説明

画像処理装置及び画像処理装置用の通信信号伝達回路

【課題】簡易な構成で高いセキュリティ性と省電力効率の向上を図ること。
【解決手段】省エネモードへの遷移が可能な画像処理装置であって、省エネモードの遷移及び復帰を制御するメインMPU101と、外部との情報通信の信号を伝達するLAN I/F112とを含み、LAN I/F112は、入力された信号を取得する受信用作動回路122bと、画像処理装置が提供する機能をネットワークを介して利用するPC15を識別する識別IDを記憶しているROM123bと、予め定められたプロトコルに従い、取得された信号から識別IDを取得し、取得された識別IDがROM123bに記憶されている場合に、省エネモードからの復帰を指示する信号を出力するID判別回路123aとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理装置用の通信制御回路に関し、特に、装置の一部への電源供給を停止した状態である省電力状態の制御の効率化に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化が推進される傾向にあり、電子化された情報の出力に用いられるプリンタやファクシミリ及び書類の電子化に用いるスキャナ等の画像処理装置は欠かせない機器となっている。このような画像処理装置は、撮像機能、画像形成機能及び通信機能等を備えることにより、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ、複写機として利用可能な複合機として構成されることが多い。
【0003】
このような画像処理装置において画像データをはじめとした各種のデータを蓄積し、ネットワークを介して他の情報処理端末と共有することにより、ユーザの利便性を向上する機能が提供されている。そのため、情報漏洩等のリスクがあり、セキュリティ保護が重要となっている。装置のセキュリティ保護の一態様として、装置の利用者や利用パソコンを限定する目的で、パソコンの識別子をやり取りする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、画像処理装置においては、装置の一部への電源供給を停止することにより、消費電力が低減された省エネモードへ遷移可能なものがある。このような省電力制御の一態様として、ウィンドウズ(登録商標)OS(Operating System)で利用されているマジックパケットを使用して装置の電源状態をモニタし、省電力モードへの復帰、遷移をリモート操作する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のセキュリティ機能においては、PC(Personal Computer)に用いられるOSのセキュリティ機能をそのまま画像処理装置に流用したものが多く、PCと同等のCPU(Central Processing Unit)性能及びメモリ容量が必要であるため、装置コストが高くなるという課題がある。
【0006】
また、このようなセキュリティ機能は、CPUをはじめとした情報処理機構が動作していることが前提であるため、CPUへの電源供給が停止されている省エネモードにおいては、CPUへの電源供給を再開する必要がある。しかしながら、外部からのアクセス可否を判断した結果アクセス拒否となった場合、画像処理装置の本来の動作は不要であるにも関わらず省エネモードから復帰したこととなるため、省電力効率が低下する。
【0007】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、簡易な構成で高いセキュリティ性と省電力効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置であって、前記省電力状態への遷移及び前記省電力状態からの復帰を制御する省電力制御部と、外部との情報通信の信号を伝達する通信信号伝達回路とを含み、前記通信信号伝達回路は、外部から入力された信号を取得する信号取得部と、前記画像処理装置が提供する機能をネットワークを介して利用する情報処理装置を識別する識別情報を記憶している識別情報記憶部と、予め定められたプロトコルに従い、前記取得された信号から識別情報を取得する識別情報取得部と、前記取得された識別情報が前記識別情報記憶部に記憶されている場合に、前記省電力状態からの復帰を指示する信号を出力する復帰信号出力部とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様は、装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置において外部との情報通信の信号を伝達する通信信号伝達回路であって、外部から入力された信号を取得する信号取得部と、前記画像処理装置が提供する機能をネットワークを介して利用する情報処理装置を識別する識別情報を記憶している識別情報記憶部と、予め定められたプロトコルに従い、前記取得された信号から識別情報を取得する識別情報取得部と、前記取得された識別情報が前記識別情報記憶部に記憶されている場合に、前記省電力状態からの復帰を指示する信号を出力する復帰信号出力部とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で高いセキュリティ性と省電力効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像処理装置の運用形態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るLAN