説明

画像処理装置、立体画像印刷システム、画像処理方法およびプログラム

【課題】立体ベクトルを用いて、より自然で立体視しやすい立体画像を生成する画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、立体画像を構成する立体画像データを外部から入力するための立体画像データ入力手段と、立体画像データから被写体を抽出する被写体抽出手段と、立体画像データに含まれる視点の異なる複数の平面画像データから被写体の立体ベクトルを算出する立体ベクトル算出手段と、立体ベクトルと立体画像データとを関連付けて記録する立体画像データ記録手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像データに対して立体画像を生成するための画像処理を行う画像処理装置、立体画像印刷システム、画像処理方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、視線の異なる複数の画像を組み合わせて表示することで、視差を利用した立体視が実現されている。例えば、(1)左目用と右目用の画像に対して、それぞれ直交する直線偏光をかけて、偏光メガネを用いて立体視を行う方法、(2)左目用と右目用の画像を交互に表示して、表示手段と同期した液晶シャッターを備えたメガネを用いて立体視を行う方法、(3)左目用と右目用の画像に対して、それぞれ赤と青の光を重ねて表示し、左右に赤と青のカラーフィルタの付いたメガネを用いて立体視を行う方法が挙げられる。
【0003】
また、いわゆる裸眼立体視の方法として、例えば、複数の画像を短冊状に切り取って交互に配置し、パララックスバリア(視差バリア)、またはレンチキュラーレンズを用いて、左右の眼でそれぞれの画像を見ることで立体視を行う方法も挙げられる。
【0004】
ここで、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1〜4が挙げられる。
特許文献1には、複数の位置から複数の撮像装置によって撮影され、当該複数の位置のうちの所望の位置と所望の撮影時刻が指定されると、撮影時刻の異なる複数のフレーム画像が選択され、立体画像形成部により、所定の光学系を介して観察した場合に観察視点位置の移動に従って順次観察できるように合成され立体印刷される、立体画像形成装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、3次元表示面または該3次元表示面の近傍に配置された実物体の位置または姿勢若しくは形状を検出する検出部と、実物体の形状と位置または姿勢とに基づいて、実物体が3次元表示面により照射された光線を遮蔽する領域である遮蔽領域を算出する遮蔽領域算出部と、遮蔽領域に対して、遮蔽領域以外の領域と異なる描画処理を行って、立体画像を描画する描画部とを備えた立体画像生成装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、撮影空間を撮影したときに撮像系により捉えられた各点の輝度値を表す輝度画像を取得する輝度画像取得手段と、各点の空間的な位置を所定の座標系で表した3次元情報を取得する3次元情報取得手段と、所定の入力装置から、座標系の軸方向ごとのオフセット値を指定する入力を受け付けて、該各オフセット値を所定のメモリに記憶し、座標系の原点をオフセット値分変位させた点をオフセット原点として設定するオフセット原点設定手段とを備え、それぞれの情報を格納する領域を有する所定フォーマットのファイルを生成するファイル生成装置が開示されている。
【0007】
特許文献4には、立体強度のレベル値が大きいほど立体感の強い立体視画像が表示されることを表わす、立体視画像の立体強度を示すタグ(立体強度タグ)が画像制御情報として含まれ、立体視画像を表示させたい表示装置の指定を付属情報として管理することが可能な立体視画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−165795号公報
【特許文献2】特開2008−90617号公報
【特許文献3】特開2008−252493号公報
【特許文献4】特開2004−334833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
立体画像データの表示方法は、従来、立体度(奥行き量、または飛び出し量)、および立体視差量を調整することで、立体画像を見ることによる疲労感を軽減したり、あるいは立体画像の不自然さを調整するものが多く提案されている。つまり、従来は被写体が画面に対してどの程度飛び出しているか、または引き込んでいるかを表して調整するものであったが、被写体がどの方向にどの程度飛び出しているか、または引き込んでいるかを表す指標は開示も示唆もされていなかった。
また、立体画像印刷は、専用の機材が必要であったり手間がかかるため、通常のプリントよりも高価となることから、ユーザの所望の形で1回で印刷できることが望ましい。
【0010】
本発明の目的は、被写体がどの方向にどの程度飛び出しているか、または引き込んでいるかを表す指標を立体ベクトルとして表現し、立体ベクトルを様々な画像処理に用いることで、より自然で立体視しやすい立体画像を生成する画像処理装置、立体画像印刷システム、画像処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、立体画像を構成する立体画像データを外部から入力するための立体画像データ入力手段と、
前記立体画像データから被写体を抽出する被写体抽出手段と、
前記立体画像データに含まれる視点の異なる複数の平面画像データから前記被写体の立体ベクトルを算出する立体ベクトル算出手段と、
前記立体ベクトルと前記立体画像データとを関連付けて記録する立体画像データ記録手段と、を有することを特徴とする画像処理装置を提供する。
【0012】
ここで、前記被写体抽出手段は、さらに、前記被写体の顔を抽出するものであって、
さらに、前記被写体の顔の向きを検出する顔の向き検出手段を有し、
前記立体ベクトル算出手段は、さらに、前記顔の向きを利用して顔の立体ベクトルを算出するものであることが好ましい。
【0013】
また、前記被写体抽出手段は、前記被写体の複数の部位を抽出し、
前記立体ベクトル算出手段は、前記被写体の複数の部位の立体ベクトルを算出するものであることが好ましい。
【0014】
また、前記立体画像データ記録手段は、前記被写体の複数の部位の立体ベクトルのうち、最も大きい立体ベクトルと前記立体画像データとを関連付けて記録するものであることが好ましい。
【0015】
また、前記立体画像データ記録手段は、前記被写体の立体ベクトルを、前記立体画像データのExifタグに記録するものであることが好ましい。
【0016】
また、前記立体画像データ記録手段は、前記被写体の立体ベクトルを、前記立体画像データとは別のファイルに記録するものであることが好ましい。
【0017】
