説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび印刷装置

【課題】目の負担低減と画像の破たん防止とを両立し、見やすい画像を提供する。
【解決手段】画像処理装置であって、出力対象の画像における、無彩色による文字および無彩色による背景を含む文字領域を特定する領域特定部と、上記特定された文字領域のみを対象として、無彩色の明るさを反転させる反転処理部と、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像を出力する出力部とを備える。反転処理部は、文字領域における文字を構成する中間調の無彩色については、その明るさを反転させた場合の明るさよりも明るい色へ変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像内における色を反転させる技術として、表示画面に情報を白、黒の2つの表示色で表示する通常状態と、通常状態における白色表示部分を黒色で、黒色表示部分を白色で表示する白黒反転状態とを切り換える画像形成装置が知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11‐203007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像における白(背景)と黒(文字)との反転を行うことで、画像上の文字を読むユーザーの目の負担(目の疲労)を低減させる効果が知られている。しかしながら、このような色の反転を行うことで、元の画像からの変化が大きくなりすぎ、画像としての価値を大きく落としてしまう(ユーザーが望まない、実質的に破たんした画像になってしまう)こともあり得る。また、単純に色を反転させただけでは、ユーザーにとっての視やすさ(読みやすさ)を的確に担保できない場合もある。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、ユーザーの目の負担低減と画像の破たん防止とを両立し、見やすい画像を提供することが可能な画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび印刷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、画像処理装置であって、出力対象の画像における、無彩色による文字および無彩色による背景を含む文字領域を特定する領域特定部と、上記特定された文字領域のみを対象として、無彩色の明るさを反転させる反転処理部と、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像を出力する出力部と、を備える構成としてある。
【0007】
本発明によれば、出力対象の画像における文字領域内の無彩色だけが、その明るさが反転される。つまり、当該画像において文字領域内で黒色により表されていた文字は白色で表され、文字領域内で白色により表されていた背景は黒色で表されるため、文字を読むユーザーの目の負担が軽減される。また、当該画像における文字領域以外の領域や、文字領域内の無彩色以外の色(有彩色)については、色の変更はないため、画像の変化が全体として最小限に抑えられ、画像の破たんが防止される。
【0008】
本発明の態様の一つとして、上記反転処理部は、文字領域における文字を構成する中間調の無彩色については、その明るさを反転させた場合の明るさよりも明るい色へ変えるとしてもよい。
当該構成によれば、画像において、例えば、文字のアンチエイリアス処理が施されていた部分(グレー部分)については、反転処理部による処理後は、その明るさを単純に反転させた明るさよりも明るくなるため、反転後の文字(黒色の背景の中で白色で表示される文字)が、見かけ上痩せ細って見えてしまうことを防止できる。
【0009】
本発明の態様の一つとして、上記出力部は、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像と、上記無彩色の明るさを反転させる前の文字領域を含む画像とを、一つの印刷媒体に印刷するとしてもよい。
当該構成によれば、上記反転後の文字領域を含む画像と、色の反転が一切無い画像とが一つの印刷媒体に印刷されるため、ユーザーは、この印刷結果を見ることで、文字領域について快適に読むことができ、かつ、画像全体の本来の色も認識することができる。
【0010】
