説明

画像化および処置適用のためのヌクレオシド

【課題】チミジル酸シンターゼおよび/またはチミジンキナーゼ酵素によって、診断的または有毒な代謝物へと活性化されるヌクレオシドアナログを投与することによって腫瘍を診断および/または処置する方法、ならびにウリジンアナログ化合物および薬学的に受容可能なキャリアを有するそれらの組成物を提供すること。
【解決手段】腫瘍細胞の複製もしくは拡散を減少または阻害するのに有効な量で、以下の工程を包含する方法に従って選択されたウリジンアナログを含む、腫瘍またはがんを処置するための組成物であって、該方法は:5位において置換されていないウリジンアナログを提供する工程;チミジル酸シンターゼによる活性化について該ウリジンアナログを試験する工程;および、チミジル酸シンターゼによって活性化されることが見出される場合に該ウリジンアナログを選択する工程を、包含する、組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、チミジン酸シンターゼ(TS)および/またはチミジンキナーゼ(TK)によって活性化される抗腫瘍剤を用いて腫瘍細胞を診断および/または処置するための方法、化合物および組成物に関する。さらに、本発明は、画像化適用での使用のための陽電子放射ヌクレオシドアナログの調製および使用に関する。画像化適用に使用されるヌクレオシドアナログはTSによって活性化される型のものであり得るか、または他の実施態様においては、TSによる活性化を必要でないかもしれない。さらに詳細には、本発明は、ヌクレオシドアナログプロドラッグのような化合物および関連する化合物またはこれらを含有する組成物を有効な量で投与して、生検標本中で、または外部画像化を介して感受性の腫瘍を同定すること、次いで、腫瘍細胞の複製または拡散を減少または阻害を進めることによって腫瘍細胞を診断および/または処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.技術概説)
チミジン酸シンターゼ(TS)は、DNA合成に必須の酵素である。しかし、これは正常細胞においてよりも腫瘍細胞において豊富である。数十年の間、研究および臨床試験は、腫瘍を収縮させるためのTSの阻害に向けられてきた。いくつかの例において、このストラテジーは、そこそこ良好であった。例えば、フルオロウラシルおよびフロクスウリジンは、Chu E、Takimoto CH.「Antimetabolites」、DeVita VT Jr.、Hellman S、Rosenberg SA、編者、Cancer:Principles and Practice of Oncology,1巻、第4版
Philadelphia:Lippincott、1993:358〜374により開示されるように、乳癌、結腸癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌および頭部および頚部癌の処置に利用される。
【0003】
不幸にも、ほとんどの腫瘍は、先天的にこれらのストラテジーに対して耐性であり、そしてもともと感受性である腫瘍でさえ、Swain SM、Lippman ME、Egan EF、Drake JC、Steinberg SM、Allegra CJ、「Fluorouracil and High−Dose Leucovorin in Previously Treated Patients with Metastatic Breast Cancer」J.Clin.Oncol.1989;7:890〜9によって報告されるような処置の経過の間に耐性を発生する。近年のTSに対する分子プローブの適用は、以下の論文に記載されるように耐性とTSの高い発現との間に一致する関係を実証した:
【0004】
【数1】

TSを阻害するために設計された新しい世代の薬剤が、最近、臨床試験の最終段階にあることが、Touroutoglou N、Pazdur R.「Thymidylate Synthase Inihibitors」、Clin.Cancer Res.1996;2:227〜43によって報告されている。第一世代のTSインヒビターの有効性を改善するために費やされている莫大な資源にも拘わらず、既存の薬剤も、この新規のセットの化合物のいずれも高レベルのTS活性を有する腫瘍においては有効ではない。現在、高レベルのTSに起因して腫瘍がいったん耐性になると、利用可能な特定の療法は存在しない。
【0005】
TSを阻害する代わりに、本発明者らは、この酵素を、ウリジンアナログプロドラッグをより有毒なチミジンアナログに活性化するために使用することが可能であることを仮定した。以前に、本発明者らは、Molecular Pharmacology、46:1204〜1209、(1994)において「Toxicity,Metabolism,DNA Incorporation with Lack of Repair,and Lactate Production for 1−2’Fluoro−2’deoxy−β−D−arabinofuranosyl)−5−iodouracil(FIAU) in
U−937 and MOLT−4 Cells」と題される論文において、1−(2’フルオロ−2’デオキシ−β−D−アラビノフラノシル)−ウラシル(FAU)が、インタクトなU−937およびMOLT−4細胞によって細胞内でFAUモノフォスフェート(FAUMP)にリン酸化されて、そのメチル化形態である5−メチル−FAUMP(FMAUMP)へと転換され、そしてDNA内へと取り込まれることを報告した。これらの以前の知見は、FAUが、TS−活性化プロドラッグの細胞傷害の可能性を試験するために適切なプロトタイプであることを示唆した。以前の研究は異なる目的に対するデータを産出し、そして本発明の発見を直接的に検討しないことが理解されるべきである。本発明の概念の妥当性を実証するために、本発明者らは:(1)TSがメチル化を触媒した酵素であることを決定し;(2)種々の細胞におけるメチル化された種の正味の形成速度を試験し;そして(3)メチル化された種の正味の形成速度を細胞傷害性効果と相関付けた。
【0006】
