説明

画像処理装置

【課題】 文字の可読性を保持したままトナー使用量を削減したり、テストプリント用にトナー削減率を大きくするといった指定可能なトナーセーブ手段を提供する。
【解決手段】 少なくとも文字属性を含むオブジェクトに対しては、前記削減パターンの各段階の削減係数は、他のオブジェクトの削減率に比べ、削減率が低い段階では削減率が低く、削減率が高い段階では同等の削減率となる削減係数を用いて、トナーセーブ処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式のプリントシステム、複写機等の画像処理装置に関し、特に高品位な画像を維持しつつ、トナー消費量を低減した画像形成を可能にする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、文字やグラフィックス、イメージなどを取り込んだカラードキュメントを作成し、カラー印刷する機会が増加している。カラー印刷の場合、複数の色材を用いて印刷する為、ランニングコストは高くなる。これに対して、従来のカラープリンタでは、ランニングコストを低減させるために、トナー消費量を減らす機能(省トナーモード)が搭載されている。
【0003】
しかし、従来の省トナーモードは、画像に対して一律に信号値を減少させる処理や、予め用意された間引きパターンと論理積をとり、トナー付着が必要なドット数が減らす処理で実現している。また、入力画像のデータタイプ(文字、画像等)に基づき、最適なトナーセーブを行う提案(特許文献1参照)もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−82251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手法では、プリント画像全体が掠れたり、細線や小さい文字が途切れたりと画質が著しく劣化する問題がある。また、上記特許文献1に記載された方法では、高いトナーセーブ量を得たいときにも、所定のオブジェクトのトナーセーブ量が抑えられることになり、ユーザーの利便性を損ねていた。
【0006】
ここ最近では、オフィスにおけるプリンタ運用経費の削減を目的としたアプリケーションソフトや、環境にやさしいエコロジー機能を搭載した複写機などが製品化され注目され始めている。このため、文字の可読性を保持したままトナー使用量を削減したり、テストプリント用にトナー削減率を大きくするといった指定を容易できる技術が求められている。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
画像データを入力する手段(201)と、
トナー削減パターンを複数段階指定可能な指定手段(106、401)と、
各削減パターンに対してオブジェクト別の削減係数(601)を設定する設定手段(101)と、
前記画像データがもつ属性情報に基づき削減係数を選択する選択手段(202,203)
と、を有し、
少なくとも文字属性を含むオブジェクトに対しては、前記削減パターンの各段階の削減係数は、他のオブジェクトの削減率に比べ、削減率が低い段階では削減率が低く、削減率が高い段階では同等の削減率となる(下に凸)削減係数(501)を含み、
前記指定手段が指定するパターンに基づき、前記設定手段(203)が削減係数を設定し、前記設定手段が設定した削減係数を用いてトナー削減処理(204)を行う、ことを特徴とする画像処理装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明、文字属性を含む画像データに対して削減率を抑えることにより、トナーセーブを実現しながらも文字の可読性を保ち、さらに高いトナーセーブ率を行う際は、画像全体の全オブジェクトに対して高い削減処理を行われることが可能なトナーセーブモードが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像処理装置の構成を示すブロック図
【図2】トナーセーブ処理部の構成を示すブロック図
【図3】トナーセーブ処理を説明する為のフローチャート
【図4】トナーセーブモードを指示画面の一例を説明するための図
【図5】トナー削減率と削減パターンの関係を説明する為の図
【図6】トナー削減率と削減パターンの関係を説明する為の図
【図7】トナー削減による濃度補正の入出力特性を説明する為の図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。なお、以下では、画像処理装置としてデジタル複合機を想定するが、カラー複写機やカラープリンタなどの他の印刷デバイスも同様である。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の基本的な構成を説明するブロック図である。装置例としては、例えばデジタル電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリといったトナーを用いた電子写真式のカラーまたはモノクロの画像処理装置に対応する。本発明の一実施形態を示す画像処理装置は、CPU101、ROM102、RAM103、HDD104、表示部105、操作部106、エンジンI/F部107、ネットワークI/F部108、スキャナI/F部109、画像処理部110、システムバス111を備えている。