また、前記立体ベクトル算出手段は、前記視点の異なる複数の平面画像データから前記被写体の視差および前記視点から前記被写体までの距離を算出し、該視点の異なる複数の平面画像データ、視差および距離から前記被写体の立体ベクトルを算出するものであることが好ましい。
【0018】
さらに、複数種類の立体画像テンプレートが記録されたテンプレート記録手段と、
前記テンプレート記録手段に記録された複数種類の立体画像テンプレートの中から、前記立体画像データと関連付けて記録された立体ベクトルに基づいて所定数の立体画像テンプレートを選択するテンプレート選択手段と、
前記立体画像データと前記テンプレート選択手段により選択される所定数の立体画像テンプレートのうちユーザにより選択される1つの立体画像テンプレートとを合成し、合成立体画像を構成する合成立体画像データを出力する合成手段と、を有することが好ましい。
【0019】
ここで、前記テンプレート選択手段は、前記被写体の飛び出し量をNとして、N/3よりも大きく3Nよりも小さい範囲の飛び出し量のキャラクタを含む立体画像テンプレートを選択するものであることが好ましい。
【0020】
また、前記テンプレート選択手段は、さらに、前記立体画像における被写体の顔の向きおよび該被写体の位置に基づいて、前記立体画像テンプレートを選択するものであることが好ましい。
【0021】
また、前記テンプレート選択手段は、前記被写体の顔の向きが左側もしくは右側で、該被写体が前記立体画像の左側もしくは右側に配置され、前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタが右側もしくは左側に配置される場合、該被写体の顔の向きが前記キャラクタの方を向く場合には、上下方向のうち前記被写体の顔の向きと逆方向の前記キャラクタの顔の向きを非選択とし、前記被写体の顔の向きが前記キャラクタの方を向かない場合には、左右方向のうち前記被写体の顔の向きと逆方向の前記キャラクタの顔の向きを非選択とし、かつ、上下方向のうち前記被写体の顔の向きと逆方向の前記キャラクタの顔の向きを非選択とし、それ以外の顔の向きの前記キャラクタを含む立体画像テンプレートを選択するものであることが好ましい。
【0022】
また、前記テンプレート選択手段は、前記被写体の顔の向きが左側もしくは右側で、該被写体が中央に配置され、前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタが前記被写体の右側もしくは左側に配置される場合には、前記被写体の顔の向きに係わらず、上下方向のうち該被写体の顔の向きと逆方向の前記キャラクタの顔の向きを非選択とし、それ以外の顔の向きの前記キャラクタを含む立体画像テンプレートを選択するものであることが好ましい。
【0023】
また、前記テンプレート選択手段は、前記被写体の顔の向きが中央の場合には、該被写体の配置および顔の向きに係わらず、上下方向のうち前記被写体の顔の向きと逆方向の前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタの顔の向きを非選択とし、それ以外の顔の向きの前記キャラクタを含む立体画像テンプレートを選択するものであることが好ましい。
【0024】
また、前記テンプレート選択手段は、前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタの飛び出し量および顔の向きに優先順位を設け、該優先順位に従って前記立体画像テンプレートを選択するものであることが好ましい。
【0025】
また、前記テンプレート選択手段は、前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタの飛び出し量および顔の向きをプレビュー画面に表示して、該プレビュー画面に表示された複数の立体画像テンプレートの中から、ユーザにより選択される1つの立体画像テンプレートを選択するものであることが好ましい。
【0026】
また、本発明は、上記のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置から出力される合成立体画像データに対応する合成立体画像を印刷する印刷装置と、を有することを特徴とする立体画像印刷システムを提供する。
【0027】
また、本発明は、外部から入力される、立体画像を構成する立体画像データを受け取る立体画像データ入力ステップと、
前記立体画像データから被写体を抽出する被写体抽出ステップと、
前記立体画像データに含まれる視点の異なる複数の平面画像データから前記被写体の立体ベクトルを算出する立体ベクトル算出ステップと、
前記立体ベクトルと前記立体画像データとを関連付けて記録する立体画像データ記録ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、上記に記載の画像処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、立体ベクトルを意識することなく、より自然で立体視しやすい立体画像、より自然で立体視しやすいレイアウトのユーザ画像とキャラクタ画像の合成画像、およびこれらを印刷した立体プリント(立体写真)を、失敗なく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は、平面画像データの軸を示す説明図であり、(b)は、本発明に係る立体画像データの軸および立体ベクトルの一例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る画像処理装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る立体画像データの軸および立体ベクトルの、他の一例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る画像処理装置の第1実施形態における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】立体画像データのファイル構成の一例を示す説明図である。
【図6】立体画像データのファイルの、ヘッダの一例を示す説明図である。
【図7】立体画像データのファイルの、ヘッダの他の一例を示す説明図である。
【図8】被写体の顔の向きと立体ベクトルの一例を示す説明図である。
【図9】本発明に係る画像処理装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る画像処理装置の第2実施形態における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図11】立体画像データのファイルの、ヘッダの他の一例を示す説明図である。
【図12】本発明に係る第3実施形態である立体画像印刷システムを示すブロック図である。
【図13】立体プリントの一例を示す説明図である。
【図14】立体プリントの他の一例を示す説明図である。
【図15】立体プリントの他の一例を示す説明図である。
【図16】立体プリントの他の一例を示す説明図である。
