説明

画像処理装置及び車載用撮像システム

【課題】車載用撮像システムに搭載して用いる画像処理装置において、入力画像データのフレームレートが低下した場合に、フレームバッファメモリから読み出される画像データの遅延時間を抑えるようにする。
【解決手段】少なくとも2フレーム分の画像データを格納する記憶容量を備えたメモリ300と、入力される画像データのフレームレートで画像データをメモリ300に書き込み、表示装置400の表示フレームレートでメモリから画像データを読み出すメモリインターフェース手段200と、メモリ300から読み出された画像データを表示装置400の表示形式に適した映像信号に変換して出力する画像出力手段240とを有し、メモリインターフェース手段220は、入力される画像データのフレームレートに応じて、前記メモリの書き込み・読み出し動作をダブルバッファ方式あるいはシングルバッファ方式で行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影された画像を処理して表示画像を出力する画像処理装置及びそれを備えた車載用撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、魚眼レンズのような広角レンズを用いた車載カメラなどの撮像システムにおいては、広角レンズで撮影された画像を変形処理して、魚眼画像に起因する画像の歪みを補正したり、視点変換に基づいた画像変形により真上から見た画像(見下ろし画像)に変形処理したりして表示画像を出力する画像処理装置を用いられている。このような画像処理装置においては、一般に2フレーム(画面)分のメモリ領域を持つフレームバッファメモリを備えて、一方のメモリ領域に入力された画像データを書き込むと同時に、もう一方のメモリ領域から変形処理された画像データを読み出し、これを1フレーム単位で交互に繰り返すダブルバッファ方式が採用されている(例えば、特許文献1)。また、書き込み動作は、画像データを走査線順に書き込むプログレッシブ方式をとり、読み出し動作は、NTSC方式の表示に合わせるため、最初は1フレームの画像データの奇数番目の走査線(奇数フィールド)を読み出し、次に偶数番目の走査線(偶数フィールド)を読み出すインタレース方式をとっている。
【0003】
ここで、メモリからの読み出し速度は、使用する表示装置の性能で決まり一般に一定である。一方、バッファメモリへの書き込み速度は、入力される画像データのフレームレートに依存する。いま、読み出しと書き込みの速度が共に同じ場合(例えば共に30fps)、一方のメモリ領域(領域Aとする)へ1フレームの画像データが書き込まれた時点では、もう一方のメモリ領域(領域Bとする)からは同様に1フレームの画像データの読み出しが終了しており、直ちに、今度は領域Bへ画像データの書き込みを開始し、同時に領域Aから画像データの読み出しを開始することができる。
【0004】
しかしながら、入力される画像データのフレームレートが低下して、バッファメモリへの書き込み速度がバッファメモリからの読み出し速度より遅くなった場合、先のもう一方のメモリ領域(領域B)から1フレームの画像データが読み出された時点では、もう一方のメモリ領域(領域A)では未だ1フレームの画像データの書き込みが終了しておらず、該1フレームの画像データの書き込みが終了するのを待って、領域Aからの画像データの読み出しを開始する必要があり、読み出しに遅延が発生する。例えば、入力される画像データが30fpsから15fpsに落ちた場合、ダブルバッファ方式では書き込み読み出しのフレーム同期をとるため、画像データを読み出す時間が30fpsより2倍かかり、表示装置(モニタ)に画像を映すまで2フレーム分の遅延(66.6ms)が発生することになる。
【0005】
車載カメラなどの撮像システムにおいては、上記のような遅延時間によって、障害物の実際位置とモニタに表示された障害物の位置とのずれが生じるため、ドライバーが物体の位置を認識しづらくする問題がある。そのため、例えば夜間等の場合、急に車の前方や後方などに入った人間を見つけることが困難となり、不足の事態を招きかねない。夜間等、撮像素子の入射光量が不足する場合、感度低下を補うために、撮像素子から出力する画像データのフレームレートを落とすのが一般的であり、不足の事態を招きやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の上記のような問題に鑑みてなされたものであって、ダブルバッファ方式を採用し、撮影された画像を処理して表示画像を出力する画像処理装置において、入力された画像データのフレームレートが低下した場合に、バッファメモリから読み出される画像データの遅延時間を最小限に抑えることを目的とする。
【0007】
また、本発明は、車載用撮像システムにおいて、このような画像処理装置を搭載することによって、夜間の使用の場合など、撮影された画像のフレームレートが低下しても、障害物の実際位置とモニタに表示される障害物の位置とのずれをなくし、事故を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、入力される画像データを処理して表示装置に出力する画像処理装置において、少なくとも2フレーム分の画像データを格納する記憶容量を備えたメモリと、入力される画像データのフレームレートで画像データを前記メモリに書き込み、表示装置の表示フレームレートで前記メモリから画像データを読み出すメモリインターフェース手段と、前記メモリから読み出された画像データを表示装置の表示形式に適した映像信号に変換して出力する画像出力手段とを有し、前記メモリインターフェース手段は、前記入力される画像データのフレームレートに応じて、前記メモリの書き込み・読み出し動作をダブルバッファ方式あるいはシングルバッファ方式で行うことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の画像処理装置において、前記入力される画像データのフレームレートをあらかじめ定めた閾値と比較するフレームレート閾値比較手段を有し、前記メモリインターフェース手段は、前記入力される画像データのフレームレートが前記閾値以上の場合にはダブルバッファ方式を選択し、閾値以下の場合にはシングルバッファ方式を選択することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の画像処理装置において、前記メモリインターフェース手段は、ダブルバッファ方式では、前記メモリに少なくとも2フレーム分のメモリ領域を確保して、一方のメモリ領域に現フレームの画像データを書き込むと共に、これと並行してもう一方のメモリ領域から前フレームの画像デーを読み出し、これをフレーム単位で交互に繰り返し、シングルバッファ方式では、前記メモリに少なくとも1フレーム分のメモリ領域を確保して、該メモリ領域に現フレームの画像データを書き込むと共に、これと並行して該メモリ領域から当該現フレームの画像データを読み出し、これを各フレームについて繰り返すことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記メモリインターフェース手段は、前記メモリへの書き込みをプログレッシブ方式で行い、前記メモリからの読み出しをインタレース方式で行うことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記メモリから画像データを読み出す際に座標変換により画像の変形を行うために、前記メモリインターフェース手段から座標変換先の座標値を入力して、画像の変形を反映した座標変換元の座標値を計算して出力する座標変換手段を有し、前記メモリインターフェース手段は、前記座標変換手段から出力される座標変換元の座標値に基づいて前記メモリから画像データを読み出すことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、車の周辺を撮影して画像データを取得し出力するセンサユニットと、前記センサユニットから出力される画像データを処理し映像信号を出力する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置と、前記画像処理装置から出力される映像信号をモニタ表示する表示装置とを具備してなる車載用撮像システムを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6記載の車載用撮像システムにおいて、前記センサユニットは、周辺の明るさが暗くなると、出力する画像データのフレームレートを低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像処理装置によれば、入力された画像データのフレームレートが低下した場合、ダブルバッファ方式からシングルバッファ方式に切り替えることで、バッファメモリから読み出される画像データの遅延時間を抑えることが可能になる。したがって、本発明の画像処理装置を備えた車載用撮像システムでは、夜間などで、撮影された画像のフレームレートが低下しても、障害物の実際位置とモニタに表示される障害物の位置とのずれがなくなり、不測の事故を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像処理装置を備えた車載用撮像システムの一実施形態の全体構成図である。
【図2】図1中のフレーム閾値比較部とメモリインターフェース部の処理フローチャートである。
【図3】図1中の座標変換部の処理を説明する図である。
【図4】書き込み速度と読み出し速度が同じ場合のダブルバッファ方式の具体的処理例を示す図である。
【図5】読み出し速度に対し書き込み速度が遅い場合のダブルバッファ方式の具体的処理例を示す図である。
