説明

画像処理装置及び起動制御プログラム

【課題】起動後に、迅速にジョブ処理を開始させることができる画像処理装置及び起動制御プログラムの提供。
【解決手段】データを蓄積可能なHDDと、外部から受信したジョブの解析処理及び描画処理を行い、描画処理後の画像データを印刷処理部に出力する画像処理部と、を備え、電源ON後に、前記HDDのファイルシステムをチェックするHDD初期化処理が実行される画像処理装置であって、前記画像処理部は、前記画像処理装置の電源ON後に、前記解析処理及び描画処理を行うタスクを起動する第1の初期化処理を行い、前記第1の初期化処理が完了したら、前記HDD初期化処理の完了を待たずにジョブを受け付け、受け付けたジョブが前記HDDを利用しないジョブであれば、前記HDD初期化処理が完了しているか否かに関わらず、当該ジョブを処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び起動制御プログラムに関し、特に、HDD(Hard Disk Drive)を備える画像処理装置及び当該画像処理装置で動作する起動制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種情報を処理する情報処理装置には、通常、HDDが搭載されており、HDDは、データを保存したり、メモリでは収まらないような大容量の処理データを一時的に退避させたりするために用いられる。このHDDは、メモリに比べてデータのアクセスに時間がかかることから、処理の高速化を図る様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、動作プログラムが格納されたRAMと、動作終了時に、動作に用いられているデータを含む現在の動作プログラムを前記RAMから取り出してブートイメージを作成するブートイメージ作成手段と、前記ブートイメージ作成手段により作成されたブートイメージを、ハードディスクにおける高速アクセス可能な外周部領域に書き込む書き込み手段と、前記ハードディスクの外周部領域に書き込まれたブートイメージを利用して、次回動作時の起動を行う起動手段と、を備えた画像処理装置が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、被写体像を結像させ、撮影操作に応じて該被写体を表す画像データを生成して記録する撮影装置において、ソフトウェアを実行するCPUと、前記CPUで実行されるソフトウェアのうちの一部のソフトウェアを格納する不揮発性メモリと、前記CPUで実行されるソフトウェアのうちの前記不揮発性メモリに格納されたソフトウェアを除くソフトウェアを格納するハードディスク装置と、前記ハードディスク装置から読み出されたソフトウェアが格納される揮発性メモリとを備え、前記CPUが、前記不揮発性メモリに格納されたソフトウェアの実行と、前記ハードディスク装置に格納されたソフトウェアを該ハードディスク装置から前記揮発性メモリに読み出す動作の実行とを並行して処理する撮影装置が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、ハードディスクと、第1の演算処理装置と、上記ハードディスクおよび上記第1の演算処理装置の間に接続された第2の演算処理装置とを備え、上記第1の演算処理装置が自身の初期化処理およびOS起動処理を行っている間に、これと並行して上記第2の演算処理装置が自身の初期化処理、OS起動処理および上記ハードディスクの初期化処理の指示を行い、上記ハードディスクの初期化処理および上記第2の演算処理装置のOS起動処理が完了した後に、上記第2の演算処理装置が上記ハードディスクにアクセスしてデータを取得し、当該取得したデータをメモリに保持しておき、その後上記第1の演算処理装置のOS起動処理が完了した後に、上記第1の演算処理装置が上記メモリにアクセスしてデータを取得するようにした情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−193379号公報
【特許文献2】特開2006−163714号公報
【特許文献3】特開2008−287317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
HDDは、使用に際してファイルシステムチェック等の初期化処理を行う必要があるため、HDDを搭載している情報処理装置では、起動時に、HDDの初期化処理が完了するまでジョブ処理が開始できないという問題がある。
【0008】
