説明

画像処理装置および画像処理プログラム並びに電子カメラ

【課題】
従来の色差画像の生成処理は画像の構造を判定して平滑化を制御するので、処理が複雑で処理量が多く、演算コストが掛かるという問題があった。
【解決手段】
本発明に係る画像処理装置は、複数種類の色成分のいずれか1つの色成分データを有する複数の画素で構成される画像データを入力して、前記複数の画素内の注目画素の第1色成分データと該第1色成分データとは異なる色成分データを有する前記注目画素近傍の他画素の第2色成分データとを用いて前記注目画素の暫定色差データを求める暫定色差生成部と、前記注目画素を含む特定領域内の画素の前記暫定色差データを平滑化して平滑色差データを生成する色差平滑部と、前記平滑色差データの色差範囲を設定する色差範囲設定部と、前記平滑色差データが前記色差範囲内にあるか否かに応じて前記平滑色差データを制御した平滑制御色差データを出力する色差平滑制御部とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理プログラム並びに電子カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電子カメラでは、単板イメージセンサーの各画素にRGBのいずれか1つの色成分を有するBayer配列などのカラーフィルタを配置してRAW画像などのカラー情報を取得するようになっている。この場合、RAW画像の各画素はRGBのいずれか1つの色成分値しか得られないため、周辺画素の色成分から色補間処理を行って画素毎にRGB3つの色成分値を生成する処理が行われている。この色補間処理は、一般に輝度生成処理と色差生成処理とで構成され、色差生成処理では、例えばR成分の画素位置に周辺のG成分の画素から補間したG成分との色差を算出するが、補間値が正しく求められなかった場合には色モアレなどの偽色が生じる。このため、従来は、算出した色差を平滑化することにより偽色を除去する処理が行われているが、色差平滑化によって画像の構造を平滑化してしまわないように、画像の構造を判定して平滑化を制御する処理も行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−88543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像の構造を判定して平滑化を制御する処理は複雑で処理量が多く、実現するためには演算コストが掛かるという問題がある。特に回路規模や処理時間或いは価格などに制約が多い小型の電子カメラの場合は、小型化や低価格化が難しく、高速連写ができないなどの問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、画像の構造を残しながら偽色を除去する色差平滑化処理を比較的簡単な処理で実現することにより、演算コストを掛けずに高品質なカラー画像を得ることができる画像処理装置および画像処理プログラム並びに電子カメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理装置は、複数種類の色成分のいずれか1つの色成分データを有する複数の画素で構成される画像データを入力して、前記複数の画素内の注目画素の第1色成分データと該第1色成分データとは異なる色成分データを有する前記注目画素近傍の他画素の第2色成分データとを用いて前記注目画素の暫定色差データを求める暫定色差生成部と、前記注目画素を含む特定領域内の画素の前記暫定色差データを平滑化して平滑色差データを生成する色差平滑部と、前記平滑色差データの色差範囲を設定する色差範囲設定部と、前記平滑色差データが前記色差範囲内にあるか否かに応じて前記平滑色差データを制御した平滑制御色差データを出力する色差平滑制御部とを有することを特徴とする。
【0007】
特に、前記色差範囲設定部は、前記注目画素近傍の第2色成分データの最大値および最小値を求め、前記注目画素の第1色成分データから前記最大値を減算した値を前記注目画素における色差データの下限値とし、前記注目画素の第1色成分データから前記最小値を減算した値を前記注目画素における色差データの上限値とすることを特徴とする。
【0008】
或いは、前記色差範囲設定部は、前記注目画素近傍の第1色成分データの最大値および最小値と第2色成分データの最大値および最小値とをそれぞれ求め、前記第1色成分データの最大値から前記第2色成分データの最小値を減算した値を前記注目画素における色差データの上限値とし、前記第1色成分データの最小値から前記第2色成分データの最大値を減算した値を前記注目画素における色差データの下限値とすることを特徴とする。
【0009】
または、前記色差範囲設定部は、前記注目画素近傍の複数の局所的領域毎に第2色成分データの平均値を求め、前記平均値の最大値および最小値を前記第2色成分データの最大値および最小値とし、前記注目画素の前記第1色成分データから前記第2色成分データの最小値を減算した値を前記注目画素における色差データの上限値とし、前記注目画素の前記第1色成分データから前記第2色成分データの最大値を減算した値を前記注目画素における色差データの下限値とすることを特徴とする。
【0010】
また、前記色差範囲設定部は、前記注目画素を含む特定領域内において第1の色成分の画素と当該画素の近傍の第2の色成分の画素の複数の組合せを選択し、各組合せ毎に予備色差データを求め、求めた複数の予備色差データの最小値および最大値を前記注目画素における色差データの下限値および上限値とすることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記色差平滑制御部は、前記注目画素の前記平滑色差データが前記色差範囲内にあるか否かを判定し、前記平滑色差データが前記色差範囲内にある場合は当該平滑色差データをそのまま前記注目画素の平滑色差データとして出力し、前記平滑色差データが前記色差範囲内にない場合は当該平滑色差データを前記色差範囲の上限値または下限値に制限した色差データを前記注目画素の平滑色差データとして出力することを特徴とする。
【0012】
或いは、前記色差平滑制御部は、各画素の前記平滑色差データが前記色差範囲内にあるか否かを判定し、前記平滑色差データが前記色差範囲内にある場合は当該平滑色差データを平滑制御色差データとして出力し、前記平滑色差データが前記色差範囲内にない場合は当該画素の前記暫定色差データを平滑制御色差データとして出力することを特徴とする。
【0013】
また、前記色差平滑部は、前記画像を行単位に上から順番に処理し、前記注目画素を含む特定領域内の画素の前記暫定色差データの平均値と前記色差平滑制御部が出力する前記注目画素の上位行の画素の平滑制御色差データとを加重平均した値を当該注目画素の平滑色差データとすることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る画像処理プログラムは、複数種類の色成分のいずれか1つの色成分データを有する複数の画素で構成される画像データを入力して、各画素毎に複数種類の色成分データが含まれる画像データを生成して出力する色補間処理をコンピュータで実行する画像処理プログラムであって、前記入力された画像データに対して前記複数の画素内の注目画素の第1色成分データと該第1色成分データとは異なる色成分データを有する前記注目画素近傍の他画素の第2色成分データとを用いて前記注目画素の暫定色差データを求める暫定色差生成ステップと、前記注目画素を含む特定領域内の画素の前記暫定色差データを平滑化して平滑色差データを生成する色差平滑ステップと、前記平滑色差データの色差範囲を設定する色差範囲設定ステップと、前記平滑色差データが前記色差範囲内にあるか否かに応じて前記平滑色差データを制御した平滑制御色差データを出力する色差平滑制御ステップとを有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電子カメラは、前記画像処理装置に、前記暫定色差生成部と並列に配置され、前記入力した画像データから輝度データを生成する輝度画像生成部を更に設け、光学系を介して入射する被写体光を各画素毎に複数種類の色成分のいずれか1つの色成分を有する複数の画素で構成される画像データに変換して前記画像処理装置に出力する撮像部と、前記撮像部に撮像タイミングを与える操作部材と、前記画像処理装置が出力する前記平滑制御色差データと前記輝度データとを所定のフォーマットで記憶媒体に記録する記録部とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、画像の構造を残しながら偽色を除去する色差平滑化処理を比較的簡単な処理で実現することにより、演算コストを掛けずに高品質なカラー画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】各実施形態に係る電子カメラ101の構成を示すブロック図である。
