説明

画像処理装置、画像処理方法

【課題】 白色点の色温度調整時に目標輝度を考慮した色調整を行うための技術を提供すること。
【解決手段】 画像表示装置のキャリブレーションで調整する輝度値の目標としての目標輝度値を設定する。目標輝度値に基づいて、RGBのそれぞれのゲインの初期値を求める。画像表示装置に設けられており且つ画像表示装置における輝度調整を行う為にRGBのそれぞれのゲインを調整する際に操作する操作部を操作することで変更されるゲインを表示するための画面であって、初期値を輝度調整の初期値として設定した画面を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置のカラーキャリブレーション技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置に対してカラーキャリブレーションを行う場合、測定器を用いて画像表示装置の画面を測定し、その測定結果に基づいて色調整することで、経年変化の補正を行う方法がある。係る方法は、画像表示装置内部の電子回路を調整することで色調整を行う方法である。具体的には、測定器は測定したデータを画像表示装置内部の演算処理装置に送信する。演算処理装置は、測定器から受信したデータと、予め設定されているターゲット値とを比較し、所定の演算を行い、電子回路の設定を変更する。これにより、カラーキャリブレーションを実現する。
【0003】
測定器を用いた画像表示装置のカラーキャリブレーションには、ソフトウェアキャリブレーションとハードウェアキャリブレーションとがある。
【0004】
画像表示装置の色調整を、映像信号制御装置内部の映像出力回路を使用して行う方法がソフトウェアキャリブレーションである。この方法は画像表示装置には影響しないため、どのような画像表示装置に対しても利用可能かつ低コストで実現できるというメリットがある。しかしその反面、キャリブレーションを行う際に、画像表示装置の初期設定を基準として、RGB各色ゲインを下げて調整するため、必ず輝度が下がり、必要な輝度が実現できなくなる場合がある。また、映像出力回路上でキャリブレーションを行うために数ビットを使用してしまうため、実際に作業を行う場合に使用できる色の階調が減ってしまうという弊害がある。
【0005】
一方、画像表示装置内部のアナログ回路を調整してキャリブレーションする方法がハードウェアキャリブレーションである。この方法は、映像出力回路のRGB出力のばらつきまで画像表示装置側で吸収することができるため、輝度を犠牲にすることなく映像出力回路のダイナミックレンジを最大限に活用することができる。ハードウェアキャリブレーションの方法としては、画像表示装置の筐体外側にある電子回路調整用つまみを画像表示装置に表示されるOSD(On Screen Display)画面に従ってユーザが制御し、調整する方法が一般的である。電子回路調整用つまみの種類としては、白色点の色温度、輝度、RGB各チャンネルのゲイン、またコントラストやガンマ等がある。
【0006】
白色点の色温度をキャリブレーションする方法の詳細については特許文献1に開示がある。特許文献1には、RGB各単色光の画面輝度を測定し、3色間の輝度比を求め、目標色温度の混合輝度比と比較し、目標色温度の混合輝度比に調整するために不足する光の各色信号を求める方法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−127620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
目的の白色点色温度および輝度を調整する場合、まず色温度を調整し、次に輝度を調整する等、順番に調整をする場合を想定する。色温度と輝度の調整順番は逆であっても構わない。このようなケースにおいて特許文献1のような色温度、輝度を各々独立して調整する手法では、目的の色温度を調整した際に、映像出力のダイナミックレンジが低減され、後に調整する目標の輝度を実現できなくなる場合があるという問題があった。さらにこのような場合には、調整ステップを繰返し色温度を調整し直さなければならないため、ハードウェアキャリブレーションを行う場合、ユーザの負担が非常に大きくなるという問題があった。
【0008】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、白色点の色温度調整時に目標輝度を考慮した色調整を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の画像処理装置は以下の構成を備える。
【0010】
即ち、画像表示装置のキャリブレーションを行う画像処理装置であって、
前記キャリブレーションで調整する輝度値の目標としての目標輝度値を設定する手段と、
