説明

画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体

【課題】複写した紙面の体裁を悪化させることなく、記録剤の消費量を低減させることができる画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】複写時に顕在化する粗なドットに係る粗ドットデータ又は複写時に顕在化しない密なドットに係る密ドットデータ(地紋パターンデータ)が地紋パターン生成部63に入力された場合に、制御部1は、入力された粗ドットデータ又は密ドットデータを地紋合成処理部59に入力する。制御部1は、粗ドットデータに対応する画素について、地紋合成処理部59にて原稿画像に係るデータと地紋画像に係るデータとの合成を行い、合成したデータを画像出力装置7に出力する。また密ドットデータに対応する画素について、地紋合成処理部59から画像出力装置7に原稿画像に係るデータを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写時に顕在化する地紋画像と原稿を読み取ることによって得られる原稿画像とを合成する画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報を記録した原本に基づいて公的機関から発行される謄本(例えば戸籍謄本及び住民票)は、個人を認証する書類として一般に広く使用されている。個人を認証する書類としての機能を担保させるためには、謄本と謄本の複写物とは明確に区別されることが必要となる。また個人情報が記録されている以上、発行された謄本に対して、プライバシーを保護するための対策が要求される。
【0003】
企業内において原本に基づいて印刷される文書にも、前述した謄本と同様に顧客情報などの個人情報が記録される場合があり、前記文書に対してもプライバシーを保護するための対策が要求される。また企業内において作成された文書に営業上又は技術上の機密情報が記録されている場合には、守秘義務のない第三者に前記文書が漏洩することを防ぐ必要がある。
【0004】
特許文献1には、原本に記録された情報を示すコンテンツデータ(原稿画像データ)と、謄本又は文書には顕在化しないが、複写機にて複写した謄本又は文書の複写物には顕在化する地紋画像(例えば、「COPY」、「DON’T COPY」及び「CONFIDENTIAL」などの警告用の牽制文字)を示す地紋画像データとをコンピュータにて合成し、合成したデータに基づいて謄本又は文書を印刷する印刷制御装置が開示されている。該印刷制御装置によれば、コンピュータにて地紋画像データと原稿画像データとを合成し、地紋画像データ及び原稿画像データに係る画像を通常の用紙に印刷することができるため、前述した地紋画像を予め印刷した複写偽造防止用紙を使用する必要がない。また謄本又は文書に記載された情報に応じた適切な地紋画像を利用者が容易に選択することができる。近年では、原本がデータ化されていない場合を考慮して、紙に印刷された原本を画像読取装置にて読み取って原稿画像データを生成し、生成した原稿画像データと予め記憶してある地紋画像データとを合成して謄本又は文書を示す画像を形成する画像形成装置も提案されている。
【0005】
原稿画像データと地紋画像データとを合成して謄本又は文書を示す画像を形成する場合、原稿画像データに係る原稿画像のみを形成する場合に比べて多くの記録剤が消費される。特許文献2には、原稿画像に重ねて地紋画像を明示的に形成する画像処理装置が開示されている。該画像処理装置は、地紋画像を印刷する用紙上の領域を制限して、記録剤の消費量の低減を図っており、特許文献2に係る地紋画像を印刷する用紙上の領域を制限する技術は、複写時に顕在化するように地紋画像を形成する画像形成装置にも適用することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−88763号公報
【特許文献2】特開2008−22237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載の前記技術は、例えば牽制文字の文字列の大きさや長さに応じて地紋画像が部分的に形成されるため、前記画像形成装置に前記技術を適用した場合、前記画像形成装置によって印刷された謄本又は文書を複写したときに、複写した紙面の体裁が著しく悪化する。また地紋画像が用紙全面に形成される場合には、前記画像形成装置における記録剤の消費量を低減させることはできない。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、複写した紙面の体裁を悪化させることなく、記録剤の消費量を低減させることができる画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像処理装置は、複写時に顕在化する地紋画像を示す地紋画像データを生成し、生成された地紋画像データ及び原稿を読み取って得られた原稿画像データを合成する画像処理装置において、前記原稿画像データは、画像を構成する画素に対応した複数の色成分データを含み、前記地紋画像データは、画像を構成する画素に対応した一の色成分データを含み、前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用する画素に対して、前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択する第1選択手段と、該第1選択手段にて選択された前記原稿画像データに係る複数の色成分データの内、前記地紋画像データに係る一の色成分データと同一色のデータを除いた残余の色成分データが示す色の濃度を低下させる手段と、前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用しない画素に対して、前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択する第2選択手段とを備え、前記第1選択手段にて選択された前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを合成して出力するか又は前記第2選択手段にて選択された前記原稿画像データに係る複数の色成分データを出力するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、前記第1選択手段は、前記残余の色成分データの選択を停止することができるようにしてあることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る画像処理装置は、前記第1選択手段は、前記一の色成分データが黒色を示すデータである場合に、前記残余の色成分データの選択を停止するようにしてあることを特徴する。
