域で画素値の変化が暗部領域の方へ傾く(暗部領域に向かって画素値が小さくなる)という特徴を有している。したがって、処理対象の暗部候補領域U(i)が暗部領域であれば、境界画素b(j)毎に算出される勾配方向ベクトルg(j)は、その向きが全体的に対応する境界画素b(j)の法線ベクトルn(j)と逆向きに得られることとなる。そこで、ここでは、境界画素b(j)毎に法線ベクトルn(j)と勾配方向ベクトルg(j)との内積を求めることで、勾配の集中度を算出する。
【0070】
実際には、ステップd9において集中度算出部282bは、次式(16)に従って勾配の集中度Cを算出する。
【数8】

【0071】
この式(16)によれば、勾配の集中度Cは、各境界画素b(j)それぞれの法線ベクトルn(j)と勾配方向ベクトルg(j)との内積の平均に負の符号を乗じた値として得られる。したがって、勾配の集中度Cは、全ての境界画素b(j)の勾配方向ベクトルg(j)の向きが対応する法線ベクトルn(j)の向きと真逆を向いている場合、すなわち、全ての境界画素b(j)の勾配方向ベクトルg(j)が完全に処理対象の暗部候補領域U(i)の方を向いている場合に最も大きい値となる。
【0072】
そして、勾配の集中度Cを算出したならば、図11のステップc9にリターンし、その後ステップc11に移行する。この勾配特徴量算出処理の結果、処理対象の暗部候補領域U(i)の勾配特徴量として、この処理対象の暗部候補領域U(i)の周囲における勾配の集中度Cが得られる。なお、本例では、暗部候補領域U(i)の境界画素b(j)について算出した法線ベクトルn(j)とこの境界画素b(j)の法線方向画素A(j)について算出した勾配方向ベクトルg(j)との内積を集中度Cとして算出することとしたが、算出手法はこれに限定されるものではない。すなわち、暗部候補領域U(i)の周囲における勾配の集中度が算出できれば他の算出手法で得た値であってもよい。
【0073】
そして、図11のステップc11では、勾配特徴判別部29bが、ステップc9の勾配特徴量算出処理の結果勾配特徴量として算出された勾配の集中度Cをもとに、処理対象の暗部候補領域U(i)が暗部領域であるか否かを判別する。具体的には、勾配特徴判別部29bは、勾配の集中度Cが予め設定される所定の閾値以上の場合に、処理対象の暗部候補領域U(i)を暗部領域と判別する。
【0074】
以上のように処理対象の暗部候補領域U(i)が暗部領域か否かの判別を終えたならば、インデックスiがMax_i未満か否かを判定する。そして、Max_i未満であれば(ステップc13:Yes)、インデックスiをインクリメントして更新し(ステップc15)、次の暗部候補領域U(i)についてステップc9〜ステップc13の処理を行う。一方、インデックスiがMax_i未満ではなく、全ての暗部候補領域を処理した場合には(ステップc13:No)、本処理を終える。
【0075】
以上説明したように、実施の形態2では、先ず第1の特徴量である色特徴量をもとに管腔内画像から暗部候補領域を抽出することとした。そして、抽出した暗部候補領域のそれぞれについて色特徴量とは異なる第2の特徴量として勾配特徴量を算出することとした。具体的には、暗部領域の周囲では画素値の変化が暗部領域の方へ傾く(暗部領域に向かって画素値が小さくなる)という暗部領域の特徴に基づき、勾配特徴量として勾配の集中度を算出することとした。そして、この勾配特徴量をもとに各暗部候補領域が暗部領域か否かを判別して暗部領域を抽出することとした。この実施の形態2によれば、黒色領域として抽出した暗部候補領域のうち、暗部領域と色が類似する凝固血等の領域といった暗部領域以外の領域を除外して暗部領域を抽出することができる。したがって、不要領域の一例である暗部領域を適正に判別し、暗部領域を精度良く抽出することができるという効果を奏する。
【0076】
以上のようにして暗部領域が抽出された管腔内画像に対しては、実施の形態1で説明したのと同様にして異常部領域を抽出する処理等が実施され、適宜表示部13に表示されて医師等のユーザに提示される。このとき、実施の形態2を適用することで抽出した暗部領域を除外して注目すべき領域を特定し、この注目すべき領域の中から異常部領域を抽出することができるので、高精度な異常部検出が実現できる。
【0077】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。図13は、実施の形態3の画像処理装置1cの機能構成を説明するブロック図である。なお、実施の形態1で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付する。実施の形態3の画像処理装置1cは、図13に示すように、画像取得部11と、入力部12と、表示部13と、記録部14cと、演算部15cと、画像処理装置1c全体の動作を制御する制御部19とを備える。この画像処理装置1cは、管腔内画像から不要領域として内容物領域を抽出する処理を行う。
