説明

画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラム

【課題】エッジ強調処理が有効に作用し、さらにノイズを低減させたHDR画像を生成可能な画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供する。
【解決手段】撮像装置1は、異なる露出により撮像されることで得られた複数の画像の各々を格納する画像メモリ104〜106と、複数の画像ごとにエッジを抽出するエッジ抽出回路103と、抽出されたエッジを示すエッジ画像を複数の画像ごとに格納するエッジ信号メモリ107〜109と、複数の画像及び複数のエッジ画像の位置合わせを実行する位置合わせ回路110と、位置合わせされた複数の画像の各々に対するゲインを調整し、位置合わせされたエッジ画像の各々に対し、露出が高い画像ほどゲインが大きくなるように調整するGain調整回路111と、調整された複数の画像、及び複数のエッジ画像を1つの画像に合成する画像合成回路118とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラムに関し、特に、HDR画像を生成する画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビジョンカメラ、電子スチルカメラ等の画像の取り込み手段として、CCD撮像素子、CMOS撮像素子等の固体撮像素子が多く使用されている。ところが、この固体撮像素子のダイナミックレンジは銀塩カメラのフィルムのダイナミックレンジに比べると狭く、ダイナミックレンジの拡大が望まれていた。
【0003】
そこで、固体撮像素子のダイナミックレンジを拡大する方法として、同一シーンにおける露出の異なる複数枚の画像を撮影し、この複数の画像データを何らかの演算で合成してダイナミックレンジが拡大された画像を得る手法が提案されている。以下、このような手法でダイナミックレンジが拡大された合成画像をHDR(High Dynamic Range)画像と呼ぶ。
【0004】
また、一般的な画像処理として、エッジ強調処理が知られている。エッジ強調処理は、画像のエッジ(輪郭部)を強調するように画像処理を施し、画像にメリハリをつけることで画質を向上させる画像処理である。HDR画像に対してエッジ強調処理を行う場合、露出が低い画像と露出が高い画像のエッジに対して同じ様にエッジを強調すると、露出の違いによりS/N比が異なるため、露出が低い画像におけるノイズが目立ってしまう。
【0005】
これに対して、HDR画像のエッジ強調処理の先行技術として、感度が低い画像と感度が高い画像を合成したHDR画像に対して、エッジ強調処理を行う方法が開示されている。この際、感度が高い画像の割合が、感度が低い画像の割合より大きくなるほど、エッジ信号のGainを小さくすることで、エッジ強調処理のノイズを目立たなくさせている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、階調補正後に最適な彩度のHDR画像を得ることを主目的としているがエッジ強調処理についても考慮している技術も開示されている。この技術では、エッジのヒストグラムを作成して、エッジ信号に重み付けしたエッジ強調処理を行ったHDR画像を生成する。この手法を用いると露出が低い画像が合成画像の主要成分となっている領域に対して、露出が低い画像のエッジ信号のGainが小さくなる。Gain乗算によるノイズ量が減少し、エッジ強調処理のノイズが目立たなくなる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3958219号公報
【特許文献2】特開2009−022044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1と特許文献2に開示された技術は、合成画像に対してエッジ強調処理を行っている。そして、感度が高い画像又は露出が低い画像が主要な領域となっている領域の重みを小さくしてエッジ強調処理を行うことで、エッジ強調処理のノイズを目立たなくさせている。
【0009】
しかしながら、感度が高い画像または露出が低い画像が主要な領域となっている領域に対しては、エッジ強調処理の効果が低減してしまう。
【0010】
本発明の目的は、エッジ強調処理が有効に作用し、さらにノイズを低減させたHDR画像を生成可能な画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の画像処理装置は、異なる露出により撮像されることで得られた複数の画像を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された複数の画像の各々を格納する画像格納手段と、前記取得手段により取得された複数の画像ごとにエッジを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出されたエッジを示すエッジ画像を複数の画像ごとに格納するエッジ格納手段と、前記エッジ格納手段に格納された複数のエッジ画像が示すエッジの特徴点を比較することにより、前記複数の画像及び前記複数のエッジ画像の位置合わせを実行する位置合わせ手段と、前記位置合わせ手段により位置合わせされた複数の画像の各々に対するゲインを調整する第1調整手段と、前記位置合わせ手段により位置合わせされたエッジ画像の各々に対し、露出が高い画像ほどゲインが大きくなるように調整する第2調整手段と、前記第1調整手段により調整された複数の画像、及び前記第2調整手段により調整された複数のエッジ画像を1つの画像に合成する合成手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エッジ強調処理が有効に作用し、さらにノイズを低減させたHDR画像を生成可能な画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の信号処理の流れを示すブロック図である。
【図2】原色市松フィルタを示す図である。
【図3】図1におけるエッジ抽出回路の構成を示す図である。
【図4】露出が異なる3つの画像データの一例を示す図である。
【図5】画像データのハッチング部分を消して、画像を重ねた図である。
【図6】図1における位置合わせ回路により、画像データの位置合わせを実行した結果を示す図である。
【図7】照度と撮像素子の出力との関係を示す図である。
【図8】図7に示す照度と撮像素子の出力の関係に対する照度と画像データのGainの関係を示す図である。
【図9】図7に示す照度と撮像素子の出力の関係に対する照度と画像データのGainの関係を示す図である。
【図10】図7に示す照度と撮像素子の出力の関係に対する照度と画像データのGainの関係を示す図である。
【図11】図4に示される画像データの各々に対するGainを示す図である。
【図12】図4に示される画像データの各々のエッジ信号に対するGainを示した画像データを示す図である。
【図13】図11の画像データに示されるGainで調整した後の画像データと、図12の画像データに示されるGainで調整されたエッジ信号とを加算して生成されたHDR画像を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の信号処理の流れを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0015】
なお、本実施の形態では、本発明に係る画像処理装置を、撮像装置に適用した例を用いて説明する。また、画像データが示す画像も画像データとして統一して表現する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置1の信号処理の流れを示すブロック図である。
【0017】
本実施の形態では、同一感度かつ同一の開放値でシャッター速度を変えることで露出が異なる3枚の画像データを合成してHDR画像データを得る構成とし、適応補間後の緑信号からエッジ成分を抽出する。
【0018】
また、本実施の形態では、ホワイトバランス調整やアパチャー補正など一般的に行われている処理は明記しないが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0019】
図1において、撮像素子100は、図2に示すような赤、緑、青(RGB)がベイヤー配列された原色市松フィルタを備えており、これにより赤、緑、青の各信号を取得する。この撮像素子100は、異なる露出により撮像されることで得られた複数の画像データを取得する取得手段に対応する。なお、本明細書では、赤、緑、青の各信号をそれぞれR、G、B信号というように略して表記する。
【0020】
撮像素子100が取得した信号は、適応補間回路101で各色信号毎に全ての画素位置に信号が存在するよう適応的な補間処理が実施される。
【0021】
適応補間回路101は、補間対象画素の上下左右の信号相関を検出することにより縦縞か横縞かを判別し、縦縞と判別された場合は上下の信号から補間を行ない、横縞と判別された場合は左右の信号から補間する構成をとる。なお、このような適応補間は公知であり、その詳細な説明は省略する。
【0022】
適応補間回路101により出力される信号は、色変換回路102とエッジ抽出回路103に入力される。このように、適応補間実施後に画像データとは別にエッジ信号を抽出しておく。このような構成とすることで、後述するGain調整回路111で各画像データ毎と各エッジ信号毎にGain調整を行うことが可能となり、S/N比が大きい(良い)エッジ信号の重みを大きくしたエッジ強調処理を行ったHDR画像データが生成可能となる。
【0023】
適応補間回路101により出力されるRGB信号は、色変換回路102によりYUV信号に変換される。色変換回路102の出力は、露出に応じてデータの格納先が変わる。色変換回路102は、露出が高い画像データを画像メモリ104に格納し、標準露出画像データを画像メモリ105に格納し、露出が低い画像データを画像メモリ106に格納する。
【0024】