前記目標輝度値に基づいて、RGBのそれぞれのゲインの初期値を求める計算手段と、
前記画像表示装置に設けられており且つ前記画像表示装置における輝度調整を行うためにユーザがRGBのそれぞれのゲインを調整する際に操作する操作部、をユーザが操作することで変更されるゲインを表示するための画面であって、前記初期値を前記輝度調整の初期値として設定した画面を表示する手段と
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の画像処理方法は以下の構成を備える。
【0012】
即ち、画像表示装置のキャリブレーションを行う画像処理装置が行う画像処理方法であって、
前記キャリブレーションで調整する輝度値の目標としての目標輝度値を設定する工程と、
前記目標輝度値に基づいて、RGBのそれぞれのゲインの初期値を求める計算工程と、
前記画像表示装置に設けられており且つ前記画像表示装置における輝度調整を行うためにユーザがRGBのそれぞれのゲインを調整する際に操作する操作部、をユーザが操作することで変更されるゲインを表示するための画面であって、前記初期値を前記輝度調整の初期値として設定した画面を表示する工程と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、白色点の色温度調整時に目標輝度を考慮した色調整を行うことができ、その結果、白色点の色温度と輝度のキャリブレーションを各項目を繰り返すことなく容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照し、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態は、本発明を具体的に実施した場合の一例を示すもので、特許請求の範囲に記載の構成の具体的な実施例の1つである。
【0015】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。なお、画像処理装置には、例えば、一般のPC(パーソナルコンピュータ)を適用することができる。
【0016】
CPU101は、RAM103やROM102に格納されているプログラムやデータを用いて処理を実行することで、画像処理装置全体の制御を行うと共に、画像処理装置が行うものとして後述する各処理を実行する。
【0017】
ROM102は、画像処理装置の設定データやブートプログラムなどが格納されている。
【0018】
RAM103は、HDD(ハードディスクドライブ)108からロードされたプログラムやデータ、入力デバイス106から入力されたデータ、測色機199から入力された測定データ、を一時的に記憶するためのエリアを有する。更に、RAM103は、CPU101が各種の処理を実行する際に用いるワークエリアも有する。即ち、RAM103は、各種のエリアを適宜提供することができる。
【0019】
入力デバイス106は、キーボードやマウス等により構成されており、画像処理装置のユーザが操作することで、各種の指示を入力インターフェース105を介してCPU101に対して入力することができる。
【0020】
測色機199は周知の通り、色を測定するための機器であり、入力インターフェース105に接続されている。測色機199による測定結果を示すデータは、入力インターフェース105を介してRAM103やHDD108に送出される。
【0021】
HDD108には、OS(オペレーティングシステム)や、画像処理装置が行うものとして後述する各処理をCPU101に実行させるためのプログラムやデータが保存されている。更に、HDD108には、既知の情報として説明するものや、当業者であれば当然の如く用いるものであろう情報についても保存されている。HDD108に保存されているプログラムやデータは、CPU101による制御に従って適宜RAM103にロードされる。そしてCPU101が、このロードされたプログラムやデータを用いて処理を実行することで、画像処理装置は、画像処理装置が行うものとして後述する各処理を実行することになる。
【0022】
なお、HDD108に対するアクセスは、HDDインターフェース107を介して行うことになる。
【0023】
モニタ110は、CRTや液晶画面などにより構成されており、CPU101による処理結果を画像や文字などでもって表示することができる。また、モニタ110は、後述する各画面(GUI:グラフィカルユーザインターフェース)を表示することもできる。モニタ110は、ビデオインターフェース109に接続されている。
【0024】
104はバスで、上記CPU101、ROM102、RAM103、入力インターフェース105、HDDインターフェース107、ビデオインターフェース109は何れも、このバス104に接続されている。
【0025】
