説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】画像輝度値の階調解像度を向上させるべく、入力ディジタル信号よりも多いビット数のディジタル信号を生成する場合に、画像全体での輝度分布を正確に維持し得る画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】入力画像信号から、変換前輝度ヒストグラムを生成する変換前輝度ヒストグラム生成部1と、変換前正規化ヒストグラムを生成する変換前正規化ヒストグラム生成部2と、画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する輝度変換部3と、変換した輝度に基づいて変換前正規化ヒストグラムの各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成する正規化補間ヒストグラム生成部4と、正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する修正部5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディジタルビデオテープレコーダ装置(ディジタルVTR)等に用いられる画像処理装置及び画像処理方法であって、詳細には、外部から供給される画像信号をより多い量子化ビット数の画像信号に変換して出力する画像処理装置及び画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ等の映像分野においては、映像の各画素は8ビットのディジタル信号で定義されていたが、その後、画像プロセスの要求等から各画素を10ビットで定義する必要に迫られ、10ビットデータの信号規格も決められている。その一例として、シリアルディジタルインタフェースのSMPTEの259M等がある。
【0003】
このような状況において、異なる信号規格間で信号をやり取りする場合には、8ビット信号を10ビット信号に変換する必要がある。
【0004】
このように、異なるディジタル信号フォーマット間の信号乗り換えのための必要な技術のひとつに、例えば、特許文献1に開示された量子化ビット数変換方法が挙げられる。この特許文献1に開示された量子化ビット数変換方法では、8ビットのディジタル信号から10ビットのディジタル信号へ変換するためには、8ビット画像データにおける注目画素の周辺画素の輝度分布に応じて予め設けたクラスに分類され、クラス分類結果に応じて予め規定された予測係数が決定され、該予測係数を用いて8ビット画像データの注目画素を10ビットに変換するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−186608号公報(1997年7月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の画像処理装置及び画像処理方法では、局所的な輝度情報に基づいて輝度が変換されるため、画像全体での輝度分布が保証されなという問題点を有している。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、画像輝度値の階調解像度を向上させるべく、入力ディジタル信号よりも多いビット数のディジタル信号を生成する場合に、画像全体での輝度分布を正確に維持し得る画像処理装置及び画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像処理装置は、上記課題を解決するために、画像輝度値の階調解像度を向上させる画像処理装置において、入力画像信号から、画像の各画素の輝度をプロットした変換前輝度ヒストグラムを生成する変換前輝度ヒストグラム生成手段と、上記変換前輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換前正規化ヒストグラムを生成する変換前正規化ヒストグラム生成手段と、画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する輝度変換手段と、上記輝度変換手段により変換した輝度に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムにおける各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成する正規化補間ヒストグラム生成手段と、上記正規化補間ヒス
トグラム生成手段にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する修正手段とが設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明の画像処理方法は、上記課題を解決するために、画像輝度値の階調解像度を向上させる画像処理方法において、入力画像信号から、画像の各画素の輝度をプロットした変換前輝度ヒストグラムを生成する変換前輝度ヒストグラム生成工程と、上記変換前輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換前正規化ヒストグラムを生成する変換前正規化ヒストグラム生成工程と、画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する輝度変換工程と、上記輝度変換工程にて変換した輝度に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムにおける各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成する正規化補間ヒストグラム生成工程と、上記正規化補間ヒストグラム生成工程にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する修正工程とを含むことを特徴としている。
【0010】
