説明

画像処理装置及びその制御方法

【課題】フラットパネルディスプレイにおいて、インターレース映像を元画像に忠実に表示でき、かつ、ラインフリッカーや面フリッカーなどのインターレース妨害を低減できる技術を提供する。
【解決手段】画像処理装置が、入力されたインターレース映像信号の奇数フィールドのライン間にブランクラインを挿入することにより奇数フレームを生成すると共に、偶数フィールドのライン間にブランクラインを挿入することにより偶数フレームを生成するフレーム生成手段と、前記奇数フレームと偶数フレームのいずれかの画像又はその両方の画像を元にして、元の輝度の1/2よりも暗い中間画像を生成する中間画像生成手段と、前記インターレース映像信号のフィールド周波数の2倍のフレーム周波数で、前記中間画像のフレームを間に挟みながら、奇数フレームと偶数フレームを交互に出力する出力手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイでインターレース映像を表示するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン受像機に代表される動画像の表示装置には、CRTが長年用いられてきたが、近年では液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)が主流となりつつある。動画像のフレームレートが60Hz又は50Hzである時、液晶ディスプレイは、60分の1秒又は50分の1秒の間、発光を持続する。そのため、液晶ディスプレイは「ホールド型」ディスプレイと呼ばれている。
このようなホールド型ディスプレイにインターレース映像が入力された場合には、インターレース映像をプログレッシブ映像に変換(以後、IP変換と記す)して表示することが一般的である。
【0003】
また、CRTと同様な発光特性をもつデバイスとして、フィールドエミッションタイプの表示装置(Field Emission Display(FED)、Surface-conduction Electron-emitter Display(SED)など)の開発も進んでいる。このタイプの表示装置は、1フレーム
表示期間(60分の1又は50分の1秒)のうちの一瞬だけ発光するので、「インパルス型」ディスプレイと呼ばれている。
インパルス型ディスプレイは、原理的にはインターレース方式の表示が可能である。しかしながら、画素の一つ一つが単独で発光する画素孤立型表示装置であるFPDでインターレース表示を行うと、インターレース妨害の一種であるラインフリッカーが強く現れるという問題がある。
【0004】
図8A〜図8Dは、インターレース表示におけるラインフリッカーの発生を説明するための図である。図8Aと図8Bは、フラットパネルディスプレイ(FPD)に白い矩形画像を表示した例を示し、図8Cと図8Dは、CRTに同じ画像を表示した例を示す。図中、121はFPDの奇数フィールドにおける白表示部分のライン、122はFPDの偶数フィールドにおける白表示部分のラインである。123はCRTの奇数フィールドにおける白表示部分、124はCRTの偶数フィールドにおける白表示部分のラインである。125はFPDの奇数フィールドにおける偶数フィールドのライン、126はCRTの奇数フィールドにおける偶数フィールドのラインである。
【0005】
CRTにおいては、電子ビームの拡散により、123、124のように白画像部分のラインが広がって表示されるため、非発光ラインであるライン126も、真っ黒ではなく、ぼんやりと明るくなる。その結果、同じ位置のライン126、124におけるフィールド間の輝度変化が小さくなるため、ラインフリッカーはあまり目立たない。
これに対して、FPDにおいては、画素単位で発光が制御されるため、121、122のように白画像部分はくっきりと表示され、非発光ライン125もはっきりとした黒いラインとなる。したがって、フィールド間の輝度変化が顕著となり、強いラインフリッカーが現れる。このラインフリッカーにより、白い矩形中に水平方向の縞模様が見えたり(縞模様妨害)、矩形の上端や下端がちらついて見えたり、という妨害感が発生する。
【0006】
したがって、インパルス型ディスプレイにおいては、インターレース表示が可能であるにもかかわらず、ラインフリッカーによる画質低下を避けるために、IP変換を行うことが一般的である。
【0007】
IP変換の標準のアルゴリズムと言うものは無く、TVやモニターのメーカーによって様々な方法が採用されている。例えば、上下のラインから補間画素を生成するフィールド内補間、前後のフィールドから補間画素を生成するフィールド間補間、動き推定によりフィールド内補間とフィールド間補間を適応的に組み合わせる方法などがある。このようにIP変換は補間処理や推定処理を伴うため、どんな映像にも対応できると言うような完全な変換方式というものはなく、多かれ少なかれ変換ミスによる画像の乱れが発生する。そして、発生する画像の乱れは、IP変換のアルゴリズムによって(すなわちモニターの種類やメーカーによって)異なるものとなる。
