説明

画像処理装置及びその制御方法

【課題】動画像用処理回路を用いて、動画像のフレーム画像データよりも大サイズの静止画像データに対し高画質な画像処理を行う。
【解決手段】大サイズの静止画像データをフレーム画像データのサイズ以下の分割静止画像データに分割し、各分割静止画像データを複数の局所領域に分割し、局所領域毎の局所統計量を生成し、局所統計量を用いて各局所領域の画質変換を行うことにより、各分割静止画像データの画質変換を行う。画質変換した各分割静止画像データを縮小して結合する。各分割静止画像データの全体統計量を生成し、生成した複数の全体統計量から一つの全体統計量を算出し、一つの全体統計量を用いて、前記結合して得た結合画像データの画質変換を行う。前記縮小の縮小率は、結合画像データのサイズが前記フレーム画像データのサイズ以下となるように決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタルテレビは画素数1920×1080(FHD:Full High Definition)のハイビジョン動画像データの処理に対応したハードウェアを搭載している。このハードウェアは、動画像データの1秒当たりのフレーム数に追随してリアルタイムにFHDサイズの画像データを処理できる能力を有している。
【0003】
このハードウェアが実行する画像処理には、解像度変換処理や画質変換処理などがある。解像度変換処理は、入力される画像データを表示装置の表示性能に合わせて拡大又は縮小する処理である。画質変換処理は、ユーザにとってより望ましい画像データになるように行われる高画質化処理である。
【0004】
画質変換処理には、用いる統計量と処理対象となる画像領域とによって二種類の処理方法がある。一つは、動画像を構成するフレーム画像データを複数の局所領域に分割して、各局所領域の画像データの統計量に適応したきめ細かい画質変換処理を行う方法である。以下、これを局所画質変換処理と呼ぶ。もう一つは、フレーム画像データの全体の統計量に応じてフレーム画像データの全体に対して画質変換処理を行う方法である。以下、これを全体画質変換処理と呼ぶ。
【0005】
ところで、デジタルカメラなどで撮影された静止画像データをデジタルテレビに表示させて鑑賞するニーズがある。静止画像データの処理を、デジタルテレビに搭載されたハードウェアを用いて行えば、高速に解像度変換や画質変換処理を行うことができる。
【0006】
近年のデジタルカメラ等で撮影された静止画像データの画素数は、例えば2000万画素など、FHDサイズを超えるものも多い。FHDサイズを超える画素数(以下、超FHDサイズと呼ぶ)の画像データをFHD対応のデジタルテレビにおいて鑑賞などのために画像処理するには、別途、超FHDサイズの画像データの処理に対応した画像処理回路を増設する必要がある。または、事前に専用回路を用いて超FHDサイズの画像データをFHDサイズの画像データに縮小する必要がある。
【0007】
特許文献1には、動画像用の圧縮回路で静止画像の圧縮を行う画像圧縮装置において、圧縮回路が圧縮可能な解像度を超える静止画像を圧縮する場合は、高解像度の静止画像を圧縮回路で圧縮可能な解像度の静止画像に分割して個別に処理することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−355773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サイズの大きい画像データには様々な画像要素が含まれている場合があるので、サイズが大きい画像データほど、より細かく領域分割を行い、よりきめ細かい局所画質変換処理を行うことが望ましい。特許文献1に記載の発明のように、動画像用処理回路を用いて静止画像データの処理を行う構成では、高解像度の静止画像データの処理において、動画像
用処理回路の処理性能による制約がある。そのため、動画像用処理回路が適合する動画像のフレーム画像データのサイズより大サイズの静止画像データに対しては粗い局所画質変換処理が行われることになってしまう。動画像データよりサイズの大きい静止画像データに対して、専用回路を用いてよりきめ細かい局所画質変換処理を行うようにした場合は、回路規模の増大につながるという課題がある。
【0010】
本発明は、動画像用処理回路で処理可能な動画像を構成するフレーム画像データのサイズより大サイズの静止画像データに対して、動画像用処理回路を用いて高画質な画像処理を行うことが可能な画像処理装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、入力された動画像を構成する各フレーム画像データに対して、当該フレーム画像データを複数の局所領域に分割し、局所領域毎に画像処理を行うことが可能な画像処理装置であって、