適応補間回路101により出力されるG信号は、エッジ抽出回路103に入力されエッジ信号が抽出される。図2のような原色市松フィルタを搭載する撮像装置の場合、RB信号の周波数帯域はG信号の帯域に比べ半分しかない。このため、エッジ強調処理に用いるエッジ信号(高周波信号)の検出にはG信号のみが使用されるのが一般的であり、本実施の形態においてもG信号のみを使用する。
【0025】
色変換回路102から出力された信号は、取得された複数の画像データの各々を格納する画像メモリ104〜106へ出力さる。また、複数の画像データごとにエッジを抽出するエッジ抽出回路103(エッジ抽出手段)から出力された信号は、エッジを示すエッジ画像データを複数の画像データごとに格納するエッジ信号メモリ107〜109に出力される。そして、位置合わせ回路110(位置合わせ手段)は、画像メモリ104〜106、及びエッジ信号メモリ107〜109に格納された各々の信号を用いて位置合わせを行う。上記画像メモリ104〜106は、複数の画像データの各々を格納する画像格納手段に対応する。また、エッジ信号メモリ107〜109は、抽出されたエッジを示すエッジ画像データを複数の画像データごとに格納するエッジ格納手段に対応する。
【0026】
位置合わせ回路110で位置合わせされた信号は、ゲイン調整回路に出力される。より具体的には、画像メモリ104〜106の各々から出力された信号に対応する信号は、それぞれGain112〜114へ出力される。また、エッジ信号メモリ107〜109の各々から出力された信号に対応する信号は、それぞれGain115〜117へ出力される。
【0027】
Gain調整回路111により調整された信号は、画像合成回路118により合成される。合成された信号はγ補正回路119によりγ補正され、色変換回路120に出力される。色変換回路120は、YUVから再びRGBに変換し、不揮発性メモリ121に出力されることでHDR画像データとして記憶されることとなる。
【0028】
図3は、図1におけるエッジ抽出回路103の構成を示す図である。
【0029】
図3において、適応補間回路101において適応補間されたG信号は、バンドパスフィルタ回路130〜132に供給される。水平方向(HBPF)の高周波成分を検出するバンドパスフィルタ回路130は、G信号から水平方向のエッジを検出し、エッジ信号として出力する。エッジ信号はPPGain(Peak to Peak Correct Gain Circuit)回路133にて振幅調整が施され、BC(Base Clip)回路136によってノイズ成分を減少させる。
【0030】
垂直方向(VBPF)の高周波成分を検出するバンドパスフィルタ回路131は、G信号から垂直方向のエッジを検出し、エッジ信号として出力する。エッジ信号はPPGain回路134にて振幅調整が施され、BC回路137によってノイズ成分を減少させる。
【0031】
斜め方向(DBPF)の高周波成分を検出するバンドパスフィルタ回路132は、G信号から斜め方向のエッジを検出し、エッジ信号として出力する。エッジ信号はPPGain回路135にて振幅調整が施され、BC回路138によってノイズ成分を減少させる。
【0032】
そして、BC回路137及びBC回路138から出力されたエッジ信号は加算器139で加算され、BC回路136及び加算器139から出力されたエッジ信号は、加算器140にて加算されてエッジ信号メモリ107〜109のいずれかに出力される。
【0033】
エッジ抽出回路103の出力は、上述したように露出に応じて信号の格納先が変わる。露出が高い画像データのエッジ信号をエッジ信号メモリ107に格納し、標準露出画像データのエッジ信号をエッジ信号メモリ108に格納し、露出が低いデータのエッジ信号をエッジ信号メモリ109に格納する。
【0034】
図4は、露出が異なる3つの画像データの一例を示す図である。
【0035】
図4において、画像データ150〜152での斜線ハッチングは暗い画像領域とし、網点ハッチングは明るい画像領域としている。
【0036】
画像データ150と画像データ151と画像データ152のように露出が異なる画像データを取得した場合、画像データの位置が完全には一致せず、ずれが発生することがある。
【0037】
図5は、画像データ150〜152のハッチング部分を消して、画像データを重ねた図である。
【0038】
図5において、画像データのずれ量を検出するために、エッジ信号の特徴点を比較する。具体的には、まず基準とする画像データを決めて、比較する画像データとのずれ量を算出することで複数の画像データの位置合わせを実施する。
【0039】
例えば、画像データ151を基準とすると、画像データ151と画像データ150のずれ量の検出と、画像データ151と画像データ152のずれ量の検出を行うことで、3枚の画像データの位置合わせを行う。
【0040】
基準とする画像データと比較する画像データとのずれ量の算出は、複数のエッジ信号の特徴点の情報を基に特徴点のずれ量の平均演算などを行い、画像データ同士のずれ量を算出する。すなわち、位置合わせ回路110は、複数のエッジ画像データが示すエッジの特徴点を比較することにより、複数の画像データ及び複数のエッジ画像データの位置合わせを実行する。