次に、一般的なハードウェアキャリブレーションについて、図2を用いて説明する。
【0026】
図2は、一般的なハードウェアキャリブレーションを行うための機器の機能構成を示すブロック図である。
【0027】
映像信号制御装置201において、制御部202は記憶部203からキャリブレーション用測色データを読み出し、測定用データ表示部204に送出する。
【0028】
測定用データ表示部204は、キャリブレーション用測色データを受けると、これに基づいて測定用データ信号を生成し、画像表示装置251が有する映像出力アナログ回路252に送出する。
【0029】
映像出力アナログ回路252は、測定用データ信号を受信すると、これに基づいた画像を表示する。一方で、測定部205は、この表示された画像を測定する。白色点調整部206、ガンマ調整部209は、測定部205による測定値と、記憶部203から読み出した目標値と、を用いて各調整量を算出し、算出した各調整量を、画像表示装置251に表示させる。
【0030】
係る表示(各調整量)を見たユーザ301は、OSDインターフェース253を操作し、映像出力アナログ回路252を調整する。
【0031】
以上がハードウェアキャリブレーションの一連の流れであり、測定部205による測定以降の処理を各調整項目が目標値に収束するまで繰り返し行う。
【0032】
次に、一般的なハードウェアキャリブレーションの環境について、図3を用いて説明する。図3は、一般的なハードウェアキャリブレーションの環境を示す図である。本実施形態においても、係る環境を採用する。
【0033】
401は映像信号制御装置であり、本実施形態に係る画像処理装置に相当する。映像信号制御装置401は、映像出力信号を画像表示装置402に送信する。画像表示装置402は、モニタ110に相当する。403は電子回路調整用つまみ(操作部)である。電子回路調整用つまみ403は、画像表示装置402に表示されているOSD画面404と連動しており、ユーザ406は、このOSD画面404を参照しながら電子回路調整用つまみ403を操作し、様々な調整を行う。
【0034】
図4は、OSD画面404の表示例を示す図である。OSD画面404には様々な調整対象が一覧表示されており、何れを調整対象とするのかは、ユーザ406が電子回路調整用つまみ403を用いて選択する。例えば調整対象として「コントラスト・ブライトネス」を選択すると、OSD画面404の代わりに、コントラスト・ブライトネスの詳細設定画面802が表示される。従って、ユーザ406は、電子回路調整用つまみ403を操作して、コントラストおよびブライトネス(以下、輝度)の値を調整することができる。
【0035】
一方、ユーザは電子回路調整用つまみ403を操作して、OSD画面404において「カラー調整」を選択すると、OSD画面404の代わりに、ゲイン調整の詳細設定画面803が表示される。従って、ユーザ406は、電子回路調整用つまみ403を操作して、RGB各色のゲインを調整することができる。RGB各色ゲインは、RGB各出力の最大出力に影響する。すなわち、白色点の色度および色温度に影響する。
【0036】
次に、画像処理装置が行う、画像表示装置(本実施形態の場合、モニタ110)に対するキャリブレーション処理について、同処理のフローチャートを示す図10を用いて説明する。なお、図10のフローチャートに従った処理をCPU101に実行させるためのプログラムやデータは、HDD108に保存されている。係るプログラムやデータは、CPU101による制御に従って適宜RAM103にロードされる。そして、CPU101がこのロードされたプログラムやデータを用いて処理を実行することで、画像処理装置は図10のフローチャートに従った処理を実行することになる。
【0037】
先ず、ユーザは、入力デバイス106を用いて、白色点の目標色温度値、目標輝度値を設定するので、ステップS1101では、設定した目標色温度値、目標輝度値のデータをRAM103に取得する。
【0038】
ここで、ユーザは、測色機199をキャリブレーションした後、モニタ110の画面上にアタッチする(貼り付ける)。そしてその後、ユーザはモニタ110のコントラスト調整を行う。コントラストの調整方法は幾つか考えられる。例えば、(R,G,B)=(0,0,0)、(8,8,8)、…、(255,255,255)までのグレーのグラデーションパッチをモニタ110の画面上に表示する。そして、ハイライト部、シャドウ部、中間調の階調性を、ユーザがしっかり視認できるよう、モニタ110に備わっている電子回路調整用つまみ403を操作して、調整する。係る調整については図4を用いて既に説明している。
【0039】
そして、コントラスト調整後、最適なコントラストが得られなければ再度コントラスト調整を行う。一方、得られれば、ユーザは電子回路調整用つまみ403や入力デバイス106を用いて、ステップS1006以降の処理を開始する旨の指示を入力する。