【0012】
本発明に係る画像処理装置は、前記地紋画像データを、複写時に顕在化するドットパターン又は非顕在化するドットパターンに画素毎に対応付けて、複写時に顕在化するドットパターンに対応する画素に対して、前記地紋画像データに係る一の色成分データと所定の演算によって色の濃度を低下させた前記残余の色成分データとを出力するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る画像処理装置は、画像を形成する記録剤の使用量を低減する指令を受け付ける受付手段を備え、該受付手段にて前記指令を受け付けた場合に、前記残余の色成分データが示す色の濃度を低下させるようにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、前述した画像処理装置と、該画像処理装置によって処理が施された前記原稿画像データ及び地紋画像データに基づいて、シート上に画像を形成する手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る画像処理方法は、複写時に顕在化する地紋画像を示す地紋画像データを生成し、生成された地紋画像データ及び原稿を読み取って得られた原稿画像データを合成する画像処理方法において、前記原稿画像データは、画像を構成する画素に対応した複数の色成分データを含み、前記地紋画像データは、画像を構成する画素に対応した一の色成分データを含み、前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用する画素に対して、前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択するステップと、該ステップにて選択された前記原稿画像データに係る複数の色成分データの内、前記地紋画像データに係る一の色成分データと同一色のデータを除いた残余の色成分データが示す色の濃度を低下させるステップと、前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用しない画素に対して、前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択するステップと、前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択した場合に、前記一の色成分データ及び原稿画像データに係る複数の色成分データを合成して出力するステップと、前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択した場合に、前記複数の色成分データを出力するステップとを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、複写時に顕在化する地紋画像を示す地紋画像データを生成し、生成された地紋画像データ及び原稿を読み取って得られた原稿画像データを合成する手段として機能させるコンピュータプログラムにおいて、前記原稿画像データは、画像を構成する画素に対応した複数の色成分データを含み、前記地紋画像データは、画像を構成する画素に対応した一の色成分データを含み、コンピュータを、前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用する画素に対して、前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択する手段、該手段にて選択された前記原稿画像データに係る複数の色成分データの内、前記地紋画像データに係る一の色成分データと同一色のデータを除いた残余の色成分データが示す色の濃度を低下させる手段、前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用しない画素に対して、前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択する手段、前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択した場合に、前記一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを合成して出力する手段並びに前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択した場合に、前記複数の色成分データを出力する手段として機能させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体は、前述したコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、地紋画像と原稿画像とを合成する画素に対しては、画像を形成する色成分データとして、前記地紋画像データに係る一の色成分データと前記原稿画像データに係る複数の色成分データとを選択し、選択した各色成分データを合成して出力する。このとき前記原稿画像データに係る複数の色成分データの内、前記一の色成分データと同一色のデータを除いた残余の色成分データに対して、該残余の色成分データが示す色の濃度が低下するように補正を実行する。一方、地紋画像と原稿画像とを合成しない画素に対しては、画像を形成する色成分データとして、前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択して出力する。
【0019】
また本発明においては、地紋画像と原稿画像とを合成する画素に対する前記残余の色成分データの選択を必要に応じて停止し、地紋画像のみを形成する。
【0020】
また本発明においては、前記地紋画像データに係る一の色成分データが黒色を示すデータである場合に、地紋画像と原稿画像とを合成する画素に対する前記残余の色成分データの選択を必要に応じて停止する。
【0021】
また本発明においては、複写時に顕在化するドットパターンに対応する画素に対し、地紋画像データに係る一の色成分データを出力し、また所定の演算によって色の濃度を低下させた前記残余の色成分データを出力する。
【0022】