【図17】立体プリントの他の一例を示す説明図である。
【図18】立体プリントの他の一例を示す説明図である。
【図19】本発明に係る第3実施形態である立体画像印刷システムにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図20】図19のフローチャートの続きを示すフローチャートである。
【図21】図19のフローチャートの続きを示すフローチャートである。
【図22】図19のフローチャートの続きを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る画像処理方法を実施する画像処理装置、および立体画像印刷システムを、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0032】
始めに、本発明に係る立体画像における被写体の立体ベクトルについて説明する。
図1(a)および(b)は、ユーザ画像の平面画像データと立体画像データとを比較した図である。
図1(a)は、従来の平面画像を構成する平面画像データ(X,Y軸の2次元データ)の軸を示す図であり、水平軸をX軸、垂直軸をY軸として表現している。図1(b)は、本発明に係る立体画像を構成する立体画像データ(X,Y,Z軸の3次元データ)の軸および立体ベクトルの一例を示す図であり、平面画像データのX軸、Y軸、および平面画像データのX軸、Y軸からなる平面に直交するZ軸を有し、Z軸は被写体の飛び出し方向(奥行き量、または飛び出し量)を表す軸である。つまり、立体ベクトルは、立体画像データに含まれるX,Y,Z軸の3次元データを表す。
【0033】
立体画像データとしては、例えば、右目用の平面画像および左目用の平面画像を含むステレオ画像の画像データを例示することができる。つまり、ステレオ画像の画像データは、1つの画像データ内に、右目用の平面画像の画像データおよび左目用の平面画像の画像データを含む。なお、立体画像データは、ステレオ画像の画像データに限らず、視点の異なる複数の平面画像の画像データを1つの立体画像データ内に含むものであればよい。
【0034】
ここで、立体画像における被写体の立体ベクトルを求めるためには、まず、例えば、特開2006−165795号公報、特開2001−346226号公報、特開2008−90617号公報等に記載の方法により、被写体をボリュームデータ(X,Y,Z軸の3次元データ)として描画し、右目用と左目用のそれぞれの平面画像(主画像、副画像)間のテンプレートマッチングによる対応点検出結果より、右目用の平面画像と左目用の平面画像との間の視差(視差量)および視点から被写体までの距離を算出する。
【0035】
次に、右目用の平面画像と左目用の平面画像(の画像データ)および求められた視差および距離から、X,Y,Z軸で表される立体ベクトルの、それぞれの軸の値を算出することで、(X,Y,Z)で表される立体ベクトルを求めることができる。Z軸方向の値(飛び出し量)は、例えば、特開2010−45584号公報等に記載されているように、視差および距離に比例し、視差が大きくなると大きくなり、距離が長くなると大きくなる。従って、Z軸方向の値は、距離が求まれば、視差に応じて一意に算出することができる。例えば、図1(b)では、Z軸の値(Z軸方向の飛び出し量)をZ1とすると、立体ベクトルは(0,0,Z1)(始点座標(0,0,0)、終点座標(0,0,Z1)))となる。また、X軸方向およびY軸方向の値は、例えば、Z軸方向の値が突出している部分を検出し、検出したZ軸方向の値に対応する手、足、顔等の被写体の部位を特定し、被写体の胴体と特定した部位との位置関係から算出することができる。例えば、Z軸方向の値が突出している部分として被写体の手を検出した場合、胴体の肩の位置および手の先の位置からX軸方向およびY軸方向の値を算出する。なお、立体ベクトルの算出方法は何ら限定されず、立体画像データに含まれる視点の異なる複数の平面画像データから被写体の立体ベクトルを算出する、既存の方法を含む各種の方法を用いることができる。
【0036】
次に、本発明に係る画像処理装置について説明する。
図2は、本発明に係る画像処理方法を実施する、本発明に係る画像処理装置の構成を表す第1実施形態のブロック図である。
図2に示す画像処理装置10は、立体画像データ入力手段12、被写体抽出手段14、立体ベクトル算出手段16、および立体画像データ記録手段18によって構成される。
【0037】
立体画像データ入力手段12は、立体画像データを入力するための入力手段であって、立体画像データを画像処理装置10の外部から入力するための外部インタフェースを有する。立体画像データの作成方法には特に限定はなく、ユーザが3D対応のデジタルスチルカメラまたはデジタルビデオカメラで撮影した動画像/静止画像データ、ならびにネットワーク上からダウンロードした動画像/静止画像データなど、種々の立体画像データを入力することができる。外部インタフェースは、USB(Universal Serial Bus)、メモリーカードR/W(reader/writer)、光学ディスク、および有線/無線LAN(Local Area Network)などであればよい。立体画像データは、外部から外部インタフェースを介して入力される。立体画像データ入力手段12は、外部から入力される立体画像データを受け取って画像処理装置10の各部位へ供給する。
【0038】
被写体抽出手段14には、立体画像データ入力手段12から立体画像データが入力される。被写体抽出手段14は、立体画像データを解析して立体画像における被写体(の領域)を抽出する。被写体の抽出方法は、例えば、エッジ検出、色彩検出等の既存の方法を含む各種の方法を用いることができる。また、被写体の各部位、例えば、顔、左右の手、胴体、足等について、それぞれの領域を抽出する。被写体抽出手段14は、抽出された被写体の情報および被写体の各部位の情報を生成し、被写体情報として出力する。
【0039】
立体ベクトル算出手段16には、立体画像データ入力手段12から立体画像データ、および被写体抽出手段14から被写体情報が入力される。立体ベクトル算出手段16は、前述のように、立体画像データに含まれる主画像データおよび副画像データ間の被写体のテンプレートマッチングを行って対応点を検出し、対応点検出結果に基づいて、被写体または被写体の各部位ごとに視差および距離を算出する。また、算出された視差および距離から、立体ベクトルの各軸の値を算出して立体ベクトルを求め出力する。
【0040】
図3の例では、Z軸を紙面の垂直方向にとり、被写体が顔と右手を右上前方に向けた場合の立体ベクトルを示す。このとき、顔の立体ベクトルを(X2,Y2,Z2)(始点座標(0,0,0)、終点座標(X2,Y2,Z2)、以下同様である。)、右手の立体ベクトルを(X3,Y3,Z3)とする。ここで、立体ベクトル算出手段16は、顔の立体ベクトルと右手の立体ベクトルとを比較する場合に、例えば、ベクトルの大きさを比較して大きい方である右手の立体ベクトルを、立体画像データに関連付けて記録する立体ベクトルとして出力することができる。ベクトルの大きさは、例えば、顔の立体ベクトルは式(1)で、右手の立体ベクトルは式(2)で、それぞれ求められる。なお、出力する立体ベクトルはこれに限定されず、顔、左手、胴体、および足のうち1以上の立体ベクトルを出力してもよい。