【0041】
画像データのずれ量演算の精度を向上させるために、黒つぶれや白飛びしている領域は位置合わせの演算に使用しない、又は露出が低い画像データの明るい領域や露出が高い画像データの暗い領域に重みを付ける、などの処理を加えても良い。
【0042】
図6は、図1における位置合わせ回路110により、画像データ150〜152の位置合わせを実行した結果を示す図である。
【0043】
Gain調整回路111は、このようにして位置合わせ回路110により位置合わせされた各画像データを示す信号、及び各エッジ信号のGainを調整する。図1におけるGain112〜114は、それぞれ画像メモリ104〜106に格納され位置合わせされた画像データを示す信号のGainを調整する。すなわち、Gain調整回路111のGain112〜114は、位置合わせ回路110により位置合わせされた複数の画像データの各々に対するゲインを調整する第1調整手段に対応する。また、Gain調整回路111のGain115〜117は、位置合わせ回路110により位置合わせされたエッジ画像データの各々に対し、露出が高い画像データほどゲインが大きくなるように調整する第2調整手段に対応する。
【0044】
具体的に、Gain115〜117は、それぞれエッジ信号メモリ107〜109に格納され位置合わせされたエッジ信号データのGainを調整する。
【0045】
図7は、照度と撮像素子100の出力との関係を示す図である。
【0046】
図7において、(イ)、(ロ)、(ハ)は、それぞれ露出が高い画像データ、標準露出画像データ、露出が低い画像データにおける照度と撮像素子100の出力の関係を示している。
【0047】
図8は、図7に示す照度と撮像素子100の出力の関係に対する照度と画像データのGainの関係を示す図である。
【0048】
図8において、(イ)、(ロ)、(ハ)は、それぞれ露出が高い画像データ、標準露出画像データ、露出が低い画像データの照度とGainの関係を示している。
【0049】
白飛びしている領域に対しては、露出が高い画像データのGainを調整するGain112でのGainを小さくし、露出が低い画像データのGainを調整するGain114でのGainが大きくなるようにする。
【0050】
黒つぶれしている領域に対しては、露出が高い画像データのGainを調整するGain112でのGainを大きくし、露出が低い画像データのGainを調整するGain114でのGainが小さくなるようにする。この場合、Gain112〜114にリミッターを設け、露出に応じてリミッターを可変とする構成としても良い。すなわち、Gain調整回路111は、調整するゲインを、画像データが撮像された際の露出に応じて可変な範囲内にて調整するようにしてもよい。
【0051】
一方、Gain115〜117は、演算や参照テーブルなどを用いてGainを調整する。ただし、露出が低い画像データのエッジ信号はS/N比が小さい(悪い)ため、エッジ信号のノイズを強調させないようにGain117は小さい値となるようにする。例えばGain117は0としても良い。Gain115〜117にリミッターを設け、露出に応じてリミッターを可変とする構成としても良い。
【0052】
Gain115〜117でのGainの具体例を図9、図10を用いて説明する。
【0053】
図9及び図10は、図7に示す照度と撮像素子100の出力の関係に対する照度と画像データのGainの関係を示す図である。
【0054】
図9及び図10において、(イ)、(ロ)、(ハ)は、それぞれ露出が高い画像データ、標準露出画像データ、露出が低い画像データの照度とエッジ成分のGainの関係を示している。
【0055】
図9(イ)、(ロ)のようにS/N比が大きい(良い)信号のGainを大きくし、図9(ハ)のようにS/N比が小さい(悪い)信号のGainを小さくする。
【0056】
また、図10(イ)、(ロ)のようにS/N比が大きい(良い)信号のGainを大きくし、図10(ハ)のようにS/N比が小さい(悪い)信号のGainを0としても良い。
【0057】
画像合成回路118は、Gain調整回路111でGainを調整された画像データを加算することで1つの画像データに合成し、これによりHDR画像データを生成する。このような構成で合成することで、良好なエッジ強調処理の効果が得られるHDR画像データを生成することができる。
【0058】
図11は、図4に示される画像データ150〜152の各々に対するGainを示す図である。
【0059】
図11において、画像データ153は、画像データ150に対するGainを示す画像データである。また、画像データ154は、画像データ151に対するGainを示す画像データである。また、画像データ155は、画像データ152に対するGainを示す画像データである。
【0060】
なお、図11における画像データ153〜155は、それぞれGain112〜114でのGainを2値の塗りつぶしで示した概念図である。具体的に、グレーの塗りつぶしは大きいGainにより調整された領域を示し、白の塗りつぶしは小さいGainにより調整された領域を示している。図11では説明簡略化のためGainを2値で示しているが、実際は多値で設定する。また、図11では位置合わせした後の画像データの共通領域のみ切り出している。
