説明

画像処理装置、画像処理方法及び記録装置

【課題】つなぎヘッドのつなぎ部で記録すべき画像データに、紙面予備吐データを付加する場合、画像への影響を抑制しながら、十分な予備吐出を行う。
【解決手段】画像データに対して端部ほど吐出口の記録比率が低くなるグラデーションマスクを用いた後に、紙面予備吐データを付加する。紙面予備吐データには、グラデーションマスクの影響を受けさせないことで、つなぎ部に形成された吐出口のいずれからも紙面予備吐が十分に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度な画像を出力するための記録装置のためのデータを生成する画像処理装置に関する。具体的には、つなぎヘッドを用いて記録を行うための記録装置のためのデータを生成する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式の記録装置に使用される記録ヘッドとして、同色のインクを吐出可能な複数の記録素子基板の端部の記録領域同士を重複させて記録可能領域がつながるように配置した記録ヘッド(以下つなぎヘッド)が知られている。特許文献1には、つなぎヘッドを構成する各記録素子板の記録領域の重複部である端部(つなぎ部)に配置されている吐出口に対応する画像データを分配する際、グラデーションマスクを用いることが記載されている。グラデーションマスクを用いることで、各記録ヘッドにおける吐出口の記録比率が、中央部から端部に向かうにつれ段階的に減少するように分配されるため、記録ヘッドの取り付け誤差等に起因するスジの発生を抑制することができる。
【0003】
一方、吐出口内のインクの増粘による吐出不良を抑制するため、記録している画像の中に予備吐出を行う、所謂紙面予備吐が知られている。例えば、特許文献2には、記録すべき画像の画像データに対して紙面予備吐用のデータを付加した後、マルチパス記録を行うための複数のパスに対応した複数のデータを生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−152582号公報
【特許文献2】特開2004−025627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1及び2に記載された技術に基づいて、複数の吐出口列をつないだつなぎヘッドを用いて紙面予備吐を行う場合には、新たな課題が生じることを見出した。具体的には、画像データに紙面予備吐用のデータを付加した後にグラデーションマスクを用いて各吐出口列のつなぎ部に対応するデータを生成した場合、十分に予備吐出が行われない吐出口があるということである。つなぎ部に対応する紙面予備吐データに対してグラデーションマスクを用いて各吐出口列にデータを分配すると、吐出口列の中央部寄りの吐出口と端部寄りの吐出口とで紙面予備吐データの分配比率も異なることになる。紙面予備吐用のデータは、吐出口列の中央部の寄り吐出口を使用する比率が多くなるように偏って分配されるため、中央部の吐出口から紙面予備吐を十分な頻度で行うことができても、端部の吐出口からの紙面予備吐の頻度が低くなってしまう。このため、良好に吐出が行われないことが懸念される。しかしながら、グラデーションマスクに供される前の紙面予備吐用データにおける吐出頻度を増加させると中央部の吐出口からの予備吐出が過剰となり予備吐出が画像に影響を与える畏れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を鑑み、本願発明は、画像の記録中の予備吐出が画像に与える影響を抑制しながら、吐出口列の端部に配置された吐出口から画像の記録中の予備吐出を十分に行うことができるように吐出用データの処理を行う装置を提供することを目的とする。
【0007】
具体的には、複数の吐出口が配列した吐出口列である第1吐出口列と第2吐出口列とが記録媒体との相対的な走査の方向に沿って並び、前記第1吐出口列の端部と前記第2吐出口列の端部とが重複部を形成するように配置された記録ヘッドを用いて、前記吐出口からインクを吐出することにより前記記録媒体に画像を記録するための記録データを生成する画像処理装置であって、前記重複部に対応する画像データに基づいて、前記第1吐出口列の吐出口のうち前記重複部に配置された吐出口の記録比率が、前記第1吐出口列の中央部から端部に向かう方向に沿って小さくなるように前記第1吐出口列の前記重複部に配置された吐出口のための画像記録用の第1の記録データを生成し、前記第2吐出口列の吐出口のうち前記重複部に配置された吐出口の記録比率が前記第2吐出口列の中央部から端部に向かう方向に沿って小さくなるように前記第2吐出口列の前記重複部に配置された吐出口のための画像記録用の第2の記録用データを生成する第1生成手段と、前記第1の記録用データと、前記第2の記録用データと、前記重複部に配置された吐出口から予備吐出を行うための予備吐出データと、に基づいて、前記第1吐出口列の前記重複部に配置された前記吐出口からインクを吐出するための第1吐出データと、前記第2の吐出口列の前記重複部に配置された吐出口からインクを吐出するための第2吐出データとを生成する第2生成手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像の記録中の予備吐出が画像に与える影響を抑制しながら吐出口列の端部に配置された吐出口から画像の記録中の予備吐出を十分に行うことができるように吐出用データの処理を行う装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】インクジェット記録装置と記録ヘッドを示す斜視図である。
【図2】制御系の構成例を示すブロック図である。
【図3】フルラインタイプの記録ヘッドの吐出口列を説明する図である。
【図4】従来のグラデーションマスクについて説明する図である。
【図5】比較例の画像データ処理を表すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態における画像データ処理を表すフローチャートである。
【図7】つなぎ部の複数の吐出口列へのデータ分配を示す図である。
【図8】つなぎ部の吐出口へ分配する紙面予備吐データの記録比率を示す図である。
