説明

画像処理装置、画像処理方法およびプログラム

【課題】複数ページから成る原稿データに基づいて画像出力を行う際、本文を構成する文字がページ毎に異なるサイズに拡大されることを防止して文書の読み易さを維持しつつ、原稿全体として見やすい状態で画像出力を行う。
【解決手段】画像処理装置1は、複数ページからなる原稿データを取得すると、その原稿データの各ページに含まれる文字領域を文字拡大対象領域として検出し、その文字拡大対象領域を描画領域の範囲内で拡大するための倍率をページ毎に算出し、ページ毎に算出された倍率のうち、最小の倍率を各ページに含まれる文字拡大対象領域の共通した倍率として決定する。その決定された共通の倍率に基づいて各ページの文字拡大対象領域に含まれる文字画像を拡大して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法およびプログラムに関し、特に複数ページからなる原稿データに基づいて画像出力を行う際に、各ページに含まれる画像を拡大して出力するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機において読み取った原稿の有効画像領域を判定し、その有効画像領域を出力用紙サイズに合わせるように自動変倍して出力するようにした技術が知られている(例えば特許文献1)。この従来技術では、自動変倍を行う際、縦横独立に有効画像領域の倍率を設定することも可能であり、印字可能領域(描画領域)の全面に画像を印刷して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−327129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数ページから成る原稿を読み取って出力する際、出力用紙サイズの描画領域に合わせるように各ページに含まれる画像の倍率を決定すると、ページ毎に異なる倍率が適用されるようになる。そのため、各ページに含まれる文字の大きさが異なったサイズに拡大されてしまい、却って文書が読み難くなってしまうという問題がある。特に、複数のページに亘って記述された纏まりのある一連の文書(本文)に含まれる文字がページ毎に異なるサイズに拡大されてしまうと、一見して同じ本文の内容を示すものであるかどうかが判りにくくなる。また文字は、縦方向および横方向に独立した倍率で拡大してしまうと、その倍率差が大きい場合に却って文字が判読し難くなるという特徴がある。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、複数ページから成る原稿データに基づいて画像出力を行う際、本文を構成する文字がページ毎に異なるサイズに拡大されることを防止して文書の読み易さを維持しつつ、原稿全体として見やすい状態で画像出力を行うことができるようにした画像処理装置、画像処理方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、画像処理装置であって、複数ページからなる原稿データを取得する原稿データ取得手段と、前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域を文字拡大対象領域として検出する画像検出手段と、原稿データに基づいて画像出力を行う際の描画領域を検出する描画領域検出手段と、前記画像検出手段によって検出される文字拡大対象領域を前記描画領域の範囲内で拡大するための倍率をページ毎に算出する倍率算出手段と、前記倍率算出手段によってページ毎に算出される倍率のうち、最小の倍率を各ページに含まれる前記文字拡大対象領域の共通した倍率として決定する倍率決定手段と、前記倍率決定手段によって決定された倍率に基づいて各ページの前記文字拡大対象領域に含まれる文字画像を拡大する拡大処理手段と、を備えることを特徴とする構成である。
【0007】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記画像検出手段は、原稿データの各ページに含まれる文字領域のうち、前記描画領域の周縁部に接している文字領域を前記文字拡大対象領域から除外することを特徴とする構成である。
【0008】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の画像処理装置において、前記画像検出手段は、前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域と写真領域とを検出するように構成され、原稿データの各ページに含まれる文字領域のうち、写真領域に接している文字領域を前記文字拡大対象領域から除外することを特徴とする構成である。
【0009】
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置において、前記画像検出手段は、前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域と網点領域とを検出するように構成され、網点領域に包含される文字領域を、前記文字拡大対象領域から除外することを特徴とする構成である。
【0010】
請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置において、前記画像検出手段は、前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域と網点領域と写真領域とを検出するように構成され、前記拡大処理手段は、一のページに文字領域と網点領域と写真領域のそれぞれが独立して存在している場合、文字領域と網点領域と写真領域のそれぞれの画像を前記倍率決定手段によって決定された倍率に基づいて拡大することを特徴とする構成である。
【0011】
請求項6にかかる発明は、請求項5に記載の画像処理装置において、前記倍率算出手段は、前記文字拡大対象領域を含まないページの倍率として、網点領域又は写真領域を前記描画領域の範囲内で拡大するための倍率を算出し、前記拡大処理手段は、前記文字拡大対象領域を含まないページの網点領域又は写真領域に含まれる画像を、前記倍率算出手段によって算出される倍率に基づいて拡大することを特徴とする構成である。
【0012】
請求項7にかかる発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置において、前記倍率算出手段は、各ページの倍率を算出する際、前記描画領域の主走査方向について最大に拡大するための主倍率と、副走査方向について最大に拡大するための副倍率とを算出し、主倍率と副倍率とを比較して小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として算出することを特徴とする構成である。
【0013】
請求項8にかかる発明は、画像処理方法であって、複数ページからなる原稿データを取得するステップと、取得された原稿データの各ページに含まれる文字領域を文字拡大対象領域として検出するステップと、原稿データに基づいて画像出力を行う際の描画領域を検出するステップと、前記文字拡大対象領域を前記描画領域の範囲内で拡大するための倍率をページ毎に算出するステップと、ページ毎に算出される倍率のうち、最小の倍率を各ページに含まれる前記文字拡大対象領域の共通した倍率として決定するステップと、決定された倍率に基づいて各ページの前記文字拡大対象領域に含まれる文字画像を拡大するステップと、を有することを特徴とする構成である。
【0014】
