説明

画像処理装置のためのライセンス管理方法

【課題】ライセンスに対するセキュリティを確保しながら、ライセンスが不要になったときに、そのライセンスを返却できるようにする。
【解決手段】ライセンスを返却したいときには、ライセンス返却操作を行う。ライセンス返却操作に応答して、画像処理装置1が、自機の機器固有情報を元にライセンス返却コードを生成する(S3)。ライセンス返却コードは、ライセンス管理手段10に与えられ、ライセンス返却コードに含まれている機器固有情報を含むライセンスを発行しているか否かが判別される。そしてライセンスが発行されていれば、ライセンスが返却された旨が登録され、ライセンス料が返金される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置のためのライセンス管理方法に関し、特に、プログラムが搭載され、搭載されたプログラムにライセンスが付与されることによりプログラムが有効化される画像処理装置のためのライセンス管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンタや複合機などの画像処理装置においては、同等の商品であっても、価格等に応じて提供する機能に差を設け、異なる商品(異なるグレード、異なる機種等)として提供されている。ところで、画像処理装置は、グレードや機種が異なれば基本的なハードウェア構成等が異なるかというと、そうではなく、各種機能を実現するためのプログラムのみが異なっていることが多い。
【0003】
ところで、プログラムの開発に際しては、基本プログラムおよび複数のオプションプログラムが互いに関連付けて一緒に開発されるのが一般的で、オプションプログラムのみが後から開発されるわけではない。つまり、プログラムは、基本プログラムもオプションプログラムも既に出来上がっていて、メモリチップなどに記憶されている。そこで、価格等に応じて、既に搭載されているオプションプログラムが選択的に有効化され、商品として提供されるという販売方法がとられている。(たとえば特許文献1参照)
そして、姉妹機の場合、妹機には、姉機と同じ仕様になるためのオプションプログラムが既に搭載されており、妹機を購入したユーザは、後で、オプションプログラムのライセンスを購入して、オプションプログラムを有効化できるものが提案されている。(たとえば特許文献2参照)
【特許文献1】特開2001−092779号公報
【特許文献2】特開2004−213469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の画像処理装置では、ライセンスは1度付与されると、それを返却することができない。このため、たとえばレンタル目的や展示会での使用だけの目的で、画像処理装置に搭載されているプログラムを短時間だけ利用したい場合等には、従来のライセンス発行またはライセンス付与のやり方ではうまく対応できないという課題があった。
この発明は、このような背景のもとになされたもので、ライセンスに対するセキュリティを確保しながら、ライセンスが不要になったときに、そのライセンスを返却できる、画像処理装置のためのライセンス管理方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、プログラムが記憶されており、ライセンスが付与されることによって記憶されているプログラムを有効化して、所定の機能を行わせることができる画像処理装置のためのライセンス管理方法であって、画像処理装置において、ライセンス返却操作がされたことに応答して、その画像処理装置の機器固有情報を元にライセンス返却コードが生成されるようにし、生成されたライセンス返却コードをライセンス管理手段に与えることにより、ライセンス返却コードに含まれている機器固有情報を含むライセンスを、ライセンス管理手段が発行しているか否かを判別し、上記ライセンスを発行していれば、そのライセンスが返却されたことをライセンス管理手段に登録してライセンス料を返金することを特徴とする、画像処理装置のためのライセンス管理方法である。
【0006】
請求項2記載の発明は、上記ライセンス返却コードを生成した画像処理装置は、一定期間、返却にかかるライセンスと同じライセンスを登録できないようにしたことを特徴とする、請求項1記載のライセンス管理方法である。
請求項3記載の発明は、上記ライセンス管理手段において、ライセンスを付与する画像処理装置の機器固有情報を元にライセンス発行コードを生成してライセンスを発行し、そのライセンス発行コードを上記機器固有情報を有する画像処理装置に登録することによってライセンスを付与することを特徴とする、請求項1記載のライセンス管理方法である。
【0007】
請求項4記載の発明は、上記生成したライセンス発行コードには、登録のための制限時間を含めておき、ライセンス発行コードが制限時間迄に画像処理装置に登録されないときには、当該ライセンス発行コードを無効にすることを特徴とする、画像処理装置のためのライセンス管理方法である。