【0061】
図12は、図4に示される画像データ150〜152の各々のエッジ信号に対するGainを示した画像データ156〜158を示す図である。
【0062】
図12において、画像データ156は、画像データ150のエッジ信号に対するGainを示した画像データである。また、画像データ157は、画像データ151のエッジ信号に対するGainを示した画像データである。また、画像データ158は、画像データ152のエッジ信号に対するGainを示した画像データである。
【0063】
なお、図12における画像データ156〜158は、それぞれGain115〜117でのGainを線で示した概念図である。
【0064】
図12における太実線はGainが大きいことを示し、細点線はGainが小さいことを示す。図12では、画像データ158に示されるように、露出が小さい画像データのエッジ信号のGainは0とした。図12では説明簡略化のためGainを2値で示しているが、実際は多値で設定する。図12では位置合わせした後の画像データの共通領域のみ切り出している。
【0065】
図13は、図11の画像データに示されるGainで調整した後の画像データと、図12の画像データに示されるGainで調整されたエッジ信号とを加算して生成されたHDR画像データを示す図である。
【0066】
図13に示されるような、画像合成回路118で生成したHDR画像データを、上述したようにγ補正回路119でγ補正する。そしてγ補正回路119でγ補正したHDR画像データを色変換回路120でYUVからRGBに色変換する。色変換回路120で色変換したHDR画像データを、所定の画像データ記録フォーマットで不揮発性メモリ121に記録する。
【0067】
上述した第1の実施の形態によれば、撮像装置1は、異なる露出により撮像されることで得られた複数の画像データの各々を格納する画像メモリ104〜106と、複数の画像データごとにエッジを抽出するエッジ抽出回路103を備えている。また、抽出されたエッジを示すエッジ画像データを複数の画像データごとに格納するエッジ信号メモリ107〜109と、複数の画像データ及び複数のエッジ画像データの位置合わせを実行する位置合わせ回路110とを備えている。さらに、位置合わせされた複数の画像データの各々に対するゲインを調整し、位置合わせされたエッジ画像データの各々に対し、露出が高い画像データほどゲインが大きくなるように調整するGain調整回路111を備えている。そして、調整された複数の画像データ、及び複数のエッジ画像データを1つの画像データに合成する画像合成回路118を備えているので、エッジ強調処理が有効に作用し、さらにノイズを低減させたHDR画像データが生成可能となっている。
【0068】
[第2の実施の形態]
図14は、本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置2の信号処理の流れを示すブロック図である。第1の実施の形態と同様に、本実施の形態では、同一シャッター速度かつ同一の開放値で感度設定を変更して3枚の画像データを合成してHDR画像データを得る構成とし、YUV変換後のY信号からエッジ成分を抽出する。
【0069】
本実施の形態では、ホワイトバランス調整やアパチャー補正など一般的に行われている処理は明記しないが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0070】
撮像素子200が取得した信号は、適応補間回路201で各色信号毎に全ての画素位置に信号が存在するよう適応的な補間処理が実施される。適応補間回路201により出力されるRGB信号は、色変換回路202によりYUV信号に変換される。
【0071】
色変換回路202により出力される信号は、画像メモリ204〜206に入力される。また色変換回路202により出力される信号は、Y信号選択回路222に入力された後にエッジ成分が抽出される。
【0072】
このように、YUV変換実施後のY信号を使用して画像データとは別にエッジ信号を抽出しておく。このような構成とすることで、後述するGain調整回路211で各画像データ毎と各エッジ信号毎にGain調整を行うことが可能となり、S/N比が大きい(良い)エッジ信号の重みを大きくしたエッジ強調処理を行ったHDR画像データが生成可能となる。
【0073】
色変換回路202から画像メモリ204〜206の各々へ入力される画像データは、感度に応じてデータの格納先を変える。感度が低い画像データを画像メモリ204に格納し、標準感度の画像データを画像メモリ205に格納し、感度が高い画像データを画像メモリ206に格納する。
【0074】
Y信号選択回路222は、色変換回路202により出力される全てのY信号が入力され、入力されたY信号を選択してエッジ抽出回路203に出力する。人間の視覚は、Y信号に対しての感度は高いが、U信号とV信号に対しては比較的鈍感であるという特性を持つ。
【0075】