請求項9にかかる発明は、プログラムであって、コンピュータを、複数ページからなる原稿データを取得する原稿データ取得手段、前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域を文字拡大対象領域として検出する画像検出手段、原稿データに基づいて画像出力を行う際の描画領域を検出する描画領域検出手段、前記画像検出手段によって検出される文字拡大対象領域を前記描画領域の範囲内で拡大するための倍率をページ毎に算出する倍率算出手段、前記倍率算出手段によってページ毎に算出される倍率のうち、最小の倍率を各ページに含まれる前記文字拡大対象領域の共通した倍率として決定する倍率決定手段、および、前記倍率決定手段によって決定された倍率に基づいて各ページの記文字拡大対象領域に含まれる文字画像を拡大する拡大処理手段、として機能させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原稿データの各ページに含まれる文字拡大対象領域には互いに共通した倍率が決定され、その共通した倍率に基づいて文字拡大対象領域の拡大処理が行われる。そのため、複数ページから成る原稿データに基づいて画像出力を行う際、本文を構成する文字がページ毎に異なるサイズに拡大されることを防止することができるようになり、文書の読み易さを維持しつつ、原稿全体として見やすい状態で画像出力を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像処理システムの一構成例を示す図である。
【図2】画像処理装置のコピー機能に関するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】描画領域検出部によって検出される描画領域を示す図である。
【図4】スキャナ部によって生成される原稿データの一例を示す図である。
【図5】ページP1の画像を拡大して示す図である。
【図6】ページP2の画像を拡大して示す図である。
【図7】ページP3の画像を拡大して示す図である。
【図8】ページP4の画像を拡大して示す図である。
【図9】ページP5の画像を拡大して示す図である。
【図10】ページP6の画像を拡大して示す図である。
【図11】ページP7の画像を拡大して示す図である。
【図12】ページP8の画像を拡大して示す図である。
【図13】拡大処理部によって原稿データに含まれる各ページの画像が拡大された状態の一例を示す図である。
【図14】画像処理装置が自動拡大処理を行って画像出力を行う場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図15】画像検出処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図16】倍率算出処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図17】倍率決定処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本実施形態である画像処理システムの一構成例を示す図である。この画像処理システムは、デジタル複合機やMFP(Multi Function Peripheral)などと呼ばれる画像処理装置1を備えている。この画像処理装置1は、LANなどのネットワーク2に接続されており、そのネットワーク2に接続されたコンピュータ3とデータ通信を行うことができるようになっている。この画像処理装置1は、コピー機能、プリンタ機能、FAX機能、スキャナ機能などの画像処理に関する複数の機能を有している。例えば、コピー機能は、原稿を読み取って原稿データを取得し、その原稿データに基づいてシート状の記録媒体である印刷用紙などに対して印刷を行い、出力する機能である。またプリンタ機能は、ネットワーク2を介してコンピュータ3から入力する原稿データに基づいて印刷用紙などに対して印刷を行い、出力する機能である。またFAX機能は、電話網などを介してFAXデータの送受信を行う機能である。FAXデータの受信時には、受信したFAXデータに基づいて印刷用紙などに対して印刷を行い、出力することも可能である。さらに、スキャナ機能は、原稿を読み取って原稿データを取得し、その取得した原稿データを、ネットワーク2を介してコンピュータ3などに送信する機能である。
【0019】
この画像処理装置1は、印刷対象となる原稿データに基づいて印刷用紙などに印刷を行う際、原稿データの各ページに含まれる画像成分(例えば、文字、写真、網点など)を、ユーザにより設定された余白領域を除く描画領域の範囲内で自動拡大して出力することができる構成である。特に、印刷対象である原稿データが複数のページを含んでいる場合、画像処理装置1は、その複数ページから成る原稿データに基づいて印刷を行う際、複数のページに亘って記述されている一連の本文を構成する文字がページ毎に異なるサイズに拡大されることを防止して文書の読み易さを維持しつつ、原稿全体として見やすい状態となるように自動拡大を行うように構成される。以下、コピー機能を例に挙げて、画像処理装置1において自動拡大を行うための構成および動作を詳しく説明する。
【0020】
図2は、画像処理装置1のコピー機能に関するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、画像処理装置1は、スキャナ部11と、入力画像処理部12と、操作パネル13と、倍率設定部14と、出力画像処理部15と、プリンタ部16とを備えている。画像処理装置1においてコピー機能に関するジョブが実行されるとき、これらの各部が連動してコピー出力を行うようになっている。尚、図2において、斜線矢印は印刷対象となる原稿データD1の流れを示しており、細線矢印は各種設定情報などの制御情報の流れを示している。
【0021】
スキャナ部11は、原稿を光学的に読み取り、原稿画像に対応する原稿データを生成する処理部である。例えばスキャナ部11は、原稿のカラー読み取りを行うことが可能であり、画素ごとにR(赤),G(グリーン),B(ブルー)の各色成分値を有する原稿データを生成する。このスキャナ部11は、複数枚の原稿を1枚ずつ連続して自動読み取りできるようになっている。そしてスキャナ部11は、複数枚の原稿の連続自動読み取りを行うと、複数ページから成る原稿データを生成する。
【0022】
入力画像処理部12は、スキャナ部11から出力される原稿データを入力し、その原稿データに対してシェーディング補正、ライン間補正、色収差補正などの入力画像処理を行う処理部である。例えば、複数のページから成る原稿データの場合、入力画像処理部12は、各ページの原稿画像に対して入力画像処理を行う。そして入力画像処理部12は、原稿データに対する入力画像処理が終了すると、その処理済みの原稿データを倍率設定部14および出力画像処理部15に出力する。
【0023】
操作パネル13は、ユーザが画像処理装置1を使用する際のユーザインタフェースとなるものである。例えば、ユーザがコピー機能を利用する場合、操作パネル13に対してコピー機能を利用する際の各種の設定操作を行う。この設定操作には、例えばコピー出力に使用される印刷用紙の用紙サイズを指定する操作や、その用紙サイズにおける周囲の余白領域の設定操作などが含まれる。ユーザにより、これらの設定操作が行われると、その設定情報は倍率設定部14に出力される。
【0024】
倍率設定部14は、原稿データの各ページに含まれる画像成分を拡大するための倍率を設定する処理部である。この倍率設定部14は、描画領域検出部21と、画像検出部22と、倍率算出部23と、倍率決定部24とを備えている。