ピリミジンヌクレオシドの中でも、2’−デオキシウリジン(dUrd)アナログは、Kong XB,Andreeff M,Fanucchi MP,Fox JJ,Watanabe KA,Vidal P,Chou TC「Cell Differentiation Effects of 2’−Fluoro−1−beta−D−arabinofuranosyl Pyrimidines in HL−60 Cells.」Leuk Res,1987;11:1031〜9によって指摘されるように、その対応するチミジン(dThd)アナログよりも毒性が少ない。本発明者らは、細胞への進入およびリン酸化の後に、dUrdのアナログは、TSがそれをメチル化して対応するdThdアナログを生成し得る場合に選択的なプロドラッグとして役立つことを理論立てた。従って、高レベルのTSのために、TSインヒビターに耐性の腫瘍は、これらのデオキシウリジン(dUrd)アナログに特に感受性である。なぜならば、これらは毒性のチミジン(dThd)種の産生においてより効率的であるからである。このストラテジーは完全に新規である。というのも、抗腫瘍標的としてTSに対する全ての先行技術のアプローチとは完全に異なるからである。腫瘍を収縮するためにTSの阻害に向けられていた以前の研究および臨床試験とは反対に、本発明は、TSを利用して、ウリジンアナログプロドラッグをより毒性のチミジンアナログに活性化して腫瘍細胞(特に、既存の療法に対して先天的に耐性であるかまたは耐性を発生する細胞)を減少または阻害する。本発明はさらに、抗腫瘍標的としてTSの阻害に関する全ての先行するアプローチに対して非常に補足的である。
【0007】
さらに、FAUまたはそのアナログのような薬物を用いる療法の成功はDNAへの取り込みの程度に関連するので、DNAの分析は、腫瘍に対する最適な療法に関する診断的情報を提供する。それゆえ、腫瘍の生検標本を試験することによって、または外部的に腫瘍を画像化することによって、FAUまたは関連する化合物での療法がうまくいっているかどうか、あるいは代わりの療法を使用するべきかどうか、推定され得る。
【0008】
腫瘍療法の評価に加えて、体内の特定の組織内の細胞の増殖(proliferation)速度(増殖(growth))を決定することが重要である種々の他の医学的環境が存在する。これらには、骨髄機能の評価(例えば、移植後および/または増殖因子での刺激)、外科手術または損傷後の肝臓の再生、および遺伝子療法の後の酵素機能の発現が挙げられる。
【0009】
増殖速度を決定するための伝統的なアプローチは、侵襲的であった;すなわち、患者から生検を得る必要があった。生検手順に付随する不快さおよび危険性に加えて、組織のほんの少量のサンプルしか得られない。それゆえ、生検は、その少量のサンプルが全体的な領域の代表ではないかも知れない場合に、誤診という固有の危険性を有する。それゆえ、当該分野には組織の増殖速度を決定するための他の方法論に対する必要性が存在する。
【0010】
非侵襲的な外部画像化方法は生検の必要性を避け、そしてまた、身体の大きな領域、事実、必要ならば全身をスキャンする能力を有する。増殖はヌクレオシドからのDNAの合成を必要とするので、陽電子放射体で放射標識されたヌクレオシドの投与は身体内で生じる事象を外部的に画像化する能力を提供する。画像化技術(例えば、PET(陽電子射出断層撮影法;Positron Emission Tomograph)スキャナー、またはSPECT(単一光子放出型コンピュータ断層撮影;Single Photon Emission Computed Tomograph)またはγ線カメラ)のような他の光子検出デバイス)の使用による
これらの画像化技術は、その生物学的運命(fate)が、試験される組織の増殖状態に関する情報を提供するプローブの利用可能性によってのみ制限される。チミジンは、増殖/DNA合成をモニタリングするために特に有用なプローブである。なぜならば、これは、外因的に付与されたヌクレオシドのDNAへの直接的な取り込みが「サルベージ」経路による一般的なものである、唯一のヌクレオシドであるからである。チミジンの取り込みに対するリボヌクレオチド経路への依存は存在しない。チミジン自体は、これらの画像化技術におけるプローブとして不適切である。なぜならば、この分子は体内で迅速に分解されるからである。チミジンアナログ(例えば、FMAUおよびFIAU)は非常に優れた画像化プローブである。なぜならば、これらは:1)DNAへの取り込みに対するチミジン経路に完全に従い;2)異化酵素によって分解されず;そして3)18F(陽電子画像化に対する最も望ましい原子)で標識され得るからである。
【0011】
他の陽電子放射部分を取り込む画像化プローブが当該分野において使用されている。例えば、11C−FMAUについての合成が報告されている。しかし、実用的には、11Cの20分の半減期によって支配される多数の制限が存在する。11Cを含有するプローブ分子は、文字どおりその場で調製され、そして1時間以内に使用されなければならない。この要件によって、集約的な調製センターを有し、そして周辺の医療施設へこの分子を運ぶことが不可能である。それゆえ、11C−標識プローブを使用する画像化研究を行うことが所望される全ての施設は、その場にその同位体を調製するためのサイクロトロン施設を備えなければならない。生物学的現象が完全な出現のために1時間より長く必要とする場合、11C含有標識のさらなる制限が生じる。この11Cの短い半減期は、これらの状況において画像化されるためには不充分な11Cが残留することを意味する。
【0012】
11C含有プローブに加えて、18Fで標識されたプローブが当該分野において公知である。18F−フルオロデオキシグルコース(FDG)(現在使用されている画像化プローブ)は、集約的な施設で合成され、そして配送され、これによって、画像化目的のためにより簡単に利用可能となる。さらに、18Fを本発明の位置以外に組み込むヌクレオシドアナログ、例えば、ウラシルの5位の18Fが報告されている。
【0013】
上記のプローブ分子の存在に拘わらず、当該分野には外部画像化技術での使用のためのプローブ分子に対する必要性が存在する。さらに、当該分野には細胞増殖障害の処置に対するさらなる治療的様式に対して、必要性が存在する。これらおよび他の必要性が本発明によって満たされた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、腫瘍を診断および/または処置する化合物、組成物、および方法を提供する。本発明の化合物にはヌクレオシドアナログが挙げられ、これは有効量のチミジル酸シンターゼおよび/またはチミジンキナーゼ酵素によって活性化され、腫瘍細胞の診断のため、あるいは複製または拡散を減少または阻害する。これらの化合物およびこれらの化合物を含む組成物は、当該分野で公知である異なる様式によって容易に投与され、そして安全な用量で与えられ得、そして適切な部位における腫瘍阻害を提供する。したがって、本発明は、以下を提供する:
(1) 腫瘍細胞の複製または拡散を減少または阻害するためのウリジンアナログを選択する方法であって、以下の工程:
5位において置換されていないウリジンアナログを提供する工程;
チミジル酸シンターゼによる活性化について該ウリジンアナログを試験する工程;および、
チミジル酸シンターゼによって活性化されることが見出される場合に該ウリジンアナログを選択する工程、
を包含する方法。
(2) 前記試験する工程が以下:
前記ウリジンアナログの細胞傷害性を、チミジル酸シンターゼ酵素の高い発現を有する少なくとも1つの細胞株およびチミジル酸シンターゼ酵素の低い発現を有する少なくとも1つの細胞株に関して測定する工程;