また本発明においては、画像を形成する記録剤の使用量を低減する低減指令を受け付けた場合に、前記残余の色成分データに対する補正を実行し、記録剤の使用量低減に関する利用者の希望を画像形成に反映させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体にあっては、地紋画像と原稿画像とを合成する画素に対しては、画像を形成する色成分データとして、前記地紋画像データに係る一の色成分データと前記原稿画像データに係る複数の色成分データとを選択し、選択した各色成分データを合成する。このとき前記原稿画像データに係る複数の色成分データの内、前記一の色成分データと同一色のデータを除いた残余の色成分データに対して、該残余の色成分データが示す色の濃度が低下するように補正を実行する。一方、地紋画像と原稿画像とを合成しない画素に対しては、画像を形成する色成分データとして、前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択するので、複写した紙面に均等に地紋画像を形成させることができ、紙面の体裁の悪化を回避することができる。また地紋画像を形成する画素に対しては、原稿画像に係る前記残余の色成分データが示す色の濃度を低下させているので、記録剤の消費量を低減させることができる。また地紋画像を形成する画素に対して、地紋画像に係る前記一の色成分が示す色の濃度は維持されるので、前記残余の色成分データが示す色の濃度を低下させたことによる色味の損失を最小限に止めて、形成される画像の品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態1に係る画像形成装置の内部構成を説明するブロック図である。
【図2】画像処理装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】中間調データと地紋パターンデータとを合成する合成処理を説明するフローチャートである。
【図4】地紋パターンデータを生成する地紋パターン生成処理を説明するフローチャートである。
【図5】牽制文字データをビット変換する過程を説明する概念図である。
【図6】単位面積あたりのドット数と地紋画像のタイプとの関係を説明する説明図である。
【図7】画像データを構成する各プレーンを示す概念図である。
【図8】粗ドットデータ及び密ドットデータと中間調データとを合成する地紋合成処理を説明するフローチャートである。
【図9】地紋画像以外のプレーンに対する中間調データの補正を示す概念図である。
【図10】中間調データに黒色に係る粗ドットデータを加算した場合の視認性と中間調データに黒色以外の色に係る粗ドットデータを加算した場合の視認性とを説明する説明図である。
【図11】画像出力装置によって形成され、地紋画像及び原稿画像を合成してなる画像及び該画像を複写機にて複写した複写画像を示す模式図である。
【図12】実施の形態2に係るコンピュータ及びプリンタを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る画像形成装置を示す図面に基づいて詳述する。画像形成装置は、複写機若しくはコピー機能、ファクシミリ送信・受信機能、イメージ送信機能又はプリンタ機能等を有する複合機などで実現される。図1は画像形成装置の内部構成を説明するブロック図、図2は画像処理装置の構成を説明するブロック図である。画像形成装置は、制御部1、画像入力装置3、画像処理装置5、及び画像出力装置7、操作部9を備えている。制御部1は、図2に示すように、前記ハードウェア各部を制御するための制御プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)1b、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)1a、制御プログラムの実行中に生成される各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)1cなどを備える。なおROM1bを書換可能な構成とし、コンピュータでの読み取りが可能な記録媒体20に制御プログラムを記録し、ROM1bにダウンロードしても良い。
【0026】
画像入力装置3は、原稿の画像を光学的に読取る手段であり、読取用の原稿に光を照射する光源及びCCD(Charge Coupled Device)のようなイメージセンサ等を備えている。画像入力装置3では、所定の読取位置にセットされた原稿からの反射光像を当該イメージセンサに結像させ、RGB(R : Red, G : Green, B : Blue)のアナログ電気信号を出力する。画像入力装置3が出力したアナログ電気信号は画像処理装置5へ入力される。
【0027】
画像処理装置5は、画像入力装置3から出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換した後、原稿種別に応じた画像処理を行って出力用の画像信号を生成する。生成した画像信号は画像出力装置7に出力される。画像出力装置7は、シアン、マゼンタ、黄色及び黒の各記録剤7a〜7dを収容したタンクを備えている。画像処理装置5は、出力用の画像信号としてCMYK信号(C:Cyan, M:Magenta, Y:Yellow, K:Black)を生成するようにしている。なお、画像処理装置5の内部構成及び動作等については後に詳述する。
【0028】
画像出力装置7は、画像処理装置5が出力する画像信号に基づいて用紙及びOHPフィルム等のシート70上に画像形成を行う手段である。そのため、画像出力装置7は、感光体ドラムを所定の電位に帯電させる帯電器、外部から受付けた画像データに応じてレーザ光を発して感光体ドラム上に静電潜像を生成させるレーザ書込装置、感光体ドラム表面に形成された静電潜像に記録剤7a〜7dとしてのトナーを供給して顕像化する現像器及び感光体ドラム表面に形成されたトナー像を用紙上に転写する転写器等(不図示)を備えており、電子写真方式にて利用者が所望する画像を用紙上に形成する。なお、レーザ書込装置を用いた電子写真方式により画像形成を行う他、インクジェット方式、熱転写方式又は昇華方式等により画像形成を行う構成であってもよい。
【0029】
操作部9は、利用者による指示及び選択操作などを受付けるために各種スイッチ又はボタンを備える。
【0030】
画像処理装置5は、A/D変換部51、シェーディング補正部52、入力処理部53、領域分離処理部54、色補正部55、黒生成下色除去部56、空間フィルタ処理部57、中間調生成部58、地紋合成処理部59及び地紋画像生成部60を備える。
【0031】
A/D変換部51は、画像入力装置3から入力されたRGBのアナログ信号をデジタル信号に変換する。シェーディング補正部52は、A/D変換部51から出力されたデジタル形式のRGB信号に対して、画像入力装置3の照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理を施す。また、シェーディング補正部52ではカラーバランスの調整を行う。
【0032】
入力処理部53は、ガンマ補正、下地濃度の除去及びコントラストなどの画質調整処理を行う。画像形成装置は、HDD(Hard Disk Drive)及びフラッシュメモリなどを有する記憶部10を備えている。入力処理部53から出力されたデータは、記憶部10に記憶される。
【0033】