【0025】
描画領域検出部21は、操作パネル13から入力する設定情報に基づいてユーザにより指定された印刷用紙に印刷を行う際の描画領域を検出する処理部である。この描画領域検出部21は、ユーザにより指定される用紙サイズと余白領域に基づき、出力用紙サイズの周縁部に設定される余白領域を除いた領域を描画領域として検出する。
【0026】
図3は、描画領域検出部21によって検出される描画領域R1を示す図である。例えば、ユーザによって指定された印刷用紙9のサイズが図3に示すようなものであった場合、描画領域検出部21は、ユーザによって設定された余白領域を印刷用紙9の周縁部から除いた中央部分の領域を、描画領域R1として検出する。図例において、印刷用紙9のX方向を主走査方向とし、Y方向を副走査方向とすると、描画領域R1は、印刷用紙9の中央部分において主走査方向の幅がLX、副走査方向の幅がLYとして検出される。この描画領域R1は、各ページに含まれる画像成分を拡大する際の最大拡大領域となる。つまり、本実施形態では、この描画領域R1の範囲内で画像成分を拡大するための倍率が決定されるようになる。
【0027】
画像検出部22は、入力画像処理部12から入力する原稿データを解析し、各ページにおいて有効な画像成分が含まれる領域を検出する処理部である。本実施形態における画像検出部22は、原稿データの各ページから、文字が含まれる文字領域と、写真が含まれる写真領域と、網点が含まれる網点領域とを検出する。但し、これら以外の領域を検出するようにしても良い。そして画像検出部22は、各ページにおける文字領域と写真領域と網点領域の分布状態を解析し、その分布状態に基づいて、複数のページに亘って記述された纏まりのある一連の文書(本文)を構成する文字領域を特定する。そして画像検出部22は、その特定した文字領域を、文字拡大対象領域として検出する。したがって、文字拡大対象領域には、原稿データに含まれる文字領域のうち、複数のページに亘って記述された纏まりのある一連の文書(本文)を構成する文字領域として特定された文字領域のみが含まれることになる。この文字拡大対象領域は、複数ページから成る原稿データの全体において共通した倍率が適用される領域である。
【0028】
図4は、スキャナ部11によって生成される原稿データの一例を示す図である。この原稿データは、図4に示すように、ページP1〜P8までの合計8ページからなる原稿データである。尚、図4に示す各ページP1〜P8の破線枠は描画領域R1の周縁部を規定する枠に相当する。
【0029】
図4の例では、ページP1において文字領域RA1のみが含まれている。またページP2には、文字領域RA2のみが含まれている。ページP3には、写真領域RB1のみが含まれている。ページP4には、写真領域RB2と文字領域RA3とが含まれている。ページP5には、写真領域RB3と文字領域RA4とが含まれている。ページP6には、文字領域RA5と文字領域RA6とが含まれている。ページP7には、網点領域RC1と文字領域RA7とが含まれている。さらにページP8には、写真領域RB4と文字領域RA8と写真領域RB5と文字領域RA9とが含まれている。
【0030】
画像検出部22は、このような各ページP1〜P8に含まれる文字領域と、写真領域と、網点領域とを全て検出する。そして画像検出部22は、各ページP1〜P8に含まれる文字領域と写真領域と網点領域の分布状態を解析する。このとき、画像検出部22は、特に次の2つの判断基準に基づいて各ページP1〜P8に含まれる文字領域を文字拡大対象領域とするか否かを判断する。
【0031】
第1の判断基準は、各ページP1〜P8において検出された文字領域が描画領域R1の周縁部に接しているか否かによって文字拡大対象領域とするか否かを判断する基準である。すなわち、画像検出部22は、各ページP1〜P8において検出された文字領域が描画領域R1の周縁部に接しているか否かを判断し、描画領域R1の周縁部に接する文字領域を文字拡大対象領域から除外し、描画領域R1の周縁部に接していない文字領域を文字拡大対象領域として検出する。
【0032】
例えば、各ページP1〜P8において検出された文字領域が描画領域R1の周縁部に接している場合、その文字領域は、複数のページに亘って記述された纏まりのある一連の文書(本文)を構成する文字領域ではなく、原稿の各ページに配置された単なるヘッダやフッタである可能性が高い。そのため、本実施形態では、描画領域R1に接している文字領域を文字拡大対象領域から除外し、描画領域R1の周縁部に接していない文字領域だけを文字拡大対象領域として検出するようになっている。
【0033】
第2の判断基準は、各ページP1〜P8において検出された文字領域が他の写真領域や網点領域に接しているか否か、或いは、内包されているか否かによって文字拡大対象領域とするか否かを判断する基準である。すなわち、画像検出部22は、各ページP1〜P8において検出された文字領域が写真領域に接しているか否かを判断し、写真領域に接する文字領域を文字拡大対象領域から除外し、写真領域に接していない文字領域を文字拡大対象領域として検出する。また、各ページP1〜P8において検出された文字領域が網点領域に包含されているか否かを判断し、網点領域に包含されている文字領域を文字拡大対象領域から除外し、網点領域に包含されていない文字領域を文字拡大対象領域として検出する。
【0034】
例えば、各ページP1〜P8において検出された文字領域が写真領域に接している場合、その文字領域は、複数のページに亘って記述された纏まりのある一連の文書(本文)を構成する文字領域ではなく、写真領域に含まれる写真を説明するための説明文である可能性が高い。そのため、本実施形態では、写真領域に接している文字領域を文字拡大対象領域から除外し、写真領域に接していない文字領域だけを文字拡大対象領域として検出するようになっている。
【0035】
また、各ページP1〜P8において検出された文字領域が網点領域に含まれる場合、その文字領域は、複数のページに亘って記述された纏まりのある一連の文書(本文)を構成する文字領域ではなく、例えば特定のカラーの背景部分に配置されたタイトル文字列などのような文字領域である可能性が高い。そのため、本実施形態では、網点領域に包含されている文字領域を文字拡大対象領域から除外し、網点領域に包含されていない文字領域だけを文字拡大対象領域として検出するようになっている。
【0036】
上記のような第1および第2の判断基準に基づく判断を行うことにより、画像検出部22は、各ページP1〜P8において検出された文字領域のうち、描画領域R1の周縁部や他の写真領域および網点領域に近接していない文字領域だけを文字拡大対象領域として検出することになる。図4の例の場合、画像検出部22は、ページP1の文字領域RA1、ページP2の文字領域RA2、ページP5の文字領域RA4、ページP6の文字領域RA6およびページP8の文字領域RA9の5つの文字領域が文字拡大対象領域として検出されることになる。これに対し、ページP4の文字領域RA3は写真領域RB2に接しており、ページP6の文字領域RA5は描画領域R1の周縁部に接しており、ページP7の文字領域RA7は網点領域RC1に包含されており、ページP8の文字領域RA8は写真領域RB4に接しているので、これらの文字領域は文字拡大対象領域から除外される。
【0037】
次に倍率算出部23は、画像検出部22によって検出される文字拡大対象領域を描画領域R1の範囲内で拡大するための倍率をページ単位で算出する処理部である。この倍率算出部23は、文字拡大対象領域だけでなく、他の写真領域や網点領域を描画領域R1の範囲内で拡大するための倍率も算出する。以下、図4に示した各ページP1〜P8に基づいて倍率算出部23における倍率算出の手法について説明する。