【0040】
ステップS1106では、ステップS1107における色温度調整の前に、妥当ゲイン解析を行う。ここで、「妥当ゲイン」とは、目標輝度値を実現するための、RGB各色ゲインの初期値であり、この初期値を予め求めておくことで、目標輝度値を実現できる範囲内で色温度を調整することが可能となる。
【0041】
妥当ゲインの解析方法としては最初に、モニタ110のブライトネスとゲインの関係を簡易的に調査する。調査個所としては、図11に示す如く、4点(ブライトネスが0%のときのゲインが0%および100%の2点、ブライトネスが100%のときのゲインが0%および100%の2点)の白色点の輝度である。ここで、一般的な画像表示装置では、RGB各色ゲインを0%にすると、ブライトネスは限りなく0cd/m2になることから、RGB各色ゲインが0%の個所は0cd/m2と近似しておく。従って、ステップS1106では先ず、図11に示した輝度aおよびbを測定する。図11は、輝度値とゲインとの対応関係を示す図である。
【0042】
そのためには、ステップS1106では先ず、図12に示す画面をモニタ110に表示する。図12は、妥当ゲインを求めるための画面の表示例を示す図である。
【0043】
係る表示を見たユーザは、上述の操作により、R、G、Bのそれぞれのゲインを100%にし、ブライトネスを0%にする。係る操作結果は、領域1222内に反映される。そしてその後、ユーザは測色機199を領域1222に当てた後(はじめから測色機199が領域1222上に位置していれば係る操作は不要)、入力デバイス106を用いて「スタート」ボタン1223を指示する。これにより、CPU101は測色機199を制御し、領域1222内を測定する。そして測定した結果(測定値)に基づいて、輝度値を求める。係る輝度値が、図11に示した「a」となる。そしてユーザが入力デバイス106を用いて「進む」ボタン1225を指示すると、モニタ110には図13に示す画面が表示される。図13は、妥当ゲインを求めるための画面の表示例を示す図である。
【0044】
係る表示を見たユーザは、上述の操作により、ブライトネスを100%にする。係る操作結果は、領域1228内に反映される。そしてその後、ユーザは測色機199を領域1228に当てた後(はじめから測色機199が領域1228上に位置していれば係る操作は不要)、入力デバイス106を用いて「スタート」ボタン1229を指示する。これにより、CPU101は測色機199を制御し、領域1228内を測定する。そして測定した結果(測定値)に基づいて、輝度値を求める。係る輝度値が、図11に示した「b」となる。そしてユーザが入力デバイス106を用いて「進む」ボタン1231を指示すると、CPU101は、上記測定により得られた輝度値「a」、「b」と、目標輝度値と、を用いて、妥当ゲイン値を計算する。
【0045】
妥当ゲイン値は以下の色に基づいて計算される。
【0046】

妥当ゲイン値=100×d/c
ここで、c=(a+b)/2
d=目標輝度値
そして妥当ゲイン値を求めると、モニタ110に、図14に示す画面を表示する。図14は、妥当ゲイン値を報知するための画面の表示例を示す図である。
【0047】
図14に例示した画面では、R、G、Bのそれぞれのゲインの初期値(妥当ゲイン値)は78%と計算されている。これにより、ユーザは、R、G、Bのそれぞれのゲインの初期値を知ることができる。そしてユーザは、入力デバイス106を用いて「進む」ボタン1235を指示すると、処理はステップS1007に進む。
【0048】
ステップS1107では、白色点の色温度調整を行う。本ステップにおける処理の詳細については後述する。次に、本ステップにおける処理の終了指示、即ち、色温度調整を終了させる指示が、入力デバイス106を介して入力された場合には処理をステップS1108を介してステップS1109に進める。一方、係る指示が入力されない限りは、処理はステップS1108を介してステップS1107に戻る。
【0049】
ステップS1109では、輝度調整を行う。本ステップにおける処理の詳細については後述する。次に、本ステップにおける処理の終了指示、即ち、輝度調整を終了させる指示が、入力デバイス106を介して入力された場合には処理をステップS1110を介してステップS1111に進める。一方、係る指示が入力されない限りは、処理はステップS1110を介してステップS1109に戻る。
【0050】
ステップS1111では、ガンマ調整を行う。ガンマ調整の方法は幾つか考えられるが、例えば、映像出力RGBゲインの出力特性を目標ガンマの出力特性に補正する方法でも構わない。
【0051】
次に、上記ステップS1107における処理、即ち、RGB各色ゲイン制御による白色点の色温度調整について、図5〜7を用いて説明する。