【0008】
放送局やコンテンツ制作会社においては、マスターモニターと呼ばれる基準のディスプレイを用いて映像品質の確認が行われる。従来のCRTのマスターモニターではインターレース映像をそのまま表示し確認することが可能であったが、LCDマスターモニターでは、インターレース映像はIP変換回路でプログレッシブ映像に変換した後に表示される。そうすると、LCDマスターモニターで画像の乱れが発見された場合に、それが入力映像信号(元画像)にもともと含まれていた問題なのか、マスターモニターにおけるIP変換処理のミスによる画質劣化なのか判断がつかない虞があり、支障がある。
【0009】
最近は、プログレッシブ表示モードとインターレース表示モードをもつLCDマスターモニターが登場している。しかし、LCDも画素孤立型表示装置であるため、LCDマスターモニターにおけるインターレース表示は上述したFEDやSEDと同じくラインフリッカーが強く現れ、大変見づらい。そのため、インターレース表示モードは常用するモードではなく、IP変換ミスかどうかを確認するためにのみ使用されることが多い。したがって従来のLCDマスターモニターでは、いちいち表示モードを切り替える手間が発生し、元画像の品質を常時監視するというマスターモニターの使い方において、支障がある。
【0010】
インターレース表示におけるラインフリッカーを低減する方法は、従来からいくつか提案されている。特許文献1に開示された方法は、ノンインターレースの映像信号をインターレース方式で表示する場合に、選択的にラインフリッカー防止フィルターをかけるものである。特許文献2に開示された方法は、ラインフリッカーを防止するために、文字と判別したら、垂直方向にローパスフィルターをかけるものである。特許文献3に開示された方法は、ラインフリッカーを防止するために、動きが認識されたら、垂直解像度を減少させるものである。
【0011】
しかしながら、これら従来例は、ラインフリッカーを防止するために文字判別や動き認識等を用いているので、画像によって妨害の出方が変わる虞がある。そのため、IP変換ミスの場合と同様、表示画像の乱れが元画像に含まれていた問題かモニターでの画像処理に起因する問題かを区別できない。したがって、これらの方法は、マスターモニターのように元画像に忠実な表示が要求されるディスプレイには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−46299号公報
【特許文献2】特開平9−252430号公報
【特許文献3】特開平6−276415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、フラットパネルディスプレイにおいて、インターレース映像を元画像に忠実に表示でき、かつ、ラインフリッカーや面フリッカーなどのインターレース妨害を低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1態様は、入力されたインターレース映像信号の奇数フィールドのライン間に、画像情報を含まないラインであるブランクラインを挿入することにより奇数フレームを生成すると共に、偶数フィールドのライン間にブランクラインを挿入することにより偶数フレームを生成するフレーム生成手段と、前記奇数フレームと偶数フレームのいずれかの画像又はその両方の画像を元にして、元の輝度の1/2よりも暗い中間画像を生成する中間画像生成手段と、前記インターレース映像信号のフィールド周波数の2倍のフレーム周波数で、前記中間画像のフレームを間に挟みながら、奇数フレームと偶数フレームを交互に出力する出力手段と、を有する画像処理装置を提供する。
【0015】
本発明の第2態様は、画像処理装置の制御方法であって、入力されたインターレース映像信号の奇数フィールドのライン間に、画像情報を含まないラインであるブランクラインを挿入することにより奇数フレームを生成すると共に、偶数フィールドのライン間にブランクラインを挿入することにより偶数フレームを生成するステップと、前記奇数フレームと偶数フレームのいずれかの画像又はその両方の画像を元にして、元の輝度の1/2よりも暗い中間画像を生成するステップと、前記インターレース映像信号のフィールド周波数の2倍のフレーム周波数で、前記中間画像のフレームを間に挟みながら、奇数フレームと偶数フレームを交互に出力するステップと、を有する画像処理装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フラットパネルディスプレイにおいて、インターレース映像を元画像に忠実に表示することができるとともに、ラインフリッカーや面フリッカーなどのインターレース妨害を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の画像処理装置の機能ブロック図
