説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】違和感を与えるような一瞬の輝度変化を大きく低減させる。
【解決手段】倍速部104は、画像データをN倍速(N:自然数)する。黒挿入領決定部103は、倍速部104により生成される複数のサブフレームにおける、黒画像を表示する領域である黒画像領域と前記画像データを表示する領域である原画像領域とを決定する。QRコード挿入座標位置算出部102は、上記複数のサブフレームにおけるコード情報の挿入位置を算出する。黒画像領域QRコード挿入部107は、黒画像領域における上記挿入位置にコード情報を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コード情報が挿入された画像を生成するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの大型化が進み、電子広告として、多くの人の目につきやすい2階や屋上等の高い位置にディスプレイが設置される場合が多くなってきた。これらの電子広告にQRコードを表示する際、焦点距離の短い携帯カメラでコードを読み取るためには、コードサイズを大きく表示する必要があり、広告表示面積が減ってしまう問題があった。これに対して、特許文献1には、例えば数十フレームに1フレームの割合でQRコードを全画面に表示することにより、視聴者が肉眼でコードを認識することが困難なようにする技術が開示されている。これにより、広告表示面積に影響なく、QRコードの表示面積を大きくとることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−128900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、QRコードを全画面に1フレーム表示した際に、画面輝度の一瞬の変化(ちらつき)が視認され、視聴者に違和感を与えるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、違和感を与えるような一瞬の輝度変化を大きく低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、画像データをN倍速(N:自然数)するN倍速手段と、前記N倍速手段により生成される複数のサブフレームにおける、黒画像を表示する領域である黒画像領域と前記画像データを表示する領域である原画像領域とを決定する決定手段と、前記複数のサブフレームにおけるコード情報の挿入位置を算出する算出手段と、前記黒画像領域における前記挿入位置にコード情報を挿入する第1の挿入手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、違和感を与えるような一瞬の輝度変化を大きく低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】黒画像を全画面に挿入した場合のQRコード表示方法について説明するための図である。
【図3】黒画像挿入領域を複数のフレームに分割する処理を説明するための図である。
【図4】サブフレーム間で縦に黒画像領域を分割した場合における、QRコードを表示する液晶ディスプレイ側の処理と、それを撮像する携帯カメラ側の処理とを説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。図1において、101はQRコード生成部である。102はQRコード挿入座標位置算出部である。103は黒挿入領域決定部である。104は倍速部である。105は黒挿入部である。106は原画像領域オフセット調整部である。107は黒画像領域QRコード挿入部である。108は黒画像領域QRコード飽和量調整部である。
【0011】
QRコード生成部101は、外部から入力されるコード化の元となるデータ(以下、コンテンツ情報と称す)からQRコードを生成する。なお、本発明はQRコード以外にも、幾何学形状のコード情報等にも適用可能である。黒挿入領域決定部103は黒画像を挿入する領域(以下、黒画像挿入領域と称す)を決定する。QRコード挿入座標位置算出部102は、QRコードと黒画像挿入領域とからQRコードの挿入位置を示す座標情報(以下、QRコード挿入座標位置と称す)を算出する。倍速部104は、60Hzの入力画像データを120Hzに倍速変換する。黒挿入部105は、黒挿入領域決定部103で決定された黒画像挿入領域に黒画像を挿入する。以下、黒画像が挿入された領域を黒画像領域と称す。なお、本実施形態における倍速部104は2倍速に変換しているが、これに限らず、本発明は、N倍速(N:自然数)に変換する場合に適用することができる。
【0012】
