説明

画像処理装置

【課題】画像から特徴抽出を行う前に、撮像装置での変換特性を補正することにより、特徴抽出を精度よく行うことを可能にする。
【解決手段】前置処理手段10は、撮像装置2により撮像した画像内の画素の画素値を補正テーブル12に従って補正した画像を出力する。主処理手段20は、前置処理手段10から出力された画像を用いて撮像装置2により撮像された所定の空間領域に関する特徴抽出を行う。撮像装置2により明度の関係が既知である標準領域が表記されたサンプル指標を撮像し、画像内で標準領域を撮像した領域の明度の既知の関係と、撮像装置2から出力される画素値の関係とを用いて、テーブル生成手段13が補正テーブルを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置により撮像した空間領域の画像から特徴抽出を行う画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、外観検査や空間監視などの目的において、撮像装置により撮像した空間領域の画像に対してデジタル信号処理による画像処理を行い、空間領域に関する特徴を抽出する技術が種々提案されている(たとえば、特許文献1参照)。撮像装置により撮像した画像の画像処理は、プログラムに従ってデジタル信号処理を行うプロセッサを備えた画像処理装置により行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−245072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、撮像装置が撮像した画像に含まれる画素ごとの画素値は、撮像装置の各画素での受光強度(受光光量)に対して単調に変化するが、必ずしも線形関係にはなっていない。一方、画像処理装置において、特徴を精度よく抽出するには、受光強度と画素値との関係が線形であることが望ましい。たとえば、受光強度の小さい領域において画素値の変化が大きく、受光強度の大きい領域において画素値の変化が少なくなると、受光強度の大きい領域では小さい領域よりも特徴抽出の精度が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、画像から特徴抽出を行う前に、撮像装置での変換特性を補正することにより、特徴抽出を精度よく行うことを可能にした画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、撮像装置により撮像した画像内の画素の画素値を補正する前置処理手段と、前置処理手段から出力された補正後の画像を用いて撮像装置により撮像された所定の空間領域に関する特徴抽出を行う主処理手段とを有し、前置処理手段は、撮像装置での受光強度のうちの少なくとも所望範囲において受光強度と前置処理手段から出力する画素値とが線形関係になるように前置処理手段に入力される画素値と前置処理手段から出力する画素値とを対応付けた補正テーブルと、前置処理手段に入力された画素値を補正テーブルに照合し前置処理手段から出力する画素値を抽出する補正処理手段と、撮像装置から既知の複数の受光強度と撮像装置から出力される画素値との関係を用いて補正テーブルを生成するテーブル生成手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、テーブル生成手段は、それぞれ異なる明度を有する複数の標準領域が表記されたサンプル指標を撮像装置により撮像したときの画素値を取得し、サンプル指標の各標準領域の既知の明度と、撮像装置から出力された画像内で標準領域に対応する領域の画素値とを用いることにより、補正テーブルを生成することが望ましい。
【0008】
あるいはまた、テーブル生成手段は、撮像装置の視野内の明度が一様である環境下において撮像装置により異なる複数のシャッタ速度で撮像したときの画素値を取得し、各シャッタ速度から求められる撮像装置での受光強度と、撮像装置から出力された画素値とを用いることにより、補正テーブルを生成してもよい。
【0009】
さらに、テーブル生成手段は、所定の期間ごとに補正テーブルを生成することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、画像から特徴抽出を行う前に、撮像装置での変換特性を改善することにより、特徴抽出が精度よく行えるようになるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上に用いるサンプル指標の一例を示す正面図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