特に、MFP(Multi-Function Peripheral)に代表される画像処理装置は、予め決められた手順に沿ってシャットダウン処理がなされるサーバ(PC)等と比較して、電源が急に遮断される場合が多く、電源が遮断される際に、記憶しているファイルが壊れやすいため、ファイルを復元するために初期化処理が必須である。また、近年、印刷画像の高精細化、画像処理の高速化に伴ってHDDの容量が大きくなる傾向にあり、HDDの容量が大きくなるとHDDの初期化処理に要する時間も長くなるため、ジョブ処理の開始が遅れるという問題が顕著に現れる。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、起動後に、迅速にジョブ処理を開始させることができる画像処理装置及び起動制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、データを蓄積可能なHDDと、外部から受信したジョブの解析処理及び描画処理を行い、描画処理後の画像データを印刷処理部に出力する画像処理部と、を備え、電源ON後に、前記HDDのファイルシステムをチェックするHDD初期化処理が実行される画像処理装置であって、前記画像処理部は、前記画像処理装置の電源ON後に、前記解析処理及び描画処理を行うタスクを起動する第1の初期化処理を行い、前記第1の初期化処理が完了したら、前記HDD初期化処理の完了を待たずにジョブを受け付け、受け付けたジョブが前記HDDを利用しないジョブであれば、前記HDD初期化処理が完了しているか否かに関わらず、当該ジョブを処理するものである。
【0011】
また、本発明は、データを蓄積可能なHDDを備え、電源ON後に、前記HDDのファイルシステムをチェックするHDD初期化処理が実行される画像処理装置で動作する起動制御プログラムであって、前記画像処理装置を、外部から受信したジョブの解析処理及び描画処理を行い、描画処理後の画像データを印刷処理部に出力する画像処理部、として機能させ、前記画像処理部は、前記画像処理装置の電源ON後に、前記解析処理及び描画処理を行うタスクを起動する第1の初期化処理を行い、前記第1の初期化処理が完了したら、前記HDD初期化処理の完了を待たずにジョブを受け付け、受け付けたジョブが前記HDDを利用しないジョブであれば、前記HDD初期化処理が完了しているか否かに関わらず、当該ジョブを処理するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像処理装置及び起動制御プログラムによれば、起動後に、迅速にジョブ処理を開始させることができる。
【0013】
その理由は、画像処理装置(起動制御プログラム)は、装置の起動時に、画像処理に必要なタスクを起動する第1の初期化処理を行い、第1の初期化処理が完了したら、HDDの初期化処理の完了を待たずにジョブを受け付け、受け付けたジョブがHDDを利用しないジョブであれば、HDDの初期化処理が完了しているか否かに関わらず、ジョブの処理を開始する制御を行うからである。また、HDDの初期化処理が完了した後、自身に割り当てられるHDD領域を利用可能な状態にする第2の初期化処理を行い、第2の初期化処理が完了したら、HDDを利用するジョブを受け付け、処理を開始する制御を行うからである。
【0014】
これにより、HDDを利用しないジョブは、HDDの初期化処理の影響を受けずに処理することができるため、装置の起動後に、迅速にジョブ処理を開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】従来の画像処理装置の電源ON後の動作を示すシーケンス図である。
【図3】従来の画像処理装置における画像処理部の初期化シーケンスを示すフローチャート図である。
【図4】従来の画像処理装置における画像処理部に割り当てられるHDD領域の初期化処理を示すフローチャート図である。
【図5】従来の画像処理装置におけるジョブ処理を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の一実施例に係る画像処理装置の電源ON後の動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の一実施例に係る画像処理装置の画像処理部の初期化シーケンスを示すフローチャート図である。
【図8】本発明の一実施例に係る画像処理装置におけるジョブ処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
