説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】YCbCr色空間の画像データに対して色飛び補正を行う際に、4:2:2フォーマット等、輝度データと色差データがN:1(N>1)の形式である場合には、sRGB色空間への変換後に色飛びを生じてしまう。
【解決手段】データ入力部201で、YCbCr4:2:2データの2画素分を入力し、クリップ演算部203,204で各画素のCbCrデータをYデータに応じて補正する。該補正は、画素値がYCbCr色空間においてsRGB色空間の対応色域の外にある場合に、CbCrデータをY軸への垂線方向へ、該色域境界に達するまで移動させることで行う。そしてYデータ比較部202で、入力された2画素のうち大きい方のYデータを有する画素を選択し、Cデータ選択部205では該選択された画素の補正後CbCrデータを選択する。そしてデータ出力部206で、該選択された補正後CbCrデータと、入力されたままのYデータからなる4:2:2形式の2画素分のデータを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色空間変換処理を想定した画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、表示装置に画像を表示する場合には、画像データはRGB色空間で表現された画像データが用いられる。一方、JPEGやMPEG等、画像の圧縮伸長や各種画像処理を施す場合には、YCbCr色空間で表現された画像データが用いられる。このように、画像データを表現する色空間がその用途によって異なることから、複数の色空間の間で画像データを変換する必要があり、そのための様々な技術が知られている。
【0003】
しかしながら、各々の色空間においては表現できる領域(色域)に差があるため、ある画像データを色空間変換した場合に、変換後の画像データが変換後色空間の色域外にはみ出てしまう場合があった。このように色域外となった画像データをそのまま処理してしまうと、いわゆる色飛びが発生する。
【0004】
色飛びを防止するための色飛び補正処理として、クリップ処理が知られている。例えば、RGB各成分の値が0.0〜1.0の範囲で表わされるsRGB色空間データに対し、R,G,Bの各値が0.0〜1.0の範囲にあるか否かを調べ、0.0未満なら0.0に、1.0より大きい場合は1.0に置き換える方法がある。(例えば、特許文献1参照)。また、YCbCr画像データにおいて、変換後の0.0≦R,G,B≦1.0を保証するような補正係数α(0≦α≦1.0)を用いて、Cb,Cr値に対してはCb'=α×Cb,Cr'=α×Crとし、Yデータはそのままとする方法がある。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−232904号公報
【特許文献2】特開2005−252393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1に係る技術では、クリップ後にRGB比率が変動してしまうため、色味が変わり、違和感のある画像となってしまうという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に係る技術では、元の画像データの輝度(Y)データと色差(CbCr)データの比率が1:1である場合についての色飛び補正処理が示されている。したがって、一般に用いられているYCbCr4:2:2データ等、データ比率がN:1(N>1)である場合の処理は想定されておらず、このような形式のYCbCrデータに対しては、RGB変換後に色飛びの発生を抑制できないという問題があった。
【0008】
ここで、輝度データと色差データの比率がN:1とは、輝度データにおいては1画素を1データで表すのに対して、色差データではN画素を共通する一組の色差データで表すことを意味する。例えば、いわゆるYCbCrの4:2:2データという場合は、輝度(Y)データは1画素を1データで表すが、CbCr(色差)データは、2画素に対してCb及びCrの一組のデータで表す。この場合、輝度データと色差データの比率は2:1となる。
【0009】
本発明は上述した問題を解決するために、以下の機能を有する画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。すなわち、第1の色空間で表現された画像データにおける輝度データと色差データの比率に関わらず、該画像データを第2の色空間に変換しても色味の変動が発生しないような色飛び補正を行う。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の画像処理装置は以下の構成を備える。
【0011】