図1に示すように、画像処理装置1には撮像装置2が接続される。撮像装置2は、CCDイメージセンサあるいはCMOSイメージセンサからなる撮像素子(図示せず)を内蔵し、レンズを備える受光光学系(図示せず)を通して所望の空間領域を撮像する。また、撮像装置2は、画像処理装置1からの指示を受けて、電子式シャッタのシャッタ速度を調節することにより感度を調節する。撮像装置2は、撮像素子の出力を増幅する増幅器(図示せず)を内蔵し、画像処理装置1からは増幅器の増幅度を指示することが可能になっている。撮像装置2としては、絞り(アイリス)を備える構成を採用してもよく、絞りを備える撮像装置2では、画像処理装置1からの指示を受けて、絞りの開口径を変化させることにより感度を調節する。
【0013】
本実施形態では、説明を簡単にするために、撮像装置2がモノクロ画像(濃淡画像)を出力する場合を想定する。なお、以下に説明する技術は、モノクロ画像ではなくカラー画像にも適用することが可能である。カラー画像を用いる場合、撮像装置2からは画素値が三刺激値(赤色(R)、緑色(G)、青色(B))の濃淡値で表した画像信号が出力される。
【0014】
一方、画像処理装置1は、撮像装置2から出力された画像信号を画像処理に適した信号に変換する前置処理手段10と、前置処理手段10による変換後の画像を用いて撮像装置2により撮像した空間領域の特徴を抽出する主処理手段20とを備える。ここでは、撮像装置2により対象物を含む空間領域を撮像し、対象物の外観検査を行うために特徴抽出を行う場合を想定する。なお、外観検査のための特徴抽出を行う画像処理技術は種々提案されており、また要旨ではないので説明を省略する。
【0015】
画像処理装置1にはモニタ装置3および操作装置4が接続される。モニタ装置3の画面には前置処理手段10から出力された画像が、画像表示手段30を通して表示される。また、操作装置4は、数個の押釦スイッチを備える簡単な構成であって、モニタ装置3に表示する画面を選択する操作、モニタ装置3に表示された選択肢を選択する操作などの簡単な操作が可能になっている。すなわち、操作装置4はモニタ装置3とともに用いて対話的な入力が可能になっている。また、画像処理装置1には、パーソナルコンピュータのような外部装置5を接続することが可能であって、外部装置5を用いることにより、画像に対する処理の手順および内容(パラメータ)の設定が可能になっている。
【0016】
前置処理手段10は、撮像装置2から出力された画素値を補正して主処理手段20に与える補正処理手段11を備える。補正処理手段11は、撮像装置2の受光強度(受光光量)と、主処理手段20に与える画素値(前置処理手段10から出力する画素値)との関係を線形関係になるように補正する。
【0017】
ただし、撮像装置2の受光強度のすべての範囲において、前置処理手段10から出力する画素値と線形関係になる必要はなく、受光強度の所望の範囲において線形関係が得られていればよい。そのため、前置処理手段10には、受光強度の範囲を、モニタ装置3と操作装置4とを用いて対話的に設定する範囲指定手段40が設けられる。
【0018】
また、画像処理装置1は、主処理手段20による画像処理を行う運転モードと、後述する補正テーブル12の内容を調節する校正モードとを有している。校正モードと運転モードとの切替は、操作装置4を操作するか、画像処理装置1に接続されるパーソナルコンピュータのような外部装置5から指示することにより行う。あるいは、校正モードと運転モードとを切り替えるスイッチを画像処理装置1に設けてもよい。
【0019】
補正テーブル12としては、運転モードにおいて停電などが生じてもデータが消失することのないように不揮発性メモリを用いることが望ましい。また、校正モードでは、補正テーブル12の内容を変更するから、作業用メモリとして揮発性メモリを用いることにより内容の変更に対応しやすくするのが望ましい。すなわち、校正モードにおいて揮発性メモリを用いて補正テーブル12の内容を作成し、校正モードから運転モードに移行する際に、揮発性メモリから不揮発性メモリにデータを転送し、不揮発性メモリを補正テーブル12として用いるのが望ましい。
【0020】
補正テーブル12は、撮像装置2が撮像した空間領域において所望の受光強度(受光光量)の範囲について、受光強度と前置処理手段10から出力する画素値とが線形関係になるように、撮像装置2から出力される画素値を補正する目的で設けられている。このように、撮像装置2における受光強度と、主処理手段20が処理する画素値とが線形関係であれば、主処理手段20では、撮像装置2での受光強度の相違を正確に反映させて空間領域の特徴抽出を正確に行うことが可能になる。
【0021】