【図2】電子カメラ101の画像処理部107の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る電子カメラ101の色差画像生成部252の構成および処理の流れを示すブロック図である。
【図4】暫定色差データの生成方法を説明するための説明図である。
【図5】9×9画素の所定範囲の処理例を示す説明図である。
【図6】色差データおよび輝度データの生成例を示す説明図である。
【図7】第2の実施形態に係る電子カメラ101の色差画像生成部252の構成および処理の流れを示すブロック図である。
【図8】第3の実施形態に係る電子カメラ101の色差画像生成部252の構成および処理の流れを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る画像処理装置および画像処理プログラム並びに電子カメラの実施形態について図面を用いて詳しく説明する。尚、以下の実施形態では、本発明に係る画像処理プログラムにより動作する画像処理装置が搭載された電子カメラの例を挙げて説明する。
【0019】
[電子カメラ101の構成および基本動作]
先ず、各実施形態に共通の電子カメラ101の全体構成および基本動作について説明する。図1は電子カメラ101の構成を示すブロック図で、電子カメラ101は、光学系102と、メカニカルシャッタ103と、撮像素子104と、A/D変換部105と、画像バッファ106と、画像処理部107と、カメラ制御部108と、メモリ109と、表示部110と、操作部材111と、メモリカードIF(インターフェース)112とで構成される。ここで、画像処理部107は、本発明に係る画像処理プログラムが搭載された画像処理装置に相当するブロックである。
【0020】
図1において、光学系102に入射される被写体光は、メカニカルシャッタ103を介して撮像素子104の受光面に入射される。ここで、光学系102は、ズームレンズやフォーカスレンズなどの複数枚のレンズおよびレンズ駆動部や絞りなどで構成され、カメラ制御部108からの指令に応じて、ズームレンズやフォーカスレンズ或いは絞りなどが撮影条件に応じて制御される。
【0021】
撮像素子104は、単板イメージセンサで構成され、受光面には光電変換部を有する複数の画素が二次元状に配置されている。そして、カラー情報を取得するために、例えば各画素にはRGB3色のいずれか1色のカラーフィルタが所定の配列で配置されており、撮像素子104は各画素毎にRGB3色のいずれか1色の色成分を有する画像信号を出力する。尚、本実施形態では、ベイヤー配列のカラーフィルタアレイが配置されているものとする。
【0022】
A/D変換部105は、撮像素子104が出力する画像信号を各画素毎にデジタル値に変換し、1枚の撮影画像分の画像データを画像バッファ106に一時的に記憶する。例えば、撮像素子104の解像度が1000画素×1000画素である場合、100万画素分の画像データが画像バッファ106に取り込まれる。この時、画像バッファ106に取り込まれた画像データはRAWデータと呼ばれ、各画素にRGBいずれか1つの色成分を有するべイヤー配列の画像データである。
【0023】
画像バッファ106は、揮発性の高速メモリで構成され、A/D変換部105が出力する撮影画像を一時的に記憶するだけでなく、画像処理部107が画像処理を行う際のバッファメモリとしても使用される。或いは撮影画像やメモリカードIF112に接続されたメモリカード112aに保存されている撮影済の画像を表示部110に表示する際の表示用バッファとしても使用される。
【0024】
画像処理部107は、画像バッファ106に取り込まれたRAWデータに対して、ホワイトバランス処理,色補間処理,ガンマ補正処理,彩度強調処理,輪郭輪郭強調処理などを行う。さらに電子カメラ101の設定に応じて、JPEG規格などに準拠した画像圧縮方法で撮影画像の圧縮を行いJPEGデータを出力する。尚、画像処理部107の構成については後で詳しく説明する。
【0025】
カメラ制御部108は、内部に記憶されたプログラムに従って動作するCPUで構成され、電子カメラ101全体の動作を制御する。例えば、カメラ制御部108は、操作部材111を構成する撮影モード選択ダイヤルやレリーズボタンの操作に応じて、電子カメラ101の撮影モードを設定したり、レリーズボタン押下時には光学系102のレンズ制御や絞り制御を行ってメカニカルシャッタ103を開閉し、撮像素子104で被写体画像を撮像する。そして、カメラ制御部108は、撮像素子104からアナログの画像信号を読み出しながらA/D変換部105でデジタル値に変換し、1画面分の画像データ(RAWデータ)を画像バッファ106に取り込む。さらに、カメラ制御部108は、画像バッファ106に取り込まれたRAWデータに対してホワイトバランス処理や色補間処理などの画像処理を施すよう画像処理部107に指令し、画像処理後の画像データ(例えばJPEGデータ)に所定のファイル名やヘッダ情報を付加してメモリカードI/F112を介してメモリカード112aに保存したり、表示部110に撮影画像を表示する。
【0026】
メモリ109は、フラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリで構成され、電子カメラ101の撮影モードや露出情報,フォーカス情報などのパラメータが記憶され、カメラ制御部108はこれらのパラメータを参照して電子カメラ101の動作を制御する。尚、これらのパラメータは、操作部材111を介して行われるユーザー操作に応じて適宜更新される。
【0027】
表示部110は、液晶モニタなどで構成され、カメラ制御部108によって撮影画像や電子カメラ101の操作に必要な設定メニュー画面などが表示される。
【0028】
操作部材111は、電源ボタン、レリーズボタン、撮影モード選択ダイヤル、カーソルボタンなどで構成される。ユーザーは、これらの操作ボタンを操作して電子カメラ101を使用する。尚、これらの操作ボタンの操作情報はカメラ制御部108に出力され、カメラ制御部108は操作部材111から入力する操作情報に応じて電子カメラ101全体の動作を制御する。
【0029】
メモリカードIF112は、電子カメラ101にメモリカード112aを接続するためのインターフェースで、カメラ制御部108はメモリカードIF112を介してメモリカード112aに画像データを読み書きする。
【0030】
以上が電子カメラ101の構成および基本動作である。
【0031】
[画像処理部107の構成および動作]
次に、画像処理部107の構成および動作について詳しく説明する。図2は画像処理部107の構成例を示すブロック図である。図2において、画像処理部107は、ホワイトバランス処理部(WB処理部)201と、ホワイトバランスゲイン算出部(WBゲイン算出部)202と、ガンマ変換部203と、色補間処理部204と、ガンマ補正処理部205と、彩度強調処理部206と、輪郭強調処理部207と、圧縮処理部208とで構成される。尚、図2において、図1と同符号のものは同じものを示す。以下、画像処理部107の各部について詳しく説明する。
【0032】
ホワイトバランス処理部201は、ホワイトバランスゲイン算出部202が求めたホワイトバランスゲインをRAWデータに乗算してホワイトバランス調整を行う。ホワイトバランス調整は、環境光の特性に依らず無彩色の被写体が無彩色の画像として撮影されるように調整する処理である。
【0033】
ホワイトバランスゲイン算出部202は、被写体の無彩色部分が無彩色の画像として撮影されるように、RGB各色のバランスを調整する係数(ホワイトバランスゲイン)を画像バッファ106に取り込まれたRAWデータから算出する。例えば、ある環境光下で被写体を撮影する前に、同じ環境光下で無彩色のグレー板を撮影し、撮影されたRAWデータのRGB各色の値を同じ値にするためのゲインを求め、これをホワイトバランスゲインとする。
【0034】
ガンマ変換部203は、ホワイトバランス処理部201が処理後のRAWデータに対して、次の色補間処理に適した階調特性(ガンマ特性)に変換する処理を行う。
【0035】
尚、図2において、RAWデータとは、各画素にRGB3色の中のいずれか1色の値を有するベイヤー配列の画像データを意味するものとし、例えばWB処理部201の処理前後のRAWデータやガンマ変換部203の処理前後のRAWデータは同じものではない。同様に、図2において、RGBデータとは、各画素にRGB3色の色成分の値を有する画像データを意味するものとし、例えば色補間処理部204が出力するRGBデータと輪郭強調処理部207が出力するRGBデータは同じものではない。