領域分離処理部54は、RGB信号より、入力画像中の各画素を黒文字領域、色文字領域、網点領域又は写真領域などの何れかの領域に分離する処理を行う。領域分離処理部54は、分離結果に基づき、画素がどの領域に属しているかを示す領域識別信号を後段の色補正部55、黒生成下色除去部56、空間フィルタ処理部57及び中間調生成部58へ出力すると共に、入力処理部53から出力された入力信号をそのまま後段の色補正部55へ出力する。
【0034】
色補正部55は、記憶部10に保存されたRGB信号の補色であるCMY信号(C:Cyan, M:Magenta, Y:Yellow)を生成すると共に、色再現の忠実化再現のために、不要吸収成分を含むCMY色材の分光特性に基づいた色濁りを取り除く処理を行う。
【0035】
黒生成下色除去部56は、色補正後のCMYの3色信号から黒(K)信号を生成する黒生成、元のCMY信号から黒生成で得たK信号を差し引いた新たなCMY信号を生成する処理を行う。この処理によってCMYの3色信号はCMYKの4色信号に変換される。
【0036】
黒生成処理の一例として、スケルトンブラックによる黒生成を行う方法(一般方法)がある。この方法では、スケルトンカーブの入出力特性をy=f(x)、入力されるデータをC、M、Y、出力されるデータをC’、M’、Y’、K’、UCR率(UCR : Under Color Removal)をα(0<α<1)とすると、黒生成下色除去処理は以下の式で表される。
【0037】
K’=f{min(C,M,Y)}
C’=C−αK’
M’=M−αK’
Y’=Y−αK’
【0038】
空間フィルタ処理部57は、黒生成下色除去部56より入力されるCMYK信号の画像データに対して、領域識別信号を基にデジタルフィルタによる空間フィルタ処理を行い、空間周波数特性を補正することによって出力画像のぼやけや粒子状劣化を防ぐように処理を行う。
【0039】
例えば、領域分離処理部54にて黒文字又は色文字に分離された領域は、黒文字又は色文字の再現性を高めるために、空間フィルタ処理部57による空間フィルタ処理における鮮鋭強調処理で高周波数の強調量が大きくされる。同時に、中間調生成部58においては、4ビットの中間調データが生成され、高周波数の再現に適した高解像度のスクリーンでの多値化処理が実行される。なお中間調生成部58において二値化処理が実行される構成であっても良い。
【0040】
地紋合成処理部59は、地紋画像生成部60から入力される地紋パターンデータと中間調生成部58から入力される中間調データとを合成する。なお合成手法については後に詳述する。地紋画像生成部60は、牽制文字生成部61、文字画像生成部62及び地紋パターン生成部63を備える。牽制文字生成部61は、操作部9からの指令に基づいて、「COPY」、「DON’T COPY」及び「CONFIDENTIAL」などの警告用の牽制文字データを生成する。文字画像生成部62は、牽制文字データをビットマップ画像データに変換する。地紋パターン生成部63は、ビットマップ画像データを、細かいドットを示す情報と粗いドットを示す情報とを有する地紋パターンデータに変換する。
【0041】
図3は、中間調データと地紋パターンデータとを合成する合成処理を説明するフローチャートである。
制御部1は、画像入力装置3にて読み取った原稿画像に地紋画像を合成する指令が操作部9から入力されたか否か判定する(ステップS1)。前記指令が入力されていない場合(ステップS1:NO)、制御部1は合成処理を終了する。前記指令が入力された場合(ステップS1:YES)、制御部1は、地紋パターン生成処理を実行する(ステップS2)。そして制御部1は、地紋合成処理を実行する(ステップS3)。
【0042】
図4は、地紋パターンデータを生成する地紋パターン生成処理を説明するフローチャート、図5は牽制文字データをビット変換する過程を説明する概念図である。図5Aは、牽制文字データを示す概念図であり、黒色部分は牽制文字の部分を示しており、白色部分は背景を示している。図5Bは、牽制文字をビットマップ画像データに変換したことを示す概念図である。図5Cは、ビットマップ画像データを二値データに置換したことを示す概念図であり、「1」は、用紙に画像を形成する場合に、粗いドットで画像を形成する粗ドットデータを示し、「0」は、用紙に画像を形成する場合に、密なドットで画像を形成する密ドットデータを示す。図5Dは、二値データを4ビットデータに変換したことを示す概念図である。
【0043】
制御部1は、操作部9から地紋画像に係る牽制文字及び地紋画像に使用するC、M、Kいずれかの色成分データ(プレーン)の選択を示す信号及び地紋画像のタイプ(牽制文字が印字されてあたかも浮き上がるように視認される浮上タイプ又は牽制文字が印字されず、あたかも打ち抜かれているように視認される白抜きタイプ)の選択を示す信号が入力されるまで待機する(ステップS21:NO)。なお牽制文字を示す情報は予め記憶部10に記憶してあり、操作部9の操作によって呼び出される。また画像形成装置は図示しない表示パネルを有しており、該表示パネルに、呼び出された複数の牽制文字、プレーンの色及び地紋画像のタイプが表示される。利用者は所望の牽制文字、プレーンの色及び地紋画像のタイプを選択する。操作部9から牽制文字、プレーンの色及び地紋画像のタイプが選択されたことを示す信号が入力された場合(ステップS21:YES)、制御部1は、牽制文字生成部61にて、選択された牽制文字を示す牽制文字データを生成する(ステップS22、図5A参照)。なお表示パネルがタッチパネルを備える場合、表示パネルが操作部9としても機能することは言うまでもない。
【0044】
次に制御部1は、文字画像生成部62にて牽制文字データをビットマップ画像データに変換する(ステップS23、図5B参照)。そして制御部1は、地紋画像のタイプとして浮上タイプが選択されたか否かを判定する(ステップS24)。浮上タイプが選択されている場合(ステップS24:YES)、制御部1は、地紋パターン生成部63にて、牽制文字を示すビットマップの部分を1、すなわち粗ドットデータに変換する(ステップS25)。そして制御部1は、地紋パターン生成部63にて、背景を示すビットマップの部分を0、すなわち密ドットデータに変換する(ステップS26)。ステップS24において、浮上タイプが選択されていない場合(ステップS24:NO)、換言すれば白抜きタイプが選択されている場合、制御部1は、地紋パターン生成部63にて、牽制文字を示すビットマップの部分を0、すなわち密ドットデータに変換する(ステップS27)。そして制御部1は、地紋パターン生成部63にて、背景を示すビットマップの部分を1、すなわち粗ドットデータに変換する(ステップS28)。
【0045】
ここで単位面積あたりのドット数と地紋画像のタイプとの関係について説明する。図6は、単位面積あたりのドット数と地紋画像のタイプとの関係を説明する説明図である。
