画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
【課題】色変換処理に係るプロファイルを切り替える場合に、急激な色味の変化を抑制する。
【解決手段】現在のプロファイルと新たに設定されるプロファイルとの色差及び照明情報に基づいて、プロファイル切り替えの順応に要する順応時間を算出し、算出された順応時間において現在のプロファイルから設定されるプロファイルへ段階的に遷移していくプロファイルを適用することで、プロファイルの切り替え直後の急激な色味の変化を抑制できるようにする。
【解決手段】現在のプロファイルと新たに設定されるプロファイルとの色差及び照明情報に基づいて、プロファイル切り替えの順応に要する順応時間を算出し、算出された順応時間において現在のプロファイルから設定されるプロファイルへ段階的に遷移していくプロファイルを適用することで、プロファイルの切り替え直後の急激な色味の変化を抑制できるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関し、画像表示に係る色処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの好みや用途に応じて複数の表示モードを備えたディスプレイがある。例えば、観察する画像の種別に応じた表示モードや、見る人の観察環境に応じた表示モードなどを備えている。表示モードの切り替えは、一般的に予め設定されたプロファイルに基づいて色変換処理を切り替えることで実現されている。また、ディスプレイに接続された環境光センサーから照明の輝度情報や色温度を取得して、照明光の影響を考慮したプロファイルを自動的に生成して表示モードを切り替えるものがある。また、環境光に応じた輝度調整パラメータと、対象画素の輝度と、対象画素の周辺に位置する周辺画素の輝度とに基づいて対象画素の輝度を変換することで、環境光に応じた視覚処理を可能にする処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−312008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示モードの切り替え直後、すなわちプロファイルの切り替え直後においては、ディスプレイの色の見えが安定せず所望の色に見えないことがある。これは、切り替え前のプロファイルでの状態に観察者が順応しているためであり、新しいプロファイルでの状態に順応するまでに時間がかかることが要因である。また、順応に要する時間は、プロファイル間の色変化量や照明に応じて変化する。したがって、プロファイル間の色変化量や照明に応じて変化する順応時間を考慮してプロファイルの切り替えを行わなければ、急激な色味の変化を生じさせてしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、色変換処理に係るプロファイルを切り替える場合に、急激な色味の変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る画像処理装置は、照明情報を取得する照明情報取得手段と、色変換処理に係るプロファイルを設定するプロファイル設定手段と、前記照明情報取得手段により取得した前記照明情報と前記プロファイル設定手段により設定した前記プロファイルとに基づいて、順応時間を算出する順応時間算出手段と、前記順応時間算出手段により算出した前記順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に対する色変換処理を行うプロファイル適用手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
プロファイルの切り替えを行う場合に、プロファイルの切り替えに係る順応時間を算出し、算出された順応時間に基づいてプロファイルを段階的に適用することにより、プロファイルの切り替え直後の急激な色味の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置のシステム構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示す図である。
【図3】プロファイル設定UIの一例を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態での色差算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】順応白色点算出方法を説明するための図である。
【図7】第1の実施形態での順応時間算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】段階的プロファイルの作成方法を説明するための図である。
【図9】順応時間の時間応答の一例を示す図である。
【図10】第1の実施形態での色補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【図13】第2の実施形態での設定プロファイル作成処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】設定プロファイル作成方法を説明するための図である。
【図15】本実施形態に係る画像処理装置を実現可能なコンピュータ機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
<システム構成>
図1は、第1の実施形態に係る画像処理装置のシステム構成例を示すブロック図である。図1において、101は環境光センサー、102は操作ユーザインタフェース(UI)、104はCPU(Central Processing Unit)、105はメインメモリ、106は表示制御回路、107は表示パネルである。環境光センサー101、操作UI102、CPU104、メインメモリ105、及び表示制御回路106は、システムバス103を介して互いに通信可能に接続されている。
【0010】
図2は、第1の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。図2においては、画像処理装置の機能構成における要素的特徴を示している。
【0011】
照明情報取得部202は、環境光センサー101により構成され、照明に係る照明情報を取得する。照明情報取得部202により取得された照明情報は、システムバス103を経由してメインメモリ105に格納される。
【0012】
プロファイル設定部203は、操作UI102により構成され、ユーザの指示に基づきプロファイルデータベース204から任意のプロファイルを選択し、入力映像信号に対する色変換処理に係るプロファイルとして設定する。プロファイル設定部203により設定されたプロファイルは、メインメモリ105に格納される。プロファイルデータベース204には、予め作成された複数のプロファイルが格納されている。なお、操作UI102は、表示パネル107の画面上に図3に示すようなプロファイル設定UIを表示するようにしても良い。図3において、301はプロファイル設定(選択)UI、302はプロファイル設定(選択)UI301等を表示させるためのメニューボタン、303、304は選択切り替えボタン、305は設定(決定)ボタンである。
【0013】
順応時間算出部205は、CPU104とメインメモリ105とから構成され、照明情報取得部202により取得された照明情報及びプロファイル設定部203により設定されたプロファイルに基づいて、順応時間(色順応時間)を算出する。例えば、メインメモリ105に格納された照明情報とプロファイルとを用いて、CPU104が順応時間を算出する。
【0014】