【図9】つなぎ部の吐出口へ分配する紙面予備吐データの記録比率を示す図である。
【図10】つなぎ部の吐出口へ分配する画像データの記録比率を示す図である。
【図11】つなぎ部の吐出口へ分配する画像データの記録比率を示す図である。
【図12】非つなぎ部の非吐出時間を基準としたつなぎ部の非吐出時間を示す図である。
【図13】第2の実施形態におけるつなぎ部の複数の吐出口列へのデータ分配を示す図である。
【図14】つなぎ部の吐出口へ分配する紙面予備吐データの記録比率を示す図である。
【図15】つなぎ部の吐出口へ分配する紙面予備吐データの記録比率を示す図である。
【図16】つなぎ部の吐出口へ分配する画像データの記録比率を示す図である。
【図17】つなぎ部の吐出口へ分配する画像データの記録比率を示す図である。
【図18】第2の実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0011】
(全体構成)
図1(a)及び(b)は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の構成を示す斜視図である。長尺の記録ヘッド1,2,3,4を配置することによってヘッドユニット6が構成されており、各記録ヘッド1,2,3,4には記録素子(不図示)をその内部に備えた複数の吐出口(ノズル)が設けられている。記録ヘッド1,2,3,4は、それぞれブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)のインクを吐出するための長尺記録ヘッドである。各記録ヘッド1,2,3,4には不図示のインク供給チューブが接続され、さらに、制御信号などが不図示のフレキシブルケーブルを介して送られる。
【0012】
普通紙や高品位専用紙、OHPシート、光沢紙、光沢フィルム、ハガキ等の記録媒体5は、不図示の搬送ローラや排紙ローラ等に挟持され、搬送モータの駆動に伴って図1(a)に矢印で示す搬送方向(主走査方向)に送られる。記録を行う際、各記録ヘッド1〜4は、その位置が変わることなく固定された状態であり、記録媒体5のみを動かし、記録ヘッドと記録媒体との相対移動により画像を記録する。
【0013】
吐出口に連通する液路には、記録素子として、インク吐出に利用する熱エネルギを発生する発熱素子(電気・熱エネルギ変換体)が設けられている。この発熱素子が発熱することによってインクに膜沸騰を生じさせ、その際に発生する気泡の圧力によって吐出口からインクを吐出する。記録媒体5の搬送位置を検出するリニアエンコーダ(不図示)の読み取りタイミングに合わせて、記録信号に基づいて発熱素子を駆動することにより、吐出口から吐出したインク滴を記録媒体5上に付着させる。このように、記録媒体5上にインク滴を着弾させることにより、画像または文字を記録する。
【0014】
記録を行わない時には、記録ヘッド1〜4の吐出口の形成面を、不図示のキャッピング手段のキャップ部によって密閉する。これにより、インクに含まれている溶剤が蒸発することに起因するインクの増粘や固着、あるいは、塵埃などの異物による吐出口の目詰まりを防止する。また、使用頻度の低いインク吐出口の吐出不良や目詰まりを解消するための空吐出(予備吐出ともいう)を行う場合、つまり、インク吐出口から記録に寄与しないインクを吐出する場合にも、キャップ部が用いられる。また、キャップされた状態において、キャップ部の内部に不図示のポンプによって発生させた負圧を導入することで、記録ヘッドの吐出口から画像の記録に寄与しないインクをキャップ部内に吸引排出させて、吐出不良を起こした吐出口を回復させる。キャップ部の隣接位置に不図示のブレード(拭き部材)を配置し、吐出口の形成面を拭いてクリーニング(ワイピング)することが可能である。
【0015】
図1(b)は、本実施形態の記録ヘッド1〜4に設けられた複数の記録素子基板のうちの一つを説明する図である。記録素子基板21は、インクを加熱するための複数のヒータ(発熱素子)22が形成された基板であるヒータボード23と、このヒータボード23のヒータ22と対応する複数の吐出口25が設けられた天板24と、により構成される。天板24には、各吐出口25に連通するトンネル状の液路26が形成されており、その液路26は1つのインク液室(不図示)に接続されている。そして、そのインク液室にはインク供給口(不図示)を介してインクが供給され、この供給されたインクがインク液室から夫々の液路26に供給される。図1(b)においては、吐出口25,ヒータ22,および液路26が4つずつ代表的に示されており、ヒータ22は、夫々の液路26に対応して1つずつ配置される。そして、図1(b)の記録素子基板21では、所定の駆動パルスが供給されたヒータ22上のインクが沸騰することによって、形成された気泡の体積が膨張する。この気泡によりインクが押し出されることで、吐出口25からインクが吐出する。
【0016】
なお、本発明を適用可能なインクジェット記録方式は、図1(a)および(b)に示したような発熱素子(ヒータ)を使用したバブルジェット(登録商標)方式に限られるものではない。例えば、インク滴を連続噴射するコンティニュアス型の場合には荷電制御型や発散制御型等のインク吐出方式、また、必要に応じてインク滴を吐出するオンデマンド型の場合にはピエゾ振動素子を用いてインク滴を吐出する圧力制御方式等にも適用可能である。このように、種々のインクジェット記録素子を備えた記録ヘッドに対して本発明は適用可能である。
【0017】
図2は、本実施形態のインクジェット記録装置における制御系の構成例を示すブロック図である。31は画像データ入力部、32は操作部、33は各種処理を行うCPU部、34は各種データを記憶する記憶媒体である。記憶媒体34のプリント情報格納メモリには、記録媒体の主に種類に関する情報34a、プリントに用いるインクに関する情報34b、記録時の温度、湿度などの環境に関する情報34c、各種制御プログラム群34dが格納される。さらに、35はRAM、36は画像データ処理部、37は画像出力を行う画像記録部、38は各種データを転送するバス部である。
【0018】