原画像領域オフセット調整部106は、原画像領域におけるQRコード挿入座標位置の画素に対してオフセット調整を行う。その際に、原画像領域オフセット調整部106は、原画像領域におけるQRコード挿入座標位置の画素値と、黒画像領域におけるQRコードの画素値との輝度を積分した際に、視聴者が原画像を正しく視認できるようにオフセット調整を行う。黒画像領域QRコード挿入部107及び黒画像領域QRコード飽和量調整部108は、黒画像領域にQRコードを描画し、出力画像データとして出力する。なお、黒画像領域QRコード挿入部107は第1の挿入手段、原画像領域オフセット調整部106は第2の挿入手段の適用例となる構成である。
【0013】
以下、図2を参照しながら、黒画像を全画面に挿入した場合のQRコード表示方法について説明する。図2(a)における201及び202は、60Hzの入力画像データの1フレーム目及び2フレーム目である。倍速部104は、60Hzの入力画像データに対して倍速処理を行い、図2(b)に示す120Hzのサブフレーム203〜206を生成する。即ち、1フレーム目201から、第1サブフレーム203と第2サブフレーム204とが生成され、2フレーム目202から、第1サブフレーム205と第2サブフレーム206とが生成される。黒挿入部105は、上記各サブフレーム203〜206について、黒挿入領域決定部103で決定された黒画像挿入領域に黒画像を挿入する。ここでは、第2サブフレーム204、206に対して全面に黒を挿入するよう処理される。その結果、図2(c)の207、208に示すような全面黒のサブフレームが生成される。
【0014】
図2(d)は、黒画像領域にQRコードが挿入された例を示している。黒領域QRコード挿入部107は、全面黒の第2サブフレーム207、208に対して、図1のQRコード挿入座標位置算出部102で算出されたQRコード挿入座標位置の画素値をグレーの値に置換する。これにより、図2(d)の209、210に示すように、黒画像領域内に背景部がグレーのQRコードが描画される。本実施形態では、ダイナミックレンジの1/2の値をグレーとし、QRコードの背景部の画素値として使用するが、上記のような値とする必要はなく、撮像装置である携帯カメラ側でエンコード可能な値であればどのような値でも構わない。挿入するQRコードは、黒画像領域内に表示可能な限り、大きめにすることが望ましい。これにより、2フレームに1フレームの割合でQRコードが画面に大きく表示されることになる。よって、携帯カメラで液晶ディスプレイに表示されたQRコードを撮像する際に、撮影距離を確保することが可能となるとともに、QRコードが表示されたフレームのサンプリング頻度を高めることができる。
【0015】
しかしながら、図2(d)に示す表示を120Hzの積分輝度で視認すると、QRコード部分が明るく浮いて見えてしまう。即ち、人間が視覚する画素値は、式1、式2に示すような2種類の値に分かれることになる。
QRコード表示部分積分輝度値=(入力画像データの画素値+QRコードの画素値)/2・・・式1
QRコード表示部分以外積分輝度値=(入力画像データの画素値+0)/2・・・式2
【0016】
式1は、QRコード表示部分における積分輝度値を示している。QRコード表示部分では、入力画像データとグレーのQRコードとが交互に表示されるため、視覚される積分輝度値は、入力画像データの画素値とグレーのQRコードの画素値との平均値となる。式2は、QRコード表示部分以外の部分の積分輝度値を示している。QRコード表示部分以外の部分では、入力画像データと黒画像とが交互に表示されるため、視覚される積分輝度値は、入力画像データの画素値と黒画像の画素値との平均値となる。
【0017】
式1と式2とを比較すると明らかなように、式2より式1の方が明るい値となるため、QRコード部分が明るく浮いて視認される問題が生じる。この問題に対応するために、図2(e)の211及び212に示すように、黒画像領域のQRコード表示部分に対応する原画像領域の画素に対して、QRコード表示部分以外の部分の積分輝度値と等しくなるように、オフセット調整が行われる。具体的には、原画像領域オフセット調整部106は、QRコード挿入座標位置に対応する入力画像データの画素値からQRコードの画素値を引くことでオフセット調整を行う。このオフセット調整処理を式3に示す。
オフセット調整後のQRコード表示部分の積分輝度値=[(入力画像データの画素値−QRコードの画素値)+QRコードの画素値]/2・・・式3
【0018】