I/Fの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るUSB制御部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、プリンタ、スキャナ、複写機等の機能を含む複合機(MFP:Multi Function Peripheral)としての画像処理装置において、外部からのネットワーク接続を選択的に遮断するインタフェースの機能について説明する。
【0013】
本実施形態に係る画像処理装置は、外部からのネットワークを介したアクセスに対して、簡易的なプロトコルに対応し、予め定められた識別子を伴うアクセス以外を選択的に遮断する機能を有する回路を含むことが要旨の1つである。
【0014】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1は、装置全体を制御するメインコントローラ部100、実際に画像形成出力を行うプロッタエンジン部200及びAC(Alternating Current)電源から装置で使用するDC電圧を生成する電源部300を含む。
【0015】
メインコントローラ部100は、メインMPU(MicroProcessor Unit)101、FROM(Flash Read Only Memory)102、DRAM(Dynamic Random Access Memory)103、大容量記憶メモリ104、画像処理制御部105、スキャナ制御部106、スキャナ107、ADF(Auto Document Feeder)108、操作部109、USB(Universal Serial Bus)制御部110、LAN(Local Area Network)制御部111、LAN I/F112、FAXモデム113、アナログ回線I/F114、PIO(Processor Input Output)115及びシステムバス116を含む。
【0016】
メインMPU101は、CPU(Central Processing Unit)ペリフェラル回路を内蔵しており、装置全体を制御する。メインMPU101が行う制御には、画像処理装置1の省エネモードへの遷移や復帰制御も含まれる。即ち、メインMPU101が、省電力制御部としても機能する。FROM102は、プログラムを記憶している不揮発性の記憶媒体である。DRAM103は、CPU動作、データのワークRAMとして使用される揮発性記憶媒体である。
【0017】
大容量メモリ104は、HDD(Hard Disk Drive)等の大容量記憶装置によって構成され、画像データを蓄積する。画像処理制御部6は、印刷ジョブに係る画像情報の処理を行う。スキャナ制御部106は、撮像装置であるスキャナ107を制御して撮像を実行させ、撮像によって画像情報を取得する。ADF108はオート原稿フィーダーであり、セットされた原稿を1枚ずつスキャナ107に供給する。
【0018】
操作部109は、タッチパネル117aを含むLCD(Liquid Crystal Display)117、キー/LED(Light Emitting Diode)118が、操作部マイコン119に接続されて構成されている。操作部マイコン119は、PROM(Programmable ROM)119a、RAM119bを内蔵している。操作部マイコン119とメインMPU101とはUSB制御部110を介して接続されており、操作部マイコン119は、メインMPU101からのUSB通信による命令に応じてLCD117、キー/LED118を制御する。
【0019】
USB制御部110は、上記操作部109の制御の他、PC等の他の機器との接続にも用いられる。LAN制御部111は、ネットワークインタフェースであるLAN I/F112を介してネットワーク通信を制御する。LAN I/F112及びUSB制御部110は、夫々、外部との情報通信の信号を伝達する通信信号伝達回路として機能する。FAXモデム113は、アナログ回線I/F114を介してアナログ電話網と接続されており、FAXの送受信を制御する。PIO115は、汎用的なI/Oバスとして供えられている。
【0020】
AC電源300は、電源コード301が商用電源に接続されることにより、直流電源生成部302によって装置各部に供給される各種のDC(Direct Current)電圧やIO電圧が生成される。本実施形態においては、DC電圧V1、V2がプロッタエンジン部200及びメインコントローラ部100で使用される電圧であり、PIO115から出力されるPCNT0、PCNT1信号によってON/OFFされる。
【0021】
省電力モードにおいては、DC電圧V1、V2のいずれもがOFFされ、DC電圧V3が必要最小限の部位に供給される。DC電圧V3は、ダイオード303を介してDC電圧V3の電源が供給される。