図6Aには、単位面積あたりのドット数が少ない粗いドット部分が左右に配置され、その間に、単位面積あたりのドット数が多い密なドットが配置された画像が描写されている。単位面積あたりの全ドットが占める面積は、密なドットで描写された部分及び粗なドットで描写された部分のいずれも略同じに設定してあるので、いずれの部分も略同じ濃度で認識され、利用者は地紋を視認し難い。一方図6Bには、複写機にて複写された地紋画像が描写されている。複写機は粗いドットで描写された部分を認識することはできるが、密なドットで描写された部分は、一ドットの面積が小さいために、画像処理の過程で除去され認識することができない。そのため、図6Bに示すように、複写された画像においては、密なドットで描写された部分は複写されずに、白く抜けたように視認される。その結果、利用者は地紋を容易に視認することができる。ステップS25及びS26によって、利用者は、複写した画像において背景に印字されたような牽制文字を視認する。一方ステップS27及びS28によって、利用者は、複写した画像において背景を打ち抜いたような白抜きの牽制文字を視認する。
【0046】
図7は、画像データを構成する各プレーンを示す概念図である。図7Aは、Cプレーンを地紋画像に使用するプレーンとし、地紋画像のタイプを浮上タイプとした場合の画像データを構成する各プレーンを示す概念図、図7Bは、Cプレーンを地紋画像に使用するプレーンとし、地紋画像のタイプを白抜きタイプとした場合の画像データを構成する各プレーンを示す概念図であり、Cプレーンにおける有色部分は粗なドットを示し、無色部分は密なドットを示している。
図7Aに示すように、地紋画像のタイプを浮上タイプとした場合、地紋画像に係るCプレーンにおける牽制文字「CONFIDENTIAL」は、粗いドットで描写され、他の部分は密なドットで描写される。一方、図7Bに示すように、地紋画像のタイプを白抜きタイプとした場合、地紋画像に係るCプレーンにおける牽制文字「CONFIDENTIAL」は、密なドットで描写され、他の部分は粗なドットで描写される。なお「CONFIDENTIAL」以外の文字を牽制文字としても良いし、牽制のための記号又は図形などを牽制文字に代えて使用しても良い。
【0047】
図8は、粗ドットデータ及び密ドットデータと中間調データとを合成する地紋合成処理を説明するフローチャート、図9は、地紋画像以外のプレーンに対する中間調データの補正を示す概念図、図10は、中間調データに黒色に係る粗ドットデータを加算した場合の視認性と中間調データに黒色以外の色に係る粗ドットデータを加算した場合の視認性とを説明する説明図である。
【0048】
制御部1は、地紋パターンデータが地紋パターン生成部63に入力されるまで待機する(ステップS31:NO)。地紋パターンデータは、粗ドットデータであるか密ドットデータであるかを示す信号Xと画像形成(例えば印字)のための出力値(ドットを出力すること)を示す信号Zから成る。例えば、粗ドットデータであればX=0、密ドットデータであれば、X=1で表され、出力値を示す信号は、印字しないことを示す場合はZ=0、印字することを示す場合はZ=1で表される。地紋パターンデータが地紋パターン生成部63に入力された場合(ステップS31:YES)、制御部1は、入力された地紋パターンデータを、地紋パターン生成部63にて例えば、4ビット形式(中間調生成部58で生成される中間調データの階調数と同じ階調数のデータ形式)のデータに変換し(ステップS32)、地紋合成処理部59に入力する。印字しない画素データ「0」を2進化10進数「0000」(10進数のZ=0)に変換し、印字する画素データ「1」を2進化10進数「1111」(10進数のZ=15)に変換する(図5D参照、なお図5Dでは10進数で表記している)。
【0049】
制御部1は、地紋パターンデータのZと該地紋パターンデータに対応するプレーンの中間調データの画素とを地紋合成処理部にて選択し、両者を加算する(ステップS33)。例えばCMYKの各プレーンを示す中間調データを示す画素値が、それぞれ(C′、M′、Y′、K′)であり、地紋画像に使用するプレーンがC(シアン)である場合、中間調データのC′に所定値Z(出力値を示す信号Z)を加算し、(C′+Z、M′、Y′、K′)とする。なお、各プレーンにおいて、値が15(4ビット形式の最大値)を超過する場合、加算後の値は15とする。そのため、所定値Zが15である場合には、必ず最大値となり、高濃度の地紋画像が形成される。加算処理としては、ビット毎のOR演算を実行してもよいし、牽制文字データをビット変換したデータが「15」の場合にのみ、地紋パターン生成部63から地紋合成処理部59にビット変換したデータ(中間調データの代わりに、地紋パターンデータを出力する)を出力してもよい。
【0050】
制御部1は、地紋パターンデータが粗ドットデータ(X=0)で且つその画素が印字を示すデータ(Z≠0)である場合(ステップS34:YES)、地紋合成処理部59にて、地紋画像に使用しない他のプレーンに係る中間調データを補正する(ステップS35)。例えば前述の(C′+Z、M′、Y′、K′)に対して以下の補正を行う。M(マゼンタ)、Y(黄色)、K(黒)の各プレーンを示す値から所定値aを減算し、(C′+Z、M′−a、Y′−a、K′−a)とする。図9Aは、中間調データに係る画素毎に区切られたMプレーンを示しており、図9Bは、減算後のMプレーンを示している。なお図9の画素は、図5Dに対応している。図9Bに示すように、図5Dにて印字を示す「15」となっている画素については、値が小さくなっていることがわかる。Yプレーン及びKプレーンについても同様である。
【0051】
制御部1は、地紋パターンデータが密ドットデータ(X=1)あるいはその画素が印字を示すデータZがZ=0である場合(ステップS34:NO)、ステップS36へ処理を進める。
【0052】
減算した値が負の値となる場合は、減算した値は0とする。またM、Y、Kの各プレーンを示す値に補正係数b(0<b<1)を乗算し、(C′+Z、M′・b、Y′・b、K′・b)としても良い。乗算した値の小数点以下の部分については、四捨五入するか又は切り捨てなどを行い、整数化する。このように、地紋画像に使用しない他のプレーンについては、値が減少するので、中間調データに基づいて画像を形成する場合に比べて、記録剤7b〜7dの使用量を抑制することができる。なおa=15又はb=0とし、地紋画像に使用するプレーンに対応した記録剤7aのみを使用する構成とした場合には、記録剤7b〜7dの使用量をより一層削減することができる。
【0053】