段階的プロファイル適用部206は、CPU104、メインメモリ105、及び表示制御回路106から構成され、順応時間算出部205により算出された順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に色処理を施す。例えば、メインメモリ105に格納された現在のプロファイルから設定されたプロファイルへ段階的に変化するプロファイルをCPU104が算出し、算出した順応時間内に表示制御回路106が段階的に入力映像信号に対し適用するプロファイルを切り替える。例えば、段階的プロファイル適用部206は、現在のプロファイルから設定されたプロファイルに切り替える際、切り替え動作を開始してから順応時間後に設定されたプロファイルとなるように、プロファイルを時間の経過に応じて逐次変化させる。
【0015】
<システム全体の処理>
次に、第1の実施形態に係る画像処理装置の動作について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【0016】
ステップS401にて、照明情報取得部202が、環境光センサー101により照明情報を取得する。前記照明情報は、表示パネル107周辺の照明照度、ならびに色度情報u’、v’で構成される。色度情報u’、v’は、CIE(国際照明委員会)で規定されたXYZ刺激値から算出されるu’v’平面の値である。なお、環境光センサー101により取得できる照明情報は、リアルタイムに取得できるものが望ましいが、ユーザの指示に応じて、又は起動時等に取得するものでも構わない。
【0017】
ステップS402にて、プロファイル設定部203が、プロファイルデータベース204に格納されている複数のプロファイルの内から、操作UI102からユーザが指示したプロファイルを取得する。
【0018】
次に、ステップS403にて、順応時間算出部205が、現在のプロファイル(以下、「現プロファイル」とも称す。)と、ステップS402において取得されたプロファイル(以下、「設定プロファイル」とも称す。)との色差を算出する。図5は、プロファイル間の色差を算出する色差算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0019】
ステップS501にて、順応時間算出部205は、現プロファイルにおける白色情報を取得する。現プロファイルにおける白色情報は、表示パネル107に表示された白信号の輝度ならびに色度情報u’、v’で構成される。現プロファイルにおける白色情報は、プロファイルに予め記述されている情報を用いても良いし、白信号を表示して環境光センサーより取得しても良い。
【0020】
次に、ステップS502にて、順応時間算出部205は、現プロファイルにおける順応白色点を算出する。
以下、順応白色点の算出方法について図6を用いて説明する。図6に示すデバイス白色点601、照明白色点602、完全白色点603の輝度ならびに色度情報は、これまでの処理によって取得されているものとする。例えば、デバイス白色点601は現プロファイルの白色情報、照明白色点602は環境光センサー101により取得した照明情報、完全白色点603は予めメインメモリ105に格納されている白色情報を利用することで取得される。なお、完全白色点は、例えば、等エネルギー白色(三刺激値XYZ値が等しい白色)であっても良く、実際にユーザが完全に白色として認識する白色であれば、その値を限定するものではない。
【0021】
順応白色点の算出においては、まず、デバイス白色点601及び照明白色点602から黒体放射軌跡604にそれぞれ垂線を下ろして色温度を算出する。次に、算出されたデバイス白色点601及び照明白色点602の色温度や完全白色点603の色温度等を用い、例えば、次式により順応白色点が算出される。
【0022】
【数1】
【0023】
図5に戻り、ステップS503にて、順応時間算出部205は、設定プロファイルにおける白色情報を取得する。設定プロファイルにおける白色情報は、白信号の輝度ならびに色度情報u’、v’で構成される。設定プロファイルにおける白色情報は、プロファイルに予め記述されている情報を用いる。
次に、ステップS504にて、順応時間算出部205は、ステップS502と同様にして、設定プロファイルにおける順応白色点を算出する。
【0024】
次に、ステップS505にて、順応時間算出部205は、ステップS502において算出した現プロファイルにおける順応白色点と、ステップS504において算出した設定プロファイルにおける順応白色点との色差を算出する。なお、色差は、順応白色点の色度情報における色度間の距離であっても良いし、CIEで規定するCIELab色空間に変換した色差を利用しても良い。ここでは、単純に色度情報u’v’平面における距離とする。
以上のようにして、現プロファイルと設定プロファイルとの色差を算出する色差算出処理が行われる。
【0025】
図4に戻り、次に、ステップS404にて、順応時間算出部205が、ステップS403において算出した色差とステップS401において取得された照明情報とに基づき、プロファイル切り替えの順応に要する順応時間を算出する。図7は、順応時間算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0026】
ステップS701にて、順応時間算出部205は、ステップS403において算出したプロファイル間の色差から重み係数k1を算出する。重み係数k1は、色差が大きいほど順応に要する時間が大きくなるように設定する。
【0027】
また、ステップS702にて、順応時間算出部205は、設定プロファイルにおける白色情報から重み係数k2を算出する。重み係数k2は、プロファイルの白色の輝度が高いほど順応に要する時間が大きくなるように設定する。
【0028】
また、ステップS703にて、順応時間算出部205は、照明情報及び黒体放射軌跡からの距離から重み係数k3を算出する。黒体放射軌跡から外れるほど人間の目は不完全順応になりやすく順応までに時間がかかるため、重み係数k3は、黒体放射軌跡からの距離が大きいほど順応に要する時間が大きくなるように設定する。
【0029】
次に、ステップS704にて、順応時間算出部205は、ステップS701、S702、S703においてそれぞれ算出した重み係数k1、k2、k3を用いて、順応時間を算出する。予め設定した輝度を持つ基準白色点から色度を1動かすときに要する順応時間をT1、予め設定した色温度を持つ基準白色点から色度を1動かすときに要する順応時間をT2とすると、順応時間Tは、例えば、次式を用いて算出される。
T=k1*k2*T1+k3*T2
以上のようにして順応時間算出処理が行われる。
【0030】
図4に戻り、次に、ステップS405にて、段階的プロファイル適用部206が、プロファイルの切り替えを行う際に、ステップS404において算出された順応時間内に適用する段階的プロファイルを作成する。段階的プロファイルの作成方法について図8を用いて説明する。ステップS502において算出した現プロファイルにおける部分順応白色点をWp1、ステップS504において算出した設定プロファイルにおける部分順応白色点をWp2とする。このとき、段階的プロファイルにおける部分順応白色点Wp3は、例えば次式を用いて算出される。
Wp3=(1−k4)*Wp1+k4*Wp2
ここで、k4は段階的プロファイルにおける係数であり、例えば図9に一例を示した順応時間の時間応答のような時間応答特性を持つ。すなわち、順応時間内において係数k4の値は0から1に到達するように段階的に変化され、これにより現プロファイルから設定プロファイルへ段階的に変化するプロファイルが作成される。
【0031】
次に、ステップS406にて、段階的プロファイル適用部206が、ステップS404において算出された順応時間内に、ステップS405において作成された段階的プロファイルを随時適用して色補正(色変換処理)を実施する。図10は、色補正処理の一例を示すフローチャートである。
【0032】
ステップS901にて、段階的プロファイル適用部206は、入力映像信号の1フレームにおける注目画素のRGB値を取得する。