【図2】第1実施形態の画像処理装置による処理画像の変遷を示す図
【図3】各ラインの表示輝度の変化を説明する図
【図4】第2実施形態の画像処理装置の機能ブロック図
【図5】第2実施形態の画像処理装置による処理画像の変遷を示す図
【図6】第3実施形態の画像処理装置の中間画像作成回路の機能ブロック図
【図7】第3実施形態の画像処理装置による処理画像の変遷を示す図
【図8】インターレース表示におけるラインフリッカーの発生を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付する図面を参照して本発明の画像処理装置及びその制御方法の好適な実施形態を説明する。本発明の画像処理装置は、入力されるインターレース映像信号に対して画像処理を施し、処理後の画像信号をフラットパネルディスプレイ(FPD)のパネルモジュールに出力する装置である。本発明は、TV受像機やモニターなどの表示装置に内蔵される画像処理回路に適用することもできるし、映像機器(チューナ、ビデオカメラ、ビデオレコーダーなど)やパーソナルコンピュータのように、表示装置に対して画像信号を出力する装置に適用することもできる。なお、FPDには、LCD、FED、SED、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどがあるが、本発明はいずれのFPDにも好ましく適用できる。
【0019】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態の画像処理装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。画像処理装置は、画質調整回路111、フレーム周波数変換回路11、フレーム
メモリ12、中間画像作成回路13、遅延回路14、減算回路15、セレクタ16を備える。図1Bは中間画像作成回路13の詳細を示しており、本実施形態の中間画像作成回路13は最小値フィルター17と乗算器18から構成されている。
【0020】
図2を参照しながら、各ブロックの動作を説明する。図2は、黒い背景中を白い矩形物体が左から右に移動している映像の例を示している。なお、ここでは、1080i60(解像度1920×1080、フィールド周波数60Hz(フレーム周波数30Hz)のインターレース)フォーマットを例に挙げて説明する。ただし、本発明はこれに限らず、例えば480i60、480i50、720i60、720i50、1080i60、1080i50など、どのようなフォーマットのインターレース映像にも適用可能である。
【0021】
入力画像として、奇数フィールドF1、偶数フィールドF2、奇数フィールドF3、・・・が順に入力される。各フィールドは、画質調整回路111において、コントラスト、階調性(ガンマ)、色味などの調整が行われた後、フレーム周波数変換回路11に入力される。
【0022】
フレーム周波数変換回路11は、フィールド周波数60Hzで入力されるフィールドF1、F2、F3、・・・から、第1のフレームF11、F21、F31、・・・及び第2のフレームF12、F22、F32を生成し、フレーム周波数120Hzで出力する回路である。
【0023】
偶数フィールドF2が入力された場合を例にして、フレーム生成手段としてのフレーム周波数変換回路11の動作を詳しく説明する。フレーム周波数変換回路11は、偶数フィールドF2を受け取ると、偶数フィールドF2のライン間にブランクラインを付加(挿入)することによって、第1のフレームF21を生成する。ブランクラインとは、画像情報を含まない空のラインをいい、ダミーラインとも呼ばれる。ブランクラインとしては、画素値が0の黒ラインを用いることが好ましい。ただし、十分に暗いライン(例えば最大輝度の100分の1程度の輝度のライン)でも同様の効果が得られる。さらに、フレーム周波数変換回路11は、前ステップの処理で奇数フィールドF1から作成された第1のフレームF11のデータをフレームメモリ12から読み込み、2つの第1のフレームF11、F21の論理和(OR)をとり、第2のフレームF22を生成する。そして、第1のフレームF21は遅延回路14に、第2のフレームF22は中間画像作成回路13にそれぞれ出力される。このとき第1のフレームF21と第2のフレームF22をそれぞれ2回ずつ出力することで、フレーム周波数を120Hzに高める。(図2では、第1と第2のフレームが交互に出力されているように記載されているが、これは図示及び説明の便宜のためであり、実際は、第1と第2のフレームが同じタイミングで出力されている。)なお、第1のフレームF21は、次ステップの処理のために、画像バッファであるフレームメモリ12に格納される。
【0024】
奇数フィールドが入力された場合も同様の処理が行われる。すなわち、奇数フィールドF3が入力された場合は、ブランクライン挿入による第1のフレームF31と、第1のフレームF21とF31の論理和による第2のフレームF32が生成され、それぞれ遅延回路14と中間画像作成回路13に出力される。