本発明の態様の一つとして、上記出力部は、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像と、上記無彩色の明るさを反転させる前の文字領域を含む画像とを、一つの印刷媒体の同一面に印刷する場合、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像としては、文字領域のみを印刷するとしてもよい。
当該構成によれば、印刷媒体の同一面に並んで印刷される上記2つの画像のうち、文字領域以外の箇所については(全く同じであるため)片方の印刷が省略される。そのため、ユーザーに提供すべき情報は削ることなく、記録材(インクやトナー)の消費を抑え、さらには印刷に要する時間を短縮することができる。
【0011】
本発明の態様の一つとして、上記出力部は、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像と、上記無彩色の明るさを反転させる前の文字領域を含む画像とを、一つの印刷媒体の一方の面と他方の面とに印刷するとしてもよい。つまり、上記反転後の文字領域を含む画像と、色の反転が一切無い画像とを、両面印刷するとしてもよい。
【0012】
本発明にかかる技術的思想は、画像処理装置以外にも種々の形式で実現される。例えば、画像処理装置が備える各部が実行する各処理工程を備える方法(画像処理方法)の発明や、各部が対応する機能を所定のハードウェア(コンピューター)に実行させるプログラム(画像処理プログラム)の発明を把握することができる。また、画像処理装置は、ある装置(印刷装置や印刷制御装置)に含まれる構成であってもよい。また、これら装置、方法は、一つの装置によって実現されてもよいし、複数の装置によって実現されてもよい。また、印刷装置とは、少なくとも印刷機能を有する装置であり、印刷機能以外の各種機能を備えた複合機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施例にかかる装置構成を概略的に示す図である。
【図2】第1実施例にかかる処理を示すフローチャートである。
【図3】反転処理を説明するための図である。
【図4】印刷結果を例示する図である。
【図5】印刷結果における文字領域の一部等を例示する図である。
【図6】第2実施例にかかる装置構成を概略的に示す図である。
【図7】第2実施例にかかる処理を示すフローチャートである。
【図8】変形例にかかる印刷結果の一例を示す図である。
【図9】変形例にかかる印刷結果の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の順序に従って、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.第1実施例
2.第2実施例
3.変形例
【0015】
1.第1実施例
図1は、第1実施例にかかる装置構成を概略的に示している。図1では、PCとしてのコンピューター10と、プリンター50とを示している。コンピューター10及び又はプリンター50は、画像処理装置に該当する。また、コンピューター10及びプリンター50、またはプリンター50は、印刷装置にも該当する。コンピューター10においては、CPU11が、ハードディスクドライブ(HDD)20等の記憶部に記憶されたプログラムデータ21をRAM12に展開してOSの下でプログラムデータ21に従った演算を行なうことにより、文書作成用等のアプリケーション13や、プリンター50を制御するためのプリンタードライバー14が実行される。プリンタードライバー14は、領域特定部14a、反転処理部14b等の各機能をCPU11に実行させるためのプログラムである。
【0016】
コンピューター10には、表示部としてのディスプレー30が接続されており、ディスプレー30には各処理に必要なユーザーインターフェイス(UI)画面が表示される。また、コンピューター10には、例えばキーボードやマウス等の操作部40が接続されており、各処理に必要な指示がユーザーにより操作部40を介して入力される。また、コンピューター10には、プリンター50が接続されている。
【0017】
プリンター50においては、CPU51が、ROM53等のメモリーに記憶されたプログラムデータ54をRAM52に展開してOSの下でプログラムデータ54に従った演算を行なうことにより、自機を制御するためのファームウェアFWが実行される。ファームウェアFWも、領域特定部FW1や反転処理部FW2等の各機能を実現することができる。プリンター50は、さらに、操作パネル56、プリンターエンジン57を備える。プリンターエンジン57は、ファームウェアFWから出力された駆動データに基づき、インク(あるいはトナー等の記録材。以下同様。)を用いて印刷媒体へ印刷を行う印刷機構である。操作パネル56は、例えば、液晶ディスプレー等で構成された表示部や、表示部上のタッチパネル、その他各種キーやボタンを備える。操作パネル56は、タッチパネル、その他各種キーやボタンを介してユーザーからの指示を受け付け、また、必要な表示を表示部において適宜行う。