【0052】
図5は、ステップS1107における処理の詳細を示すフローチャートである。
【0053】
先ず、ステップS1107における処理を開始する際には、モニタ110には、図7に示す画面が表示される。図7は、ユーザが電子回路調整用つまみ403を操作することで調整中のゲインに連動して変化する色温度をユーザに知らしめるための画面の表示例を示す図である。図7において1201は、色温度をユーザに知らしめるための画面である。
【0054】
1206はR、G、Bのそれぞれのゲインを表示するための領域で、R、G、Bのそれぞれには対応するゲインを示すスライダ1208が設けられている。
【0055】
ユーザは、モニタ110に備わっている電子回路調整用つまみ403を操作してそれぞれのゲインを調整する。調整されたゲインは、スライダ1208の位置に反映される。即ち、ユーザによる電子回路調整用つまみ403の操作に連動して(操作により設定されたゲインに応じて)、スライダ1208の位置は適宜変更される。もちろん、電子回路調整用つまみ403により操作されたゲインは、上述のようにして取得し、取得したゲインの値に応じて、それぞれのスライダ1208の位置が決まる。なお、係るスライダ1208は、ユーザが左右に操作する類のものではないことに注意されたい。また、電子回路調整用つまみ403を操作した結果は、領域1205内に表示される。
【0056】
ここで、1207は、上記妥当ゲイン値を示しており、ユーザは、係る妥当ゲイン値を参照しながら電子回路調整用つまみ403を操作し、それぞれのゲインを調整することになる。
【0057】
ユーザは測色機199を領域1205に当てた後(はじめから測色機199が領域1205上に位置していれば係る操作は不要)、入力デバイス106を用いて「スタート」ボタン1204を指示する。これにより、ステップS501では、CPU101は測色機199を制御し、領域1205内(現在白色点、例えば、(R,G,B)=(255,255,255)の色信号)の測定を開始させる。
【0058】
次に、ステップS502では、ステップS501における測定値から色温度を算出する。測定値は、分光分布放射率でもXYZでも構わない。分光放射率の場合は所定の方法にてXYZに変換する。そしてその後、XYZから色温度(現在色温度)を算出する。XYZから色温度を算出する方法は幾つか挙げられるが、例えば色度座標x、yから色温度Tを求める簡便な計算方法としてMcCamy(1992年)は次式の多項近似式を提案している。
【0059】
T=−437n+3601n−6861n+5514.31
ここで、nは以下の通りである。
【0060】
n=(x−0.3320)/(y−0.1858)
また、色度座標x、yは、XYZから以下の式で求まる。
【0061】
x=X/(X+Y+Z)
y=Y/(X+Y+Z)
以上の方法により、測定値から現在色温度を求めることができる。求めた現在色温度は、表示領域1203に表示される。
【0062】
そして次にステップS503では、ステップS502で求めた現在色温度(表示領域1203内に表示されている)と、目標色温度値(表示領域1202内に表示されている)との差分値を計算する。
【0063】
そしてステップS504では、ステップS503で求めた差分値と、予め設定されている閾値との比較処理を行う。そして以下の式が満たされているか否かを判断する。
【0064】
|現在色温度−目標色温度|<閾値ε
満たされている場合には図5のフローチャートに従った処理を終了させる。一方、係る式が満たされていない場合には、処理をステップS505に進める。
【0065】
ステップS505では、現在色温度から目標色温度を達成するための色温度調整量、すなわちRGB各色ゲイン調整量を計算し、モニタ110上に表示する。RGB各色ゲイン調整量を計算する方法は幾つか考えられるが例えば以下の方法を用いて行う。
【0066】
図6は、ステップS505における処理の詳細を示すフローチャートである。
【0067】
まずステップS901では、測色機199によってRed(例えば8bit信号であれば255,0,0)、Green(0,255,0)、Blue(0,0,255)、White(255,255,255)を測色する。各色は領域1205内に表示される。そして、測定したそれぞれを、R(Xr,Yr,Zr)、G(Xg,Yg,Zg)、B(Xb,Yb,Zb)、W(Xw,Yw,Zw)として取得する。RGB各色は一次独立な関係であるため、ステップS902では、以下の3×3マトリクスを求める。
【0068】

|X| |Xr Xg Xb||R|
|Y|=|Yr Yg Yb||G|
|Z| |Zr Zg Zb||B|

|R| |Xr Xg Xb|−1|X|
|G|=|Yr Yg Yb| |Y|