【0041】
√(X2+Y2+Z2) ・・・ (1)
√(X3+Y3+Z3) ・・・ (2)
【0042】
立体画像データ記録手段18には、立体画像データ入力手段12から立体画像データ、および立体ベクトル算出手段16から立体ベクトルが入力される。立体画像データ記録手段18は、立体ベクトルと立体画像データとを関連付けて記録する。立体画像データ記録手段18は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリでもよいし、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記録媒体でもよい。
【0043】
また、立体ベクトルは、立体画像データのExif(Exchangeable image file format)タグの一部にその値を書き込んでもよいし、立体画像データファイル(例えば、ファイル名:Image0001.jpg)と別のファイル(例えば、ファイル名:Image0001.vct)として記録するようにしてもよい。
【0044】
次に、本発明に係る画像処理方法を実現する、本発明に係る画像処理装置10の第1実施形態の動作を説明する。
【0045】
図4は、本発明に係る第1実施形態の画像処理方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、立体画像データ入力手段12を介して、素材となる立体画像データが入力される(ステップS10)。立体画像データは、被写体抽出手段14に入力されて立体画像が解析され(ステップS12)、被写体が抽出される(ステップS14)。また、被写体の各部位、例えば、顔、左右の手、胴体、足等について、それぞれの領域が抽出され、抽出された被写体および被写体の各部位の情報が生成され、被写体情報として出力される。
【0046】
立体画像データ、および被写体情報は、立体ベクトル算出手段16に入力され、立体画像データの主画像データおよび副画像データ間の、被写体のテンプレートマッチングが行われて対応点が検出される(ステップS16)。対応点検出結果に基づいて、被写体または被写体の各部位ごとに視差および距離が算出される(ステップS18)。また、算出された視差および距離から、立体ベクトルの各軸の値が算出されて立体ベクトルが求められ出力される(ステップS20)。
【0047】
立体画像データ、および立体ベクトルは、立体画像データ記録手段18に入力され、立体ベクトルと立体画像データとが関連付けられて、すなわち、立体ベクトルが立体画像データのExifタグへ書き込まれて、または別のファイルへ出力されて記録される(ステップS22)。例えば、図5に示すファイルフォーマットの例では、立体画像データ30のヘッダ32内のExifタグに立体ベクトルが書き込まれる。
また、ヘッダ32内のExifタグへの記入の例としては、被写体の立体ベクトルのみ記録する場合を図6に示し、被写体の各部位ごとの立体ベクトルを記録する場合を図7に示す。
【0048】
このように、立体ベクトルと立体画像データとを関連付けて記録しておき、立体ベクトルを利用して立体画像データから立体画像を合成することで、より自然で立体視しやすい立体画像を得ることができる。
【0049】
次に、被写体の顔の向きの立体ベクトル(顔の立体ベクトル)を用いる場合を第2実施形態として説明する。
第2実施形態では、第1実施形態の画像処理装置に加えて、さらに顔の向きの検出を行うことで、より高精度の立体ベクトルを算出する。
図8は、被写体の顔の向きと立体ベクトルの例である。顔の向きの立体ベクトルも被写体の立体ベクトルと同様に、(X,Y,Z)で表される。例えば、図8の左上に示すように、顔の向きの立体ベクトルが(−1,1,1)であれば、顔は紙面に向かって左上を向き、飛び出し量(Z軸方向の値)は(1)であることを表している。これ以外の顔の向きの立体ベクトルについても同様である。
【0050】
図9は、上述の第1実施形態と異なる、本発明に係る画像処理装置22の構成を表す第2実施形態のブロック図である。
画像処理装置22は、図2に示す本発明に係る第1実施形態の画像処理装置10と比べ、被写体抽出手段14内に顔の向き検出手段20をさらに備えたものであり、基本的に同様の構成を有するものである。よって、同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
顔の向き検出手段20は、被写体の顔の領域から、天地方向の顔の向き(角度)、および左右方向の顔の向き(角度)を算出する。顔の向き検出方法は、例えば、マシンラーニング手法を利用して、顔画像からランドマークを示す点の位置を検出する特開2006−202276号に記載の方法、および、一定の大きさの画像データを切り出して、特徴部分の画像データと照合を行う特開2004−334836号に記載の方法等の既存の方法を含む各種の方法を用いることができる。ここで、顔の認識については、複数の人物の顔を認識してもよいし、特定の人物の顔について認識してもよい。また、複数の人物のうち、特定の人物は顔を含む各部位を検出し、残りの人物は顔のみを検出するようにしてもよい。なお、顔の向きの情報についても、被写体情報として出力する。
【0052】
顔の向き検出手段20は、本実施形態では、被写体抽出段手段14の内部に設けられているが、これに限定されず、顔の向き検出手段20が被写体抽出手段14の外部に設けられていてもよい。
【0053】
立体ベクトル算出手段16は、視差および距離、さらに、被写体情報に含まれる顔の向きの情報を利用して、顔の立体ベクトルの各軸の値を算出する。
【0054】
次に、本発明に係る画像処理装置の第2実施形態である、本発明に係る画像処理装置22動作を説明する。
【0055】
図10は、本発明に係る第2実施形態の画像処理方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、立体画像データ入力手段12を介して、素材となる立体画像データが入力される(ステップS30)。立体画像データは、被写体抽出手段14に入力され、立体画像が解析され(ステップS32)、被写体の顔が検出される(ステップS34)。また、顔の向き検出手段20により被写体の顔の向きの検出が行われ、被写体および被写体の顔の向きの情報が生成され、被写体情報として出力される。
【0056】
立体画像データ、および被写体情報は、立体ベクトル算出手段16に入力され、立体画像データの主画像データおよび副画像データ間の、被写体(顔)のテンプレートマッチングが行われて対応点が検出される(ステップS36)。対応点検出結果に基づいて、被写体および被写体の顔ごとに視差および距離が算出される(ステップS38)。また、算出された視差および距離、さらに、顔の向きを利用して、立体ベクトル(顔の立体ベクトルを含む)の各軸の値が算出されて立体ベクトルが求められ出力される(ステップS40)。