前記動画像のフレーム画像データよりも大サイズの静止画像データの入力があった場合に、
前記静止画像データを前記フレーム画像データのサイズ以下となるように分割する静止画分割手段と、
前記静止画分割手段で分割された各分割静止画像データのそれぞれを複数の局所領域に分割し、局所領域毎の局所統計量を生成する局所統計量生成手段と、
分割静止画像データの全体統計量を分割静止画像データ毎に生成する全体統計量生成手段と、
前記局所統計量生成手段で生成された局所領域毎の局所統計量を用いて、対応する各局所領域の画質変換を実行する局所画質変換処理手段と、
前記局所画質変換処理手段で画質が変換された分割静止画像データの縮小処理を行う縮小手段と、
前記縮小手段で縮小された各分割静止画像データを結合する結合手段と、
分割静止画像データ毎に生成された複数の全体統計量を用いて、一つの全体統計量を算出する算出手段と、
前記算出手段で算出された一つの全体統計量を用いて、前記結合手段で結合されて得られた結合画像データの画質変換を実行する全体画質変換処理手段と、
を有し、
前記縮小手段は、縮小後の各分割静止画像データを結合した結果得られる結合画像データのサイズが前記フレーム画像データのサイズ以下となるように縮小率を決定することを特徴とする画像処理装置である。
【0012】
本発明は、入力された動画像を構成する各フレーム画像データに対して、当該フレーム画像データを複数の局所領域に分割し、局所領域ごとに画像処理を行うことが可能な画像処理装置の制御方法であって、
前記動画像のフレーム画像データよりも大サイズの静止画像データの入力があった場合に、
前記静止画像データを前記フレーム画像データのサイズ以下となるように分割する静止画分割工程と、
前記静止画分割工程で分割された各分割静止画像データのそれぞれを複数の局所領域に分割し、局所領域毎の局所統計量を生成する局所統計量生成工程と、
分割静止画像データの全体統計量を分割静止画像データ毎に生成する全体統計量生成工程と、
前記局所統計量生成工程で生成された局所領域毎の局所統計量を用いて、対応する各局所領域の画質変換を実行する局所画質変換処理工程と、
前記局所画質変換処理工程で画質が変換された分割静止画像データの縮小処理を行う縮
小工程と、
前記縮小工程で縮小された各分割静止画像データを結合する結合工程と、
分割静止画像データ毎に生成された複数の全体統計量を用いて、一つの全体統計量を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された一つの全体統計量を用いて、前記結合工程で結合されて得られた結合画像データの画質変換を実行する全体画質変換処理工程と、
を有し、
前記縮小工程は、縮小後の各分割静止画像データを結合した結果得られる結合画像データのサイズが前記フレーム画像データのサイズ以下となるように縮小率を決定することを特徴とする画像処理装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、動画像用処理回路で処理可能な動画像を構成するフレーム画像データのサイズより大サイズの静止画像データに対して、動画像用処理回路を用いて高画質な画像処理を行うことが可能な画像処理装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の画像表示装置の構成を示すブロック図
【図2】実施例1の超FHDサイズ静止画像データの処理の概念図
【図3】実施例1の超FHDサイズ静止画像データの処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施例である画像表示装置のブロック図である。画像処理システム部101は動画像用画像処理ハードウェアであり、1チップの大規模集積回路に実装されている。画像処理システム部101は、FHDサイズ以下の動画像データ(動画像を構成するフレーム画像データ)を、例えば毎秒60フレームまたは毎秒120フレームなどのフレームレートでリアルタイムに処理できる性能をもつ。画像処理システム部101は、主に画像処理部102、メモリ制御部103、システム制御部104で構成されており、その他、画像入力部105、画像出力部118、パス制御部123、JPEGデコード部124を含む。各部の詳細については後述する。
【0016】
