説明

画像処理装置

【課題】RFIDタグへのアクセスエラーを低減させることが可能な画像処理装置を提供すること。
【解決手段】MFP100は,印刷対象の画像および書込み対象のデータを取得する(S101)。その後,RFIDタグが添付された用紙の搬送を開始し(S102),用紙に添付されたRFIDタグにアクセスする(S104)。そして,RFIDタグへのアクセスが正常に完了したか否かを判断し(S104),肯定判断された場合(S104:YES)には,画像を印刷する(S105)。一方,否定判断された場合(S104:NO)には,用紙がR/W装置52のアクセス範囲を通過する時間である通過時間が増大するように搬送制御を変更する(S141)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像の読み取り機能と画像の形成機能との少なくとも一方を有する画像処理装置に関する。さらに詳細には,RFID(Radio Frequency IDentification)タグ等の記憶媒体(以下,便宜上「RFIDタグ」と称する)にアクセス可能な画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,RFIDタグが添付された用紙(以下,「RFID用紙」とする)が提供されている。RFID用紙を利用する画像処理装置は,RFIDタグから情報を読み取る,あるいはRFIDタグに情報を書き込む,すなわちRFIDタグにアクセス可能なアクセス装置を内蔵し,画像処理が行われるRFID用紙の搬送過程でRFIDタグにアクセスする。
【0003】
RFIDタグにアクセス可能な画像処理装置では,RFIDタグへの読み書きが失敗することも考えられる。そこで,例えば,特許文献1には,非接触ICチップにデータの読み書きを行うリーダライタを備え,非接触ICチップに正常に読み書きできなかった場合に,用紙を反転して再給紙する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−110802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の画像処理装置には,次のような問題があった。すなわち,特許文献1のように,RFID用紙を再給紙してリトライしたとしても必ずしも成功するとは限らない。例えば,大量のデータ処理に伴う処理遅れについては,同じ条件でリトライしても再度エラーになることが予測される。
【0006】
本発明は,前記した従来の画像処理装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,RFIDタグへのアクセスエラーを低減させることが可能な画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像処理装置は,シートを搬送する搬送手段と,搬送手段にて搬送されるシートに添付された記憶媒体にアクセスするアクセス手段と,アクセス手段によるアクセスが正常に完了したか否かを判断する判断手段と,判断手段にてアクセスが正常に完了しなかったと否定判断された場合に,その否定判断されたシートに後続するシートの搬送について,アクセス手段のアクセス範囲を通過する時間である通過時間が増大するように,搬送手段の制御を変更する変更手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の画像処理装置は,シートに添付された記憶媒体(RFIDタグ等)にアクセスする機能を有している。「シート」には,読み取り対象の原稿,被書込み対象の用紙が含まれる。また,「アクセス」には,記憶媒体からの情報の読出し,記憶媒体への情報の書込み,あるいはその両方が含まれる。そして,本発明の画像処理装置は,記憶媒体へのアクセスが正常に完了したか否かを判断し,否定判断された場合に通過時間が増大するように搬送制御を変更する。アクセスが正常に完了しなかったか否かの判断は,例えば,エラー信号の受信や通信タイムアウトによって判断できる。
【0009】
すなわち,本発明の画像処理装置は,記憶媒体に対して正常にアクセスが完了しなかった場合に,後続するシートについては,搬送制御を変更してシートの通過時間を長くする。これにより,アクセス手段が記憶媒体にアクセス可能な時間が長くなり,処理遅れによるアクセス失敗の繰り返しを低減することが期待できる。なお,通過時間が長くなる搬送制御の変更には,シートの搬送速度の変更や,レジストローラでの待機時間の変更が適用可能である。
【0010】
また,本発明の画像処理装置は,アクセス手段によるアクセスが正常に完了しなかった理由がアクセス開始からアクセス完了までに要する時間であるアクセス時間の不足によるものであるか否かを判断する理由判断手段を備え,変更手段は,理由判断手段にてアクセス時間の不足によるものと肯定判断された場合に搬送手段の制御を変更し,否定判断された場合には制御を変更しないとよい。すなわち,メモリ容量不足等が原因の場合には,搬送制御を実施して通過時間を増大させても,リトライでアクセスが正常に完了する可能性が高まることはない。そのため,アクセス時間の不足に限り搬送制御を実施することで,より適切な運用を図ることができる。なお,アクセス時間の不足の判断は,例えば,アクセス完了後に記憶媒体から発信される正常完了信号を受信したか否かによって判断できる。