以下では、補正テーブル12の作成手順を説明する。本実施形態では、図2に示すように、それぞれ異なる明度を有する複数の標準領域D1,D2,…が表記されたサンプル指標6を撮像装置2により撮像する。前置処理手段10は、各標準領域D1,D2,…の明度と撮像装置2から出力される画素値とを用いて補正テーブル12を生成するテーブル生成手段13を備えている。
【0022】
サンプル指標6は、たとえば標準領域D1,D2,…をシートに表記したものであり、シートの材料としては紙あるいは合成樹脂を用いることができる。また、各標準領域D1,D2,…を異なる明度となるように表記し、かつ隣接する標準領域D1,D2,…の明度差が等しくなるように設定してある。なお、標準領域D1,D2,…の内部において、明度は一定であるものとする。図示例では,白色から黒色まで9段階の明度の標準領域D1,D2,…を設定しているが、段階数は適宜に選択することが可能である。
【0023】
適正な照明下でサンプル指標6の全体が撮像装置2の視野に含まれるように撮像した場合には、撮像装置2において各標準領域D1,D2,…に対応する画素の受光強度は、標準領域D1,D2,…の明度に比例するとみなすことができる。
【0024】
撮像装置2の受光強度と前置処理手段10から出力される画素値とが線形関係であるには、以下の条件が満たされなければならない。すなわち、サンプル指標6における隣接する標準領域D1,D2,…の明度差は一定であるから、撮像装置2により撮像された画像内において標準領域D1,D2,…に対応する領域の画素値の差が一定になるという条件を満たす必要がある。
【0025】
撮像装置2により撮像された画像内において標準領域D1,D2,…に対応する領域の画素値を抽出するには、モニタ装置3と操作装置4とを用いて範囲指定手段40により対話的に標準領域D1,D2,…を指定する。標準領域D1,D2,…の指定には単純形状(矩形や円形)を標準領域D1,D2,…の中に置けばよい。標準領域D1,D2,…の明度の関係は既知であるから、指定した標準領域D1,D2,…に対応する画素値を抽出することにより、撮像装置2における受光強度と出力される画素値との関係を求めることが可能になる。すなわち、テーブル生成手段13では、この関係を用いることによって、撮像装置2における受光強度と前置処理手段10から出力する画素値とが線形関係になるように補正テーブル12を生成する。
【0026】
ここに、標準領域D1,D2,…は3個以上指定する必要があり、指定数が多いほど精度のよい補正テーブル12を生成することができる。また、テーブル生成手段13は、範囲指定手段40により指定された標準領域D1,D2,…の明度を内挿した補正テーブル12を生成することが望ましい。
【0027】
すなわち、明度の上限値と下限値との範囲内において画素値を対応付けた補正テーブル12を作成し、明度の範囲外については画素値を対応付けないようにすれば、画素値が取り得る範囲の全体を明度の範囲に割り当てることが可能になる。この場合、画素値の刻み幅(画素値の1段階)当たりの明度の変化を小さくすることが可能になり、主処理手段20において明度の微小変化を利用して特徴抽出に利用することが可能になる。
【0028】
上述した処理により、撮像装置2での受光強度と前置処理手段10から出力する画素値とが線形関係になるように、前置処理手段10に入力される画素値と前置処理手段10から出力する画素値とを対応付けることが可能になる。たとえば、撮像装置2での受光光量と画素値とが図3(a)の関係である場合に、補正テーブル12を用いて補正することにより、撮像装置2での受光光量と前置処理手段10が出力する画素値との関係を図3(b)のように線形関係に補正することが可能になる。
【0029】
上述の動作例では、校正モードを操作装置4などによって選択しているが、タイマ(図示せず)を設けておき、所定の期間ごとに校正モードが選択されるようにして補正テーブル12を自動的に更新するようにしてもよい。補正テーブル12を自動的に更新する構成を採用することにより、経時変化に対しても受光強度と画素値との線形関係を維持することが可能になる。ただし、校正モードにおいてはサンプル指標6が必要であるから、校正モードを自動化するには、校正モードでは撮像装置2の視野にサンプル指標6が自動的に現れる機構を設けることが必要である。
【0030】
上述の構成例では、モノクロ画像について説明したが、また、カラー画像を扱う場合には、前置処理手段10において、色空間における所望範囲の色を抽出するフィルタの機能を持たせることが望ましい。カラー画像に対しては、三刺激値RGBの各色ごとにモノクロ画像に対する処理と同様の処理を行えばよい。ただし、カラー画像に適用する場合は、各色成分の比率は変化させないようにする。
【0031】
(実施形態2)