画像処理システム部101には、表示部125、フレームメモリ126、記録メディア127が接続され、これらの機能部で画像表示装置を構成している。なお、図中には示していないが、ユーザは、リモートコントローラなどの入力装置を用いて、所望の指示を画像表示装置に入力し、所望の動作を画像表示装置に行わせることができる。表示部125は、画像処理システム部101によって処理され出力される画像データの表示を行う。フレームメモリ126は、処理中の画像データや表示部125に送出する画像データを一時的に蓄積する機能をもつ。記録メディア127は、例えばフラッシュメモリカードやCD−ROMなどであり、ここでは、超FHDサイズ(動画像のフレーム画像データよりも大サイズ)の静止画像データをJPEGフォーマットでエンコードしたデータが格納されているとする。
【0017】
画像処理システム部101には、画像入力部105を介して動画像データが入力される。画像入力部105は、動画像データを次段の画像処理部102で処理可能なフォーマットに変換して出力する。一方、静止画像データは、記録メディア127からJPEGフォーマットのデータが読み出されることで画像処理システム部101に入力される。JPEGフォーマットのデータはJPEGデコード部124に入力される。JPEGデコード部124は、入力されるJPEGフォーマットのデータをデコードして超FHDサイズの静止画像データを生成する。JPEGデコード部124が生成した静止画像データは、メモリ制御部103を介して、フレームメモリ126へ展開される。
【0018】
画像処理部102の構成について述べる。画像処理部102は、画像データに対して、解像度変換処理や高画質化処理などの処理を行う。画像処理部102は、統計量生成部107、解像度変換部111、画質変換処理部113、グラフィックブレンド部117、および各部への入出力パスを選択する各種パス選択部(106、110、112、116)で構成されている。
【0019】
統計量生成部107は、フレーム画像データに関する画質変換処理に必要となる統計量を生成し保持する。統計量とは、輝度情報や階調毎のヒストグラム情報などである。統計量生成部107は、統計量の生成を行う対象領域によって、局所統計量生成部108(局所統計量生成手段)と全体統計量生成部109(全体統計量生成手段)に分けられる。局所統計量生成部108は、フレーム画像データを複数の局所領域に分割し、局所領域毎に画像データの統計量の生成を行う。この局所領域は、後述する局所画質変換処理部114での局所画質変換領域に相当する。全体統計量生成部109ではフレーム画像データの全体に関する統計量の生成を行う。
【0020】
解像度変換部111は、入力される画像データのサイズと表示部125に表示する際のサイズに応じて、画像データを拡大又は縮小する解像度変換処理を行う。解像度変換部111は、補間画素のデータを、補間画素の周辺の画素のデータから、例えば線形補間処理など一般的に知られている手法を用いて生成することにより、拡大縮小処理を行う。
【0021】
画質変換処理部113では、入力される画像データがユーザにとってより望ましい画像データとなるようにするための高画質化処理を行う。高画質化処理には、例えば、ノイズリダクション処理、ガンマ変換処理、色補正処理などがある。画質変換処理部113は、画質変換処理を行う対象領域によって、局所画質変換処理部114(局所画質変換処理手段)と全体画質変換処理部115(全体画質変換処理手段)に分けられる。局所画質変換処理部114は、フレーム画像データを複数の局所領域(局所画質変換領域)に分割し、局所画質変換領域毎(局所領域毎)に、対応する局所画質変換領域の統計量に応じて、局所画質変換領域の画像データの画質変換処理(局所画質変換処理)を行う。局所画質変換処理部114が行う処理には、例えば、局所ガンマ変換処理などがある。フレーム画像データを局所画質変換領域に分割する分割数を増やすことにより、よりきめ細かい処理が可能となる。本実施例では局所画質変換処理部114はハードウェアによる実装であり、局所画質変換領域の分割数には一定の上限がある。全体画質変換処理部115は、フレーム画像データの全体の統計量に応じて、画像データの全体の画質変換処理(全体画質変換処理)を行う。全体画質変換処理部115が行う処理には、例えば、ノイズリダクション処理や色補正処理などがある。
【0022】
グラフィックブレンド部117は、画質変換処理部113において高画質化処理された画像データに対して、メニューや画像情報などの各種グラフィックを合成し、最終的に表示部125に表示させる画像データを生成する。
【0023】