【0012】
図1において、ネットワークI/F部108は、該ネットワークI/F108を介して本装置をネットワークに接続するためのものであり、このネットワークを利用して、ネットワークに接続された外部機器との間で印刷データや各種設定情報をやりとりすることができる。スキャナI/F部109は、画像データを読み込む為のリーダ(スキャナユニット等)(不図示)と接続されるものである。画像処理装置への操作者の指示は、表示部105及び操作部106から行われる。表示部105は、例えば液晶等による表示を行うものであり、装置の設定状態や、現在の装置内部の処理、エラー状態などの表示に使用される。
【0013】
CPU101は、装置全体の制御及び後述する各処理を含む演算処理等を行う中央処理装置であり、操作部106もしくはネットワークI/F部107を介して送信される設定に基づき指示されたモードに応じて、画像処理装置の各部に対する制御を行う。この制御はROM102に格納されている制御プログラムに基づいて実行される。ROM102は、読み出し専用メモリであり、システム起動プログラムやプリンタエンジンの制御を行うプログラム及び文字データや文字コード情報等の記憶領域である。このROM102に格納されている制御プログラムは、システムクロックによってタスクと称されるロードモジュール単位に時分割制御を行うためのOSを含んでいる。またこの制御プログラムには、このOSによって機能単位に実行制御される複数のロードモジュールが含まれる。CPU101による演算処理の作業領域としては、RAM103が使用される。RAM103は、ランダムアクセスメモリであり、読み書き可能なデータ記憶領域で、ダウンロードにより追加登録されたフォントデータを記憶したり、様々な処理毎にプログラムやデータがロードされ実行される。
【0014】
また、RAM103は、受信した画像データのデータ記憶領域として利用することも可能である。HDD104は、例えばハードディスク等から構成されており、データをスプールしたり、プログラムや各情報ファイル・画像データ等が格納されたり、作業用領域として利用されたりする。CPU101を含む各部は、システムバス111に接続されている。エンジンI/F部107は、プリンタエンジンを制御するコマンド等をやり取りする部分である。またエンジンI/F部は、画像データを紙上に画像形成する為のプリンタエンジン(不図示)と接続されるものである。画像処理部110は、色変換テーブルを用いる色変換処理や、後述するトナーセーブ処理、ディザパターンを用いるハーフトーン処理、画像データの属性を判定する像域判定処理などを行う。上述したように、各処理は、操作部106もしくはネットワークI/F部107を介して送信される設定に基づき処理方法が設定される。
【0015】
ネットワークI/F部108を介して入力された印刷データは、例えばPDL(ページ記述言語)データで構成され、CPU101が印刷データの解析を行う。そしてその結果から画像処理部110が処理可能な画像データを生成する。具体的には印刷データの解析とその解析による中間言語情報の生成を行うとともに、中間言語情報の作成と並行してラスタライズ処理を行う。またこの処理には、印刷データに含まれる文字コードから予めRAM103に格納されているビットパターン、アウトラインフォント等のフォントデータへの変換等の処理が含まれる。その後、ラスタライズ処理では、ページ単位あるいはバンド単位で画像情報に加え、文字やライン、画像であることを示す像域情報を含むビットマップデータを作成し、画像処理部110が処理可能な画像データを生成する。こうして生成した画像データ、またはスキャナI/F部109を介してリーダから読み取った画像データは、RAM103またはHDD104に格納される。
【0016】
RAM103またはHDD104から読み出された画像データに対して、画像処理部110は、プリンタエンジンが画像形成処理可能なハーフトーンデータを生成し、RAM103に格納する。RAM103から読み出されたハーフトーンデータは、エンジンI/F部107を介してビデオ信号としてプリンタエンジンに転送される。
【0017】
次に本発明の実施の形態に係るトナーセーブ処理について、図2、図3、図4、図5、図6、図7を参照して説明する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態にかかる画像処理部110におけるトナーセーブ処理部の構成を示すブロック図である。
【0019】
取得部201は、RAM103から画像データを読み出し、次の画像データが持つ各画素がどの種別のオブジェクト(文字、ライン、画像など)かを示す像域情報信号を判定部202に出力し、各画素の濃度情報を示す画像信号を削減処理部204に出力する。
【0020】
