説明

画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラム

【課題】撮像手段の撮像範囲が変化した場合に、変化した際の状況に応じて適切な処理を行うことができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】PCは、テレビ会議端末が備えるカメラの撮像範囲の移動状態を示す移動情報を取得する(S3、S8)。取得した移動情報によって、カメラの撮像範囲が移動したか否かを判断する(S4,S5,S11)。PCは、撮像範囲が移動したと判断し、且つ移動が終了すると(S12:YES)、ユーザが故意にカメラを移動させたか否かを判断する(S14、S15)。故意に移動させていないと判断した場合(S15:NO)、PCは、他の拠点の通信装置に送信する画像データの撮像範囲である送信画像範囲を復元できるか否かを判断する。復元できる場合には、送信画像範囲を復元する。復元できない場合には、撮像画像のデータの代わりに修正中報知画像のデータを送信する(S16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔会議を実行するために他の拠点の通信装置に送信する画像データを処理する画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像手段の撮像範囲が変化した場合に、変化が生じる前の範囲に撮像範囲を復元させる技術が知られている。例えば、特許文献1が開示している画像処理システムは、ブロック毎に算出される動きベクトルを用いて撮像範囲の変化(位置ずれ)を検出する。撮像変化の変化を検出した場合に、元の正常なシーンを撮像する位置にカメラを復帰させることで、撮像範囲を復元させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−77708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの意図に反して撮像範囲が変化した場合でも、撮像範囲を必ず復元させることができるとは限らない。従来の技術では、撮像範囲を復元させることができるか否かに応じて適切な処理を行うことはできなかった。さらに、従来の技術では、ユーザが故意に撮像範囲を変化させた場合でも、撮像範囲を復元させる処理が行われてしまう場合があった。つまり、撮像範囲が変化した際の状況に応じて適切な処理を行うことができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、撮像手段の撮像範囲が変化した場合に、変化した際の状況に応じて適切な処理を行うことができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様に係る画像処理装置は、複数の拠点のユーザによる遠隔会議を実行するために、他の拠点に配置された通信装置に送信する画像データを処理する画像処理装置であって、画像を撮像する撮像手段が撮像した画像の画像データを取得する画像データ取得手段と、前記撮像手段の撮像範囲の移動状態を示す移動情報を取得する移動情報取得手段と、前記移動情報取得手段によって取得された移動情報によって、前記撮像手段の撮像範囲が移動したか否かを判断する移動判断手段と、前記移動判断手段によって撮像範囲が移動したと判断された場合に、前記移動情報取得手段によって取得された前記移動情報、および前記撮像手段に対する操作状態を示す操作状態情報の少なくともいずれかを用いて、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたか否かを判断する故意判断手段と、前記故意判断手段によって故意に移動させていないと判断された場合に、前記通信装置に送信する画像データの撮像範囲である送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元できるか否かを、前記画像データ取得手段によって取得された画像データを用いて判断する復元判断手段と、前記復元判断手段によって前記送信画像範囲を復元できると判断された場合に、前記送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元する復元手段と、前記復元判断手段によって前記送信画像範囲を復元できないと判断された場合に、表示装置に表示される画像を変更する処理、および前記通信装置に送信される画像データのフレームレートを変化させる処理の少なくともいずれかを行う処理手段とを備える。
【0007】
第一の態様に係る画像処理装置によると、撮像手段の撮像範囲の移動が事故によるものと判断され、且つ送信画像範囲を復元できると判断されると、送信画像範囲が移動前の撮像範囲に復元される。従って、ユーザの手間は減少する。また、画像処理装置は、送信画像範囲を復元できない場合、表示装置に表示される画像を変更する処理、および送信する画像データのフレームレートを変化させる処理の少なくともいずれかを行うことができる。その結果、撮像範囲が意図せず移動したことをユーザに通知したり、送信する必要の無い画像データが送信されることを防止したりすることができる。さらに、撮像手段の撮像範囲をユーザが故意に移動させたと判断された場合には、送信画像範囲の復元、および画像データの変更等の処理は行われない。従って、ユーザは、送信画像範囲を意図する通りに移動させることもできる。よって、画像処理装置は、撮像手段の撮像範囲が変化した際の状況に応じて適切な処理を行うことができる。
【0008】
前記故意判断手段は、前記移動情報取得手段によって取得された前記移動情報が示す垂直方向の移動量が第一閾値以上である場合、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたと判断してもよい。ユーザが撮像手段を持って故意に移動させる場合、撮像手段は垂直方向への移動を伴うことになる。従って、画像処理装置は、撮像範囲の垂直方向の移動量によって、撮像範囲の移動が故意によるものであるか否かを適切に判断することができる。
【0009】
前記故意判断手段は、前記移動情報取得手段によって取得された前記移動情報が示す垂直方向の移動量が前記第一閾値未満であり、水平方向の移動量が第二閾値未満であり、且つ前記移動情報が示す撮像範囲の移動時間が第三閾値未満である場合、ユーザは故意に撮像範囲を移動させていないと判断してもよい。撮像範囲の移動量が少なく、且つ移動時間が短い場合は、ユーザ等が不意に撮像手段に触れて撮像範囲が移動する場合が多い。従って、画像処理装置は、撮像範囲の移動量および移動時間によって、撮像範囲の移動が故意によるものであるか否かを適切に判断することができる。
【0010】