上記の発明によれば、画像輝度値の階調解像度を向上させる場合には、変換前輝度ヒストグラム生成手段が、入力画像信号から、画像の各画素の輝度をプロットした変換前輝度ヒストグラムを生成する。次いで、変換前正規化ヒストグラム生成手段が、上記変換前輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換前正規化ヒストグラムを生成する。そして、輝度変換手段が、画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する。
【0011】
本発明では、加えて、正規化補間ヒストグラム生成手段が、上記輝度変換手段により変換した輝度に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムにおける各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成すると共に、修正手段が、上記正規化補間ヒストグラム生成手段にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する。
【0012】
したがって、従来の局所的な輝度情報に基づいて補間するのではなく、入力画像全体の変換前正規化ヒストグラムに基づいて画素変換する。この結果、画面全体での輝度分布が保証される。
【0013】
この結果、画像輝度値の階調解像度を向上させるべく、入力ディジタル信号よりも多いビット数のディジタル信号を生成する場合に、画像全体での輝度分布を正確に維持し得る画像処理装置及び画像処理方法を提供することができる。
【0014】
本発明の画像処理装置では、前記修正手段は、上記正規化補間ヒストグラム生成手段にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布に一致するように修正すべく上記輝度変換手段に再輝度変換させることが好ましい。
【0015】
本発明の画像処理方法では、前記修正工程では、上記正規化補間ヒストグラム生成工程にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布に一致するように修正すべく上記輝度変換工程にて再輝度変換させることが好ましい。
【0016】
これにより、入力画像全体の変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するために、修正手段にて、上記正規化補間ヒストグラム生成手段にて
生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布に一致するように修正すべく上記輝度変換手段に再輝度変換させる処理が行われる。
【0017】
したがって、確実に、画像全体での輝度分布を正確に維持し得る画像処理装置及び画像処理方法を提供することができる。
【0018】
本発明の画像処理装置では、前記輝度変換手段は、前記画像における各画素の輝度勾配の大きさに基づいて変換することが可能である。
【0019】
本発明の画像処理方法では、前記輝度変換工程では、前記画像における各画素の輝度勾配の大きさに基づいて変換することが可能である。
【0020】
これにより、変換する場合には、入力画像における各画素の輝度勾配の大きさに基づいて変換する。この結果、平坦な画像における擬似輪郭を抑制することができる。
【0021】
本発明の画像処理装置では、前記輝度変換手段は、前記画像における各変換対応画素と該変換対応画素の周辺画素との算術平均又は中央値により変換することが可能である。
【0022】
本発明の画像処理方法では、前記輝度変換工程では、前記画像における各変換対応画素と該変換対応画素の周辺画素との算術平均又は中央値により変換することが可能である。
【0023】
これにより、各変換対応画素と該変換対応画素の周辺画素との算術平均又は中央値等の従来法を本発明に適用することができる。
【0024】
本発明の画像処理装置では、前記正規化補間ヒストグラム生成手段は、前記輝度変換手段にて変換された各画素の輝度をプロットした変換後輝度ヒストグラムを生成する変換後輝度ヒストグラム生成手段と、上記変換後輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換後正規化ヒストグラムを生成する変換後正規化ヒストグラム生成手段とを備えていると共に、前記修正手段は、前記変換前正規化ヒストグラムと上記変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて修正することが好ましい。
【0025】
本発明の画像処理方法では、前記正規化補間ヒストグラム生成工程では、前記輝度変換工程にて変換された各画素の輝度をプロットした変換後輝度ヒストグラムを生成する変換後輝度ヒストグラム生成工程と、上記変換後輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換後正規化ヒストグラムを生成する変換後正規化ヒストグラム生成工程とを含むと共に、前記修正工程では、前記変換前正規化ヒストグラムと上記変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて修正することが好ましい。
【0026】
これにより、正規化補間ヒストグラム生成手段は、まず、変換後輝度ヒストグラム生成手段にて、輝度変換手段にて変換された各画素の輝度をプロットした変換後輝度ヒストグラムを生成する。次いで、変換後正規化ヒストグラム生成手段が、変換後輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換後正規化ヒストグラムを生成する。そして、修正手段が、前記変換前正規化ヒストグラムと上記変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて修正する。
【0027】
したがって、正規化補間ヒストグラム生成手段にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布に一致するように修正すべく上記輝度変換手段に再輝度変換させる場合に、具体的な一致方法を提供することが可能となる。
【0028】