すなわち、輝度軸と色差軸からなる第1の色空間で表現され、N(N>1)画素分の輝度データと、該N画素に共通する色差データからなる画素パックが連続する形式の画像データを、該画素パック単位で入力する入力手段と、該入力された前記画素パックを構成するN画素のうち、最も大きい輝度データを有する画素について、その画素値が第2の色空間の再現色域の外にある場合に、該画素の色差データを前記輝度軸へ向けて、該再現色域の境界に達するまで移動させた補正色差データを算出する補正手段と、前記補正色差データを前記画素パックの色差データに置き換えて出力する出力手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の色空間で表現された画像データにおける輝度データと色差データの比率に関わらず、該画像データを第2の色空間に変換しても色味の変動が発生しないような色飛び補正を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る一実施形態における装置全体の構成を示すブロック図、
【図2】第1実施形態におけるクリップ処理部の詳細構成を示すブロック図、
【図3】第1実施形態における装置全体の動作を示すフローチャート、
【図4】第1実施形態におけるクリップ処理を示すフローチャート、
【図5】第1実施形態における補正処理を説明する図、
【図6】第2実施形態におけるクリップ処理部の詳細構成を示すブロック図、
【図7】第2実施形態におけるクリップ処理を示すフローチャート、
【図8】第3実施形態における装置全体の構成を示すブロック図、
【図9】第3実施形態における装置全体の動作を示すフローチャート、である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて詳細に説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0015】
<第1実施形態>
本実施形態では、輝度軸と色差軸からなる第1の色空間(YCbCr)で表現され、N(N>1)画素分の輝度データと、該N画素に共通する色差データからなる画素パックが連続する形式の画像データを処理対象とする。すなわち、該形式による第1の色空間(YCbCr)の画像データを第2の色空間(sRGB)へ変換した際に色飛びが発生しないように、第1の色空間上において色飛び補正を行うことを特徴とする。
【0016】
●装置構成
図1に、本実施形態における画像処理装置全体の構成を示す。図1において、101はレンズなどの光学系を含み、画像データを生成する画像データ生成部、102は画像データ生成部101にて生成した画像データを入力する画像データ入力部である。103は入力した画像データの色飛び補正処理(クリップ処理)を行うクリップ処理部である。104は画像データに対して、圧縮或いは伸張処理や、解像度変換処理等の各種画像処理を行う画像処理部である。105は最終的に生成された画像データをネットワークを通して外部機器へ出力するための通信部である。106は処理プログラムを実行し、装置全体を制御するCPU、107は処理プログラムのワーク領域として機能するRAM、108は処理プログラムを記憶しておくROMである。
【0017】
図2に、クリップ処理部103の詳細構成を示す。図2において、201はYCbCr色空間で表現された4:2:2形式の画像データを入力する画像データ入力部である。202は画像データにおける輝度データを比較するYデータ比較部、203及び204はCbCrの色差データ(2画素分)に対して、画素ごとの色飛び補正処理(クリップ処理)を施すクリップ演算部、である。205はYデータ比較部202における輝度データ比較結果に応じて色差データを選択するCデータ選択部である。206は選択された色差データと輝度データを合成して出力する画像データ出力部である。
【0018】
●クリップ処理
以下、本実施形態におけるクリップ処理について詳細に説明する。以下、本実施形態において処理対象とする画像データはYCbCr色空間で表されており、データフォーマット形式は4:2:2、各データは8ビット/画素であるとする。すなわち、全32ビットで2画素の画素パックを構成する。
【0019】
まず、図1及び図3を用いて、装置全体の動作を説明する。画像データ生成部101において、レンズ等の光学系を介して画像データが生成されると(S301)、該画像データは画像入力部102に転送される。画像入力部102では、撮影されたRAW形式の画像データに対し、一般形式のデジタルデータへの変換処理(いわゆる現像処理)等を実施した後、一旦RAM107に記憶される(S302)。そして、該記憶された画像データはクリップ処理部103に転送され、クリップ処理が施される(S303)。クリップ処理後の画像データは画像処理部104へ転送され、JPEGやMPEG、H.264等の画像圧縮処理や、解像度変換処理といった各種画像処理が施される(S304)。画像処理後のデータは通信部105へ転送され、通信出力に必要なパケット化や暗号処理等を施して通信データを生成した後、有線通信I/F或いは無線通信I/Fを介して、ネットワーク上へ送信される(S305)。上記処理は、全画像データに対して完了するまで繰り返し実行される(S306)。ネットワーク上へ送信された通信データは、不図示の受信装置にて受信され、復号処理や画像伸張処理等が施された後、例えば表示機器にて表示される。