【0057】
立体ベクトルが求められると、立体画像に写っている全ての人物について、立体ベクトルの算出が終了したか判定され(ステップS42)、全ての人物についての立体ベクトルの算出が終了していなければ、ステップS36へと戻り、残りの人物について立体ベクトルが求められる(ステップS42で“N”)。
【0058】
全ての人物についての立体ベクトルの算出が終了していれば(ステップS42で“Y”)、立体画像データ、および立体ベクトル(顔の立体ベクトルを含む)は、立体画像データ記録手段18に入力され、立体ベクトルと立体画像データとが関連付けられて、すなわち、立体ベクトルが立体画像データのExifタグへ書き込まれて、または別のファイルへ出力されて記録される(ステップS44)。例えば、Exifタグへの記入の例としては、図11に示すように、顔立体ベクトルを含む各部位の立体ベクトルを記録することができる。
【0059】
このように、顔の立体ベクトルと立体画像データとを関連付けて記録しておき、顔の立体ベクトルを利用して立体画像データから立体画像を合成することで、被写体抽出の精度を上げることができ、より自然で立体視しやすい立体画像を得ることができる。
【0060】
次に、立体画像データと立体画像テンプレートとを合成する画像処理装置と、立体画像データを印刷する印刷装置とを有する立体画像印刷システムについて、第3実施形態として説明する。
第3実施形態では、第2実施形態の画像処理装置に加えて、キャラクタ等の含まれるテンプレートを合成することで、よりエンターテイメント性の向上した立体画像を得る。
【0061】
図12は、上述の第1,第2実施形態と異なる、本発明に係る立体画像印刷システム50の構成を表す第3実施形態のブロック図である。
立体画像印刷システム50は、図9に示す本発明に係る第2実施形態の画像処理装置22と比べ、テンプレート記録手段40、テンプレート選択手段42、および合成手段44をさらに備えた画像処理装置52と、印刷装置54とから構成され、画像処理装置52は基本的に同様の構成を有するものである。よって、同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0062】
テンプレート記録手段40には、ユーザの立体画像データと合成するための複数種類の立体画像テンプレートがあらかじめ記録されている。合成用の立体画像テンプレートとしては、例えば、テーマパーク等におけるキャラクタを用いたものが挙げられ、ユーザの立体画像(ユーザ画像)の被写体と立体画像テンプレートのキャラクタとを合成した立体画像を得ることができるものである。
【0063】
テンプレート選択手段42には、立体画像データ記録手段18から立体画像データと関連付けて記録された立体ベクトル(被写体情報を含む)、およびテンプレート記録手段40から立体画像テンプレートが入力される。テンプレート選択手段42は、テンプレート記録手段40に記憶された複数種類の立体画像テンプレートの中から、立体ベクトルおよび顔の向きに基づき、所定数の適切な立体画像テンプレートを選択し、図示しない表示装置に表示する。テンプレート選択手段42は、表示装置に表示された所定数の立体画像テンプレートの中から、図示しない入力手段を介してユーザにより選択された立体画像テンプレートを出力する。
【0064】
なお、本実施形態では、被写体抽出手段14から立体ベクトル算出手段16に入力される被写体情報に含まれる被検者の顔の向きの情報(被写体情報)を立体ベクトルとともにまとめて立体ベクトル算出手段16から出力しているが、本発明はこれに限定されず、被写体抽出手段14から出力される被写体の顔の向きの情報(被写体情報)と、立体ベクトル算出手段16から出力される被写体の立体ベクトルを別々に、立体画像データ記録手段18およびテンプレート選択手段42にそれぞれ入力する構成としてもよい。
【0065】
ここで、テンプレート選択手段42による立体画像テンプレートの選択方法について説明する。
図13は、立体画像60a上において、ユーザの立体画像の被写体62が左側、立体画像テンプレートのキャラクタ63が右側に配置された例である。被写体62の立体ベクトル66は(−1,1,1)、つまり向かって左上に視線が向いた状態であり、キャラクタ63の立体ベクトル68は(1,1,1)、つまり向かって右上に視線が向いた状態である。この状態では、被写体62とキャラクタ63は、お互いに反目した形になり、さらに合成画像を立体印刷した合成プリントを立体視しようとしても、立体ベクトルの方向が異なるため立体視しづらいプリントとなってしまう。
【0066】
このため、テンプレート選択手段42では、被写体62の立体ベクトルに基づいて、例えば、図14に示す立体画像60bのように、被写体62の立体ベクトル66と同じ方向の成分の立体ベクトル70を持つキャラクタ64を選択して配置したり、あるいは、図15に示す立体画像60cのように、被写体とキャラクタの配置を入れ替えて、被写体72の立体ベクトル76と、キャラクタ74の立体ベクトル78とが、向かい合うように配置することができるように、適切な立体画像テンプレートが選択される。
【0067】
ユーザの立体画像(ユーザ画像)の被写体の立体ベクトル、顔の向きおよび配置と、合成用立体画像テンプレートのキャラクタ(表1ではキャラと記載)の立体ベクトルおよび顔の向きとの組み合わせのうち、ユーザ立体ベクトルが上向きの場合のマトリックスの一例を表1に示す。なお、ユーザ立体ベクトルが下向きの場合には、OK(適切)およびNG(不適切)となるキャラクタ立体ベクトルは逆の組み合わせとなる。
【0068】
【表1】

【0069】
ユーザ画像の被写体が立体画像の左側に配置されている場合、キャラクタ画像のキャラクタは被写体の右側に配置され、被写体が右側に配置されている場合、キャラクタは被写体の左側に配置されるものとする。また、被写体が中央に配置されている場合、キャラクタは被写体の右側もしくは左側に配置される(どちら側に配置されるかはユーザにより選択される)ものとする。
【0070】
被写体の顔の向きが左側(左上、左正、左下)もしくは右側(右上、右正、右下)で、被写体が左側もしくは右側に配置されている場合に、被写体の顔の向きがキャラクタの方を向く場合には、上下方向のうち被写体の顔の向きと逆方向のキャラクタの顔の向きをNG(非選択)とする。また、被写体の顔の向きがキャラクタの方を向かない場合には、左右方向のうち被写体の顔の向きと逆方向のキャラクタの顔の向きをNGとし、かつ、上下方向のうち被写体の顔の向きと逆方向のキャラクタの顔の向きをNGとする。
【0071】
また、被写体の顔の向きが左側もしくは右側で、被写体が中央に配置されている場合には、キャラクタが被写体の左側に配置されるか右側に配置されるかに応じて、被写体の顔の向きがキャラクタの方を向くか向かないかが変わってくる。従って、被写体が中央に配置されている場合には、被写体の顔の向きに係わらず、上下方向のうち被写体の顔の向きと逆方向のキャラクタの顔の向きをNGとする。