本発明の画像処理装置では、前記修正手段は、前記変換前正規化ヒストグラムと前記変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布と上記変換後正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布との差が一定値以下になるまで輝度変換手段に繰り返して輝度変換させることが好ましい。
【0029】
本発明の画像処理方法では、前記修正工程では、前記変換前正規化ヒストグラムと前記変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布と上記変換後正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布との差が一定値以下になるまで輝度変換工程にて繰り返して輝度変換させることが好ましい。
【0030】
これにより、正規化補間ヒストグラム生成手段にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布に一致するように修正すべく上記輝度変換手段に再輝度変換させる場合に、確実に、具体的な一致方法を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の画像処理装置は、以上のように、入力画像信号から、画像の各画素の輝度をプロットした変換前輝度ヒストグラムを生成する変換前輝度ヒストグラム生成手段と、上記変換前輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換前正規化ヒストグラムを生成する変換前正規化ヒストグラム生成手段と、画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する輝度変換手段と、上記輝度変換手段により変換した輝度に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムにおける各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成する正規化補間ヒストグラム生成手段と、上記正規化補間ヒストグラム生成手段にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する修正手段とが設けられているものである。
【0032】
本発明の画像処理方法は、以上のように、入力画像信号から、画像の各画素の輝度をプロットした変換前輝度ヒストグラムを生成する変換前輝度ヒストグラム生成工程と、上記変換前輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換前正規化ヒストグラムを生成する変換前正規化ヒストグラム生成工程と、画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する輝度変換工程と、上記輝度変換工程にて変換した輝度に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムにおける各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成する正規化補間ヒストグラム生成工程と、上記正規化補間ヒストグラム生成工程にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する修正工程とを含む方法である。
【0033】
それゆえ、画像輝度値の階調解像度を向上させるべく、入力ディジタル信号よりも多いビット数のディジタル信号を生成する場合に、画像全体での輝度分布を正確に維持し得る画像処理装置及び画像処理方法を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明における画像処理装置の実施の一形態を示すものであって、画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】上記画像処理装置において階調解像度が向上処理される前の入力画像を示す平面図である。
【図3】上記画像処理装置の変換前輝度ヒストグラム生成部にて生成された変換前輝度ヒストグラムを示すグラフである。
【図4】上記画像処理装置の変換前正規化ヒストグラム生成部にて生成された変換前正規化ヒストグラムを示すグラフである。
【図5】上記画像処理装置の正規化補間ヒストグラム生成部にて生成された正規化補間ヒストグラムを示すグラフである。
【図6】上記画像処理装置において階調解像度が向上処理された後の出力画像を示す平面図である。
【図7】(a)は図2に示す各変換対応画素A及びその周辺画素の輝度を示す図であり、(b)は輝度勾配を示す図である。
【図8】(a)は図2に示す各変換対応画素B及びその周辺画素の輝度を示す図であり、(b)は輝度勾配を示す図であり、(c)は変換対応画素Bを輝度変換した図であり、(d)は変換対応画素Bを輝度変換したことによって輝度「4」の発生頻度の一部が、輝度「5」の発生頻度に遷移したことを示すグラフである。
【図9】上記画像処理装置における正規化補間ヒストグラム生成部の補間方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一実施形態について図1〜図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0036】
図1は、本実施の形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0037】