また地紋画像に使用するプレーンがKの場合に、Z≠0であれば、地紋画像に使用しない他のプレーンの値を0としてもよい。図10Aに示すように、地紋画像に使用するプレーンがKの場合に、Cを示す画素の中間調データにKを加算したC+Kと、Cを示す画素の中間調データと置換したKとでは、C+KにおいてCよりもKが強く視認されるため、利用者がいずれを視認してもほとんど差がない。一方、図10Bに示すように、地紋画像に使用するプレーンが黒以外、例えばMの場合に、Cを示す画素の中間調データにMを加算したC+Mと、Cを示す画素の中間調データと置換したMとでは、利用者はそれぞれ全く異なる色として認識する。そのため、地紋画像に使用するプレーンがKの場合には、地紋画像のKに対応する中間調データの画素のC、M、Yの値を0としても、利用者の視認性にほとんど影響を与えずに、K以外の記録剤7a〜7cの使用量を削減することができる。
【0054】
次に制御部1は、上述の演算を行ったCMYKデータを画像出力装置7に出力する(ステップS36)。次に制御部1は、全画素についてCMYKデータを画像出力装置7に出力したか否かを判定する(ステップS37)。全画素についてCMYKデータを画像出力装置7に出力していない場合(ステップS37:NO)、制御部1は、ステップS31に処理を戻す。全画素についてCMYKデータを画像出力装置7に出力している場合(ステップS37:YES)、制御部1は、処理を終了する。
【0055】
図11は、画像出力装置7によって形成され、地紋画像及び原稿画像を合成してなる画像及び該画像を複写機にて複写した複写画像を示す模式図である。図11Aは地紋画像及び原稿画像を合成した画像を示し、図11Bは浮上タイプの地紋画像に係る複写画像を示し、図11Cは白抜きタイプの地紋画像に係る複写画像を示す。なお原稿画像は上述の中間調データに係る画像である。
図11Aに示すように、画像出力装置7によって形成され、地紋画像及び原稿画像を合成してなる画像においては、地紋画像は視認されず、原稿画像が明確に視認される。地紋画像が浮上タイプである場合に、地紋画像及び原稿画像を合成してなる画像を複写したとき、図11Bに示すように、有色の牽制文字「CONFIDENTIAL」が原稿の上側に存在するように視認される。一方、地紋画像が白抜きタイプである場合に、地紋画像及び原稿画像を合成してなる画像を複写したとき、図11Cに示すように、白抜き又は淡色の牽制文字「CONFIDENTIAL」が原稿の下側に存在するように視認される。
【0056】
上述した地紋画像を原稿画像に合成する処理は、コンピュータに実行させるためのプログラムとしてROM1bに格納されているが、コンピュータでの読み取りが可能な記録媒体20に記録することもできる。この結果、上記処理を行うプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム及びソースプログラムなど)を記録した記録媒体20を持ち運び自在に提供することができる。
なお地紋画像を原稿画像に合成する処理に係るプログラムは、マイクロコンピュータでの処理を行うためのメモリ、例えばROMのようなプログラムメディアに記録されていても良いし、また図示しない記録媒体読取装置を設けて、該記録媒体読取装置に挿入するプログラムメディアに記録されていても良い。いずれの場合においても、記録媒体に格納されているプログラムはマイクロプロセッサがアクセスして実行させる構成であっても良く、またいずれの場合もプログラムコードを読み出し、読み出したプログラムコードを、マイクロコンピュータの図示されていないプログラム記憶エリアにダウンロードして、実行する構成であってもよい。なお、ダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0057】
ここで、上記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープ及びカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク及びハードディスク等の磁気ディスク、CD(Compact Disk)−ROM/MO(Magneto-Optical disk)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクのディスク系、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)及びフラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムコードを担持する媒体であっても良い。
【0058】
また画像形成装置をインターネットを含む通信ネットワークに接続可能な構成とし、上記プログラムメディアを、通信ネットワークからプログラムコードをダウンロードするように流動的にプログラムコードを担持する媒体としても良い。なお、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであっても良い。なお本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。上記記録媒体は、デジタルカラー画像形成装置又はコンピュータシステムに備えられるプログラム読取装置によって読み取られ、上述した画像処理方法が実行される。
【0059】
実施の形態1に係る画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体にあっては、地紋画像と原稿画像とを合成する画素に対しては、画像を形成する各プレーンとして、前記地紋画像データに係るプレーン(例えばCプレーン)と、前記原稿画像データに係る複数のプレーン(例えばC、M、Y、Kプレーン)とを選択し、選択した各プレーンを合成する。このときCプレーン以外のプレーン(M、Y、Kプレーン)に対して、M、Y、Kプレーンが示す色の濃度が低下するように補正を実行する。一方、地紋画像と原稿画像とを合成しない画素に対しては、画像を形成するプレーンとして、前記原稿画像データに係る複数のプレーン(C、M、Y、Kプレーン)を選択するので、複写した紙面に均等に地紋画像を形成させることができ、紙面の体裁の悪化を回避することができる。また地紋画像を形成する画素に対しては、原稿画像に係る前記M、Y、Kプレーンが示す色の濃度を低下させているので、記録剤7b〜7dの消費量を低減させることができる。また地紋画像を形成する画素に対して、地紋画像に係る前記Cプレーンの濃度は維持されるので、前記M、Y、Kプレーンが示す色の濃度を低下させたことによる色味の損失を最小限に止めて、形成される画像の品質を維持することができる。
【0060】
また地紋画像と原稿画像とを合成する画素に対する前記M、Y、Kプレーンの選択を必要に応じて停止し、Cプレーンに係る地紋画像のみを形成するので、記録剤7b〜7dの消費量をより一層低減させることができる。また地紋画像を原稿画像に合成しない画素については、原稿画像のプレーンがそのまま使用されるので、画像品質への影響を最小限に止めることができる。