【0033】
次に、ステップS902にて、段階的プロファイル適用部206は、ステップS901において取得したRGB値を、入力プロファイルを用いてXYZ値に変換する。入力プロファイルは、例えば、sRGB変換式を用いて変換するものとする。
次に、ステップS903にて、段階的プロファイル適用部206は、ステップS902において変換して得られたXYZ値を、入力プロファイルに記述された白色データを用いて人間の視覚特性を考慮した知覚色空間での値に変換する。例えば、知覚色空間の値として、CIEで規定するCIECAM02変換モデルを用いて、XYZ値を基にJCh値を算出するものとする。
【0034】
次に、ステップS904にて、段階的プロファイル適用部206は、ステップS903において変換して得られたJCh値を、ステップS405において得られた段階的プロファイルに記述された順応白色点を用いてXYZ値に変換する。
次に、ステップS905にて、段階的プロファイル適用部206は、ステップS904において変換して得られたXYZ値を、ステップS405において作成された段階的プロファイルを用いてデバイスRGB値に変換する。
【0035】
続いて、ステップS906にて、段階的プロファイル適用部206は、入力映像信号の1フレームにおけるすべての画素について前記色変換処理が実行されたか否かを判断する。判断の結果、1フレームのすべての画素について色変換処理が終了していれば色補正処理を終了し、終了していなければステップS907に進む。
【0036】
ステップS907にて、段階的プロファイル適用部206は、注目画素を移動し、すなわち異なる画素を注目画素として選択し、ステップS901へ戻る。なお、注目画素の移動は、例えば、画面左上の画素から右下方向へ1画素ずつ順次移動するものとする。
以上のようにして色補正処理が行われ、ステップS405において作成された段階的プロファイルを随時適用して入力映像信号に処理を施し出力映像信号として出力される。
【0037】
第1の実施形態によれば、現プロファイルから設定プロファイルへ切り替える場合に、現プロファイルと設定プロファイルとの色差、及び照明情報に基づいて順応時間を算出する。そして、算出された順応時間において現プロファイルから設定プロファイルへ段階的に遷移していくプロファイルを作成し、作成したプロファイルを適用することで、プロファイルの切り替え直後の急激な色味の変化を抑制することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
なお、第2の実施形態に係る画像処理装置のシステム構成は、図1に示した第1の実施形態に係る画像処理装置と同様であるので、その説明は省略する。
図11は、第2の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。図11においては、画像処理装置の機能構成における要素的特徴を示している。
【0039】
照明情報取得部1102は、図2に示した照明情報取得部202と同様に構成され、照明に係る照明情報を取得する。
照明情報変化検出部1103は、CPU104とメインメモリ105とから構成され、照明情報の変化を検出する。例えば、メインメモリ105に格納された照明情報の差分をCPU104が算出し、差分がある一定の閾値を超えた場合に変化を検出する。
【0040】
設定プロファイル作成部1104は、CPU104とメインメモリ105とから構成され、照明情報の変化量に基づき設定するプロファイルを作成する。例えば、照明情報の差分がある一定の閾値を超えることで照明情報の変化が検出された場合に、新しく設定プロファイルを作成してメインメモリ105に格納する。
【0041】
順応時間算出部1105は、CPU104とメインメモリ105とから構成され、照明情報取得部1102により取得された照明情報及び設定プロファイル作成部1104により作成されたプロファイルに基づいて、順応時間(色順応時間)を算出する。例えば、メインメモリ105に格納された照明情報とプロファイルとを用いて、CPU104が順応時間を算出する。
【0042】
段階的プロファイル適用部1106は、図2に示した段階的プロファイル適用部206と同様に構成され、順応時間算出部1105により算出された順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に色処理を施す。
【0043】
<システム全体の処理>
次に、第2の実施形態に係る画像処理装置の動作について説明する。
図12は、第2の実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS1201にて、照明情報取得部1102が、照明情報を取得する。このステップS1201での処理は、図4におけるステップS401での処理と同様である。
次に、ステップS1202にて、照明情報変化検出部1103が、ステップS1201において取得された照明情報と現プロファイルの作成時の照明情報との変化量を算出する。照明情報の変化量は、照明照度ならびに色度情報に関する差分であるとする。
【0045】
次に、ステップS1203にて、照明情報変化検出部1103が、ステップS1202において算出した照明情報の変化量が予め定められた閾値よりも大きいか否かを判断する。判断の結果、照明情報の変化量が閾値よりも大きい場合にはステップS1204に進み、照明情報の変化量が閾値以下である場合にはステップS1201に進む。なお、閾値は予めメインメモリに格納してあっても良いし、ユーザが設定しても良い。
【0046】
続いて、ステップS1204にて、設定プロファイル作成部1104が、ステップS1201において取得された照明情報とステップS1202において算出された照明情報の変化量とに基づき、設定プロファイルを作成する。図13は、設定プロファイル作成処理の一例を示すフローチャートである。
【0047】
ステップS1301にて、設定プロファイル作成部1104は、現プロファイルの作成時の照明情報から照明白色点を取得する。次に、ステップS1302にて、設定プロファイル作成部1104は、ステップS1301において取得した照明白色点と現プロファイルの白色点から照明変更前の順応白色点を算出する。なお、順応白色点の算出方法は、第1の実施形態と同様である。
【0048】
また、ステップS1303にて、設定プロファイル作成部1104は、ステップS1201において取得された照明情報から照明白色点を取得する。次に、ステップS1304にて、設定プロファイル作成部1104は、ステップS1303において取得した照明白色点と現プロファイルの白色点から照明変更後の順応白色点を算出する。なお、順応白色点の算出方法は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
次に、ステップS1305にて、設定プロファイル作成部1104は、ステップS1302において算出した照明変更前の順応白色点とステップS1304において算出した照明変更後の順応白色点から設定プロファイルを作成する。設定プロファイルは、順応白色点がステップS1302において算出した順応白色点に近づくように作成する。
【0050】
設定プロファイルの作成方法について図14を用いて説明する。図14に示す現プロファイルの白色点1401、現プロファイルの作成時の照明白色点1402、変更後の照明白色点1405は、これまでの処理によって取得されているものとする。設定プロファイル作成部1104は、前述した順応白色点の算出方法により、現プロファイルの作成時の順応白色点1404、変更後の順応白色点1406を算出する。その後、設定プロファイル作成部1104は、設定プロファイルの白色点と変更後の照明白色点1405と完全白色点1403とから算出される順応白色点が、現プロファイルの作成時の順応白色点1404と等しくなるように設定プロファイルの白色点を算出する。このようにして設定プロファイルが作成される。