背景技術で示したように、MFPに代表される画像処理装置は、予め決められた手順に沿ってシャットダウン処理がなされるサーバ(PC)等と比較して、電源が急に遮断される場合が多く、HDDに記憶されたファイルが壊れやすいため、ファイルを復元するためにファイルシステムチェック等の初期化処理が必須である。また、印刷画像の高精細化、画像処理の高速化に伴ってHDDの容量が大きくなる傾向にあるため、HDDの初期化処理に要する時間も長くなり、ジョブ処理の開始が遅れてしまう。
【0017】
ここで、処理の高速化を図る様々な技術が提案されているが、特許文献1は、HDD初期化後の起動プログラムを高速に動作させる技術であり、HDDの初期化を待ってからのシーケンスになるため、上記問題を解決することができない。また、特許文献2は、並行処理によって高速起動を実現する技術であり、HDDの初期化が完了する前に使用可能な状態にするものではないため、上記問題を解決することができない。また、特許文献3は、HDDの初期化を早めに実行させる技術であり、HDDの初期化が完了しないとジョブ処理が開始できないため、やはり上記問題を解決することができない。
【0018】
このように、従来の装置では、HDDの初期化が完了するまでジョブ処理を開始することができないため、本発明の一実施の形態では、HDDの初期化が完了しなくても特定のジョブに対してはジョブ処理が開始できるようにする。
【0019】
具体的には、画像処理装置(起動制御プログラム)は、装置の起動時に、画像処理に必要なタスク(画像処理を行うプログラム)を起動する第1の初期化処理を行い、第1の初期化処理が完了したら、HDDの初期化処理の完了を待たずにジョブを受け付け、受け付けたジョブがHDDを利用しないジョブ(スワップ処理やHDDへのスプール処理などが発生しないジョブ)であれば、HDDの初期化処理が完了しているか否かに関わらず、ジョブの処理を開始する。また、HDDの初期化処理が完了した後、自身に割り当てられるHDD領域を利用可能な状態にする(ディレクトリを生成したりリソースを展開したりする)第2の初期化処理を行い、第2の初期化処理が完了したら、HDDを利用するジョブ(スワップ処理やHDDへのスプール処理などが発生するジョブ)を受け付けて処理を開始する。
【0020】
これにより、起動処理が高速化され、HDDを利用しないジョブは、HDDの初期化処理の影響を受けずに処理することができるため、装置の起動後に、迅速にジョブ処理を開始させることができる。例えば、XPS(XML Paper Specification)やPDF(Portable Document Format)のジョブは、データを一旦HDDに入れて解析するためにHDDが必要であり、HDDの初期化処理が完了するまでジョブ処理を開始することができない。一方、PS(Post Script)やPCL(Printer Control Language)で記述されたジョブは、データを順に解析することができるため、データ量が多くなければHDDが不要であり、HDDの初期化処理が完了を待たずにジョブ処理を開始することができる。
【0021】
なお、スワップ処理とは、コンピュータ装置で、メモリに収まりきらない情報を一時的に記憶装置に書き出し、必要に応じてメモリ内の情報と交換することである。また、スプール処理とは、コンピュータ装置本体の処理と平行して、本体とプリンタなどの入出力装置とのデータ交換を行うことであり、例えば、プリンタの印字速度は、本体のCPUの処理速度よりもはるかに遅いため、印字データはバッファー記憶装置などに蓄えてプリンタを動作させ、本体は次の処理を実行することにより、処理の高速化を図ることができる。
【実施例】
【0022】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る画像処理装置及び起動制御プログラムについて、図1乃至図8を参照して説明する。図1は、本実施例の画像処理装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、従来の画像処理装置の電源ON後の動作を示すシーケンス図であり、図3乃至図5は、その詳細動作を示すフローチャート図である。また、図6は、本実施例の画像処理装置の電源ON後の動作を示すシーケンス図であり、図7及び図8は、その詳細動作を示すフローチャート図である。
【0023】
図1に示すように、本実施例の画像処理システムは、MFPなどの画像処理装置10と、画像処理装置10に印刷ジョブを送信して印刷を指示するコンピュータ装置やプリンタコントローラなどの外部入力装置20と、で構成される。画像処理装置10は、CPU11と、ROM12と、RAM13と、HDD14と、制御部15と、入力I/F16と、エンジン部17などで構成される。また、制御部15は、全体制御部15aと、画像処理部15bとで構成される。以下、画像処理装置10の各構成要素について詳細に説明する。