【0011】
また,本発明の画像処理装置は,変更手段にて搬送手段の制御を変更した場合に,少なくともその変更を実施したジョブが終了するまで変更後の制御を継続するとよい。すなわち,同一ジョブ内では同じようなデータ量のアクセスが継続する傾向にある。同一ジョブの処理中に搬送制御をすぐに戻してしまうと,エラーが再発する可能性が高くなる。そのため,同一ジョブにおいては変更後の制御を継続する方が好ましい。
【0012】
また,本発明の画像処理装置の変更手段は,搬送手段の制御を変更した後に,判断手段にて再度否定判断された場合に,さらに,通過時間が増大するように,搬送手段の制御を変更するとよい。すなわち,1回の変更でエラーが解消できるとは限らない。そのため,制御変更を繰り返す構成にすることで,より確実にアクセス失敗の繰り返しを低減することが期待できる。
【0013】
また,本発明の画像処理装置は,搬送手段にて搬送されるシートに画像を形成する形成手段を備え,アクセス手段は,記憶媒体へデータを書き込む機能を有するものであり,形成手段は,判断手段にて否定判断された場合に,その否定判断されたシートに形成する画像を,後続するシートに対して形成するとよい。すなわち,否定判断されたシート(先行のシート)は,記憶媒体への書込みが不十分であり,ユーザが所望する出力物ではない。そこで,搬送制御の変更後,再度記憶媒体への書込みが行われた後続のシートに,先行のシートの画像を形成することで,ユーザは所望する出力物を得られる。
【0014】
また,本発明の画像処理装置は,搬送手段にて搬送されるシートに画像を形成する形成手段を備え,形成手段は,判断手段にて否定判断されたシートに,否定判断された旨の告知画像を形成するとよい。告知画像を形成することで,記憶媒体へのアクセスが失敗したシートを簡単に区別することができ,使い勝手が向上する。告知画像には,例えば,エラーを示す文字列やマークが該当する。
【0015】
また,本発明の画像処理装置は,判断手段にて否定判断されたシートを肯定判断されたシートと分別して排紙する排紙手段を備えるとよい。すなわち,分別排紙することで,記憶媒体へのアクセスが失敗したシートを簡単に区別することができ,使い勝手が向上する。分別排紙は,例えば,異なる排紙トレイに排紙することや,同じ排紙トレイであっても排紙位置をずらして排紙することで実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,RFIDタグへのアクセスエラーを低減させることが可能な画像処理装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態にかかる複合機の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態にかかる複合機の,画像読取部の概略構成を示す図である。
【図3】実施の形態にかかる複合機の,画像形成部の概略構成を示す図である。
【図4】実施の形態にかかる複合機の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】書込プリント処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】書込プリント処理を行う際の,告知画像の設定画面の一例を示す図である。
【図7】RFID用紙に告知文字列を印刷する動作態様のイメージを示す図である。
【図8】RFID用紙に告知マークを印刷する動作態様のイメージを示す図である。
【図9】書込プリント処理を行う際の,振分排紙の設定画面の一例を示す図である。
【図10】読出スキャン処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明にかかる画像処理装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,RFIDタグにアクセスする機能を有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0019】
[MFPの全体構成]
実施の形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部10と,原稿の画像を読み取る画像読取部20とを備えている。また,画像読取部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部41と,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0020】
[画像読取部の構成]