【0036】
色補間処理部204は、画素毎にRGB3色のいずれか1色の値しか持たないRAWデータを画素毎にRGB3色の値を有するRGBデータに変換する処理を行う。図2において、色補間処理部204は、入力するRAWデータ画像を輝度成分と色差成分とに分けて処理し、輝度画像生成部251と、色差画像生成部252と、輝度色差変換部253とで構成される。輝度画像生成部251は、各画素に輝度データ(L)を生成する処理を行い、色差画像生成部252は、各画素に色差データ(Cr,Cb)を生成する処理を行う。そして、輝度色差変換部253は、輝度画像生成部251で生成された輝度データ(L)と、色差画像生成部252で生成された色差データ(Cr,Cb)とをマトリクス演算してRGBデータに変換する。尚、色差画像生成部252の処理については、後に複数の実施例を挙げて詳しく説明する。また、色差画像生成部252以外の各処理について、本実施形態に依らずいずれの方法で行っても構わない。
【0037】
ガンマ補正処理部205は、色補間処理部204が出力するRGBデータに対して階調変換処理を行う。尚、先に説明したガンマ変換部203では色補間処理に適したガンマ特性に変換したが、ガンマ補正処理部205は出力空間に適したガンマ特性に変換する。
【0038】
彩度強調処理部206は、撮影画像が鮮やかな色彩の画像になるようにRGBデータの彩度を強調する処理を行う。尚、同時に、撮像素子104で撮像される色空間から出力媒体に応じた色空間に変換する処理などを行っても構わない。
【0039】
輪郭強調処理部207は、彩度強調処理部206が出力するRGBデータの画像の輪郭を強調する処理を行う。尚、一般的な輪郭強調処理として、例えば1画面を構成する二次元の複数の画素に対してラプラシアンフィルタなどの差分フィルタによって抽出されたエッジ成分を加える処理が用いられる。
【0040】
圧縮処理部208は、輪郭強調処理部207が出力する画像に対して、JPEG規格など所定の方式で画像圧縮処理を行う。画像圧縮処理後の画像データ(例えばJPEGデータ)は、カメラ制御部108を介してメモリカードIF112に接続されているメモリカード112aに撮影画像として保存される。
【0041】
このように、画像処理部107は、画像バッファ106に取り込まれたRAWデータに対して、ホワイトバランス処理,色補間処理,ガンマ補正処理,彩度強調処理,輪郭輪郭強調処理および圧縮処理を施してカメラ制御部108に出力する。
【0042】
ここで、本願発明の特徴は画像処理部107の中の色差画像生成部252の処理にあり、他の処理は省略したり上記以外の方法を用いても構わない。例えば、ガンマ変換部203の処理を省略したり、圧縮処理部208で画像圧縮処理を行わないようにしても構わない。
【0043】
次に、色差画像生成部252の構成および処理について、いくつかの例を挙げて説明する。
【0044】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態に係る電子カメラ101における色差画像生成部252の構成および処理の流れを示すブロック図である。色差画像生成部252は、図2のガンマ変換部203から入力するRAWデータを処理して各画素に色差データ(Cr,Cb)を生成する。
【0045】
図3において、色差画像生成部252は、暫定色差生成部301と、色差平滑部302と、色差範囲設定部303と、色差平滑制御部304とで構成される。
【0046】
ここで、色差画像生成部252に入力されるRAWデータについて説明する。このRAWデータは、例えば図4(a)に示すようなベイヤー配列の画像データで、各画素はRGB3色の内のいずれか1色の画素値を有している。尚、図4(a)は、分かり易いように4×4画素のベイヤー配列の例を示した図で、縦方向(行方向(r))にr=1からr=4までの4行と、横方向(列方向(c))にc=1からc=4までの4列が配置されている。例えば、1行目と3行目にはG画素とB画素が交互に配置され、2行目と4行目にはR画素とG画素が交互に配置されている。尚、図4(a)において、R(r,c),G(r,c),B(r,c)などの(r,c)の表記は、RGB各色の画素座標(r,c)を示しており(図4(a)の場合、rおよびcは1から4までの自然数)、以降の各図の説明においても図4(a)と同様に(r,c)の表記は画素座標を示すものとする。そして、例えばR(2,3)は2行3列目の画素(2,3)のR成分値を示し、B(3,4)は3行4列目の画素のB成分値を示し、G(4,4)は4行4列目の画素のG成分値を示す。
【0047】
色差画像生成部252に入力されたRAWデータは、暫定色差生成部301と色差範囲設定部303とに入る。
【0048】
[暫定色差生成部301の処理]
暫定色差生成部301は、入力されたRAWデータから暫定色差データを生成する。尚、色差データの生成は任意の方法で構わないが、色差平滑化などの偽色除去処理を含まない方法が望ましい。
【0049】
ここで、暫定色差データを生成するための処理手順について具体的な例を挙げて説明する。尚、暫定色差データの生成処理は、図4(a)のR成分の画素(R画素)またはB成分の画素(B画素)を注目画素として、この注目画素の暫定色差データを求める処理である。また、暫定色差データは、全てのR画素およびB画素に対して求められる。
【0050】
(手順1)類似方向の判定処理
暫定色差データを生成する注目画素(R画素またはB画素)の近傍のG成分の画素(G画素)から画像構造が類似する方向を判定する。
【0051】
具体的には、注目画素の近傍を局所領域(特定領域)として、縦方向の同色隣接画素の差分の絶対値(Cv)を算出し(式1)、さらに横方向の同色隣接画素の差分の絶対値(Ch)を算出する(式2)。尚、注目画素周辺の複数の隣接画素を用いる場合は、差分の絶対値の和をそれぞれ(Cv)または(Ch)としても構わない。
Cv=|(注目画素の上に隣接するG画素値)−(注目画素の下に隣接するG画素値)| …(式1)
Ch=|(注目画素の左に隣接するG画素値)−(注目画素の右に隣接するG画素値)| …(式2)
例えば、図4(a)において、R成分の画素(2,3)を注目画素とした場合、画素(2,3)を中心とする1行目から3行目および2列目から4列目の3×3画素の領域を特定領域とする。そして、縦方向の同色隣接画素の差分の絶対値(Cv)は、画素(2,3)の上下に隣接するG成分の画素(1,3)および画素(3,3)から(式1)を用いて次のように算出する。
Cv=|G(1,3)−G(3,3)|
尚、注目画素である画素(2,3)の上下に隣接する画素として、同じ列c3のG成分の画素(1,3)および画素(3,3)以外のG成分の画素からも同様に(式1)を用いて差分の絶対値Cvを算出する場合は、これら複数の差分の絶対値の和をCvとしても構わない。
【0052】
同様に、横方向の同色隣接画素の差分の絶対値(Ch)は、画素(2,3)の左右に隣接するG成分の画素(2,2)および画素(2,4)から(式2)を用いて算出する。
Ch=|G(2,2)−G(2,4)|
尚、注目画素である画素(2,3)の左右に隣接する画素として、同じ行r2のG成分の画素(2,2)および画素(2,4)以外のG成分の画素からも同様に(式2)を用いて差分の絶対値Chを算出する場合は、これらの複数の差分の絶対値の和をChとしても構わない。
【0053】
(手順2)R画素位置およびB画素位置のG成分を補間
手順1で算出した縦方向と横方向の差分の絶対値(または複数の差分の絶対値の和)を比較して類似性の強い方向(類似方向と称す)を判別し、類似方向にあるG成分の画素の画素値を用いて注目画素(R画素またはB画素)におけるG成分を補間する。
【0054】
具体的には次のように処理する。
【0055】
Cv≦Chの場合、暫定色差データを生成する注目画素(R画素またはB画素)位置のG成分の補間値をその注目画素に隣接する上下のG画素の画素値の平均値とする。
【0056】
Cv>Chの場合、暫定色差データを生成する注目画素(R画素またはB画素)位置のG成分の補間値をその注目画素に隣接する左右のG画素の画素値の平均値とする。
【0057】
例えば、図4(a)において、画素(2,3)のR画素を注目画素とした場合、以下のように画素(2,3)のG成分を補間する。
【0058】
Cv≦Chの場合、R成分の画素(2,3)に隣接する上下のG成分の画素(1,3)および画素(3,3)の平均値を画素(2,3)のG成分(Gr(2,3))とし、次のように計算する。
Gr(2,3)=(G(1,3)+G(3,3))/2
Cv>Chの場合、R成分の画素(2,3)に隣接する左右のG成分の画素(2,2)および画素(2,4)の画素値の平均値を画素(2,3)のG成分(Gr(2,3))とし、次のように計算する。