【0020】
次に、図2及び図4を用いて、クリップ処理部103における処理について詳細に説明する。ここでは、クリップ処理部103を図2に示す構成で実現する例を示すが、プログラムを実行するコンピュータによりクリップ処理を実現することもできる。そのような形態では、図4に示すフローチャートは、コンピュータによりクリップ処理を実現するためのプログラムを示すことになる。
【0021】
画像入力部102から入力された画像データがRAM107に記憶されているとする。CPU106はRAM107から該画像データを読み出し、クリップ処理部103内のデータ入力部201に転送する。クリップ処理部103では、S401にて画像データの入力が開始されるとS402へすすみ、画像データにおける画素パックの単位である2画素分のデータが入力されたか否かを判定する。ここで、本実施形態では画像データをYCbCr4:2:2の形式として想定しているため、2画素分のデータとは、Yデータ8ビット×2、Cbデータ8ビット、Crデータ8ビットで表される。すなわち、図2にも示すように2画素分のデータはY[15:0]、C[15:0]で示され、これらを8ビット単位で表すと、Y[15:8]、Y[7:0]、C[15:8]、C[7:0]で示される。すなわち、S402で入力が判定される2画素分のデータとは、CbCrデータを共通として画素パックを構成する2画素である。
【0022】
画素パック単位である2画素分のデータが入力されるとS403へすすみ、一旦4:2:2形式のデータを4:4:4形式に変換する。この変換は、実質的にCbCrデータを単純にコピーして補間することによって行われる。具体的には、入力された4:2:2形式の2画素分データY[15:0]、C[15:0]を、Y[7:0]とC[15:0]、およびY[15:8]とC[15:0]の組に分割することで、それぞれの組が1画素を示すの4:4:4形式のデータとなる。
【0023】
次にS404へすすみ、分割された各画素に対して、クリップ演算部203,204にてクリップ演算処理を行う。クリップ演算部203ではY[7:0]に対応する第1の画素に対する処理が行われ、クリップ演算部204ではY[15:8]に対応する第2の画素に対する処理が行われる。すなわち、クリップ演算部203,204におけるクリップ演算処理は2画素に共通するCbCrデータ(C[15:0])に対して行われるが、該処理時に参照されるYデータ値が異なる。
【0024】
ここで、クリップ演算部203,204におけるクリップ演算処理について詳細に説明する。図5は、クリップ演算による補正処理を説明する図である。図5はYCbCr色空間を示しており、310の斜線部は、0.0≦R,G,B≦1.0の範囲に相当する、YCbCrの領域の一部を表している。すなわち、領域310はsRGB色空間において再現可能となる色域に対応しているため、以下では再現色域と称する。また301は、再現色域310の外にある入力画素値を示している。本実施形態のクリップ処理では、このような再現色域外にある画素値を、再現色域内、すなわち0.0≦R,G,B≦1.0の範囲に収まるように変更する。詳細には、入力画素値301を、その位置からY軸に対する垂線方向へ移動させ、再現色域310と交差した点の画素値302を求める。そして、入力画素値301を画素値302に置き換える。これは即ち、Cb,Crをそれぞれα倍(0≦α≦1.0)して、再現色域310の境界上の画素値302を算出することを意味する。
【0025】
ここで、入力画素値301を(y,cb,cr)、補正後の画素値302を(y',cb',cr')と表現すると、以下の式(1)が成り立つ。
【0026】
y'=y
cb'=α×Cb ・・・(1)
cr'=α×Cr
ただし、0≦α≦1.0
式(1)においてαは補正係数である。式(1)の変換を行うためには、画素値302(y',cb',cr')をsRGB色空間に変換した際に、0.0≦R,G,B≦1.0を保証するような補正係数αを求めれば良い。これは、上記特許文献2に開示されている方法を適用することが可能である。すなわち、以下の式(2)に示される各成分の補正係数αr0,αr1,αg0,αg1,αb0,αb1から、0.0未満、或いは1.0より大きいものを除外し、残った中から最大のものを選択する。