【0018】
図2は、第1実施例にかかる処理をフローチャートにより示している。当該処理は、プリンタードライバー14の機能およびファームウェアFWの機能により実現される。
ステップS200では、プリンタードライバー14は、アプリケーション13から提供された出力対象画像を表すファイルに応じて、印刷ジョブを表す印刷ジョブデータを生成する。アプリケーション13は、操作部40等を介してのユーザーによる任意の印刷指示に従って、印刷すべき画像を表すファイルをプリンタードライバー14に供給する。印刷ジョブデータの形式としては、種々の形式を採用可能である。例えば、プリンタードライバー14は、PDL(Page Description Language:ページ記述言語)で記述される印刷ジョブデータを生成してもよいし、所定の描画コマンドによって表される印刷ジョブデータを生成してもよい。ここでは、印刷ジョブデータは描画コマンドで表現されるものとする。
【0019】
ステップS210では、プリンタードライバー14の領域特定部14aは、印刷ジョブデータの描画コマンドを解析することにより、印刷ジョブデータが表す画像における文字領域を特定する。ここでいう文字領域とは、黒色による文字および白色による背景を含む領域を意味する。描画コマンドは、画像に含まれるテキスト文書(文字)やCGや写真画像等の各オブジェクトについての、属性や領域や形状や色等を定義している。そのため、領域特定部14aは、印刷ジョブデータとしての描画コマンドを解析し、文字領域の条件に該当するオブジェクトが存在する場合に、そのオブジェクトを文字領域として特定する。
【0020】
ステップS220では、プリンタードライバー14の反転処理部14bは、上記特定した文字領域のみを対象として、無彩色(白、黒、グレー)の明るさを反転させる処理を実行する。文字領域における無彩色の色は、その濃度(明るさ)を示す数値(例えば、最も暗い色(黒色)を意味する「0」〜最も明るい色(白色)を意味する「255」)によって定義されている。そこで反転処理部14bは、このような無彩色の濃度を表す数値を反転させる。ただし反転処理部14bは、上記特定した文字領域における文字を構成する中間調の無彩色(濃度1〜254のグレー)については、その明るさを反転させた場合の明るさよりも明るい色へ変える。
【0021】
図3は、ステップS220の反転処理を説明するための図である。上記特定した文字領域における無彩色の濃度は、図3Aが示すような傾き−1の一次関数によって反転される。さらに、反転後の値(反転値)は、図3Bに例示するような上側に凸のガンマカーブにより補正され、補正後の反転値となる。図3Bは、明るさ補正テーブル22,55の一例であり、HDD20等に予め格納されている。このような反転、および反転値の補正によれば、黒色は白色に変換され、白色は黒色に変換される。また、中間調の無彩色は、その濃度を単純に反転させた値(反転値)よりも明るい値に変換される。ステップS220の結果、印刷ジョブデータの描画コマンドのうち、文字領域に含まれる無彩色の濃度を定義していた各情報については、それぞれの反転値(中間調の無彩色については補正後の反転値)により書き換えられる。なお、明るさ補正テーブル22,55としてのガンマカーブの形状は、一般的なモノクロ印刷を行う際に、文字を読み易くする等のためにモノクロデータの明るさを低下させるように階調補正するガンマカーブと、傾き1の一次関数を基準にして比較したとき、対称の形状をしている。
【0022】
ステップS230では、プリンタードライバー14は、ステップS220において文字領域の無彩色について反転処理が行われた後の印刷ジョブデータ(描画コマンド)を解釈することにより、ラスターデータに変換する。このラスターデータは、各画素を所定の入力表色系(ここでは、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)によるRGB表色系とする。)の階調値で表現したビットマップデータである。
【0023】