【図6】読み出し速度に対し書き込み速度が遅い場合のシングルバッファ方式の具体的処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る画像処理装置を備えた車載用撮像システムの一実施形態の全体構成図を示す。図1において、100は撮像素子を含むセンサユニット、200は該センサユニット100から出力される画像データを処理する画像処理ユニット、300は少なくとも2フレーム分の画像データを格納する記憶容量を備えたメモリ(フレームバッファメモリ)、400は画像処理ユニット200から出力されたNTSC方式などの映像信号をモニタ表示する表示装置である。センサユニット100、画像処理ユニット200及びメモリ300は筐体内に一体に収納され、車の後部等に設置されて使用される。表示装置400は車内の運転席近くに設置され、画像処理ユニット200とはケーブルなどで接続されている。本発明の画像処理装置は画像処理ユニット200及びメモリ300の総称である。
【0019】
センサユニット100は、図1では省略したが、撮像素子やA/D変換機などを内蔵している。撮像素子はCCDやCMOSセンサなどで構成され、光学レンズを通して撮影された光学像を電気信号のアナログ信号に変換する。A/D変換器は、撮像素子から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。このデジタル信号を画像データと称す。さらに、センサユニット100は同期信号発生器を内蔵しており、その同期信号に同期して、撮像素子やA/D変換器が動作する。センサユニット100は、画像データと共に該同期信号を出力する。
【0020】
ここで、画像データのフレームレートについて述べる。センサユニット100から出力される画像データ、すなわち、画像処理ユニット200に入力される画像データのフレームレートは、同期信号発生器から出力される同期信号の周期に依存する。すなわち、同期信号の周期を遅くすると、画像データのフレームレートは低下する。一般に、夜間等、撮像素子の入射光量が不足する場合、感度低下を補うために、同期信号発生器の同期信号の周期を遅らせて、画像データのフレームレートを落とすようにしている。これは、ドライバーが手動で行うか、あるいは、センサユニット100に輝度センサを設けて、該輝度センサで検出された輝度信号の値に応じて、同期信号発生器が自動的に同期信号の周期を変えるかすることで行われる。
【0021】
図1に戻り、画像処理ユニット200は、画像処理部210、メモリインターフェース部220、画像出力部230、座標変換部240、フレームレート閾値比較部250などから構成される。画像処理ユニット200は、他に各部を制御する制御部を備えているが、図1では省略してある。この画像処理ユニット200はFPGA(Field Programable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)などで構成される。
【0022】
ここで、画像処理部210は、センサユニット100から出力される画像データについて所定の画像処理を実施する。所定の画像処理とは、例えば、ベイヤー補間処理、MTF補正処理、ガンマ補正処理などである。画像処理部210では、所定の画像処理の施された画像データを出力する。この時、センサユニット100からの同期信号も出力される。
【0023】
メモリインターフェース部220は、画像処理部210から出力される画像データを、該画像処理部210を通して与えられるセンサユニット100からの同期信号に基づいて該画像データのフレームレートでメモリ300へ書き込み、該メモリ300に書き込んだ画像データを表示装置400の予め定められ表示フレームレートで読み出す。ここでは、メモリ300への書き込み動作はプログレシッブ方式をとり、読み出し動作はインタレース方式をとるとする。インタレースにより画面表示させると、映像のちらつきを防ぐことができるため都合がよい。
【0024】
本発明の特徴は、このメモリインターフェース部220が、入力される画像データのフレームレートに応じて、メモリ300の書き込み・読み出し動作をダブルバッファ方式あるいはシングルバッファ方式に切り替えることにある。具体的には、入力される画像データのフレームレートが所定の閾値(例えば、15fps)を超えた場合はダブルバッファ方式を選択し、該閾値以下の場合にはシングルバッファ方式を選択する。これについては後で詳述する。
【0025】
座標変換部230は、メモリインターフェース部220によりメモリ300から画像データを読出す際に、座標変換により画像の変形を行うために、画像の変形を反映した座標値を計算する。具体的には、メモリインターフェース部220からの座標変換先の座標値を入力して、画像の変形を反映した座標変換元の座標値を計算し、メモリインターフェース部220へ戻す。メモリインターフェース部220は、該座標変換元の座標値に基づいてメモリ300から画像データを読み出す。
【0026】
図3に座標変換部230の処理イメージを示す。これは、入力画像を90°回転変形した画像を出力する例を示したものである。ここで、図3(a)は、ある二つの画素の変換前と変換後の座標上の位置関係を示し、図3(b)は、メモリ300に記憶された入力画像と出力画像上の対応する画素の位置関係を示す。