このため、エッジ強調処理に用いるエッジ信号(高周波信号)の検出にはY信号のみが使用されるのが一般的であり、本実施の形態でもY信号のみを使用する。
【0076】
エッジ抽出回路203で抽出されたエッジ信号の出力は、感度に応じてデータの格納先が変わる。色変換回路202は、感度が低い画像データのエッジ信号をエッジ信号メモリ207に格納し、標準感度の画像データのエッジ信号をエッジ信号メモリ208に格納し、感度が高い画像データのエッジ信号をエッジ信号メモリ209に格納する。
【0077】
上記画像メモリ204〜206は、複数の画像データの各々を格納する画像格納手段に対応する。また、エッジ信号メモリ207〜209は、抽出されたエッジを示すエッジ画像データを複数の画像データごとに格納するエッジ格納手段に対応する。
【0078】
画像メモリ204〜206とエッジ信号メモリ207〜209に格納された信号が位置合わせ回路210に入力され、位置合わせが行われ、Gain調整回路211に出力される。
【0079】
Gain調整回路211は、位置合わせ回路210で位置合わせした各画像データと各エッジ信号のGainを調整する。Gain212〜214は、それぞれ画像メモリ204〜206に格納され位置合わせされた画像データのGainを調整する。Gain215〜217は、それぞれエッジ信号メモリ207〜209に格納され位置合わせされたエッジ信号データのGainを調整する。
【0080】
Gain212〜214は、演算や参照テーブルなどを用いてGainを調整する。白飛びしている領域に対しては、感度が低い画像データのGainを調整するGain212でのGainを大きくし、感度が高い画像データのGainを調整するGain214でのGainを小さくなるようにする。
【0081】
黒つぶれしている領域に対しては、感度が低い画像データのGainを調整するGain212でのGainを小さくし、感度が高い画像データのGainを調整するGain214でのGainを大きくなるようにする。この場合、Gain212〜214にリミッターを設け、感度に応じてリミッターを可変とする構成としても良い。
【0082】
Gain215〜217は、演算や参照テーブルなどを用いてGainを調整する。ただし、感度が高い画像データのエッジ信号はS/N比が小さい(悪い)ため、エッジ信号のノイズを強調させないようにGain217でのGainは小さい値となるようにする。Gain217でのGainは0としても良い。Gain215〜217にリミッターを設け、感度に応じてリミッターを可変とする構成としても良い。
【0083】
画像合成回路218は、Gain調整回路211でGainを調整された信号を加算して合成し、HDR画像データを生成する。このような構成で合成することで、エッジ信号のノイズを目立たなくさせた上で、エッジ強調処理の効果が得られるHDR画像データを生成することができる。
【0084】
画像合成回路218で生成したHDR画像データをγ補正回路219で、γ補正する。そしてγ補正回路219でγ補正したHDR画像データを色変換回路220でYUVからRGBに色変換する。色変換回路220で色変換したHDR画像データを、所定の画像データ記録フォーマットで不揮発性メモリ221に記録する。
【0085】
上述した第2の実施の形態において、第1の実施の形態と異なる大きな点は、まずY信号を用いてエッジを抽出することである。また、撮像素子200は、異なる感度により撮像されることで得られた複数の画像データを取得する取得手段に対応することである。さらに、第2調整手段に対応するGain調整回路211のGain215〜217が、位置合わせされたエッジ画像データの各々に対し、感度が低い画像データほどゲインが大きくなるように調整することである。なお、Gain調整回路211は、調整するゲインを、画像データが撮像された際の感度に応じて可変な範囲内にて調整することは第1の実施の形態と同様である。
【0086】
上述した第2の実施の形態によれば、撮像装置2は、異なる感度により撮像されることで得られた複数の画像データの各々を格納する画像メモリ204〜206と、複数の画像データごとにエッジを抽出するエッジ抽出回路203を備えている。また、抽出されたエッジを示すエッジ画像データを複数の画像データごとに格納するエッジ信号メモリ207〜209と、複数の画像データ及び複数のエッジ画像データの位置合わせを実行する位置合わせ回路210とを備えている。さらに、位置合わせされた複数の画像データの各々に対するゲインを調整し、位置合わせされたエッジ画像データの各々に対し、感度が低い画像データほどゲインが大きくなるように調整するGain調整回路211を備えている。そして、調整された複数の画像データ、及び複数のエッジ画像データを1つの画像データに合成する画像合成回路218を備えているので、エッジ強調処理が有効に作用し、さらにノイズを低減させたHDR画像データが生成可能となっている。
【0087】