判定部202は、像域情報信号に基づきどの削減係数を用いるかを選択する選択信号を削減係数設定部203に出力する。ここでは、印刷データから生成された像域情報信号を画像データの一部として扱っているが、印刷データから属性情報が不明な場合や、スキャナI/F部109を介してリーダから読み取った画像データに関しては、像域信号が存在しない場合がある。このときは像域信号が存在しない画像データに対して、トナーセーブ処理に先立ち、画像処理110において像域分離処理(不図示)を行うことにより、画像データの特徴から像域信号を生成してもよい。このようにすることにより、属性情報が得られる印刷データ以外から取得できる画像データに対しても、オブジェクト毎のトナーセーブ処理が行える。
【0021】
削減係数設定部203は、詳細は後述するが、CPU101が設定した、操作部106もしくはネットワークI/F部107を介して送信される設定に基づきトナーセーブ処理を行うための係数(パラメータ)をオブジェクト毎に複数セット格納する。判定部202から入力された選択信号により係数を選択し、削減処理部204に出力する。
【0022】
削減処理部204は、詳細は後述するが、削減係数設定部203から入力される係数に基づき、出取得部201から入力される画像信号を濃度補正処理し、出力部205に出力する。
【0023】
出力部205は、削減処理部204が出力する濃度信号を画像データとして、RAM103に格納する。
【0024】
図3は、トナーセーブ処理部の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、CPU101が、ROM102に格納されたプログラムをロードして実行し、さらに画像処理装置の各処理部を操作することによって実行する処理の流れを示す。
【0025】
ステップS301では、CPU101は、表示部105を利用し操作部106から入力を受け付けた設定値に基づき、省トナーモードを実行するか否かを判断する。省トナーモードではないと判断した場合は、トナーセーブ処理に関する画像処理を行わない。省トナーモードであると判断した場合、ステップS302に進む。
【0026】
ステップS302では、CPU101は、ステップS301同様に、表示部105を利用し操作部106から入力を受け付けた設定値から、複数段階の削減パターンからどの段階の削減パターンを用いるかを認識する。図4は、CPU101が表示部105に表示させたトナーセーブモード設定画面の一例であり、トナーセーブモードをどのように行うかを設定するためのボタンを表示している。ここでは、ユーザーからトナーセーブモードをパターン2で行う指示を、画像処理装置が受け付ける場合の状態を示している。この次にOKボタンの押下を、操作部106を介してCPU101が受け付けると、トナーセーブ処理をパターン2の削減パターンで実行することを認識する。
【0027】
ステップS303では、ステップS302で認識した削減パターンに基づき、予め格納していたオブジェクト毎のトナーセーブ処理用の係数を、削減係数設定部203に設定する。ここで、予め格納しておく係数は、複数段階の削減パターンを、一律にトナー削減率を上げていくのではなく、図5に示すような係数にする。より具体的には、低いトナー削減率に相当する削減パターン、ここではパターン1やパターン2、では、文字、ライン属性に対しては、画像やグラフィック属性に比べ、トナー削減率が下に凸になる係数にする。
【0028】
図6は、ここで示すトナー削減率と削減パターンの関係をしめすテーブルの一例であり、CPU101は、ステップS302で認識した削減パターンに基づき、テーブルを参照し、オブジェクト毎のトナー削減率を得ることにより、トナー削減率に合致した係数を削減係数設定部203に設定する。またここでは、テーブルを参照して削減率を得たが、オブジェクト毎に、削減パターンに基づいた関数を用いて削減率を得てもよい。例えば、削減パターンをP、文字属性の削減率をSr、それ以外の削減率をSiとして、Sr=0.125*P(線形)、Si=3*P^2+P(非線形)、として算出してもよい。このようにすることにより各パターンごとにテーブルを用意する必要がなくなる。
【0029】
ステップS304では、画像処理部110におけるトナーセーブ処理部は、RAM103に格納されている画像データに対してトナーセーブ処理を行う。図7は、図6のテーブルにおいてパターン2を用いた時の、削減処理部204のおけるオブジェクト毎の入出力の濃度信号の関係を示すものである。CPU101の指示に従い取得部201は、RAM103から画像データを読み出す。画像データに含まれる属性信号に基づき、判定部202および削減係数設定部203が、ステップS303で設定された係数から、オブジェクト毎に係数を削減処理部204に設定する。削減処理部204は設定された係数に基づき濃度補正処理を行う。
【0030】