Gr(2,3)=(G(2,2)+G(2,4))/2
尚、B画素が注目画素である場合でも、上記のR画素の場合と同様に隣接するG画素から補間して注目画素のG成分を求めることができる。
【0059】
このようにして、全てのR画素およびB画素に対するG成分を求める。この様子を図4(b)に示す。図4(b)は図4(a)のベイヤー配列のRAWデータに対応する図で、全てのR画素およびB画素に対するG成分が補間される。例えば、図4(a)に示したB成分の4つの画素(画素(1,2),画素(1,4),画素(3,2),画素(3,4))におけるG成分は、図4(b)に示すように、それぞれGb(1,2),Gb(1,4),Gb(3,2),Gb(3,4)として求められる。同様に、図4(a)のR成分の画素(2,1),画素(2,3),画素(4,1),画素(4,3)に対するG成分は、図4(b)に示すように、それぞれGr(2,1),Gr(2,3),Gr(4,1),Gr(4,3)として求められる。
【0060】
(手順3)R画素位置およびB画素位置に色差データを生成
手順2で求めたR画素位置およびB画素位置のG成分を用いて、R画素位置およびB画素位置の色差データ(暫定色差データ)を生成する。
【0061】
具体的には次のように処理する。図4(b)において、R成分の画素(2,3)の暫定色差データをCr’(2,3)とすると、次のように求めることができる。
Cr’(2,3)=R(2,3)−Gr(2,3)
また、B成分の画素(3,2)の暫定色差データをCb’(3,2)とすると、次のように求めることができる。
Cb’(3,2)=B(3,2)−Gb(3,2)
同様に、他のR成分の画素およびB成分の画素についてもそれぞれ暫定色差データを求めることができる。ここで、手順3の処理後の様子を図4(c)に示す。尚、図4(c)は、図4(a)および図4(b)と同じ画素配置で示した図である。例えば、図4(a)のR成分の画素(2,1),画素(2,3),画素(4,1),画素(4,3)に対する暫定色差データは、図4(c)に示すように、それぞれCr’(2,1),Cr’(2,3),Cr’(4,1),Cr’(4,3)として求められる。同様に、図4(a)のB成分の画素(1,2),画素(1,4),画素(3,2),画素(3,4)に対する暫定色差データは、図4(c)に示すように、それぞれCb’(1,2),Cb’(1,4),Cb’(3,2),Cb’(3,4)として求められる。
【0062】
[色差平滑部302の処理]
次に、色差平滑部302の処理について説明する。図3において、色差平滑部302は、平滑対象の注目画素を含む特定範囲内の色差の平均値を算出して、これを平滑色差データとして出力する。
【0063】
この処理について図5を用いて具体的に説明する。尚、図5(a)は、暫定色差データを算出後の図4(c)に相当する図で、縦方向に1行目から10行目までの10行と、横方向に1列目から9列目までの9列とを描いてある。また、図5(a)において、G1からG45は、べイヤー配列のG画素の画素値(G成分データ)を示し、Cb’1からCb’20は、べイヤー配列のB画素位置の暫定色差データ(Cb’)を示し、Cr’1からCr’25は、べイヤー配列のR画素位置の暫定色差データ(Cr’)を示している。
【0064】
ここで、図5(a)において平滑対象画素(色差平滑処理での注目画素)が6行5列目のR成分の画素(6,5)である場合について説明する。尚、画素(6,5)の暫定平滑色差データ(Cr’13)は既に求められているものとする。
【0065】
例えば、色差平滑部302は、R成分の画素(6,5)を中心とする9×9画素の正方形の特定範囲内(太枠501内)にあるR成分の25画素の暫定色差データ(Cr’1からCr’25)の平均値を求める。尚、特定範囲は9×9画素である必要はなく、5×5画素や11×11画素などでも構わない。但し、3×3画素のように画素数が少ない場合は平滑効果が十分ではなく、逆に画素数が多い場合は膨大な処理を要するので、13×13画素以内が最も好適である。また、正方形である必要はなく、角を面取りした多角形の範囲であっても構わない。さらに、平均値を求める際に、特定範囲の中心画素に周辺部の画素よりも大きな重み付けを行う加重平均を行っても構わない。例えば図5(a)の場合、R成分の25画素の暫定色差データ(Cr’1からCr’25)の暫定平滑色差データCr’13に0.4の重み付けをし、Cr’13を除くCr’1からCr’25までの24個の暫定平滑色差データに0.025の重み付けをして加算する。或いは、R成分の注目画素(6,5)から放射状に周辺に向かって低くなるような重み付けを行っても構わない。また、色差平滑の処理方法は上記に限定されず、メディアンフィルタなどの任意の処理方法を適用しても構わない。尚、B成分の画素についてもR成分の画素と同様の処理を行い、B成分の20個の画素の暫定色差データ(Cb’成分)の平均値を求める。
【0066】
[色差範囲設定部303の処理]
次に、色差範囲設定部303の処理について説明する。図3において、色差範囲設定部303は、各画素の色差データの取り得る範囲(色差範囲)を設定する。例えば、色差範囲設定部303は、色差範囲の設定を行うR成分の画素またはB成分の画素を注目画素として、近傍のG成分の画素の最小値と最大値を求める。そして、求めたG成分の最小値または最大値をR成分またはB成分の注目画素の画素値からそれぞれ減算することにより、注目画素の色差データの最大値と最小値を算出し、これを注目画素の色差範囲とする。
【0067】
具体的には次のように処理する。
【0068】
(手順1)
R成分の各画素について、その画素の上下左右に隣接する4つのG成分の画素の画素値の中から最大値G_maxおよび最小値G_minを求める。
【0069】
(手順2)
R成分の各画素について、手順1で求めたG成分の最大値G_maxおよび最小値G_minを用いて、色差データCrの最小値Cr_minを(式3)に示すように算出し、色差データCrの最大値Cr_maxを(式4)に示すように算出する。
Cr_min=R成分の注目画素の画素値−G_max …(式3)
Cr_max=R成分の注目画素の画素値−G_min …(式4)
そして、Cr_minからCr_maxまでをR成分の注目画素の色差データCrの範囲(色差範囲)とする。
【0070】
(手順3)
B成分の各画素についても、R成分の画素と同様に(手順1)と(手順2)の処理を行って、色差データCbの最小値Cb_minと最大値Cb_maxを算出する。
【0071】
このように、色差範囲設定部303は、上記の各手順を実行して、R成分の画素およびB成分の画素における色差データの取り得る範囲(色差範囲)を設定する。
【0072】
[色差平滑制御部304の処理]
次に、色差平滑制御部304の処理について説明する。図3において、色差平滑制御部304は、色差平滑部302が求めた平滑色差データを色差範囲設定部303が求めた色差範囲に制限する。
【0073】
具体的には次のように処理する。
(平滑色差データ<色差データの最小値)の場合、色差データの最小値を平滑制御色差データとして出力する。
(平滑色差データ>色差データの最大値)の場合、色差データの最大値を平滑制御色差データとして出力する。
(色差データの最小値≦平滑色差データ≦色差データの最大値)の場合、色差平滑部302が出力する平滑色差データを平滑制御色差データとして出力する。
【0074】
このように、色差平滑制御部304は、色差平滑部302が求めた平滑色差データを色差範囲設定部303が求めた色差範囲に制限した平滑制御色差データを出力する。この状態を図5(b)に示す。図5(b)において、注目画素(6,5)は図5(a)の暫定色差データCr’13を色差範囲内に制限した平滑制御色差データCr13が出力される。同様に、他のR成分の画素およびB成分の画素についても各暫定色差データは平滑制御色差データとして色差平滑制御部304から出力される。
【0075】
ここで、色差平滑制御部304が出力する平滑制御色差データは、色差画像生成部252が最終的に出力する色差データに対応する。また、ここまでの処理では、図5(b)に示すように、R成分の画素位置にR成分の色差データCrが生成され、B成分の画素位置にB成分の色差データCbが生成された状態になっている。そこで、更に色差平滑制御部304は、全ての画素に色差データCrおよび色差データCbを生成する補間処理を行う。
【0076】
[色差データの補間処理]
次に、色差平滑制御部304が行う色差データの補間処理について説明する。色差平滑制御部304は、R成分の画素位置にB成分の色差データCbを周辺のB成分の色差データから補間し、同様にB成分の画素位置にR成分の色差データCrを周辺のR成分の色差データから補間する。また、色差平滑制御部304は、図5(b)のG成分の画素位置におけるR成分の色差データCrおよびB成分の色差データCbも補間する。この補間処理について、図6(a)を用いて説明する。図6(a)は図5(b)に対応する図で、図4(a)と同じベイヤー配列の画素配置になっている。