本実施の形態の画像処理装置10は、図1に示すように、入力画像信号から、画像の各画素の輝度をプロットした変換前輝度ヒストグラムを生成する変換前輝度ヒストグラム生成手段としての変換前輝度ヒストグラム生成部1と、変換前輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換前正規化ヒストグラムを生成する変換前正規化ヒストグラム生成手段としての変換前正規化ヒストグラム生成部2と、画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する輝度変換手段ととしての輝度変換部3と、輝度変換部3により変換した輝度に基づいて、変換前正規化ヒストグラムにおける各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成する正規化補間ヒストグラム生成手段としての正規化補間ヒストグラム生成部4と、正規化補間ヒストグラム生成部4にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する修正手段としての修正部5とを備えている。
【0038】
上記構成の画像処理装置10における画像処理方法について、以下に説明する。
【0039】
例えば、図2に示すように、入力画像として8ビットのディジタル信号、つまり256階調で定義された入力画像の入力画像信号が画像処理装置10に入力されたとする。尚、この入力画像は、例えば、横1000画素×縦400画素、合計400000画素からなっているとする。
【0040】
本実施の形態の画像処理装置10は、この256階調で定義された入力画像信号を、10ビットのディジタル信号、つまり1024階調で定義された出力画像信号に変換するものである。
【0041】
まず、本実施の形態では、変換前輝度ヒストグラム生成部1は、図3に示すように、画像から各画素の輝度値の総数をプロットした変換前輝度ヒストグラムを生成する。次いで、変換前正規化ヒストグラム生成部2が、図4に示すように、上記の変換前輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換前正規化ヒストグラム
を生成する。すなわち、図4においては、横軸は輝度値が昇順にプロットされていると共に、縦軸は、各輝度値の発生頻度の割合がプロットされている。例えば、合計400000画素のうち、例えば輝度「100」の頻度が、80000個(=80000画素)である場合には、発生頻度割合は、0.2となる。このように、本実施の形態では、縦軸を発生頻度の割合にてプロットしている点で、正規化と称している。尚、順列の並べ方として、本実施の形態では、昇順となっているが、必ずしもこれに限らず、降順でもよく、順に連続して並んでいればよい。
【0042】
次いで、輝度変換部3が、画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する。この変換方法については、後述する。
【0043】
次いで、図5に示すように、正規化補間ヒストグラム生成部4が、輝度変換部3により変換した輝度に基づいて、変換前正規化ヒストグラムにおける各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成すると共に、図5においては、実線の縦棒が補間された発生頻度割合を示している。そして、修正部5が、正規化補間ヒストグラム生成部4にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する。この結果、修正部5にて、生起確率分布が維持されたと判断された場合には、図6に示すように、1024階調で定義された各画素の輝度に基づく出力画像が出力されるようになっている。
【0044】
したがって、従来の局所的な輝度情報に基づいて補間するのではなく、入力画像全体の変換前正規化ヒストグラムに基づいて画素変換する。この結果、画面全体での輝度分布が保証される。
【0045】
ここで、上記輝度変換部3における変換方法について説明する。
【0046】
本実施の形態の輝度変換部3における具体的な変換方法としては、従来法である例えば、画像における各変換対応画素と該変換対応画素の周辺画素との算術平均又は中央値により変換する方法がある。これにより、各変換対応画素と該変換対応画素の周辺画素との算術平均又は中央値等の従来法を本実施の形態に適用することができる。
【0047】
また、本実施の形態では、上記の従来法の適用に際して、入力された画像における各画素の輝度勾配の大きさに基づいて変換することが好ましい。この場合、以下の原則に基づき変換することが望ましい。
(1)勾配強度が高い画素は変更してよい。
(2)勾配強度が低い画素はなるべくそのままがよい。
【0048】
この原則を適用するのが望ましい理由として、各勾配強度が高い画素はエッジの中心にある等、その輝度値が変わり易い又は変わってもよいと考えられる不安定な画素である。一方、勾配強度が低い画素は画像内でも平坦部にあると考えられ、周囲の画素値との関係から見ても安定しているその値を率先して変えるべきではないと考えられるからである。
【0049】
この輝度勾配の大きさに基づいて変換する場合には、まず、変換前輝度ヒストグラムの各発生頻度割合において勾配値を基にソートする。次いで、任意の画素値において、輝度値及び勾配値の大きさの順列を基に輝度値を割り振る。
【0050】
ここで、変換方法について、図7(a)(b)、図8(a)〜(d)及び図9に基づいて具体的に説明する。図7(a)は、図2に示す各変換対応画素A及びその周辺画素の輝度を示す図であり、図7(b)は輝度勾配を示す図である。また、図8(a)は図2に示
す各変換対応画素B及びその周辺画素の輝度を示す図であり、図8(b)は輝度勾配を示す図であり、図8(c)は変換対応画素Bを輝度変換した図であり、図8(d)は変換対応画素Bを輝度変換したことによって輝度「4」の発生頻度の一部が、輝度「5」の発生頻度に遷移したことを示すグラフである。さらに、図9は、画像処理装置10における正規化補間ヒストグラム生成部4の補間方法を説明するためのグラフである。
【0051】
尚、この説明では、理解し易いように、8階調にて表示した画像を16階調の画像に階調解像度を向上させる場合について説明する。すなわち、3ビットのディジタル信号を4ビットのディジタル信号に変換することを考えている。
【0052】
例えば、図7(a)に示すように、前記図2に示す変換対応画素Aの輝度が「4」であり、その周辺画素の輝度も「4」である場合には、図7(b)に示すように、勾配が小さいので変換しない。
【0053】