を包含し、そして前記選択する工程が以下:
該チミジル酸シンターゼ酵素の高い発現を有する少なくとも1つの細胞株に関して測定された細胞傷害性が該チミジル酸シンターゼ酵素の低い発現を有する少なくとも1つの細胞株に関して測定された細胞傷害性よりも高い場合に、該ウリジンアナログを選択する工程、
を包含する、項目1に記載される方法。
(3) 前記チミジル酸シンターゼ酵素の高い発現を有する少なくとも1つの細胞株が、U937細胞株およびCEM細胞株からなる群から選択される、項目2に記載される方法。
(4) 前記チミジル酸シンターゼ酵素の低い発現を有する少なくとも1つの細胞株が、L1210細胞株およびRaji細胞株からなる群から選択される、項目2に記載される方法。
(5) 前記ウリジンアナログが放射性同位体を含有する、項目1に記載される方法。
(6) 前記放射性同位体が18Fまたは11Cである、項目5に記載される方法。
(7) 腫瘍を処置する方法であって、腫瘍細胞の複製もしくは拡散を減少または阻害するのに有効な量で、項目1に従って選択されたウリジンアナログを投与する工程を包含する方法。
(8) 腫瘍に関連する細胞変性効果を緩和する方法であって、該細胞変性効果が緩和されるように、有効量の項目1に従って選択されたウリジンアナログを罹患した患者に投与する工程を包含する方法。
(9) ガンを処置する方法であって、ガン細胞の複製もしくは拡散を減少または阻害するのに有効な量で、項目1に従って選択されたウリジンアナログを投与する工程を包含する方法。
(10) チミジル酸シンターゼインヒビターに耐性である腫瘍を診断する方法であって、該方法は以下の工程:
(a)生検標本を入手する前に項目1に従って選択されたウリジンアナログを投与する工程;
(b)生検標本を入手する工程;および
(c)アナログ取り込みの程度について該生検標本由来のDNAを分析する工程、
を包含する方法。
(11) チミジル酸シンターゼインヒビターに耐性である腫瘍を診断する方法であって、該方法は以下の工程:
(a)該腫瘍に、項目1に従って選択されたウリジンアナログを投与する工程;ここで該ウリジンアナログは陽電子放射体で標識される;および
(b)外部画像化によってDNAの取り込みを測定する工程、
を包含する方法。
(12) 前記陽電子放射体が18Fまたは11Cである、項目11に記載される方法。
(13) 前記外部画像化が、陽電子放射体断層撮影法を使用することによって達成される、項目11に記載される方法。
(14) 項目1に記載される方法であって、前記ウリジンアナログが以下:
【化1】


の一般式の化合物であって、
ここで:A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1〜C6)、アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)、
D=O、S、NH2;および、
G=置換または非置換の環式の糖、置換または非置換の非環式の糖、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖ホスフェート;置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖ホスフェート;置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖アナログ、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖アナログであって、ここで該置換基はアルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)ハロゲン、
である、方法。
(15) ガンを処置する方法であって、項目1に従って選択されたウリジンアナログおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む治療的有効量の組成物を、ガン患者に投与する工程を包含する方法。
(16) 腫瘍細胞の複製もしくは拡散を減少または阻害するための組成物であって、該組成物は、項目1に従って選択されたウリジンアナログおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(17) 項目16に記載される組成物であって、前記ウリジンアナログが以下:
【化2】


の一般式の化合物であって、ここで:
A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1〜C6)、アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)、
D=O、S、NH2;および、
G=置換または非置換の環式の糖、置換または非置換の非環式の糖、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖ホスフェート;置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖ホスフェート;置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖アナログ、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖アナログであって、ここで該置換基はアルキル(C1〜C6)アルコキシ(C1〜C6)ハロゲン、
である方法。
(18) 前記ウリジンアナログが、FAU、d−Urdおよびara−Uからなる群から選択される、項目7に記載される方法。
(19) ヒトまたは動物における所望されない腫瘍を処置する方法であって、所望されない腫瘍を有する該ヒトまたは動物に、項目1に従って選択された、腫瘍阻害量のウリジンアナログを含む組成物を投与する工程を包含する方法。
(20) 腫瘍細胞の複製を減少または阻害する方法であって、以下の工程:
項目1に従って選択された治療的有効量のウリジンアナログを単独でか、あるいは腫瘍増殖を阻害するために使用される他の薬学的因子および/または他の薬剤と組み合わせて、投与する工程、
を包含する方法。
(21) チミジル酸シンターゼインヒビターを用いる腫瘍の処置の妥当性を評価する方法であって、以下の工程:
(a)項目1に従って選択されたウリジンアナログを投与する工程であって、ここで該ウリジンアナログは陽電子放射体で標識される工程;および
(b)外部画像化による、用量間での時間にわたる最大チミジル酸シンターゼ阻害の程度およびチミジル酸シンターゼ阻害の持続性を測定する工程、
を包含する方法。
(22) 前記陽電子放射体が18Fまたは11Cである、項目21に記載される方法。
(23) 前記外部画像化が、陽電子放射体断層撮影法によって達成される、項目21に記載される方法。
(24) チミジル酸シンターゼインヒビターに耐性である腫瘍を診断する方法であって、該方法は以下の工程:
(a)該腫瘍に同位体標識されたIdUrdを投与する工程;
(b)該腫瘍の生検標本を調製する工程;および
(c)該腫瘍標本のDNAの検査によってチミジル酸合成酵素によるIdUrdの脱ハロゲン化の程度を決定する工程、
を包含する方法。
(25) 前記同位体標識が、放射性同位体14Cまたは3H;あるいは安定同位体13Cまたは2Hおよび15Nからなる群から選択される、項目24に記載される方法。
(26) 以下の式の化合物:
【化3】


ここで:A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1〜C6)、アルキル、アルコキシ(C1〜C6)、
D=O、S、NH2
E=H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、または体内で容易に切断されて上に列記した基の1つを生成する任意の置換基;
W、X、Y、Zの少なくとも1つは、画像化に十分な同位体活性を有する標識または標識含有部分であって、W、X、Y、Zの残りはH、ヒドロキシ、ハロゲン、アルキル(C1〜C6)、置換アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)、置換アルコキシ(C1〜C6)である;
J=C、S;および
K=O、C、
である、化合物。
(27) 前記Wが陽電子放射部分である、項目26に記載される化合物。
(28) 前記Wが18Fであり、そしてEがH、メチルおよびヨウ素からなる群から選択される、項目27に記載される化合物。
(29) 項目26に記載される化合物を合成する方法であって、以下の工程:
以下の式の第1の分子を、標識を含む第2の分子と、R4によって占められる位置への該標識の移動を引き起こす条件下で接触させる工程、
【化4】


ここで、R1、R2およびR5は同一であっても、または異なってもよく、そしてこれらはブロック基であり、R3は脱離基であり、そしてR4がHである;ならびに、
得られた標識された第1の分子を以下の構造を有する分子と接触させる工程、
【化5】


ここで:
A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1〜C6)、アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)、
D=O、S、NH2
E=H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、または体内で容易に切断されて上に列記した基の1つを生成する任意の置換基、
を包含する方法。
(30) 前記標識が陽電子放射体である、項目29に記載される方法。
(31) 前記標識が18Fである、項目30に記載される方法。
(32) 前記標識を含む第2の分子が、KHF2およびDASTからなる群から選択される、項目29に記載される方法。
(33) 生物を画像化する方法であって、以下の工程:
該画像化される生体を項目26に記載される化合物と接触させる工程;および、
該生体を画像化する工程、
を包含する方法。
(34) 組織の増殖率を決定する方法であって、以下の工程:
該組織を項目26に記載される化合物と接触させる工程;
該組織を画像化する工程;および、
該組織内に取り込まれた化合物の量を決定する工程であって、ここで該組織へと取り込まれた該化合物の量が該組織の増殖率と相関する工程、
を包含する方法。
【0015】
本発明は、画像化適用における使用のための陽電子放出標識部分を含むヌクレオシドアナログを含む。これらのアナログは、DNAへの取り込みおよび引き続いての画像化の前に、TSによる活性化を必要とするように合成され得る。代替的な実施態様において、本発明のアナログは、画像化適用に使用される場合、TSによる活性化を必要としない。他の実施態様において、DNAへの取り込まれない場合でさえ、画像化適用のためにこのアナログは使用され得る。
【0016】
従って、本発明の目的は、生検標本においてまたは外部画像化を介して感受性の腫瘍を同定するため、ならびに/あるいは腫瘍細胞の複製または拡散を阻害または減少するための化合物、組成物、および方法を提供することである。
【0017】
本発明における別の目的は、これらの化合物もしくは組成物を単独で、もしくは腫瘍増殖を阻害する他の薬剤および/またはそのような疾患を処置するために使用される他のクラスの治療剤との組み合わせのいずれかで投与することによって、異常な細胞増殖により特徴付けられる腫瘍および他の疾患に対する処置を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、他の処置(例えば、X線撮影法または他の薬剤による)の腫瘍増殖に対する影響を評価することである。好ましい実施態様において、この処置はチミジル酸シンターゼを阻害することを意図される薬物である。
【0019】
本発明における目的は、外部画像化適用に有用である化合物および方法を提供することである。好ましい実施態様において、本発明は、フッ素−18(18F)である陽電子放出物で標識されるヌクレオシドの選択、調製、および使用を含む。本発明の方法は、例えば、外部画像化のような、代用マーカーを使用する、処置の区別を可能にする。本発明における他の実施態様は、ヒトの腫瘍に対して使用されるべき最も効果的な薬物を選択する場合に有用であり得る。
【0020】
本発明の目的は、支持療法の効率をモニターおよび評価するために利用され得る方法を提供することである。好ましい実施態様では、支持療法は骨髄移植および/または成長因子による刺激で有り得る。他の好ましい実施態様では、本発明は外科手術または損傷の後、肝臓再生の経過をモニターおよび評価するために使用され得る。
【0021】
本発明の目的は、遺伝子治療適用において導入された遺伝子の発現をモニターする方法を提供することである。本発明における他の特性または利点は、好ましい実施態様の以下の記載から明らかである。本発明のこれらの目的および他の目的、特性ならびに利点は、以下の詳細な記載および請求の範囲の総説の後に、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、多くのTS基質についての一般的な構造を示す。内因性のヌクレオシドであるdUrdについては、W=X=Y=H、およびZ=OHである。FAUは1つの置換であるW=Fのみを有する。5’−位で糖に結合されたホスフェート基もまた、必要とされる。この対応するチミジンアナログは、ウラシル塩基の5−位にメチル基(−CH3)を有する。
【図2】図2は、(A)FAU、または(B)FMAUへの72時間の連続的な暴露の細胞増殖に対する影響をグラフで図示する。細胞の指示:CEM=黒丸;MOLT−4=白丸;RAJI=黒逆三角;U−937=白逆三角;K−562=黒四角;L1210=白四角。