【0051】
図12に戻り、次に、ステップS1205にて、順応時間算出部1105が、現プロファイルとステップS1204において作成された設定プロファイルとの色差を算出する。このステップS1205での色差算出処理は、図4におけるステップS403での色差算出処理と同様である。
【0052】
次に、ステップS1206にて、順応時間算出部1105が、ステップS1205において算出した色差とステップS1201において取得された照明情報とに基づき、プロファイル切り替えの順応に要する順応時間を算出する。このステップS1206での順応時間算出処理は、図4におけるステップS404での順応時間算出処理と同様である。
【0053】
次に、ステップS1207にて、段階的プロファイル適用部1106が、プロファイルの切り替えを行う際に、ステップS1206において算出された順応時間内に適用する段階的プロファイルを作成する。このステップS1207での処理は、図4におけるステップS405での処理と同様である。
【0054】
次に、ステップS1208にて、段階的プロファイル適用部1106が、ステップS1206において算出された順応時間内に、ステップS1207において作成された段階的プロファイルを随時適用して色補正(色変換処理)を実施する。このステップS1208での色補正処理は、図4におけるステップS406での色補正処理と同様である。
【0055】
第2の実施形態によれば、プロファイルを切り替える場合に、プロファイル間の色差及び照明情報に基づいて順応時間を算出し、順応時間において現プロファイルから設定プロファイルへ段階的に遷移していくプロファイルを作成し入力映像信号に対して適用する。これにより、プロファイルの切り替え直後の急激な色味の変化を抑制することができる。
【0056】
なお、前述した第1及び第2の実施形態において、色度情報はu’v’平面の値としているが、これに限定されるものではない。例えば、色度情報は、xy平面の値又はuv平面の値であっても良いし、あるいはXYZ刺激値そのものであっても良い。
【0057】
(本発明の他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0058】
例えば、第1及び第2の実施形態に示した画像処理装置は、図15に示すようなコンピュータ機能800を有し、そのCPU801により第1及び第2の実施形態での動作が実施される。
コンピュータ機能800は、図15に示すように、CPU801と、ROM802と、RAM803とを備える。また、操作部(CONS)809のコントローラ(CONSC)805と、CRTやLCD等の表示部としてのディスプレイ(DISP)810のディスプレイコントローラ(DISPC)806とを備える。さらに、ハードディスク(HD)811、及びフレキシブルディスク等の記憶デバイス(STD)812のコントローラ(DCONT)807と、ネットワークインタフェースカード(NIC)808とを備える。それら機能部801、802、803、805、806、807、808は、システムバス804を介して互いに通信可能に接続された構成としている。
CPU801は、ROM802又はHD811に記憶されたソフトウェア、又はSTD812より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス804に接続された各構成部を総括的に制御する。すなわち、CPU801は、前述したような動作を行うための処理プログラムを、ROM802、HD811、又はSTD812から読み出して実行することで、第1及び第2の実施形態での動作を実現するための制御を行う。RAM803は、CPU801の主メモリ又はワークエリア等として機能する。
CONSC805は、CONS809からの指示入力を制御する。DISPC806は、DISP810の表示を制御する。DCONT807は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、ユーザファイル、ネットワーク管理プログラム、及び第1及び第2の実施形態における前記処理プログラム等を記憶するHD811及びSTD812とのアクセスを制御する。NIC808はネットワーク813上の他の装置と双方向にデータをやりとりする。
【0059】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
202…照明情報取得部、203…プロファイル設定部、205…順応時間算出部、206…段階的プロファイル適用部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関し、画像表示に係る色処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの好みや用途に応じて複数の表示モードを備えたディスプレイがある。例えば、観察する画像の種別に応じた表示モードや、見る人の観察環境に応じた表示モードなどを備えている。表示モードの切り替えは、一般的に予め設定されたプロファイルに基づいて色変換処理を切り替えることで実現されている。また、ディスプレイに接続された環境光センサーから照明の輝度情報や色温度を取得して、照明光の影響を考慮したプロファイルを自動的に生成して表示モードを切り替えるものがある。また、環境光に応じた輝度調整パラメータと、対象画素の輝度と、対象画素の周辺に位置する周辺画素の輝度とに基づいて対象画素の輝度を変換することで、環境光に応じた視覚処理を可能にする処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−312008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示モードの切り替え直後、すなわちプロファイルの切り替え直後においては、ディスプレイの色の見えが安定せず所望の色に見えないことがある。これは、切り替え前のプロファイルでの状態に観察者が順応しているためであり、新しいプロファイルでの状態に順応するまでに時間がかかることが要因である。また、順応に要する時間は、プロファイル間の色変化量や照明に応じて変化する。したがって、プロファイル間の色変化量や照明に応じて変化する順応時間を考慮してプロファイルの切り替えを行わなければ、急激な色味の変化を生じさせてしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、色変換処理に係るプロファイルを切り替える場合に、急激な色味の変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る画像処理装置は、照明情報を取得する照明情報取得手段と、色変換処理に係るプロファイルを設定するプロファイル設定手段と、前記照明情報取得手段により取得した前記照明情報と前記プロファイル設定手段により設定した前記プロファイルとに基づいて、順応時間を算出する順応時間算出手段と、前記順応時間算出手段により算出した前記順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に対する色変換処理を行うプロファイル適用手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
プロファイルの切り替えを行う場合に、プロファイルの切り替えに係る順応時間を算出し、算出された順応時間に基づいてプロファイルを段階的に適用することにより、プロファイルの切り替え直後の急激な色味の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置のシステム構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示す図である。