さらに詳述すると、画像データ入力部31は、スキャナやデジタルカメラ等の画像入力機器からの多値画像データやパーソナルコンピュータのハードディスク等に保存されている多値画像データが入力される。操作部32は、各種パラメータの設定および記録開始を指示する各種キーを備える。CPU33は、記憶媒体中の各種プログラムに従って本記録装置全体を制御する。記憶媒体34は、制御プログラムやエラー処理プログラムに従って本記録装置を動作させるためのプログラムなどを格納する。本例の動作は、全てこのプログラムに従う動作である。このようなプログラムを格納する記憶媒体34として、ROM、FD、CD−ROM、HD、メモリカード、光磁気ディスクなどを用いることができる。RAM35は、記憶媒体34中の各種プログラムのワークエリア、エラー処理時の一時待避エリア、および画像処理時のワークエリアとして用いる。RAM35は、記憶媒体34の中の各種テーブルをコピーした後、そのテーブルの内容を変更し、この変更したテーブルを参照しながら画像処理を進めることが可能である。
【0019】
画像データ処理部36は、入力された多値(M値)の画像データを、画素毎にN値(M>N:M,Nは2以上の自然数)の画像データに量子化する。次いで、量子化された各画素が示す階調値“N”に基づいて、その階調値に対応するドット配置パターンを選択する。このドット配置パターンはドットの記録の有無を示す2値のパターンであるので、ドット配置パターンの選択によって2値の吐出データを得ることができる。このように、画像データ処理部36は、入力された多値画像データをN値化処理した後、そのN値の画像データに基づいて2値の吐出データを作成する。例えば、8bit(256階調)で表現される画像データが画像データ入力部31に入力された場合、画像データ処理部36において、画像データを25(=24+1)値の階調値の画像データに量子化する。次いで、画像データ処理部36では、25値の画像データにドット配置パターンが割り当てられ、これにより、インクの吐出・非吐出を示す2値の吐出データが作成される。その後、2値の吐出データが複数の吐出口列に分配され、各吐出口列の吐出口に対応する2値の吐出データが決定される。なお、M値の画像データをN値化する量子化処理は、本実施形態では多値誤差拡散法を用いるが、本発明はこれに限るものではない。例えば、平均濃度保存法やディザマトリックス法等、任意の中間調処理方法を用いてもよい。また、画像データ処理部36は、M値の画像データから最終的に2値の吐出データを作成できればよく、上述したようなN値化処理(M>N)を介在させることは必須ではない。例えば、画像データ処理部36に入力されたM値の画像データを、2値の吐出データに直接変換するような2値化処理を行っても良い。画像記録部37は、画像データ処理部36で作成された2値の吐出データに基づき、対応する吐出口25からインクを吐出して、記録媒体上に画像を形成する。バスライン38は、本装置内のアドレス信号、データ、制御信号などを伝送する。
【0020】
次に、吐出口の配置およびその駆動と、記録ヘッドを用いる記録動作について説明する。本実施形態では、入力された画像データをインク色毎の記録ヘッドに対応するように色分解し、色分解された各色多値画像データを誤差拡散法にて2値化処理し、インク色毎に備える記録ヘッドを用いて記録すべき2値の吐出データを生成する。
【0021】
図3は、本実施形態で用いるフルラインタイプの長尺の記録ヘッドの吐出口の形成面を示す図である。ここでは、記録ヘッド1を用いて説明するが、記録ヘッド1〜4はいずれも同じ構成である。図3(a)に示すように、記録ヘッド1には、吐出口配列方向(第1の方向)の長さが比較的短いチップ状の、複数の記録素子基板C41、C42、C43、C44、C45、C46が配置されている。各記録素子基板には、記録媒体の搬送方向(主走査方向)と交差する方向に、複数の吐出口が配列される。そして、これらの吐出口により吐出口列A、B、C、Dが形成されている。このような記録素子基板を吐出口の配列方向(図の上下方向)にずれて千鳥状に配置することで、長尺の記録ヘッド1を形成する。各記録素子基板C41〜C46はどれも同じ構成であることから、記録素子基板C41及びC42を例にその構成を説明する。記録素子基板C41は、記録媒体の搬送方向に沿って4列の吐出口列(列A、列B、列C、列D)を有し、各列とも1200dpiの解像度で複数の吐出口が配列する。同様に、記録素子基板C42も4列の吐出口列(列E、列F、列G、列H)を有する。そして、図3(b)に示すように、隣り合う吐出口列(例えば、列Aと列B)の吐出口は、その配列ピッチが吐出口配列方向において半ピッチずれている。従って、隣接する吐出口列同士は吐出口配列方向に1/2400inchずれた別のラスタを記録するため、吐出口配列方向の記録解像度は2400dpiである。一方、同じラスタの記録は列Aと列Cの組合せあるいは列Bと列Dの組合せで実行され、同一ラスタに対する記録解像度は1200dpiである。詳しくは、列Aと列Cの組合せにより記録されるラスタ(第1ラスタ)は奇数カラムにのみ記録が行われるラスタであって、その記録解像度は1200dpiである。また、列Bと列Dの組合せにより記録されるラスタ(第2ラスタ)は偶数カラムにのみ記録が行われるラスタであって、その記録解像度も1200dpiである。このように奇数カラムと偶数カラムは夫々1200dpiであり、これら両カラムを合わせた2400dpiが、吐出口の配列方向の解像度である。さらに、搬送方向の解像度を2400dpiとすることにより、2400dpi×2400dpiの解像度の画像が記録可能となる。
【0022】
次に、図3(b)を用いて記録素子基板のつなぎ部(重複部)について説明する。記録素子基板C41の端部と、記録素子基板C42の端部とが、吐出口配列方向に重なり合うように配置されている。本明細書では、この重なり合った端部をつなぎ部と称し、つなぎ部以外の部分を非つなぎ部と称する。そして、双方のつなぎ部に配置された吐出口に対して画像データを分配することにより、記録媒体上で複数の記録素子基板のつなぎ目の位置にスジが発生することを抑制する。本実施形態において、記録素子基板C41及びC42の端部は、32個分の吐出口が重なるように構成されている。
【0023】