画像処理部102には、上記の各機能部間のデータフローを制御する各種のパス選択部がある。本実施例の画像処理に係るデータフローの制御は、これらのパス選択部を制御することによって行われる。統計量生成パス選択部106は、統計量生成部107へ出力する画像データの入力元を選択するもので、画像入力部105からの入力と、静止画分割部119からの入力と、のいずれかを選択する。解像度変換パス選択部110は、解像度変換部111へ出力する画像データの入力元を選択するもので、全体統計量生成部109からの入力と、局所画質変換処理部114からフィードバックされた入力と、のいずれかを選択する。画質変換処理パス選択部112は、3系統の入力元からいずれかを選択し、3系統の出力先からいずれかを選択する。3系統の入力元とは、解像度変換部111からの
入力、解像度変換部111をバイパスした解像度変換パス選択部110からの入力、結合画像出力部120からの入力である。3系統の出力先とは、局所画質変換処理部114への出力、全体画質変換処理部115への出力、画質変換処理部113をバイパスする画質変換処理出力選択部116への出力である。画質変換処理出力選択部116は、グラフィックブレンド部117へ出力する画像データの入力元を選択する。画質変換処理出力選択部116は、局所画質変換処理部114からの入力と、全体画質変換処理部115からの入力と、画質変換処理部113をバイパスする画質変換処理パス選択部112からの入力と、のいずれかを選択する。
【0024】
次に、メモリ制御部103の構成について述べる。メモリ制御部103は、画像処理部102とフレームメモリ126との間で画像データの受け渡しを制御する機能をもつ。メモリ制御部103は、静止画分割部119、結合画像出力部120、静止画結合部121、メモリ入出力切り換え部122で構成されている。これらの各部の動作は、画像処理部102とフレームメモリ126の間の画像データのやり取りが適切に制御されることで実現されており、ここでは、データフローの関連と機能を図示するために、概念的に示している。動画像データ及び静止画像データそれぞれのデータフローの詳細は後述する。
【0025】
メモリ入出力切り換え部122は、フレームメモリ126と各部との画像データの入出力の切り換え機能を担っている。メモリ入出力切り換え部122が切り換える入力は、グラフィックブレンド部117からの入力とJPEGデコード部124からの入力がある。メモリ入出力切り換え部122が切り換える出力は、画像出力部118への出力、静止画結合部121への出力、静止画分割部119への出力、結合画像出力部120への出力がある。
【0026】
静止画分割部119(静止画分割手段)は、フレームメモリ126に格納された超FHDサイズの静止画像データを画像処理部102にて処理可能なFHDサイズの静止画像データ(分割静止画像データ)に分割して読み出し統計量生成パス選択部106に送出する。分割数は、静止画像データのサイズに依存し、対象となる静止画像データを全て含むようにFHDサイズ単位で分割する。なお、本実施例では分割単位をFHDサイズ単位としているが、画像処理部102にて処理可能なサイズ(動画像を構成するフレーム画像データのサイズ)以下であれば良く、FHDサイズ単位に限定されるものではない。静止画分割部119は、フレームメモリ126に格納されている超FHDサイズの静止画像データを読み出す際に、分割領域の画像データに対応する読み出しアドレスを生成して読み出しアクセスすることで、画像分割機能を実現する。
【0027】
静止画結合部121(結合手段)は、画像処理部102にて縮小処理および局所画質変換処理をした後の静止画像データを結合してフレームメモリ126に格納する機能を担う。静止画分割部119における分割数分、画像処理部102での処理が行われて、画像処理後の静止画像データが分割数分生成されるので、静止画結合部121は、それらを全て結合して、一枚のFHDサイズの静止画像データを生成する。静止画結合部121は、画像処理後のFHDサイズの静止画像データをフレームメモリ126に書き込む際に、結合画像データにおける分割画像データに対応する書き込みアドレスを生成して書き込みアクセスすることで、画像結合機能を実現する。
【0028】
結合画像出力部120は、フレームメモリ126内に格納されている結合後の1枚のFHDサイズ静止画像データを読み出して、画質変換処理パス選択部112に送出する。
【0029】
システム制御部104は、画像処理システム部101、メモリ制御部103の各部を制御する。各部の制御信号を図中の破線矢印で示す。システム制御部104は、CPU、メモリなどで構成され、主にソフトウェアによって実現される機能が実装されている。パス
制御部123は、システム制御部104からの指示に従って、制御信号を各部に発行し、画像処理部102の各種パス選択部のパス切り換え及びメモリ入出力切り換え部122のデータ入出力の制御を実行する。
【0030】