請求項5記載の発明は、上記ライセンス管理手段として、ネットワークに接続されたライセンス管理用のサーバを用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理装置のためのライセンス管理方法である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、画像処理装置に付与されているライセンスを返却したいときには、ライセンス返却操作を行えばよい。ライセンス返却操作に応答して、画像処理装置が、自機の機器固有情報を元にライセンス返却コードを生成する。なお、ライセンス返却操作は、通常は、画像処理装置のユーザではなく、画像処理装置のサービスマンが行うようにするのが好ましい。
【0009】
ライセンス返却操作に応答して生成されたライセンス返却コードは、サービスマンによってライセンス管理手段に与えられる。ライセンス管理手段は、請求項5記載のように、ライセンス管理サーバで構成することにより、ネットワークを介してどこからでもライセンス管理サーバをアクセスすることができ、ライセンス返却が容易に行えるという利点がある。
【0010】
ライセンス管理手段では、ライセンス返却コードが与えられることにより、ライセンス返却コードに含まれている機器固有情報を含むライセンスを発行しているか否かが判別される。通常は、この判別は肯定されるが、画像処理装置において、ライセンスが与えられていないにもかかわらず、ライセンス返却操作が行われ、ライセンス返却コードが生成された場合等には、上記の判別は否定される。
【0011】
そして、ライセンスが発行されていれば、発行されたライセンスがライセンス管理手段に返却されたわけであるから、そのライセンスは別の画像処理装置のために使用できるよう、ライセンス管理手段が保持する。そして返却されたライセンスの使用料(ライセンス料)が返金される。
請求項2の構成では、ライセンス返却コードを生成した画像処理装置は、一定期間、返却にかかるライセンスと同じライセンスを登録できないようにしているので、ライセンス返却と言いつつ、再びそのライセンスを無断で画像処理装置に再登録する等の不正なライセンス使用を防止することができる。
【0012】
請求項3の発明では、ライセンスは、ライセンス発行コードに含まれる機器固有情報を有する画像処理装置に対してのみ付与できるので、ライセンスのセキュリティを確保することができる。
請求項4の発明では、作成されたライセンス発行コードには、登録のための制限時間が含まれているので、一定時間内にライセンス発行コードが所定の画像処理装置に登録されない場合には、発行されたライセンスが無効とされる。よって、ライセンスが画像処理装置に付与されないままの期間を制限して、ライセンスに対するセキュリティの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
以下の実施形態は、画像処理装置として、複数の機能を実行することのできる複合機(以下MFP(Multi Function Peripheral )という。)を例にとって説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に使用されるMFPの構成を示すブロック図である。MFP1には、CPU2、制御プログラムROM3、RAM4、制御機器5、バックアップメモリ6、操作部制御回路7、および、操作パネル8が含まれている。
【0014】
CPU2は、MFP1全体を制御している制御中枢であり、制御プログラムROM3は、MFP1全体を制御するための制御プログラムが格納された不揮発性のメモリである。制御プログラムROM3内には、MFP1の所定の機能を実行するための基本プログラムおよびライセンスが付与された場合に有効化されるオプション機能を実行するためのプログラムが記憶されている。
【0015】
RAM4は、制御プログラムROM3内に記憶されたプログラムが動作するために必要なメモリである。
制御機器5は、制御対象となる機器であり、この機器には、プリンタ機能実現機器、FAX機能実現機器、スキャナ機能実現機器等が含まれている。
バックアップメモリ6は、MFP1全体のバックアップ情報を記憶しているメモリであり、オプション機能プログラムがライセンスにより許可されたか否かの記録(ライセンスが付与されている旨の記録)も、このバックアップメモリ6によってバックアップされている。
【0016】
操作部制御回路7は操作パネル8を制御し、ライセンス発行コードの入力を受け付けるとともに、ライセンス返却コードの生成画面等を制御するための回路である。操作パネル8は、LCDなどの表示デバイス、キーボード等の入力デバイスを含む構成であり、ライセンス発行コードの入力要求画面を表示して、ライセンス発行コードを入力してもらうとともに、ライセンス返却操作を受け付けてライセンス返却のための表示を行う等に必要なものである。