前記復元手段は、前記画像データ取得手段によって取得された画像データのうち、前記移動判断手段によって撮像範囲が移動したと判断される前後の各々の画像データにおいて同一の基準撮像物を特定する特定手段を備えてもよい。前記復元手段は、移動後の画像データにおいて前記特定手段によって特定される前記基準撮像物の撮像範囲中の位置が、移動前の画像データにおいて前記特定手段によって特定された前記基準撮像物の位置と一致するように、前記送信画像範囲を移動させて復元してもよい。この場合、画像処理装置は、容易且つ確実に送信画像範囲を復元することができる。なお、特定手段は基準撮像物を複数特定してもよい。
【0011】
前記故意判断手段は、前記送信画像範囲のうち発話者の位置を検出する検出手段を備えてもよい。前記故意判断手段は、前記移動判断手段によって移動が検出された後に前記検出手段によって検出された発話者の位置が、前記送信画像範囲の中心点を含む所定領域の領域内にある場合、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたと判断してもよい。撮像手段の撮像範囲が移動した場合、発話者の位置が送信画像範囲の中心点を含む所定領域内にあれば、他の拠点のユーザは発話者を視認することができる。この場合、画像処理装置は、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたと判断することで、円滑に遠隔会議を進行させることができる。
【0012】
前記故意判断手段は、前記撮像手段が操作されたことを前記操作状態情報が示す場合、ユーザは故意に撮像範囲を移動させていないと判断してもよい。ユーザは、撮像手段の操作と撮像範囲の移動とを共に意図的に行うことは少ない。従って、画像処理装置は、撮像手段が操作されている場合の移動を事故と判断することで、的確な判断を行うことができる。
【0013】
前記処理手段は、前記通信装置に送信する画像データを、前記撮像手段の撮像範囲が移動した旨を報知する画像を含む画像データに変更してもよい。この場合、ユーザは、撮像範囲が意図に反して移動したことを容易に把握することができ、早急に適切な対処を行うことができる。
【0014】
本発明の第二の態様に係る画像処理方法は、複数の拠点のユーザによる遠隔会議を実行するために、他の拠点に配置された通信装置に送信する画像データを処理する画像処理装置で行われる画像処理方法であって、画像を撮像する撮像手段が撮像した画像の画像データを取得する画像データ取得ステップと、前記撮像手段の撮像範囲の移動状態を示す移動情報を取得する移動情報取得ステップと、前記移動情報取得ステップにおいて取得された移動情報によって、前記撮像手段の撮像範囲が移動したか否かを判断する移動判断ステップと、前記移動判断ステップにおいて撮像範囲が移動したと判断された場合に、前記移動情報取得ステップにおいて取得された前記移動情報、および前記撮像手段に対する操作状態を示す操作状態情報の少なくともいずれかを用いて、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたか否かを判断する故意判断ステップと、前記故意判断ステップにおいて故意に移動させていないと判断された場合に、前記通信装置に送信する画像データの撮像範囲である送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元できるか否かを、前記画像データ取得ステップにおいて取得された画像データを用いて判断する復元判断ステップと、前記復元判断ステップにおいて前記送信画像範囲を復元できると判断された場合に、前記送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元する復元ステップと、前記復元判断ステップにおいて前記送信画像範囲を復元できないと判断された場合に、表示装置に表示される画像を変更する処理、および前記通信装置に送信される画像データのフレームレートを変化させる処理の少なくともいずれかを行う処理ステップとを備える。
【0015】
第二の態様に係る画像処理方法によると、撮像手段の撮像範囲の移動が事故によるものと判断され、且つ送信画像範囲を復元できると判断されると、送信画像範囲が移動前の撮像範囲に復元される。従って、ユーザの手間は減少する。また、画像処理装置は、送信画像範囲を復元できない場合、表示装置に表示される画像を変更する処理、および送信する画像データのフレームレートを変化させる処理の少なくともいずれかを行うことができる。その結果、撮像範囲が意図せず移動したことをユーザに通知したり、送信する必要の無い画像データが送信されることを防止したりすることができる。さらに、撮像手段の撮像範囲をユーザが故意に移動させたと判断された場合には、送信画像範囲の復元、および画像データの変更等の処理は行われない。従って、ユーザは、送信画像範囲を意図する通りに移動させることもできる。よって、画像処理装置は、撮像手段の撮像範囲が変化した際の状況に応じて適切な処理を行うことができる。
【0016】
本発明の第三の態様に係る画像処理プログラムは、複数の拠点のユーザによる遠隔会議を実行するために、他の拠点に配置された通信装置に送信する画像データを処理する画像処理装置で用いられる画像処理プログラムであって、画像を撮像する撮像手段が撮像した画像の画像データを取得する画像データ取得ステップと、前記撮像手段の撮像範囲の移動状態を示す移動情報を取得する移動情報取得ステップと、前記移動情報取得ステップにおいて取得された移動情報によって、前記撮像手段の撮像範囲が移動したか否かを判断する移動判断ステップと、前記移動判断ステップにおいて撮像範囲が移動したと判断された場合に、前記移動情報取得ステップにおいて取得された前記移動情報、および前記撮像手段に対する操作状態を示す操作状態情報の少なくともいずれかを用いて、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたか否かを判断する故意判断ステップと、前記故意判断ステップにおいて故意に移動させていないと判断された場合に、前記通信装置に送信する画像データの撮像範囲である送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元できるか否かを、前記画像データ取得ステップにおいて取得された画像データを用いて判断する復元判断ステップと、前記復元判断ステップにおいて前記送信画像範囲を復元できると判断された場合に、前記送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元する復元ステップと、前記復元判断ステップにおいて前記送信画像範囲を復元できないと判断された場合に、表示装置に表示される画像を変更する処理、および前記通信装置に送信される画像データのフレームレートを変化させる処理の少なくともいずれかを行う処理ステップとを前記画像処理装置のコントローラに実行させるための指示を含む。
【0017】