【0025】
なお、奇数フィールド(F1、F3)にブランクラインを挿入することで生成される第1のフレーム(F11、F31)のことを、以下、「奇数フレーム」とも呼ぶ。また、偶数フィールド(F2)にブランクラインを挿入することで生成される第1のフレーム(F21)のことを以下、「偶数フレーム」とも呼ぶ。この場合、第2のフレームは、時間的に連続する奇数フレームと偶数フレームの論理和画像、と呼ぶことができる。
【0026】
中間画像作成回路13は、第2のフレーム(すなわち奇数フレームと偶数フレームの両方の画像)を元にして、ラインフリッカーを低減するための中間画像を生成するための中間画像生成手段である。本実施形態の中間画像作成回路13は、図1Bに示すように、最小値フィルター17および乗算器18からなる。最小値フィルター17は、注目画素と近傍画素の中から最小の画素値を出力するフィルターであり、例えば、3×3や5×5のタップサイズのフィルターを好ましく利用できる。乗算器18は、最小値フィルター17から出力される画像の全画素に対してゲインを乗算することにより、中間画像の明るさを一律に低下させる回路である。
【0027】
図2は、第2のフレームF12、F22、F32に対して5×5の最小値フィルターをかけた後(F13、F23、F33)、ゲイン0.33を乗算することにより得られた中間画像F14、F24、F34の例を示している。最小値フィルターの効果により、中間画像には、奇数フィールドと偶数フィールドに共通する画像部分だけが残っていることが分かる。またゲインをかけたことで、中間画像の輝度が元画像に比べて約1/3に低下している。ゲインの値は0.33に限られないが、少なくとも0.5より小さい値(すなわち、中間画像が元の輝度の1/2よりも暗い画像になるように)に設定する。ゲインが0.5以上であると中間画像が目立ちすぎ、インターレース表示に見えなくなったり、別の妨害感が発生する可能性があるからである。一方、ゲインの値は0.2以上に設定することが好ましい。ゲインが0.2より小さいと中間画像が暗すぎてラインフリッカーの改善効果が十分でないからである。
【0028】
入力画像がカラー画像の場合、中間画像作成回路13の処理は、RGB信号に対して行っても良いし、輝度信号(Y信号)に対して行うこともできる。例えば、RGB各色の信号をそれぞれ最小値フィルターとゲインに通して各色の中間画像を別個に生成する、という方法は、カラーバランスが若干変わる可能性があるものの、簡単な回路で実現できるという利点がある。また、色信号とは別に輝度信号が得られるのであれば、輝度信号に対して最小値フィルターとゲインをかけた後、その変換後の輝度信号と色信号からRGB信号を求めることができる。この方法はカラーバランスが維持されるという利点がある。さらに、各画素のRGB値から求めた代表値(例えば最小値、平均値、所定の計算式を用いて求めた値)に対して最小値フィルターをかけ、代表値の最も小さい画素を採用する、という方法も、カラーバランスが維持されるので好ましい。
【0029】
以上のようにして生成された中間画像F14(F24、F34)は、セレクタ16及び減算回路15に出力される。
【0030】
減算回路(減算手段)15には、遅延回路14でタイミング調整された第1のフレームF11(F21、F31)が、対応する中間画像F14(F24、F34)と同期して、入力される。そして、減算回路15によって、第1のフレームF11(F21、F31)から対応する中間画像F14(F24、F34)を減算することで生成された合成フレームがセレクタ16に出力される。以下、奇数フレーム(F11、F31)から生成される合成フレームを、輝度が調整された奇数フレーム、或いは単に、奇数フレームと呼ぶ。また、偶数フレーム(F21)から生成される合成フレームを、輝度が調整された偶数フレーム、或いは単に、偶数フレームと呼ぶ。
【0031】
セレクタ16は、不図示のタイミング生成回路から入力されるフレームタイミングに従って、出力画像を交互に切り替える出力手段である。図2に示すように、まずは減算回路15で輝度が調整された奇数フレームをメインフレームM1として出力し、次に、中間画像作成回路13で生成された中間画像F14をサブフレームS1として出力する。その後、メインフレームM2として輝度が調整された偶数フレーム、サブフレームS2として中間画像F24、メインフレームM3として輝度が調整された奇数フレーム、サブフレーム
S3として中間画像F34、・・・のように出力される。
【0032】