【0022】
省電力モードにおいてはDC電圧V3のみONされ、ADF108の原稿センサと開閉センサ、USB制御部110、LAN I/F112及びアナログ回線I/F114へ電圧供給される。DC電圧V3が供給されている各部位は、復帰要因をスキャンし、メインMPU101への割り込み信号を発生する。
【0023】
FROM102、DRAM103、大容量記憶メモリ104、画像処理制御部105、スキャナ制御部106、ADF108、USB制御部110、LAN制御部111、FAXモデム113、PIO115は、システムバス116を介してメインMPU101と接続されている。
【0024】
プロッタエンジン部200は、エンジンMPU201、FROM202、DRAM203、プロッタ制御部204、プロッタ205、I/O制御部206、給紙トレイ207、モーター/クラッチ208、センサ209及びシステムバス210を含む。
【0025】
エンジンMPU201は、メインMPU101と同様に、装置全体を制御する演算装置である。FROM202及びDRAM203も、メインコントローラ部100に含まれるものと同様の機能を担う。プロッタ制御部204は、エンジンMPU201の制御に応じて画像形成部であるプロッタ205を制御する。
【0026】
I/O制御部206は、各種の入出力を制御する。給紙トレイ207は、プロッタ205に対して、内部にストックされた転写紙を供給する。モーター/クラッチ208は、プロッタ205や給紙トレイ207及びその間の搬送路において転写紙を搬送するためのロータを駆動する。センサ209は、画像処理装置1内の各部の状態を検知する。センサ209には、ADF108の原稿センサと開閉センサが含まれる。FROM202、DRAM203、プロッタ制御部204及びI/O制御部206は、システムバス210を介してエンジンMPU201と接続されている。
【0027】
図2は、本実施形態に係る画像処理装置1の運用形態を示す図である。図2に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1は、LANのネットワークであるネットワークA及びネットワークBがルータ21を介して接続されて構成されており、更に、ネットワークAはゲートウェイ20を介してインターネットと接続されている。
【0028】
ネットワークAには、一般的な画像形成装置11及び複数のPC12が接続されている。ネットワークBにも、一般的な画像形成装置13及び複数のPC14が接続されている、また、ネットワークBには、本実施形態に係る画像処理装置1及び複数のPC15が接続されており、画像処理装置1及び複数のPC15によって閉域Cが構成されている。
【0029】
閉域Cに含まれる画像処理装置1及び複数のPC15は、画像形成装置13及び複数のPC14との間でネットワークを区切ることなく、同一のネットワークBに接続された状態で、画像処理装置1の機能によって実現されている。即ち、画像処理装置1の機能により閉域Cを実現し、セキュリティを高めて使用されている。また、画像処理装置1には、ネットワークBを介して接続される複数のPC15の他、PC16がUSBを介して接続されている。
【0030】
このようなネットワーク構成においては、ゲートウェイ20を通ることにより、インターネットから画像形成装置11及び画像形成装置13の情報を取得することが可能である。ゲートウェイ20やルータ21をゲートとしてファイアウォールの設定を行えば、ネットワークAやネットワークBのセキュリティを保つことは可能である。
【0031】
しかしながら、例えば、ネットワークBの複数のPC14がモバイルPCである場合や、ネットワークBに不特定のPCが接続可能な環境である場合等は、ネットワークBに接続された装置の情報漏洩を防ぐことが困難である。ネットワークを複雑化してゲート数を増やせばセキュリティを高めることは可能であるが、設備コストや管理負担の増大は避けられない。
【0032】
これに対して、本実施形態に係る画像処理装置1は、ネットワークを区切ることなく、疑似的に閉域Cを実現する機能を有する。これにより、ネットワークの設備コストや管理負担の増大を伴わずに、画像処理装置1内部のデータのセキュリティを高めることができる。
【0033】
上述したような画像処理装置1の機能は、図1において説明したLAN I/F112内部に搭載される回路や、USB制御部110内部に搭載される回路によって実現される。先ず、本実施形態に係るLAN I/F112の構成について図3を参照して説明する。LAN I/F112は、送信用トランス121a、受信用トランス121b、送信用作動回路122a、受信用作動回路122b、ID判別回路123a、FROM123bを含む。
【0034】
送信用トランス121aは、送信データを送信ネットワーク信号Tx+、Tx−に変換する。送信用作動回路122aは、LAN制御部111の制御に従い、送信用データを送信用トランス121aに入力する。受信用トランス121bは、受信ネットワーク信号Rx+、Rx−を受信データに変換する。受信用作動回路122bは、受信用トランス121bから受信データを取得する。即ち、受信用トランス121bが信号取得部として機能する。