【図3】プロファイル設定UIの一例を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態での色差算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】順応白色点算出方法を説明するための図である。
【図7】第1の実施形態での順応時間算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】段階的プロファイルの作成方法を説明するための図である。
【図9】順応時間の時間応答の一例を示す図である。
【図10】第1の実施形態での色補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【図13】第2の実施形態での設定プロファイル作成処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】設定プロファイル作成方法を説明するための図である。
【図15】本実施形態に係る画像処理装置を実現可能なコンピュータ機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
<システム構成>
図1は、第1の実施形態に係る画像処理装置のシステム構成例を示すブロック図である。図1において、101は環境光センサー、102は操作ユーザインタフェース(UI)、104はCPU(Central Processing Unit)、105はメインメモリ、106は表示制御回路、107は表示パネルである。環境光センサー101、操作UI102、CPU104、メインメモリ105、及び表示制御回路106は、システムバス103を介して互いに通信可能に接続されている。
【0010】
図2は、第1の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。図2においては、画像処理装置の機能構成における要素的特徴を示している。
【0011】
照明情報取得部202は、環境光センサー101により構成され、照明に係る照明情報を取得する。照明情報取得部202により取得された照明情報は、システムバス103を経由してメインメモリ105に格納される。
【0012】
プロファイル設定部203は、操作UI102により構成され、ユーザの指示に基づきプロファイルデータベース204から任意のプロファイルを選択し、入力映像信号に対する色変換処理に係るプロファイルとして設定する。プロファイル設定部203により設定されたプロファイルは、メインメモリ105に格納される。プロファイルデータベース204には、予め作成された複数のプロファイルが格納されている。なお、操作UI102は、表示パネル107の画面上に図3に示すようなプロファイル設定UIを表示するようにしても良い。図3において、301はプロファイル設定(選択)UI、302はプロファイル設定(選択)UI301等を表示させるためのメニューボタン、303、304は選択切り替えボタン、305は設定(決定)ボタンである。
【0013】
順応時間算出部205は、CPU104とメインメモリ105とから構成され、照明情報取得部202により取得された照明情報及びプロファイル設定部203により設定されたプロファイルに基づいて、順応時間(色順応時間)を算出する。例えば、メインメモリ105に格納された照明情報とプロファイルとを用いて、CPU104が順応時間を算出する。
【0014】
段階的プロファイル適用部206は、CPU104、メインメモリ105、及び表示制御回路106から構成され、順応時間算出部205により算出された順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に色処理を施す。例えば、メインメモリ105に格納された現在のプロファイルから設定されたプロファイルへ段階的に変化するプロファイルをCPU104が算出し、算出した順応時間内に表示制御回路106が段階的に入力映像信号に対し適用するプロファイルを切り替える。例えば、段階的プロファイル適用部206は、現在のプロファイルから設定されたプロファイルに切り替える際、切り替え動作を開始してから順応時間後に設定されたプロファイルとなるように、プロファイルを時間の経過に応じて逐次変化させる。
【0015】
<システム全体の処理>
次に、第1の実施形態に係る画像処理装置の動作について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【0016】
ステップS401にて、照明情報取得部202が、環境光センサー101により照明情報を取得する。前記照明情報は、表示パネル107周辺の照明照度、ならびに色度情報u’、v’で構成される。色度情報u’、v’は、CIE(国際照明委員会)で規定されたXYZ刺激値から算出されるu’v’平面の値である。なお、環境光センサー101により取得できる照明情報は、リアルタイムに取得できるものが望ましいが、ユーザの指示に応じて、又は起動時等に取得するものでも構わない。
【0017】
ステップS402にて、プロファイル設定部203が、プロファイルデータベース204に格納されている複数のプロファイルの内から、操作UI102からユーザが指示したプロファイルを取得する。
【0018】
次に、ステップS403にて、順応時間算出部205が、現在のプロファイル(以下、「現プロファイル」とも称す。)と、ステップS402において取得されたプロファイル(以下、「設定プロファイル」とも称す。)との色差を算出する。図5は、プロファイル間の色差を算出する色差算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0019】
ステップS501にて、順応時間算出部205は、現プロファイルにおける白色情報を取得する。現プロファイルにおける白色情報は、表示パネル107に表示された白信号の輝度ならびに色度情報u’、v’で構成される。現プロファイルにおける白色情報は、プロファイルに予め記述されている情報を用いても良いし、白信号を表示して環境光センサーより取得しても良い。
【0020】
次に、ステップS502にて、順応時間算出部205は、現プロファイルにおける順応白色点を算出する。
以下、順応白色点の算出方法について図6を用いて説明する。図6に示すデバイス白色点601、照明白色点602、完全白色点603の輝度ならびに色度情報は、これまでの処理によって取得されているものとする。例えば、デバイス白色点601は現プロファイルの白色情報、照明白色点602は環境光センサー101により取得した照明情報、完全白色点603は予めメインメモリ105に格納されている白色情報を利用することで取得される。なお、完全白色点は、例えば、等エネルギー白色(三刺激値XYZ値が等しい白色)であっても良く、実際にユーザが完全に白色として認識する白色であれば、その値を限定するものではない。
【0021】
順応白色点の算出においては、まず、デバイス白色点601及び照明白色点602から黒体放射軌跡604にそれぞれ垂線を下ろして色温度を算出する。次に、算出されたデバイス白色点601及び照明白色点602の色温度や完全白色点603の色温度等を用い、例えば、次式により順応白色点が算出される。
【0022】
【数1】
【0023】
図5に戻り、ステップS503にて、順応時間算出部205は、設定プロファイルにおける白色情報を取得する。設定プロファイルにおける白色情報は、白信号の輝度ならびに色度情報u’、v’で構成される。設定プロファイルにおける白色情報は、プロファイルに予め記述されている情報を用いる。
次に、ステップS504にて、順応時間算出部205は、ステップS502と同様にして、設定プロファイルにおける順応白色点を算出する。
【0024】
次に、ステップS505にて、順応時間算出部205は、ステップS502において算出した現プロファイルにおける順応白色点と、ステップS504において算出した設定プロファイルにおける順応白色点との色差を算出する。なお、色差は、順応白色点の色度情報における色度間の距離であっても良いし、CIEで規定するCIELab色空間に変換した色差を利用しても良い。ここでは、単純に色度情報u’v’平面における距離とする。