従来のFPDにおけるインターレース表示は、元フィールドと同じ輝度のフレーム(例えば図2のフレームF11、F21、F31)をフレーム周波数60Hzで出力するものであった。これに対し、本実施形態による疑似インターレース表示では、低輝度のサブフレーム(S1、S2、S3)を間に挟みつつ、元フィールドよりもやや輝度の低い奇数フレーム(M1、M3)と偶数フレーム(M2)が交互に表示される。そのため、同一ラインのフレーム間の輝度変化が従来方法に比べて大きく減少する。よって従来、画素孤立型のFPDで問題となっていた、ラインフリッカーによる縞模様妨害の発生が抑制される。
【0033】
また、奇数フレームと偶数フレームの繰り返しの周期、すなわち疑似的なフィールド周波数は入力画像と同じ60Hzであるが、出力画像自体のフレーム周波数は2倍の120Hzに高められている。したがって、この出力画像をホールド型ディスプレイに表示した場合には、ホールド型に特有の問題である動きボケ(残像感)を低減できるという効果もある。また、この出力画像をインパルス型ディスプレイに表示した場合には、インパルス型に特有の問題である面フリッカー(画面内の明るい部分がちらついて見える現象)を低減できるという効果もある。
【0034】
図3は、各ラインの表示輝度の変化を説明する図である。図3Aと図3Bは、元画像をそのまま60Hzのインターレースで表示した場合を示し、図3C〜図3Fは、本実施形態の疑似インターレース表示の例を示す。
【0035】
図3A及び図3Bにおいて、31は元画像の奇数フィールドF1で光っている奇数ラインの輝度、32は元画像の奇数フィールドF1で光っていない偶数ラインの輝度、33は元画の偶数フィールドF2で光っている偶数ラインの輝度である。なお、光っていないラインの輝度は、黒輝度と呼ばれるもので、LCDにおける光漏れやPDPにおける種火によって、ある程度の輝度が発生しているものである。
図3C〜図3Fにおいて、34はメインフレームM1で光っていない偶数ラインの輝度、35はサブフレームS1で光っている奇数ラインの輝度、36はサブフレームS1で光っている偶数ラインの輝度、37はメインフレームM2で光っている偶数ラインの輝度である。
【0036】
図3Aと図3Bから分かるように、従来の方法では、同一ラインの輝度32、33がフィールド間で大きく変わっている。画像中の明るい部分ほど、この輝度差は大きくなる。これにより、30Hz周期のラインフリッカーが発生し、水平方向の縞模様妨害が現れる。
【0037】
これに対し、本実施形態の方法では、図3C〜図3Fに示すように、同一ラインの輝度は34、36、37のように段階的に変化する。輝度36と37の合計が元画像の輝度33と等しくなるように輝度が配分されており、かつ、輝度36:輝度37=1:2であるとすると、輝度36は輝度33の3分の1、輝度37は輝度33の3分の2である。眼の反応速度の限界のため、120Hzのフレーム周波数の場合は、連続する2つのフレームの画像は目の中で完全に合成される。よって、この場合のフレーム間のラインの輝度差は、輝度34と輝度36の平均値と、輝度36と輝度37の平均値の差になり、従来の方法に比べて3分の1になる。これにより、ラインフリッカーによる縞模様妨害の発生が抑制される。
【0038】
また本実施形態の方法では、元画像のフィールドF1、F2に対応するメインフレームM1、M2の輝度が、サブフレームS1、S2の輝度に比べて十分に大きい(本実施形態では2倍)であるため、CRTのインターレースに近い表示画像が得られる。しかも、補
間処理や推定処理のように画像に依存して精度が変わる処理を一切行っていないため、元画像に忠実な表示が可能である。したがって、マスターモニターのような高信頼が要求される表示装置にも、本実施形態の方法は好ましく適用することができる。
【0039】
(第2実施形態)
上記構成例は、一つの実施形態を示したものであり、本発明の原理および目的を同じくする様々な実施形態があるので、そのうちのいくつかを説明する。
【0040】
図4Aは、本発明の第2実施形態の画像処理装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。フレーム周波数変換回路51と中間画像作成回路52の機能が第1実施形態のものと異なるが、その他のブロックの機能は第1実施形態のものと同じである。図4Bは中間画像作成回路52の詳細を示しており、本実施形態の中間画像作成回路52は、最小値フィルターの代わりに、画像をぼかす処理を行うガウスフィルター53を備えている。
【0041】
図5を参照しながら、各ブロックの動作を説明する。なお入力画像は第1実施形態のもの(図2)と同じである。
入力画像として、奇数フィールドF1a、偶数フィールドF2a、奇数フィールドF3a、・・・が順に入力される。各フィールドは、画質調整回路111において、コントラスト、階調性(ガンマ)、色味などの調整が行われた後、フレーム周波数変換回路51に入力される。
【0042】
フレーム周波数変換回路51は、奇数フィールドF1aのライン間にブランクラインを付加(挿入)することによって奇数フレームを生成し、それを120Hzのフレーム周波数で2回ずつ遅延回路14と中間画像作成回路52に出力する。図5中、F11aが遅延回路14に出力される奇数フレーム、F12aが中間画像作成回路52に出力される奇数フレームを示している。