【0027】
座標変換部230では、メモリ300からの画像データの読み出しの際に、出力画像上の座標(X1,Y1)(座標変換先の座標)の画素として、入力画像上の座標(x1,y1)(座標変換元の座標)の画素の画素データが読出されるように、座標値を計算する。また、出力画像の座標(X2,Y2)座標変換先の座標)の画素としては、入力画像上の座標(x2,y2)(座標変換元の座標)の画素の画像データが読出されるように座標値を計算する。メモリインターフェース部220では、この座標値をメモリ300のアドレスに変換し、メモリ300の対応するアドレスから画像データを読出す。これにより、出力画像として、入力画像を90°回転変形した画像を得ることができる。
【0028】
座標変換部230は、通常、LSIとして実装される。車載用撮像システムでは、歪み補正や回転補正や見下ろし補正やその他、利用状況などに応じて多種多様の画像変形が必要とされており、全ての種類の画像変形処理に対応するLSIを実装するのは、開発コストおよび回路規模の制限がある場合、実現困難である。そのため、LSIでは、画像変形処理のタイプに依存しない双線形補完処理のみを行うようにし、別途ソフトウェアなどで、各画像変形処理のタイプ対応に、双線形補間に利用する複数種類の座標変換テーブル(LUT)を作成して、PROMなどに記録しておく。
【0029】
なお、このような座標変換部230は、従来から色々提案されているので(例えば、特許文献2、特許文献3など)、具体的な構成等については省略する。
【0030】
画像出力部240は、メモリインターフェース部220から出力される画像データを入力し、それを表示装置400の表示形式に適した映像信号に変換(デジタル/アナログ変換)して出力する。ここでは、NTSC方式の映像信号に変換して出力する。
【0031】
フレームレート閾値比較部250は、画像処理部210が出力する同期信号、すなわち、センサユニット100が出力する同期信号を取り込み、該同期信号をもとに、センサユニット100から出力される画像データのフレームレートを検出し、該フレームレートを予め設定された閾値と比較する。メモリインターフェース部220は、このフレームレート閾値比較部250の比較結果に基づいて、メモリ300の書き込み・読み出し動作をダブルバッファ方式あるいはシングルバッファ方式に切り替える。
【0032】
図2は、フレームレート閾値比較部250とメモリインターフェース部220の処理フローチャートを示したものである。フレームレート閾値比較部250では、画像処理部210を通して、センサユニット100が出力する同期信号を監視しており、該同期信号を基にセンサユニット100から出力される画像データのフレームレートを検出する(ステップ11)。これは、例えば1秒当たりの垂直同期信号の数をカウントすることで可能である。次に、フレームレート閾値比較部250では、検出したフレームレートをあらかじめ設定された閾値(例えば15fps)と比較し、比較結果をメモリインターフェース部220に通知する(ステップ12)。例えば、フレームレート値>閾値の場合は“0”(正常)、フレームレート値≦閾値の場合は“1”(低下)を通知する。メモリインターフェース部220では、フレームレート閾値比較部250から“0”(正常)が通知された場合にはダブルバッファ方式を選択し(ステップ13)、“1”(低下)が通知された場合にはシングルバッファ方式を選択する(ステップ14)。そして、この選択した方式でメモリ300に対する書き込み・読み出し動作を行う(ステップ15)。
【0033】
図4乃至図6に具体的処理例を示す。ここでは、表示装置400の表示フレームレートは30fpsで一定、センサユニット100から出力される画像データのフレームレートは、通常は30fpsであるが、夜間などでは15fpsに低下し、30fpsの場合はダブルバッファ方式を選択し、15fpsの場合はシングルバッファ方式を選択するとする。また、メモリ300への書き込みはプログレシッブ方式、読み出しはインタレース方式とする。1フレームの画像データは図示の簡単化のため20行(ライン)とする。
【0034】
図4は、ダブルバッファ方式の例で、メモリへの書き込みと読み出しの速度が共に30fpsである。ダブルバッファ方式は、メモリを2フレーム分のメモリ領域に分け、書き込みと読み出しを同期させて、一方のメモリ領域にデータを書き込むと同時に他方のメモリ領域からデータを読み出し、これを1フレーム単位で交互に繰り返す方式である。図4(a)は、メモリ領域Aの1行目への書き込みとメモリ領域Bの1行目からの読出しを同時に開始し、メモリ領域Aに現フレームの1〜10行目まで書き込まれた時点で、メモリ領域Bから前フレームの奇数フィールド(1,3,・・・,19行)が読み出された状態を示している。図4(b)は、メモリ領域Aに、引き続き現フレームの11〜20行目まで書き込まれた時点で、メモリ領域Bから前フレームの偶数フィールド(2,4,・・・,20行)が読み出された状態を示している。すなわち、メモリ領域Aへの現フレームの書き込みが終了すると、同時に、メモリ領域Bから前フレームの読み出しが終了する。図4(c)と(d)は、メモリ領域Bが書き込み、メモリ領域Aが読み出しとなるだけで、図4(a),(b)と同様である。図4(d)の後、図4(a)に戻る。