【0024】
CPU11は、プログラムに従って演算するデータ処理装置である。ROM12は、画像処理装置10全体の動作を制御するためのプログラム等を記憶する。RAM13は、CPU11による制御に必要なデータや制御動作時に一時記憶が必要なデータ等を記憶する。HDD14は、ジョブデータや画像処理時に一時記憶が必要なデータ等を記憶する。
【0025】
CPU11と、ROM12やRAM13などのメモリと、HDD14とで制御部が構成されるが、本実施例では、制御部の機能をわかりやすくするために、CPU11、ROM12、RAM13、HDD14とは別に制御部15を記載している。すなわち、制御部15は、ROM12内のプログラムに基づいて、CPU11がRAM13、HDD14を用いて行う機能を包含しており、この機能は、大別して全体制御部15aと画像処理部15bとに分けられる。
【0026】
全体制御部15aは、コピー、スキャン、ファックス等の機能を制御すると共に、エンジン部17の動作を制御する。また、画像処理部15bは、入力I/F16を介して受信した印刷ジョブの解析処理や、印刷ジョブから中間言語を生成し、その中間言語をエンジン部17で処理可能な画像データに変換するラスタライズ処理などを実施する。
【0027】
入力I/F16は、NIC(Network Interface Card)やモデムなどで構成され、外部入力装置20との通信を可能とし、外部入力装置20から印刷ジョブを受信する。
【0028】
エンジン部17(印刷処理部)は、電子写真方式や静電記録方式等の作像プロセスを利用した画像形成に必要な構成要素で構成され、入力I/F16を介して受信した印刷ジョブに基づいて生成された画像を用紙上に形成する。
【0029】
上記構成の画像処理装置10において、全体制御部15aは、画像処理装置10の電源がONにされると、HDD14にファイルシステムチェック等(以下、HDD初期化処理と呼ぶ。)を開始させるとともに、画像処理部15bにデータ解析処理タスクや描画処理タスク等の各タスク(データ解析処理や描画処理を行うプログラム)を起動する処理(以下、画像処理部の初期化シーケンス(請求の範囲では第1の初期化処理)と呼ぶ。)を実行させる。
【0030】
また、画像処理部15bは、初期化シーケンスが完了すると、HDD初期化の完了を待たずに印刷ジョブを受け付け、受け付けた印刷ジョブがHDD14を利用しないジョブであれば、HDD初期化が完了しているか否かに関わらず、受け付けたジョブの処理を開始する。また、HDD初期化の完了後、HDD14内に画像処理部15bが利用するディレクトリを生成したり、リソースを展開したりしてHDD14を利用可能な状態にする処理(以下、画像処理部のHDD初期化処理(請求の範囲では第2の初期化処理)と呼ぶ。)を実行し、画像処理部のHDD初期化処理が完了したら、HDD14を利用する印刷ジョブを受け付けて処理を開始する。
【0031】
ここで、HDD14を利用しないジョブとは、スワップ処理やHDD14へのスプール処理などが発生しないジョブである。例えば、PSやPCLなどで記述されたジョブ(いわゆるストリーム型のジョブ)は、データの上から順に解析することができ、HDD14に入れる必要がないため、HDD14を利用しないジョブとなる。また、HDD14を利用するジョブとは、スワップ処理やHDD14へのスプール処理などが発生するジョブである。例えば、XPSやPDFなどのジョブ(いわゆるファイル型のジョブ)は、解析のために一旦HDDに入れる必要があるため、HDD14を利用するジョブとなる。
【0032】
以下、本実施例の画像処理装置10の電源ON後の動作(上記処理の詳細)について説明するが、本発明の理解を容易にするために、まず、従来の画像処理装置の電源ON後の動作について説明する。なお、従来の画像処理装置の構成要素は図1と同様であるが、制御部の制御が異なる。
【0033】
図2は、従来の画像処理装置の電源ON後の動作を示すシーケンス図である。従来のシーケンスでは、下記の順番で、主電源ONからジョブ処理実行、印刷完了までの処理を行う。
【0034】
(1)ユーザが画像処理装置の主電源をONにする。
【0035】
(2)全体制御部に電源がONになったことが通知される。
【0036】
(3)全体制御部からHDDに初期化要求が通知され、HDD初期化処理が実行される。なお、HDD初期化処理は、上述したように、HDD内のファイルをチェックし、壊れていれば復元する処理(いわゆる、FSCK(file system checkあるいはfile system consistency check))である。このHDD初期化処理に要する時間は、HDDの容量によって異なるが、例えば、40〜50秒程度である。