第三の態様に係る画像処理プログラムによると、撮像手段の撮像範囲の移動が事故によるものと判断され、且つ送信画像範囲を復元できると判断されると、送信画像範囲が移動前の撮像範囲に復元される。従って、ユーザの手間は減少する。また、画像処理装置は、送信画像範囲を復元できない場合、表示装置に表示される画像を変更する処理、および送信する画像データのフレームレートを変化させる処理の少なくともいずれかを行うことができる。その結果、撮像範囲が意図せず移動したことをユーザに通知したり、送信する必要の無い画像データが送信されることを防止したりすることができる。さらに、撮像手段の撮像範囲をユーザが故意に移動させたと判断された場合には、送信画像範囲の復元、および画像データの変更等の処理は行われない。従って、ユーザは、送信画像範囲を意図する通りに移動させることもできる。よって、画像処理装置は、撮像手段の撮像範囲が変化した際の状況に応じて適切な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】PC1およびテレビ会議端末3の構成図である。
【図2】PC1およびテレビ会議端末3の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】取得画像範囲50および送信画像範囲55を説明するための説明図である。
【図4】PC1が実行する画像処理のフローチャートである。
【図5】画像処理中に実行される故意判断処理のフローチャートである。
【図6】撮像範囲の移動後における送信画像範囲55の中心領域65に発話者が位置している場合の処理を説明するための説明図である。
【図7】画像処理中に実行される事故対応処理のフローチャートである。
【図8】送信画像範囲55を移動前の撮像範囲に復元する処理を説明するための説明図である。
【図9】送信画像範囲55を復元できない場合の処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の画像処理装置を具現化した一実施の形態であるパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)1について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0020】
図1を参照して、PC1およびテレビ会議端末3の概略構成について説明する。PC1は、データ通信、画像表示等の各種情報処理を行う一般的なPCである。図1に示すPC1はノート型のPCであり、表示装置26および操作部27等を備えるが、表示装置、操作部等のデバイスを備えないデスクトップ型のPCを用いてもよいことは言うまでもない。PC1は、例えばUSBケーブル、赤外線通信等によってテレビ会議端末3に接続する。
【0021】
テレビ会議端末3は、上端に回転軸を備える。ユーザは、回転軸を中心として筐体の一部を回転させることで、筐体の姿勢を使用時の姿勢と非使用時の姿勢に切り替えることができる。テレビ会議端末3は、マイク45、スピーカ46、カメラ47、および操作部48を備える。ユーザが筐体の姿勢を使用時の姿勢に切り替えると、マイク45、スピーカ46、カメラ47、および操作部48の全てがテレビ会議端末3の前方を向く。テレビ会議端末3は、設置された拠点の音声をマイク45から入力し、且つ画像をカメラ47から入力する。入力した音声および画像のデータをPC1に送信する。また、テレビ会議端末3は、PC1から受信した音声のデータに基づいて、スピーカ46から音声を発生させる。操作部48には、電源ボタン、音量調節ボタン、マイクミュートボタン等が設けられている。
【0022】
ユーザは、PC1およびテレビ会議端末3を用いることで、画像を用いた遠隔会議(テレビ会議)を実行することができる。詳細には、PC1は、テレビ会議端末3から入力した自拠点の音声および画像のデータを、他拠点に配置されたPC等の通信装置に、インターネット等のネットワーク8(図2参照)を介して送信する。同時に、PC1は、他拠点に配置された通信装置から、他拠点の音声および画像のデータを受信する。PC1は、受信した画像のデータに基づいて、他拠点の画像を表示装置26に表示させる。さらに、PC1は、受信した音声のデータに基づいて、接続しているテレビ会議端末3のスピーカ46に他拠点の音声を発生させる。その結果、複数の拠点の音声および画像が共有され、全てのユーザが同一の拠点にいない場合でも円滑に会議が進行する。
【0023】
なお、PC1およびテレビ会議端末3の構成は変更できる。例えば、マイク、スピーカ、および表示装置を備えるPCに小型のカメラを接続することで、テレビ会議端末3を使用せずにテレビ会議を実行してもよい。カメラが内蔵されたPCを用いてもよい。PC1の代わりに、通信機能および画像処理機能を備えるテレビ会議専用の装置を用いてもよい。テレビ会議を実行するためには、通信システムを構成するPC1の数は2つ以上であればよい。また、本発明は、P2P(peer to peer)型の通信システム、およびサーバ型の通信システムのいずれにも適用できる。P2P型の通信システムでは、複数のPC1間でデータが直接送受信される。サーバ型の通信システムでは、システム内の通信を制御するサーバ(図示せず)を介してデータが送受信される。
【0024】
図2を参照して、PC1およびテレビ会議端末3の電気的構成について説明する。PC1は、PC1の制御を司るCPU10を備える。CPU10には、ROM11、RAM12、ハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)13、および入出力インターフェース14が、バス19を介して接続されている。
【0025】
ROM11は、PC1を動作させるためのプログラムおよび初期値等を記憶している。RAM12は、制御プログラムで使用される各種の情報を一時的に記憶する。HDD13は不揮発性の記憶装置である。HDD13は、後述する画像処理を実行させるための画像処理プログラム等を記憶する。HDD13に代わりに、EEPROMまたはメモリカード等の記憶装置を用いてもよい。入出力インターフェース14には、映像出力処理部21、外部通信I/F22、USB I/F23、および操作部27が接続されている。映像出力処理部21は、映像を表示する表示装置26の動作を処理する。外部通信I/F22は、PC1をネットワーク8に接続する。USB I/F23は、USBケーブルを介してPC1をテレビ会議端末3に接続する。
【0026】
テレビ会議端末3は、テレビ会議端末3の制御を司るCPU30を備える。CPU30には、ROM31、RAM32、フラッシュメモリ33、および入出力インターフェース34が、バス39を介して接続されている。
【0027】
ROM31は、テレビ会議端末3を動作させるためのプログラムおよび初期値等を記憶している。RAM32は各種情報を一時的に記憶する。フラッシュメモリ33は不揮発性の記憶装置である。入出力インターフェース34には、USB I/F41、音声入力処理部42、音声出力処理部43、映像入力処理部44、および操作部48が接続されている。USB I/F41は、テレビ会議端末3をPC1に接続する。音声入力処理部42は、マイク45からの音声データの入力を処理する。音声出力処理部43はスピーカ46の動作を処理する。映像入力処理部44は、カメラ47からの画像データの入力を処理する。