これにより、QRコード表示部分の積分輝度値は、式2に示すQRコード表示部分以外の部分における積分輝度値と等価な式となる。しかしながら、式3において、入力画像データの画素値がQRコードの画素値よりも小さい場合、原画像領域オフセット調整部106で計算される値が負となり、画素値が0にクリップされ、マイナス分の値が失われてしまう。ここで、黒画像領域QRコード飽和量調整部108は、黒画像領域QRコード挿入部107によってQRコードが挿入される際に、このQRコードに対して上記マイナスの飽和量の調整を行う。具体的には、黒画像領域QRコード飽和量調整部108は、倍速部104から出力される第2サブフレーム204と、QRコード挿入座標位置算出部102で算出されるQRコード挿入座標位置とから第1サブフレーム211で発生したマイナスの飽和量を算出する。黒画像領域QRコード挿入部107は、QRコードの画素値から上記飽和量を減算した値をQRコードの画素値として挿入する。なお、黒画像領域QRコード飽和量調整部108は、第1サブフレームでマイナスが発生したと判断された場合のみ本処理を行う。上記処理で算出されるQRコードの画素値を式4に示す。
飽和量調整後のQRコードの画素値=QRコードの画素値+(入力画像データの画素値−QRコードの画素値)=入力画像データの画素値・・・式4
【0019】
第1サブフレームのオフセット調整でマイナスの飽和量が生じた場合、第1サブフレームの原画像領域のQRコード表示部分に表示される画素値は0であるため、マイナスの飽和量発生時のQRコード表示部分の積分輝度値は式5になる。
オフセット調整後のマイナスの飽和量発生時のQRコード表示部分における積分輝度値=(0+入力画像データの画素値)/2・・・式5
【0020】
これにより、QRコード表示部分における積分輝度値は、マイナスの飽和量発生時においても、式2に示すQRコード表示部分以外の部分の積分輝度値と等価な式となり、QRコード表示部分が明るく視認されることなく、入力画像データが表示可能となる。
【0021】
図3は、1フレーム分の黒画像領域を複数のサブフレームに分割する処理を説明するための図である。図3(a)に示す301及び302は、60Hzの入力画像データの1フレーム目及び2フレーム目である。倍速部104は、60Hzの入力画像データに対して倍速処理を行い、図3(b)に示す120Hzのサブフレーム303〜306を生成する。黒挿入部105は、上記各サブフレーム303〜306に対して、図1の黒挿入領域決定部103で決定された黒画像挿入領域に黒画像を挿入する。本実施形態における黒画像挿入領域は、図3(c)に示すように、黒画像をサブフレーム間で縦に分割した領域となる。第1サブフレーム307、309で画面左半分に黒画像が挿入され、第2サブフレーム308、310で画面右半分に黒画像が挿入される。
【0022】
黒画像領域QRコード挿入部107は、図3(d)の311に示すように、黒画像領域に対してQRコードを挿入する。原画像領域オフセット調整部106は、図3(d)の312に示すように、原画像領域にQRコードをオフセットする。これにより、黒画像領域のQRコードと、原画像領域におけるオフセットされたQRコードとが縦に二つ並ぶことになる。なお、QRコードの挿入方法及びオフセット調整は、図2を用いて説明した方法と同様である。これにより、液晶ディスプレイに表示される全フレームにQRコードが表示され、且つ、液晶ディスプレイの線順次走査時においてフレーム更新中の画面でもQRコードが常に表示されることになる。
【0023】
ここで、図4を参照しながら、上述した処理について詳細に説明する。図4は、上記のようにサブフレーム間で縦に黒画像領域を分割した場合における、QRコードを表示する液晶ディスプレイ側の処理と、それを撮像する携帯カメラ側の処理とを説明するための図である。401〜408は、本方式でQRコードを表示している液晶ディスプレイである。フレームレートは120Hzとする。409、414、419は携帯カメラのサンプリングタイミングを示している。液晶ディスプレイのフレームレートと携帯カメラのフレームレートとは非同期であるため、上記3種類の位相状態を例として記載している。携帯カメラのフレームレートを30Hzとする。なお、シャッタスピードは、液晶ディスプレイ等の線順次走査ホールド型ディスプレイでは、フレームレートよりも十分早い必要がある。プラズマ等のインパルス型ディスプレイの場合は、インパルス発光を撮像するため、フレームレートよりも早く、ある程度遅めのシャッタスピードである必要がある。
【0024】
409の位相状態では、携帯カメラは、410及び411に示すタイミングで液晶ディスプレイの表示画面を撮像する。撮像された画像データは、412に示す左半分にQRコードが表示された画像データとなり、413に示すように正常にQRコードが抽出される。414の位相状態では、携帯カメラは、415及び416に示すタイミングで液晶ディスプレイの表示画面を撮像する。撮像された画像データは、417に示す右半分にQRコードが表示された画像データとなり、418に示すように正常にQRコードが抽出される。419の位相状態では、携帯カメラは、420及び421に示すタイミングで液晶ディスプレイの表示画面を撮像する。このタイミングで撮像される画面は、422に示すように、液晶ディスプレイにおいてフレームが更新されている途中の画面となるが、423に示すように正常にQRコードが抽出される。