ステップS240では、プリンタードライバー14は、ラスターデータを、HDD20等に予め格納された不図示の色変換ルックアップテーブル(LUT)を用いて色変換する。色変換LUTは、入力表色系(RGB表色系)と出力表色系(プリンターエンジン57が使用するインクによる表色系)との対応関係を複数の入力格子点について規定している。例えば、色変換LUTにおいては、各入力格子点に対応付けられた出力値として、シアン(C),マゼンダ(M),イエロー(Y),ブラック(K)といった各インクの量(階調値)が規定されている。色変換の際には、必要に応じて補間演算等が実行される。この結果、ラスターデータが、画素毎にC,M,Y,K毎の階調値を有するインク量データに変換される。
【0024】
ステップS250では、プリンタードライバー14は、インク量データに対してハーフトーン処理を実行することにより、インク種類毎かつ画素毎にドットの形成/非形成のいずれか一方を規定した2値のハーフトーンデータを生成する。ハーフトーン処理は、ディザ法や誤差拡散法等によって実行される。なお、ハーフトーンデータは2値に限定されず、例えば、インク種類毎かつ画素毎に大ドットの形成/中ドットの形成/小ドットの形成/非形成のいずれか一つを規定した4値のデータであってもよい。大ドット、中ドット、小ドットとは、印刷ヘッド62が吐出可能なトッド当りのインク量が相対的に異なる複数のドット種類についての呼び方である。ドット当りのインク量の大小関係は、大ドット>中ドット>小ドットである。
【0025】
ステップS260では、プリンタードライバー14は、ハーフトーンデータから、プリンターエンジン57を駆動するための駆動データに変換し、駆動データをプリンター50へ送信する。例えば、プリンターエンジン57が、複数のノズルからインク滴(ドット)を吐出する印刷ヘッドを主走査させて印刷を実現する形式の機構(インクジェットプリンター)である場合、ハーフトーンデータから、インク種類毎かつ画素毎の情報を印刷ヘッドの各主走査および各インクノズルに割り当てた駆動データを生成する。駆動データには、使用する印刷媒体のサイズや、印刷解像度や、印刷枚数や、印刷時のレイアウトなど、プリンター50が印刷処理を実行する上で必要な各情報も付随し、送信される。
【0026】
この結果、プリンター50ではファームウェアFWが当該駆動データをプリンターエンジン57へ出力し、プリンターエンジン57によって上記出力対象画像(無彩色の反転処理が行われた文字領域を含む画像)が印刷媒体に印刷される。プリンタードライバー14やファームウェアFWの機能により印刷を実現可能な点で、コンピューター10やプリンター50は、出力部を備えているとも言える。
【0027】
なお、上記では駆動データの生成までプリンタードライバー14の機能により実現される場合について説明したが、図2のフローチャートの一部あるいは全部の処理を、ファームウェアFWの機能(プリンター50側)で実現するとしてもよい。
例えば、プリンタードライバー14は、ステップS220後の印刷ジョブデータ(描画コマンド)をプリンター50側へ送信する。印刷ジョブデータを受信したプリンター50側では、ファームウェアFWがステップS230以降の処理を実行するとしてもよい。
【0028】
さらに、文字領域の特定および反転処理を実行するタイミングは、上述したタイミングに限られない。
例えば、印刷ジョブデータ(描画コマンド)からラスターデータが生成された後に、文字領域の特定および反転処理が実行されるとしてもよい。この場合、プリンタードライバー14の領域特定部14a(あるいは、ファームウェアFWの領域特定部FW1)は、ラスターデータを対象として領域判定(文字領域の特定)を実行する。領域判定は、公知の手法を含め種々の手法を採用することができ、例えば、領域毎の色数や色を検出することにより、文字領域か文字領域以外かを判定したり、画像の空間周波数を検出し周波数特性に応じて文字領域を特定したりしてもよい。
【0029】
そして、ラスターデータの中から文字領域が特定されたら、プリンタードライバー14の反転処理部14b(あるいは、ファームウェアFWの反転処理部FW2)は、上記特定された文字領域のみを対象として無彩色の明るさを反転させる処理を実行する。この場合、ラスターデータにおいては各画素がRGBの階調(0〜255)を有しているため、特定された文字領域のうち、R=G=Bである無彩色の画素のみを対象として、その階調値(=R=G=B)を反転させ、中間調の無彩色の階調値(1〜254)については、反転値を、明るさ補正テーブル22(あるいは明るさ補正テーブル55)で補正する。かかる反転処理が施された後のラスターデータについて、色変換処理などが実行される。