【0028】
図3を参照して、取得画像範囲50および送信画像範囲55について説明する。取得画像範囲50とは、PC1が自拠点のテレビ会議端末3から取得した画像データの撮像範囲である。つまり、テレビ会議端末3のカメラ47が撮像した画像の撮像範囲が取得画像範囲50となる。送信画像範囲55とは、PC1が他拠点の通信装置に送信する画像データの撮像範囲である。PC1は、取得画像範囲50の範囲内であれば、送信画像範囲55を自由に設定することができる。従って、PC1は、テレビ会議端末3の位置および姿勢を変更することなく、他拠点の表示装置に表示させる画像の範囲を変更することができ、画像の拡大および縮小を行うこともできる。
【0029】
図3に示す例では、ホワイトボード61、参加者62、および参加者63等が取得画像範囲50内に含まれている。送信画像範囲55は、取得画像範囲50内の中心を含む一定領域に設定されており、ホワイトボード61、参加者62、および参加者63は取得画像範囲50にも含まれている。PC1は、送信画像範囲55を他拠点で表示させるための画像データを、他拠点の通信装置に送信する。その結果、他拠点の表示装置では送信画像範囲55が表示される。
【0030】
本実施の形態では、カメラ47の撮像範囲(つまり、取得画像範囲50)が移動したか否かを判断するための基準点56が設定される。PC1は、取得画像範囲50内の背景画像に含まれる特定の撮像物に基準点56を設定すればよく、基準点56を設定する撮像物は1つでも複数でもよい。例えば、PC1は、テレビ会議の開始前に、参加者を含まない背景のみをあらかじめ撮像することで、背景画像を取得しておく。PC1は、背景画像中の撮像物に基準点56を設定し、取得画像範囲50中の基準点56の位置を監視することで、カメラ47の撮像範囲が移動したか否かを的確に判断することができる。また、PC1は、参加者が移動して基準点56が隠れた場合、および、カメラ47が移動して基準点56が取得画像範囲50の範囲外となった場合に備え、複数の基準点を設定することができる。複数の基準点56を設定することで、一部の基準点56が隠れた場合でも取得画像範囲50が移動したか否かを判断することができる。さらに、PC1は、基準点56を再設定することもできる。よって、参加者およびカメラ47が移動した場合でも、取得画像範囲50の移動量をより的確に判断することができる。図3に示す例では、PC1は、テレビ会議端末3から取得した画像データに対して画像処理を行い、取得画像範囲50内の撮像物のうち矩形の撮像物の角を特定して、特定した角を基準点56に設定している。その結果、図3に示す例では、ホワイトボード61の4つの角に基準点56が設定されている。なお、詳細は後述するが、PC1は、取得画像範囲50内の基準点56の位置を、カメラ47の撮像範囲の移動状態を示す移動情報として取得する。取得した基準点56の位置に基づいて、カメラ47の撮像範囲である取得画像範囲50が移動したか否かを判断し、移動した場合には移動量の算出を行う。なお、PC1は、ユーザによる操作部27の操作に応じて基準点56を設定してもよい。
【0031】
図4から図9を参照して、本実施の形態のPC1が実行する画像処理について説明する。PC1のHDD13には、テレビ会議を実行するためのアプリケーションとして画像処理プログラムがインストールされている。PC1のCPU10は、アプリケーションを立ち上げる指示を操作部27から入力し、他の拠点の通信装置との間でテレビ会議を開始すると、図4に示す画像処理を実行する。
【0032】
図4に示すように、画像処理を開始したCPU10は、カメラ47が撮像した画像の画像データをテレビ会議端末3から取得する。取得した画像データに対して画像処理を行うことで特徴点を特定する。CPU10は、特定した特徴点を基準点56に設定する(S1)。前述したように、本実施の形態のPC1は、基準点56を複数設定することで、一部の基準点56が隠れた場合でも撮像範囲の移動を判断することができる。次いで、CPU10は、カメラ47が撮像した最新の画像の画像データをテレビ会議端末3から取得する(S2)。CPU10は、取得画像範囲50中の基準点56の座標を算出する(S3)。
【0033】
CPU10は、基準点56を1つも検出できなかった場合には(S4:YES)、カメラ47の撮像範囲である取得画像範囲50が移動したと判断する(S5)。次いで、S1の処理と同様に、複数の基準点56を再設定する(S6)。PC1は、移動中の乱れた画像が他の拠点で表示されることを防止するために、他の拠点の通信装置に対する撮像画像データの送信を停止する(S7)。PC1は、取得画像範囲50が移動している時間である移動時間を加算し(S8)、処理はS9の判断へ移行する。テレビ会議を終了する指示が操作部27に入力されていなければ(S9:NO)、処理はS2へ戻る。
【0034】
CPU10は、少なくとも1つの基準点56を検出できた場合には(S4:NO)、S3で算出された最新の基準点56の各々の座標と、前回のS3の処理で算出された基準点56の各々の座標との距離の平均値を、基準点56の位置の変化量として算出し、加算する(S10)。CPU10は、S10で算出された変化量に基づいて、取得画像範囲50が移動したか否かを判断する(S11)。S10で算出された変化量が一定の閾値以上である場合、CPU10は取得画像範囲50が移動したと判断し(S11:YES)、画像データの送信を停止して(S7)、移動時間を加算する(S8)。処理はS9の判断へ移行する。テレビ会議を終了する指示が操作部27に入力されていなければ(S9:NO)、処理はS2へ戻り、取得画像範囲50の移動が終了するまで移動量および移動時間が加算され続ける(S8およびS10)。
【0035】
S10で算出された変化量が閾値未満であれば、CPU10は取得画像範囲50が移動していないと判断し(S11:NO)、直前まで取得画像範囲50が移動していたか否かを判断する(S12)。前回行われたS4・S5、またはS11の判断で、取得画像範囲50が移動したと判断していた場合(S12:YES)、CPU10は基準点56を再設定し(S13)、故意判断処理を行う(S14)。故意判断処理では、ユーザが故意にカメラ47の撮像範囲を移動させたか否かが判断される。
【0036】
図5に示すように、故意判断処理を開始したCPU10は、移動時間内にテレビ会議端末3が操作されたか否かを判断する(S31)。本実施の形態では、CPU10は、テレビ会議端末3の操作部48のいずれかが移動時間内に操作されていた場合、および、テレビ会議端末3とPC1とを接続するUSBケーブルが着脱されていた場合に、テレビ会議端末3が操作されたと判断する。しかし、例えばテレビ会議端末3がメモリカードを装着できる場合には、メモリカードの着脱もテレビ会議端末3の操作と判断してもよい。ユーザは、テレビ会議端末3の操作と撮像範囲の移動とを意図的に同時に行うことは少ない。従って、移動時間内にテレビ会議端末3が操作されたと判断した場合(S31:YES)、CPU10は、取得画像範囲50が移動した原因を事故と判断し(S38)、処理は画像処理へ戻る。