以上のようにして、現プロファイルと設定プロファイルとの色差を算出する色差算出処理が行われる。
【0025】
図4に戻り、次に、ステップS404にて、順応時間算出部205が、ステップS403において算出した色差とステップS401において取得された照明情報とに基づき、プロファイル切り替えの順応に要する順応時間を算出する。図7は、順応時間算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0026】
ステップS701にて、順応時間算出部205は、ステップS403において算出したプロファイル間の色差から重み係数k1を算出する。重み係数k1は、色差が大きいほど順応に要する時間が大きくなるように設定する。
【0027】
また、ステップS702にて、順応時間算出部205は、設定プロファイルにおける白色情報から重み係数k2を算出する。重み係数k2は、プロファイルの白色の輝度が高いほど順応に要する時間が大きくなるように設定する。
【0028】
また、ステップS703にて、順応時間算出部205は、照明情報及び黒体放射軌跡からの距離から重み係数k3を算出する。黒体放射軌跡から外れるほど人間の目は不完全順応になりやすく順応までに時間がかかるため、重み係数k3は、黒体放射軌跡からの距離が大きいほど順応に要する時間が大きくなるように設定する。
【0029】
次に、ステップS704にて、順応時間算出部205は、ステップS701、S702、S703においてそれぞれ算出した重み係数k1、k2、k3を用いて、順応時間を算出する。予め設定した輝度を持つ基準白色点から色度を1動かすときに要する順応時間をT1、予め設定した色温度を持つ基準白色点から色度を1動かすときに要する順応時間をT2とすると、順応時間Tは、例えば、次式を用いて算出される。
T=k1*k2*T1+k3*T2
以上のようにして順応時間算出処理が行われる。
【0030】
図4に戻り、次に、ステップS405にて、段階的プロファイル適用部206が、プロファイルの切り替えを行う際に、ステップS404において算出された順応時間内に適用する段階的プロファイルを作成する。段階的プロファイルの作成方法について図8を用いて説明する。ステップS502において算出した現プロファイルにおける部分順応白色点をWp1、ステップS504において算出した設定プロファイルにおける部分順応白色点をWp2とする。このとき、段階的プロファイルにおける部分順応白色点Wp3は、例えば次式を用いて算出される。
Wp3=(1−k4)*Wp1+k4*Wp2
ここで、k4は段階的プロファイルにおける係数であり、例えば図9に一例を示した順応時間の時間応答のような時間応答特性を持つ。すなわち、順応時間内において係数k4の値は0から1に到達するように段階的に変化され、これにより現プロファイルから設定プロファイルへ段階的に変化するプロファイルが作成される。
【0031】
次に、ステップS406にて、段階的プロファイル適用部206が、ステップS404において算出された順応時間内に、ステップS405において作成された段階的プロファイルを随時適用して色補正(色変換処理)を実施する。図10は、色補正処理の一例を示すフローチャートである。
【0032】
ステップS901にて、段階的プロファイル適用部206は、入力映像信号の1フレームにおける注目画素のRGB値を取得する。
【0033】
次に、ステップS902にて、段階的プロファイル適用部206は、ステップS901において取得したRGB値を、入力プロファイルを用いてXYZ値に変換する。入力プロファイルは、例えば、sRGB変換式を用いて変換するものとする。
次に、ステップS903にて、段階的プロファイル適用部206は、ステップS902において変換して得られたXYZ値を、入力プロファイルに記述された白色データを用いて人間の視覚特性を考慮した知覚色空間での値に変換する。例えば、知覚色空間の値として、CIEで規定するCIECAM02変換モデルを用いて、XYZ値を基にJCh値を算出するものとする。
【0034】
次に、ステップS904にて、段階的プロファイル適用部206は、ステップS903において変換して得られたJCh値を、ステップS405において得られた段階的プロファイルに記述された順応白色点を用いてXYZ値に変換する。
次に、ステップS905にて、段階的プロファイル適用部206は、ステップS904において変換して得られたXYZ値を、ステップS405において作成された段階的プロファイルを用いてデバイスRGB値に変換する。
【0035】
続いて、ステップS906にて、段階的プロファイル適用部206は、入力映像信号の1フレームにおけるすべての画素について前記色変換処理が実行されたか否かを判断する。判断の結果、1フレームのすべての画素について色変換処理が終了していれば色補正処理を終了し、終了していなければステップS907に進む。
【0036】
ステップS907にて、段階的プロファイル適用部206は、注目画素を移動し、すなわち異なる画素を注目画素として選択し、ステップS901へ戻る。なお、注目画素の移動は、例えば、画面左上の画素から右下方向へ1画素ずつ順次移動するものとする。
以上のようにして色補正処理が行われ、ステップS405において作成された段階的プロファイルを随時適用して入力映像信号に処理を施し出力映像信号として出力される。
【0037】
第1の実施形態によれば、現プロファイルから設定プロファイルへ切り替える場合に、現プロファイルと設定プロファイルとの色差、及び照明情報に基づいて順応時間を算出する。そして、算出された順応時間において現プロファイルから設定プロファイルへ段階的に遷移していくプロファイルを作成し、作成したプロファイルを適用することで、プロファイルの切り替え直後の急激な色味の変化を抑制することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
なお、第2の実施形態に係る画像処理装置のシステム構成は、図1に示した第1の実施形態に係る画像処理装置と同様であるので、その説明は省略する。
図11は、第2の実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。図11においては、画像処理装置の機能構成における要素的特徴を示している。
【0039】
照明情報取得部1102は、図2に示した照明情報取得部202と同様に構成され、照明に係る照明情報を取得する。
照明情報変化検出部1103は、CPU104とメインメモリ105とから構成され、照明情報の変化を検出する。例えば、メインメモリ105に格納された照明情報の差分をCPU104が算出し、差分がある一定の閾値を超えた場合に変化を検出する。
【0040】
設定プロファイル作成部1104は、CPU104とメインメモリ105とから構成され、照明情報の変化量に基づき設定するプロファイルを作成する。例えば、照明情報の差分がある一定の閾値を超えることで照明情報の変化が検出された場合に、新しく設定プロファイルを作成してメインメモリ105に格納する。
【0041】
順応時間算出部1105は、CPU104とメインメモリ105とから構成され、照明情報取得部1102により取得された照明情報及び設定プロファイル作成部1104により作成されたプロファイルに基づいて、順応時間(色順応時間)を算出する。例えば、メインメモリ105に格納された照明情報とプロファイルとを用いて、CPU104が順応時間を算出する。
【0042】
段階的プロファイル適用部1106は、図2に示した段階的プロファイル適用部206と同様に構成され、順応時間算出部1105により算出された順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に色処理を施す。