【0061】
また前記地紋画像データに係る一のプレーンが黒色(K)を示すデータである場合に、地紋画像と原稿画像とを合成する画素に対する前記残余のプレーンの選択を必要に応じて停止するので、地紋画像のKに対応する中間調データの画素のC、M、Yの値を0とし、利用者の視認性にほとんど影響を与えずに、K以外の記録剤7a〜7cの使用量を削減することができる。
【0062】
また地紋画像と原稿画像との合成を行う画素については、複写時に地紋画像を顕在化させるドットパターンに対応させて、Cプレーンに係る地紋画像データを出力し、M、Y、Kプレーンに係る原稿画像データを色の濃度を低下させて出力するので、記録剤7b〜7dの使用量を低減させることができる。また利用者は複写によって浮き上がった牽制文字または白抜きの牽制文字を明確に視認することができ、複写後の画質の低下を抑制することができる。
【0063】
また画像を形成する記録剤7a〜7dの使用量を低減する低減指令を受け付けた場合に、前記M、Y、Kプレーンに対する補正を実行し、記録剤7b〜7dの使用量低減に関する利用者の希望を画像形成に反映させることができる。例えば原稿の使用用途(例えばセキュリティレベル)に応じて、利用者は、記録剤7b〜7dを低減させるか否かを操作スイッチ及び操作パネルなどの操作部9を介して選択することができる。利用者は、記録剤7a〜7dを低減した複写後の画質が使用用途に対応している場合に、記録剤7a〜7dの低減を選択し、非対応な場合に選択しないことができる。
【0064】
なお地紋画像データに係るプレーンはCプレーンに限定されず、M又はKプレーンでも良い。
【0065】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係るコンピュータ及びプリンタを示す図面に基づいて詳述する。図12は、コンピュータ及びプリンタを示すブロック図である。
【0066】
コンピュータ2には、画像編集ソフトなどのアプリケーション・ソフトウェア21及びプリンタ・ドライバ22がインストールしてある。アプリケーション・ソフトウェア21を用いて作成された画像データは、プリンタ・ドライバ22にてPDL(Page Description Language:各領域毎に起点位置・サイズ・色を記述するプリンタ記述言語)に変換され、プリンタ40に送信される。
【0067】
プリンタ40は、領域判定部41と、色補正部42と、空間フィルタ処理部43と、中間調生成部44と、地紋合成処理部45と、画像出力装置46と、牽制文字生成部47と、文字画像生成部48と、地紋パターン生成部49とを備える。
領域判定部41はコンピュータから出力される画像データを構成する各領域を識別するものである。領域判定部41は各領域の属性情報を調べ、テキストデータが占める文字領域、図形やグラフ等が占める図形領域、及び写真の画像データが占める自然画像領域等を判別する。文字・図形・写真などのオブジェクトの種類は、印字データの記述形式が異なるので、該記述形式を読み取ることで判別することができる。
【0068】
色補正部42では、色再現の忠実化実現のために、不要吸収成分を含むCMY(C:シアン・M:マゼンタ・Y:イエロー)色材の分光特性に基づいた色濁りを取り除く処理を行うと共に、C′、M′、Y′の3色信号から黒(K)信号を生成する黒生成、元のC′、M′、Y′信号から黒生成で得たK信号を差し引いて新たなCMY信号を生成する下色除去処理を行う。すなわち、RGB信号はCMYK信号に変換される。
【0069】
空間フィルタ処理部43は、色補正部42より入力されるCMYK信号の画像データに対して、デジタルフィルタによる空間フィルタ処理により、より滑らかな曲線を描く文字又は線のエッジを再現するために、わずかな平滑化を行う。そして、中間調生成部44は、画像を各画素に分離して、それぞれの画素の階調を再現できるように多値ディザ処理を行い、階調再現処理(中間調生成)を実行する。階調再現処理を実行した画像データは、画像出力装置46に送信され、紙などのシート上に画像が形成される。
【0070】
牽制文字生成部47、文字画像生成部48及び地紋パターン生成部49では、前述した牽制文字生成部61、文字画像生成部62及び地紋パターン生成部63と同様に、付加する地紋のパターンが生成される。牽制文字生成部47、文字画像生成部48及び地紋パターン生成部49は、SSD(Solid State Drive)及びHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部10に予め記憶したパターンを生成してもよいし、利用者が入力した設定値に応じてパターンを生成してもよい。
【0071】
地紋パターン生成部49にて生成された地紋パターンと中間調生成部44から出力されたCMYK信号は地紋合成処理部45で合成される。地紋パターンの合成は、あらかじめ指定されたC、M、Kのいずれかのプレーンの信号に対して行う。地紋が合成されたCMYK信号は、画像出力装置46に出力され、画像出力装置46にて画像が形成される。なお、画像出力装置46は電子写真方式プリンタ及びインクジェット方式プリンタ等の画像を再現する装置をいい、プリンタ又は複合機の操作パネルに設置された液晶ディスプレイ等の画像を表示する装置とは異なる。
【0072】
実施の形態2に係るコンピュータ2及びプリンタ40も、実施の形態1に係る画像形成装置、画像処理装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記録媒体と同様に、記録剤の消費量を低減し、原稿画像と地紋画像とを合成することができる。なお実施の形態2に係るコンピュータ2及びプリンタ40の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
以上説明した実施の形態は本発明の例示であり、本発明は特許請求の範囲に記載された事項及び特許請求の範囲の記載に基づいて定められる範囲内において種々変更した形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 制御部
1a CPU
1b ROM
1c RAM
2 コンピュータ
3 画像入力装置
4、5 画像処理装置
9 操作部(受付手段)
10 記憶部
20 記録媒体
60 地紋画像生成部
47、61 牽制文字生成部
48、62 文字画像生成部
49、63 地紋パターン生成部
45、59 地紋合成処理部(第1選択手段、第2選択手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複写時に顕在化する地紋画像を示す地紋画像データを生成し、生成された地紋画像データ及び原稿を読み取って得られた原稿画像データを合成する画像処理装置において、