【0025】
420のタイミングで撮像される画像データは、424のフレームから425のフレームに更新される途中の画像データとなる。撮像タイミングが更新の最初の方であれば、426のフレームに示すように画面上半分の途中まで更新された画像データが撮像され、左下に表示されているQRコードが抽出可能となる。撮像タイミングが更新のほぼ真中であれば、427のフレームに示すように画面中央まで更新された画像データが撮像され、左下と右上のQRコードが抽出可能となる。撮像タイミングが更新の最後の方であれば、428のフレームに示すように、画面下半分の途中まで更新された画像データが撮像され、右上に表示されているQRコードが抽出可能となる。
【0026】
上記のように、黒画像領域をサブフレーム間で分割し、QRコードを縦2つに挿入することで、全フレームにQRコードが表示され、且つ、液晶ディスプレイの線順次走査時においてフレーム更新中の画面でもQRコードが常に表示されることになる。これにより、携帯カメラは、どのフレームでも、どのラインを更新中でも、QRコードが描画された画面を撮像することができるため、QRコードを取得するまでの時間を大幅に短縮することができる。なお、ここではQRコードを縦2つに挿入した場合を例に挙げているが、縦に挿入するQRコードの数は任意の複数の数としてよい。
【0027】
図5は、第1の実施形態に係る画像処理装置の処理を示すフローチャートである。以下、図5を参照しながら、第1の実施形態に係る画像処理装置の処理について説明する。
【0028】
ステップS101において、黒挿入領域決定部103は、黒画像挿入領域を決定する。ここで、黒画像挿入領域は、第2サブフレーム全面に黒画像を挿入するように決定してもよいし、各サブフレームに分割して黒画像を挿入するようにしてもよい。ステップS102において、QRコード生成部101は、外部より入力されるコンテンツ情報からQRコードを生成する。ステップS103において、QRコード挿入座標位置算出部102は、黒画像挿入領域とQRコードとに基づいて、QRコード挿入座標位置を算出する。ステップS104において、倍速部104は、60Hzの入力画像データに対して倍速処理を行い、120Hzのサブフレームを生成する。なお、本実施形態では、2倍速であるとしたが、任意の倍速、即ちN倍速(Nは任意の整数)としてもよい。
【0029】
ステップS105において、画像処理装置は、現在処理対象となっている入力画像データの画素が、ステップS101で決定された黒画像挿入領域の画素であるか否かを判定する。現在処理対象となっている入力画像データの画素が黒画像挿入領域の画素である場合、処理はステップS106に移行する。一方、入力画像データの画素が黒画像挿入領域の画素ではない場合、処理はステップS110に移行する。
【0030】
ステップS106において、画像処理装置は、現在処理対象となっている入力画像データの画素がステップS103で算出されたQRコード挿入座標位置の画素であるか否かを判定する。現在処理対象となっている入力画像データの画素がQRコード挿入座標位置の画素である場合、処理はステップS107に移行する。一方、現在処理対象となっている入力画像データの画素がQRコード挿入座標位置の画素ではない場合、処理はステップS109に移行する。
【0031】
ステップS107において、黒画像領域QRコード飽和量調整部108は、現在処理対処となっている入力画像データの画素値とQRコードの画素値との差分を求める。その結果、差分がマイナス、即ち、アンダーフローが発生した場合、黒画像領域QRコード飽和量調整部108は差分の絶対値を飽和量として算出する。アンダーフローが発生しない場合、飽和量は0となる。ステップS108において、黒画像領域QRコード挿入部107は、QRコードの画素値からステップS107で算出された飽和量を減算し、現在処理対象の画素をQRコードの画素として出力する。ステップS109において、黒挿入部105は、現在処理対象の画素を黒として出力する。
【0032】
ステップS110において、画像処理装置は、現在処理対象となっている入力画像データの画素がステップS103で算出されたQRコード挿入座標位置の画素であるか否かを判定する。現在処理対象となっている入力画像データの画素がQRコード挿入座標位置の画素である場合、処理はステップS111に移行する。一方、現在処理対象となっている入力画像データの画素がQRコード挿入座標位置の画素ではない場合、処理はステップS113に移行する。なお、現在処理対象となっている入力画像データの画素がQRコード挿入座標位置の画素である場合とは、この処理対象の画素は、原画像領域内のQRコードのオフセット調整画素である。