図4は、つなぎ部に画像データを分配する際に用いられるグラデーションマスクを説明するための図である。図4(a)は、所謂つなぎヘッドを示す図であり、記録素子基板Aの端部と、記録素子基板Bの端部とが吐出口の配列方向に重複して配置されている。図4(b)は、各記録素子基板に設けられた複数の吐出口に適用されるグラデーションマスクである。本図では、分配される前の画像データを100%とし、記録素子基板Aと記録素子基板Bとに分配されるデータの比率を示している。グラデーションマスクは、各記録素子基板の中央部から端部に向かう方向(第1方向、及び第1方向と反対の方向である第2方向)に沿って、分配されるデータの比率が小さくなるように設定されている。本図では、各記録素子基板には吐出口列が1列ずつ形成されたものとして2本のグラフが描かれているが、それぞれ複数の吐出口列が形成された場合には、各吐出口の記録比率の合計が100%となるように分配される。ここで、記録媒体上の搬送方向に対応する複数の吐出口であり、搬送方向に並ぶ同一ラスタを記録可能な複数の吐出口による記録媒体への記録量に対する、各吐出口の記録量の比率を、吐出口の記録比率とする。
【0024】
図5は、比較例として、画像データに対して紙面予備吐用の予備吐出データである、紙面予備吐データを付加した後に、グラデーションマスクを用いてつなぎ部にデータを分配する処理を行う場合のフローチャートを示す。尚、このフローチャートは、CPU33の制御の下、画像データ処理部36において実行される。
【0025】
図5(a)において、ステップS101では、0〜255の256階調で示される多値データを取得し、2値化処理を行う。2値化手法としては、誤差拡散、INDEX展開方法など特に問わないが、ここでは、多値データを誤差拡散法によりN値データに量子化し、そのN値データにドット配置パターンを割り当てることで2値化する。次に、ステップS102において、吐出口列を回復するための紙面予備吐データを生成し、2値化処理後のデータと論理和をとる。このとき生成する紙面予備吐データは、記録媒体上の画素に対して0.1%〜3%の割合でインクが吐出されるように生成される。ステップS103では、ステップS102で論理和を取った2値データのうち、非つなぎ部に形成された吐出口に対応するデータに基づき、非つなぎ部を構成する各吐出口列A〜D、E〜Hのそれぞれに対して2値データを分配する処理が行われる。次に、ステップS104では、図4(b)に示すグラデーションマスクを用いて、つなぎ部に形成された吐出口に対応するデータを分配する処理が行われる。これにより、各つなぎ部に配置された吐出口のうち、いずれの吐出口からインクが吐出されるかが決められる。
【0026】
図5(b)も比較例であり、画像データに紙面予備吐データを付加した後、グラデーションマスクを用いてつなぎ部にデータを分配する処理を示すフローチャートである。図5(b)では、ステップS201で取得した画像データに対して2値化処理を行い、ステップS202で列分配処理を行う。このとき、記録ヘッドのつなぎ部・非つなぎ部は考慮せず、4列の吐出口列を備えた1つの記録素子基板を備える記録ヘッドとして、2値データを4列の吐出口列に対応した4つのデータに分配する。そして、ステップS203において、紙面予備吐データを4列の列毎に生成し、列分配処理後の4列の吐出口列に対応する画像データと論理和を取る。そして、ステップS204において、図4(b)に示すグラデーションマスクを用いてつなぎ部に対応するデータを8列に分配するつなぎ部分配処理を行う。
【0027】
このように、画像データに紙面予備吐データを付加した後に、グラデーションマスクを用いてつなぎ部にデータを分配する場合、つなぎ部に形成された吐出口のうち、予備吐出による回復が不十分な吐出口が存在するという課題がある。これは、つなぎ部に対応する紙面予備吐データを、吐出口の配列方向に勾配のあるグラデーションマスクを用いて分配すると、記録素子基板の最端部付近の吐出口に紙面予備吐データがほとんど分配されないためである。例えば、図4(a)の記録素子基板A及びBのつなぎ部に形成された吐出口のうち、記録素子基板Aの吐出口に対して90%、記録素子基板Bの吐出口に対して10%のデータを分配する領域について考える。この領域に対して分配される紙面予備吐データは、記録素子基板Aの吐出口に対して90%、記録素子基板Bの吐出口に対して10%である。従って、記録素子基板Bの最端部付近に配置された吐出口に対しては紙面予備吐データのうち10%しか分配されない。記録素子基板Aの最端部付近に配置された吐出口に対しても同様である。このため、各記録素子基板の最端部付近に配置された吐出口からの紙面予備吐の回数が少なくなり、回復が不十分となるため、吐出不良が生じ易くなってしまう。
【0028】
図12(a)は、グラデーションマスクを用いてつなぎ部に画像データを分配した場合に、非つなぎ部の吐出口を基準とした各列の吐出口からの非吐出時間を示した図である。画像データをグラデーションマスクで分配する場合、つなぎ部のうち、記録素子基板の中央部に近い吐出口と、記録素子基板の端部に近い吐出口とで、インク滴が吐出されない時間が大きく異なることがわかる。紙面予備吐データに対しても同様に、グラデーションマスクを用いて分配すると、記録素子基板の端部に近い吐出口からは紙面予備吐が行われる頻度が低く、非吐出時間が長くなるため、吐出不良が生じやすい。
【0029】
これに対し、本発明は、紙面予備吐データにグラデーションマスクの影響が出ないように、画像データにグラデーションマスクをかけた後に紙面予備吐データを付加する処理を行う。具体的には、第1の記録素子基板と第2の記録素子基板のつなぎ部に記録すべき画像データに基づき、第1の記録素子基板のつなぎ部に対応する第1の記録用データと、第2の記録素子基板のつなぎ部に対応する第2の記録用データとを生成する。そして、これらの画像データに、紙面予備吐データを付加することで、第1の記録素子基板及び第2の記録素子基板からインクを吐出するための第1吐出データと第2吐出データを生成する。
【0030】
以下に、本発明の画像処理について詳細に説明する。