【0030】
或いは、色変換処理によりラスターデータからインク量データへ変換された後に、文字領域の特定および反転処理が実行されるとしてもよい。この場合、プリンタードライバー14の領域特定部14a(あるいは、ファームウェアFWの領域特定部FW1)は、インク量データを対象として領域判定(文字領域の特定)を実行する。領域判定は、公知の手法を含め種々の手法を採用することができ、例えば、領域毎の色数や色を検出することにより、文字領域か文字領域以外かを判定したり、画像の空間周波数を検出し周波数特性に応じて文字領域を特定したりしてもよい。
【0031】
そして、インク量データの中から文字領域が特定されたら、プリンタードライバー14の反転処理部14b(あるいは、ファームウェアFWの反転処理部FW2)は、上記特定された文字領域のみを対象として無彩色の明るさを反転させる処理を実行する。この場合、インク量データにおいては各画素がCMYKの階調(0〜255)を有しているため、特定された文字領域のうち、白色(C=M=Y=K=0)の画素および黒色かグレー(C=M=Y=0、0<K≦255)の画素のみを対象として、その階調値を反転させる。白色の画素の反転値は、K=255、C=M=Y=0とする。また、グレー画素の反転値も、Kのみ1以上の値を有するとする。この場合も、グレー画素の階調値については、反転値を明るさ補正テーブル22(あるいは明るさ補正テーブル55)で補正する。かかる反転処理が施された後のインク量データについて、ハーフトーン処理などが実行される。
【0032】
図4は、本実施例の結果、印刷媒体Pに印刷された画像を例示している。ここでは、アプリケーション13から提供された出力対象画像には、テキスト文書で構成された文字領域TAと、写真画像である写真領域PAと、CG画像で構成されたグラフィック領域GAとが含まれているものとする。このうち、写真領域PAとグラフィック領域GAについては、反転処理は施されることなく、そのまま印刷されている。一方、文字領域TAについては、無彩色の反転処理がなされた結果、文字部分(図4では、文字部分を簡略化して横棒で表している。)が白色(紙白)で表され、文字の背景が黒色で印刷されている。
【0033】
このように本実施例によれば、出力対象画像における文字領域TA内の無彩色だけが、反転処理の対象となり、文字領域TA内で黒色により表されていた文字は白色で表され、文字領域内で白色により表されていた背景は黒色で表されるようになる。そのため、印刷結果において文字を読むユーザーの目の負担を軽減することができる。また、当該画像における文字領域TA以外の領域(写真領域PAやグラフィック領域GA)や、文字領域TA内の無彩色以外の色(有彩色)については、色の変更無く印刷されるため、全体として変化が最小限に抑えられた画像の出力結果がユーザーに提供される。
【0034】
図5の上段には、図4に示した印刷結果における文字領域TAの一部を示している。ここでは、黒色の背景に白色で「K」という文字が表された例を示している。また、図5の中段および下段には、文字「K」の一部分を拡大して示している。アプリケーション13から提供される出力対象画像(データ)では、黒色の文字と白色の背景との境界部分におけるジャギーを抑制するために、文字に対していわゆるアンチエイリアス処理が施されている場合があり、アンチエイリアス処理が施された画素は中間調となっている。図5の中段では、文字領域における無彩色(白、黒、グレー)を、その値に応じて単純に反転させた場合を例示している。一方、図5の下段では、文字領域における中間調の無彩色について反転値を上述したように明るさ補正テーブル22(あるいは明るさ補正テーブル55)で補正した場合を例示している。図5の中段と下段との比較から判るように、本実施例のように文字領域における中間調の無彩色について反転値を明るさ補正テーブル22(あるいは明るさ補正テーブル55)で補正することで、そのグレーの明るさがより明るく補正される。そのため、アンチエイリアス処理がされていた画素の反転値(グレー)が黒色の背景と見かけ上殆ど同化し文字(白色)が痩せ細って見えてしまう、といった不都合(文字の読み難さ)を解消できる。
【0035】
2.第2実施例