【0035】
受信用作動回路122bが取得した受信データは、LAN制御部111の他、ID判別回路123aに入力される。ID判別回路123aは、予め定められた簡易なプロトコルである専用プロトコルに従って受信データを処理し、受信データに含まれる情報とFROM123bに記憶されている情報との照合を行う。
【0036】
FROM123bに記憶されている情報とは、予め画像処理装置1に登録されているPCの識別情報(以降、識別IDとする)であり、本実施形態においては、図2に示す閉域Cに含まれる複数のPC15の識別情報である。即ち、FROM123bが識別情報記憶部として機能し、ID判別回路123aのFROM123bに識別情報が登録されたPC15と画像処理装置1とによって本実施形態に係る閉域Cが構成される。この構成が、本実施形態に係る要旨の1つである。
【0037】
ID判別回路123aは、受信データに含まれる情報と、FROM123bに記憶されている識別IDとが一致した場合、メインMPU101に対して割り込み信号ID_INTRを発行する。これにより、メインMPU101は、画像処理装置1が省エネモードの場合、省エネモードからの復帰処理を実行する。
【0038】
図3に示すように、ID判別回路123aは、DC電圧V3によって動作する。即ち、ID判別回路123aは、省エネモードにおいても受信データとFROM123bに記憶されている識別情報との照合処理をハードウェアで実行しており、上述した条件が満たされた場合には省エネ復帰信号であるID_INTRを出力する。
【0039】
このため、条件が一致した場合、即ち、閉域Cに含まれる画像処理装置1の利用権限のあるPC15からのアクセスによってのみ、画像処理装置1が省エネ復帰を行うため、利用権限のない装置からのアクセスによっては省エネモードが解除されず、省電力効果を高めることができる。
【0040】
LAN制御部111は、MAC(Media Access Control)111a、ホストI/F111bを含む。MAC111aはIEEEのプロトコル処理を行う。ホストI/F111bは、MAC111aによってプロトコル処理されたデータをシステムバス116を介してメインMPU101に転送する。これにより、メインMPU101によってプロトコルの上位制御が実行される。
【0041】
画像処理装置1が省エネモードであり、DC電圧V3のみが供給されている場合、LAN制御部111には電源が供給されていない。そのため、ネットワークからパケットが入力されてもホストI/F111bからメインMPU101へ通知されることはない。
【0042】
次に、本実施形態に係るLAN I/F112によって実現される機能について説明する。図2に示すような閉域Cは、画像処理装置1のROM123bに、PC15の識別IDが格納されることにより構成される。そして、そのような識別DIの格納は、PC15に画像処理装置1のドライバをインストールする際に実行される。
【0043】
画像処理装置1のドライバをPC15にインストールする場合、例えば、Windows(登録商標)のPnP(Plug and Play)機能により、画像処理装置1内部に格納されているドライバのインストールプログラムがPC15にダウンロードされ、インストールされる。
【0044】
この画像処理装置1のドライバのインストールプログラムに従ってPC15が処理を実行すると、PC15のCPUは、上述した識別IDを生成するため、Windowsのユーザプロファイルにあるプロファイル名を取得する。このため、Windowsのユーザプロファイルとしては、容易に推測されないプロファイル名を用いることが好ましい。
【0045】
ドライバのインストールプログラムに従って処理を実行するPC15は、取得したプロファイル名を予め定められたアルゴリズムに従って演算することにより、例えば4バイトのデータ列を生成する。PC15は、この4バイトのデータ列を識別IDとして内部に記憶すると共に、インストールプログラムに従ったドライバのインストール処理の完了までの間にネットワークを介して画像処理装置1に送信する。
【0046】
これにより、画像処理装置1においては、メインMPU101が、通常のPnPの情報と関連付けてFROM102や大容量記憶メモリ104等の不揮発性記憶媒体にこの識別IDを格納すると共に、LAN I/F112のROM123bにもこの識別IDを格納する。このような処理により、PC15における画像処理装置1のプリントドライバのインストールと共に、PC15の閉域Cへの加入が完了する。
【0047】
尚、ユーザプロファイルに基づいて4バイトの識別IDを生成する処理は、画像処理装置1のメインMPU101が実行しても良い。この場合、メインMPU101が識別情報生成部として機能する。インストールプログラムを実行するPC15は、インストール処理の間に画像処理装置1に対してユーザプロファイルを送信する。そして、画像処理装置1は、ユーザプロファイルに基づいて生成した識別IDをROM123bに格納すると共にPC15に送信する。
【0048】
また、本実施形態においては、Windowsのユーザプロファイルに基づいて識別IDを生成する場合を例として説明するが、各PC15を識別可能な情報であれば、ユーザプロファイルと同様に用いることが可能である。