図6(a)は、本実施形態における画像データ処理を示すフローチャートである。ステップS301において、0〜255の256階調で示される多値データを取得し、2値化処理を行う。ステップS302において、2値化された画像データを4列の吐出口列に対応した4つのデータに分配する列分配処理を行う。このとき、複数の記録素子基板により構成されたつなぎヘッドではなく、1つの記録素子基板に4列の吐出口列が形成された記録ヘッドであるとみなし、4列の吐出口列に対応した4つのデータを生成する。次に、ステップS303において、ステップS302で生成した4つのデータに基づき、つなぎ部を構成する8列の吐出口列に対応した8つのデータに分配する、第1のつなぎ部分配処理を行う。これは、後述するグラデーションマスクを用いて行われ、つなぎ部の吐出口に対応するデータに対してのみ行われる。このステップS301〜S303により、複数の記録素子基板それぞれのつなぎ部と、非つなぎ部の各吐出口に対応した画像データが生成される。一方、ステップS304では、4列の吐出口列に対応した4つの紙面予備吐データを生成する。このときも、4列の吐出口列を備える1つの記録素子基板であるとみなし、各吐出口列に対応した紙面予備吐データを生成する。次に、ステップS305において、ステップS304で生成した4つの紙面予備吐データのうち、つなぎ部の吐出口に対応するデータを、つなぎ部を構成する8列の吐出口列に対応した8つのデータに分配する、第2のつなぎ部分配処理を行う。このとき、記録比率が吐出口の配列方向に一様でないグラデーションマスクではなく、記録比率が吐出口の配列方向に一様なフラットマスクを用いる。このステップS304〜S305により、複数の記録素子基板それぞれの、つなぎ部と非つなぎ部にそれぞれ対応した紙面予備吐データが生成される。最後に、ステップS306において、各記録素子基板に対応する画像データと紙面予備吐データとの論理和をとり、記録ヘッドからインクを吐出するための記録データを生成する。
【0031】
図6(b)は、本実施形態の別の処理の例である。図6(a)では、4列分の紙面予備吐データを生成した後に、つなぎ部に対応するデータのみ、フラットマスクを用いて8列に分配したが、本例では、つなぎ部と非つなぎ部で別々に紙面予備吐データを生成する。ステップS401〜S403では、図6(a)と同様に、グラデーションマスクを用いて画像データをつなぎ部に分配するまでの処理を行う。ステップS404において、つなぎ部に含まれる8列の吐出口列に対応した紙面予備吐データを生成し、ステップS405において、非つなぎ部に含まれる4列の吐出口列に対応した紙面予備吐データを生成する。そして、ステップS406において、各吐出口列の画像データと紙面予備吐データとの論理和を取り、記録ヘッドからインクを吐出するための記録データを生成する。
【0032】
以上のように、本実施形態は、グラデーションマスクを用いて画像データから各吐出口列のつなぎ部・非つなぎ部のデータを生成した後に、別に生成した紙面予備吐データとの論理和を取り、記録データを生成する。これにより、つなぎ部の紙面予備吐データにグラデーションマスクの影響を与えることなく、記録データを生成することができる。従って、グラデーションマスクを紙面予備吐データに対して用いることで、つなぎ部の端部に形成された吐出口の記録比率が小さくなり、紙面予備吐が不十分となることを抑制することができる。
【0033】
上述の例では、紙面予備吐データは吐出口の配列方向に沿って記録比率が一様なフラットマスクを用いて生成したが、本発明はこれに限られるものではない。画像データに対して用いるグラデーションマスクよりも、吐出口の配列方向の勾配が小さい、つまり、吐出口の配列方向の記録比率の変化の割合が小さいマスクであればよい。これにより、画像データと紙面予備吐データとの両方に対してグラデーションマスクを用いる場合に比べて、記録ヘッドの端部に形成された吐出口からの紙面予備吐を行う回数が多くなるため、吐出不良を抑制することができる。また、記録比率を制御できる構成であれば、マスクパターンを用いる形態でなくてもよい。
【0034】
本実施形態について、図を用いてさらに詳しく説明する。図7は、本実施形態における複数の吐出口列へのデータ分配を示した図である。図7(a)は、ヘッドに配置された複数の記録素子基板上の吐出口列と、対応する吐出口列で打ち込まれる紙面予備吐データを示す図である。吐出口列は、4列構成で吐出口配列方向に2400dpiで配置されている。図7(b)は、図7(a)の吐出口列に対応した画像データを示す図である。紙面予備吐データも画像データも、走査方向(搬送方向)が2400dpi、副走査方向(吐出口配列方向)が2400dpiの解像度の格子にドットが1発打ちこまれる。
【0035】
まず、図8及び図9を用い、フラットマスクを用いて紙面予備吐データをつなぎ部に分配する場合について説明する。
図8は、本実施形態における吐出口列方向の位置と偶数チップの各列の紙面予備吐データの記録比率の関係を示した図である。図8(a)は図7(a)の下側と同じであり、各列に分配したデータを示している。チップ(記録素子基板)の位置によらず各列の記録比率は一定になっている。図8(b)に示す4つのグラフは、吐出口の配列方向の位置と偶数チップの各列の記録比率の関係を表した図である。各列のつなぎ部の記録比率は全て12.5%で均等であり、吐出口の配列方向に対する記録比率が一定である。すなわち、前述のフラットマスクが用いられて分配されている。ここで、記録比率は全列の合計において主走査方向(搬送方向)が2400dpi、副走査方向(吐出口配列方向)が2400dpiの解像度の格子にドットが1発打たれている状態を100%と定義している。
【0036】
図9は、本実施形態における吐出口列方向の位置と奇数チップの各列の紙面予備吐データの記録比率の関係を示した図である。図9(a)は図7(a)の下側と同じであり、各列に分配したデータを示している。チップ(記録素子基板)の位置によらず各列の記録比率は一定になっている。図9(b)に示す4つのグラフは、吐出口配列方向の位置と奇数チップの各列の記録比率の関係を表した図である。各列のつなぎ部の記録比率は全て12.5%で均等であり、吐出口の配列方向に対する記録比率が一定である。
【0037】
次に、図10及び図11を用いて、グラデーションマスクを用いてつなぎ部に画像データを分配する場合について説明する。