一方、例えば、図8(a)に示すように、前記図2に示す変換対応画素Bの輝度が「4」であり、その左側の周辺画素の輝度が「10」であり、かつその右側の周辺画素の輝度が「0」である場合には、図8(b)に示すように、勾配が大きいので変換する。尚、変換するか否かについては、実際には、勾配の大きさの閾値を設定すればよい。
【0054】
変換対応画素Bの輝度を変換する場合、例えば、図8(a)に示す変換対応画素B及びその周辺画素を含む9画素の平均値は、42÷9=4.76≒5となるので、図8(c)に示すように、輝度「5」に変換する。この結果、変換後の輝度ヒストグラムは、図8(d)に示すように、輝度「4」の発生頻度が1つ減少し、輝度「5」の発生頻度が1つ増加する。
【0055】
この変換を画面全体の画素について行う。すなわち、例えば図9に示すように、任意の画素値において、輝度値及び勾配値の順列に基づいて、輝度値「4」及び輝度値「6」を輝度値「5」に割当て、輝度値「6」及び輝度値「8」を輝度値「7」に割り当てる。
【0056】
ここで、本実施の形態では、上述のように割り当てるだけにとどまらず、修正部5が、変換前正規化ヒストグラムの形状である生起確率分布を維持するように、輝度値「5」及び輝度値「7」に割り当てる画素数を制限する。
【0057】
具体的には、本実施の形態では、修正部5は、正規化補間ヒストグラム生成部4にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する。
【0058】
詳細には、修正部5は、正規化補間ヒストグラム生成部4にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布に一致するように修正すべく輝度変換部3に再輝度変換させる。
【0059】
本実施の形態の画像処理装置10では、正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布に一致していることを判断するための構成として、以下の構成を備えている。
【0060】
すなわち、本実施の形態の画像処理装置10は、図1に示すように、正規化補間ヒストグラム生成部4の具体的構成として、輝度変換部3にて変換された各画素の輝度をプロットした変換後輝度ヒストグラムを生成する変換後輝度ヒストグラム生成手段としての変換後輝度ヒストグラム生成部11と、変換後輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の
発生頻度割合をプロットした変換後正規化ヒストグラムを生成する変換後正規化ヒストグラム生成手段としての変換後輝度ヒストグラム生成部11とを備えている。また、修正部5は、変換前正規化ヒストグラムと変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて修正する。
【0061】
そして、修正部5は、具体的には、変換前正規化ヒストグラムと変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布と変換後正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布との差が一定値以下になるまで輝度変換部3に繰り返して輝度変換させる。
【0062】
すなわち、生起確率分布との差が一定値以下になれば、修正部5により出力画像信号を出力する一方、生起確率分布との差が一定値以下にならなければ、輝度変換部3に再変換を行わせ、変換後輝度ヒストグラム生成部11にて変換後輝度ヒストグラムを生成し、変換後正規化ヒストグラム生成部12にて変換後正規化ヒストグラムを生成し、修正部5にて、生起確率分布との差が一定値以下になったか否かを判断する。これを生起確率分布との差が一定値以下になるまで繰り返す。
【0063】
これにより、変換前正規化ヒストグラムの形状である生起確率分布を維持するように変換することが可能となる。
【0064】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、外部から供給される画像信号をより多い量子化ビット数の画像信号に変換して出力する、例えばディジタルビデオテープレコーダ装置(ディジタルVTR)等に用いられる画像処理装置及び画像処理方法に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 変換前輝度ヒストグラム生成部(前輝度ヒストグラム生成手段)
2 変換前正規化ヒストグラム生成部(変換前正規化ヒストグラム生成手段)
3 輝度変換部(輝度変換手段)
4 正規化補間ヒストグラム生成部(正規化補間ヒストグラム生成手段)
5 修正部(修正手段)
10 画像処理装置
11 変換後輝度ヒストグラム生成部(変換後輝度ヒストグラム生成手段)
12 変換後正規化ヒストグラム生成部(変換後正規化ヒストグラム生成手段)
A 変換対応画素
B 変換対応画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像輝度値の階調解像度を向上させる画像処理装置において、
入力画像信号から、画像の各画素の輝度をプロットした変換前輝度ヒストグラムを生成する変換前輝度ヒストグラム生成手段と、
上記変換前輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換前正規化ヒストグラムを生成する変換前正規化ヒストグラム生成手段と、
画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する輝度変換手段と、
上記輝度変換手段により変換した輝度に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムにおける各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成する正規化補間ヒストグラム生成手段と、