【0043】
中間画像作成回路52は、奇数フレームF12aをガウスフィルター53に通すことにより、画素値が平滑化された画像F13aを得る。ここでは、係数の合計が1になるようにガウス分布にしたがって係数が設定された、5×5サイズの既知のソフトフィルターを用いている。なお、本実施形態ではガウスフィルターを用いたが、ローパスフィルターや平均値フィルターなど他のソフトフィルター(平滑化フィルター)を用いても同様の効果が得られる。次に、乗算器18が、画像F13aの全画素に対してゲイン(例えば0.33)を乗算することにより、中間画像F14aを作成する。この中間画像F14aは減算回路15とセレクタ16に出力される。
【0044】
減算回路15には、遅延回路14でタイミング調整された奇数フレーム11aが、対応する中間画像F14aと同期して、入力される。そして、減算回路15によって、奇数フレーム11aから中間画像F14aを減算することで輝度が調整された合成フレームがセレクタ16に出力される。
【0045】
偶数フィールドF2aに対しても上記と同様の処理が行われる。すなわち、ブランクライン挿入により偶数フレームF21a、F22aを生成し、中間画像作成回路52にて平滑化(F23a)した後ゲインをかけて中間画像F24aを生成する。そして、偶数フレームF21aから中間画像F24aを減算して、輝度が調整された合成フレームを得る。次の奇数フィールドF3aに対しても同様であり、ブランクライン挿入により奇数フレームF31a、F32aを生成し、中間画像作成回路52にて平滑化(F33a)した後ゲインをかけて中間画像F34aを生成する。そして、奇数フレームF31aから中間画像F34aを減算して、輝度が調整された合成フレームを得る。
【0046】
セレクタ16は、フレームタイミングに従って出力画像を切り替える。図5に示すように、まずは輝度が調整された奇数フレームをメインフレームM1aとして出力し、次に、中間画像F14aをサブフレームS1aとして出力する。その後、メインフレームM2aとして輝度が調整された偶数フレーム、サブフレームS2aとして中間画像F24a、メインフレームM3aとして輝度が調整された奇数フレーム、サブフレームS3aとして中間画像F34a、・・・のように出力される。
【0047】
以上述べた方法によれば、第1実施形態と同様、ラインフリッカーによる縞模様妨害の発生を抑制できると共に、CRTのインターレースに近い、元画像に忠実な表示が可能である。加えて、本実施形態の方法では、明るい物体の上端と下端がちらついて見える妨害感も低減される。また、第1実施形態では時間的に連続する2つのフレームの論理和をとる必要があったのに対し、第2実施形態ではそのような処理が無いので、フレームメモリ12は小容量の帯域が狭いもので良い、という利点もある。
【0048】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態として、第1実施形態で作成した最小値フィルター画像に対して、さらにガウスフィルターをかける構成をあげる。
【0049】
図6は、本発明の第3実施形態の画像処理装置における中間画像作成回路のブロック図である。第3実施形態では、第1実施形態と同じように作成した最小値フィルター画像に対してガウスフィルターをかける構成を用いる。なお、図6の最小値フィルター17は第1実施形態のものと同じであり、ガウスフィルター53は第2実施形態のものと同じである。また、中間画像作成回路以外の構成は、第1実施形態のものと同じであるため、以下図1Aの符号を用いて説明を行う。
【0050】
図7は、第3実施形態の画像処理装置における処理画像の一例である。フレーム周波数変換回路11は、第1実施形態と同様、入力された奇数フィールドF1bから第1のフレームF11b、第2のフレームF12bを生成し、第1のフレームF11bを遅延回路14へ、第2のフレームF12bを中間画像作成回路へ120Hzで出力する。
【0051】
中間画像作成回路では、第2のフレームF12bに対して5×5の最小値フィルター17をかけた後(F13b)、ガウスフィルター53により平滑化し(F14b)、その後乗算器18によりゲイン(例えば0.33)を乗算して、中間画像F15bが生成される。その後の処理は第1実施形態と同様であり、第1のフレームF11bから中間画像F15bを減算した画像をメインフレームM1b、中間画像F15bをサブフレームS1bとする、フレーム周波数120Hzの出力画像がセレクタ16から出力される。なお、途中の処理は省略したが、図7に示すように、偶数フィールドF2bからも同様にメインフレームM2b、サブフレームS2bが生成される。
【0052】