【0072】
また、被写体の顔の向きが中央(中央上、中央正、中央下)の場合には、被写体が左側、中央、右側のどの位置に配置されている場合であっても、被写体の顔の向きはキャラクタの配置に係わらず中立な向きとなる。従って、被写体の顔の向きが中央の場合には、被写体の配置および顔の向きに係わらず、上下方向のうち被写体の顔の向きと逆方向のキャラクタの顔の向きをNGとする。
【0073】
例えば、被写体の顔の向きが左上で、左側に配置されている場合、被写体の顔の向きは、右側に配置されるキャラクタの方を向かない。従って、キャラクタの右側方向の顔の向きをNGとし、かつ、キャラクタの下側方向の顔の向きをNGとする。つまり、キャラクタの顔の向きのうち、右側方向に含まれる右上、右正、右下をNG、下側方向に含まれる右下、中央下、左下をNGとし、それ以外の中央上、左上、左正、中央正をOK(選択)とする。
【0074】
被写体の顔の向きが左上で、右側に配置されている場合、被写体の顔の向きは、左側に配置されるキャラクタの方を向く。従って、キャラクタの下側方向の顔の向きをNGとする。つまり、キャラクタの顔の向きのうち、下側方向に含まれる右下、中央下、左下をNGとし、それ以外の右正、右上、中央上、左上、左正、中央正をOKとする。
【0075】
被写体の顔の向きが左上で、中央に配置されている場合、被写体の顔の向きに係わらず、キャラクタの下側方向の顔の向きをNGとする。つまり、キャラクタの顔の向きのうち、下側方向に含まれる右下、中央下、左下をNGとし、それ以外の右正、右上、中央上、左上、左正、中央正をOKとする。
【0076】
続いて、被写体の顔の向きが右上で、左側に配置されている場合は、被写体の顔の向きが左上で、右側に配置される場合に対して左右逆の状態となる。従って、この場合には、NGとするキャラクタの顔の向きを左右逆向きにすればよく、キャラクタの下側方向の顔の向きをNGとする。つまり、下側方向に含まれる右下、中央下、左下をNGとし、それ以外の右正、右上、中央上、左上、左正、中央正をOKとする。
【0077】
被写体の顔の向きが右上で、右側に配置されている場合、同じく、被写体の顔の向きが左上で、左側に配置される場合に対して左右逆の状態となる。従って、同様に、NGとするキャラクタの顔の向きを左右逆向きにして、キャラクタの左側方向の顔の向きをNGとし、かつ、下側方向の顔の向きをNGとする。つまり、左側方向に含まれる左上、左正、左下、および、下側方向に含まれる右下、中央下、左下をNGとし、それ以外の右正、右上、中央上、中央正をOKとする。
【0078】
被写体の顔の向きが右上で、中央に配置されている場合も同様に、被写体の顔の向きが左上で、中央に配置される場合に対して左右逆の状態となる。従って、同様に、NGとするキャラクタの顔の向きを左右逆向きにして、キャラクタの下側方向の顔の向きをNGとする。つまり、下側方向に含まれる右下、中央下、左下をNGとし、それ以外の右正、右上、中央上、左上、左正、中央正をOKとする。
【0079】
続いて、被写体の顔の向きが中央上の場合、被写体の配置および顔の向きに係わらず、キャラクタの下側方向の顔の向きをNGとする。つまり、下側方向に含まれる右下、中央下、左下をNGとし、それ以外の右正、右上、中央上、左上、左正、中央正をOKとする。
【0080】
また、立体ベクトルの大きさも考慮して立体画像テンプレートを選択するようにしてもよい。例えば、図16に示す立体画像60dでは、キャラクタ82の立体ベクトル86が、被写体80の立体ベクトル84よりも飛び出し量が大きい場合を示し、図17に示す立体画像60eは、被写体88の立体ベクトル92がキャラクタ90の立体ベクトル94よりも飛び出し量が大きい場合を示す。このように、被写体とキャラクタの立体ベクトルの大きさがアンバランスになる組み合わせは、選択肢から外すようにすることができる。
【0081】
なお、図16および図17では、被写体の飛び出し量を(3)としているが、被写体とキャラクタのバランスが取れる範囲であれば、被写体の飛び出し量とキャラクタの飛び出し量とが異なっていてもよい。具体的には、例えば、被写体の飛び出し量(N)に対してキャラクタの飛び出し量が(N/3)よりも大きく(3N)よりも小さい範囲であることが望ましい。
【0082】
立体ベクトルの大きさも考慮した場合の、ユーザの被写体の立体ベクトルおよび配置と、キャラクタの立体ベクトルとの組み合わせの、マトリックスの一例を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
さらに、図18に示すように、組み合わせ可能なキャラクタの立体ベクトルに優先順位を設けて、優先順位に従って立体画像テンプレートが選択されるようにしてもよい。例えば、表3に示すように、ユーザ立体ベクトルが左上(−1,1,1)の場合、立体画像100における被写体102の立体ベクトル106に対して、キャラクタ104の立体ベクトル108a〜108hのうち、108bを1番、108dを2番というように優先順位を付け、立体ベクトル108f、108g、および108hの不適切な組み合わせの場合は、選択されないようにNGとする。
【0085】
【表3】

【0086】
また、優先順位の替わりに、これらの立体ベクトルの方向をプレビュー画面に表示して、ユーザが選択可能なように構成してもよい。さらに、保存容量を節約するために、あらゆる組み合わせを用意するのではなく、最も適切な組み合わせに近い立体画像テンプレートを用意するようにしてもよい。
【0087】
続いて、合成手段44には、立体画像データ記録手段18から立体ベクトルと関連付けられた立体画像データと、テンプレート選択手段42で選択された立体画像テンプレートが入力される。合成手段44は、立体画像データと、テンプレート選択手段42によって選択された立体画像テンプレート(つまり、立体画像の被写体と立体画像テンプレートのキャラクタ)とを合成して、合成立体画像を構成する合成立体画像データを生成し出力する。
【0088】
印刷装置54には、合成手段44から合成立体画像データが入力される。印刷装置54は、合成立体画像データに対応する合成立体画像をプリントアウトすることができるプリンタである。立体画像のプリントとしては、例えば、複数の画像を短冊状に切り取って交互に配置し、パララックスバリア(視差バリア)、またはレンチキュラーレンズを用いて裸眼立体視が可能なように印刷することが挙げられる。
【0089】
次に、本発明の第3実施形態である、本発明に係る立体画像印刷システム50の動作を説明する。
【0090】
図19〜図22は、本発明に係る第3実施形態の画像処理方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、立体画像データ入力手段12を介して、素材となる立体画像データが入力される(ステップS100)。立体画像データから、上述の第2実施形態と同様に、被写体(ユーザ)および顔の向きの検出、立体ベクトル算出処理が行われ、立体画像データ(ユーザ立体画像データ)、および立体ベクトル(ユーザ立体ベクトル)が関連付けられて立体画像データ記録手段18に記録される。