【0078】
記録部14cには、管腔内画像から内容物領域を検出するための画像処理プログラム141cが記録される。
【0079】
また、演算部15cは、一次判別手段としての一次判別部16cと、二次判別手段としての二次判別部17cとを含む。一次判別部16cは、管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量である色特徴量をもとに、不要候補領域の一例である内容物候補領域を判別する。二次判別部17cは、色特徴量とは異なる第2の特徴量をもとに内容物候補領域が内容物領域か否かを判別する。この二次判別部17cは、飽和判別手段としての飽和判別部38cと、飽和領域判別手段としての飽和領域判別部39cとを備える。飽和判別部38cは、内容物候補領域に属する画素の画素値を用いて内容物候補領域が飽和領域であるのか非飽和領域であるのかを判別する。飽和領域判別部39cは、飽和領域と判別された内容物候補領域が内容物領域か否か判別する機能部であり、連続性判別手段としての連続性判別部391cと、判別結果取得手段としての判別結果取得部392cと、テクスチャ特徴量算出手段としてのテクスチャ特徴量算出部393cと、テクスチャ特徴判別手段としてのテクスチャ特徴判別部394cとを備える。連続性判別部391cは、隣接領域との連続性を第2の特徴量として用い、飽和領域と判別された内容物候補領域と隣接する領域との連続性を判別する。判別結果取得部392cは、連続性判別部391cによる判別結果を取得する。テクスチャ特徴量算出部393cは、第2の特徴量として飽和領域と判別された内容物候補領域のテクスチャ特徴量を算出する。テクスチャ特徴判別部394cは、テクスチャ特徴量をもとに不要領域か否かを判別する。
【0080】
図14は、実施の形態3の画像処理装置1cが行う処理手順を示す全体フローチャートである。ここで説明する処理は、演算部15cが記録部14cに格納された画像処理プログラム141cを実行することにより実現される。
【0081】
図14に示すように、先ず演算部15cは、処理対象の管腔内画像I(x,y)を取得する(ステップe1)。xおよびyは、管腔内画像における各画素位置の座標を示す。続いて、一次判別部16cは、ステップe1で取得した管腔内画像I(x,y)の色特徴量をもとに、管腔内画像I(x,y)内の内容物候補領域U(i)を抽出する(ステップe3)。ここで、内容物領域は、管腔内画像において黄色の領域として現れる。そこで、実施の形態3では、管腔内画像の色情報(R値,G値,B値)を色特徴量として用い、黄色領域に属する画素の識別を行う。そして、識別した黄色領域に属する画素について公知のラベリング処理を行うことで、内容物候補領域U(i)を抽出する。
【0082】
具体的な処理手順は先ず、管腔内画像I(x,y)を構成する画素毎にそのR値、G値、およびB値からG/R値およびB/G値を算出する。続いて、算出したG/R値およびB/G値をG/R−B/G特徴空間に写像する。そして、写像した特徴点の座標が予め設定される所定の範囲内である画素を黄色領域に属する画素として仮の画素値「0」を割り当てる。一方、写像した特徴点の座標が前述の所定範囲外である画素には、仮の画素値「1」を割り当てる。
【0083】
その後、このようにして管腔内画像I(x,y)の各画素に割り当てた仮の画素値をもとにラベリング処理を行い、内容物候補領域を抽出する。ラベリング処理は、実施の形態1と同様にして行い、仮の画素値が「0」である画素を連結成分毎に区切った画素群のそれぞれを内容物候補領域とする。このとき、一次判別部16cは、各内容物領域に各々を識別するためのインデックスiとして通し番号(1≦i≦Max_i)を割り振り、内容物候補領域U(i)とする。
【0084】
なお、本例では、各画素の色情報(R値,G値,B値)から求めたG/R値,B/G値を色特徴量として用い、内容物候補領域を抽出することとしたが、黄色領域を抽出できればよく、その手法は限定されるものではない。例えば、各画素のR値,G値,B値をHSI色空間に写像し、H値(色相の値)が予め設定される所定の範囲内に含まれるか否かを判定するようにしてもよい。そして、所定の範囲内に含まれる画素を黄色領域に属する画素として識別した後、同様にラベリング処理を行って暗部候補領域を抽出することとしてもよい。
【0085】
続いて、一次判別部16cは、管腔内画像I(x,y)の中に内容物候補領域が存在するか否かを判別する。そして、ステップe3の処理の結果内容物候補領域が抽出されなかった場合には、内容物候補領域が存在しないと判別し(ステップe5:No)、本処理を終える。ステップe3の処理の結果内容物候補領域が抽出された場合には内容物候補領域が存在すると判別し(ステップe5:Yes)、ステップe7に移行する。
【0086】