【0038】
図10は、本実施形態における吐出口列方向の位置と偶数チップの各列の画像データの記録比率の関係を示した図であり、所謂グラデーションマスクを用いて分配された記録比率である。図10(a)は、図7(b)と同じであり、画像データを分配する場合の図である。チップ(記録素子基板)の端部ほど、各列の記録比率が低くなっている。図10(b)の4つのグラフは吐出口配列方向の位置と偶数チップの各列の記録比率の関係を表した図であり、各列のつなぎ部の記録比率は0%〜25%の範囲で変化し、一定ではない。図からわかるように、記録素子基板の中央部から端部に向かう方向に沿って、記録比率が小さくなっている。
【0039】
図11は、本実施形態における吐出口列方向の位置と奇数チップの各列の画像データの記録比率の関係を示した図である。図11(a)は、図7(b)と同じであり、画像データを分配する場合の図である。チップの端部ほど各列の記録比率は低くなっている。図11の下側の4つのグラフは吐出口配列方向の位置と偶数チップの各列の記録比率の関係を表した図であり、各列のつなぎ部の記録比率は0%〜25%の範囲で変化するので一定でないことが分かる。本図においても、記録素子基板の中央部から端部に向かう方向に沿って、記録比率が小さくなっている。
【0040】
このように、本実施形態は、複数の記録素子基板をつないだつなぎ部を用い、画像を記録する際に紙面予備吐を行う場合に生じる吐出不良を抑制するためのものである。すなわち、グラデーションマスクを用いてつなぎ部に対応する画像データから、各記録素子基板の各吐出口列に対応するデータを生成することが好ましい。そして、各列に対応する画像データに対して、それぞれ紙面予備吐データを付加することが好ましい。画像データにはグラデーションマスクを用いることでつなぎスジの発生を抑制しつつ、紙面予備吐データにはグラデーションマスクの影響が及ばず、つなぎ部に配置された吐出口からの紙面予備吐の頻度が下がることを抑制することができる。このとき、紙面予備吐データは、つなぎ部を構成する8列の吐出口列毎に生成してもよく、4列の吐出口列に対して生成した紙面予備吐データに対し、マスクパターンを用いて間引くことにより8列の吐出口列に対応するデータを生成してもよい。このとき、マスクパターンは、記録比率が吐出口配列方向に沿って一様なフラットマスクを用いることが望ましいが、これに限るものではない。画像データに用いるグラデーションマスクよりも、記録比率の変化の割合が小さいマスクであれば、吐出口の配列方向における紙面予備吐の頻度の差を低減することができる。
【0041】
尚、本実施形態において、紙面予備吐データの記録デューティは限定していないが、記録媒体上で、つなぎヘッドの非つなぎ部を用いて記録される領域と、つなぎ部を用いて記録される領域とで、紙面予備吐の濃度は略同じであることが好ましい。つまり、非つなぎ部の吐出口列に分配する紙面予備吐データの記録デューティと、つなぎ部の吐出口列に分配する紙面予備吐データとの合計は同じ記録デューティとは略同じであることが好ましい。濃度差がありすぎてしまうと、この予備吐出による濃度差が濃度ムラとみなされてしまう可能性があるため、濃度ムラが人間の目に認識されない程度に同じであることが望ましい。
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態における複数の吐出口列へのデータ分配を示した図である。図13(a)は、各記録素子基板に配置された複数の吐出口列と、各吐出口列に対応した紙面予備吐データを示す図である。吐出口列は、4列構成で吐出口配列方向に2400dpiで配置されている。白い丸の吐出口はインクを吐出する吐出口を表し、黒い丸の吐出口はインクを吐出しない吐出口を表す。これは、つなぎ部の配置列数が4列であり、つなぎ部の使用列数が3列であることを意味している。ちなみに、非つなぎ部の配置列数と使用列数は共に2列である。主走査方向(搬送方向)が2400dpi、副走査方向(吐出口配列方向)が2400dpiの解像度の格子にドットが1発打ちこまれる。
【0042】
図12(b)は、非つなぎ部を基準にした場合の各列の非吐出時間を示した図である。第1の実施形態と同様に、画像データをグラデーションマスクで分配する場合、つなぎ部のうち、記録素子基板の中央部に近い吐出口と、記録素子基板の端部に近い吐出口とで、インク滴が吐出されない時間が大きく異なることがわかる。紙面予備吐データに対しても同様に、グラデーションマスクを用いて分配すると、記録素子基板の端部に近い吐出口からは紙面予備吐が行われる頻度が低く、非吐出時間が長くなるため、吐出不良が生じやすい。
【0043】
図14及び図15を用い、フラットマスクを用いて紙面予備吐データをつなぎ部に分配する場合について説明する。
【0044】
図14は、第2の実施形態における吐出口列方向の位置と偶数チップの各列の紙面予備吐データの記録比率の関係を示した図である。図14(a)は図13(a)における紙面予備吐データを示す図と同じであり、チップの位置によらず各列の記録比率は一定である。図14(b)の4つのグラフは吐出口配列方向の位置と偶数チップの各列の記録比率の関係を表した図であり、各列のつなぎ部の記録比率は全て16.7%で均等であり、かつ副走査方向(吐出口配列方向)に対する記録比率が一定であることが分かる。
【0045】
図15は第2の実施形態における吐出口列方向の位置と奇数チップの各列の紙面予備吐データの記録比率の関係を示した図である。図15(a)は図14(a)と同じである。図15(b)の4つのグラフは吐出口配列方向の位置と奇数チップの各列の記録比率の関係を表した図であり、各列のつなぎ部の記録比率は全て16.7%で均等であり、かつ副走査方向(吐出口配列方向)に対する記録比率が一定であることが分かる。
【0046】
次に、図16及び図17を用い、グラデーションマスクを用いて画像データをつなぎ部に分配する場合について説明する。
【0047】