【0091】
また、被写体(ユーザ)情報(顔の向きの情報を含む)およびユーザ立体ベクトルに基づき(ステップS102)、適切な立体画像テンプレートをテンプレート記録手段40から読み込み、図示しない表示装置に複数表示し(ステップS106)、操作者による合成用の立体画像テンプレート(キャラクタ)の選択が行われる(ステップS108)。なお、ここで選択される立体画像テンプレート(キャラクタ)は、配置については決定されていない。また、合成用の立体画像テンプレート(キャラクタ)の選択は、自動的に行われてもよい。
【0092】
合成用の立体画像テンプレート(キャラクタ)が選択されると、立体画像データの被写体の配置位置が検出または選択される(ステップS110)。被写体(ユーザ)の配置位置が左の場合には(ステップS110で“左”)、被写体が左に配置された場合のマトリックスが選択され(ステップS112)、被写体の配置位置が中央の場合には(ステップS110で“中央”)、被写体が中央に配置された場合のマトリックスが選択され(ステップS114)、被写体の配置位置が右の場合には(ステップS110で“右”)、被写体が右に配置された場合のマトリックスが選択される(ステップS116)。
【0093】
続いて、被写体の立体ベクトル(ユーザ立体ベクトル)に基づいて、マトリックスが選択される。立体ベクトルの左右方向の向きが左の場合であって(ステップS118で“左”)、立体ベクトルの上下方向の向きが上の場合(ステップS120で“上”)、ユーザ立体ベクトルが左上のマトリックスが選択される(ステップS126)。同様に、立体ベクトルの左右方向の向きが左の場合であって(ステップS118で“左”)、立体ベクトルの上下方向の向きが正面の場合(ステップS120で“正面”)、ユーザ立体ベクトルが左正面のマトリックスが選択され(ステップS128)る。また、立体ベクトルの左右方向の向きが左の場合であって(ステップS118で“左”)、立体ベクトルの上下方向の向きが下の場合(ステップS120で“下”)、ユーザ立体ベクトルが左下のマトリックスが選択される(ステップS130)。
【0094】
立体ベクトルの左右方向の向きが中央の場合(ステップS118で“中央”)も同様に、ステップS122,S132〜S136において、ユーザ立体ベクトルが中央上、中央正面、または中央下のいずれかのマトリックスが選択される。立体ベクトルの左右方向の向きが右の場合(ステップS118で“右”)も同様に、ステップS124,S138〜S142において、ユーザ立体ベクトルが右上、右正面、または右下のいずれかのマトリックスが選択される。
【0095】
ユーザ立体ベクトルに基づきマトリックスが選択されると、当該マトリックスに含まれる被写体(ユーザ)とキャラクタの位置関係から、合成可能(適切)な複数の立体画像テンプレートが提示され、一意のキャラクタの配置位置と立体ベクトルを有する立体画像テンプレートが、操作者によって選択される(ステップS144)。なお、最も適切と考えられるキャラクタの配置位置と立体ベクトルを有する立体画像テンプレートが自動的に選択されるようにしてもよい。
【0096】
キャラクタの配置位置と立体ベクトルを有する立体画像テンプレート、および立体画像データは、合成手段44に入力される。キャラクタの配置位置と立体ベクトルを有する立体画像テンプレート、および立体画像データは合成されて、合成立体画像データが生成され出力される(ステップS146)。
【0097】
合成立体画像データは、印刷装置54に入力され、立体画像が印刷される(ステップS148)。
【0098】
このように、ユーザは立体ベクトル値を意識することなく、所望の合成用の立体画像テンプレートを選択するだけで、被写体の配置と立体ベクトル(ユーザ立体ベクトル)に基づいて、不適切な立体画像テンプレートが選択されることを排除することが可能となり、満足度を向上させることができる。
【0099】
また、被写体の配置に合わせて、立体画像テンプレートのキャラクタの配置および立体ベクトルを変更することで、つまり、被写体とキャラクタの立体感が最も適合した立体画像テンプレートが選択されることで、よりエンターテイメント性が高く満足度が高い立体画像が印刷された立体プリントを得ることができる。
【0100】
なお、本発明においては、上述した画像処理方法の各工程をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムとして構成しても良いし、また、コンピュータを、画像処理方法の各工程を実施する各手段として、または、上述した画像処理装置を構成する各手段として機能させる画像処理プログラムとして構成しても良い。
また、本発明を、上述した画像処理プログラムをコンピュータにより読取可能な媒体またはコンピュータにより読取可能なメモリとして構成してもよい。
【0101】
以上、本発明の画像処理装置、立体画像印刷システム、画像処理方法およびプログラムについて詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0102】
10,22,52 画像処理装置
12 立体画像データ入力手段
14 被写体抽出手段
16 立体ベクトル算出手段
18 立体画像データ記録手段
20 顔の向き検出手段
30 立体画像データ
32 ヘッダ
40 テンプレート記録手段
42 テンプレート選択手段
44 合成手段
50 立体画像印刷システム
54 印刷装置
60a〜60e,100 立体画像
62,72,80,88,102 被写体
63,64,74,82,90,104 キャラクタ
66,68,70,76,78,84,86,92,94,106,108a〜108h 立体ベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体画像を構成する立体画像データを外部から入力するための立体画像データ入力手段と、
前記立体画像データから被写体を抽出する被写体抽出手段と、
前記立体画像データに含まれる視点の異なる複数の平面画像データから前記被写体の立体ベクトルを算出する立体ベクトル算出手段と、
前記立体ベクトルと前記立体画像データとを関連付けて記録する立体画像データ記録手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記被写体抽出手段は、さらに、前記被写体の顔を抽出するものであって、
さらに、前記被写体の顔の向きを検出する顔の向き検出手段を有し、
前記立体ベクトル算出手段は、さらに、前記顔の向きを利用して顔の立体ベクトルを算出するものである請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記被写体抽出手段は、前記被写体の複数の部位を抽出し、