【図3】図3は、DNAの取り込みと細胞増殖への影響との関連をグラフで図示する。(A)FAU、(B)FMAU。CEM=黒丸;MOLT−4=白丸;RAJI=黒逆三角;U−937=白逆三角;K−562=黒四角;L1210=白四角。
【図4】図4は、FAUによる増殖阻害に対する細胞株の相対的感受性をIdUrdの相対的な脱ハロゲン化として独立して測定した、TSに対する活性化ポテンシャルと比較してグラフで図示する。最も感受性の高い細胞株(U−937、CEM、MOLT−4)は、50%以上の脱ハロゲン化を有する。最も感受性の低い細胞株(Raji、L1210)は15%以下を有する。CEM=黒丸;MOLT−4=白丸;RAJI=黒逆三角;U−937=白逆三角;K−562=黒四角;L1210=白四角。
【図5】図5は、トリチウム化水の蓄積により実証されるように、U−937細胞抽出物中のTSによる、FAUMPのFMAUMPへの変換をグラフで図示する。FMAUMPへの変換速度は、dUMPからのdTMP形成速度の約1%であった。同様の結果が、0.97〜1.5%の範囲で他の細胞株について得られた。
【図6】図6は、(A)ara−U、または(B)ara−Tへの72時間の連続的な暴露の細胞増殖に対する影響をグラフで図示する。細胞の指示:CEM=黒丸;MOLT−4=白丸;RAJI=黒逆三角;U−937=白逆三角;K−562=黒四角;L1210=白四角。
【図7】図7は、(A)dUrd、または(B)dThdへの72時間の連続的な暴露の細胞増殖に対する影響をグラフで図示する。細胞の指示:CEM=黒丸;MOLT−4=白丸;RAJI=黒逆三角;U−937=白逆三角;K−562=黒四角;L1210=白四角。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
現在、利用可能な処置ストラテジーが存在しない高いレベルのチミジル酸シンターゼ(TS)を有する腫瘍細胞は、共通の治療的挑戦を提示する。本発明の1つの局面は、高いTSを有する腫瘍細胞の増殖が、ウリジンおよび/またはデオキシウリジン(dUrd)アナログで優先的に阻害され得ることである。本明細書の以下で使用されるように、ウリジンアナログは、ウリジンおよびデオキシウリジンならびに両方の誘導体を含むことが理解される。さらに、腫瘍は広範に変化し得るので、高いレベルのTSを有する腫瘍細胞の同定は、個々の腫瘍に対して適切な治療を選択するための診断的な情報を提供する。プロトタイプとしてFAUを使用することで、この概念が首尾よく実証された。
【0024】
以下のスキームIは、dUrdアナログの一般化された構造およびそれらの細胞内活性化経路を例証する。内因性ヌクレオシドであるdUrdについては、W=Hである。FAUは置換、W=Fを有する。ホスフェート基はチミジンキナーゼ(TK)によって糖に5’−位で結合され、dUMPまたはそのアナログであるFAUMPを形成する。ひき続いて、TSは塩基の5’−位でメチル基を結合し、チミジル酸、dTMP、またはそのアナログであるFMAUMPを生成する。
【0025】
【化6】

本発明者は、FAUがFMAUヌクレオチドに変換され、そしてFMAUとして細胞性DNAに取り込まれることを実証した。特に、FAUのモノホスフェートであるFAUMPは、細胞抽出物中のTSによって対応するdThd形態、FMAUMPに変換された。FAUと培養中の腫瘍細胞株とのインキュベーションは、TSを介する活性化の効率に依存して、可変的な程度でそれらの増殖を阻害した。高いレベルのTS活性を有する細胞が、低いTS活性を有する細胞よりも治療を受けやすくあり得ることを、これは初めて実証する。
【0026】
増殖阻害において細胞株間で広範な変動が観察され、そしてまた、細胞外濃度に対する応答曲線において相対的に傾きを緩くした(図2A、2B)。結果として、FMAU、または特にFAUの細胞外濃度は、細胞傷害性の弱い予測物(predictor)であった。対照的に、DNAにおけるFMAUによるdThdの置換%に関するIC50での細胞株間の変動は、非常に小さかった(図3)。さらに、DNAへの薬物(FMAUとして)の取り込みに対する増殖阻害に対する傾きが急な応答曲線が存在した。さらに、DNAにおけるFMAUによるdThdの置換%に対して類似の値では、毒性に細胞株間で類似性が存在した。従って、プロドラッグへの同等の暴露については、選択的毒性は、TSによるdThdアナログへの変換速度の差異に関連し得た。しかし、TSによる変換は毒性に必要条件であるが、それは十分条件ではない。上昇したTS活性における便宜的な利用もまた、他の工程、特にキナーゼおよびポリメラーゼ、ならびに内因的な合成との競合に依存する。最終的には、増殖阻害は全てのピリミジン経路の正味の作用に依存する。
【0027】
図3におけるこれらのデータもまた、診断適用のためのデオキシウリジンアナログの使用を実証する。FAUの高い取り込み、およびチミジル酸シンターゼを介するメチル化の後にDNAへの取り込みを有する腫瘍は、例えば、陽電子射出断層撮影法(PET)での18F−標識FAUの使用によって外部的に画像化され得る。あるいは、腫瘍生検の前に、1用量のFAUが投与され得、そして図3の細胞培養サンプルに使用されるのと同じ技術を用いてDNAへの取り込みが決定され得る。いずれかの様式によって、高いDNA取り込みを有する腫瘍は、FAUまたは関連するアナログでの治療に対する優れた候補物であり、そして低いDNA取り込みを有する腫瘍は、いくつかの他の治療で処置されるべきである。
【0028】
FAUはFMAUヌクレオチドとは切り離された独立した生物学的な効果を有するようである。しかし、TSによるFMAUの形成は観察された効果の大部分を説明するのに十分であるといういくつかの指摘があった。本発明では、FMAUの直接使用との比較によって、この毒性効果がFMAUヌクレオチド、特にDNAとの関係における類似性によって支配されるということを実証した。さらに、FAUによる成長阻害に対する細胞株の相対的な感受性は、TSについての活性化能力と比較され、IdUrdの相対的な脱ハロゲン化として独立して測定された(図4)。最も感受性の高い細胞株(U−937、CEM、MOLT−4)は50%以上の脱ハロゲン化を有する。最も感受性の低い株(Raji、L1210)は15%以下の脱ハロゲン化を有する。
【0029】
それにもかかわらず、他の実験条件下では、輸送、リン酸化、または関連経路における細胞間の差異が存在する場合、次いでこれらの因子はまた、TS活性に加えて応答にも影響を与え得る。標識FAUを用いて腫瘍を画像する主な利点は、それがこれらのプロセス全ての最終生成物を検出することであり、これは予後評価へと変換されるべきである。
【0030】
さらに、診断に対する代替またはさらなるアプローチは、図4でのデータの解釈により示唆される。生検の前に、1用量の標識IdUrd(放射性標識されているかまたはより好ましくは安定同位体で標識されたかのいずれか)が、患者に与えられ得る。脱ハロゲン化は、腫瘍生検中のDNAから決定され、そして治療を指導するために使用され得る。