【0043】
<システム全体の処理>
次に、第2の実施形態に係る画像処理装置の動作について説明する。
図12は、第2の実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS1201にて、照明情報取得部1102が、照明情報を取得する。このステップS1201での処理は、図4におけるステップS401での処理と同様である。
次に、ステップS1202にて、照明情報変化検出部1103が、ステップS1201において取得された照明情報と現プロファイルの作成時の照明情報との変化量を算出する。照明情報の変化量は、照明照度ならびに色度情報に関する差分であるとする。
【0045】
次に、ステップS1203にて、照明情報変化検出部1103が、ステップS1202において算出した照明情報の変化量が予め定められた閾値よりも大きいか否かを判断する。判断の結果、照明情報の変化量が閾値よりも大きい場合にはステップS1204に進み、照明情報の変化量が閾値以下である場合にはステップS1201に進む。なお、閾値は予めメインメモリに格納してあっても良いし、ユーザが設定しても良い。
【0046】
続いて、ステップS1204にて、設定プロファイル作成部1104が、ステップS1201において取得された照明情報とステップS1202において算出された照明情報の変化量とに基づき、設定プロファイルを作成する。図13は、設定プロファイル作成処理の一例を示すフローチャートである。
【0047】
ステップS1301にて、設定プロファイル作成部1104は、現プロファイルの作成時の照明情報から照明白色点を取得する。次に、ステップS1302にて、設定プロファイル作成部1104は、ステップS1301において取得した照明白色点と現プロファイルの白色点から照明変更前の順応白色点を算出する。なお、順応白色点の算出方法は、第1の実施形態と同様である。
【0048】
また、ステップS1303にて、設定プロファイル作成部1104は、ステップS1201において取得された照明情報から照明白色点を取得する。次に、ステップS1304にて、設定プロファイル作成部1104は、ステップS1303において取得した照明白色点と現プロファイルの白色点から照明変更後の順応白色点を算出する。なお、順応白色点の算出方法は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
次に、ステップS1305にて、設定プロファイル作成部1104は、ステップS1302において算出した照明変更前の順応白色点とステップS1304において算出した照明変更後の順応白色点から設定プロファイルを作成する。設定プロファイルは、順応白色点がステップS1302において算出した順応白色点に近づくように作成する。
【0050】
設定プロファイルの作成方法について図14を用いて説明する。図14に示す現プロファイルの白色点1401、現プロファイルの作成時の照明白色点1402、変更後の照明白色点1405は、これまでの処理によって取得されているものとする。設定プロファイル作成部1104は、前述した順応白色点の算出方法により、現プロファイルの作成時の順応白色点1404、変更後の順応白色点1406を算出する。その後、設定プロファイル作成部1104は、設定プロファイルの白色点と変更後の照明白色点1405と完全白色点1403とから算出される順応白色点が、現プロファイルの作成時の順応白色点1404と等しくなるように設定プロファイルの白色点を算出する。このようにして設定プロファイルが作成される。
【0051】
図12に戻り、次に、ステップS1205にて、順応時間算出部1105が、現プロファイルとステップS1204において作成された設定プロファイルとの色差を算出する。このステップS1205での色差算出処理は、図4におけるステップS403での色差算出処理と同様である。
【0052】
次に、ステップS1206にて、順応時間算出部1105が、ステップS1205において算出した色差とステップS1201において取得された照明情報とに基づき、プロファイル切り替えの順応に要する順応時間を算出する。このステップS1206での順応時間算出処理は、図4におけるステップS404での順応時間算出処理と同様である。
【0053】
次に、ステップS1207にて、段階的プロファイル適用部1106が、プロファイルの切り替えを行う際に、ステップS1206において算出された順応時間内に適用する段階的プロファイルを作成する。このステップS1207での処理は、図4におけるステップS405での処理と同様である。
【0054】
次に、ステップS1208にて、段階的プロファイル適用部1106が、ステップS1206において算出された順応時間内に、ステップS1207において作成された段階的プロファイルを随時適用して色補正(色変換処理)を実施する。このステップS1208での色補正処理は、図4におけるステップS406での色補正処理と同様である。
【0055】
第2の実施形態によれば、プロファイルを切り替える場合に、プロファイル間の色差及び照明情報に基づいて順応時間を算出し、順応時間において現プロファイルから設定プロファイルへ段階的に遷移していくプロファイルを作成し入力映像信号に対して適用する。これにより、プロファイルの切り替え直後の急激な色味の変化を抑制することができる。
【0056】
なお、前述した第1及び第2の実施形態において、色度情報はu’v’平面の値としているが、これに限定されるものではない。例えば、色度情報は、xy平面の値又はuv平面の値であっても良いし、あるいはXYZ刺激値そのものであっても良い。
【0057】
(本発明の他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0058】
例えば、第1及び第2の実施形態に示した画像処理装置は、図15に示すようなコンピュータ機能800を有し、そのCPU801により第1及び第2の実施形態での動作が実施される。
コンピュータ機能800は、図15に示すように、CPU801と、ROM802と、RAM803とを備える。また、操作部(CONS)809のコントローラ(CONSC)805と、CRTやLCD等の表示部としてのディスプレイ(DISP)810のディスプレイコントローラ(DISPC)806とを備える。さらに、ハードディスク(HD)811、及びフレキシブルディスク等の記憶デバイス(STD)812のコントローラ(DCONT)807と、ネットワークインタフェースカード(NIC)808とを備える。それら機能部801、802、803、805、806、807、808は、システムバス804を介して互いに通信可能に接続された構成としている。
CPU801は、ROM802又はHD811に記憶されたソフトウェア、又はSTD812より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス804に接続された各構成部を総括的に制御する。すなわち、CPU801は、前述したような動作を行うための処理プログラムを、ROM802、HD811、又はSTD812から読み出して実行することで、第1及び第2の実施形態での動作を実現するための制御を行う。RAM803は、CPU801の主メモリ又はワークエリア等として機能する。
CONSC805は、CONS809からの指示入力を制御する。DISPC806は、DISP810の表示を制御する。DCONT807は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、ユーザファイル、ネットワーク管理プログラム、及び第1及び第2の実施形態における前記処理プログラム等を記憶するHD811及びSTD812とのアクセスを制御する。NIC808はネットワーク813上の他の装置と双方向にデータをやりとりする。
【0059】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