図16は、第2の実施形態における吐出口列方向の位置と偶数チップの各列の画像データの記録比率の関係を示した図である。図16(a)は、図13(a)における紙面予備吐データを示す図とは異なり、記録素子基板の端部ほど各列の吐出口の記録比率が低くなっている。図16(b)の4つのグラフは、吐出口配列方向の吐出口の位置と偶数チップの各列の記録比率の関係を表した図である。各列のつなぎ部の記録比率は0%〜25%の範囲で変化するので一定でなく、記録素子基板の中央部から端部に向かう方向に沿って小さくなることが分かる。ここで、列毎に記録比率の分布が異なるのは列間ズレに対するロバスト性を向上させるためであり、全列の記録比率の分布が異なり、各列で見たつなぎ部の位置が異なることが望ましい。第2の実施形態においては、図の説明の都合上、A列とB列、C列とD列は記録比率の分布が同じになっている。
【0048】
図17は、第2の実施形態における吐出口列方向の位置と奇数チップの各列の画像データの記録比率の関係を示した図である。図17(a)は、図16(a)と同じである。図17(b)の4つのグラフは、吐出口配列方向の吐出口の位置と奇数チップの各列の記録比率の関係を表した図である。各列のつなぎ部の記録比率は0%〜25%の範囲で変化するので一定でなく、記録素子基板の中央部から端部に向かう方向に沿って小さくなることが分かる。第2の実施形態においては、図の説明の都合上E列とF列、G列とH列は記録比率の分布が同じになっている。
【0049】
このように、画像データに対してはグラデーションマスクを用い、紙面予備吐データに対してはフラットマスクを用いてデータを分配することが好ましい。また、グラデーションマスクを用いて画像データを分配する際には、記録比率の変化の割合や勾配、変化量、吐出口配列方向の位置を列毎に異ならせてもよい。
【0050】
また、第2の実施形態では、つなぎ部に配置する列数よりも、データを分配する列数を少なくする(列制限をする)構成を用いた、最初からつなぎ部の列数が非つなぎ部の列数よりも少ない記録素子基板を用いてもよい。
【0051】
図18は第2の実施形態の変形例1における複数の吐出口列へのデータ分配を示した図である。図18(a)はヘッドに配置された複数の吐出口列の図であり、4列構成で吐出口配列方向に2400dpiで配置されている。つなぎ部の配置列数は4列であるが、データを分配する列数は3列である。ちなみに、非つなぎ部に配置された列数とデータを分配する列数は共に2列である。図18(b)はデータを分配した図であり、主走査方向(搬送方向)が2400dpi、副走査方向(吐出口配列方向)が2400dpiの解像度の格子にドットが1発打たれている。実施形態の内容や発明の効果は第2の実施形態と同じなので省略する。
【0052】
また、上述の実施形態では、吐出口列の一部を吐出口配列方向にずらして配置しているが、本発明においては上記吐出口列の一部をずらして配置することは必須ではない。どの吐出口列でも同じラスタを記録できるように、吐出口配列方向における吐出口の位置を各列で同じにしてもよく、どの吐出口列でも異なるラスタを記録できるように、吐出口配列方向における吐出口の位置を各列で異ならせてもよい。例えば、図3(b)における列ABCDのうち、列Aと列Cの吐出口の位置はそのままで、列Bと列Dの吐出口の位置を1/2400dpiだけ吐出口配列方向にずらせば、各列の吐出口の位置を同じにすることができる。この場合、吐出口配列方向における記録解像度が1200dpiとなる。さらに、各列の吐出口の位置を同じにした状態から、列B〜Dの吐出口の位置を吐出口配列方向にずらせば、各列の吐出口の位置を異ならせることができる。例えば、列Aの吐出口の位置はそのままで、列Bの吐出口の位置を1/4800dpi、列Cの吐出口の位置を2/4800dpi、列Dの吐出口の位置を3/4800dpi、だけ吐出口配列方向にずらせばよい。この場合、吐出口配列方向における記録解像度が4800dpiとなる。
【0053】
また、記録ヘッドとしては、吐出口からインクを吐出可能な記録素子を備えたインクジェット記録ヘッドのみならず、種々の記録素子を備えた記録ヘッドを用いることができる。また、本発明に適用可能な吐出口列の構成、および記録方式は上述した実施形態のみに限定されない。
【0054】
また、本発明のデータ生成方法は、複数の機器(たとえばホストコンピュータ、インタフェース機器、リーダ、プリンタ等)から構成されるシステムに適用しても一つの機器(たとえば複写機、ファクシミリ装置)からなる装置に適用してもよい。また、図5に示される画像データ処理は、前述したように記録装置内で実行する場合には限られず、記録装置を制御するための外部装置(コンピュータ)において実行してもよい。この場合、外部装置において各吐出口列の2値データの決定処理(図5のステップS103)まで実行し、これら2値データを記録装置へ転送し、記録装置ではその転送データに基づいて記録を行う。従って、上述した特徴的な画像データ処理を記録装置で行う場合、その記録装置が本発明の画像処理装置を構成し、上記特徴的な画像データ処理を外部装置で行う場合、その外部装置が本発明の画像処理装置を構成することになる。
【0055】
また、記録装置と接続された外部装置(例えば、コンピュータ)に、前述の実施形態の機能を実現するソフトウェアプログラムコードを供給し、そのプログラムに従って外部装置が記録装置を制御して実施したものも本発明の範疇に含まれる。
【0056】
またこの場合、ソフトウェアプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになる。そのプログラムコード自体およびそのプログラムコードを外部装置(コンピュータ)に供給する手段(例えばかかるプログラムコードを格納した記憶媒体)は、本発明を構成する。
【0057】
かかるプログラムコードを格納する記憶媒体としては例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0058】
またコンピュータが、供給されたプログラムコードを実行することで、前述の実施形態の機能が実現される場合に限らない。つまり、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS、あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して前述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。