【0033】
ステップS111において、原画像領域オフセット調整部106は、現在処理対象の入力画像データの画素値からQRコードの画素値を引いた値を出力画像データの画素値として算出する。ステップS115において、原画像領域オフセット調整部106は、アンダーフローが発生したか否かを判定する。アンダーフローが発生した場合、処理はステップS112に移行する。一方、アンダーフローが発生していない場合、処理はステップS112をスキップする。
【0034】
ステップS112において、原画像領域オフセット調整部106は画素値を0にクリップする。ステップS113において、画像処理装置は、現在処理対象の入力画像データの画素値を出力画像データの画素値として出力する。ステップS114において、画像処理装置は、1フレーム(2サブフレーム)分の処理が終了したか否かを判定する。1フレーム分の処理が終了した場合、処理はステップS104に戻る。一方、1フレーム分の処理が終了していない場合、処理はステップS105に戻る。
【0035】
以上のように、本実施形態においては、QRコードを黒画像領域に挿入してフレーム毎に表示させるため、違和感を与えるような一瞬の輝度変化を大きく低減させることが可能となる。さらに、QRコードは、積分輝度視認効果を利用することで人間の目には視認されないため、広告領域を気にせずにコード面積を大きくとることが可能となる。
【0036】
ところで、数十フレームに1フレームだけQRコードが含まれる画面を表示する場合、以下の理由により携帯カメラ側での取得が困難となる問題がある。先ず、ディスプレイのフレームレートと携帯カメラのフレームレートとを比較した場合、一般的にディスプレイのフレームレートの方が高い場合が多い。このことから、例えば、30Hzの携帯カメラで、60Hzのディスプレイの画面を撮像した場合、QRコードが表示されていないフレームが撮像されてしまう場合が起こり得る。また近年、ディスプレイの高フレームレート化(120Hz、240Hz)が進んでいることを考慮すると、QRコードを撮像することがより困難になるといえる。さらに、液晶ディスプレイの場合は、線順次走査でライン単位に映像信号が更新されるため、QRコードが表示されているフレームが撮像できたとしても、フレーム更新中の場合が多く、QRコードを正常に撮像することは難しい。上記理由により、QRコードの取得成功率は決して高くはないといえる。
【0037】
このような場合、再度撮像を試みても、数十フレームに1フレームの割合でしかQRコードが表示されない場合、正しくQRコードを撮像できるまでに多くの時間がかかると推測される。例えば、液晶ディスプレイ側で1秒間に1フレームだけQRコードが表示される場合、一度QRコードの撮像に失敗すると、次にQRコードを撮像できるタイミングは1秒後になる。上述したように、QRコードの取得成功率は高くないことを考慮すると、QRコードを撮像できるまで多くのリトライが発生し、結果、多くの時間がかかってしまう。
【0038】
これに対し、本実施形態では、黒領域を分割して表示することにより、全フレームにQRコードを持たせることができ、線順次走査においてフレームを更新中でもQRコードを表示することが可能となる。従って、本実施形態によれば、携帯カメラ側でのQRコードの取得成功率が大きく高まる。よって、広告表示面積を削ることなく、QRコードの表示領域を大きくとることができ、且つ、携帯カメラ側で容易にコードが取得することが可能となる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態においては、QRコードの画素値に対して原画像領域で発生した飽和量を減算した場合に、QRコードの画素値が黒に近づき、携帯カメラ側でエンコード処理が正常にできない場合が起こる。第2の実施形態は、そのような場合に対応可能な構成を備えたものである。
【0040】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。図6において、101〜108は図1における同一符号の構成と同様の構成である。601はフレーム内高輝度表示領域探索部である。602はQRコード表示領域損失率算出部である。603はコンテンツ内解析結果判定部である。604はコンテンツ毎解析/判定結果記憶部である。605はガンマ調整部である。
【0041】