202…照明情報取得部、203…プロファイル設定部、205…順応時間算出部、206…段階的プロファイル適用部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明情報を取得する照明情報取得手段と、
色変換処理に係るプロファイルを設定するプロファイル設定手段と、
前記照明情報取得手段により取得した前記照明情報と前記プロファイル設定手段により設定した前記プロファイルとに基づいて、順応時間を算出する順応時間算出手段と、
前記順応時間算出手段により算出した前記順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に対する色変換処理を行うプロファイル適用手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記プロファイル適用手段は、入力映像信号に対し適用するプロファイルを前記プロファイル設定手段により設定した前記プロファイルに切り替える際、入力映像信号に対し適用している現在のプロファイルから時間の経過に応じて逐次変化させ、前記順応時間算出手段により算出した順応時間後に、前記プロファイル設定手段により設定した前記プロファイルにすることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロファイル設定手段は、予め作成されている複数のプロファイルから設定するプロファイルを選択することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロファイル設定手段は、前記照明情報取得手段により取得した前記照明情報の変化を検出し、前記照明情報の変化量に基づき設定するプロファイルを作成することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記順応時間算出手段は、現在のプロファイルと前記プロファイル設定手段により設定されたプロファイルとの色差、及び前記照明情報取得手段により取得された前記照明情報に基づいて、前記順応時間を算出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロファイル適用手段は、入力映像信号に対し適用している現在のプロファイルから前記プロファイル設定手段により設定されたプロファイルへ段階的に変化するプロファイルを作成して、前記順応時間内に随時適用することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
照明情報を取得する照明情報取得工程と、
色変換処理に係るプロファイルを設定するプロファイル設定工程と、
前記照明情報取得工程にて取得した前記照明情報と前記プロファイル設定工程にて設定した前記プロファイルとに基づいて、順応時間を算出する順応時間算出工程と、
前記順応時間算出工程にて算出した前記順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に対する色変換処理を行うプロファイル適用工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
照明情報を取得する照明情報取得ステップと、
色変換処理に係るプロファイルを設定するプロファイル設定ステップと、
前記照明情報取得ステップにて取得した前記照明情報と前記プロファイル設定ステップにて設定した前記プロファイルとに基づいて、順応時間を算出する順応時間算出ステップと、
前記順応時間算出ステップにて算出した前記順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に対する色変換処理を行うプロファイル適用ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
照明情報を取得する照明情報取得手段と、
色変換処理に係るプロファイルを設定するプロファイル設定手段と、
前記照明情報取得手段により取得した前記照明情報と前記プロファイル設定手段により設定した前記プロファイルとに基づいて、順応時間を算出する順応時間算出手段と、
前記順応時間算出手段により算出した前記順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に対する色変換処理を行うプロファイル適用手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記プロファイル適用手段は、入力映像信号に対し適用するプロファイルを前記プロファイル設定手段により設定した前記プロファイルに切り替える際、入力映像信号に対し適用している現在のプロファイルから時間の経過に応じて逐次変化させ、前記順応時間算出手段により算出した順応時間後に、前記プロファイル設定手段により設定した前記プロファイルにすることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロファイル設定手段は、予め作成されている複数のプロファイルから設定するプロファイルを選択することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロファイル設定手段は、前記照明情報取得手段により取得した前記照明情報の変化を検出し、前記照明情報の変化量に基づき設定するプロファイルを作成することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記順応時間算出手段は、現在のプロファイルと前記プロファイル設定手段により設定されたプロファイルとの色差、及び前記照明情報取得手段により取得された前記照明情報に基づいて、前記順応時間を算出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロファイル適用手段は、入力映像信号に対し適用している現在のプロファイルから前記プロファイル設定手段により設定されたプロファイルへ段階的に変化するプロファイルを作成して、前記順応時間内に随時適用することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
照明情報を取得する照明情報取得工程と、
色変換処理に係るプロファイルを設定するプロファイル設定工程と、
前記照明情報取得工程にて取得した前記照明情報と前記プロファイル設定工程にて設定した前記プロファイルとに基づいて、順応時間を算出する順応時間算出工程と、
前記順応時間算出工程にて算出した前記順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に対する色変換処理を行うプロファイル適用工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
照明情報を取得する照明情報取得ステップと、
色変換処理に係るプロファイルを設定するプロファイル設定ステップと、
前記照明情報取得ステップにて取得した前記照明情報と前記プロファイル設定ステップにて設定した前記プロファイルとに基づいて、順応時間を算出する順応時間算出ステップと、
前記順応時間算出ステップにて算出した前記順応時間に基づいて、プロファイルを段階的に適用して入力映像信号に対する色変換処理を行うプロファイル適用ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−44926(P2011−44926A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192110(P2009−192110)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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