【0031】
本発明は、治療のアプローチに以前は抵抗性であった通常のヒト腫瘍への前途有望な攻撃手段を提供する。FAUをこの原則を実証するために使用したが、FAUはあまり強力ではなく、そして必ずしもそのクラスにおける最適な化合物でないかもしれない。TSによるメチル化の速度は、かなり低く、内因性基質であるdUMPと比較するとほんの1%であった。この低い速度にもかかわらず、かなりの量のFMAUがDNAに取り込まれ、そして毒性が観察された。
【0032】
FAUが理想的でない場合、dUrdの多数の他の合成改変物が存在し、これもまたTS基質として働き得る。例えば、細胞培養データは、ウラシルアラビノシド(ara−U)およびそのメチル化されたアナログであるチミンアラビノシド(ara−T)について得られる。図6に示されるように、ara−Uおよびara−Tに対する毒性のパターンは、図2のFAUおよびFMAUに対するパターンと非常に類似しており、これは類似の機構、すなわちメチル化を示唆する。さらに、この内因性化合物、デオキシウリジン(dUrd)およびチミジン(dThd)もまた、同じパターンの細胞培養毒性を示す(図7)。
【0033】
従って、本発明は、腫瘍を診断および処置するための化合物、組成物ならびに方法に関する。本発明における1つの実施態様は、本明細書中に開示されているように、腫瘍形成を阻害するためのウリジンアナログまたは関連化合物の使用である。本発明はまた、抗腫瘍活性を有する化合物に関する。本発明はまた、ヒトまたは動物における腫瘍形成を処置する方法であって、腫瘍を有するヒトまたは動物に、有効な量の腫瘍増殖を阻害し得るウリジンアナログを含む組成物を投与する工程を包含する方法に関する。
【0034】
特定の薬物に対する特定の腫瘍の感受性に関する診断的情報を伴うことなく、経験的に腫瘍を処置することが通常の慣例である。従って、FAUまたは関連化合物は、高いレベルのTSを有することが既知のクラスの腫瘍を直接的に処置するために使用され得た。あるいは、FAUまたは関連化合物を用いた治療は、TSレベルが上昇された恐れがある、従来的なTSインヒビターの失敗後に、開始し得る。好ましいアプローチは、生検または外部画像化情報を使用して腫瘍がFAUまたは関連化合物に感受性であること、ならびに代替的なアプローチを使用すべきことを診断することによって、治療の選択を導く。
【0035】
本発明に従って使用され得る腫瘍阻害および/または診断化合物は、以下の一般式を有する化合物を包含する:
【0036】
【化7】

ここで:A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1〜C6)、アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6);
D=O、S、NH2;
E=H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、または体内で容易に切断されて、前に挙げた基のいずれか1つを生成する任意の置換基;
G=置換または非置換環式の糖、置換または非置換の非環式の糖、置換または非置換のモノ、ジ、またはトリホスホ−環式−糖ホスフェート、置換または非置換のモノ、ジ、またはトリホスホ−非環式−糖ホスフェート;置換または非置換のモノ、ジ、またはトリホスホ−環式−糖アナログ、置換または非置換のモノ、ジ、またはトリホスホ−非環式−糖アナログ、ここで置換基はアルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)、ハロゲンである。
【0037】
本発明はまた、腫瘍増殖を阻害する十分な用量で、上記式に従う化合物を投与することによって哺乳動物における腫瘍増殖を阻害する方法を特徴付ける。
【0038】
好ましい化合物は:
【0039】
【化8】

であって、
ここで:A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1〜C6)、アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6);
D=O、S、NH2;
E=H;
W、X、Y、Z=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)、標識を含む部分または標識;
J=C、S;および
K=O、Cである。
抗腫瘍活性について好ましい実施態様において、EはHであり得る。他の好ましい実施態様において、Wはハロゲンである。最も好ましい実施態様において、Wはフッ素であり、そしてEはH、メチル、ヨウ素、またはこれらの基の1つを生じるため主部によって容易に切断される置換基である。しかし、他の実施態様は、本発明の範囲内である。
【0040】
本発明の化合物は、エナンチオマーとして存在し得、そしてエナンチオマーのラセミ混合物または単離されたエナンチオマーは、全て本発明の範囲内とみなされることが理解されるべきである。
【0041】
本発明の化合物は、当業者に公知の処方法を使用する、薬学的に受容可能な組成物または処方物として提供され得る。これらの組成物または処方物は、標準的な経路によって投与され得る。一般に、細胞の増殖障害を処置するために使用される場合、化合物の投与量は腫瘍の型、処置される状態、特定の使用される化合物、ならびに体重、ヒトまたは動物の状態、および投与経路のような他の臨床的因子に依存する。本発明は、ヒトおよび獣医師の使用の両方について用途を有することが理解される。
【0042】
任意のこれらの化合物を用いて、腫瘍に関する診断上の情報もまた提供され得る。例えば、ある患者が彼/彼女の腫瘍の生検材料を有している場合、FAUまたは関連する化合物の用量は、放射性標識された原子、またはより好ましくは天然に存在する原子の安定な同位体、そして細胞培養実験として処理された生検材料由来のDNAの使用を伴って、または伴わずに投与され得る。
【0043】
任意に一般に知られている、および受容される放射性同位体または天然に存在する原子の安定な同位体は、本発明で利用され得る。しかし、好ましい放射性同位体は、14Cおよび3Hであり、そして13C、2Hまたは15Nのような安定な同位体標識が最も好ましい。
【0044】
同様に、外部画像化(例えば、陽電子射出断層撮影法(PET)によって)は、11Cおよび/もしくは18Fで標識されたFAUまたは関連する化合物を検出するために特に使用され得る。細胞培養に示される研究から拡張することによって、FAUまたは関連する化合物を用いる成功した治療について、DNA中の高レベルのFAUの組み込みが予測される。DNA中の低レベルのFAUは、代替の治療が使用されるべきであることを示唆する。従って、本発明は、チミジル酸シンターゼインヒビターを含む、種々の様式での腫瘍の処置の妥当性を評価する方法を提供する。この方法は、11Cまたはより好ましくは18Fのような陽電子放射体で標識されたウリジンアナログを投与する工程、および、好ましくは陽電子放出断層撮影法を用いた外部画像化によって最大TS阻害の程度および投与と投与との間の時間にわたってTS阻害の持続性を決定する工程を包含する。これらのパラメーターを用いて、次回の投与のタイミングを管理し得るか、または現在の治療がもはや成功しておらず、代替の治療に切り替える必要がある場合を決定し得る。