画像読取部20は,原稿を読み取って画像データを作成する。具体的に本形態の画像読取部20は,図2に示すように,原稿の画像を読み取るスキャナ部21と,原稿の自動搬送を行うADF(Auto Document Feeder:自動原稿供給装置)22(搬送手段の一例)とを備えている。スキャナ部21は,その上面に位置する透明なプラテンガラス23,24と,その内部に位置するイメージセンサ25とを備えている。
【0021】
ADF22は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ221と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ222とを備えている。ADF22は,原稿トレイ221に載置された原稿を1枚ずつ取り出し,その原稿の読み取りが行われた後,その原稿を排出トレイ222上に排出する。なお,ADF22は,スキャナ部21の上方を開閉可能に覆い,プラテンガラス24を含む原稿載置台26上に原稿が載置された場合に,その原稿に対する原稿押さえカバーとしての機能も兼ねる。
【0022】
原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(原稿移動走査)方式とがある。フラットベッド方式の場合,原稿を1枚ずつプラテンガラス24(以下,「FBガラス24」とする)上に載置する。その状態で,イメージセンサ25が副走査方向(主走査方向に直交する方向,図2の矢印A方向)に移動し,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。一方,ADF方式の場合,原稿を纏めて原稿トレイ221に載置する。そして,イメージセンサ25がプラテンガラス23(以下,「ADFガラス23」とする)に対向する位置に移動し,固定される。その状態で,原稿がADFガラス23に対向する位置(読取位置)に搬送され,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。
【0023】
続いて,ADF22について詳説する。ADF22の内部には,各種のローラよって原稿トレイ221と排出トレイ222とを連結する略U字形状の搬送路27が設けられている。具体的に,搬送路27は,原稿トレイ221からADF22内に取り込まれ,幾つものローラを経由してUターンし,ADFガラス23上を通って排出トレイ222に向かう経路を構成している。そして,ADFガラス23上の通過時に,イメージセンサ25によって原稿の画像が読み取られる。
【0024】
さらに,ADF22内には,原稿の両面の画像を読み取るための両面読取機構が備えられている。搬送路28は,一方の面の画像読み取りが行われた原稿の,他方の面の画像読み取りが行われるように,原稿を反転して読取位置に再搬送するための搬送経路である。また,ADF22のケースに設けられたスリット29は,原稿の一部をADF22外に送り出し,原稿を反転させるために設けられている。具体的に,ADF22の内部には,スイッチバックローラ281と,第1案内フラップ282と,第2案内フラップ283とが設けられ,搬送路28を構成している。すなわち,搬送路28は,第1案内フラップ282から第2案内フラップ283を経由してスイッチバックローラ281に向かう経路になる。
【0025】
また,ADF22は,所定範囲内に存在するRFIDタグを検知し,そのRFIDタグに対してデータの読出しおよび書込みを行うことが可能なリード/ライト装置51(以下,「R/W装置51」とする。アクセス手段の一例)を備えている。R/W装置51は,用紙搬送路27を通過する原稿に添付されたRFIDタグにアクセス可能な範囲に配置される。言い換えると,用紙搬送路27は,その一部がR/W装置51のアクセス範囲に含まれる。
【0026】
[画像形成部の構成]
画像形成部10は,パーソナルコンピュータ(PC)等の情報端末装置から送られてくる画像データや画像読取部20で読み取った原稿の画像データを基に画像を形成し,当該画像を用紙に転写する。本形態の画像形成部10は,周知の電子写真方式によって画像を形成するものであり,図3に示すように,画像を形成するプロセス部50と,未定着のトナー像を定着させる定着装置8と,画像形成前の用紙を載置する給紙カセット91と,画像形成後の用紙を載置する排紙トレイ92,93とを備えている。
【0027】
画像形成部10(搬送手段,形成手段,排紙手段の一例)内には,底部に位置する給紙カセット91に収容された用紙が,給紙ローラ73,レジストローラ76,プロセス部50,定着装置8を通り,排紙ローラ74を介して上部の排紙トレイ92へ,あるいは排紙ローラ75を介して排紙トレイ93へ導かれるように,略S字形状の搬送経路71が設けられている。すなわち,画像形成部10は,給紙カセット91に載置されている用紙を1枚ずつ取り出し,その用紙をプロセス部50に搬送し,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。さらに,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92あるいは排紙トレイ93に排出する。