【0077】
図6(a)において、例えばG成分の画素(2,2)のR成分の色差データCrを生成する場合は、画素(2,2)の左右の画素(2,1)および画素(2,3)のR成分の色差データCrの平均値を次のように求め、これを画素(2,2)のR成分の色差データCr(2,2)とする。
Cr(2,2)=(Cr(2,1)+Cr(2,3))/2
また、G成分の画素(2,2)のB成分の色差データCbを生成する場合は、画素(2,2)の上下の画素(1,2)および画素(3,2)のB成分の色差データCbの平均値を次のように求め、これを画素(2,2)のB成分の色差データCb(2,2)とする。
Cb(2,2)=(Cb(1,2)+Cb(3,2))/2
このようにして、色差平滑制御部304は、画像内の全てのG成分の画素の色差データCrおよび色差データCbを生成する。尚、画面の端にある画素については、その画素の上下または左右に平均を取るべき色差データ(CrまたはCb)の画素が存在しない場合があるので、例外処理を行って色差データを生成する。この例外処理は、例えば図6(a)の画素(3,1)の場合、上下の画素からR成分の色差データCrを生成することはできるが、左側にB成分の色差データCbの画素が存在しないのでB成分の色差データCbを生成することができない。この場合は、例えば隣接する画素(3,2)のB成分の色差データCb(3,2)をそのまま用いる。或いは、3行目の右側の複数のB成分の色差データCbの傾き(図6(a)の場合は色差データCb(3,2)およびCb(3,4))の傾き)から画素(3,1)のB成分の色差データCb(3,1)を予測しても構わない。同様に、画面の角の部分の画素(1,1)の場合は、上側および左側の画素が存在しないので、画素(1,1)のR成分の色差データCr(1,1)およびB成分の色差データCb(1,1)の両方について、下側または右側の画素の色差データをそのまま用いるか、1行目または1列目の色差データの傾向から画素(1,1)のR成分の色差データCr(1,1)またはB成分の色差データCb(1,1)をそれぞれ予測する。
【0078】
また、色差平滑制御部304は、色差データCrのみの画素については色差データCbを生成し、色差データCbのみの画素については色差データCrを生成する。例えば図6(a)において、R成分の色差データCrのみの画素(2,3)の場合は、その周辺にある画素(1,2)と画素(1,4)と画素(3,2)と画素(3,4)の4つの画素のB成分の色差データCbの平均値を下記のように求め、これを画素(2,3)のB成分の色差データCb(2,3)とする。
Cb(2,3)=(Cb(1,2)+Cb(1,4)+Cb(3,2)+Cb(3,4))/4
同様に、例えばB成分の色差データCbのみの画素(3,2)の場合は、その周辺にある画素(2,1)と画素(2,3)と画素(4,1)と画素(4,3)の4つの画素の色差データCrの平均値を下記のように求め、これを画素(3,2)のR成分の色差データCr(3,2)とする。
Cr(3,2)=(Cr(2,1)+Cr(2,3)+Cr(4,1)+Cr(4,3))/4
また、例えば図6(a)において、周辺に4つの画素が存在しない画素(2,1)については、その周辺にある画素(1,2)と画素(3,2)のB成分の色差データ(Cb(1,2)とCb(3,2))の平均値を画素(2,1)のB成分の色差データCb(2,1)とする。同様に、画素(1,2)のR成分の色差データCr(1,2)についても、画素(2,1)と画素(2,3)のR成分の色差データ(Cr(2,1)とCr(2,3))の平均値を画素(1,2)のR成分の色差データCr(1,2)とする。
【0079】
さらに、画素(4,1)は斜め方向に隣接するB成分の色差データCbの画素が画素(3,2)の1つだけなので、画素(3,2)のB成分の色差データCb(3,2)をそのまま画素(4,1)のB成分の色差データCb(4,1)としても構わないし、先に述べたように、斜め方向の複数の画素のB成分の色差データ(Cb(3,2)とCb(1,4))から予測しても構わない。
【0080】
このようにして、色差平滑制御部304は、図6(b)に示すように、画面内の全画素に対して、R成分の色差データCrおよびB成分の色差データCbを生成する。そして、図6(b)に示すような色差データが色差画像生成部252から最終的に出力される。
【0081】
尚、上記の説明では、色差データの補間処理を色差平滑制御部304が行うようにしたが、図6(a)までの処理を色差平滑制御部304が行うようにして、図6(b)のように全画素に色差データ(CrおよびCb)を生成する補間処理を行う専用の処理ブロック(例えば、色差データ補間処理部)を別に設けても構わない。
【0082】
以上が本実施形態に係る電子カメラ101の色差画像生成部252の構成および処理である。尚、色差画像生成部252の処理と並行して輝度画像生成部251は、各画素に輝度データ(L)を生成する処理を行う。ここで、輝度画像生成部251について説明するが、輝度画像生成部251は本発明の特徴部分ではなく、下記の例に限らず任意の方法で輝度データ(L)を生成する処理を行っても構わない。
[輝度画像生成部251の処理例]
輝度画像生成部251は、例えば図4(a)のRAWデータの画素(1,1)の輝度データL(1,1)を、画素(1,1)と画素(1,2)と画素(2,1)と画素(2,2)の4つの画素の平均値とする。そして、同様の処理を1画素ずつシフトしながら全画素の輝度データを生成する。尚、画面の右端や下端の画素については、色差データの生成と同様に近接する画素の輝度データをそのまま用いるか、色差データの生成処理で説明したような例外的な処理を行い、周辺の複数の画素の輝度データから輝度変化の傾向を予測する。
【0083】
このようにして、輝度画像生成部251は、各画素に輝度データ(L)を生成する処理を行い、先に色差画像生成部252が生成した色差データ(CrおよびCb)とを併せて、図6(c)に示すような各画素に輝度データ(L)と色差データ(CrおよびCb)を有する輝度・色差データの画像が得られる。
【0084】
次に、輝度色差変換部253は、図6(c)に示した輝度・色差データの画像を図6(d)に示すようなRGBデータの画像に変換する。輝度・色差データの画像からRGBデータの画像への変換は、例えば(式5)のマトリクス演算により求めることができる。
【0085】
【数1】

このようにして、色補間処理部204は、図6(d)に示すようなRGBデータの画像を生成し、ガンマ補正処理部205に出力する。ガンマ補正処理部205以降の画像処理部107の処理は、先に説明した通りである。
【0086】
[第1の実施形態に係る電子カメラ101の効果]
ここで、第1の実施形態に係る電子カメラ101の効果について説明する。電子カメラ101において色差画像生成部252の暫定色差生成部301で生成された暫定色差データには偽色が残っている。その偽色を除去するために、色差平滑部302で色差平滑を行っているが、色差平滑部302が生成する平滑色差データは、画像の色構造の境界領域で色にじみが生じる。ここまでの処理は従来から行われている処理である。本実施形態では、この色にじみを抑制するために、色差範囲設定部303と色差平滑制御部304を設け、色差平滑制御部304は、色差範囲設定部303で設定した色差範囲内に、色差平滑部302が出力する平滑色差データを制限する処理を行う。
【0087】
これにより、色にじみの抑制と偽色除去を両立することができる。ここで、この理由について説明する。例えば起伏が大きい画像(変化の激しい画像)において色差データを生成する場合、明るい箇所のR成分の画素の画素値と暗い箇所のG成分の画素の画素値とを参照して色差データCr=R−Gを生成すると、色差データCrは実際よりも大きな値になってしまう。逆に、明るい箇所のG成分の画素の画素値と暗い箇所のR成分の画素の画素値とを参照して色差データCr=R−Gを生成すると、色差データCrは実際よりも小さな値になってしまう。これが偽色の原因である。
【0088】