図6は、第2実施例にかかるプリンター70の構成を概略的に示している。プリンター70は、ガラスで形成された原稿台Gに置かれた図示しない原稿を読み取る機能(スキャン機能)を有する。プリンター70の筐体内では、原稿台G下方に撮像素子71が配設される。撮像素子71は、例えば、原稿台Gの範囲に略対応した読み取り可能範囲の一方向(主走査方向)に複数の画素(受光素子)を並べたリニアセンサーであり、図示しない光源から原稿に照射された光の反射光を受光素子で受光し、光電変換および電気信号のA/D変換を経て、画素毎のデジタル値(RGB値)を出力する。また、撮像素子71は、原稿台Gの主走査方向に垂直な方向(副走査方向)へ、駆動機構72により原稿台Gと平行に移動可能である。
【0036】
プリンター70は、プリンター70の各部を制御する制御部を備える。制御部では、CPU74、ROM75、RAM76等を有し、CPU74が、ROM75等に記憶されたプログラムデータに従った演算を、RAM76をワークエリアとして使用して実行することにより、ファームウェアFWを実行する。ファームウェアFWは、例えば、読取制御部FW3、領域特定部FW1、反転処理部FW2等の各機能を実現可能である。印刷装置70はさらに、プリンターエンジン77、操作パネル78等を備える。プリンターエンジン77は、生成された駆動データに基づき印刷媒体へ印刷を行う印刷機構である。操作パネル78は、例えば、液晶ディスプレー等で構成された表示部や、表示部上のタッチパネル、その他各種キーやボタンを備える。操作パネル78は、タッチパネル、その他各種キーやボタンを介してユーザーからの指示を受け付け、また、必要な表示を表示部において適宜行う。
【0037】
図7は、第2実施例にかかる処理をフローチャートにより示している。当該処理は、ファームウェアFWにより実現される。
ステップS400では、ファームウェアFWの読取制御部FW3は、撮像素子71および駆動機構72を制御することにより、駆動機構72に撮像素子71を移動させ、かつ撮像素子71により原稿の読み取りを実行させることにより、原稿の読取結果としての読取画像データ(画素毎にRGBの階調値を有するラスターデータ)を取得する。駆動機構72は、撮像素子ユニット71を移動させるためのモーターやキャリッジを備える。
【0038】
ステップS410では、領域特定部FW1は、第1実施例でも説明したように、ラスターデータを対象として領域判定(文字領域の特定)を実行する。ステップS420では、反転処理部FW2は、第1実施例でも説明したように、ラスターデータにおいて特定された文字領域のみを対象として無彩色の明るさを反転させる処理(中間調の無彩色の反転値を明るさ補正テーブルで補正する処理を含む)を実行する。ステップS430,S440,S450は、図2のステップS240,S250,S260と同様である。
【0039】
この結果、プリンター70ではファームウェアFWが駆動データをプリンターエンジン77へ出力し、プリンターエンジン77によって上記原稿に表された画像(無彩色の反転処理が行われた文字領域を含む画像)が印刷媒体に印刷される(原稿がコピーされる)。ファームウェアFWの機能により印刷を実現可能な点で、プリンター70は、出力部を備えているとも言える。上記では、図7の処理は複合機としての一つのプリンター70により実現されるとしたが、原稿台G、撮像素子71及び駆動機構72を含む構成に相当するスキャナーと、当該スキャナーと接続しファームウェアFW(読取制御部FW3、領域特定部FW1、反転処理部FW2)に相当する機能を発揮するコンピューター10と、コンピューター10と接続し駆動データに基づいて印刷を実行するプリンターと、によって図7の処理が実現されるとしてもよい。また、文字領域の特定および反転処理が実行されるタイミングは図7に示したタイミングに限られず、第1実施例と同様に、色変換処理によりラスターデータからインク量データへ変換された後に、文字領域の特定および反転処理が実行されるとしてもよい。
【0040】
このように第2実施例によれば、出力対象画像(原稿に表された画像)における文字領域内の無彩色だけが、反転処理の対象となり、文字領域内で黒色により表されていた文字は白色で表され、文字領域内で白色により表されていた背景は黒色で表されるようになる。そのため、コピー結果において文字を読むユーザーの目の負担を軽減することができる。また、当該画像における文字領域以外の領域や、文字領域内の無彩色以外の色については、色の変更無く印刷されるため、変化が最小限に抑えられたコピー結果がユーザーに提供される。なお上記では、原稿の位置を固定し、撮像素子71を移動させることにより原稿の全体をスキャンする構成を示したが、撮像素子71の位置を固定し、原稿を副走査方向へ搬送することで原稿がスキャンされる構成としてもよい。
【0041】
3.変形例