以上の本実施形態の方法によれば、第1実施形態と同様、ラインフリッカーによる縞模様妨害の発生を抑制できると共に、CRTのインターレースに近い、元画像に忠実な表示が可能である。また、第2実施形態と同様、明るい物体の上端と下端がちらついて見える妨害感も低減される。加えて、本実施形態の方法によれば、サブフレームS1b中の画像領域がメインフレームM1b中の画像領域よりも小さくなるため、第2実施形態よりも良好な画質が得られる。また、サブフレームS1bがガウスフィルターによりボケているので、動いている物体を表示する時に若干出来る影が第1実施形態よりも目立ちにくくなる。
【0053】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、奇数フレーム及び偶数フレームから中間画像の輝度を減算した画像
をメインフレームに用いているが、輝度が調整されていない奇数フレーム及び偶数フレームをそのままメインフレームとして用いてもよい。この場合、元画像よりもやや明るい表示となるが、ラインフリッカーの低減と元画像に忠実な表示という目的は達成できる。
なお、人間の眼の感応輝度はフレーム周波数によって異なるため、まったく同じ画像を60Hzと120Hzで表示しても、60Hzの表示画像のほうが120Hzの表示画像に比べて1.08倍程度明るく見える。そのため、メインフレームとサブフレームの合計輝度が元画像の輝度の1.08倍になるような補正を行うと良い。これにより、元画像と同じ明るさに見えるインターレース表示が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
11,51:フレーム周波数変換回路、13,52:中間画像作成回路、15:減算回路、16:セレクタ、18:乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたインターレース映像信号の奇数フィールドのライン間に、画像情報を含まないラインであるブランクラインを挿入することにより奇数フレームを生成すると共に、偶数フィールドのライン間にブランクラインを挿入することにより偶数フレームを生成するフレーム生成手段と、
前記奇数フレームと偶数フレームのいずれかの画像又はその両方の画像を元にして、元の輝度の1/2よりも暗い中間画像を生成する中間画像生成手段と、
前記インターレース映像信号のフィールド周波数の2倍のフレーム周波数で、前記中間画像のフレームを間に挟みながら、奇数フレームと偶数フレームを交互に出力する出力手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記フレーム生成手段により生成された奇数フレーム及び偶数フレームから、前記中間画像を減算する減算手段をさらに有し、
前記出力手段は、前記減算手段により前記中間画像が減算された奇数フレーム及び偶数フレームを出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記中間画像生成手段は、時間的に連続する奇数フレームと偶数フレームの論理和画像に対して最小値フィルターをかけると共に、輝度を1/2より低下させることにより、前記中間画像を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記中間画像生成手段は、奇数フレーム又は偶数フレームに対して平滑化フィルターをかけると共に、輝度を1/2より低下させることにより、前記中間画像を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記中間画像生成手段は、時間的に連続する奇数フレームと偶数フレームの論理和画像に対して最小値フィルターをかけた後に平滑化フィルターをかけると共に、輝度を1/2より低下させることにより、前記中間画像を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像処理装置の制御方法であって、
入力されたインターレース映像信号の奇数フィールドのライン間に、画像情報を含まないラインであるブランクラインを挿入することにより奇数フレームを生成すると共に、偶数フィールドのライン間にブランクラインを挿入することにより偶数フレームを生成するステップと、
前記奇数フレームと偶数フレームのいずれかの画像又はその両方の画像を元にして、元の輝度の1/2よりも暗い中間画像を生成するステップと、
前記インターレース映像信号のフィールド周波数の2倍のフレーム周波数で、前記中間画像のフレームを間に挟みながら、奇数フレームと偶数フレームを交互に出力するステップと、
を有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−95035(P2012−95035A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239727(P2010−239727)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】