そこで、本実施形態では、色差範囲設定部303によって、色差データを生成する注目画素近傍の最も暗い画素のG成分値を用いて色差データを生成することにより、色差データを大きくする偽色が最大となる場合の色差データCr_maxを求めている。また、色差データを生成する注目画素近傍の最も明るい画素のG成分値を用いて色差データを生成することにより、色差データを小さくする偽色が最大となる場合の色差データCr_minを求めている。そして、偽色が無い本来の色差データCrがCr_minからCr_maxまでの範囲内にあるものとして、色差平滑制御部304は色差平滑部302が出力する平滑色差データを制限する。ここで、平滑色差データがCr_minからCr_maxまでの範囲外である場合、色差平滑部302の処理によって色にじみが生じていることが推測されるので、平滑色差データを本来の色差データの範囲であるCr_minからCr_maxまでの範囲内に制限することにより色にじみを抑制することができる。一方、平滑色差データがCr_minからCr_maxまでの範囲内にある場合は、色差平滑部302の処理による色にじみは生じていないと推測されるので、色差平滑制御部304は色差平滑部302が出力する平滑色差データをそのまま出力する。このようにして、本実施形態に係る電子カメラ101は、色にじみの抑制と偽色の除去を行うことができる。
【0089】
特に、本実施形態に係る電子カメラ101は、画像の色構造を判定して色差画像を生成する従来の方法に比べて簡易な処理で実現できるので、演算コストを掛けずに高品質なカラー画像を得ることができる。また、従来の方法では、色モアレなどによる色構造と画像本来の色構造とを区別することが必ずしもできないため、画像本来の色構造を損なったり偽色を除去できないなどの問題があるが、本実施形態に係る電子カメラ101は、画像本来の色構造をあまり損なうことなく、画像の起伏に由来する偽色をほぼ確実に除去することができる。
【0090】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る電子カメラ101について説明する。本実施形態では、図2の色差画像生成部252の構成が第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態で説明した色差画像生成部252a(図3)の代わりに、本実施形態では色差画像生成部252b(図7)を用いる。尚、図7において、図3と同符号のブロックは同じものを示す。
【0091】
図3の色差画像生成部252aと異なるのは色差平滑制御部304の処理である。本実施形態の色差画像生成部252bでは、色差平滑制御部304aは、次のように処理する。
【0092】
[色差平滑制御部304aの処理]
図7において、色差平滑制御部304aは、色差平滑部302が求めた平滑色差データが色差範囲設定部303が求めた色差範囲内にあるか否かを判定し、色差範囲外の場合には、色差平滑部302の処理が施されていない暫定色差生成部301が出力する暫定色差データを出力する。具体的には次のように処理する。
(平滑色差データが色差範囲内の場合) 色差平滑部302が処理した平滑色差データを平滑制御色差データとして出力する。
(平滑色差データが色差範囲外の場合) 色差平滑部302が未処理の暫定色差生成部301が出力する暫定色差データを平滑制御色差データとして出力する。
【0093】
尚、色差平滑制御部304a以外の色差画像生成部252aの処理および電子カメラ101全体の処理は、第1の実施形態と同じなので重複する説明は省略する。
【0094】
このように、第2の実施形態に係る電子カメラ101は、平滑色差データが色差範囲外の場合には、色差平滑部302の処理によって画像本来の色構造が損なわれていると推測できるので、色差平滑部302の平滑処理が施されていない暫定色差生成部301が出力する暫定色差データを採用することにより、画像本来の色構造の損失を回避することができる。
【0095】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る電子カメラ101について説明する。本実施形態では、図2の色差画像生成部252の構成が第1の実施形態または第2の実施形態とは異なる。第1の実施形態の色差画像生成部252a(図3)の代わりに、本実施形態では色差画像生成部252c(図8)が用いられる。尚、図8において、図3と同符号のブロックは同じものを示す。
【0096】
図3の色差画像生成部252aと異なるのは色差平滑部302と色差平滑制御部304の処理である。本実施形態の色差画像生成部252cでは、色差平滑部302bと色差平滑制御部304bは、次のように処理する。
【0097】
[色差平滑部302bおよび色差平滑制御部304bの処理]
図8において、色差平滑部302bが色差平滑処理を実行しながら、色差平滑制御部304bも処理を実行し、色差平滑制御部304bが処理した平滑制御色差データを色差平滑部302bにフィードバックするようになっている。尚、色差平滑制御部304bの処理自体は、第1の実施形態の色差平滑制御部304の処理と同じであるが、平滑制御色差データを色差平滑部302bにフィードバックする経路が設けられている点が異なる。
【0098】
以下、本実施形態における色差画像生成部252cの処理について説明するが、本実施形態では、図8に処理イメージとして描いた1画面分の画像601において、上方の行から下方の行に向けて処理するものとし、且つ色差平滑部302bの処理と色差平滑制御部304bの処理は並行して行われるものとする。例えば、図8の処理イメージにおいて、色差平滑制御部304bは少なくとも1行目(r=1)の処理を終え、色差平滑部302bは2行目(r=2)までの処理を終えて3行目(r=3)の画素602の色差平滑処理を行おうとしている状態にあるものとする。つまり、この時点で、1行目の画素603は色差平滑制御部304bの処理済みで、既に平滑制御色差データCr0が求められている。但し、画素603の色差平滑制御部304bの処理は、例外処理として、第1の実施形態の色差平滑制御部304または第2の実施形態の色差平滑制御部304aと同様の処理を行って画素603の平滑制御色差データCr0が求められているものとする。
【0099】
次に、色差平滑部302bが画素602の平滑色差データを求める手順について具体的に説明する。
【0100】
(手順1)
色差平滑部302bは、色差平滑処理を行う注目画素(画素602)を中心とする横9画素×縦1画素の範囲に含まれる5つのR成分の画素の暫定色差データの平均値Cr’_aveを以下のように求める。
Cr’_ave=(Cr’1+Cr’2+Cr’3+Cr’4+Cr’5)/5
尚、Cr’1、Cr’2、Cr’3、Cr’4およびCr’5は、暫定色差生成部301が求めたR成分の5つの画素における暫定色差データである。
【0101】
(手順2)
色差平滑部302bは、色差平滑処理を行う注目画素(画素602)から上側に2画素の位置にある画素603の平滑制御色差データCr0を参照する。
【0102】
(手順3)
色差平滑部302bは、手順1で求めた暫定色差データの平均値Cr’_aveと、手順2で参照する平滑制御色差データCr0とを以下のように加重平均して、画素602の平滑色差データCr3を求める。
【0103】
Cr3=(Cr’_ave+3×Cr0)/4
同様に、他のR成分の画素やB成分の画素についても手順1から手順3の処理を行って平滑色差データCrおよびCbを求める。
【0104】
ここで、上記の説明では、1画面の画像601を上から順番に処理する場合の例を挙げたが、色差平滑部302bと色差平滑制御部304bの処理を再帰的に行う形式であれば上記に限定されず、例えば左から右へ処理するようにしても構わない。
【0105】
尚、図8の画像601の場合、一番上の行の平滑色差データを求める際には参照すべき平滑制御色差データが存在しないので、先に述べたように例えば平滑制御色差データを参照せずに手順1で求めた平均値Cr’_aveを平滑色差データとするなどの例外的な処理を実行するものとする。
【0106】
このように、第3の実施形態に係る電子カメラ101は、色差平滑部302bが行う平滑処理がリカーシブフィルタ(再帰フィルタ)になっているため、処理バッファとして回路に実装しなければならないメモリを少なくでき、低コスト化が可能になる。例えば、図8の例では、行単位に処理するので少なくとも色差平滑部302bが平滑処理を行う行または少なくとも2つ上の行までのデータを保持できるバッファがあれば良い。
【0107】
さらに、色差平滑部302bは、処理済みの平滑制御色差データを参照して色差平滑処理を行うため、平滑色差データの色にじみを抑制することができる。これにより、色差平滑部302bが出力する平滑色差データを用いて色差平滑制御部304bが生成する平滑制御色差データの色にじみも抑制される。
【0108】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る電子カメラ101について説明する。本実施形態では、図3,図7または図8の色差範囲設定部303の処理が第1,第2または第3の実施形態と異なるだけで、他の部分の処理については上記の各実施形態と同じである。
【0109】