【0037】
所定時間内にテレビ会議端末3が操作されていない場合(S31:NO)、CPU10は、加算された基準点56の位置の変化量から、取得画像範囲50の垂直方向の移動量を算出する。算出した垂直方向の移動量が閾値A以上であるか否かを判断する(S32)。ユーザがテレビ会議端末3を持って故意に移動させる場合、テレビ会議端末3は垂直方向への移動を伴うことになる。従って、CPU10は、垂直方向の移動量が閾値A以上であれば(S32:YES)、ユーザが故意にカメラ47の撮像範囲を移動させたと判断する(S39)。処理は画像処理へ戻る。
【0038】
取得画像範囲50の垂直方向の移動量が閾値A未満であれば(S32:NO)、CPU10は、基準点56の位置の変化量から、取得画像範囲50の水平方向の移動量を算出する。算出した水平方向の移動量が閾値B未満であるか否かを判断する(S33)。水平方向の移動量が閾値B未満であれば(S33:YES)、CPU10は、加算された移動時間が閾値C未満であるか否かを判断する(S34)。ユーザは、カメラ47の撮像範囲を微調整する場合には、長い時間を要して慎重にカメラ47の位置および方向を調整する。取得画像範囲50の移動量が少なく、且つ移動時間が短い場合は、ユーザ等が不意にテレビ会議端末3に触れて撮像範囲が移動する場合が多い。従って、CPU10は、水平方向の移動量が閾値B以上である場合(S33:NO)、または、移動時間が閾値C以上である場合には(S34:NO)、ユーザが故意にカメラ47の撮像範囲を移動させたと判断する(S39)。処理は画像処理へ戻る。なお、テレビ会議端末3が事故で大きく移動する場合(例えば、テレビ会議端末3が転倒する場合)もあるが、この場合はユーザが衝撃音等によって移動に気付く可能性が高いため、画像が乱れたままテレビ会議が進行する可能性は低い。
【0039】
水平方向の移動量が閾値B未満であり(S33:YES)、且つ移動時間が閾値C未満であれば(S34:YES)、CPU10は、テレビ会議端末3から取得した画像データに対して画像処理を行い、撮像された参加者の顔領域を検出する(S35)。顔領域の検出には種々の周知の方法を用いることができる。例えば、目、鼻、口等の部分を特徴点によって検出する方法を用いてもよいし、顔を判断するためにあらかじめ記憶された基データと比較する方法を用いてもよい。次いで、CPU10は、顔領域の検出結果と、テレビ会議端末3のマイク45が入力した音声から、発話者の位置を検出する(S36)。詳細には、CPU10は、マイク45から発話音声が入力されている場合に、検出した顔領域の口元が動いている参加者の位置を発話者の位置として検出する。CPU10は、検出した発話者の位置が送信画像範囲55内の中心領域内にあるか否かを判断する(S37)。
【0040】
図6は、図3に示す状態から移動した取得画像範囲50の一例を示す。中心領域65とは、送信画像範囲55の中心点を含む所定の領域であり、中心領域65の形状および大きさは適宜設定できる。図6に示す例では、取得画像範囲50は図3に示す位置から移動しているが、発話者として特定された参加者62が中心領域65内に位置している。その結果、他拠点の表示装置に表示される画像の中心には、発話を行っている参加者62が表示される。この場合、ユーザは、発話を行っている参加者62が画像の中心に位置するように、意図的にテレビ会議端末3を移動させた可能性がある。また、意図的にテレビ会議端末3を移動させていない場合でも、発話を行っている参加者62が画像の中心に表示されていれば、テレビ会議に進行に支障が出る可能性は低い。
【0041】
従って、CPU10は、検出した発話者の位置が中心領域65内にあると判断すると(S37:YES)、ユーザが故意にカメラ47の撮像範囲を移動させたと判断する(S39)。処理の詳細は後述するが、CPU10は、故意の撮像範囲の移動であると判断すると、送信画像範囲55の位置の復元等の処理は行わず、画像データの送信をそのまま継続する。その結果、図6に示すように、他拠点の表示装置で表示される画像の範囲である送信画像範囲55の中心には、発話を行っている参加者62が位置することになる。一方で、CPU10は、発話者の位置が中心領域65内にないと判断すると(S37:NO)、取得画像範囲50が移動した原因を事故と判断し(S38)、処理は画像処理へ戻る。
【0042】
図4の説明に戻る。故意判断処理(S14)が終了すると、CPU10は、故意判断処理における判断結果が「故意」であったか否かを判断する(S15)。ユーザが故意に撮像範囲を移動させたと判断していれば(S15:YES)、CPU10は、他の拠点の通信装置に対する撮像画像データの送信を再開し(S17)、処理はS9の判断へ移行する。撮像範囲の移動の原因が事故であると判断した場合には(S15:NO)、CPU10は事故対応処理を実行し(S16)、処理はS9の判断へ移行する。事故対応処理では、送信画像範囲55を復元する処理、および送信する画像データを他の画像データに変更する処理等が行われる。
【0043】
図7に示すように、CPU10は、事故対応処理を開始すると、最新の取得画像範囲50から、移動前に検出された全ての基準点56を探索する(S41)。取得画像範囲50内に全ての基準点56が存在した場合(S42:YES)、CPU10は、送信画像範囲55を移動前の範囲に復元できるか否かを判断する(S43)。
【0044】
図8および図9では、説明を簡略化するために、複数の基準点56のうち、ホワイトボード61の左上の角の基準点56のみを図示している。以下では、図8および図9に図示した基準点56のみを用いて説明を行う。図8に示す例では、探索された移動後の基準点56の送信画像範囲55中の位置が、移動前の基準点(復元前基準点58)が存在していた位置に一致するように、設定されていた送信画像範囲(復元前送信画像範囲57)を移動させて新たな送信画像範囲55を設定しても、新たな送信画像範囲55は取得画像範囲50内に収まる。つまり、図8に示す例では、移動前には基準点56が送信画像範囲55の左上部に存在していたため、送信画像範囲55を復元するには、復元後の送信画像範囲55でも基準点56の位置は自身の左上部に位置させる必要がある。従って、CPU10は、送信画像範囲55を復元前送信画像範囲57の位置から右下に移動させなければならない。図8に示す例では、取得画像範囲50の移動量が小さいため、送信画像範囲55は移動(復元)後も取得画像範囲50からはみ出すことはない。この場合、CPU10は、送信画像範囲55を復元できると判断する。
【0045】
一方、図9に示す例において、送信画像範囲55中の基準点56の位置が、復元前送信画像範囲57における復元前基準点58の位置となるように、送信画像範囲55を移動させたと仮定する。この場合、送信画像範囲55の右端部は取得画像範囲50の範囲外となる。従って、図9に示す例では、CPU10は送信画像範囲55を復元できないと判断する。
【0046】