動画像データのデータフローについて図1の構成図を用いて説明する。動画像データは、1フレームずつフレーム画像データが画像処理システム部101に入力され、画像入力部105を介して画像処理部102に入力される。統計量生成パス選択部106が画像入力部105からの入力を選択し、フレーム画像データが統計量生成部107に入力される。フレーム画像データは、局所統計量生成部108、全体統計量生成部109の順に統計量生成部107を通過し、各部において局所統計量及び全体統計量が生成及び取得され、解像度変換パス選択部110に入力される。解像度変換パス選択部110が全体統計量生成部109からの入力を選択し、統計量生成部107を通過したフレーム画像データを解像度変換部111へ出力する。解像度変換部111において、フレーム画像データに対する拡大又は縮小の解像度変換処理が行われ、フレーム画像データは画質変換処理パス選択部112に入力される。画質変換処理パス選択部112は、解像度変換部111からの入力と、局所画質変換処理部114への出力を選択して、フレーム画像データを画質変換処理部113へ出力する。画質変換処理部113へ入力されたフレーム画像データに対して、局所画質変換処理部114において、局所ガンマ変換処理などの局所画質変換領域毎の高画質化処理が行われる。局所画質変換処理部114は、局所統計量生成部108にて取得された局所画質変換領域毎の統計量の情報に基づいて、局所画質変換領域毎に輝度情報や色情報の画質変換処理を行う。
【0031】
続いて、フレーム画像データに対して、全体画質変換処理部115において、色補正処理などのフレーム画像データの全領域にわたる高画質化処理が行われる。全体画質変換処理部115は、全体統計量生成部109にて取得されたフレーム画像データの全領域に関する統計量情報に基づいて高画質化処理を行う。画質変換処理出力選択部116は、全体画質変換処理部115からの入力を選択して、画質変換処理部113から画質変換処理出力選択部116へ出力されるフレーム画像データをグラフィックブレンド部117へ出力する。ここで、各種メニューや画像情報等のグラフィックがフレーム画像データに合成されて、最終的に表示部125に表示させるフレーム画像データが生成され、メモリ制御部103を介してフレームメモリ126に書き込まれる。フレームメモリ126に格納されたフレーム画像データは、再びメモリ制御部103を介して画像出力部118に入力される。メモリ制御部103におけるグラフィックブレンド部117、フレームメモリ126、画像出力部118の間でのフレーム画像データの入出力切り換えは、メモリ入出力切り換え部122により行われる。画像出力部118において、フレーム画像データは、表示部125に対応した信号フォーマットに変換され、最後に表示部125にてフレーム画像データの表示が行われる。以上のフレーム画像データについての処理が、動画像のフレームレート(例えば1秒間に60フレーム)で順次実行されることで、画像処理システム部101に入力された動画像データは、動画像として表示部125に表示される。
【0032】
次に、超FHDサイズの静止画像データに対する画像処理について説明する。図2は、超FHDサイズの静止画像データに対して画像処理が行われる場合の静止画像データの変遷を、画像処理の工程毎に概念的に示した図である。
【0033】
図2(A)は超FHDサイズの静止画像データを表す。ここでは、処理対象の超FHDサイズ静止画像データ201は、縦横ともにFHDサイズの2倍のサイズ(3840×2160、QFHDともいう)とする。この超FHDサイズ静止画像データ201をFHDサイズ単位で分割すると分割数は4となる。このように、フレーム画像データのサイズを超える静止画像データは、フレーム画像データのサイズ以下となるように分割することとなる。
【0034】
図2(B)は、図2(A)の超FHDサイズ静止画像データ201を4分割して得られる4枚の分割画像データ202〜205を示す図である。分割画像(1)202から分割画像(4)205は、全てFHDサイズの静止画像データであり、FHDサイズの動画像データのフレーム画像データと同サイズであり、画像処理部102で処理可能なサイズである。図2(B)において、局所画質変換処理回路適用領域206は、局所画質変換処理部114における局所画質変換領域に相当する。本実施例では、局所画質変換処理部114は、FHDサイズの画像データを縦4分割、横5分割することで合計20個の局所画質変換領域に分割し、局所画質変換領域ごとに高画質化処理を行う性能があるとする。また、同様に、局所統計量生成部108も、FHDサイズの画像データを縦4分割、横5分割することで合計20個の領域に分割し、分割領域ごとに統計量の生成を行う性能があるとする。