また、第1の実施の形態、及び第2の実施の形態において、適応補間回路101,201、エッジ抽出回路103,203、位置合わせ回路110,210、Gain調整回路111,211、画像合成回路118,218は、ソフトウェアでも実現可能である。すなわち、撮像素子100,200を用いて画像データを取得する。そして、上記各回路に対応する機能と画像メモリ104,105,106,204,205,206及びエッジ信号メモリ107,108,109,207,208,209に格納するステップとを組み合わせることで本実施の形態を実現できる。
【0088】
(他の実施の形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0089】
1,2 撮像装置
100,200 撮像素子
101,201 適応補完回路
102,202,120,220 色変換回路
103,203 エッジ抽出回路
104,105,106,204,205,206 画像メモリ
107,108,109,207,208,209 エッジ信号メモリ
110,210 位置合わせ回路
111,211 Gain調整回路
112,113,114,115,116,117,212,213,214,215,216,217 Gain
118,218 画像合成回路
119,219 γ補正回路
121,221 不揮発性メモリ
130 HBPF
131 VBPF
132 DBPF
133,134,135 PPGain
136,137,138 BC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる露出により撮像されることで得られた複数の画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された複数の画像の各々を格納する画像格納手段と、
前記取得手段により取得された複数の画像ごとにエッジを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出されたエッジを示すエッジ画像を複数の画像ごとに格納するエッジ格納手段と、
前記エッジ格納手段に格納された複数のエッジ画像が示すエッジの特徴点を比較することにより、前記複数の画像及び前記複数のエッジ画像の位置合わせを実行する位置合わせ手段と、
前記位置合わせ手段により位置合わせされた複数の画像の各々に対するゲインを調整する第1調整手段と、
前記位置合わせ手段により位置合わせされたエッジ画像の各々に対し、露出が高い画像ほどゲインが大きくなるように調整する第2調整手段と、
前記第1調整手段により調整された複数の画像、及び前記第2調整手段により調整された複数のエッジ画像を1つの画像に合成する合成手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1調整手段及び第2調整手段は、調整するゲインを、画像が撮像された際の露出に応じて可変な範囲内にて調整することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
異なる感度により撮像されることで得られた複数の画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された複数の画像の各々を格納する画像格納手段と、
前記取得手段により取得された複数の画像ごとにエッジを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出されたエッジを示すエッジ画像を複数の画像ごとに格納するエッジ格納手段と、
前記エッジ格納手段に格納された複数のエッジ画像が示すエッジの特徴点を比較することにより、前記複数の画像及び前記複数のエッジ画像の位置合わせを実行する位置合わせ手段と、
前記位置合わせ手段により位置合わせされた複数の画像の各々に対するゲインを調整する第1調整手段と、
前記位置合わせ手段により位置合わせされたエッジ画像の各々に対し、感度が低い画像ほどゲインが大きくなるように調整する第2調整手段と、
前記第1調整手段により調整された複数の画像、及び前記第2調整手段により調整された複数のエッジ画像を1つの画像に合成する合成手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記第1調整手段及び第2調整手段は、調整するゲインを、画像が撮像された際の感度に応じて可変な範囲内にて調整することを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
異なる露出により撮像されることで得られた複数の画像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された複数の画像の各々を格納する画像格納ステップと、
前記取得ステップにより取得された複数の画像ごとにエッジを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにより抽出されたエッジを示すエッジ画像を複数の画像ごとに格納するエッジ格納ステップと、
前記エッジ格納ステップに格納された複数のエッジ画像が示すエッジの特徴点を比較することにより、前記複数の画像及び前記複数のエッジ画像の位置合わせを実行する位置合わせステップと、