【0045】
画像化について好ましい実施態様において、Wは標識を含む部分または標識であり得る。この標識は、ヌクレオシドアナログの検出を可能にする任意の部分であり得る。好ましい実施態様において、この標識は陽電子放出原子を含み、そして最も好ましい実施態様において、Wは18Fである。画像化適用についての他の好ましい実施態様において、EはHまたはメチルであり得る。画像化についての最も好ましい実施態様において、Wは18Fであり、Eは、メチルまたはHである。しかし、他の実施様態は、本発明の範囲内である。
【0046】
画像化適用に使用されるヌクレオシドが、TSによって活性化される必要はない。特定の実施態様において、ヌクレオシドの塩基は、5−メチルデオキシウリジンアナログ(すなわち、チミジンアナログ)である。5位にメチル基を持つヌクレオシドを提供することによって、DNA中へのヌクレシドの組み込みについて要求される1つの生合成の工程は、無視される。これは、標的DNA内への組み込みの速さを速める効果を有し得、従ってヌクレオシドはより効率的に組み込まれるはずであるので、より良い画像結果が提供される。好ましい実施態様において、画像化のために使用されるヌクレオシドは、FMAUである。ここで、2’位のフッ素原子は18Fである。塩基の5位に他の修飾を有するヌクレオシドは、画像化適用に使用され得る。例えば、塩基の5位は、修飾されてヨウ素原子を含み得る。従って、好ましい実施態様において、ヌクレオシドはFIAUであり、そして2’位のフッ素原子は18Fである。塩基の5位での任意の他の修飾は、本発明の画像化適用の実行において使用され得る。好ましい実施態様において、ヌクレオシドは、ヌクレオシドのDNA内部への組み込みに対して必要な酵素に対する基質として供給され得る。従って、このヌクレオシドは、ヌクレオシドトリホスフェートにリン酸化され得る5’−ヒドロキシル基を有し、そして結果として生じるトリホスフェートは、細胞のDNAポリメラーゼ酵素に対する基質として供給され得る。
【0047】
また、生検標本の場合、標識されたIdUrdは、投与され得、そして細胞培養データの点から判断され得る:高レベルの脱ハロゲンは、FAUまたは関連する化合物を用いた治療を成功させることが予測される;低い脱ハロゲンは、代替の治療を使用するべきであることを示唆する。従って、本発明はまた、14Cもしくは3Hのような放射性同位体、またはより好ましくは13C、2H、もしくは15Nのような安定な同位体標識のいずれかで標識されたIdUrdを投与すること;腫瘍の生検標本の調製;および腫瘍標本のDNAの試験によってチミジル酸シンターゼ酵素によるIdUrdの脱ハロゲンの程度を決定することによって、チミジル酸シンターゼインヒビター耐性である腫瘍を診断する方法を提供する。これらの結果に基づいて、治療レジメンが示唆され得る。
【0048】
経口投与について、約0.1〜300mg/kg/日の間、そして好ましくは約0.5mg/kg/日と50mg/kg/日との間の用量が、一般に十分である。処方物は、単位用量形態で提示され得、そして従来の薬学的技術によって調製され得る。このような技術は、主成分および薬学的キャリアーまたは賦形剤の会合をもたらす工程を含む。一般に、処方物は、主成分と液体キャリアーもしくは細粒の固体キャリアーまたはその両方とを、必要に応じて1つ以上の補助的な成分とを均質に、および完全に(intimately)会合させて、次いで、必要であれば製品に成形することによって調製される。
【0049】
好ましい単位用量処方物は、投与成分の一日の用量および単位、一日の副用量、またはその適切な割合を含む処方物である。特に本明細書中で言及されるこの成分に加えて、本発明の処方物は、当該分野における従来的な他の薬剤を含み得ることが理解されるべきである。本発明の化合物または薬学的組成物はまた、局所的の、経皮的の、経口の、直腸のまたは非経口の経路(例えば、静脈内、皮下または筋肉内)で投与され得ること、または、化合物の持続性の減少を許容する生分解性ポリマー、すなわち腫瘍の近傍または薬物送達が所望される場所に移植されるポリマーに組み込まれ得ることもまた理解されるべきである。
【0050】
図1は、多くのウリジンアナログの一般構造を示す。この塩基は、ウラシルまたは種々の修飾からなる。TSとの相互作用は5位で起こり、ここで水素原子は、メチル基に置換される。TSに対する内因性基質である2’−デオキシウリジン−5’−モノホスフェート(dUMP)は、チミジンモノホスフェート(dTMP)に変換される。TSインヒビターの元来のクラスである5−フルオロウラシル(FUra)および5−フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン、FdUrd)は細胞内でFdUMPに変換後、TSと三元複合体を形成し、そしてdUMPからdTMPへの内因性変換を阻害する。FUraおよびFdUrdを用いて5位を阻害することを試みることよりむしろ、本発明は、5位で水素を維持し、メチル転移(donation)の引き受けを助長する。従って、対応するチミジンアナログより毒性の低いそれらのデオキシウリジンアナログに対して、TSは細胞障害性を増加させ得る。アナログは、塩基、糖、またはその両方の修飾からなり得る。糖の5’位でのホスフェート基は、通常、細胞内で付加される(例えば、チミジンキナーゼを介して)が、修飾されたホスフェート基は、予備形成され、そしてインタクトな細胞に入り得る(例えば、ホスホロチオエート(phosphorothiate)、またはHPMPC)。
【0051】
いくつかの塩基の修飾は可能である。5位の水素ならびに炭素5および6を結ぶ二重結合は、最も好ましいTS基質についての塩基において、最も重要な条件である。1位の窒素はまた、好ましい実施態様であるが、これは、炭素によって置換され得る(例えば、糖とのより安定な結合を試みる)。N3に結合している水素はまた、ハロゲン、アシル置換基またはアルキル置換基を含む種々の官能基で置換され得る。C2またはC4位のカルボキシル基は、4−チオデオキシウリジンのように硫黄に置換され得る。
【0052】