したがって、局所画質変換処理部114は、動画像データに関しては、各フレーム画像データを20個の局所画質変換領域に分割して、各局所画質変換領域について高画質化処理を行うことが可能な性能を有することになる。またQFHDサイズの静止画像データに関しては、4分割したFHDサイズの分割画像(1)202から分割画像(4)205のそれぞれを20個の局所画質変換領域に分割して、各局所画質変換領域について高画質化処理を行うことが可能な性能を有することになる。局所画質変換領域の分割数は画像処理部102が実装される回路性能によって定まる値であり、本実施例では一定値とする。なお、局所画質変換処理部114は、画像処理部102が実装される回路性能を超えない範囲で、より少ない分割数の局所画質変換領域でFHDサイズの画像データを分割し、より粗い局所画質変換処理を行うことが可能な構成としても良い。
【0035】
図2(C)は、図2(B)の4つの分割画像202〜205をそれぞれ解像度変換して縮小した4つの縮小画像207〜210を示す図である。この例では、各分割画像を縦、横ともに1/2に縮小する解像度変換を行っている。図2(C)の局所画質変換領域211は図2(B)の局所画質変換処理回路適用領域206に対応している。解像度変換によって局所画質変換領域211のサイズは局所画質変換処理回路適用領域206よりも小さくなっているため、画像サイズあたりの分割数で考えた場合、図2(B)の分割画像よりも図2(C)の縮小画像の方がより細分化されている。
【0036】
図2(D)は、図2(C)の4つの縮小画像207〜210を結合して得られるFHDサイズの静止画像データ212を示す図である。4つの縮小画像207〜210を結合することにより、超FHDサイズ静止画像データ201をFHDサイズに解像度変換した静止画像データが得られる。FHDサイズ静止画像データ212の画像サイズあたりの分割数は、図2(C)の各縮小画像の画像サイズあたりの分割数と同じである。そのため、FHDサイズ静止画像データ212は、結果的に、FHDサイズの静止画像データを、図2(C)の局所画質変換領域211と同じサイズの分割領域で80分割して、局所画質変換処理が行われたことになっている。局所画質変換処理部114の本来の性能は、FHDサイズの静止画像データを、図2(B)の局所画質変換処理回路適用領域206のサイズの分割領域で20分割して、局所画質変換処理を行うことが、本来の上限である。従って、上述した工程で超FHDサイズの静止画像データを画像処理することにより、局所画質変換処理部114の本来の固定性能を超える高精細な局所画質変換処理を行ったのと同等の画像処理結果が得られる。図2(D)のFHDサイズ静止画像データ212に対しては、さらに全体画質変換処理部115において全体画質変換処理が行われ、最終的に表示部125に表示させる静止画像データとなる。
【0037】
以上説明した静止画像データの解像度変換の処理フローと回路動作について、図3のフローチャートと図1のブロック図を用いて説明する。まず、ユーザ操作により静止画像データを表示する操作が開始されると、ステップS301において、JPEGデコード部124が、指定されたJPEGフォーマットの画像データのデコード処理を行い、図2(A
)の超FHDサイズ静止画像データ201を生成する。JPEGデコード部124が生成した静止画像データは、メモリ制御部103を介して、フレームメモリ126へ展開される。
【0038】
ステップS302において、図2(B)に示す画像分割処理が行われる。この画像分割処理は、静止画分割部119によって行われる。静止画分割部119は、フレームメモリ126内の超FHDサイズ静止画像データ201を図2(B)に示すように分割画像202〜205(分割静止画像データ)に4分割した場合の各分割画像データに対応する読み出しアドレスを決定する。そして、静止画分割部119は、まず、超FHDサイズ静止画像データ201における分割画像(1)202に相当するアドレスの静止画像データを読み出して、統計量生成パス選択部106へ出力する。統計量生成パス選択部106は、静止画分割部119からの入力を選択し、入力される静止画像データを局所統計量生成部108へ出力する。
【0039】
ステップS303において、分割画像データに関する局所統計量が取得される。局所統計量生成部108は、図2(B)に示す分割画像(1)202の20個の局所画質変換処理回路適用領域206ごとの統計量(局所統計量)を取得し、保持する。
【0040】