【0028】
プロセス部50は,感光体1と,感光体1の表面を一様に帯電する帯電装置2と,感光体1の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光装置3と,静電潜像に対してトナーによる現像を行う現像装置4と,感光体1上のトナー像を用紙に転写させる転写装置5と,感光体1上の残留トナーを除去するクリーニングブレード6とを有している。
【0029】
プロセス部50では,感光体1の表面が帯電装置2によって一様に帯電される。その後,露光装置3からの光により露光され,用紙に形成すべき画像の静電潜像が形成される。次いで,現像装置4を介して,トナーが感光体1に供給される。これにより,感光体1上の静電潜像は,トナー像として可視像化される。
【0030】
さらに,画像形成部10内には,用紙の両面に印刷を行うための両面印刷機構が備えられている。搬送路72は,一方の面に印刷が行われた用紙の,他方の面にも印刷が行われるように,用紙を反転してプロセス部50に再搬送するための搬送経路である。
【0031】
また,画像形成部10は,所定範囲内に存在するRFIDタグを検知し,そのRFIDタグに対してデータの読出しおよび書込みを行うことが可能なR/W装置52(アクセス手段の一例)を備えている。R/W装置52は,搬送路71を通過するRFID用紙のRFIDタグにアクセス可能な範囲に配置される。言い換えると,搬送路71は,その一部がR/W装置52のアクセス範囲に含まれる。
【0032】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図4に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM34と,ASIC35と,ネットワークインタフェース36と,FAXインタフェース37とを備えた制御部30を有している。
【0033】
CPU31は,MFP100における画像読取機能,画像形成機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。NVRAM(Non Volatile RAM)34は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定ないし画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0034】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素(例えば,画像形成部10を構成する露光装置の点灯タイミング,用紙の搬送路を構成する各種ローラの駆動モータ(不図示),画像読取部20を構成するイメージセンサユニットの移動用モータ(不図示))を,ASIC35を介して制御する。
【0035】
ネットワークインターフェース36は,インターネット等のネットワークに接続され,PC等の情報処理装置との接続を可能にしている。FAXインターフェース37は,電話回線に接続され,相手先のFAX装置との接続を可能にしている。そして,ネットワークインターフェース36やFAXインターフェース37を介してジョブのやりとりを行うことができる。
【0036】
[書込プリント処理]
続いて,MFP100における書込プリント処理(搬送手段,アクセス手段,判断手段,変更手段,理由判断手段,形成手段,排紙手段の一例)について,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。本書込プリント処理では,用紙への画像形成に加え,その用紙に添付されたRFIDタグへデータの書込みを行う。なお,本処理は,書込プリント処理での印刷指示を契機に実行される。
【0037】
まず,印刷対象となるジョブの,1ページ目の画像データおよびRFIDタグに書き込むデータを取得する(S101)。画像データは,画像読取部20のスキャナ部21で読み取ったものであってもよいし,PC等から送られてきたものであってもよい。また,RFIDタグに書き込むデータは,画像読取部20のR/W装置51で読み出したものであってもよいし,PC等から送られてきたものであってもよい。
【0038】
画像データ等を取得すると,給紙カセット91からRFID用紙を1枚取り出し,搬送経路71上にそのRFID用紙を搬送する(S102)。RFID用紙の搬送が開始されると,R/W装置52からアクセス許可信号が発信され,RFID用紙がR/W装置52のアクセス範囲に進入すると,RFIDタグがそのアクセス許可信号に対する応答信号を発信する。この応答信号の受信を契機に,RFIDタグへのデータの書込みを開始する(S103)。
【0039】
次に,全データの書込みが完了したか否かを判断する(S104)。書込みの完了は,例えば書込み完了時にRFIDタグから発信される完了信号を受信したか否かによって判断する。書込みが完了しなかった場合には(S104:NO),S121の処理に移行してエラー処理を行う(S121)。このエラー処理では,RFIDタグへの書込みが失敗したことをユーザに認識させるための処理を行う。