そして、ステップe7では、処理対象とする内容物候補領域のインデックスiを「1」に設定する。そして先ず、飽和判別部38cが、処理対象の内容物候補領域U(i)に属する画素のR値をもとに、この処理対象の内容物候補領域U(i)が飽和領域なのか非飽和領域なのかを判別する(ステップe9)。
【0087】
体内の管腔内を撮像した管腔内画像では、R,G,Bの各値を比較すると通常R値が最も大きい値となる。このため、調光変化等によって管腔内が明るくなった場合に、最初に飽和するのはR値である。すなわち、R値は、ある明るさ以上になるとその値が変化しなくなる。そして、このようにR値が飽和すると、R,G,Bの各値のバランスが崩れ、本来の色よりも黄色く映る傾向がある。このように黄色く映った黄色粘膜の領域は、内容物領域とは異なり、観察・診断時に注目すべき領域となり得る。そこで先ず、ステップe9では、処理対象の内容物候補領域U(i)についてR値が飽和した領域なのかR値が非飽和である領域なのかを判別する。
【0088】
具体的には、飽和判別部38cは、処理対象の内容物候補領域U(i)を構成する各画素のR値の平均値を算出し、算出したR値の平均値を予め設定される所定の閾値と比較することによってR値が飽和しているか否かを判定する。そして、R値が飽和している場合、すなわちR値の平均値が閾値以上の場合に、処理対象の内容物候補領域U(i)を飽和領域と判別し、R値が飽和していない場合、すなわちR値の平均値が閾値未満の場合に、処理対象の内容物候補領域U(i)を非飽和領域と判別する。
【0089】
なお、本例では、内容物候補領域U(i)のR値の平均値を用いて飽和領域であるのか非飽和領域であるのかを判別することとしたが、飽和性が判別できるのであればその手法は特に限定されない。
【0090】
そして、ステップe9の結果、処理対象の内容物候補領域U(i)が飽和領域ではなく、非飽和領域であると判別された場合には(ステップe11:No)、処理対象の内容物候補領域U(i)を内容物領域と判別し(ステップe13)、その後後述するステップe17に移行する。R値が飽和していないのであれば、調光変化等により明るくなった影響で黄色く映った領域ではないため、内容物領域と判別するのである。
【0091】
一方、ステップe9において処理対象の内容物候補領域U(i)を飽和領域と判別した場合には(ステップe11:Yes)、続いて飽和領域判別部39cが飽和領域判別処理を行い、飽和領域と判別された処理対象の内容物候補領域U(i)が内容物領域であるか否かを判別する(ステップe15)。
【0092】
図15は、飽和領域判別処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。図15に示すように、飽和領域判別処理では、飽和領域判別部39cは先ず、図5のステップb1と同様の処理を行って処理対象の内容物候補領域U(i)の境界画素b(j)を検出する(ステップf1)。そして、飽和領域判別部39cは、図5のステップb3と同様の処理を行い、境界画素b(j)毎に処理対象の内容物候補領域U(i)の境界に対する法線ベクトルn(j)を算出する(ステップf3)。
【0093】
続いて、連続性判別部391cが、第2の特徴量の1つである隣接領域との連続性を判別する。隣接領域との連続性とは、処理対象の内容物候補領域U(i)と、この処理対象の内容物候補領域U(i)と隣接する領域(処理対象の内容物候補領域U(i)とその境界を挟んで隣接する領域;以下、「隣接領域」と呼ぶ。)との連続性のことをいう。具体的には、連続性判別部391cは先ず、次式(17)〜(21)に従い、境界画素b(j)毎にエッジ強度E(j)を算出する(ステップf5)。ここで、式(17)〜(21)において、IG(x,y)は、管腔内画像I(x,y)内の座標(x1,y1)および(x2,y2)で表される画素位置の画素のG値を表す。なお、ここでは、G値を用いたが、飽和しているR値以外を用いればよく、B値を用いることとしてもよい。また、k3は、任意の定数である。また、x1、x2、y1、およびy2は全て整数とし、算出時に四捨五入を行うことで整数化することとする。
【数9】

【0094】
続いて、連続性判別部391cは、各境界画素b(j)のそれぞれについて算出したエッジ強度E(j)の中から最小の値E_minを選出する(ステップf7)。そして、連続性判別部391cは、選出したエッジ強度E(j)の最小値E_minを判定し、予め設定される所定の閾値以下の場合には(ステップf9:Yes)、処理対象の内容物候補領域U(i)と隣接領域との間に連続性があると判別してステップf11に移行する。一方、閾値より大きければ(ステップf9:No)、処理対象の内容物候補領域U(i)と隣接領域との間に連続性がないと判別してステップf13に移行する。
【0095】