先ず、入力画像データはガンマ調整部605に入力される。初回コンテンツ再生時には、ガンマ調整部605はガンマ調整を行わず、入力画像データをそのまま後段ブロックに渡す。後述するが、ガンマ調整部605は、コンテンツ再生終了後に、QRコードが携帯カメラ側でエンコード困難と判断された場合にのみ、画面全体の輝度を上げるために使用される。フレーム内高輝度表示領域探索部601は、1フレーム内において、所定の値以上の画素値の画素が所定の割合以上存在する表示領域を探索する。即ち、フレーム内高輝度表示領域探索部601は、原画像領域にてオフセット調整を行った際にアンダーフローの発生頻度の少ない表示領域、つまり、黒画像領域にて飽和量調整が発生する頻度の少ない表示領域を探索する。例えば、入力画像データの端に黒い模様が集中している場合等は、画面中央よりの表示領域が探索される。フレーム内高輝度表示領域探索部601は、飽和量調整の発生が少ない表示領域内において表示可能な最大サイズのQRコードの頂点座標(以下、QRコード頂点座標と称す)、又は、当該表示領域を含む、表示可能な最大サイズのQRコード頂点座標を出力する。
【0042】
QRコード表示領域損失率算出部602は、上記QRコード頂点座標で示されるQRコードの表示領域内で飽和が発生する箇所とその飽和量とから、QRコードを描画した際に正しく携帯カメラ側でエンコードされない領域の割合を求める。即ち、QRコード表示領域損失率算出部602はQRコードの損失率を求める。QRコード生成部101は、QRコード損失率に基づいて誤り訂正レベルを決定し、QRコードを生成する。QRコードの規格上、訂正レベルは4つのレベルが規定されており、レベルLは7%、レベルMは15%、レベルQは25%、レベルHは30%までのQRコード損失率に対して復元が可能になっている。レベルが高くなるにつれ、QRコードのピッチが狭まり複雑になるため、携帯カメラでの認識率が低下してしまう。よって、QRコード生成部101は、飽和量調整に発生するQRコード損失率に応じて最適な誤り訂正レベルを選択する。例えば、QRコードを挿入する場所が全面的に明るい映像であれば、飽和調整は起こらないため、QRコード損失率も低くレベルLが適応される。逆に、挿入する場所内に黒点、黒線が存在している場合は、飽和調整が発生するため、誤り訂正レベルを上げて対応することになる。しかしながら、最適なQRコードの表示領域を選択してもQRコード損失率が30%を超えてしまう場合も起こり得る。そのような場合、QRコード生成部101は、誤り訂正レベルを最大のレベルHとし、QRコードを生成する。コンテンツ毎解析/判定結果記憶部604は、QRコード損失率30%を閾値として、各フレームで表示するQRコードが携帯カメラ側でエンコード可能か不可能かのステータスを記録する。QRコード生成以降の処理は第1の実施形態と同様である。QRコード挿入座標位置算出部102は、QRコード生成部101で生成されたQRコードと、フレーム内高輝度表示領域探索部601で決定された表示領域とにより、QRコード挿入座標位置を算出する。原画像領域QRコード挿入部107及び原画像領域オフセット調整部106は、黒画像領域及び原画像領域に対して、QRコード挿入、オフセット調整処理を行って出力する。
【0043】
コンテンツ再生終了後、コンテンツ内解析結果判定部603は、コンテンツ毎解析/判定結果記憶部604で記録されたステータスの解析及び判定を行う。具体的には、例えば、明るい背景の中を黒い物体が通過するような場合、一瞬エンコード不可能なQRコードが生成される。しかし、それがコンテンツ再生中の非常に短い時間(例えば1秒以下)だとすれば、1秒後に、エンコード可能なフレームが連続して表示されるため、実使用上大きな問題ではないと解析される。逆に、静止画広告の表示等で、常に黒い物体が固定位置に表示され、且つ、広告面積の大部分を占めるような場合や、画面全体が暗い場合においては、画面の大部分において飽和量調整が発生してしまう。よって、上記方法をもってしても携帯カメラ側においてエンコードされることが厳しく、問題ありと判定される。上記判定結果により、問題なしの場合は処理終了となり、逆に、問題ありの場合は、次回再生時にQRコードサイズ調整とガンマ調整とを行うことで対応する。例えば、例に挙げた静止画広告で黒い物体が中央に大きく表示されている場合、画面端の空き領域に、QRコード損失率が30%以下に納まるようにQRコードを縮小して表示される。画面全体が暗い場合においては、ガンマ調整を行い画面全体の輝度を上げて飽和量調整の発生頻度を低下させるようにする。QRコードのサイズ縮小処理は、QRコード認識率の低下に繋がり、ガンマ調整は画質の劣化に繋がるため、最終調整手段としてコンテンツ内容解析後に実施の有無を判断する構成とした。しかし、QRコードのサイズ調整に関しては、少しの縮小でQRコード損失率が30%以下に収まるようであれば、初回再生時にフレーム内高輝度表示領域探索部601で適切なコードサイズを決定する構成でも構わない。
【0044】