前記位置合わせステップにより位置合わせされた複数の画像の各々に対するゲインを調整する第1調整ステップと、
前記位置合わせステップにより位置合わせされたエッジ画像の各々に対し、露出が高い画像ほどゲインが大きくなるように調整する第2調整ステップと、
前記第1調整ステップにより調整された複数の画像、及び前記第2調整ステップにより調整された複数のエッジ画像を1つの画像に合成する合成ステップと
を備えたことを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項6】
異なる感度により撮像されることで得られた複数の画像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された複数の画像の各々を格納する画像格納ステップと、
前記取得ステップにより取得された複数の画像ごとにエッジを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにより抽出されたエッジを示すエッジ画像を複数の画像ごとに格納するエッジ格納ステップと、
前記エッジ格納ステップに格納された複数のエッジ画像が示すエッジの特徴点を比較することにより、前記複数の画像及び前記複数のエッジ画像の位置合わせを実行する位置合わせステップと、
前記位置合わせステップにより位置合わせされた複数の画像の各々に対するゲインを調整する第1調整ステップと、
前記位置合わせステップにより位置合わせされたエッジ画像の各々に対し、感度が低い画像ほどゲインが大きくなるように調整する第2調整ステップと、
前記第1調整ステップにより調整された複数の画像、及び前記第2調整ステップにより調整された複数のエッジ画像を1つの画像に合成する合成ステップと
を備えたことを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項7】
画像処理装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
異なる露出により撮像されることで得られた複数の画像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された複数の画像の各々を格納する画像格納ステップと、
前記取得ステップにより取得された複数の画像ごとにエッジを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにより抽出されたエッジを示すエッジ画像を複数の画像ごとに格納するエッジ格納ステップと、
前記エッジ格納ステップに格納された複数のエッジ画像が示すエッジの特徴点を比較することにより、前記複数の画像及び前記複数のエッジ画像の位置合わせを実行する位置合わせステップと、
前記位置合わせステップにより位置合わせされた複数の画像の各々に対するゲインを調整する第1調整ステップと、
前記位置合わせステップにより位置合わせされたエッジ画像の各々に対し、露出が高い画像ほどゲインが大きくなるように調整する第2調整ステップと、
前記第1調整ステップにより調整された複数の画像、及び前記第2調整ステップにより調整された複数のエッジ画像を1つの画像に合成する合成ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
画像処理装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
異なる感度により撮像されることで得られた複数の画像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された複数の画像の各々を格納する画像格納ステップと、
前記取得ステップにより取得された複数の画像ごとにエッジを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにより抽出されたエッジを示すエッジ画像を複数の画像ごとに格納するエッジ格納ステップと、
前記エッジ格納ステップに格納された複数のエッジ画像が示すエッジの特徴点を比較することにより、前記複数の画像及び前記複数のエッジ画像の位置合わせを実行する位置合わせステップと、
前記位置合わせステップにより位置合わせされた複数の画像の各々に対するゲインを調整する第1調整ステップと、
前記位置合わせステップにより位置合わせされたエッジ画像の各々に対し、感度が低い画像ほどゲインが大きくなるように調整する第2調整ステップと、
前記第1調整ステップにより調整された複数の画像、及び前記第2調整ステップにより調整された複数のエッジ画像を1つの画像に合成する合成ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−235390(P2012−235390A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103708(P2011−103708)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】