【0038】
図5は、ページP1の画像を拡大して示す図である。尚、図5において破線で囲まれた領域が描画領域R1である。ページP1には、画像検出部22によって検出された文字領域RA1だけが含まれる。この文字領域RA1は、文字拡大対象領域である。倍率算出部23は、このページP1に関しては文字領域RA1を描画領域R1の範囲内で最大に拡大するための倍率を算出する。ここで、文字領域RA1の主走査方向の長さをXA1、副走査方向の長さをYA1とする。倍率算出部23は、これらの長さXA1,YA1に基づいて主走査方向の倍率である主倍率と、副走査方向の倍率である副倍率とを算出する。すなわち、主倍率はLX/XA1の演算を行うことにより算出され、副倍率はLY/YA1の演算を行うことにより算出される。このようにして算出される主倍率および副倍率は、主走査方向と副走査方向のそれぞれにおいて描画領域R1の範囲内で文字領域RA1を最大に拡大するための倍率となる。そして倍率算出部23は、それら主倍率と副倍率とを比較し、小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として採用する。
【0039】
図6は、ページP2の画像を拡大して示す図である。尚、図6においても破線で囲まれた領域が描画領域R1である。ページP2には、画像検出部22によって検出された文字領域RA2だけが含まれる。この文字領域RA2は、文字拡大対象領域である。倍率算出部23は、このページP2に関しては、上述したページP1の場合と同様に、文字領域RA2を描画領域R1の範囲内で最大に拡大するための倍率を算出する。すなわち、文字領域RA2の主走査方向の長さをXA2、副走査方向の長さをYA2とすると、倍率算出部23は、LX/XA2の演算を行うことにより主倍率を算出し、LY/YA2の演算を行うことにより副倍率を算出する。そして倍率算出部23は、それら主倍率と副倍率とを比較し、小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として採用する。
【0040】
図7は、ページP3の画像を拡大して示す図である。尚、図7においても破線で囲まれた領域が描画領域R1である。ページP3には、画像検出部22によって検出された写真領域RB1だけが含まれる。倍率算出部23は、このページP3に関しては写真領域RB1を描画領域R1の範囲内で最大に拡大するための倍率を算出する。ここで、写真領域RB1の主走査方向の長さをXB1、副走査方向の長さをYB1とする。倍率算出部23は、これらの長さXB1,YB1に基づいて主走査方向の倍率である主倍率と、副走査方向の倍率である副倍率とを算出する。すなわち、主倍率はLX/XB1の演算を行うことにより算出され、副倍率はLY/YB1の演算を行うことにより算出される。このようにして算出される主倍率および副倍率は、主走査方向と副走査方向のそれぞれにおいて描画領域R1の範囲内で写真領域RB1を最大に拡大するための倍率となる。そして倍率算出部23は、それら主倍率と副倍率とを比較し、小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として採用する。
【0041】
図8は、ページP4の画像を拡大して示す図である。尚、図8においても破線で囲まれた領域が描画領域R1である。ページP4には、画像検出部22によって検出された文字領域RA3と写真領域RB2とが含まれる。この文字領域RA3は、写真領域RB2に接する状態で配置されているため、文字拡大対象領域ではない。このような場合、倍率算出部23は、文字領域RA3と写真領域RB2とを一体的な文字写真混合領域として取り扱う。すなわち、倍率算出部23は、このページP4に関しては文字領域RA3と写真領域RB2とを含む文字写真混合領域を描画領域R1の範囲内で最大に拡大するための倍率を算出する。ここで、文字写真混合領域の主走査方向の長さをXB2(=XA3)、副走査方向の長さをYA3+YB2とする。倍率算出部23は、これらの長さXB2,(YA3+YB2)に基づいて主走査方向の倍率である主倍率と、副走査方向の倍率である副倍率とを算出する。すなわち、主倍率はLX/XB2又はLX/XA3の演算を行うことにより算出され、副倍率はLY/(YA3+YB2)の演算を行うことにより算出される。このようにして算出される主倍率および副倍率は、主走査方向と副走査方向のそれぞれにおいて描画領域R1の範囲内で文字写真混合領域を最大に拡大するための倍率となる。そして倍率算出部23は、それら主倍率と副倍率とを比較し、小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として採用する。
【0042】
図9は、ページP5の画像を拡大して示す図である。尚、図9においても破線で囲まれた領域が描画領域R1である。このページP5には、画像検出部22によって検出された写真領域RB3と文字領域RA4とが含まれる。ここで、文字領域RA4は、文字拡大対象領域である。このように1つのページに、文字拡大対象領域である文字領域RA4と、他の領域である写真領域RB3とが一定間隔以上離れた状態で位置している場合、倍率算出部23が倍率を算出する手法としては次の2つの手法がある。
【0043】
第1の手法は、文字拡大対象領域である文字領域RA4を、描画領域R1の範囲内において他の領域と重ならないようにしながら最大に拡大するための倍率を算出し、その倍率で拡大される文字領域RA4に対して重ならないように他の写真領域RB3の倍率を算出する手法である。つまり、この第1の手法では、まず文字拡大対象領域である文字領域RA4の倍率が優先的に算出され、その他の写真領域RB3の倍率については文字領域RA4の倍率が算出された後に二次的に算出される。したがって、この第1の手法では、文字領域RA4の倍率と写真領域RB3の倍率とが個別に算出されることになる。そのため、例えば文字領域RA4の倍率が算出されると、写真領域RB3は拡大することができずに写真領域RB3の倍率が「1」に算出されることもある。
【0044】
第2の手法は、文字拡大対象領域である文字領域RA4と写真領域RB3とが互いに重ならないように描画領域R1の範囲内で拡大できる文字領域RA4と写真領域RB3との共通した倍率を算出する手法である。つまり、この第2の手法では、文字領域RA4の倍率と写真領域RB3の倍率とが同じ値に算出されることになる。
【0045】
上記第1および第2の手法のうち、いずれの手法を採用するかは任意である。本実施形態では、一例として、第1の手法を採用する場合について説明する。すなわち、本実施形態において倍率算出部23は、ページP5に関しては、まず文字領域RA4を描画領域R1の範囲内で最大に拡大するための倍率を算出する。ここで、文字領域RA4の主走査方向の長さをXA4、副走査方向の長さをYA4とする。倍率算出部23は、これらの長さXA4,YA4に基づいて主走査方向の倍率である主倍率と、副走査方向の倍率である副倍率とを算出する。つまり、主倍率はLX/XA4の演算を行うことにより算出され、副倍率はLY/YA4の演算を行うことにより算出される。このようにして算出される主倍率および副倍率は、主走査方向と副走査方向のそれぞれにおいて描画領域R1の範囲内で文字領域RA4を最大に拡大するための倍率となる。そして倍率算出部23は、それら主倍率と副倍率とを比較し、小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として採用し、その倍率を文字領域RA4の倍率とする。