なお、本例では、境界画素b(j)毎にエッジ強度E(j)を算出し、その最小値E_minをもとに隣接領域との連続性を判別することとしたが、処理対象の内容物候補領域U(i)と隣接領域との連続性を判別できるのであればその手法は特に限定されない。
【0096】
そして、エッジ強度E(j)の最小値E_minが所定の閾値以下の場合に移行するステップf11では、判別結果取得部392cが、隣接領域が内容物領域か否かの判別結果を取得することで処理対象の内容物候補領域U(i)が内容物領域か否かを判別し、その後図14のステップe15にリターンしてステップe17に移行する。すなわち、処理対象の内容物候補領域U(i)と隣接領域との間に連続性があれば、処理対象の内容物候補領域U(i)を隣接領域と同種の領域と判別する。本例では、図14のステップe3において一次判別部16cが黄色領域を内容物候補領域U(i)と判別し、それ以外の領域を内容物の領域ではないと判別している。したがって、処理対象の内容物候補領域U(i)の隣接領域は内容物以外の領域ではないと判別されており、ステップf11の処理ではこの判別結果が取得され、処理対象の内容物候補領域U(i)が内容物領域ではないと判別される。この場合には、処理対象の内容物候補領域U(i)を、調光変化等により明るくなった影響で周囲の領域よりも黄色く映った黄色粘膜等の領域と判別するのである。
【0097】
一方、エッジ強度E(j)の最小値E_minが所定の閾値より大きい場合に移行するステップf13では、テクスチャ特徴量算出部393cが、処理対象の内容物候補領域U(i)のテクスチャ特徴量を2つめの第2の特徴量として算出する。ここで、内容物領域と色が類似する黄色粘膜等の領域のうち、隣接領域との連続性がないと判別される場合としては、例えば小腸の内壁等のひだ状の部位が黄色く映った場合等が考えられる。このひだ状の部位は、規則性を有する模様として捉えることができる。これに対し、内容物領域は模様の規則性を有しない。そこで、このように内容物領域の模様には規則性がないのに対し、内容物領域と色が類似する黄色粘膜等の領域の中には、ひだ状の部位が黄色く映った場合等のように模様に規則性があるものが存在するという点に着目する。
【0098】
すなわち、ステップf13では、内容物候補領域が内容物領域であるか否かを判別するための基準として、上記したテクスチャ特徴量を算出する。テクスチャ特徴量とは、例えば領域内における画素値の繰り返しパターン、方向性、コントラスト等を数値化した値である。そして、このテクスチャ特徴量をもとに、互いに色が類似する黄色領域として現れる内容物領域と黄色粘膜等の領域とを識別する。
【0099】
具体的には、例えば同時生起行列を用いてエントロピーを算出し、テクスチャ特徴量とする(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,195p)。ここで、エントロピーは、領域内の画素値の乱雑さを示す値であるため、処理対象の内容物候補領域U(i)が内容物領域の場合には、算出されるエントロピーの値は高くなる。
【0100】
そして、テクスチャ特徴判別部394cが、ステップf13で算出したテクスチャ特徴量をもとに、処理対象の内容物候補領域U(i)が内容物領域であるか否かを判別する(ステップf15)。具体的には、テクスチャ特徴判別部394cは、テクスチャ特徴量が予め設定される所定の閾値以上の場合に、処理対象の内容物候補領域U(i)を内容物領域と判別する。その後、図14のステップe15にリターンし、その後ステップe17に移行する。
【0101】
なお、本例では、テクスチャ特徴量としてエントロピーを算出することとしたが、非飽和領域が内容物領域なのか内容物領域以外の領域なのかを判別できればその手法は特に限定されない。例えば、処理対象の内容物候補領域U(i)に属する画素値の分散を算出し、得られた値をもとに処理対象の内容物候補領域U(i)が内容物領域であるか否かを判別することとしてもよい。
【0102】
そして、ステップe17では、インデックスiがMax_i未満か否かを判定する。Max_i未満であれば(ステップe17:Yes)、インデックスiをインクリメントして更新し(ステップe19)、次の暗部候補領域U(i)についてステップe11〜ステップe17の処理を行う。一方、インデックスiがMax_i未満ではなく、全ての暗部候補領域を処理した場合には(ステップe17:No)、本処理を終える。
【0103】