【0049】
次に、PC15が画像処理装置1の機能を利用する場合の動作について説明する。PC15から画像処理装置1の機能を利用する場合、PC15は、ユーザの操作に応じて、画像処理装置1のプリンタ・ドライバ(以降、単にドライバとする)の機能により画像処理装置1にアクセスする。
【0050】
ドライバに従って処理を行うPC15は、画像処理装置1の機能を利用する場合、最初に上述した識別IDを画像処理装置1に通知する。この際、PC15は、ID判別回路123aが対応している専用プロトコルで識別IDを送信する。この専用プロトコルとは、例えば、ICMP(Internet Control Message Protocol)を用いることができる。
【0051】
PC15は、ICMPを用いping処理によって送信するパケットの予め定められたデータ位置に上記識別IDを配置しておく。これにより、画像処理装置1に通知されたping信号は、ID判別回路123aによって処理され、ID判別回路123aが受信データ内部の識別IDを取出す。即ち、ID判別回路123aが、識別情報取得部として機能する。その後、上述したように、ID判別回路123aは、受信データから取得した識別IDをROM123bに格納された識別IDと比較し、一致する識別IDが格納されていれば、メインMPU101に割り込み信号ID_INTRを送信する。ここでは、ID判別回路123aが、復帰信号出力部として機能する。これにより、画像処理装置1が省エネモードから復帰する。
【0052】
画像形成装置1が待機状態、即ち、各DC電圧が供給されている状態の場合、各部は即座に動作可能な状態となっている。待機状態のまま、メインMPU101に含まれるタイマが予め定められた省エネ移行期間をカウントすると、メインMPU101はPIO115を制御し、DC電圧V1をOFFする。さらに一定時間経過後にDC電圧V2もOFFにし、メインMPU101自体への電源供給も停止し、より低電力なモードに遷移する。尚、DC電圧V2がOFFされた状態であっても、メインMPU101は、上述した復帰割り込み信号で復帰可能な構成となっている。
【0053】
DC電圧V2が起動しているとき、メインMPU101は上位プロトコルも処理できるが、上記のID判別回路123aで識別IDが一致しなければ、クライアントPCからのアクセスには応答しない。DC電圧V2もOFFし、DC電圧V3だけがONし起動している場合には、上述の通り、ID判別回路123aからの割り込み信号がある場合のみ復帰割り込み信号がアクティブになり、メインMPU101が省電力モードから復帰する。
【0054】
このような処理により、画像処理装置1のドライバ・プログラムインストールされた履歴のあるPC15によって閉域Cが構成され、閉域C以外の装置からのアクセスはLAN I/F112によって遮断されるため、セキュリティ性を高めることができる。このアクセス遮断処理はID判別回路123aによる簡易なプロトコル処理によって実現されるため、簡易な構成で実現することが可能である。また、ID判別回路123aのハードウェア処理によって実現されるため、メインMPU101をはじめとした画像処理装置1の各部を省電力状態のままで実現可能であり、省電力効果を高めることができる。
【0055】
このような機能は、USBを介して接続される場合でも同様に用いることが可能である。即ち、USBを介して接続されたPC16においても、画像処理装置1のドライバインストール時に上記と同様の処理を実行し、PC16の識別IDを画像処理装置1のUSB制御部110に格納しておく。そして、PC16が画像処理装置1の機能を利用する際には、ドライバの処理に従って識別IDを通知することにより、画像処理装置1側で上記と同様の制御を行うことが可能となる。
【0056】
以下、本実施形態に係るUSB制御部110の構成について図4を参照して説明する。USB制御部110は、ドライバ131、トランシーバ132、シリアルI/F133、ホストI/F134、ID判別回路135、FROM136及びダイオード137、138を含む。
【0057】
ドライバ131及びトランシーバ132は、夫々送信用、受信用のUSB信号のインタフェースである。シリアルI/F133は、送信データに基づいてドライバ131を制御して信号を出力させると共に、トランシーバ132が受信した信号をデジタル信号に変換して受信データを取得する。
【0058】
ホストI/F134は、シリアルI/F133によるデータ送信及びデータ受信を制御する。ホストI/F134は、UTMI(USB 2.0 Transceiver Macrocell Interface)を介してシステムバス116に接続されており、メインMPU101によって制御されている。
【0059】
シリアルI/F133は、トランシーバ132を介してデータを受信した場合、受信データをホストI/F134及びID判別回路135に入力する。ID判別回路135は、図3において説明したLAN I/F112のID判別回路123aと同様の機能を有し、シリアルI/F133から受信データを取得すると、取得した受信データ内の予め定められたデータ位置から識別IDを抽出し、LAN I/F112の場合と同様にFROM136に格納されている識別IDとの比較を行う。