ステップS304において、分割画像データ毎(分割静止画像データ毎)に全体統計量が取得される。全体統計量生成部109は、分割画像(1)202の画像データの全体の統計量(全体統計量)を取得し、保持する。解像度変換パス選択部110は、全体統計量生成部109からの入力を選択し、入力される分割画像(1)202の画像データを、解像度変換部111をパイパスさせて画質変換処理パス選択部112へ出力する。画質変換処理パス選択部112は、解像度変換パス選択部110からの入力を選択し、入力される分割画像(1)202の画像データを局所画質変換処理部114へ出力する。
【0041】
ステップS305において、分割画像データに関する局所画質変換処理が行われる。この局所画質変換処理は、局所画質変換処理部114によって行われる。局所画質変換処理部114は、図2(B)に示す分割画像(1)202の20個の局所画質変換処理回路適用領域206ごとに高画質化処理を行う。局所画質変換処理部114は、局所画質変換処理後の分割画像(1)202の画像データを、解像度変換パス選択部110へ出力する。
【0042】
ステップS306において、分割画像データに関する縮小処理が行われる。この縮小処理は、解像度変換部111によって行われる(縮小手段)。解像度変換パス選択部110は、局所画質変換処理部114からの入力を選択し、入力される局所画質変換処理後の分割画像(1)202の画像データを解像度変換部111へ出力する。解像度変換部111は、分割画像(1)202の縦及び横のサイズを1/2に縮小する解像度変換処理を行い、図2(C)に示す縮小画像(1)207を生成する。画質変換処理パス選択部112は、解像度変換部111からの入力を選択し、入力される縮小後の縮小画像(1)207の画像データを、画質変換処理部113をバイパスさせて画質変換処理出力選択部116へ出力する。画質変換処理出力選択部116から出力される縮小画像(1)207の画像データは、グラフィックブレンド部117、メモリ入出力切り換え部122を介して、静止画結合部121へ出力される。なお、縮小率は、縮小後の各分割画像データを結合した結果得られる結合画像データのサイズが、FHDサイズ以下、つまり、本装置で処理可能なフレーム画像データのサイズ以下となるように決定される。
【0043】
ステップS307において、縮小画像データの結合が行われる。静止画結合部121は、最終的に生成するFHDサイズ静止画像データ212において縮小画像(1)207が位置すべき領域に対応するフレームメモリ126内の書き込みアドレスに、縮小画像(1)207の画像データを格納する。
【0044】
ステップS308において、全ての分割画像データに対して処理が完了したかの判定が行われる。ここでは、分割画像(1)202の画像データに関する上述したステップS303からステップS307の処理が分割画像(2)203〜分割画像(4)205の全てについて行われたか判定される。全ての分割画像データに対して処理が完了していないと判定された場合、処理はステップS302に戻る。これにより、ステップS302からステップS307までが分割領域の数だけ繰り返され、縮小画像(2)208から縮小画像(4)210が生成される。この時、ステップS304における全体統計量取得時には、全体統計量生成部109は、全ての分割画像の画像データの統計量を加算し、平均化する等して複数の全体統計量から一つの全体統計量を算出する(算出手段)。ステップS303における局所統計量取得時には、局所統計量生成部108は、分割画像データ毎に上書きして統計量を取得してよい。生成された縮小画像(1)〜(4)の画像データは、静止画結合部121によって、それぞれが最終的に生成するFHDサイズ静止画像データ212において縮小画像(1)〜(4)が位置すべき領域に対応するフレームメモリ126内のアドレスに書き込まれる。これにより、FHDサイズの静止画像データ(結合静止画像データ)が生成される。
【0045】
ステップS308にて全ての分割画像データの処理が完了していると判定された場合、ステップS309において、全体画質変換処理が行われる。この処理は上述した加算された全体統計量を用いて行われるものである。結合画像出力部120がFHDサイズの結合静止画像データを読み出して、画質変換処理パス選択部112へ出力する。画質変換処理パス選択部112は結合画像出力部120からの入力と、全体画質変換処理部115への出力を選択する。全体画質変換処理部115は、入力されるFHDサイズの結合静止画像データの全体に対して画質変換処理を実行し、図2(D)に示すFHDサイズ静止画像データ212を生成する。FHDサイズ静止画像データ212の画像データは、グラフィックブレンド部117、メモリ制御部103を介して、フレームメモリ126に格納される。ステップS309の処理を実行する機能部が本発明における結合画像処理部として機能している。
【0046】