【0037】
(4)全体制御部から画像処理部に起動要求が通知され、画像処理部は、初期化シーケンスを実行する。この初期化シーケンスは、上述したように、データ解析処理タスクや描画処理タスク等の各タスク(データ解析処理や描画処理を実行するプログラム)を起動する処理である。従来の初期化シーケンスには、画像処理部のHDD初期化処理が組み込まれ、この画像処理部のHDD初期化処理が完了した後、初期化シーケンスが完了することなる。この初期化シーケンスについては、図3のフローチャート図で詳細に説明する。
【0038】
(5)画像処理部は、データ解析処理タスクや描画処理タスク等の各タスクを起動しても、全体制御部からHDDへのアクセス許可が通知されるまで、画像処理部のHDD初期化処理は待ち状態になる。
【0039】
(6)全体制御部からHDDへのアクセス許可が通知されると、画像処理部は、上記初期化シーケンス内で、画像処理部のHDD初期化処理を実行する。この処理は、HDD内に画像処理部が利用するディレクトリを生成したり、リソースを展開したりする処理であり、このディレクトリは、フォント用のリソースデータを格納するディレクトリ、カラーマネジメントシステム用のリソースデータを格納するディレクトリ、ハーフトーン用のデータを格納するディレクトリなどを含む。この画像処理部のHDD初期化処理については、図4のフローチャート図で詳細に説明する。
【0040】
(7)画像処理部の初期化シーケンスが完了するとジョブ処理が開始できる状態になる。画像処理装置の主電源ON後、画像処理部の初期化シーケンスが完了してジョブ処理が開始できる状態になるまでの時間は、HDD初期化処理に要する時間を40〜50秒とすると、1分以上となる。そして、画像処理部は、全体制御部からジョブデータを受信し、ジョブ解析・描画処理を実行し、生成したフレームデータをエンジン部へ転送して、用紙に印刷させる。このジョブ処理については、図5のフローチャート図で詳細に説明する。
【0041】
図3は、従来の画像処理装置の画像処理部の初期化シーケンスを示すフローチャート図である。
【0042】
画像処理部は、データ解析処理タスク、描画処理タスク等の各タスクを起動させる(S101)。そして、画像処理装置にHDDが搭載されているかを判断し(S102)、HDDが搭載されている場合は、HDDの初期化が完了し、全体制御部からHDDアクセス許可が通知されるまで待機する(S103)。そして、全体制御部からHDDアクセス許可が通知されたら、画像処理部のHDD初期化処理を行う(S104)。
【0043】
図4は、従来の画像処理装置の画像処理部の初期化シーケンスに組み込まれた画像処理部のHDD初期化処理を示すフローチャート図であり、上記S104の詳細を示している。
【0044】
まず、画像処理部は、画像処理部が使用するHDD領域に、スプールやリソースのための各種ディレクトリを作成する(S104a)。そして、リソースデータを、作成したディレクトリに展開する(S104b)。
【0045】
図5は、従来の画像処理装置の画像処理部のジョブ処理を示すフローチャート図である。
【0046】
まず、画像処理部は、全体制御部からジョブデータを取得し(S111)、データ解析処理タスクにより、ジョブデータの言語を解析して中間言語を生成する(S112)。次に、RAMに空き領域があるかを判断し(S113)、RAMに空き領域がある場合は、中間言語をRAMに保存する(S114)。一方、RAMに空き領域がない場合は、画像処理装置にHDDが搭載されているかを確認し(S115)、HDDが搭載されている場合は、HDDに空き領域があるかを判断し(S116)、HDDに空き領域があれば、中間言語をHDDに保存する(S117)。なお、従来の画像処理装置の制御では、画像処理部のHDD初期化処理が完了した後にジョブ処理を開始しているため、HDDに空き領域があるかを直ちに判断することができる。その後、中間言語が1ページ分溜まったかを判断し(S119)、1ページ分溜まっていない場合は、S111に戻って同様の処理を繰り返し、1ページ分溜まったら、描画処理タスクにより、描画処理を実行する(S120)。
【0047】
また、HDDが搭載されており(S115のYes)、HDDに空き領域がない場合(S116のNoの場合)は、データ解析処理はストップさせて、途中までの中間言語を使って描画処理を行い、中間言語を保存している領域を解放させる(以下、この処理をPaintAheadと呼ぶ)。また、HDDが搭載されていない場合(S115のNoの場合)も、PaintAheadを行う。