【0060】
FROM136に格納されている識別IDと受信データから抽出した識別IDとが一致した場合、ID判別回路135は、割り込み信号ID_INTR_UをメインMPU101へ送出する。USBポートのPCからのVBUS信号は、イニシャライズ前には数100μAの電流を供給できる。このVBUS信号は、ダイオード138を介して、図4に点線で示す範囲にのみ供給する。また、DC電圧V3はダイオード137を介して供給することにより、VBUS信号が他のロジックに回り込まないように整流される。
【0061】
このような構成による動作について説明する。PC16から画像処理装置1の機能を利用する場合、PC16は、ユーザの操作に応じて、画像処理装置1のドライバの機能によりUSBを介して画像処理装置1にアクセスする。PC16は、ドライバの機能により画像処理装置1にアクセスする際、イニシャライズの前に、予め定められたコントロール信号で識別IDを画像処理装置1に送信する。
【0062】
画像処理装置1において、DC電圧V2またはV3が起動している場合には、メインMPU101は、割り込み信号ID_INTR_Uに応じて以後のハンドシェイク処理を実行し、これによりUSB信号が確立する。
【0063】
画像処理装置1が省エネモードの場合、PC16とのUSB接続により、VBUS電圧がID判別回路135に供給される。そして、上述したように画像処理装置1に送信された識別IDがFROM136に格納されている識別IDと一致した場合、ID判別回路135は、VBUS電圧で割り込み信号ID_INTR_Uを送出する。これにより、メインMPU101が省エネモードから復帰し、DC電圧V2の供給が再開される。
【0064】
本実施形態において、割り込み信号ID_INTR_UはメインMPU101からクリアされない限りアクティブ状態を保持する。そのため、メインMPU101は、省エネモードからの復帰後、引き続きアクティブ状態である割り込み信号ID_INTR_Uに基づいて、PC16の識別IDが一致したものとしてハンドシェイク処理を実行する。これにより、USB信号が確立する。
【0065】
このような処理により、USB接続されたPC16においても、上述したようにネットワークを介して接続されたPC15と同様のセキュリティ環境を実現することが可能となる。尚、上述したように、USB接続の場合、PC16からVBUSを供給することが可能である。そのため、ID判別回路135に供給するDC電圧V3も供給を停止することができ、更に省電力効果を高めることができる。
【0066】
USB接続においてDC電圧V3をもOFFにする場合、DC電圧V3をOFFにする期間を指定することにより、ユーザの利便性と省電力効果とを両立することができる。その場合、メインMPU101は、内部のペリフェラル回路にリアルタイムクロック(RTC)を装備し、時刻の読み出しやタイマ設定を行う。
【0067】
そして、画像処理装置1のセキュリティ制御を行うプログラムにおいて、セキュリティを強化して画像処理装置1を使用する期間を限定する。例えば、顧客情報のデータ、スキャン画像データ、写真画像データ等の共有機能を利用するのが平日の午前中のみの場合、メインMPU101は、平日午前以外はDC電圧V3をOFFとする。これにより、ユーザに不便をかけることなく、省電力効果を更に高めることができる。
【0068】
また、このような場合、USBを介してPC16を接続し、PC16から画像処理装置1にアクセスした場合にDC電圧V3、DC電圧V2の供給が再開されるため、画像処理装置1のドライバがインストールされたPC16をセキュアな鍵として用いることができる。
【0069】
上述した態様においては、DC電圧V3の供給を停止するためのスイッチを設け、メインMPU101が、上記スイッチを解除するような回路構成とすることができる。即ち、メインMPU101によって信号が入力されない場合、上記スイッチによってDC電圧V3がOFF状態となる回路構成である。その結果、メインMPU101は、予め定められた時間(上記の場合、平日の午前中)のみ、上記スイッチを解除してDC電圧V3が供給されるように制御する。
【0070】
また、上述した態様においては、DC電圧V3が供給されていない状態であっても、ドライバがインストールされたPC16からのアクセスによって復帰処理が行われる。ここで、通常の識別IDとは異なる特別な識別IDである特権レベルの識別IDを設け、DC電圧V3が供給されていない状態からの復帰については、特権レベルの識別IDを有する端末からのアクセスのみに限定することによって、セキュリティを高めることができる。
【0071】
そのような場合、USB制御部110のFROM136に通常の識別IDと特権レベルの識別IDとを分けて格納しておき、DC電圧V3が供給されていない状態においては、特権レベルの識別IDと一致した場合のみ、ID_INTR_Uを出力するようにすることで実現可能である。
【0072】