【0046】
次に、倍率算出部23は、ページP5に関し、写真領域RB3を、描画領域R1の範囲内において、拡大される文字領域RA4と重ならないように最大に拡大するための倍率を算出する。ここで、写真領域RB3の主走査方向の長さをXB3、副走査方向の長さをYB3とする。倍率算出部23は、これらの長さXB3,YB3に基づいて主走査方向の倍率である主倍率と、副走査方向の倍率である副倍率とを算出する。つまり、主倍率はLX/XB3の演算を行うことにより算出され、副倍率はLY/YB3の演算を行うことにより算出される。このようにして算出される主倍率および副倍率は、主走査方向と副走査方向のそれぞれにおいて描画領域R1の範囲内で写真領域RB3を最大に拡大するための倍率となる。そして倍率算出部23は、それら主倍率と副倍率とを比較し、小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率とし、その共通した倍率で写真領域RB3を拡大処理したとき、拡大される文字領域RA4に重ならないことを条件として、その倍率を写真領域RB3の倍率として採用する。尚、主走査方向と副走査方向とで共通した倍率で写真領域RB3を拡大処理したとき、拡大される文字領域RA4に重なってしまう場合は、その共通した倍率を一定の割合で低下させていきながら、再び拡大される文字領域RA4と重なってしまうかどうかを検証していくことにより、文字領域RA4と重ならない写真領域RB3の倍率を算出する。
【0047】
図10は、ページP6の画像を拡大して示す図である。尚、図10においても破線で囲まれた領域が描画領域R1である。ページP6には、画像検出部22によって検出された文字領域RA5と文字領域RA6とが含まれる。このうち、文字領域RA5は、描画領域R1の周縁部に接しているので、文字拡大対象領域ではない。これに対し、文字領域RA6は、文字拡大対象領域である。倍率算出部23は、このページP6に関しては文字領域RA5を拡大対象から除外し、倍率を「1」とする。また文字領域RA6については、描画領域R1の範囲内において文字領域RA5と重ならないように、最大に拡大するための倍率を算出する。ここで、文字領域RA6の主走査方向の長さをXA6、副走査方向の長さをYA6とする。また、文字領域RA5の主走査方向の長さをXA5、副走査方向の長さをYA5とする。倍率算出部23は、これらの長さXA6,YA6およびXA5,YA5に基づいて主走査方向の倍率である主倍率と、副走査方向の倍率である副倍率とを算出する。すなわち、主倍率は(LX−XA5)/XA6の演算を行うことにより算出され、副倍率は(LY−YA5)/YA6の演算を行うことにより算出される。このようにして算出される主倍率および副倍率は、主走査方向と副走査方向のそれぞれにおいて、描画領域R1の範囲内で文字領域RA5と重なることなく、文字領域RA6を最大に拡大するための倍率となる。そして倍率算出部23は、それら主倍率と副倍率とを比較し、小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として採用する。
【0048】
図11は、ページP7の画像を拡大して示す図である。尚、図11においても破線で囲まれた領域が描画領域R1である。ページP7には、画像検出部22によって検出された網点領域RC1と文字領域RA7とが含まれる。文字領域RA7は、網点領域RC1に包含されているため、文字拡大対象領域ではない。このような場合にも、倍率算出部23は、網点領域RC1と文字領域RA7とを一体的な文字網点混合領域として取り扱う。すなわち、倍率算出部23は、このページP7に関しては網点領域RC1と文字領域RA7とを含む文字網点混合領域を描画領域R1の範囲内で最大に拡大するための倍率を算出する。ここで、文字網点混合領域の主走査方向の長さをXC1、副走査方向の長さをYC1とする。倍率算出部23は、これらの長さXC1,YC1に基づいて主走査方向の倍率である主倍率と、副走査方向の倍率である副倍率とを算出する。すなわち、主倍率はLX/XC1の演算を行うことにより算出され、副倍率はLY/YC1の演算を行うことにより算出される。このようにして算出される主倍率および副倍率は、主走査方向と副走査方向のそれぞれにおいて描画領域R1の範囲内で文字網点混合領域を最大に拡大するための倍率となる。そして倍率算出部23は、それら主倍率と副倍率とを比較し、小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として採用する。
【0049】
図12は、ページP8の画像を拡大して示す図である。尚、図12においても破線で囲まれた領域が描画領域R1である。ページP8には、画像検出部22によって検出された写真領域RB4と文字領域RA8と写真領域RB5と文字領域RA9とが含まれる。文字領域RA8は、写真領域RB4に接しているため、文字拡大対象領域ではない。また、文字領域RA9は、文字拡大対象領域である。このように1つのページに、文字拡大対象領域である文字領域RA9と、それ以外の他の領域が複数含まれている場合にも、倍率算出部23は、上述したように第1および第2の手法のいずれかを採用して倍率を算出する。本実施形態では、第1の手法により倍率を算出するため、まず文字拡大対象領域である文字領域RA9の倍率を算出する。
【0050】
図12に示すように、文字領域RA9の主走査方向の長さをXA9、副走査方向の長さをYA9とすると、倍率算出部23は、これらの長さXA9,YA9に基づいて、文字領域RA9が他の領域に重ならないように、主走査方向の倍率である主倍率と、副走査方向の倍率である副倍率とを算出する。このようにして算出される主倍率および副倍率は、主走査方向と副走査方向のそれぞれにおいて、描画領域R1の範囲内で文字領域RA6を他の領域に重ねることなく最大に拡大するための倍率となる。そして倍率算出部23は、それら主倍率と副倍率とを比較し、小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として採用する。そしてその後、倍率算出部23は、写真領域RB4と文字領域RA8とを一体的に取り扱った文字写真混合領域と、写真領域RB5の倍率をそれぞれ他の領域に重ならないようにして算出する。
【0051】
このように倍率算出部23は、各ページP1〜P8に含まれる文字領域と写真領域と網点領域のそれぞれの倍率を算出する。このとき倍率算出部23は、印刷用紙9の縦方向と横方向のいずれかの方向に対応する主走査方向の主倍率と、他の方向に対応する副走査方向の副倍率とを同じ倍率にする。そして、倍率算出部23は、特に文字拡大対象領域として検出された文字領域については、ページ毎にその文字領域の倍率を算出するようになっている。
【0052】
図2に戻り、倍率決定部24は、倍率算出部23によって算出された倍率に基づき、実際に拡大処理する際に適用する倍率を決定する処理部である。この倍率決定部24は、文字拡大対象領域として検出された文字領域のそれぞれについて算出された倍率を、共通した倍率に決定する。すなわち、倍率算出部23によって算出された文字拡大対象領域の倍率は、ページ毎に異なる倍率となっている。そのため、倍率決定部24は、文字拡大対象領域として検出された文字領域のページ毎に異なる倍率の中から最小の倍率を特定し、その最小の倍率を各ページP1〜P8に含まれる文字拡大対象領域の共通した倍率として決定する。
【0053】