本実施形態における色差範囲設定部303aは次のように色差範囲を設定する。
【0110】
(手順1)
R成分の各画素について、その画素の近傍の例えば5×5画素の範囲において、R成分の画素の画素値の最大値R_maxと最小値R_minを求め、さらにG成分の画素の画素値の最大値G_maxと最小値G_minを求める。
【0111】
(手順2)
R成分の各画素について、色差データCrの最小値Cr_minを(式6)に示すように算出し、色差データCrの最大値Cr_maxを(式7)に示すように算出する。
Cr_max=R_max−G_min …(式6)
Cr_min=R_min−G_max …(式7)
そして、Cr_min(下限値)からCr_max(上限値)までを注目画素の色差データCrの範囲(色差範囲)とする。
【0112】
(手順3)
B成分の各画素についても、R成分の画素と同様に(手順1)および(手順2)の処理を行って、色差データCbの最小値Cb_minと最大値Cb_maxを算出する。
【0113】
このように、本実施形態における色差範囲設定部303aは、上記の各手順を実行して、R成分の画素およびB成分の画素における色差データの取り得る範囲(色差範囲)を設定する。これにより、本実施形態では、上記の各実施形態で用いた色差範囲設定部303の処理に比べて設定される色差範囲が広くなるので、色差平滑化の効果がより大きくなり、偽色を除去する力が向上する。
【0114】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る電子カメラ101について説明する。本実施形態では、第4の実施形態と同様に、図3,図7または図8の色差範囲設定部303の処理が第1,第2または第3の実施形態と異なるだけで、他の部分の処理については上記の各実施形態と同じである。
【0115】
本実施形態における色差範囲設定部303bは、R成分の注目画素とその近傍の複数の局所的な領域内に含まれるG成分の画素の画素値の平均値を求め、各局所的な領域毎に求めた複数の平均値を比較してG成分の最大値および最小値とを求める。そして、R成分の注目画素の画素値とG成分の最大値および最小値を用いて求めた色差データの最小値(下限値)から最大値(上限値)までを色差範囲として設定する。尚、本実施形態では複数の局所的な領域を左右方向の領域と上下方向の領域として説明するが、斜め方向などでも構わない。また、各局所的な領域に含まれるG成分の画素も左右、上下など2つの画素である必要はなく、左右方向の4つのG成分の画素を局所的な領域としても構わず、局所的な領域内にある複数のG成分の画素の画素値を平均すればよい。
【0116】
具体的には次のように処理する。
【0117】
(手順1)
R成分の注目画素とその近傍の局所的な領域内の複数のG成分の画素の組み合わせを左右方向と上下方向の2通りとし、それぞれ組合せの複数のG成分の画素の平均値G1およびG2を求める。
G1=R成分の注目画素の左右のG成分の画素の画素値の平均値 …(式8)
G2=R成分の注目画素の上下のG成分の画素の画素値の平均値 …(式9)
(手順2)
手順1で求めた局所的な領域での平均値G1とG2を比較して、G成分の最大値G_maxと最小値G_minをそれぞれ求める。
G_max=G1とG2のうちの大きい方
G_min=G1とG2のうちの小さい方
(手順3)
R成分の各画素について、色差データCrの最小値Cr_minを(式10)に示すように算出し、色差データCrの最大値Cr_maxを(式11)に示すように算出する。
Cr_max=R成分の注目画素の画素値−G_min …(式10)
Cr_min=R成分の注目画素の画素値−G_max …(式11)
そして、Cr_min(下限値)からCr_max(上限値)までを注目画素の色差データCrの範囲(色差範囲)とする。
【0118】
(手順4)
B成分の各画素についても、R成分の画素と同様に(手順1)および(手順3)の処理を行って、色差データCbの最小値Cb_minと最大値Cb_maxを算出する。
【0119】
このように、本実施形態における色差範囲設定部303bは、上記の各手順を実行して、R成分の画素およびB成分の画素における色差データの取り得る範囲(色差範囲)を設定する。これにより、上記の各実施形態で用いた色差範囲設定部303の処理に比べて設定される色差範囲が狭くなるので、色差平滑化によって生じる色にじみを強く抑制することができる。
【0120】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る電子カメラ101について説明する。本実施形態では、第4の実施形態と同様に、図3,図7または図8の色差範囲設定部303の処理が第1,第2または第3の実施形態と異なるだけで、他の部分の処理については上記の各実施形態と同じである。
【0121】
本実施形態における色差範囲設定部303cは、R成分の注目画素とその近傍の局所的な領域内の複数のG成分の画素の組み合せを複数選択し、各組合せ毎に仮の色差データを算出する。このようにして算出した複数の仮の色差データの最小値(下限値)から最大値(上限値)までを色差範囲として設定する。
【0122】
具体的には次のように処理する。
【0123】
(手順1)
R成分の注目画素とその近傍の局所的な領域内の複数のG成分の画素の組み合わせを左右方向と上下方向の2通りとし、(式12)および(式13)に示すように、それぞれ組合せの複数のG成分の画素の平均値G1およびG2を求める。
G1=R成分の注目画素の左右のG成分の画素の画素値の平均値 …(式12)
G2=R成分の注目画素の上下のG成分の画素の画素値の平均値 …(式13)
(手順2)
手順1で求めた局所的な領域でのG成分の画素の画素値の平均値G1およびG2に対して、(式14)および(式15)に示すように、それぞれR成分の注目画素との仮の色差データCr1およびCr2を求める。
Cr1=R成分の注目画素の画素値−G1 …(式14)
Cr2=R成分の注目画素の画素値−G2 …(式15)
(手順3)
手順2で求めた仮の色差データCr1およびCr2を比較して、色差データの最大値Cr_maxと最小値Cr_minをそれぞれ算出する。
Cr_max=Cr1とCr2のうちの大きい方
Cr_min=Cr1とCr2のうちの小さい方
そして、Cr_min(下限値)からCr_max(上限値)までを注目画素の色差データCrの範囲(色差範囲)とする。
【0124】
(手順4)
B成分の各画素についても、R成分の画素と同様に(手順1)および(手順3)の処理を行って、色差データCbの最小値Cb_minと最大値Cb_maxを算出する。
この処理結果は別案2と同じである。
【0125】
このように、本実施形態における色差範囲設定部303cは、上記の各手順を実行して、R成分の画素およびB成分の画素における色差データの取り得る範囲(色差範囲)の設定を行う。これにより、第5の実施形態と同様に、他の実施形態で用いた色差範囲設定部303の処理に比べて設定される色差範囲が狭くなるので、色差平滑化によって生じる色にじみを強く抑制することができる。
【0126】
以上、各実施形態で説明してきたように、本発明に係る電子カメラ101は、画像の構造を残しながら偽色を除去する色差平滑化処理を比較的簡単な処理で実現することにより、演算コストを掛けずに高品質なカラー画像を得ることができる。
【0127】
尚、上記の実施形態では、電子カメラ101の例について説明したが、RAWデータ画像を入力して色補間処理後の画像を出力する専用の画像処理装置としても構わない。尚、この場合の画像処理装置は、図2の画像処理部107の処理を実行する画像処理装置であっても構わないし、色補間処理部204の処理のみを実行する画像処理装置であっても構わない。或いは、図3の色差画像生成部252a,図7の色差画像生成部252b,図8の色差画像生成部252cで行う画像処理のみを実行する画像処理装置であっても構わない。いずれの構成の画像処理装置であっても、本発明の特徴部分である図2の色差画像生成部252の処理が含まれるので、画像の構造を残しながら偽色を除去する色差平滑化処理を比較的簡単な処理で実現することができ、演算コストを掛けずに高品質なカラー画像を得ることができる。
【0128】