このような構成により、上述したように予め定められた時間のみ、ネットワークを介した画像処理装置1へのアクセスを可能として省電力効果やセキュリティを高めると共に、例えば、管理者が上記設定された時間外にMIB(Management information base)に対応した管理情報を得たい場合には特権レベルの識別IDによってそれが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像処理装置
11、13 画像形成装置
12、14、15、16 PC
21 ルータ
22 ゲートウェイ
100 メインコントローラ部
101 メインMPU
102 FROM
103 DRAM
104 大容量記憶メモリ
105 画像処理制御部
106 スキャナ制御部
107 スキャナ
108 ADF
109 操作部
110 USB制御部
111 LAN制御部
111a ホストI/F
111b MAC
112 LAN I/F
113 FAX制御部
114 アナログ回線I/F
115 PIO
116 システムバス
117 LCDパネル
117a タッチパネル
118 キー/LED
119 操作部マイコン
119a PROM
119b RAM
121a 送信用トランス
121b 受信用トランス
122a 送信用作動回路
122b 受信用作動回路
123a ID判別回路
123b FROM
131 ドライバ
132 トランシーバ
133 シリアルI/F
134 ホストI/F
135 ID判別回路
136 FROM
137、138 ダイオード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2010−250862号公報
【特許文献2】特開2006−256117号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置であって、
前記省電力状態への遷移及び前記省電力状態からの復帰を制御する省電力制御部と、
外部との情報通信の信号を伝達する通信信号伝達回路とを含み、
前記通信信号伝達回路は、
外部から入力された信号を取得する信号取得部と、
前記画像処理装置が提供する機能をネットワークを介して利用する情報処理装置を識別する識別情報を記憶している識別情報記憶部と、
予め定められたプロトコルに従い、前記取得された信号から識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記取得された識別情報が前記識別情報記憶部に記憶されている場合に、前記省電力状態からの復帰を指示する信号を出力する復帰信号出力部とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記情報処理装置において前記画像処理装置が提供する機能を利用するための制御プログラムをインストールする際に、前記情報処理装置から取得した情報に基づいて前記識別情報を生成して前記識別情報記憶部に記憶させる識別情報生成部を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記信号取得部、前記信号情報記憶部、前記識別情報取得部及び前記復帰信号出力部は、前記信号伝達回路と前記情報処理装置とを接続するケーブルから供給される電源によって動作可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記省電力制御部は、予め定められた期間のみ前記通信信号伝達回路に電源を供給することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記識別情報記憶部は、ケーブルから供給される電源によって動作することにより前記省電力状態からの復帰を指示する信号を出力する権限を付与された特別な識別情報を他の識別情報と区別して記憶しており、
前記復帰信号出力部は、前記取得された識別情報が前記識別情報記憶部において前記権限を付与された特別な識別情報として記憶されている場合に、前記省電力状態からの復帰を指示する信号を出力することを特徴とする請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
装置の一部への電力供給を停止した省電力状態への遷移が可能な画像処理装置において外部との情報通信の信号を伝達する通信信号伝達回路であって、
外部から入力された信号を取得する信号取得部と、
前記画像処理装置が提供する機能をネットワークを介して利用する情報処理装置を識別する識別情報を記憶している識別情報記憶部と、
予め定められたプロトコルに従い、前記取得された信号から識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記取得された識別情報が前記識別情報記憶部に記憶されている場合に、前記省電力状態からの復帰を指示する信号を出力する復帰信号出力部とを含むことを特徴とする通信信号伝達回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−106307(P2013−106307A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250766(P2011−250766)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】