より具体的には、入力された濃度信号に対して、トナー削減率分の信号値が減少するように、濃度信号値を乗算する。削減処理部204がソフトウェアで構成されている場合、上述したようにトナー削減率をそのまま係数として削減係数設定部203に設定しても容易に演算可能である。例えば入力濃度Niに20%(0.20)のトナー削減率Sであれば、出力濃度No=Ni*(1−S)となる。ハードウェアで構成されている場合や、ソフトウェアの処理負荷を減らしたい場合は、トナー削減率から演算に必要な係数を得られるテーブルを予め用意しCPU101が設定してよいし、CPU101がトナー削減率から係数を算出して設定してもよい。例えば、20%のトナー削減率Sときに、乗算係数G=205、シフト係数D=8とすると、No=(Ni*G)>>Dで演算可能となり、小数点演算や減算が画像データの各画素に対して不要になり、演算負荷が減少する。また、図7のような入出力特性になるLUTテーブルを用いて実現してもよい。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態によれば、文字属性を含む画像データに対して削減率を抑えることにより、トナーセーブを実現しながらも文字の可読性を保ち、さらに高いトナーセーブ率を行う際は、画像全体の全オブジェクトに対して高い削減処理を行われることが可能なトナーセーブモードが提供できる。
【0032】
[他の実施例]
なお、本発明の目的は、上記実施例の機能を実現するソフトウェアを記録した記憶媒体(記録媒体)をシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が前記ソフトウェアを実行することでも達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたソフトウェア自体が上記実施例の機能を実現することになり、そのソフトウェアを記憶した記憶媒体は本発明を構成する。
【0033】
また、前記ソフトウェアの実行により上記機能が実現されるだけでなく、そのソフトウェアの指示により、コンピュータ上で稼働するオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、それによって上記機能が実現される場合も含む。
【0034】
また、前記ソフトウェアがコンピュータに接続された機能拡張カードやユニットのメモリに書き込まれ、そのソフトウェアの指示により、前記カードやユニットのCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、それによって上記機能が実現される場合も含む。
【0035】
本発明を前記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明したフローチャートに対応するソフトウェアが格納される。
【符号の説明】
【0036】
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 HDD


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを入力する手段(201)と、
トナー削減パターンを複数段階指定可能な指定手段(106、401)と、
各削減パターンに対してオブジェクト別の削減係数(601)を設定する設定手段(101)と、
前記画像データがもつ属性情報に基づき削減係数を選択する選択手段(202,203)
と、を有し、
少なくとも文字属性を含むオブジェクトに対しては、前記削減パターンの各段階の削減係数は、他のオブジェクトの削減率に比べ、削減率が低い段階では削減率が低く、削減率が高い段階では同等の削減率となる削減係数(501)を含み、
前記指定手段が指定するパターンに基づき、前記設定手段(203)が削減係数を設定し、前記設定手段が設定した削減係数を用いてトナー削減処理(204)を行う、ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記削減係数における、文字属性を含むオブジェクトに対する削減係数は、前記削減パターンに対して、非線形の特性を持つことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記削減係数における、文字属性を含むオブジェクトに対する削減係数は、前記削減パターンに基づく、関数として算出できることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記トナー削減処理は、前記画像データに前記係数を乗ずることにより行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記トナー削減処理は、前記画像データに対してルックアップテーブルを行うことにより行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105020(P2013−105020A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248642(P2011−248642)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】