本発明は上述の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば以下のような変形例も可能である。各実施例の記載事項や変形例の記載事項を適宜組み合わせた内容も、本発明の開示範囲である。
【0042】
上述したように無彩色の明るさを反転させた文字領域を含む画像を印刷する場合、比較が容易なように、同じ印刷媒体に無彩色の明るさを反転させる前の文字領域を含む画像も印刷するとしてもよい。
例えば、第1実施例を前提に説明すると、ステップS230(図2)では、プリンタードライバー14(あるいはファームウェアFW)は、ステップS220において文字領域の無彩色について反転処理が行われた後の印刷ジョブデータ(描画コマンド)を解釈することによりラスターデータ(第1ラスターデータと呼ぶ。)に変換するとともに、ステップS200で生成した印刷ジョブデータ(描画コマンド)を解釈することによりラスターデータ(第2ラスターデータと呼ぶ。)に変換する。そして、第1ラスターデータおよび第2ラスターデータについてステップS240以降の処理が実行される。
【0043】
あるいは、プリンタードライバー14(あるいはファームウェアFW)は、ラスターデータ生成の後に、文字領域の特定および反転処理を実行した場合は、反転処理後のラスターデータおよび、文字領域の特定および反転処理を行なう前のラスターデータに対して色変換処理(ステップS240)を実行し、得られた2種類のインク量データについてステップS250以降の処理を実行する。あるいは、プリンタードライバー14(あるいはファームウェアFW)は、色変換処理によりラスターデータからインク量データへ変換した後に、文字領域の特定および反転処理を実行した場合は、反転処理後のインク量データおよび、文字領域の特定および反転処理を行なう前のインク量データに対してハーフトーン処理(ステップS250)を実行する。また、ステップS260で生成する駆動データは、プリンター50に印刷させる画像についての印刷媒体上でのレイアウトやサイズも規定したデータとなっている。ここでいうレイアウトやサイズとは、両面印刷時のレイアウトやサイズであったり、印刷媒体の同一面に2つの画像を印刷するいわゆるツーインワン(2in1)時のレイアウトやサイズが該当する。
【0044】
図8は、このような変形例によって、一枚の印刷媒体Pに対してなされた印刷結果を例示している。図8では、アプリケーション13から提供された出力対象画像であって、無彩色の明るさを反転させた文字領域TAを含む画像(反転含有画像と呼ぶ。)が印刷媒体Pの一方の面に印刷され、かつアプリケーション13から提供された出力対象画像であって、上記反転処理が一切行なわれていない画像(通常画像と呼ぶ。)が印刷媒体Pの他方の面に印刷された例を示している。かかる変形例によれば、ユーザーは、印刷媒体Pの両面を見ることで、文字領域TAについて快適に読むことができ、かつ、文字領域TAを含む画像全体の本来の色や雰囲気も認識することができる。
【0045】
図9は、このような変形例によって、一枚の印刷媒体Pに対してなされた印刷結果の他の例を示している。図9では、反転含有画像と通常画像とが、印刷媒体Pの同一面にツーインワン印刷されている。この例によれば、ユーザーは、印刷媒体Pの一つの面を見るだけで、文字領域TAについて快適に読むことができ、かつ文字領域TAを含む画像全体の本来の色や雰囲気も認識することができる。ただし図9の例では、反転含有画像としては、文字領域TAのみが印刷されている。つまり、印刷媒体Pの同じ面上で反転含有画像と通常画像とを見比べたとき、文字領域TA以外の領域は全く同じであるため、インクの消費や印刷時間の削減のために、プリンタードライバー14(あるいはファームウェアFW)は、上記ツーインワン印刷するときは反転含有画像における文字領域TA以外のオブジェクトについては印刷をしないようにする(インク量データを0とする)。なお、反転含有画像における文字領域TAは、無彩色のみで印刷されているとは限らない。アプリケーション13から提供された出力対象画像において有彩色の文字が文字領域TAに含まれていれば、有彩色の文字についてはその色で文字領域TAの一部として印刷される。
【0046】
むろん、第2実施例を前提とした構成においても、原稿を読み取ることにより取得された画像であって無彩色の明るさを反転させた文字領域TAを含む画像と、原稿を読み取ることにより取得された画像であって上記反転処理が一切行なわれていない画像とを、図8や図9に例示したように一つの印刷媒体Pに対して印刷することが可能である。
【0047】