以上説明したように、実施の形態3では、先ず第1の特徴量である色特徴量をもとに管腔内画像から内容物候補領域を抽出することとした。そして、抽出した内容物候補領域が飽和領域であるのか非飽和領域であるのかを判別し、飽和領域と判別した内容物候補領域について色特徴量とは異なる第2の特徴量を算出することとした。具体的には、1つ目の第2の特徴量として隣接領域との連続性を用い、飽和領域と判別された内容物候補領域について隣接領域との間の連続性を判別することとした。また、2つ目の第2の特徴量としてテクスチャ特徴量を算出することとした。そして、内容物候補領域が飽和領域なのか非飽和領域なのかの判別結果、あるいは隣接領域との連続性やテクスチャ特徴量といった第2の特徴量をもとに、内容物候補領域が内容物領域か否かを判別して内容物領域を抽出することとした。この実施の形態3によれば、黄色領域として抽出した内容物候補領域のうち、内容物領域と色が類似する黄色粘膜の領域といった内容物領域以外の領域を除外して内容物領域を抽出することができる。したがって、不要領域の一例である内容物領域を適正に判別し、内容物領域を精度良く抽出することができるという効果を奏する。
【0104】
以上のようにして内容物領域が抽出された管腔内画像に対しては、実施の形態1で説明したのと同様にして異常部領域を抽出する処理等が実施され、適宜表示部13に表示されて医師等のユーザに提示される。このとき、実施の形態3を適用することで抽出した内容物領域を除外して注目すべき領域を特定し、この注目すべき領域の中から異常部領域を抽出することができるので、高精度な異常部検出が実現できる。
【0105】
なお、上記した実施の形態3では、飽和領域と判別した内容物候補領域について先ず隣接領域との連続性を判別し、連続性があると判別した場合にその内容物候補領域を内容物領域ではないと判別することとした。一方、連続性がないと判別した内容物候補領域についてはテクスチャ特徴量を算出し、このテクスチャ特徴量をもとにその内容物候補領域が内容物領域か否かを判別することとした。これに対し、隣接領域との連続性のみを第2の特徴量として用い、内容物候補領域が内容物領域か否かを判別する構成としてもよい。また、テクスチャ特徴量のみを第2の特徴量として用い、内容物候補領域が内容物領域か否かを判別する構成としてもよい。あるいは、先にテクスチャ特徴量を用いた判別を行い、その後隣接領域との連続性を用いた判別を行う構成としてもよい。
【0106】
また、上記した実施の形態1の画像処理装置1、実施の形態2の画像処理装置1b、および実施の形態3の画像処理装置1cは、予め用意されたプログラムをパソコンやワークステーション等のコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。以下、各実施の形態1〜3で説明した画像処理装置1,1b,1cと同様の機能を有し、画像処理プログラム141,141b,141cを実行するコンピュータシステムについて説明する。
【0107】
図16は、本変形例におけるコンピューターシステム400の構成を示すシステム構成図であり、図17は、このコンピューターシステム400を構成する本体部410の構成を示すブロック図である。図16に示すように、コンピューターシステム400は、本体部410と、本体部410からの指示によって表示画面421に画像等の情報を表示するためのディスプレイ420と、このコンピューターシステム400に種々の情報を入力するためのキーボード430と、ディスプレイ420の表示画面421上の任意の位置を指定するためのマウス440とを備える。
【0108】
また、このコンピューターシステム400における本体部410は、図16および図17に示すように、CPU411と、RAM412と、ROM413と、ハードディスクドライブ(HDD)414と、CD−ROM460を受け入れるCD−ROMドライブ415と、USBメモリ470を着脱可能に接続するUSBポート416と、ディスプレイ420、キーボード430およびマウス440を接続するI/Oインターフェース417と、ローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワーク(LAN/WAN)N1に接続するためのLANインターフェース418とを備える。
【0109】
さらに、このコンピューターシステム400には、インターネット等の公衆回線N3に接続するためのモデム450が接続されるとともに、LANインターフェース418およびローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワークN1を介して、他のコンピューターシステムであるパソコン(PC)481、サーバ482、プリンタ483等が接続される。
【0110】