【0048】
描画処理では、保存した中間言語を取得して、フレームデータを生成し(S121)、その中間言語を保存している領域を開放する(S122)。そして、全てのフレームデータの生成処理が完了したかを判断し(S123)、フレームデータの生成処理が完了していない場合は、S120に戻って同様の処理を繰り返す。全てのフレームデータの生成処理が完了したら、全てのデータ解析処理が完了したかを判断し(S124)、データ解析処理が完了していない場合は、S111に戻って同様の処理を繰り返し、全てのデータ解析処理が完了したら、ジョブ処理を終了する。
【0049】
そして、生成されたフレームデータはエンジン部へ転送され、エンジン部では用紙に転写して印刷する。
【0050】
以上のように、従来のシーケンスでは、HDDアクセス許可が通知され、画像処理部のHDD初期化処理が完了した後に、ジョブ処理が開始されるため、HDDを利用するジョブも処理することができるが、この制御では、RAM上で処理可能なジョブであっても、HDD初期化処理が完了するまではジョブ処理を開始することができず、特に、RAMの容量が大きい装置においては、画像処理装置の起動後に迅速にジョブ処理を開始できないという問題があった。そこで、本実施例では、HDD初期化処理の完了を待たずに、HDDを利用しないジョブの処理が開始できるようにする。
【0051】
以下、本実施例の画像処理装置の電源ON後の動作について説明する。図6は、本実施例の画像処理装置の電源ON後の動作を示すシーケンス図である。本実施例のシーケンスは、下記の順番で、主電源ONからジョブ処理実行、印刷完了までの処理を行う。
【0052】
(A)従来と同様に、ユーザが画像処理装置10の主電源をONにする。
【0053】
(B)従来と同様に、全体制御部15aに電源がONになったことが通知される。
【0054】
(C)従来と同様に、全体制御部15aからHDD14に初期化要求が通知され、HDD初期化処理が実行される。なお、HDD初期化処理は、上述したように、HDD14内のファイルをチェックし、壊れていれば復元する処理であり、このHDD初期化処理に要する時間は、例えば、40〜50秒程度である。
【0055】
(D)全体制御部15aから画像処理部15bに起動要求が通知され、画像処理部15bと全体制御部15aのI/F部分が開通される。
【0056】
(E)I/F開通後、画像処理部15bは、初期化シーケンスを実行する。この初期化シーケンスは、データ解析処理タスクや描画処理タスク等の各タスクを起動する処理であり、本実施例の制御では、画像処理部のHDD初期化処理は含まない。この初期化シーケンスについては、図7のフローチャート図で詳細に説明する。
【0057】
(F)画像処理部15bの初期化シーケンスが完了するとジョブ処理が開始できる状態になる。画像処理装置10の主電源ON後、画像処理部15bの初期化シーケンスが完了してジョブ処理が開始できる状態になるまでの時間は、20〜30秒程度であり、従来の画像処理装置に比べて格段に早くジョブ処理を開始することができる。そして画像処理部15bは、全体制御部15aからジョブデータを受信し、ジョブ解析・描画処理を実行し、生成したフレームデータをエンジン部17へ転送して、用紙に印刷させる。なお、ジョブ解析・描画処理の途中でHDD14を利用する場合は、全体制御部15aからHDDへのアクセス許可が通知されるまで待ち、HDD14を利用しない場合は、そのまま処理を続行する。このジョブ処理については、図8のフローチャート図で詳細に説明する。
【0058】
(G)全体制御部15aからHDDアクセス許可が通知されると、画像処理部のHDD初期化処理を実行する。その後、通常と同様に、HDD14を利用しないジョブのみならず、HDD14を利用するジョブの処理も可能となる。
【0059】
次に、上記(E)、(F)の処理について説明する。なお、画像処理部のHDD初期化処理は、従来の(6)と同様であるため、説明は省略する。
【0060】
図7は、本実施例の画像処理装置10の画像処理部15bの初期化シーケンスを示すフローチャート図である。
【0061】
画像処理部15bは、データ解析処理タスク、描画処理タスク等の各タスクを起動させる(S201)。ここで、従来の画像処理装置の制御では、画像処理装置に搭載されているHDDの初期化が完了し、全体制御部からHDDアクセス許可が通知されるまで待機したが、本実施例の画像処理装置10の制御では、全体制御部15aからHDDアクセス許可の通知を待たずに、初期化シーケンスを完了する。
【0062】