以下、図7を参照しながら、第2の実施形態に係る画像処理装置の処理について説明する。図7は、第2の実施形態に係る画像処理装置の処理を示すフローチャートである。
【0045】
ステップS201において、黒挿入領域決定部103は、黒画像挿入領域を決定する。このとき、第2サブフレーム全面に黒画像を挿入するように決定してもよいし、各サブフレームに分割して黒画像を挿入するように決定してもよい。ステップS202において、ガンマ調整部605は、入力画像データに対してガンマ調整を行い、画面全体の輝度を上げる。なお、初回コンテンツ再生時にはガンマ調整は行われず、コンテンツ再生後の解析結果が判断されてガンマ調整が実施される。ステップS203において、フレーム内高輝度表示領域探索部601は、入力画像データのフレーム内における高輝度表示領域、即ち、画素値の高い割合が大きい表示領域を探索し、当該表示領域内において表示可能な最大サイズのQRコード頂点座標、又は、当該表示領域を含む、表示可能な最大サイズのQRコード頂点座標を決定する。
【0046】
ステップS204において、QRコード表示領域損失率算出部602は、QRコード頂点座標で示されるQRコードの表示領域内において飽和が発生する画素の比率、即ち、黒画像領域内の当該表示領域にQRコードを挿入した際のQRコード損失率を算出する。それと同時に、コンテンツ毎解析/判定結果記憶部604は、QRコード損失率の最大許容値30%を閾値として携帯カメラ側でのエンコードの可否のステータスを記録する。ステップS205において、QRコード生成部101は、算出されたQRコード損失率に基づいて、誤り訂正レベルを決定する。
【0047】
ステップS206において、QRコード生成部101は、決定した誤り訂正レベルでQRコードを生成する。ステップS207において、QRコード挿入座標位置算出部102は、ステップS203で算出された表示領域と、ステップS206で生成されたQRコードとに基づいて、QRコード挿入座標位置を算出する。ステップS208において、倍速部104は、倍速処理により60Hzの入力画像データから120Hzのサブフレームを生成する。
【0048】
ステップS209において、画像処理装置は、現在処理対象となっている入力画像データの画素が、ステップS201で決定された黒画像挿入領域の画素であるか否かを判定する。現在処理対象となっている入力画像データの画素がQRコード挿入座標位置の画素である場合、処理はステップS210に移行する。一方、現在処理対象となっている入力画像データの画素がQRコード挿入座標位置の画素ではない場合、処理はステップS211に移行する。
【0049】
ステップS210において、画像処理装置は、黒画像の表示又は飽和を考慮したQRコードの表示を行う。なお、ステップS210の詳細は、図5のステップS106〜S109と同様である。ステップS211において、画像処理装置は、入力画像データの表示又はオフセット調整を行った入力画像データの表示を行う。なお、ステップS211の詳細は、図5のステップS110〜S113と同様である。
【0050】
ステップS212において、画像処理装置は、1フレーム(2サブフレーム)分の処理が終了したか否かを判定する。1フレーム分の処理が終了した場合、処理はステップS213に移行する。一方。1フレーム分の処理が終了していない場合、処理はステップS209に戻る。
【0051】
ステップS213において、画像処理装置は、コンテンツの再生が終了したか否かを判定する。コンテンツの再生が終了した場合、処理はステップS214に移行する。一方、コンテンツの再生が終了していない場合、処理はステップS202に戻る。ステップS214において、コンテンツ内解析結果判定部603は、ステップS204で記録された、1コンテンツ分のエンコード可否のステータスを解析する。解析の結果、携帯カメラ側でエンコードすることが困難であると判定された場合、ステップS202において、ガンマ調整部605は次回コンテンツ再生時にガンマ調整量を変更する。さらに、ステップS202において、QRコード生成部101は、QRコードの表示領域のサイズを変更する。
【0052】
以上のように、第2の実施形態によれば、QRコードの画素値に対して原画像領域で発生した飽和量を減算するような場合でも、携帯カメラ側のエンコード失敗率を抑えて表示することが可能となる。
【0053】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0054】