【0027】
αr0=-y/Δr
αr1=(1.0-y)/Δr
αg0=-y/Δg
αg1=(1.0-y)/Δg ・・・(2)
αb0=-y/Δb
αb1=(1.0-y)/Δb
式(2)におけるΔr,Δg,Δbは、YCbCr色空間からsRGB色空間への変換式である以下の式(3)から導出すると、以下の式(4)で示される。
【0028】
r=y+K1×Cr
g=y+K2×Cb+K3×Cr ・・・(3)
b=y+K4×Cb
ただし、K1、K2、K3、K4は定数
Δr=r-y=(y+K1×Cr)-y=K1×Cr
Δg=g-y=(y+K2×Cb+K3×Cr)-y=K2×Cb+K3×Cr ・・・(4)
Δb=b-y=(y+K4×Cb)-y=K4×Cb
クリップ演算部203,204では上述したように、Y値が異なる2画素各々のCbCrデータに対して、補正後のCbCrデータを算出する。クリップ演算部203,204のそれぞれにおけるクリップ演算結果である補正色差データC1[15:0],C2[15:0]は、Cデータ選択部205に転送される。
【0029】
一方、YデータはYデータ比較部202へ転送され、S405にて2画素分のYデータ(Y[15:8],Y[7:0])の比較が行われる。該比較結果はCデータ選択部205へ転送される。なお、Yデータ比較部202へ入力された2画素分のYデータ(Y[15:0])は、そのままデータ出力部206へ転送される。
【0030】
そしてS406にて、Cデータ選択部205はYデータの比較結果に応じて、2画素各々のC1[15:0]及びC2[15:0]のうちのいずれかを選択し、該選択された補正色差データC3[15:0]をデータ出力部206へ転送する。具体的には、Yデータの大きい方の画素についてのCデータを選択する。これは、図5からも分かるように、共通のCbCrデータを有し、Yデータが異なる2画素においては、Yデータの値が大きい方の画素に対するαの方が、Yデータの値が小さい方の画素に対するαよりも小さくなるためである。すなわち、Yデータの値が大きい方の画素に対するαを、Yデータの値が小さい方の画素に適用して色空間変換を行えば、変換後データは必ずsRGB色再現範囲内に収まることを意味している。ここで、2画素のいずれかのCデータが選択され、該選択されたCデータを2画素に共通とすることにより、一旦4:4:4形式に変換されたYCbCrデータが、実質的に4:2:2形式に戻される。
【0031】
次にS407でデータ出力部206において、2画素分のYデータ(Y[15:0])に対してCデータ選択部205で選択されたCデータ(C3[15,0])を共通とした画素パック(Y[15:0],C[15,0])を生成し、RAM107へ転送する。そしてS408では、全画素に対する処理が完了したか否かを判定し、完了していなければS402へ戻り、再度処理を繰り返す。
【0032】
以上説明したように本実施形態によれば、YCbCrデータにおける輝度データと色差データの比率がN:1(N>1、本実施形態の例ではN=2)の場合であっても、sRGB色空間の色再現範囲内への適切なクリッピングを施すことができる。したがって、クリッピング後のYCbCrデータがsRGBデータに変換・表示された場合でも、色味が変わらず違和感の無い表示が得られる。
【0033】
尚、図3におけるS303のクリップ処理及びS304の各種画像処理は、処理の前後でデータ形式が不変であれば、処理順序を入れ替えても良い。また本実施形態では、YCbCr色空間でのデータ形式を4:2:2として説明したが、これを例えば4:2:0などの他の形式とすることも可能である。例えば4:2:0の場合は、Yデータ4画素に対してCbCrデータを一組で表現する形式であるから、4画素のYデータのうち最も大きい値のYデータに対するクリップ処理を行うことで、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
なお本実施形態では、YCbCr色空間からsRGB色空間への変換を想定して説明したが、本発明はこの色空間の組み合わせに限らない。sRGB色空間等の直交座標系からなる色空間と、該色空間からの線形変換を可能とする、輝度成分を含む色空間の組み合わせであれば、本実施形態と同様に適用可能であり、例えばYCbCr色空間に代えてYuv色空間を用いることも可能である。
【0035】
また本実施形態では、sRGB色空間への変換を想定し、再現色域を各RGB値が0.0〜1.0の範囲として説明したが、この範囲は必要に応じて適宜変更可能である。例えば、あるデバイスが再現可能なRGB値への変換を想定し、-0.2≦R,G,B≦0.5といった範囲に収める場合にも本発明は適用可能である。