【0035】
図4に示すように、画像データのフレームレートが30fpsで、メモリへの書き込みと読み出しの速度が共に30fpsの場合、ダブルバッファ方式を選択して、1フレーム毎にメモリ領域AとBで交互に書き込みあるいは読み出しを繰り返すことで、各フレームの画像を連続して出力することができる。
【0036】
しかしながら、画像データのフレームレートが例えば15fpsに低下し、メモリへの書き込み速度が15fpsになった場合(読出し速度はそのまま30fps)、そのままダブルバッファ方式を続けると、一方のメモリ領域(B領域とする)から前フレームの画像データが読み出された時点で、他方のメモリ領域(A領域とする)では未だ現フレームの画像データの書き込みが終了しておらず、1フレーム分の現画像データのメモリ領域Aへの書き込みが終了するまで、該メモリA領域から画像データを読み出すことができない。
【0037】
図5は、ダブルバッファ方式で、メモリへの書き込み速度が15fpsで、読み出し速度が30fpsの場合を示したものである。図5(a)は、メモリ領域Aの1行目への書き込みとメモリ領域Bの1行目からの読出しを同時に開始したが、メモリ領域Bから前フレームの奇数及び偶数フィールドが読み出された時点、すなわち、1フレームのデータの読み出しが終了した時、メモリ領域Aには、現フレームの1〜10行目までしか書き込まれていないことを示している。この場合、図5(b)に示すように、メモリ領域Aに現フレームの全データ(1〜20行)が書き込まれるまで待つことになる。一般には、この間、メモリ領域Bの前フレームをもう一度読み出すようにして、表示画面のちらつきを防いでいる。メモリ領域Aに1フレームの画像データの書き込みが終了すると、今度は該メモリ領域Aの1行目からの読み出しとメモリ領域Bの1行目への書き込みを同時に開始して、メモリ領域Aから画像データを読み出し、メモリ領域Bへ次の画像データを書き込んでいく。図5(c)は、この状態を示している。この場合も、メモリ領域Aから1フレームの奇数及び偶数フィールドの読み出しが終了した時、メモリ領域Bには、1フレームの半分のデータしか書き込まれない。したがって、図5(d)に示すように、メモリ領域Bに1フレームのデータが書き込まれるまで再び待つことになる。そして、メモリ領域Bに1フレームのデータが書き込まれたなら、再び該メモリ領域Bから画像データを読み出し、メモリ領域Aへ次のフレームの画像データを書き込むようにする(図5(a))。
【0038】
図6は、ダブルバッファ方式に代えてシングルバッファ方式で画像データの書き込み・読出しを行う場合を示したものである。ここで、図5と同様に、メモリへの書き込み速度は15fpsで、読出し速度は30fpsである。シングルバッファ方式は、メモリにデータを書き込むと共に、これを平行にして該メモリからデータを読み出す方式である。通常、メモリに対して、書き込みと読み出しを同時に行うことはできないため、所定の行毎に書込みと読み出しを交互に繰り返すことになる。図6では、フレームバッファメモリとしてメモリ領域Aを使用し、1フレームの画像データについて、1行(ライン)分の書き込みを行っては、奇数あるいは偶数の2行分の読出しを行う動作を繰り返すとしている。
【0039】
図6(a)は、メモリ領域Aに現フレームの1〜10行目が書き込まれるまでに、該メモリ領域Aから1フレーム分の奇数及び偶数フィールドが読み出されることを示している。具体的には、メモリ領域Aの1〜5行目まで書き込まれる間に、該メモリ領域Aの奇数フィールド(1,3,・・・,19行)が読み出され、メモリ領域Aの6〜10行目まで書き込まれる間に、該メモリ領域Aの偶数フィールド(2,4,・・・,20行)が読み出される。図6(b)は、メモリ領域Aに、引き続いて現フレームの11〜20行目まで書き込まれるまでに、該メモリ領域Aから再度、1フレーム分の奇数及び偶数フィールドが読み出されることを示している。ここで、網掛け部分は現フレームの画像データを示し、白部分は前フレームの画像データを示している。
【0040】
図6に示すように、画像データのフレームレートが低下した場合、ダブルバッファ方式にかえてシングルバッファ方式を選択することにより、各フレームで画像データの書き込みと平行して該画像データの読出しが行われるため、読み出しにフレーム単位での遅延時間の発生がなくなる。このため、夜間等、画像データのフレームレートが低下しても、障害物の実際位置とモニタに表示される障害物の位置とのずれがなくなり、事故を防止することができる。
【0041】