図8は、本実施例の画像処理部15bのジョブ処理を示すフローチャート図である。なお、基本的な処理の流れは、前記した図5のフローチャート図と同様であるが、図7で、画像処理部15bは、全体制御15a部からHDDアクセス許可通知を待たずに初期化シーケンスを完了しているため、RAM13に空き領域がなく、HDD14が搭載されている場合に、全体制御部15aからのHDDアクセス許可の通知を待って、HDD14に空き領域があるかを判断する点が相違する。
【0063】
まず、画像処理部15bは、全体制御部15aからジョブデータを取得し(S211)、データ解析処理タスクにより、ジョブデータの言語を解析して中間言語を生成する(S212)。次に、RAM13に空き領域があるかを判断し(S213)、RAM13に空き領域がある場合は、中間言語をRAM13に保存する(S214)。一方、RAM13に空き領域がない場合は、画像処理装置10にHDD14が搭載されているか確認する(S215)。HDD14が搭載されている場合は、上述したように、全体制御部15aからHDDアクセス許可が通知されているか確認する(S216)。HDDアクセス許可の通知を確認したら、HDD14に空き領域があるかを判断し(S217)、HDD14に空き領域があれば、中間言語をHDD14に保存する(S218)。その後、中間言語が1ページ分溜まったかを判断し(S220)、1ページ分溜まっていない場合は、S211に戻って同様の処理を繰り返し、1ページ分溜まったら、描画処理タスクにより、描画処理を実行する(S221)。
【0064】
また、HDD14が搭載されており(S215のYes)、HDD14に空き領域がない場合(S217のNoの場合)は、PaintAheadを行う。また、HDD14が搭載されていない場合(S215のNoの場合)も、PaintAheadを行う。また、全体制御部15aからHDDアクセス許可が通知されていない場合(S216のNoの場合)は、HDDアクセス許可が通知されるまで待つ。なお、一般的にはPaintAheadの方がHDD初期化処理よりも時間がかかるため、ここではHDDアクセス許可の通知を待つことにしているが、HDD初期化処理の方が時間がかかる場合は、PaintAheadを実行させる構成としてもよい。
【0065】
描画処理では、保存した中間言語を取得して、フレームデータを生成し(S222)、その中間言語を保存している領域を開放する(S223)。そして、全てのフレームデータの生成処理が完了したかを判断し(S224)、フレームデータの生成処理が完了していない場合は、S221に戻って同様の処理を繰り返す。全てのフレームデータの生成処理が完了したら、全てのデータ解析処理が完了したかを判断し(S225)、データ解析処理が完了していない場合は、S211に戻って同様の処理を繰り返し、全てのデータ解析処理が完了したら、ジョブ処理を終了する。
【0066】
そして、生成されたフレームデータはエンジン部17へ転送され、エンジン部17では用紙に転写して印刷する。
【0067】
以上のように、本実施例のシーケンスでは、HDDアクセス許可が通知され、画像処理部のHDD初期化処理が完了するのを待たずに、画像処理部15bの初期化シーケンスを完了させてジョブを受け付けるため、HDD14を利用しないジョブを処理することができ、画像処理装置10の起動後に迅速にジョブ処理を開始することができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成や制御は適宜変更可能である。
【0069】
例えば、上記実施例では、画像処理装置10にエンジン部17(印刷処理部)を備える構成としたが、印刷処理部を別の装置とし、当該別の装置に画像処理部15bで処理したデータを送信する構成とする(画像処理装置10をRIP(Raster Image Processing)コントローラやプリンタコントローラなどとして機能させる)ことができる。
【0070】
また、上記実施例では、起動制御を行う装置として、MFPに代表される画像処理装置を例示したが、HDDを利用するジョブとHDDを利用しないジョブの処理を行う任意の装置に対して、本発明の制御を同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、HDDを搭載する装置、特に、MFPやプリンタコントローラなどの画像処理装置及び当該画像処理装置で動作する起動制御プログラムに利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 画像処理装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 HDD
15 制御部
15a 全体制御部
15b 画像処理部