このように倍率決定部24が、原稿データに含まれる文字領域のうち、文字拡大対象領域として検出された文字領域の倍率を共通した倍率に決定することにより、複数のページに亘って記述されている纏まりのある一連の文書(本文)を構成する文字領域の倍率が均一化されるようになる。尚、倍率決定部24は、文字拡大対象領域以外の領域に関する倍率については、例えば倍率算出部23で算出された倍率をそのまま採用して倍率決定を行うように構成される。
【0054】
そして倍率設定部14は、上記のようにして決定される倍率を、出力画像処理部15に出力する。
【0055】
出力画像処理部15は、入力画像処理部12から入力する原稿データに対し、プリンタ部16に出力するために必要な画像処理を行う処理部である。このような画像処理には、例えば、画素ごとのR(赤),G(グリーン),B(ブルー)の色成分値を、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の色成分値に変換する処理や、下地飛ばし処理、文字エッジ補正処理、誤差拡散処理、スクリーン処理などの各種の処理が含まれる。また、出力画像処理部15は、拡大処理部25を備えている。この拡大処理部25は、倍率設定部14において決定された倍率に基づいて、複数ページからなる原稿データに含まれる文字領域、写真領域および網点領域のそれぞれを拡大する処理を実行する。
【0056】
図13は、拡大処理部25によって原稿データに含まれる各ページの画像が拡大された状態の一例を示す図である。この図13に示すページP1〜P8は、図4に示した原稿データの各ページP1〜P8に対応している。尚、図13においても各ページの破線枠は描画領域R1の周縁部を規定する枠に相当する。
【0057】
拡大処理部25が複数ページからなる原稿データに含まれる文字領域、写真領域および網点領域のそれぞれの拡大処理を実行することにより、図4に示した原稿データに含まれる文字領域、写真領域および網点領域のそれぞれは、図13に示すように拡大される。このとき、倍率設定部14において複数のページに亘って記述されている纏まりのある一連の文書(本文)を構成する文字拡大対象領域として検出された文字領域RA1,RA2,RA4,RA6,RA9は、均等な倍率で拡大されるため、拡大処理後においてもそれらの文字領域RA1,RA2,RA4,RA6,RA9に含まれる文字のサイズは均等な大きさとなる。
【0058】
そして拡大処理部25による拡大処理が完了すると、出力画像処理部15は、各種画像処理を行って得られる原稿データを印刷ジョブとしてプリンタ部16に出力する。そしてプリンタ部16は、ユーザによって指定された印刷用紙9に対して出力画像処理部15から入力する原稿データに基づいて印刷を行い、出力する。
【0059】
このように本実施形態の画像処理装置1は、原稿を読み取ってコピー出力を行う際、各ページに含まれる画像成分(例えば、文字、写真、網点など)が見やすくなるように拡大して出力する構成である。そして、原稿データに複数のページが含まれている場合には、それら複数のページに亘って記述されている一連の本文を構成する文字領域を均等な倍率で拡大する。そのため、本文を構成する文字がページ毎に異なるサイズに拡大されてしまうことがなく、文書の読み易さを維持しつつ、原稿全体として見やすい状態となるように自動拡大を行うことが可能である。それ故、本実施形態の画像処理装置1は、複数ページから成る原稿データに基づいて画像出力を行う際、本文を構成する文字がページ毎に異なるサイズに拡大されることを防止して文書の読み易さを維持しつつ、原稿全体として見やすい状態で画像出力を行うことができるようになっている。
【0060】
上記においては、画像処理装置1のハードウェア構成により、原稿データに含まれる画像成分の自動拡大処理を行う場合を例示した。一方、上述したような処理は、画像処理装置1の内部においてコンピュータが所定のプログラムを実行することによって実現することも可能である。以下、この場合の処理手順について説明する。
【0061】
図14乃至図17は、画像処理装置1が自動拡大処理を行って画像出力を行う場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。画像処理装置1は、この処理を開始すると、コピー出力の対象となる原稿データを取得する(ステップS1)。そして原稿データを取得すると、画像処理装置1は、その原稿データに含まれる全ページ数を検知する(ステップS2)。このとき検知される原稿データのページ数をNとする。そして画像処理装置1は、印刷出力を行う際の描画領域R1を検知する(ステップS3)。ここでは、例えばユーザにより指定された用紙サイズと余白領域とに基づいて、印刷用紙9に対して印刷可能な領域が描画領域R1として検知される。
【0062】
そして画像処理装置1は、ステップS1で取得した原稿データを解析し、各ページにおいて有効な画像成分が含まれる領域を検出するための画像検出処理を実行する(ステップS4)。図15は、この画像検出処理(ステップS4)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。画像処理装置1は、この処理を開始すると、まず、ページ数をカウントするためのページ番号Pを1に初期化する(ステップS10)。そして画像処理装置1は、ページ番号Pに対応する1ページ分の原稿データを読み出し(ステップS11)、文字領域抽出処理(ステップS12)、写真領域抽出処理(ステップS13)、および、網点領域抽出処理(ステップS14)を実行する。文字領域抽出処理(ステップS12)では、例えば、原稿データに対してOCR(Optical Character Reader)などの文字認識処理が行われ、文字の集合によって構成される領域が抽出される。写真領域抽出処理(ステップS13)では、例えば原稿データの濃度分布が解析され、中間濃度値を示す画素が1つに纏まっている領域が写真領域として抽出される。また網点領域抽出処理(ステップS14)では、例えば原稿データの濃度分布が解析され、一定の濃度値を示す画素が1つの纏まっている領域が網点領域として抽出される。これらの処理により、ページ番号Pに対応する1ページ分の原稿データから、文字領域、写真領域および網点領域のそれぞれが抽出される。尚、当該ページのデータに、文字領域、写真領域又は網点領域が含まれていない場合、ステップS12,S13,S14の処理を行ってもそれらの領域が抽出されないこともある。
【0063】
そして画像処理装置1は、ページ番号Pに対応する1ページ分の原稿データから、文字領域が抽出されたか否かを判断する(ステップS15)。ここで、文字領域が抽出されていないと判断される場合は(ステップS15でNO)、ステップS20に進む。これに対し、文字領域が抽出されている場合(ステップS15でYES)、画像処理装置1は、次にその文字領域が描画領域の周縁部に接しているか否かを判断する(ステップS16)。その結果、文字領域が描画領域の周縁部に接している場合(ステップS16でYES)、ステップS20に進む。また、文字領域が描画領域の周縁部には接していない場合(ステップS16でNO)、画像処理装置1は、次にその文字領域が写真領域に隣接しているか否かを判断する(ステップS17)。その結果、文字領域が写真領域に接している場合(ステップS17でYES)、ステップS20に進む。また、文字領域が写真領域には接していない場合(ステップS17でNO)、画像処理装置1は、さらにその文字領域が網点領域に包含されているか否かを判断する(ステップS18)。その結果、文字領域が網点領域に包含されている場合(ステップS18でYES)、ステップS20に進む。一方、文字領域が網点領域に包含されていない場合(ステップS18でNO)、画像処理装置1は、その文字領域がページ内において他の領域からは離れた状態の単独で存在していることを検知することができるので、その文字領域を、複数のページに亘って記述された纏まりのある一連の文書(本文)を構成する文字領域として特定する。そして画像処理装置1は、その文字領域を文字拡大対象領域として検出する(ステップS19)。