【0040】
本形態では,S121のエラー処理として,次の2つの処理を行うことができる。1つ目は,告知画像を形成する処理である。MFP100では,操作パネル40の表示部41に,図6に示すような設定画面を表示し,ユーザに告知画像を印刷するか否かの選択を促す。そして,ユーザがラジオボタン411によって印刷することを選択することで告知画像が設定される。告知画像の態様としては,例えば,図7に示すように,RFIDタグ82への書込みが失敗したことを告知する文字列83をRFID用紙81に印刷する。また,例えば,図8に示すように,RFIDタグ82への書込みが失敗したことを告知するマーク84をRFID用紙81の中心部に印刷してもよい。この告知画像をユーザが見ることにより,RFIDタグへの書込みが失敗したことをユーザが認識できる。
【0041】
2つ目は,RFIDタグへの書込みが失敗したRFID用紙を,正常に書込みが完了した用紙と振り分けて排紙する処理である。MFP100では,操作パネル40の表示部41に,図9に示すような設定画面を表示し,ユーザに通常排紙と異なる排紙トレイ(指定排紙トレイ)に排紙するか否かの選択を促す。そして,ユーザがラジオボタン412によって指定排紙トレイに排紙することを選択することで振分排紙が設定される。なお,どの排紙トレイを指定排紙トレイとするかは,別途,指定排紙トレイの設定画面によって設定される。例えば,MFP100では,排紙トレイ92,93の一方がRFIDタグへの書込みが失敗したときの排紙トレイ(指定排紙トレイ)となり,他方がRFIDタグへの書込みが成功したときの排紙トレイとなる。このように正常に書込みが完了した用紙とエラーとなった用紙とを排紙段階で振り分けることで,RFIDタグへの書込みが失敗した用紙をユーザが認識できる。
【0042】
S121でのエラー処理を行った後には,書込みが完了しなかった原因がRFIDタグへのアクセス開始からアクセス完了までに要する時間であるアクセス時間の不足であるか否かを判断する(S122)。アクセス時間の不足は,所定時間内にRFIDタグから発信される完了信号を受信したか否かによって判断する。例えば,通信エラーの場合にはRFIDタグから発信されるエラー信号を受信することがある。また,例えば,RFIDタグが故障している場合には最初から書込許可信号に対する応答がない。このため,アクセス時間の不足と他のエラーとを区別することができる。
【0043】
アクセス時間の不足と判断した場合には(S122:YES),用紙の搬送速度を遅くする(S141)。すなわち,RFID用紙がR/W装置52のアクセス範囲を通過する時間である通過時間が増大するように,用紙の搬送制御を変更する。例えば,通過時間が直前の設定よりも20%増大するように制御する。制御の変更後は,S102の処理に戻り,次の用紙を搬送し,書込みが失敗したデータを再度書き込む。すなわち,搬送速度を遅くした状態で,新たに搬送されたRFID用紙に対して書込み処理をリトライする。リトライ時は前回の書込み時と比較して通過時間が長いことから,書込みが完了する確率が高まることが期待できる。
【0044】
一方,RFIDタグ容量不足,通信異常,RFIDタグ破損等,アクセス時間の不足以外と判断した場合には(S122:NO),ジョブをキャンセルする(S123)。そして,S141で搬送制御を変更していることを考慮し,搬送制御を初期化し(S107),本処理を終了する。
【0045】
S104の説明に戻り,書込みが正常に完了した場合には(S104:YES),S101で取得した画像を印刷する(S105)。その後,最終ページの印刷が終了したか否かを判断する(S106)。最終ページの印刷が終了していない場合には(S106:NO),S101に戻り,次のページの画像およびRFIDタグに書き込むデータを取得する。一方,最終ページの印刷が終了した場合には(S106:YES),搬送制御を初期化し(S107),本処理を終了する。
【0046】
以上詳細に説明したように本形態のMFP100の書込プリント処理では,RFIDタグに対して正常に書込みが完了しなかった場合に,搬送速度が遅くなるように搬送制御を変更し,RFID用紙がR/W装置52のアクセス範囲を通過する通過時間を長くする。これにより,後続するRFID用紙については,R/W装置52がRFIDタグにアクセス可能な時間が長くなり,処理遅れによるアクセス失敗の繰り返しを低減することが期待できる。
【0047】
また,書込プリント処理では,変更した搬送速度を,同一ジョブにおいて継続している。すなわち,同一ジョブ内では同じようなデータ量のアクセスが継続する傾向にある。同一ジョブの処理中に搬送制御をすぐに戻してしまうと,エラーが再発する可能性が高くなる。そのため,同一ジョブにおいては変更後の制御を継続する方が好ましい。
【0048】