【0036】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態においては、2画素に対するαを演算し、各々の画素を並列処理して補正Cデータを作成した後に、Yデータの比較結果に応じてCデータを選択する例を示した。第2実施形態においては、各画素に対する補正Cデータを作成する前に、Yデータの比較結果に応じて画素を選択し、該選択画素に対してのみ補正Cデータを作成する例を示す。
【0037】
以下、第2実施形態におけるクリップ処理について、特に第1実施形態と異なる点についてのみ、説明する。
【0038】
図6に、第2実施形態におけるクリップ処理部103の詳細構成を示す。同図によれば、上述した第1実施形態の図2に示す構成に対し、Yデータ比較部202の比較結果に応じて、複数画素のYデータから後段へ出力する画素のYデータを選択するYデータ選択部601を新たに備える。そして、該選択されたYデータによるクリップ演算を、クリップ演算部203の1つにおいて行うことを特徴とする。
【0039】
次に、第2実施形態におけるクリップ処理について図7のフローチャートを用いて説明する。なお、第2実施形態における処理対象の画像データも、YCbCr4:2:2、8ビット/画素であるとする。
【0040】
S701にて画像データの入力が開始されると、S702で画素パック分(2画素分)のデータが入力されたか否かを判定する。ここで、画像データがYCbCr4:2:2の形式であるため、2画素分のデータとは、Y[15:8]、Y[7:0]、C[15:0]で示される。
【0041】
2画素分のデータが入力されるとS703へすすみ、Yデータ比較部202にて入力された2画素分のYデータ(Y[15:8],Y[7:0])の比較が行われる。該比較結果はYデータ選択部601へ転送され、S704にて大きい方のYデータを選択し、8ビットのY1データとしてクリップ演算部203へ出力する。次にS705でクリップ演算部203において、Yデータ選択部601で選択されたYデータと、データ入力部201より転送されたCデータに対してクリップ処理による色飛び補正を施し、該補正後のCデータをデータ出力部206へ出力する。そしてS706でデータ出力部206にて、2画素分のYデータ及び補正後のCデータより2画素の画素パックを構成してRAM107へ転送する。そしてS707で全画素に対する処理が完了したか否かを判定し、完了していなければS702へ戻り、再度処理を繰り返す。
【0042】
以上説明したように第2実施形態によれば、クリップ処理部を複数備えなくても、上述した第1実施形態と同様のデータレートにて演算を実施することができる。このため、第1実施形態で得られる効果をより小さい回路規模で実現することが可能となる。
【0043】
<第3実施形態>
以下、本発明に係る第3実施形態について説明する。上述した第1および第2実施形態では、クリップ処理部を備えた画像処理装置では表示部を有さず、画像表示は通信データを受信する受信側装置において実現される構成例を示した。第3実施形態では、クリップ処理部を受信装置側に備える構成を示す。
【0044】
図8に、第3実施形態における画像処理装置全体の構成を示す。同図において、801はネットワーク上の通信データを受信し、パケット化されたデータに対するデパケタイズ処理、或いは暗号化されたデータに対する復号処理等を実施する通信部である。802は、例えばJPEGやMPEG、H.264等の画像圧縮処理が施されたデータに対する伸張処理、或いは表示装置に表示する解像度へ画像サイズを変換する解像度変換処理等の各種画像処理を実施する画像処理部である。803は、画像データを表示部804へ表示するために必要な、色空間変換処理等を行う表示処理部、804は画像データを表示する表示部である。
【0045】
以下、図9のフローチャートを用いて、装置全体の動作を説明する。まずS901で通信部801において画像データが受信されると、S902でデパケタイズ処理、復号処理等の受信処理が実施される。処理後の画像データはS903にてRAM107へ記憶される。そしてS904で画像処理部802において、該画像データが圧縮されている場合には伸張処理を行う等、各種画像処理が施される。
【0046】
次にS905にて、クリップ処理部103においてクリップ処理が実施されるが、この処理内容は上述した第1または第2実施形態と同様である。ただし、再現色域の範囲を表示部804が再現可能なRGB値に応じて設定する必要がある。クリップ処理後のデータは表示処理部803へ転送される。
【0047】
そしてS906で表示処理部803にて、クリップ処理後のYCbCrデータを、最終的に表示部804での表示を行うためのRGBデータに変換する。この変換手法は周知であるため、ここでは説明を省略する。変換されたRGB形式の画像データは表示部804へ送られて、表示画面へ表示される。そしてS907で、以上の処理を全データの処理が完了するまで繰り返す。