|B| |Zr Zg Zb| |Z|
次に、ステップS903では、目標色温度から目標XYZを算出する。色温度から色度を算出する方法は例えば、新編色彩ハンドブック[第2版]P69に記載されている実験値から得られた以下の多項近似式を用いて算出する。
【0069】
y=3.000x+2.870x−0.275
x=−4.6070×10/T+2.9678×10/T+0.09911×10/T+0.244063
(色温度Tが約4000〜7000Kの場合)
x=−2.0064×10/T+1.9018×10/T+0.24748×10/T+0.237040
(色温度Tが約7000〜25000Kの場合)
上記式を用いて、目標色温度から目標色度を算出し、その後、目標XYZを算出する。即ち、色度x,yからXYZに変換するために現在の白色点の輝度Ywを基に変換する。変換式は以下の通りである。
【0070】
X=(x−y)×Yw
Y=Yw
Z=(1−x)/(y−1)×Yw

そしてステップS904では、ステップS903で求めた目標XYZから、目標RGBを、ステップS902で求めたマトリクスを用いて求める。
【0071】
図5に戻って、ユーザは電子回路調整用つまみ403を操作することで、対応するゲインを増減させるので、ステップS506では、現在のRGBの各ゲインを取得して現在色温度を更新し、画面1201の表示を更新する。そして処理をステップS504に戻し、以降の処理を行う。
【0072】
ここで、ユーザが入力デバイス106を用いて、画面1201における「進む」ボタン1211を指示すると、処理はステップS1108を介してステップS1109に進み、図9に示す画面をモニタ110に表示させる。図9は、輝度を調整するための画面の表示例を示す図である。
【0073】
図8は、ステップS1109における処理の詳細を示すフローチャートである。
【0074】
図9において1212は、輝度を調整するための画面である。
【0075】
ユーザは測色機199を領域1214に当てた後(はじめから測色機199が領域1214上に位置していれば係る操作は不要)、入力デバイス106を用いて「スタート」ボタン1213を指示する。これにより、ステップS601では、CPU101は測色機199を制御し、領域1214内(現在白色点、例えば、(R,G,B)=(255,255,255)の色信号)の測定を開始させる。
【0076】
次に、ステップS602では、ステップS601で測定した測定値から、現在の輝度値を算出する。測定値は分光分布放射率でもXYZでも構わない。分光放射率の場合は所定の方法にてXYZに変換する。測定値がXYZならばY成分が輝度となる。求めた輝度値は、表示領域1216内に表示する。
【0077】
次に、ステップS603では、ステップS602で求めた輝度値(表示領域1216内に表示されている)と、目標輝度値(表示領域1215内に表示されている)との差分値を求める。
【0078】
次に、ステップS604では、ステップS603で求めた差分値と、予め設定された閾値との比較処理を行う。そして以下の式が満たされているか否かを判断する。
【0079】
|現在輝度−目標輝度|<閾値ε
満たされている場合には図8のフローチャートに従った処理を終了させる。一方、係る式が満たされていない場合には、処理をステップS606に進める。
【0080】
そして、ユーザは入力デバイス106を用いて輝度を調整するので、ステップS606では、入力された輝度を現在の輝度値として再設定すると共に、画面1212の表示を更新する。そして処理をステップS604に戻し、以降の処理を行う。
【0081】
ここで、ユーザが入力デバイス106を用いて、画面1212における「進む」ボタン1219を指示すると、処理はステップS1110を介してステップS1111に進む。
【0082】
このように、妥当ゲイン値を計算し、提示しないと、白色点の色温度および輝度調整を行う際には、色温度調整後、目標輝度調整において何回調整しても目標輝度を実現できないケースがある。このようなケースでは色温度調整まで戻り、再調整を行わなければならず、非常にユーザに負担がかかる。
【0083】
しかし、本実施形態では、妥当ゲイン値を計算して、ユーザに提示することで、ユーザは、目標輝度を考慮しながら目標色温度を調整することができる。なお、妥当ゲイン値のユーザへの提示方法については、図7に示した形態に限定するものではなく、他の提示方法を用いても良い。
【0084】
[その他の実施形態]