【0059】
さらに、供給されたプログラムコードが、コンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行ってもよい。つまり、そのCPU等による処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
5 記録媒体
22 ヒータ(電気熱変換体)
23 ヒータボード
25 吐出口
31 画像データ入力部
32 操作部
33 CPU
34 記憶媒体
35 RAM
36 画像処理部
37 画像記憶部
38 データバス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出口が配列した吐出口列である第1吐出口列と第2吐出口列とが記録媒体との相対的な走査の方向に沿って並び、前記第1吐出口列の端部と前記第2吐出口列の端部とが重複部を形成するように配置された記録ヘッドを用いて、前記吐出口からインクを吐出することにより前記記録媒体に画像を記録するための記録データを生成する画像処理装置であって、
前記重複部に対応する画像データに基づいて、前記第1吐出口列の吐出口のうち前記重複部に配置された吐出口の記録比率が、前記第1吐出口列の中央部から端部に向かう方向に沿って小さくなるように前記第1吐出口列の前記重複部に配置された吐出口のための画像記録用の第1の記録用データを生成し、前記第2吐出口列の吐出口のうち前記重複部に配置された吐出口の記録比率が前記第2吐出口列の中央部から端部に向かう方向に沿って小さくなるように前記第2吐出口列の前記重複部に配置された吐出口のための画像記録用の第2の記録用データを生成する第1生成手段と、
前記第1の記録用データと、前記第2の記録用データと、前記重複部に配置された吐出口から予備吐出を行うための予備吐出データと、に基づいて、前記第1吐出口列の前記重複部に配置された前記吐出口からインクを吐出するための第1吐出データと、前記第2の吐出口列の前記重複部に配置された前記吐出口からインクを吐出するための第2吐出データとを生成する第2生成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第2生成手段は、前記予備吐出データを、前記第1吐出口列用の第1予備吐出データと前記第2吐出口列用の第2予備吐出データとに分配し、前記第1の記録用データと前記第1予備吐出データとの論理和を取ることにより前記第1吐出データを生成し、前記第2の記録用データと前記第2予備吐出データとの論理和を取ることにより前記第2吐出データを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2生成手段は、前記第1の記録用データにおける記録比率の変化の割合よりも、前記第1予備吐出データにおける記録比率の変化の割合が小さくなるように前記第1予備吐出データを生成し、前記第2の記録用データにおける記録比率の変化の割合よりも、前記第2予備吐出データにおける記録比率の変化の割合が小さくなるように前記第2予備吐出データを生成することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2生成手段は、前記第1及び第2吐出口列の吐出口の配列方向における記録比率が一定となるように前記第1予備吐出データ及び第2予備吐出データを生成することを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記予備吐出データの記録デューティは、前記第1吐出口列の中央部に配置された吐出口のみで記録可能な前記記録媒体上の第2所定領域に対して予備吐出を行うための第3予備吐出データの記録デューティと略同じであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1生成手段は、前記第1の記録用データと前記第2の記録用データとの論理和が前記重複部に対応する画像データと等しくなるように前記第1の記録用データ及び前記第2の記録用データを生成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置と、前記記録ヘッドとを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
複数の吐出口が配列した吐出口列である第1吐出口列と第2吐出口列とが記録媒体との相対的な走査の方向に沿って並び、前記第1吐出口列の端部と前記第2吐出口列の端部とが重複部を形成するように配置された記録ヘッドを用いて、前記吐出口からインクを吐出することにより前記記録媒体に画像を記録するための記録データを生成する画像処理方法であって、
前記重複部に対応する画像データに基づいて、前記第1吐出口列の吐出口のうち前記重複部に配置された吐出口の記録比率が、前記第1吐出口列の中央部から端部に向かう方向に沿って小さくなるように前記第1吐出口列の前記重複部に配置された吐出口のための画像記録用の第1の記録用データを生成し、前記第2吐出口列の吐出口のうち前記重複部に配置された吐出口の記録比率が、前記第2吐出口列の中央部から端部に向かう方向に沿って小さくなるように前記第2吐出口列の前記重複部に配置された吐出口のための画像記録用の第2の記録用データを生成する第1生成工程と、
前記第1の記録用データと、前記第2の記録用データと、前記重複部に配置された吐出口から予備吐出を行うための予備吐出データと、に基づいて、前記第1吐出口列の前記重複部に配置された前記吐出口からインクを吐出するための第1吐出データと、前記第2の吐出口列の前記重複部に配置された前記吐出口からインクを吐出するための第2吐出データとを生成する第2生成工程と、
を備えることを特徴とする画像処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−22846(P2013−22846A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160153(P2011−160153)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】