そして、このコンピューターシステム400は、所定の記録媒体に記録された画像処理プログラム(例えば実施の形態1の画像処理プログラム141や実施の形態2の画像処理プログラム141b、実施の形態3の画像処理プログラム141c)を読み出して実行することで画像処理装置(例えば実施の形態1の画像処理装置1や実施の形態2の画像処理装置1b、実施の形態3の画像処理装置1c)を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、CD−ROM460やUSBメモリ470の他、MOディスクやDVDディスク、フレキシブルディスク(FD)、光磁気ディスク、ICカード等を含む「可搬用の物理媒体」、コンピューターシステム400の内外に備えられるHDD414やRAM412、ROM413等の「固定用の物理媒体」、モデム450を介して接続される公衆回線N3や、他のコンピューターシステムであるPC481やサーバ482が接続されるローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワークN1等のように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを記憶する「通信媒体」等、コンピューターシステム400によって読み取り可能な画像処理プログラムを記録するあらゆる記録媒体を含む。
【0111】
すなわち、画像処理プログラムは、「可搬用の物理媒体」、「固定用の物理媒体」、「通信媒体」等の記録媒体にコンピューター読み取り可能に記録されるものであり、コンピューターシステム400は、このような記録媒体から画像処理プログラムを読み出して実行することで画像処理装置を実現する。なお、画像処理プログラムは、コンピューターシステム400によって実行されることに限定されるものではなく、他のコンピューターシステムであるPC481やサーバ482が画像処理プログラムを実行する場合や、これらが協働して画像処理プログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0112】
また、本発明は、上記した各実施の形態1〜3およびその変形例そのままに限定されるものではなく、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。例えば、各実施の形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成してもよい。あるいは、異なる実施の形態や変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明の画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムは、不要領域か否かを適正に判別し、管腔内画像から不要領域を精度良く抽出するのに適している。
【符号の説明】
【0114】
1,1b,1c 画像処理装置
11 画像取得部
12 入力部
13 表示部
14,14b,14c 記録部
141,141b,141c 画像処理プログラム
15,15b,15c 演算部
16,16b,16c 一次判別部
17,17b,17c 二次判別部
171 境界特徴量算出部
172 エッジ強度算出部
173 曲率算出部
18 境界特徴判別部
28b 勾配特徴量算出部
281b 勾配方向算出部
282b 集中度算出部
29b 勾配特徴判別部
38c 飽和判別部
39c 飽和領域判別部
391c 連続性判別部
392c 判別結果取得部
393c テクスチャ特徴量算出部
394c テクスチャ特徴判別部
19 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔内画像から不要領域を抽出する画像処理装置であって、
前記管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量をもとに、不要候補領域を判別する一次判別手段と、
前記不要候補領域の前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別する二次判別手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第2の特徴量は、前記不要候補領域の境界近傍における画素値の変化をもとに算出される値であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記二次判別手段は、
前記不要候補領域の境界の内側の領域と外側の領域とを含む領域の境界特徴量を前記第2の特徴量として算出する境界特徴量算出手段と、
前記境界特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別する境界特徴判別手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記境界特徴量算出手段は、前記不要候補領域の境界におけるエッジ強度を前記境界特徴量として算出するエッジ強度算出手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記エッジ強度算出手段は、前記不要候補領域の境界上の複数の部位で前記エッジ強度を算出することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記境界特徴量算出手段は、前記不要候補領域の境界の法線方向に沿った画素値の変化曲線の曲率を前記境界特徴量として算出する曲率算出手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記曲率算出手段は、前記不要候補領域の境界上の複数の部位で前記曲率を算出することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記二次判別手段は、