また、本発明の目的は、以下のようにすることによって達成されることはいうまでもない。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給する。係る記憶媒体は言うまでもなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0085】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行う。その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0086】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれたとする。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0087】
本発明を上記記録媒体に適用する場合、その記録媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図2】一般的なハードウェアキャリブレーションを行うための機器の機能構成を示すブロック図である。
【図3】一般的なハードウェアキャリブレーションの環境を示す図である。
【図4】OSD画面404の表示例を示す図である。
【図5】ステップS1107における処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】ステップS505における処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】ユーザが電子回路調整用つまみ403を操作することで調整中のゲインに連動して変化する色温度をユーザに知らしめるための画面の表示例を示す図である。
【図8】ステップS1109における処理の詳細を示すフローチャートである。
【図9】輝度を調整するための画面の表示例を示す図である。
【図10】画像処理装置が行う、画像表示装置に対するキャリブレーション処理のフローチャートである。
【図11】輝度値とゲインとの対応関係を示す図である。
【図12】妥当ゲインを求めるための画面の表示例を示す図である。
【図13】妥当ゲインを求めるための画面の表示例を示す図である。
【図14】妥当ゲイン値を報知するための画面の表示例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置のキャリブレーションを行う画像処理装置であって、
前記キャリブレーションで調整する輝度値の目標としての目標輝度値を設定する手段と、
前記目標輝度値に基づいて、RGBのそれぞれのゲインの初期値を求める計算手段と、
前記画像表示装置に設けられており且つ前記画像表示装置における輝度調整を行うためにユーザがRGBのそれぞれのゲインを調整する際に操作する操作部、をユーザが操作することで変更されるゲインを表示するための画面であって、前記初期値を前記輝度調整の初期値として設定した画面を表示する手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記計算手段は、
R、G、Bのそれぞれのゲインを100%、ブライトネスを0%に設定したときの前記画像表示装置の画面を測色機を用いて測定した結果としての輝度値をa、
R、G、Bのそれぞれのゲインを100%、ブライトネスを100%に設定したときの前記画像表示装置の画面を測色機を用いて測定した結果としての輝度値をb、
目標輝度値をd、
としたときに、前記初期値を100×d/c (c=(a+b)/2)として求めることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
画像表示装置のキャリブレーションを行う画像処理装置が行う画像処理方法であって、
前記キャリブレーションで調整する輝度値の目標としての目標輝度値を設定する工程と、
前記目標輝度値に基づいて、RGBのそれぞれのゲインの初期値を求める計算工程と、
前記画像表示装置に設けられており且つ前記画像表示装置における輝度調整を行うためにユーザがRGBのそれぞれのゲインを調整する際に操作する操作部、をユーザが操作することで変更されるゲインを表示するための画面であって、前記初期値を前記輝度調整の初期値として設定した画面を表示する工程と
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
コンピュータに請求項3に記載の画像処理方法を実行させるためのプログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のプログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−141803(P2009−141803A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317585(P2007−317585)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】