101:QRコード生成部、102:QRコード挿入座標位置算出部、103:黒挿入領域決定部、104:倍速部、105:黒挿入部、106:原画像領域オフセット調整部、107:黒画像領域QRコード挿入部、108:黒画像領域QRコード飽和量調整部、601:フレーム内高輝度表示領域探索部、602:QRコード表示領域損失率算出部、603:コンテンツ内解析結果判定部、604:コンテンツ毎解析/判定結果記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データをN倍速(N:自然数)するN倍速手段と、
前記N倍速手段により生成される複数のサブフレームにおける、黒画像を表示する領域である黒画像領域と前記画像データを表示する領域である原画像領域とを決定する決定手段と、
前記複数のサブフレームにおけるコード情報の挿入位置を算出する算出手段と、
前記黒画像領域における前記挿入位置にコード情報を挿入する第1の挿入手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記原画像領域における前記挿入位置に前記コード情報に対応する画像を挿入する第2の挿入手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記コード情報に対応する画像とは、前記原画像領域の前記挿入位置における画素値から前記コード情報の画素値を減算した画像であることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の挿入手段は、前記原画像領域の画素値より前記コード情報の画素値の方が大きい場合、前記原画像領域の画素値と前記コード情報の画素値との差分を減算した前記コード情報を挿入することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記複数のサブフレームにおいて1フレーム分の黒画像を分割するように前記黒画像領域を決定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の挿入手段は、前記分割された前記黒画像領域に対して複数の前記コード情報を挿入することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像データのフレーム内において輝度が所定の条件を満たす領域を探索する探索手段と、
前記探索手段により探索された前記領域において、前記原画像領域の画素値より前記コード情報の画素値の方が大きい画素の比率を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された比率に対応する誤り訂正レベルで前記コード情報を生成する生成手段とを更に有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記算出手段により算出された比率に基づいて、前記コード情報を撮像する撮像装置での前記コード情報のエンコードの可否を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づいて、前記コード情報のサイズを調整するサイズ調整手段とを更に有することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記解析手段による解析結果に基づいて、前記画像データのガンマ調整を行うガンマ調整手段を更に有することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像処理装置によって実行される画像処理方法であって、
画像データをN倍速(N:自然数)するN倍速ステップと、
前記N倍速ステップにより生成される複数のサブフレームにおける、黒画像を表示する領域である黒画像領域と前記画像データを表示する領域である原画像領域とを決定する決定ステップと、
前記複数のサブフレームにおけるコード情報の挿入位置を算出する算出ステップと、
前記黒画像領域における前記挿入位置にコード情報を挿入する挿入ステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
画像データをN倍速(N:自然数)するN倍速ステップと、
前記N倍速ステップにより生成される複数のサブフレームにおける、黒画像を表示する領域である黒画像領域と前記画像データを表示する領域である原画像領域とを決定する決定ステップと、
前記複数のサブフレームにおけるコード情報の挿入位置を算出する算出ステップと、
前記黒画像領域における前記挿入位置にコード情報を挿入する挿入ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−220674(P2012−220674A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85522(P2011−85522)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】