【0064】
そして画像処理装置1は、ページ番号Pの値に1を加算し(ステップS20)、ページ番号Pの値が全ページ数Nの値を超えたか否かを判断する(ステップS21)。その結果、ページ番号Pの値が全ページ数N以下であれば(ステップS21でNO)、ステップS11に戻って、次のページの原稿データに対して上述した処理を繰り返す。一方、ページ番号Pの値が全ページ数Nを越えていれば(ステップS21でYES)、画像検出処理(ステップS4)は終了する。
【0065】
このような画像検出処理により、複数ページからなる原稿データに含まれる全ての文字領域、写真領域および網点領域が抽出されると共に、一連の文書(本文)を構成する文字領域が文字拡大対象領域として検出される。
【0066】
図14のフローチャートに戻り、次に画像処理装置1は、文字領域、写真領域および網点領域のそれぞれを拡大するための倍率を算出する倍率算出処理を実行する(ステップS5)。図16は、この倍率算出処理(ステップS5)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。画像処理装置1は、この処理を開始すると、まず、ステップS3で検知された描画領域R1を判別する(ステップS20)。これにより、描画領域R1の周縁部の位置が特定される。この後、画像処理装置1は、ページ数をカウントするためのページ番号Pを1に初期化する(ステップS21)。
【0067】
そして画像処理装置1は、ページ番号Pに対応するページにおいて、文字拡大対象領域が検出されているか否かを判断する(ステップS22)。その結果、文字拡大対象領域が検出されている場合(ステップS22でYES)、画像処理装置1は、その文字拡大対象領域を描画領域R1の範囲内で拡大するための主走査方向の主倍率を算出し(ステップS23)、それに続いて副走査方向の副倍率を算出する(ステップS24)。そして画像処理装置1は、主倍率と副倍率とを比較し(ステップS25)、主倍率と副倍率の小さい方の倍率を採用して主倍率と副倍率とを均一化する(ステップS26)。一方、ページ番号Pに対応するページにおいて文字拡大対象領域が検出されていない場合(ステップS22でNO)、ステップS23〜S26の処理はスキップし、ステップS27に進む。
【0068】
次に画像処理装置1は、ページ番号Pに対応するページにおいて、文字拡大対象領域以外の他の領域が検出されているか否かを判断する(ステップS27)。その結果、文字拡大対象領域以外の領域が検出されている場合(ステップS27でYES)、画像処理装置1は、他の領域である文字領域、写真領域又は網点領域を描画領域R1の範囲内で拡大するため倍率を算出する(ステップS28)。このとき、他の領域については、文字拡大対象領域が拡大されたときに、その文字拡大対象領域と重ならないような倍率が算出される。尚、ページ番号Pに対応するページにおいて文字拡大対象領域以外の他の領域が検出されていない場合(ステップS27でNO)、ステップS28の処理はスキップし、ステップS29に進む。
【0069】
そして画像処理装置1は、ページ番号Pの値に1を加算し(ステップS29)、ページ番号Pの値が全ページ数Nの値を超えたか否かを判断する(ステップS30)。その結果、ページ番号Pの値が全ページ数N以下であれば(ステップS30でNO)、ステップS22に戻って、次のページの原稿データに対して上述した処理を繰り返す。一方、ページ番号Pの値が全ページ数Nを越えていれば(ステップS30でYES)、倍率算出処理(ステップS5)は終了する。
【0070】
このような倍率算出処理により、複数のページにおいて一連の文書(本文)が構成される文字拡大対象領域を描画領域の範囲内で拡大するための倍率が、ページ毎に算出されることになる。
【0071】
再び図14のフローチャートに戻り、次に画像処理装置1は、文字拡大対象領域として検出された文字領域のそれぞれについてページ毎に算出された倍率を、共通した倍率に決定する倍率決定処理を実行する(ステップS6)。図17は、この倍率決定処理(ステップS6)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。画像処理装置1は、この処理を開始すると、まず、原稿データに含まれる複数のページの中から、文字拡大対象領域が含まれるページを特定する(ステップS40)。そして画像処理装置1は、それら各ページに含まれる文字拡大対象領域に対して算出された倍率を全て読み出し(ステップS41)、それぞれの倍率を比較する(ステップS42)。そして画像処理装置1は、ページ毎に算出された文字拡大対象領域の倍率のうちから、最小となる倍率を選択し、その最小倍率を各ページに含まれる文字拡大対象領域の共通した倍率として決定する(ステップS43)。以上で、倍率決定処理(ステップS6)が終了する。このような倍率決定処理により、複数のページに含まれる文字拡大対象領域の倍率が均一化されるようになる。
【0072】
その後、再び図14のフローチャートに戻り、画像処理装置1は、原稿データの各ページに含まれる文字領域、写真領域および網点領域のそれぞれを拡大する拡大処理を実行する(ステップS7)。このとき、文字拡大対象領域については、異なるページに含まれるものであっても同じ倍率で拡大処理が行われる。また、文字拡大対象領域を含まないページに存在する網点領域又は写真領域は、倍率算出処理(ステップS5)によって算出された倍率に基づいて拡大されることになる。そして画像処理装置1は、拡大処理の行われた原稿データに基づいて印刷出力を行うための出力処理を実行する(ステップS8)。以上で、全ての処理が終了する。
【0073】
以上のように本実施形態の画像処理装置1は、複数ページからなる原稿データを取得すると、その原稿データの各ページに含まれる文字領域を文字拡大対象領域として検出すると共に、その原稿データに基づいて画像出力を行う際の描画領域を検出する。ここで検出される文字拡大対象領域は、複数のページに亘って記述された纏まりのある一連の文書(本文)を構成する文字領域である。そして、その文字拡大対象領域を描画領域の範囲内で拡大するための倍率をページ毎に算出し、ページ毎に算出される倍率のうち、最小の倍率を各ページに含まれる文字拡大対象領域の共通した倍率として決定する。そして画像処理装置1は、その決定された共通した倍率に基づいて各ページの文字拡大対象領域に含まれる文字画像を拡大するように構成されている。
【0074】
このような構成によれば、複数ページから成る原稿データに基づいて画像出力を行う際、本文を構成する文字がページ毎に異なるサイズに拡大されることを防止することができ、文書の読み易さを維持することが可能になる。その結果、原稿全体として見やすい状態で画像出力を行うことができるようになる。
【0075】
(変形例)
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0076】