また、図2に示した画像処理部107や色補間処理部204で行う画像処理或いは色差画像生成部252(色差画像生成部252a,色差画像生成部252bおよび色差画像生成部252cを含む)で行う画像処理をソフトウェアで実行する画像処理プログラムであっても構わない。この場合、画像処理プログラムをメモリカードインターフェース付きのパソコン上で実行し、メモリカードインターフェースに装着されたメモリカードからRAWデータ画像を読み出して図2に示した画像処理部107の処理を実行する。そして、処理後の画像をパソコンのモニタに表示したり、再びメモリカードに記憶する。尚、画像処理部107の画像処理をコンピュータなどで実行する画像処理プログラムの場合は、図2の画像処理部107のホワイトバランス処理部201から圧縮処理部208までの各処理ブロックをソフトウェアフローチャートの処理ステップに読み替えればよい。同様に、各実施形態で説明した図3の色差画像生成部252a,図7の色差画像生成部252b,図8の色差画像生成部252cについても各図の処理ブロックをソフトウェアフローチャートの処理ステップに読み替えればよい。例えば、図3の色差画像生成部252aの場合は、暫定色差生成部301は暫定色差生成ステップに、色差平滑部302は色差平滑ステップに、色差範囲設定部303は色差範囲設定ステップに、色差平滑制御部304は色差平滑制御ステップにそれぞれ対応する。
【0129】
以上、本発明に係る画像処理装置および画像処理プログラム並びに電子カメラについて、各実施形態で例を挙げて説明してきたが、その精神またはその主要な特徴から逸脱することなく他の多様な形で実施することができる。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明は、特許請求の範囲によって示されるものであって、本発明は明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0130】
101・・・電子カメラ 102・・・光学系
103・・・メカニカルシャッタ 104・・・撮像素子
105・・・A/D変換部 106・・・画像バッファ
107・・・画像処理部 108・・・カメラ制御部
109・・・メモリ 110・・・表示部
111・・・操作部材
112・・・メモリカードIF(インターフェース)
112a・・・メモリカード
201・・・ホワイトバランス処理部(WB処理部)
202・・・ホワイトバランスゲイン算出部(WBゲイン算出部)
203・・・ガンマ変換部 204・・・色補間処理部
205・・・ガンマ補正処理部 206・・・彩度強調処理部
207・・・輪郭強調処理部 208・・・圧縮処理部
251・・・輝度画像生成部
252,252a,252b,252c・・・色差画像生成部
253・・・輝度色差変換部 301・・・暫定色差生成部
302,302b・・・色差平滑部
303,303a,303b,303c・・・色差範囲設定部
304,304a,304b・・・色差平滑制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の色成分のいずれか1つの色成分データを有する複数の画素で構成される画像データを入力して、前記複数の画素内の注目画素の第1色成分データと前記第1色成分データとは異なる色成分データを有する前記注目画素近傍の他画素の第2色成分データとを用いて前記注目画素の暫定色差データを求める暫定色差生成部と、
前記注目画素を含む特定領域内の画素の前記暫定色差データを平滑化して平滑色差データを生成する色差平滑部と、
前記平滑色差データの色差範囲を設定する色差範囲設定部と、
前記平滑色差データが前記色差範囲内にあるか否かに応じて前記平滑色差データを制御した平滑制御色差データを出力する色差平滑制御部と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記色差範囲設定部は、前記注目画素近傍の第2色成分データの最大値および最小値を求め、前記注目画素の第1色成分データから前記最大値を減算した値を前記注目画素における色差データの下限値とし、前記注目画素の第1色成分データから前記最小値を減算した値を前記注目画素における色差データの上限値とする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記色差範囲設定部は、前記注目画素近傍の第1色成分データの最大値および最小値と第2色成分データの最大値および最小値とをそれぞれ求め、前記第1色成分データの最大値から前記第2色成分データの最小値を減算した値を前記注目画素における色差データの上限値とし、前記第1色成分データの最小値から前記第2色成分データの最大値を減算した値を前記注目画素における色差データの下限値とする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記色差範囲設定部は、前記注目画素近傍の複数の局所的領域毎に第2色成分データの平均値を求め、前記平均値の最大値および最小値を前記第2色成分データの最大値および最小値とし、前記注目画素の前記第1色成分データから前記第2色成分データの最小値を減算した値を前記注目画素における色差データの上限値とし、前記注目画素の前記第1色成分データから前記第2色成分データの最大値を減算した値を前記注目画素における色差データの下限値とする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記色差範囲設定部は、前記注目画素を含む特定領域内において第1の色成分の画素と当該画素の近傍の第2の色成分の画素の複数の組合せを選択し、各組合せ毎に予備色差データを求め、求めた複数の予備色差データの最小値および最大値を前記注目画素における色差データの下限値および上限値とする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記色差平滑制御部は、前記注目画素の前記平滑色差データが前記色差範囲内にあるか否かを判定し、前記平滑色差データが前記色差範囲内にある場合は当該平滑色差データをそのまま前記注目画素の平滑色差データとして出力し、前記平滑色差データが前記色差範囲内にない場合は当該平滑色差データを前記色差範囲の上限値または下限値に制限した色差データを前記注目画素の平滑色差データとして出力する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記色差平滑制御部は、各画素の前記平滑色差データが前記色差範囲内にあるか否かを判定し、前記平滑色差データが前記色差範囲内にある場合は当該平滑色差データを平滑制御色差データとして出力し、前記平滑色差データが前記色差範囲内にない場合は当該画素の前記暫定色差データを平滑制御色差データとして出力する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記色差平滑部は、前記画像を行単位に上から順番に処理し、前記注目画素を含む特定領域内の画素の前記暫定色差データの平均値と前記色差平滑制御部が出力する前記注目画素の上位行の画素の平滑制御色差データとを加重平均した値を当該注目画素の平滑色差データとする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
複数種類の色成分のいずれか1つの色成分データを有する複数の画素で構成される画像データを入力して、各画素毎に複数種類の色成分データが含まれる画像データを生成して出力する色補間処理をコンピュータで実行する画像処理プログラムであって、
前記入力された画像データに対して前記複数の画素内の注目画素の第1色成分データと該第1色成分データとは異なる色成分データを有する前記注目画素近傍の他画素の第2色成分データとを用いて前記注目画素の暫定色差データを求める暫定色差生成ステップと、
前記注目画素を含む特定領域内の画素の前記暫定色差データを平滑化して平滑色差データを生成する色差平滑ステップと、
前記平滑色差データの色差範囲を設定する色差範囲設定ステップと、
前記平滑色差データが前記色差範囲内にあるか否かに応じて前記平滑色差データを制御した平滑制御色差データを出力する色差平滑制御ステップと
を有することを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の画像処理装置に、前記暫定色差生成部と並列に配置され、前記入力した画像データから輝度データを生成する輝度画像生成部を更に設け、
光学系を介して入射する被写体光を各画素毎に複数種類の色成分のいずれか1つの色成分を有する複数の画素で構成される画像データに変換して前記画像処理装置に出力する撮像部と、
前記撮像部に撮像タイミングを与える操作部材と、
前記画像処理装置が出力する前記平滑制御色差データと前記輝度データとを所定のフォーマットで記憶媒体に記録する記録部と
を設けたことを特徴とする電子カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−151597(P2011−151597A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11013(P2010−11013)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】