前記原稿画像データは、画像を構成する画素に対応した複数の色成分データを含み、
前記地紋画像データは、画像を構成する画素に対応した一の色成分データを含み、
前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用する画素に対して、前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択する第1選択手段と、
該第1選択手段にて選択された前記原稿画像データに係る複数の色成分データの内、前記地紋画像データに係る一の色成分データと同一色のデータを除いた残余の色成分データが示す色の濃度を低下させる手段と、
前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用しない画素に対して、前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択する第2選択手段とを備え、
前記第1選択手段にて選択された前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを合成して出力するか又は前記第2選択手段にて選択された前記原稿画像データに係る複数の色成分データを出力するようにしてあること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1選択手段は、前記残余の色成分データの選択を停止することができるようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1選択手段は、前記一の色成分データが黒色を示すデータである場合に、前記残余の色成分データの選択を停止するようにしてあること
を特徴する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記地紋画像データを、複写時に顕在化するドットパターン又は非顕在化するドットパターンに画素毎に対応付けて、複写時に顕在化するドットパターンに対応する画素に対して、前記地紋画像データに係る一の色成分データと所定の演算によって色の濃度を低下させた前記残余の色成分データとを出力するようにしてあることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像を形成する記録剤の使用量を低減する指令を受け付ける受付手段を備え、
該受付手段にて前記指令を受け付けた場合に、前記残余の色成分データが示す色の濃度を低下させるようにしてあること
を特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の画像処理装置と、該画像処理装置によって処理が施された前記原稿画像データ及び地紋画像データに基づいて、シート上に画像を形成する手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
複写時に顕在化する地紋画像を示す地紋画像データを生成し、生成された地紋画像データ及び原稿を読み取って得られた原稿画像データを合成する画像処理方法において、
前記原稿画像データは、画像を構成する画素に対応した複数の色成分データを含み、
前記地紋画像データは、画像を構成する画素に対応した一の色成分データを含み、
前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用する画素に対して、前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択するステップと、
該ステップにて選択された前記原稿画像データに係る複数の色成分データの内、前記地紋画像データに係る一の色成分データと同一色のデータを除いた残余の色成分データが示す色の濃度を低下させるステップと、
前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用しない画素に対して、前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択するステップと、
前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択した場合に、前記一の色成分データ及び原稿画像データに係る複数の色成分データを合成して出力するステップと、
前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択した場合に、前記複数の色成分データを出力するステップと
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、複写時に顕在化する地紋画像を示す地紋画像データを生成し、生成された地紋画像データ及び原稿を読み取って得られた原稿画像データを合成する手段として機能させるコンピュータプログラムにおいて、
前記原稿画像データは、画像を構成する画素に対応した複数の色成分データを含み、
前記地紋画像データは、画像を構成する画素に対応した一の色成分データを含み、
コンピュータを、
前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用する画素に対して、前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択する手段、
該手段にて選択された前記原稿画像データに係る複数の色成分データの内、前記地紋画像データに係る一の色成分データと同一色のデータを除いた残余の色成分データが示す色の濃度を低下させる手段、
前記地紋画像データに係る一の色成分データを画像形成に使用しない画素に対して、前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択する手段、
前記地紋画像データに係る一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択した場合に、前記一の色成分データ及び前記原稿画像データに係る複数の色成分データを合成して出力する手段並びに
前記原稿画像データに係る複数の色成分データを選択した場合に、前記複数の色成分データを出力する手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とするコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−105215(P2012−105215A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254142(P2010−254142)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】