【0017】
図2は、この発明の一実施形態に係る方法が行われるシステム全体の構成を示す図解図である。図2のうち、(A)はライセンス発行時の手順を説明するためのものであり、(B)はライセンス返却時の手順を説明するための図である。
図2を参照した説明に入る前に、この発明の背景について少し説明する。
メーカにおいて製造されるMFPには、予め、基本動作を行うためのプログラムや、オプション機能を実行するための複数のオプションプログラムが記憶されている。このようなMFPを製造することは、メーカ側にとって、共通のハードウェアおよびプログラム構成の製品を一括して製造できるというメリットがある。
【0018】
一方、ユーザ側は、自己が望む機能だけが発揮されるMFPがより安価に入手できることを望む。つまり、複雑で多数のオプション機能は要らないから、自己が必要とする機能だけが備わったMFPがより安価に購入できることを希望する。
かかるメーカ側とユーザ側との考えの違いを調整して、ユーザの望むMFPが提供できるよう、オプション機能に対するライセンスの付与という考え方が提案されるようになっている。(たとえば特許文献1参照)
ライセンスは、MFPに既に搭載されているオプションプログラム等を有効化するためのものであり、それ自体は無形物である。すなわち、従来のオプション部品のように、ハードウェア部材をMFPに追加装着するといったものではない。ライセンスは無形物であるが、メーカにとっては多額の費用を投資して製造開発したMFPにおいて、どのオプション機能を有効化するかを、有料で行うための極めて貴重な財産である。従って、今後は、このライセンスの発行(付与)および管理が、メーカにとって非常に重要な要素となる。また、MFPを販売するディーラーは、MFPというハードウェアの販売にとどまらず、販売後のMFPに対するライセンスを販売したり、ライセンスを返却してもらったりして、ライセンスという無形物を、ハードウェア自体と同様の商品として販売していくことが、ビジネスとして重要な要素となる。
【0019】
かかる背景を前提に、図2では、たとえばメーカがMFP1のためのライセンスを一括管理しており、そのためにライセンス管理サーバ10を所有している。ライセンス管理サーバ10はネットワーク11に接続されており、ネットワーク11にはディーラーパソコン12が接続されている。それゆえディーラーパソコン12は、ネットワーク11を介してライセンス管理サーバ10をアクセスすることが可能である。ディーラーは、ディーラーパソコン12を用いてライセンス管理サーバ10をアクセスし、ライセンスの発行を受ける。そして発行されたライセンスをディーラーがユーザに販売し、あるいは管理するMFPに対して付与するという構成である。
【0020】
図2(A)を参照して、まず、ライセンス発行時の手順を説明する。
ディーラーは、ディーラーパソコン12により、ライセンス管理サーバ10にアクセスし、ディーラーが管理するMFP1の機器固有情報をライセンス管理サーバ10に通知する(S1)。
ライセンス管理サーバ10は、通知された機器固有情報を元にライセンス発行コードを生成する。そしてその生成したライセンス発行コードをディーラーパソコン12に送信することにより、ライセンスが発行される。
【0021】
ディーラーは、ディーラーパソコン12に送信されてきたライセンス発行コードを取り出し、MFP1に入力する(S2)。MFP1では、自己の機器固有情報と照合し、入力されたライセンス発行コードが正しいか否かを確認する。
その結果、ライセンス発行コードが正しければ、MFP1はライセンスを取得できたとして、機器内部のバックアップデータにライセンス有りをセットし、所定のプログラムが動作可能とされる。
【0022】
以上がライセンス発行の手順であり、この手順自体は、特許文献2等で既に説明されている手順と実質的に同じである。
次に、この実施形態の特徴であるライセンス返却時の手順について、図2(B)を参照して説明する。
ディーラーは、ライセンスを返却したいMFP1において、ライセンス返却の操作を行う。この操作は、MFP1の操作パネル8を用いて行われる。
【0023】
MFP1では、ライセンス返却操作が行われると、自己の機器固有情報を元にライセンス返却コードを生成し、操作パネル8に表示する(S3)。このとき、該当するライセンスが登録されていなくても、ライセンス返却コードを生成できるようにしておく。
ディーラーは、表示パネル8に表示されたライセンス返却コードを確認し、ディーラーパソコン12を用いてライセンス管理サーバ10にアクセスし、ディーラーパソコン12からライセンス管理サーバ10にライセンス返却コードを送信する(S4)。
【0024】