図7の説明に戻る。CPU10は、送信画像範囲55を復元できると判断すると(S43:YES)、送信画像範囲55中の基準点56の各々の位置が、移動前に各々の基準点56が存在していた位置に一致するように、取得画像範囲50における送信画像範囲55の位置を移動させて(S44)、且つ送信画像範囲55を拡大または縮小してサイズを一致させる(S45)。処理は画像処理へ戻る。これにより、送信画像範囲55を復元する。図3の下の図と、図8の下の図とを比較するとわかるように、他の拠点の表示装置では、カメラ47の撮像範囲が移動する前と同じ画像が表示されることになる。ユーザは、カメラ47の位置を元に戻す必要はない。
【0047】
また、CPU10は、送信画像範囲55を復元できないと判断すると(S43:NO)、他の拠点の表示装置に対し、修正中報知画像68のデータの送信を開始する(S47)。修正中報知画像68とは、図9の下部に示すように、カメラ47の撮像範囲が移動した旨を他の拠点のユーザに報知するための画像である。本実施の形態では、「現在カメラ視野を修正しています」というメッセージを表示する画像が修正中報知画像68として用いられる。なお、他拠点のユーザは、撮像範囲が移動した旨を把握できることに加え、会議と関係のない無駄な画像を見ることがない。また、撮像範囲が移動すると、他の拠点のユーザに見られると不都合がある画像のデータ(例えば、機密資料のデータ)が表示される可能性がある。しかし、PC1は、修正中報知画像68のデータを自拠点の画像のデータの代わりに送信することで、セキュリティ性を向上することができる。
【0048】
さらに、CPU10は、自拠点の表示装置26への移動報知画像の表示を開始させる(S48)。移動報知画像とは、カメラ47の撮像範囲が移動した旨を自拠点のユーザに報知するための画像である。本実施の形態では、「端末が移動しました」というメッセージが、他拠点の画像と共に表示される。CPU10は、修正中報知画像68および移動報知画像を表示している時間(報知時間)の計測を開始し(S49)、処理は画像処理へ戻る。
【0049】
図4の説明に戻る。取得画像範囲50が移動しておらず(S11:NO)、且つ直前にも取得画像範囲50が移動していない場合には(S12:NO)、CPU10は、S8で加算される移動時間、およびS10で加算される変化量を初期化して「0」とする(S19)。CPU10は、撮像範囲が移動した旨の報知中であるか否かを判断する(S20)。報知時間を計測しておらず、報知中でないと判断した場合には(S20:NO)、処理はそのままS9の判断へ戻る。報知時間を計測しており、撮像範囲が移動した旨の報知中であると判断した場合(S20:YES)、CPU10は、報知時間が一定時間に達したか否かを判断する(S21)。一定時間に達していない場合(S21:NO)、処理はそのままS9の判断へ移行し、報知が継続される。報知時間が一定時間に達すると(S21:YES)、CPU10は、修正中報知画像68のデータの送信を終了する(S22)。CPU10は、自拠点の表示装置26における移動報知画像の表示を終了する(S23)。さらに、カメラ47の撮像画像のデータ送信を再開させる(S24)。次いで、報知時間が初期化されて(S25)、処理はS9の判断へ移行する。操作部27または他の拠点の通信装置からテレビ会議の終了指示を入力すると(S9:YES)、画像処理は終了する。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態に係るPC1によると、カメラ47の撮像範囲の移動が事故によるものと判断され、且つ送信画像範囲55を復元できると判断されると、送信画像範囲55が移動前の撮像範囲に復元される。従って、ユーザは自らカメラ47の撮像範囲を戻す必要がない。また、PC1は、送信画像範囲55を復元できない場合、撮像された画像のデータ送信を中止し(フレームレートを「0」とし)、代わりに修正中報知画像68のデータを送信することができる。その結果、撮像範囲が意図せず移動したことをユーザに通知することができ、且つ送信する必要の無い画像データが送信されて不都合が生じることを防止することができる。PC1は、撮像範囲をユーザが故意に移動させたと判断した場合には、送信画像範囲55の復元、および画像データの変更等の処理は行われない。従って、ユーザは、送信画像範囲55を意図する通りに移動させることもできる。よって、PC1は、カメラ47の撮像範囲が変化した際の状況に応じて適切な処理を行うことができる。特に、テレビ会議端末3のように、平面上に載置して用いる小型の撮像装置を用いる場合には、撮像範囲は不意に動き易い。しかし、本実施の形態のPC1によると、小型の撮像装置を用いて容易に円滑なテレビ会議を実現できる。
【0051】
ユーザがテレビ会議端末3を持って故意に移動させる場合、テレビ会議端末3は垂直方向への移動を伴うことになる。従って、PC1は、撮像範囲の垂直方向の移動量によって、撮像範囲の移動が故意によるものであるか否かを判断することができる。また、撮像範囲の移動量が少なく、且つ移動時間が短い場合は、ユーザ等が不意にテレビ会議端末3に触れて撮像範囲が移動する場合が多い。従って、PC1は、撮像範囲の移動量および移動時間によって、撮像範囲の移動が故意によるものであるか否かを適切に判断することができる。
【0052】
PC1は、送信画像範囲55における基準点56の位置が、撮像範囲の移動前後で一致するように、送信画像範囲55を移動させる。その結果、容易且つ確実に送信画像範囲55を復元することができる。また、カメラ47の撮像範囲が移動した場合、発話者の位置が送信画像範囲55の中心領域65内にあれば、他の拠点のユーザは発話者を視認することができる。この場合、PC1は、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたと判断することで、円滑に遠隔会議を進行させることができる。
【0053】
ユーザは、テレビ会議端末3の操作と移動とを意図的に同時に行うことは少ない。従って、PC1は、テレビ会議端末3が操作されている場合の移動を事故と判断することで、的確な判断を行うことができる。PC1は、カメラ47の撮像範囲が移動したか否かを、テレビ会議端末3から取得した画像データによって判断する。従って、PC1は、テレビ会議端末3が加速度センサ等を備えていない場合でも、テレビ会議に用いられる画像のデータを利用して的確な判断を行うことができる。
【0054】
上記実施の形態において、PC1が本発明の「画像処理装置」に相当する。テレビ会議端末3のカメラ47が本発明の「撮像手段」に相当する。図4のS2で画像データを取得するCPU10が「画像データ取得手段」として機能する。図4のS3、S8、S10で変化量および移動時間を取得するCPU10が「移動情報取得手段」として機能する。図4のS4,5,11で撮像範囲が移動したか否かを判断するCPU10が「移動判断手段」として機能する。図5に示す故意判断処理を行うCPU10が「故意判断手段」として機能する。図7のS43で送信画像範囲55を復元できるか否かを判断するCPU10が「復元判断手段」として機能する。図7のS44およびS45で送信画像範囲55を復元するCPU10が「復元手段」として機能する。図7のS47で修正中報知画像68のデータを送信するCPU10が「処理手段」として機能する。