また,書込プリント処理では,搬送速度を遅くした後に再度アクセス時間の不足によるエラーが発生した場合に,さらに,通過時間が増大するように,搬送速度を遅くしている。すなわち,搬送速度の1回の変更でエラーが解消できるとは限らない。そのため,制御変更を繰り返す構成にすることで,より確実にアクセス失敗の繰り返しを低減することが期待できる。
【0049】
また,書込プリント処理では,アクセス時間の不足によるエラーが発生した場合に,そのエラーとなったRFID用紙に形成する予定だった画像を,後続するRFID用紙に対して形成する。すなわち,エラーとなったRFID用紙(先行の用紙)は,RFIDタグへの書込みが不十分であり,ユーザが所望する出力物ではない。そこで,搬送制御の変更後,再度RFIDタグへの書込みが行われた後続の用紙に,先行の用紙の画像を形成することで,ユーザは所望する出力物を得られる。
【0050】
[読出スキャン処理]
続いて,MFP100における読出スキャン処理(搬送手段,アクセス手段,判断手段,変更手段,理由判断手段の一例)について,図10のフローチャートを参照しつつ説明する。本読出スキャン処理では,ADF方式での原稿の読み取りに加え,その原稿に添付されたRFIDタグからデータの読み出しを行う。なお,本処理は,読出スキャン処理での読取指示を契機に実行される。
【0051】
まず,原稿トレイ221に載置されたRFIDタグ付きの原稿(以下,「RFID原稿」とする)を1枚取り出し,搬送路27上にそのRFID原稿を搬送する(S201)。RFID原稿の搬送が開始されると,R/W装置51からアクセス許可信号が発信され,RFID原稿がR/W装置51のアクセス範囲に進入すると,RFIDタグがそのアクセス許可信号に対する応答信号を発信する。この応答信号の受信を契機に,RFIDタグのデータの読み出しを開始する(S202)。
【0052】
次に,全データの読み出しが完了したか否かを判断する(S203)。読み出しが完了しなかった場合には(S203:NO),S221の処理に移行してエラー処理を行う(S221)。このエラー処理では,RFIDタグからの読み出しが失敗したことをユーザに認識させるための処理を行う。
【0053】
本形態では,S221のエラー処理として,警告音の発音と,操作パネル40の表示部41へのエラーメッセージの表示を行う。各種の設定は,操作パネル40を操作することによって行う。なお,ADF22が複数の排紙トレイを備える場合には,図示しない振分機構によって振分排紙を行ってもよい。
【0054】
S221でのエラー処理を行った後には,読み出しが完了しなかった原因がRFIDタグへのアクセス開始からアクセス完了までに要する時間であるアクセス時間の不足であるか否かを判断する(S222)。アクセス時間の不足は,所定時間内にRFIDタグから発信される完了信号を受信したか否かによって判断する。
【0055】
アクセス時間の不足と判断した場合には(S222:YES),原稿の搬送速度を遅くする(S241)。すなわち,RFID原稿がR/W装置51のアクセス範囲を通過する時間である通過時間が増大するように,原稿の搬送制御を変更する。MFP100は,制御の変更を記憶し,原稿の再セットを催促するメッセージを操作パネル40の表示部41に表示し(S242),本処理を終了する。その後,ユーザが原稿を原稿トレイ221上に再セットし,再度,読出スキャン処理での読取指示を入力する。これにより,搬送速度を遅くした状態で読み出し処理がリトライされる。リトライ時は前回の読み出し時と比較して通過時間が長いことから,読み出しが完了する確率が高まることが期待できる。
【0056】
一方,アクセス時間の不足以外と判断した場合には(S222:NO),ジョブをキャンセルし(S223),本処理を終了する。
【0057】
S203の説明に戻り,読み出しが正常に完了した場合には(S203:YES),原稿の画像を読み取る(S204)。その後,最終ページの読み取りが終了したか否かを判断する(S205)。最終ページの読み取りが終了していない場合には(S205:NO),S201に戻り,次のページの搬送を開始する。一方,最終ページの読み取りが終了した場合には(S205:YES),搬送制御を初期化し(S206),本処理を終了する。
【0058】
以上詳細に説明したように本形態のMFP100の読出スキャン処理では,RFIDタグに対して正常に読み出しが完了しなかった場合に,一旦搬送を停止し,搬送速度が遅くなるように搬送制御を変更し,RFID原稿がR/W装置51のアクセス範囲を通過する通過時間を長くする。これにより,その後のRFID原稿については,R/W装置51がRFIDタグにアクセス可能な時間が長くなり,処理遅れによるアクセス失敗の繰り返しを低減することが期待できる。
【0059】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,複合機(MFP)に限らず,コピー機,プリンタ,スキャナ,FAX装置等,画像処理機能を備えるものであれば適用可能である。また,画像形成部の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0060】