例えば、上述した実施形態では、画像処理装置1のコピー機能を例に挙げて、自動拡大を行うための具体的な構成および動作を説明したが、上述した自動拡大を行う技術はコピー機能には限られず、プリンタ機能、FAX機能、スキャナ機能のいずれの機能に対しても適用可能である。例えば、プリンタ機能の場合には、ネットワーク2を介してコンピュータ3から入力する原稿データに印刷出力を行う際に、上述した自動拡大を行うことができる。また、FAX機能の場合には、FAXデータの送信時若しくは受信時に取得した原稿データに基づいて画像出力を行う際に、上述した自動拡大を行うことが可能である。さらに、スキャン機能の場合には、原稿を読み取って取得した原稿データをコンピュータ3などに送信する際に、上述した自動拡大を行うことが可能である。
【0077】
また上述した実施形態では、画像処理装置1がデジタル複合機やMFPである場合を例示したが、これに限られるものでもない。すなわち、画像処理装置1は、コピー専用機であっても良いし、プリンタ専用機であっても良い。またFAX専用機であっても良いし、スキャナ専用機であっても構わない。
【0078】
さらに上述した自動拡大を行うための処理は、コンピュータ3によって行われるものであっても構わない。例えばコンピュータ3は、ネットワーク2を介して印刷対象となる原稿データ(印刷データ)を送信する際、プリンタドライバなどのプログラムを実行する。コンピュータ3は、このプログラムを実行することにより、上述した図14乃至図17に示したフローチャートに基づく処理を行うようにしても良い。この場合、コンピュータ3が、画像処理装置1に対して原稿データを送信するときには、既に文字拡大対象領域が描画領域R1の範囲内で均一に拡大された状態となっており、画像処理装置1において上述した自動拡大を行う必要はなくなる。
【符号の説明】
【0079】
1 画像処理装置
3 コンピュータ
11 スキャナ部
12 入力画像処理部
15 出力画像処理部
16 プリンタ部
21 描画領域検出部(描画領域検出手段)
22 画像検出部(画像検出手段)
23 倍率算出部(倍率算出手段)
24 倍率決定部(倍率決定手段)
25 拡大処理部(拡大処理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ページからなる原稿データを取得する原稿データ取得手段と、
前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域を文字拡大対象領域として検出する画像検出手段と、
原稿データに基づいて画像出力を行う際の描画領域を検出する描画領域検出手段と、
前記画像検出手段によって検出される文字拡大対象領域を前記描画領域の範囲内で拡大するための倍率をページ毎に算出する倍率算出手段と、
前記倍率算出手段によってページ毎に算出される倍率のうち、最小の倍率を各ページに含まれる前記文字拡大対象領域の共通した倍率として決定する倍率決定手段と、
前記倍率決定手段によって決定された倍率に基づいて各ページの前記文字拡大対象領域に含まれる文字画像を拡大する拡大処理手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像検出手段は、原稿データの各ページに含まれる文字領域のうち、前記描画領域の周縁部に接している文字領域を前記文字拡大対象領域から除外することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像検出手段は、前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域と写真領域とを検出するように構成され、原稿データの各ページに含まれる文字領域のうち、写真領域に接している文字領域を前記文字拡大対象領域から除外することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像検出手段は、前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域と網点領域とを検出するように構成され、網点領域に包含される文字領域を、前記文字拡大対象領域から除外することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像検出手段は、前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域と網点領域と写真領域とを検出するように構成され、
前記拡大処理手段は、一のページに文字領域と網点領域と写真領域のそれぞれが独立して存在している場合、文字領域と網点領域と写真領域のそれぞれの画像を前記倍率決定手段によって決定された倍率に基づいて拡大することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記倍率算出手段は、前記文字拡大対象領域を含まないページの倍率として、網点領域又は写真領域を前記描画領域の範囲内で拡大するための倍率を算出し、
前記拡大処理手段は、前記文字拡大対象領域を含まないページの網点領域又は写真領域に含まれる画像を、前記倍率算出手段によって算出される倍率に基づいて拡大することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記倍率算出手段は、各ページの倍率を算出する際、前記描画領域の主走査方向について最大に拡大するための主倍率と、副走査方向について最大に拡大するための副倍率とを算出し、主倍率と副倍率とを比較して小さい方の値を主走査方向および副走査方向に共通した倍率として算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
複数ページからなる原稿データを取得するステップと、
取得された原稿データの各ページに含まれる文字領域を文字拡大対象領域として検出するステップと、
原稿データに基づいて画像出力を行う際の描画領域を検出するステップと、
前記文字拡大対象領域を前記描画領域の範囲内で拡大するための倍率をページ毎に算出するステップと、
ページ毎に算出される倍率のうち、最小の倍率を各ページに含まれる前記文字拡大対象領域の共通した倍率として決定するステップと、
決定された倍率に基づいて各ページの前記文字拡大対象領域に含まれる文字画像を拡大するステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
複数ページからなる原稿データを取得する原稿データ取得手段、
前記原稿データ取得手段によって取得される原稿データの各ページに含まれる文字領域を文字拡大対象領域として検出する画像検出手段、
原稿データに基づいて画像出力を行う際の描画領域を検出する描画領域検出手段、
前記画像検出手段によって検出される文字拡大対象領域を前記描画領域の範囲内で拡大するための倍率をページ毎に算出する倍率算出手段、
前記倍率算出手段によってページ毎に算出される倍率のうち、最小の倍率を各ページに含まれる前記文字拡大対象領域の共通した倍率として決定する倍率決定手段、および、
前記倍率決定手段によって決定された倍率に基づいて各ページの記文字拡大対象領域に含まれる文字画像を拡大する拡大処理手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−49583(P2012−49583A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186784(P2010−186784)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】