【0055】
閾値Aが「第一閾値」、閾値Bが「第二閾値」、閾値Cが「第三閾値」に相当する。図4のS10および図7のS41で基準点56の位置を特定するCPU10が「特定手段」として機能する。基準点56が設定された撮像物(図3、図8、および図9の例ではホワイトボード61)が本発明の「基準撮像物」に相当する。図5のS36で発話者の位置を検出するCPU10が「検出手段」として機能する。中心領域65が「所定領域」に相当する。
【0056】
図4のS2で画像データを取得する処理が「画像データ取得ステップ」に相当する。図4のS3、S8、S10で変化量および移動時間を取得する処理が「移動情報取得ステップ」に相当する。図4のS4,5,11で撮像範囲が移動したか否かを判断する処理が「移動判断ステップ」に相当する。図5に示す故意判断処理が「故意判断ステップ」に相当する。図7のS43で送信画像範囲55を復元できるか否かを判断する処理が「復元判断ステップ」に相当する。図7のS44およびS45で送信画像範囲55を復元する処理が「復元ステップ」に相当する。図7のS47で修正中報知画像68のデータを送信する処理が「処理ステップ」に相当する。
【0057】
本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、様々な変形が可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態のPC1は、取得画像範囲50内の送信画像範囲55の位置および大きさを変更することで、他の拠点の通信装置に送信する画像データの撮像範囲を復元している。しかし、送信画像範囲55の復元方法はこれに限られない。例えば、テレビ会議端末3がモータ等によってカメラ47の向きを変更(パン・チルト)できる場合には、PC1は、カメラ47の向きを変更させる指示をテレビ会議端末3に送信することで、送信画像範囲55を復元してもよい。この場合、PC1は、図7のS43で送信画像範囲55を復元できるか否かを判断する際、カメラ47の向きを変更しながら、周囲に基準点56が存在するか否かを探索してもよい。その結果、PC1はより広い範囲で送信画像範囲55を復元することができる。
【0058】
上記実施の形態のPC1は、送信画像範囲55を復元できない場合、撮像画像のデータの送信を中止し(フレームレートを「0」とし)、代わりに修正中報知画像68のデータを他の拠点の通信装置に送信する。しかし、この処理は変更できる。例えば、PC1は、撮像画像のデータの送信を中止するのみでもよい。撮像画像のデータの送信を中止するだけで、機密情報が他の拠点のユーザに視認される可能性、および、会議に不要な画像データが送信される可能性を排除することができる。また、PC1は、送信する撮像画像のデータの解像度を下げることで、機密情報が漏れること等を防止してもよい。PC1は、フレームレートを低下させることで、不要な画像を視認することによるユーザの不快感を低下させてもよい。
【0059】
図5に示す故意判断処理の処理内容も変更できる。例えば、S31〜S34,S37の処理順を変更しても本発明は実現できる。また、S31〜S34,S37のいずれかの処理を省略してもよい。例えば、S31の処理、およびS35〜S37の処理を省略しても、本発明は実現できる。閾値A〜Cは適宜設定できることは言うまでもない。ユーザが閾値A〜Cを変更できてもよい。
【0060】
上記実施の形態のPC1は、テレビ会議端末3から取得した画像データを用いて、カメラ47の撮像範囲が移動したか否かを判断する。しかし、他の方法を用いて撮像範囲の移動を判断してもよい。例えば、加速度センサを備えたカメラを使用すれば、PC1は、カメラが移動したか否かを加速度センサの出力値によって判断することができる。PC1は、修正中報知画像および移動報知画像の代わりに、またはこれらの画像と共に、撮像範囲が移動した旨を報知する音声を出力させてもよい。また、PC1は、画像の色分布を用いて撮像範囲の移動を判断してもよい。例えば、PC1は、図4のS2で画像データを取得した後に、取得した画像データから色分布を算出する。今回算出した色分布と前回算出した色分布とを比較し、色分布の変化量が閾値以上である場合に撮像範囲が移動したと判断する。撮像範囲が移動したと判断した場合には、移動の前後の基準点56の位置を比較して撮像範囲の移動量を算出してもよい。また、上記実施の形態のPC1は、背景をあらかじめ撮像しておくことで背景画像を取得し、背景画像中の撮像物に基準点56を設定する。しかし、PC1は、背景画像をあらかじめ撮像せずに、複数のカメラが撮像した画像から背景部分を特定してもよい。以上のように、撮像範囲の移動を判断する方法、および移動量を算出する方法は、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0061】
1 PC
3 テレビ会議端末
26 表示装置
41 USB I/F
47 カメラ
48 操作部
50 取得画像範囲
55 送信画像範囲
56 基準点
65 中心領域
68 修正中報知画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の拠点のユーザによる遠隔会議を実行するために、他の拠点に配置された通信装置に送信する画像データを処理する画像処理装置であって、
画像を撮像する撮像手段が撮像した画像の画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記撮像手段の撮像範囲の移動状態を示す移動情報を取得する移動情報取得手段と、
前記移動情報取得手段によって取得された移動情報によって、前記撮像手段の撮像範囲が移動したか否かを判断する移動判断手段と、
前記移動判断手段によって撮像範囲が移動したと判断された場合に、前記移動情報取得手段によって取得された前記移動情報、および前記撮像手段に対する操作状態を示す操作状態情報の少なくともいずれかを用いて、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたか否かを判断する故意判断手段と、
前記故意判断手段によって故意に移動させていないと判断された場合に、前記通信装置に送信する画像データの撮像範囲である送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元できるか否かを、前記画像データ取得手段によって取得された画像データを用いて判断する復元判断手段と、
前記復元判断手段によって前記送信画像範囲を復元できると判断された場合に、前記送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元する復元手段と、