前記不要候補領域の周囲領域の勾配特徴量を前記第2の特徴量として算出する勾配特徴量算出手段と、
前記勾配特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別する勾配特徴判別手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記勾配特徴量算出手段は、
前記不要候補領域の周囲における勾配方向を算出する勾配方向算出手段と、
前記勾配方向がどの程度前記不要候補領域の方を向いているかを示す値である集中度を前記第2の特徴量として算出する集中度算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記二次判別手段は、
前記不要候補領域内の画素の画素値の大きさをもとに、前記不要候補領域が飽和領域なのか非飽和領域なのかを判別する飽和判別手段と、
前記飽和判別手段によって飽和領域と判別された前記不要候補領域について、前記第2の特徴量をもとに不要領域か否かを判別する飽和領域判別手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記飽和判別手段は、前記不要候補領域に属する画素の所定の色成分の値が所定の閾値以上の場合に前記不要候補領域を前記飽和領域と判別することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記飽和領域判別手段は、
前記飽和領域と判別された前記不要候補領域のテクスチャ特徴量を第2の特徴量として算出するテクスチャ特徴量算出手段と、
前記テクスチャ特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別するテクスチャ特徴判別手段と、
を備えることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記飽和領域判別手段は、
前記飽和領域と判別された前記不要候補領域について、該不要候補領域と隣接する領域との連続性を前記第2の特徴量として判別する連続性判別手段と、
前記連続性判別手段によって連続性があると判別された場合に、前記隣接する領域の判別結果を取得することで前記不要候補領域が不要領域か否かを判別する判別結果取得手段と、
を備えることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置
【請求項14】
前記飽和領域判別手段は、
前記連続性判別手段によって連続性がないと判別された場合に、前記飽和領域と判別された前記不要候補領域のテクスチャ特徴量を第2の特徴量として算出するテクスチャ特徴量算出手段と、
前記テクスチャ特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別するテクスチャ特徴判別手段と、
を備え、ることを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
管腔内画像から不要領域を抽出する画像処理方法であって、
前記管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量をもとに、不要候補領域を判別する一次判別工程と、
前記不要候補領域の前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別する二次判別工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
管腔内画像から不要領域を抽出するための画像処理プログラムであって、コンピュータに、
前記管腔内画像の色情報に基づく第1の特徴量をもとに、不要候補領域を判別する一次判別ステップと、
前記不要候補領域の前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量をもとに、前記不要候補領域が不要領域か否かを判別する二次判別ステップと、
を実行させることを特徴とする画像信号処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−234931(P2011−234931A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109472(P2010−109472)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】