最後にステップS310にて、解像度変換および画質変換処理が完了した静止画像データの表示が行われる。フレームメモリ126内のFHDサイズ静止画像データ212の画像データが、メモリ制御部103、画像出力部118を介して表示部125へ出力されて、表示が行われる。
【0047】
以上説明した画像処理装置の構成及び処理フローにより、超FHDサイズの静止画像データに対し、FHDサイズの動画像データ用の画像処理回路を用いて解像度変換および画質変換処理を行うことができるので、回路規模の増大を抑えることができる。更に、超FHDサイズの静止画像データに対する局所画質変換処理に関しては、FHDサイズの動画像データに対する局所画質変換処理よりも精細な高画質化処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
101:画像処理システム部、102:画像処理部、111:解像度変換部、113:画質変換処理部、114:局所画質変換処理部、115:全体画質変換処理部、119:静止画分割部、120:結合画像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された動画像を構成する各フレーム画像データに対して、当該フレーム画像データを複数の局所領域に分割し、局所領域毎に画像処理を行うことが可能な画像処理装置であって、
前記動画像のフレーム画像データよりも大サイズの静止画像データの入力があった場合に、
前記静止画像データを前記フレーム画像データのサイズ以下となるように分割する静止画分割手段と、
前記静止画分割手段で分割された各分割静止画像データのそれぞれを複数の局所領域に分割し、局所領域毎の局所統計量を生成する局所統計量生成手段と、
分割静止画像データの全体統計量を分割静止画像データ毎に生成する全体統計量生成手段と、
前記生成手段で生成された局所領域毎の局所統計量を用いて、対応する各局所領域の画質変換を実行する局所画質変換処理手段と、
前記局所画質変換処理手段で画質が変換された分割静止画像データの縮小処理を行う縮小手段と、
前記縮小手段で縮小された各分割静止画像データを結合する結合手段と、
分割静止画像データ毎に生成された複数の全体統計量を用いて、一つの全体統計量を算出する算出手段と、
前記算出手段で算出された一つの全体統計量を用いて、前記結合手段で結合されて得られた結合画像データの画質変換を実行する全体画質変換処理手段と、
を有し、
前記縮小手段は、縮小後の各分割静止画像データを結合した結果得られる結合画像データのサイズが前記フレーム画像データのサイズ以下となるように縮小率を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
入力された動画像を構成する各フレーム画像データに対して、当該フレーム画像データを複数の局所領域に分割し、局所領域ごとに画像処理を行うことが可能な画像処理装置の制御方法であって、
前記動画像のフレーム画像データよりも大サイズの静止画像データの入力があった場合に、
前記静止画像データを前記フレーム画像データのサイズ以下となるように分割する静止画分割工程と、
前記静止画分割工程で分割された各分割静止画像データのそれぞれを複数の局所領域に分割し、局所領域毎の局所統計量を生成する局所統計量生成工程と、
分割静止画像データの全体統計量を分割静止画像データ毎に生成する全体統計量生成工程と、
前記局所統計量生成工程で生成された局所領域毎の局所統計量を用いて、対応する各局所領域の画質変換を実行する局所画質変換処理工程と、
前記局所画質変換処理工程で画質が変換された分割静止画像データの縮小処理を行う縮小工程と、
前記縮小工程で縮小された各分割静止画像データを結合する結合工程と、
分割静止画像データ毎に生成された複数の全体統計量を用いて、一つの全体統計量を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された一つの全体統計量を用いて、前記結合工程で結合されて得られた結合画像データの画質変換を実行する全体画質変換処理工程と、
を有し、
前記縮小工程は、縮小後の各分割静止画像データを結合した結果得られる結合画像データのサイズが前記フレーム画像データのサイズ以下となるように縮小率を決定することを
特徴とする画像処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−68951(P2012−68951A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213887(P2010−213887)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】