また,実施の形態では,画像読取部20と画像形成部10とでともに両面での画像読み取りないし画像形成を可能にしているが,これに限るものではない。すなわち,片面の画像読み取りないし画像形成をサポートするのみであっても適用可能である。
【0061】
また,実施の形態では,画像形成とRFIDタグ書込みとの組み合わせや,原稿読取とRFIDタグ読み出しとの組み合わせについて説明したが,画像形成とRFIDタグ読み出しとの組み合わせや,原稿読取とRFIDタグ書込みとの組み合わせについても適用可能である。
【0062】
また,実施の形態では,書込プリント処理での用紙の通過時間を増大させる処理として,用紙の搬送速度を減速しているが,これに限るものではない。例えば,本形態の画像形成部10のように,用紙をレジストローラ76で一旦停止させ,用紙の搬送タイミングを調節するものであれば,レジストローラ76で停止する時間を長くするように変更してもよい。この場合,レジストローラ76での停止位置が,R/W装置52のアクセス範囲に含まれる。
【0063】
また,本実施の形態では,振分排紙として,異なる排紙トレイに排紙しているが,これに限るものではない。例えば,同じ排紙トレイであっても,通常印刷によって排紙される用紙から少しずらした位置に排紙するオフセット排紙機能を有している装置であれば,振分排紙としてオフセット排紙を行ってもよい。
【0064】
また,実施の形態では,RFIDタグへの書込みの後に用紙への画像形成を行っているが,順序は逆であってもよい。また,RFIDタグへの書込みと用紙への画像形成とを並行して行ってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 画像形成部
20 画像読取部
30 制御部
40 操作パネル
41 表示部
51 R/W装置
52 R/W装置
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送手段と,
前記搬送手段にて搬送されるシートに添付された記憶媒体にアクセスするアクセス手段と,
前記アクセス手段によるアクセスが正常に完了したか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段にてアクセスが正常に完了しなかったと否定判断された場合に,その否定判断されたシートに後続するシートの搬送について,前記アクセス手段のアクセス範囲を通過する時間である通過時間が増大するように,前記搬送手段の制御を変更する変更手段と,
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像処理装置において,
前記アクセス手段によるアクセスが正常に完了しなかった理由がアクセス開始からアクセス完了までに要する時間であるアクセス時間の不足によるものであるか否かを判断する理由判断手段を備え,
前記変更手段は,前記理由判断手段にてアクセス時間の不足によるものと肯定判断された場合に前記搬送手段の制御を変更し,否定判断された場合には制御を変更しないことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像処理装置において,
前記変更手段にて前記搬送手段の制御を変更した場合に,少なくともその変更を実施したジョブが終了するまで変更後の制御を継続することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記変更手段は,前記搬送手段の制御を変更した後に,前記判断手段にて再度否定判断された場合に,さらに,前記通過時間が増大するように,前記搬送手段の制御を変更することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記搬送手段にて搬送されるシートに画像を形成する形成手段を備え,
前記アクセス手段は,記憶媒体へデータを書き込む機能を有するものであり,
前記形成手段は,前記判断手段にて否定判断された場合に,その否定判断されたシートに形成する画像を,後続するシートに対して形成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記搬送手段にて搬送されるシートに画像を形成する形成手段を備え,
前記形成手段は,前記判断手段にて否定判断されたシートに,否定判断された旨の告知画像を形成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記判断手段にて否定判断されたシートを肯定判断されたシートと分別して排紙する排紙手段を備えることを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−191659(P2010−191659A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34976(P2009−34976)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】