実施形態1は、サンプル指標6を用いているが、サンプル指標6を用いずに補正テーブル12を生成することが可能である。すなわち、実施形態1において説明したように、撮像装置2における受光強度が既知であれば、撮像装置2から出力される画素値と受光強度とを対応付けることが可能である。撮像装置2の受光強度を知る技術としては、サンプル指標6を用いるほかに、撮像装置2のシャッタ速度や絞りを利用する技術を採用することが可能である。本実施形態では、シャッタ速度を利用する場合について説明する。
【0032】
本実施形態では、撮像装置2のシャッタ速度を画像処理装置1から指示可能であるものとする。また、校正モードにおいて撮像装置2では、視野内の照度が一様である環境下において撮像を行うものとする。たとえば、撮像装置2の視野全体を白色の物体が占めるようにする。この場合、理想的には、撮像装置2の視野内において受光強度には差が生じない。
【0033】
この状態において、異なる複数のシャッタ速度を設定して撮像装置2で複数回の撮像を行う。すなわち、複数枚の画像が生成されることになる。シャッタ速度は撮像装置2の受光光量とは線形関係になるから、複数のシャッタ速度で撮像することによりシャッタ速度に対する受光光量の関係は既知であるということができる。つまり、シャッタ速度を3段階以上に設定することにより、受光光量と撮像装置2から出力される画素値との関係を求めることができる。
【0034】
シャッタ速度の設定は、校正モードにおいてテーブル生成手段13が設定する。本実施形態では、実施形態1のように明度を空間領域で分離するのではなく、時間で分離しているから、複数枚の画像が必要になる。ただし、撮像装置2の視野内の同じ領域から得られる受光光量を用いることができるから、撮像装置2に設けた受光光学系の中央部と周辺部との性能差の影響が低減される。他の構成および動作は実施形態1と同様である。なお、所定の期間ごとに校正モードが選択される構成とするには、撮像装置2の視野内の照度が一様になる環境を自動的に生成する機構が必要になる。
【符号の説明】
【0035】
1 画像処理装置
2 撮像装置
3 モニタ装置
4 操作装置
10 前置処理手段
11 補正処理手段
12 補正テーブル
20 主処理手段
30 画像表示手段
40 範囲指定手段
50 テーブル生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により撮像した画像内の画素の画素値を補正する前置処理手段と、前記前置処理手段から出力された補正後の画像を用いて前記撮像装置により撮像された所定の空間領域に関する特徴抽出を行う主処理手段とを有し、前記前置処理手段は、前記撮像装置での受光強度のうちの少なくとも所望範囲において受光強度と前記前置処理手段から出力する画素値とが線形関係になるように前記前置処理手段に入力される画素値と前記前置処理手段から出力する画素値とを対応付けた補正テーブルと、前記前置処理手段に入力された画素値を前記補正テーブルに照合し前記前置処理手段から出力する画素値を抽出する補正処理手段と、前記撮像装置から既知の複数の受光強度と前記撮像装置から出力される画素値との関係を用いて前記補正テーブルを生成するテーブル生成手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記テーブル生成手段は、それぞれ異なる明度を有する複数の標準領域が表記されたサンプル指標を前記撮像装置により撮像したときの画素値を取得し、前記サンプル指標の各標準領域の既知の明度と、前記撮像装置から出力された画像内で前記標準領域に対応する領域の画素値とを用いることにより、前記補正テーブルを生成することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記テーブル生成手段は、前記撮像装置の視野内の明度が一様である環境下において前記撮像装置により異なる複数のシャッタ速度で撮像したときの画素値を取得し、各シャッタ速度から求められる前記撮像装置での受光強度と、前記撮像装置から出力された画素値とを用いることにより、前記補正テーブルを生成することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記テーブル生成手段は、所定の期間ごとに前記補正テーブルを生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−249883(P2011−249883A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117810(P2010−117810)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】