前記立体ベクトル算出手段は、前記被写体の複数の部位の立体ベクトルを算出するものである請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記立体画像データ記録手段は、前記被写体の複数の部位の立体ベクトルのうち、最も大きい立体ベクトルと前記立体画像データとを関連付けて記録するものである請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記立体画像データ記録手段は、前記被写体の立体ベクトルを、前記立体画像データのExifタグに記録するものである請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記立体画像データ記録手段は、前記被写体の立体ベクトルを、前記立体画像データとは別のファイルに記録するものである請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記立体ベクトル算出手段は、前記視点の異なる複数の平面画像データから前記被写体の視差および前記視点から前記被写体までの距離を算出し、該視点の異なる複数の平面画像データ、視差および距離から前記被写体の立体ベクトルを算出するものである請求項1〜6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
さらに、複数種類の立体画像テンプレートが記録されたテンプレート記録手段と、
前記テンプレート記録手段に記録された複数種類の立体画像テンプレートの中から、前記立体画像データと関連付けて記録された立体ベクトルに基づいて所定数の立体画像テンプレートを選択するテンプレート選択手段と、
前記立体画像データと前記テンプレート選択手段により選択される所定数の立体画像テンプレートのうちユーザにより選択される1つの立体画像テンプレートとを合成し、合成立体画像を構成する合成立体画像データを出力する合成手段と、を有する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記テンプレート選択手段は、前記被写体の飛び出し量をNとして、N/3よりも大きく3Nよりも小さい範囲の飛び出し量のキャラクタを含む立体画像テンプレートを選択するものである請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記テンプレート選択手段は、さらに、前記立体画像における被写体の顔の向きおよび該被写体の位置に基づいて、前記立体画像テンプレートを選択するものである請求項8または9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記テンプレート選択手段は、前記被写体の顔の向きが左側もしくは右側で、該被写体が前記立体画像の左側もしくは右側に配置され、前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタが右側もしくは左側に配置される場合、該被写体の顔の向きが前記キャラクタの方を向く場合には、上下方向のうち前記被写体の顔の向きと逆方向の前記キャラクタの顔の向きを非選択とし、前記被写体の顔の向きが前記キャラクタの方を向かない場合には、左右方向のうち前記被写体の顔の向きと逆方向の前記キャラクタの顔の向きを非選択とし、かつ、上下方向のうち前記被写体の顔の向きと逆方向の前記キャラクタの顔の向きを非選択とし、それ以外の顔の向きの前記キャラクタを含む立体画像テンプレートを選択するものである請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記テンプレート選択手段は、前記被写体の顔の向きが左側もしくは右側で、該被写体が中央に配置され、前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタが前記被写体の右側もしくは左側に配置される場合には、前記被写体の顔の向きに係わらず、上下方向のうち該被写体の顔の向きと逆方向の前記キャラクタの顔の向きを非選択とし、それ以外の顔の向きの前記キャラクタを含む立体画像テンプレートを選択するものである請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記テンプレート選択手段は、前記被写体の顔の向きが中央の場合には、該被写体の配置および顔の向きに係わらず、上下方向のうち前記被写体の顔の向きと逆方向の前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタの顔の向きを非選択とし、それ以外の顔の向きの前記キャラクタを含む立体画像テンプレートを選択するものである請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記テンプレート選択手段は、前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタの飛び出し量および顔の向きに優先順位を設け、該優先順位に従って前記立体画像テンプレートを選択するものである請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記テンプレート選択手段は、前記立体画像テンプレートに含まれるキャラクタの飛び出し量および顔の向きをプレビュー画面に表示して、該プレビュー画面に表示された複数の立体画像テンプレートの中から、ユーザにより選択される1つの立体画像テンプレートを選択するものである請求項8〜14のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置から出力される合成立体画像データに対応する合成立体画像を印刷する印刷装置と、を有することを特徴とする立体画像印刷システム。
【請求項17】
外部から入力される、立体画像を構成する立体画像データを受け取る立体画像データ入力ステップと、
前記立体画像データから被写体を抽出する被写体抽出ステップと、
前記立体画像データに含まれる視点の異なる複数の平面画像データから前記被写体の立体ベクトルを算出する立体ベクトル算出ステップと、
前記立体ベクトルと前記立体画像データとを関連付けて記録する立体画像データ記録ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項18】
請求項17に記載の画像処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図1】
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【図3】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−160039(P2012−160039A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19494(P2011−19494)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】