前記復元判断手段によって前記送信画像範囲を復元できないと判断された場合に、表示装置に表示される画像を変更する処理、および前記通信装置に送信される画像データのフレームレートを変化させる処理の少なくともいずれかを行う処理手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記故意判断手段は、前記移動情報取得手段によって取得された前記移動情報が示す垂直方向の移動量が第一閾値以上である場合、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたと判断することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記故意判断手段は、前記移動情報取得手段によって取得された前記移動情報が示す垂直方向の移動量が前記第一閾値未満であり、水平方向の移動量が第二閾値未満であり、且つ前記移動情報が示す撮像範囲の移動時間が第三閾値未満である場合、ユーザは故意に撮像範囲を移動させていないと判断することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記復元手段は、
前記画像データ取得手段によって取得された画像データのうち、前記移動判断手段によって撮像範囲が移動したと判断される前後の各々の画像データにおいて同一の基準撮像物を特定する特定手段を備え、
移動後の画像データにおいて前記特定手段によって特定される前記基準撮像物の撮像範囲中の位置が、移動前の画像データにおいて前記特定手段によって特定された前記基準撮像物の位置と一致するように、前記送信画像範囲を移動させて復元することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記故意判断手段は、
前記送信画像範囲のうち発話者の位置を検出する検出手段を備え、
前記移動判断手段によって移動が検出された後に前記検出手段によって検出された発話者の位置が、前記送信画像範囲の中心点を含む所定領域の領域内にある場合、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたと判断することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記故意判断手段は、前記撮像手段が操作されたことを前記操作状態情報が示す場合、ユーザは故意に撮像範囲を移動させていないと判断することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記処理手段は、前記通信装置に送信する画像データを、前記画像データ取得手段によって取得された画像データから、前記撮像手段の撮像範囲が移動した旨を報知する画像を含む画像データに変更することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
複数の拠点のユーザによる遠隔会議を実行するために、他の拠点に配置された通信装置に送信する画像データを処理する画像処理装置で行われる画像処理方法であって、
画像を撮像する撮像手段が撮像した画像の画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記撮像手段の撮像範囲の移動状態を示す移動情報を取得する移動情報取得ステップと、
前記移動情報取得ステップにおいて取得された移動情報によって、前記撮像手段の撮像範囲が移動したか否かを判断する移動判断ステップと、
前記移動判断ステップにおいて撮像範囲が移動したと判断された場合に、前記移動情報取得ステップにおいて取得された前記移動情報、および前記撮像手段に対する操作状態を示す操作状態情報の少なくともいずれかを用いて、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたか否かを判断する故意判断ステップと、
前記故意判断ステップにおいて故意に移動させていないと判断された場合に、前記通信装置に送信する画像データの撮像範囲である送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元できるか否かを、前記画像データ取得ステップにおいて取得された画像データを用いて判断する復元判断ステップと、
前記復元判断ステップにおいて前記送信画像範囲を復元できると判断された場合に、前記送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元する復元ステップと、
前記復元判断ステップにおいて前記送信画像範囲を復元できないと判断された場合に、表示装置に表示される画像を変更する処理、および前記通信装置に送信される画像データのフレームレートを変化させる処理の少なくともいずれかを行う処理ステップと
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
複数の拠点のユーザによる遠隔会議を実行するために、他の拠点に配置された通信装置に送信する画像データを処理する画像処理装置で用いられる画像処理プログラムであって、
画像を撮像する撮像手段が撮像した画像の画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記撮像手段の撮像範囲の移動状態を示す移動情報を取得する移動情報取得ステップと、
前記移動情報取得ステップにおいて取得された移動情報によって、前記撮像手段の撮像範囲が移動したか否かを判断する移動判断ステップと、
前記移動判断ステップにおいて撮像範囲が移動したと判断された場合に、前記移動情報取得ステップにおいて取得された前記移動情報、および前記撮像手段に対する操作状態を示す操作状態情報の少なくともいずれかを用いて、ユーザが故意に撮像範囲を移動させたか否かを判断する故意判断ステップと、
前記故意判断ステップにおいて故意に移動させていないと判断された場合に、前記通信装置に送信する画像データの撮像範囲である送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元できるか否かを、前記画像データ取得ステップにおいて取得された画像データを用いて判断する復元判断ステップと、
前記復元判断ステップにおいて前記送信画像範囲を復元できると判断された場合に、前記送信画像範囲を移動前の撮像範囲に復元する復元ステップと、
前記復元判断ステップにおいて前記送信画像範囲を復元できないと判断された場合に、表示装置に表示される画像を変更する処理、および前記通信装置に送信される画像データのフレームレートを変化させる処理の少なくともいずれかを行う処理ステップと
を前記画像処理装置のコントローラに実行させるための指示を含む画像処理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−175456(P2012−175456A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36259(P2011−36259)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】