上記では、無彩色の明るさを反転させた文字領域を含む画像の出力と言った場合、当該画像を印刷媒体に印刷することを主に意味していたが、画像の出力には、印刷以外にも所定の表示部(ディスプレー30等)に表示する処理も含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10…コンピューター、13…アプリケーション、14…プリンタードライバー、14a…領域特定部、14b…反転処理部、22…明るさ補正テーブル、30…ディスプレー、50…プリンター、55…明るさ補正テーブル、57…プリンターエンジン、70…プリンター、77…プリンターエンジン、FW…ファームウェア、FW1…領域特定部、FW2…反転処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
出力対象の画像における、無彩色による文字および無彩色による背景を含む文字領域を特定する領域特定部と、
上記特定された文字領域のみを対象として、無彩色の明るさを反転させる反転処理部と、
上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
上記反転処理部は、文字領域における文字を構成する中間調の無彩色については、その明るさを反転させた場合の明るさよりも明るい色へ変えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記出力部は、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像と、上記無彩色の明るさを反転させる前の文字領域を含む画像とを、一つの印刷媒体に印刷することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記出力部は、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像と、上記無彩色の明るさを反転させる前の文字領域を含む画像とを、一つの印刷媒体の同一面に印刷する場合、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像としては、文字領域のみを印刷することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記出力部は、上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像と、上記無彩色の明るさを反転させる前の文字領域を含む画像とを、一つの印刷媒体の一方の面と他方の面とに印刷することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像処理方法であって、
出力対象の画像における、無彩色による文字および無彩色による背景を含む文字領域を特定する領域特定工程と、
上記特定された文字領域のみを対象として、無彩色の明るさを反転させる反転処理工程と、
上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像を出力する出力工程と、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
出力対象の画像における、無彩色による文字および無彩色による背景を含む文字領域を特定する領域特定機能と、
上記特定された文字領域のみを対象として、無彩色の明るさを反転させる反転処理機能と、
上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像を出力する出力機能と、
をコンピューターに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項8】
印刷装置であって、
出力対象の画像における、無彩色による文字および無彩色による背景を含む文字領域を特定する領域特定部と、
上記特定された文字領域のみを対象として、無彩色の明るさを反転させる反転処理部と、
上記無彩色の明るさが反転した文字領域を含む画像を印刷媒体に印刷する印刷処理部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−199669(P2012−199669A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61311(P2011−61311)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】