16 入力I/F
17 エンジン部
20 外部入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを蓄積可能なHDDと、
外部から受信したジョブの解析処理及び描画処理を行い、描画処理後の画像データを印刷処理部に出力する画像処理部と、を備え、
電源ON後に、前記HDDのファイルシステムをチェックするHDD初期化処理が実行される画像処理装置であって、
前記画像処理部は、前記画像処理装置の電源ON後に、前記解析処理及び描画処理を行うタスクを起動する第1の初期化処理を行い、前記第1の初期化処理が完了したら、前記HDD初期化処理の完了を待たずにジョブを受け付け、受け付けたジョブが前記HDDを利用しないジョブであれば、前記HDD初期化処理が完了しているか否かに関わらず、当該ジョブを処理する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記HDD初期化処理が完了し、前記HDDにアクセス可能な状態になったら、自身に割り当てられるHDD領域を利用可能な状態にする第2の初期化処理を行い、前記第2の初期化処理が完了したら、前記HDDを利用するジョブを受け付けて処理する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2の初期化処理は、ディレクトリの作成処理及びリソース展開処理を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記HDDを利用しないジョブは、スワップ処理及びスプール処理が発生しないジョブである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記HDDを使用しないジョブは、PS(Post Script)又はPCL(Printer Control Language)で記述されたストリーム型のジョブである、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の画像処理装置。
【請求項6】
データを蓄積可能なHDDを備え、電源ON後に、前記HDDのファイルシステムをチェックするHDD初期化処理が実行される画像処理装置で動作する起動制御プログラムであって、
前記画像処理装置を、
外部から受信したジョブの解析処理及び描画処理を行い、描画処理後の画像データを印刷処理部に出力する画像処理部、として機能させ、
前記画像処理部は、前記画像処理装置の電源ON後に、前記解析処理及び描画処理を行うタスクを起動する第1の初期化処理を行い、前記第1の初期化処理が完了したら、前記HDD初期化処理の完了を待たずにジョブを受け付け、受け付けたジョブが前記HDDを利用しないジョブであれば、前記HDD初期化処理が完了しているか否かに関わらず、当該ジョブを処理する、
ことを特徴とする起動制御プログラム。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記HDD初期化処理が完了し、前記HDDにアクセス可能な状態になったら、自身に割り当てられるHDD領域を利用可能な状態にする第2の初期化処理を行い、前記第2の初期化処理が完了したら、前記HDDを利用するジョブを受け付けて処理する、
ことを特徴とする請求項6に記載の起動制御プログラム。
【請求項8】
前記第2の初期化処理は、ディレクトリの作成処理及びリソース展開処理を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の起動制御プログラム。
【請求項9】
前記HDDを利用しないジョブは、スワップ処理及びスプール処理が発生しないジョブである、
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一に記載の起動制御プログラム。
【請求項10】
前記HDDを使用しないジョブは、PS(Post Script)又はPCL(Printer Control Language)で記述されたストリーム型のジョブである、
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一に記載の起動制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84189(P2013−84189A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224805(P2011−224805)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】