上記正規化補間ヒストグラム生成手段にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する修正手段とが設けられていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記修正手段は、
上記正規化補間ヒストグラム生成手段にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布に一致するように修正すべく上記輝度変換手段に再輝度変換させることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記輝度変換手段は、
前記画像における各画素の輝度勾配の大きさに基づいて変換することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記輝度変換手段は、
前記画像における各変換対応画素と該変換対応画素の周辺画素との算術平均又は中央値により変換することを特徴とする請求項1,2又は3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記正規化補間ヒストグラム生成手段は、
前記輝度変換手段にて変換された各画素の輝度をプロットした変換後輝度ヒストグラムを生成する変換後輝度ヒストグラム生成手段と、
上記変換後輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換後正規化ヒストグラムを生成する変換後正規化ヒストグラム生成手段とを備えていると共に、
前記修正手段は、
前記変換前正規化ヒストグラムと上記変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて修正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記修正手段は、
前記変換前正規化ヒストグラムと前記変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布と上記変換後正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布との差が一定値以下になるまで輝度変換手段に繰り返して輝度変換させることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像輝度値の階調解像度を向上させる画像処理方法において、
入力画像信号から、画像の各画素の輝度をプロットした変換前輝度ヒストグラムを生成する変換前輝度ヒストグラム生成工程と、
上記変換前輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換前正規化ヒストグラムを生成する変換前正規化ヒストグラム生成工程と、
画像の各画素の輝度を階調解像度が向上するように変換する輝度変換工程と、
上記輝度変換工程にて変換した輝度に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムにおける各輝度間の発生頻度割合を補間した正規化補間ヒストグラムを生成する正規化補間ヒストグラム生成工程と、
上記正規化補間ヒストグラム生成工程にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布を維持するように修正する修正工程とを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
前記修正工程では、
上記正規化補間ヒストグラム生成工程にて生成された正規化補間ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布が、変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布に一致するように修正すべく上記輝度変換工程にて再輝度変換させることを特徴とする請求項7記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記輝度変換工程では、
前記画像における各画素の輝度勾配の大きさに基づいて変換することを特徴とする請求項7又は8記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記輝度変換工程では、
前記画像における各変換対応画素と該変換対応画素の周辺画素との算術平均又は中央値により変換することを特徴とする請求項7,8又は9記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記正規化補間ヒストグラム生成工程では、
前記輝度変換工程にて変換された各画素の輝度をプロットした変換後輝度ヒストグラムを生成する変換後輝度ヒストグラム生成工程と、
上記変換後輝度ヒストグラムから、順列に並んだ輝度毎の発生頻度割合をプロットした変換後正規化ヒストグラムを生成する変換後正規化ヒストグラム生成工程とを含むと共に、
前記修正工程では、
前記変換前正規化ヒストグラムと上記変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて修正することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記修正工程では、
前記変換前正規化ヒストグラムと前記変換後正規化ヒストグラムとの比較結果に基づいて、上記変換前正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布と上記変換後正規化ヒストグラムの発生頻度割合から得られる生起確率分布との差が一定値以下になるまで輝度変換工程にて繰り返して輝度変換させることを特徴とする請求項11記載の画像処理方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−119928(P2011−119928A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274783(P2009−274783)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】