一方、例えば図6(a)に示すように、1フレーム分の書き込みが終わらないうちに、読み出しが追い越してしまうため、モニタに前フレームの一部が残像として現れ、画質が劣化する。本発明は、このような残像が現れるというような、あえて画質が劣化することになっても、安全のために、リアルタイムの応答を優先させるものである。しかも、フレームレートが低下するのは、夜間等に限られ、通常はダブルバッファ方式を採用することで、残像現象を抑え、画質が劣化することはない。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、これまでの説明に限られるものではない。例えば、メモリの書き込みと読み出しは、ともにプログレッシブ方式でもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開平11−053528号公報
【特許文献2】特開2008−082602号公報
【特許文献3】特開2009−010730号公報
【符号の説明】
【0044】
100 センサユニット
200 画像処理ユニット
210 画像処理部
220 メモリインターフェース部
230 座標変換部
240 画像出力部
250 フレームレート閾値比較部
300 メモリ
400 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される画像データを処理して表示装置に出力する画像処理装置において、
少なくとも2フレーム分の画像データを格納する記憶容量を備えたメモリと、
入力される画像データのフレームレートで画像データを前記メモリに書き込み、表示装置の表示フレームレートで前記メモリから画像データを読み出すメモリインターフェース手段と、
前記メモリから読み出された画像データを表示装置の表示形式に適した映像信号に変換して出力する画像出力手段とを有し、
前記メモリインターフェース手段は、前記入力される画像データのフレームレートに応じて、前記メモリの書き込み・読み出し動作をダブルバッファ方式あるいはシングルバッファ方式で行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記入力される画像データのフレームレートをあらかじめ定めた閾値と比較するフレームレート閾値比較手段を有し、
前記メモリインターフェース手段は、前記入力される画像データのフレームレートが前記閾値以上の場合にはダブルバッファ方式を選択し、閾値以下の場合にはシングルバッファ方式を選択することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記メモリインターフェース手段は、
ダブルバッファ方式では、前記メモリに少なくとも2フレーム分のメモリ領域を確保して、一方のメモリ領域に現フレームの画像データを書き込むと共に、これと並行してもう一方のメモリ領域から前フレームの画像デーを読み出し、これをフレーム単位で交互に繰り返し、
シングルバッファ方式では、前記メモリに少なくとも1フレーム分のメモリ領域を確保して、該メモリ領域に現フレームの画像データを書き込むと共に、これと並行して該メモリ領域から当該現フレームの画像データを読み出し、これを各フレームについて繰り返す、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記メモリインターフェース手段は、前記メモリへの書き込みをプログレッシブ方式で行い、前記メモリからの読み出しをインタレース方式で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記メモリから画像データを読み出す際に座標変換により画像の変形を行うために、前記メモリインターフェース手段から座標変換先の座標値を入力して、画像の変形を反映した座標変換元の座標値を計算して出力する座標変換手段を有し、
前記メモリインターフェース手段は、前記座標変換手段から出力される座標変換元の座標値に基づいて前記メモリから画像データを読み出すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
車の周辺を撮影して画像データを取得し出力するセンサユニットと、前記センサユニットから出力される画像データを処理し映像信号を出力する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置と、前記画像処理装置から出力される映像信号をモニタ表示する表示装置とを具備してなる車載用撮像システム。
【請求項7】
前記センサユニットは、周辺の明るさが暗くなると、出力する画像データのフレームレートを低下させることを特徴とする請求項6記載の車載用撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−66498(P2011−66498A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213107(P2009−213107)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】