【0048】
以上説明したように第3実施形態によれば、受信側装置においてYCbCrデータをRGBデータに変換して表示する際に、色域内へのクリッピングによる色飛び補正を行うことで、色味の変わらない、違和感のない表示が得られる。
【0049】
なお、上記第1乃至第3実施形態を組み合わせて1台の装置として構成することも可能である。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝度軸と色差軸からなる第1の色空間で表現され、N(N>1)画素分の輝度データと、該N画素に共通する色差データからなる画素パックが連続する形式の画像データを、該画素パック単位で入力する入力手段と、
該入力された前記画素パックを構成するN画素のうち、最も大きい輝度データを有する画素について、その画素値が第2の色空間の再現色域の外にある場合に、該画素の色差データを前記輝度軸へ向けて、該再現色域の境界に達するまで移動させた補正色差データを算出する補正手段と、
前記補正色差データを前記画素パックの色差データに置き換えて出力する出力手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、色差データを前記輝度軸へ向けて、前記再現色域の境界に達するまで移動させるための補正係数を算出し、該補正係数に従って前記補正色差データを算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記画素パックを構成するN画素のうち、最も大きい輝度データを有する画素を選択する選択手段と、
該選択された画素について、その画素値が第2の色空間の再現色域の外にある場合に、該画素の色差データを前記輝度軸へ向けて、該再現色域の境界に達するまで移動させた補正色差データを算出する算出手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記画素パックを構成するN画素ごとに前記補正色差データを算出する算出手段と、
前記画素パックを構成するN画素のうち、最も大きい輝度データを有する画素を選択する輝度データの選択手段と、
該選択された画素についての前記補正色差データを選択する色差データの選択手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記画素パックを構成するN画素に対して並列処理を行うことによって、画素ごとの前記補正色差データを算出することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
さらに、前記出力手段より出力された前記画素パックが連続する前記第1の色空間の画像データを、前記第2の色空間の画像データに変換する変換手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第2の色空間はsRGB色空間であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の色空間はYCbCr色空間であることを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1の色空間の画像データはYCbCr4:2:2の形式であることを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
入力手段、補正手段、出力手段を有する画像処理装置における画像処理方法であって、
前記入力手段が、輝度軸と色差軸からなる第1の色空間で表現され、N(N>1)画素分の輝度データと、該N画素に共通する色差データからなる画素パックが連続する形式の画像データを、該画素パック単位で入力し、
前記補正手段が、該入力された前記画素パックを構成するN画素のうち、最も大きい輝度データを有する画素について、その画素値が第2の色空間の再現色域の外にある場合に、該画素の色差データを前記輝度軸へ向けて、該再現色域の境界に達するまで移動させた補正色差データを算出し、
前記出力手段が、前記補正色差データを前記画素パックの色差データに置き換えて出力する、ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
コンピュータで実行されることにより、該コンピュータを請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−191362(P2012−191362A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52122(P2011−52122)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】