ライセンス管理サーバ10は、該当する機器固有情報ライセンスが発行されているか否かを確認し、発行されている場合は、ライセンス返却を実施し、該当するディーラーへの返金処理を行う。
ところで、ライセンスの発行および返却に伴う不正使用を防止するため、次のような処理を行ってもよい。ここで言う「不正使用」とは、ライセンスを返却後、すぐに同じライセンスをライセンスを返却したMFP1に再登録して、ライセンスを受けながらライセンス返金を実施するような場面を想定している。かかる不正使用を防止するために、
(1)ライセンス発行時のライセンス発行コードに時刻情報を埋め込み、ライセンスが登録されるまでの制限時間を設けて、制限時間内にMFP1にライセンスが登録されなければ、生成されたライセンス発行コードを無効にする。
(2)ライセンス返却動作をした場合は、一定時間、同じライセンス種類に対してのライセンス登録を拒否するようなMFP1とする。この一定時間は、ライセンス有効期間よりも長めに設定することで、不正登録ができないようになる。
【0025】
なお、ライセンス発行コードに制限時間を設けて、仮に制限時間内に登録がされなかった場合には、ライセンス返却を一旦してもらえばよい。それにより、ライセンスの再発行ができるからである。これは、ライセンス登録されていなくても「ライセンス返却コード」を生成できるようにしているので、対応可能な処理である。
この発明は、以上のように構成されているので、一時的なライセンス発行、たとえばレンタルのMFP1などに対するライセンス発行が可能である。
【0026】
この実施形態に係るライセンスは、オプション機能を実行するためのプログラムを有効化するためのライセンスだけではなく、MFP1の基本動作、たとえばコピー動作そのものに対するプログラムを有効化するライセンスであっても構わない。
この発明は、その他、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態に使用されるMFPの構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る方法が行われるシステム全体の構成を示す図解図である。
【符号の説明】
【0028】
1 MFP
2 CPU
3 制御プログラムROM
5 制御機器
6 バックアップメモリ
7 操作部制御回路
8 操作パネル
10 ライセンス管理サーバ
11 ネットワーク
12 ディーラーパソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムが記憶されており、ライセンスが付与されることによって記憶されているプログラムを有効化して、所定の機能を行わせることができる画像処理装置のためのライセンス管理方法であって、
画像処理装置において、ライセンス返却操作がされたことに応答して、その画像処理装置の機器固有情報を元にライセンス返却コードが生成されるようにし、
生成されたライセンス返却コードをライセンス管理手段に与えることにより、ライセンス返却コードに含まれている機器固有情報を含むライセンスを、ライセンス管理手段が発行しているか否かを判別し、
上記ライセンスを発行していれば、そのライセンスが返却されたことをライセンス管理手段に登録してライセンス料を返金することを特徴とする、画像処理装置のためのライセンス管理方法。
【請求項2】
上記ライセンス返却コードを生成した画像処理装置は、一定期間、返却にかかるライセンスと同じライセンスを登録できないようにしたことを特徴とする、請求項1記載のライセンス管理方法。
【請求項3】
上記ライセンス管理手段において、ライセンスを付与する画像処理装置の機器固有情報を元にライセンス発行コードを生成してライセンスを発行し、
そのライセンス発行コードを上記機器固有情報を有する画像処理装置に登録することによってライセンスを付与することを特徴とする、請求項1記載のライセンス管理方法。
【請求項4】
上記生成したライセンス発行コードには、登録のための制限時間を含めておき、
ライセンス発行コードが制限時間迄に画像処理装置に登録されないときには、当該ライセンス発行コードを無効にすることを特徴とする、画像処理装置のためのライセンス管理方法。
【請求項5】
上記ライセンス管理手段として、ネットワークに接続されたライセンス管理用のサーバを用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理装置のためのライセンス管理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−277088(P2006−277088A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92493(P2005−92493)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】