ホスホ(phospho)−糖(または糖アナログ)は、TSと相互作用するために塩基を結合しなければならない。糖に対する多くの変化は、まだTSに対する基質のままである間可能である。我々のプロトタイプの化合物において、Fは、糖の平面「上」の2’位(2’−F−アラビノ)、すなわちW=Fで、水素原子に置換する。その結果生じる化合物であるFAUは、リン酸化され、そしてそのメチル化形態であるFMAUMPに変換することが示される。Fはまた、2’位で環の下に配置され得る(X=F)。2’位でよりかさばった置換基は、合成的に可能である(例えば、Verheyden JPH、Wagner D、およびMoffatt JGが、「Synthesis of Some Pyrimidine 2’−Amino−2’−deoxynucleosides」、J.Org.Chem.36巻、250頁〜254頁(1971)で報告しているように)。W=OHは、ara−Cの主な循環代謝産物であるウラシルアラビノシドを生じる。環上の3’位において置換された化合物であるYは合成されている(例えば、Watanabe KA、Reichman U、Chu
CK、Hollenberg DH、Fox JJが、「Nucleosides.116 1−(beta−d−Xylofuranosyl)−5−fluorocytosines with a leaving group on the 3’ position. Potential double−barreled masked precursors of anticancer nucleosides」、J Med Chem 1980年 10月、23(10):1088頁〜1094頁で報告しているように)。3’位での環の下で、Z=Fは、フルオロチミジンのアナログである抗レトロウイルス薬剤を産生する。成功した抗ウイルス薬物である3’−チア−シチジン(3TC)は、3’炭素の硫黄原子での置換に基づき、環の上または下に結合される置換基を持たない。糖においてもう1つ報告された変化は、酸素原子を炭素原子で置換し、炭素環構造を形成する(例えば、Lin TS、Zhang XH、Wang ZH、Prusoff WH「Synthesis and Antiviral Evaluation of Carbocyclic Analogues of 2’−Azido− and 2’−Amino−2’−deoxyuridine」、J Med Chem 31:484頁〜6頁(1988))。
【0053】
さらに、単一置換のセットに加えて、複数置換はまた、本発明の範囲内に含まれ得る。2’位の水素原子が両方ともFで置換される場合、その結果生成する分子は、2’,2’−ジフルオロ−デオキシウリジンであり、これは、ゲムシタビン、2’,2’−ジフルオロ−デオキシシチジン由来の主な循環代謝産物である。
【0054】
TSによるメチル化に続いて、2’位での糖への修飾を有するアナログは、DNAポリメラーゼによって認識され得、そしてDNA内部への組み込みについてチミジントリホスフェート(dTTP)と競合する。3’−OHが維持される場合(Z=OH)、付加的な塩基は連続的に付加され得る。しかし、Zが−OHでない場合、アナログは、鎖伸長のターミネーターとして役立つ。鎖ターミネーター(例えば、AZT)および非ターミネーター(例えば、IdUrd)は、生物学的活性を有するが、効果のスペクトルは全く異なり得る。
【0055】
アシクロビルまたはシドフォビル(cidofovir)(HPMPC)のような非環式糖アナログは、生物学的活性を有する。アシクロビルおよび関連する分子(例えば、ガンシクロビル)の場合、ウイルス形態のチミジンキナーゼは、構造(geometry)を変化させるにもかかわらず、この薬物をリン酸化し得る。HPMPCについて、ホスフェート基は既に存在する。
【0056】
本発明を記載する場合、以下の実施例は、本発明の特定の応用を説明するために与えられる。これらの特定の実施例は、記載された本発明の範囲を限定することを意図しない。手段は、種々の他の実施態様、改変、およびそれに等価物を有し得、このことは、明細書中に記載の説明を読んだ後、本発明の思想および/または請求の範囲から逸脱することなしに、当業者にこれら自体を示唆し得ることが明らかに理解されるべきである。
【実施例】
【0057】
(実施例)
(材料および方法)
他に規定しなければ、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと類似または等価の任意の方法および材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料を記載する。
【0058】
(化学物質)
非標識および標識のFAU、FMAU、FAUMP、およびdUMPを、Moravek Biochemicals、Brea、CAから得た。放射標識[2−14C]FAU;[3H−CH3]FMAU;[5−3H]FAUMP、および[5−3H]dUMPは、それぞれ、0.056Ci/mmol、0.33Ci/mmol、11Ci/mmolおよび2Ci/mmolの比活性を有した。ウシ膵臓由来のデオキシリボヌクレアーゼI(DNaseI)、II型、およびCrotalus atrox由来のホスホジエステラーゼI、VI型、ホルムアルデヒド、テトラヒドロ葉酸、2’−デオキシウリジン(dUrd)、チミジン(dThd)、ウラシルアラビノシド(ara−U)、およびチミジノアラビノシド(ara−T)を、Sigma Chemical Co.、St.Louis、MOから得た。他の全ての試薬は分析等級であった。
【0059】
(細胞)
ヒト由来細胞株CEM、MOLT−4、RAJI、U−937、K−562、およびマウス由来L1210を、アメリカンタイプカルチャーコレクション、Rockville、MDから購入した。細胞を、L−グルタミンおよび10%(v/v)熱非働化ウシ胎仔血清(BRL−GIBCO、Rockville、MD)を含むRPMI 1640培地中で懸濁培養物として増殖し、そして維持した。ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(Sigma Chemical Co.St.Louis、MO)を添加して、それぞれ、100ユニット/mLおよび100μg/mLの最終濃度を達成した。
【0060】
(細胞抽出物におけるチミジル酸シンターゼによるFAUMPのメチル化)
TSがメチル基をdUMPの5位に付加してdTMPを生成する場合、その位置におけるプロトンが放出される。[5−3H]dUMPが基質である場合、細胞抽出物におけるTS活性は、トリチウム化水の蓄積速度をモニターすることによって評価され得る。ここで、[5−3H]FAUMPを、TSによるメチル化についての基質として用い、そしてFMAUMPの生成をトリチウム化水の放出から決定した。細胞抽出物を、インタクトな細胞の超音波処理によって各細胞株から調製した。(Armstrong RD,Diasio RB、「Improved Measurement of Thymidylate Synthetase Activity by a Modified Tritium−Release Assay」J.Biochem.Biophys.Methods.1982;6:141−7およびSpeth PAJ、Kinsella TJ、Chang AE、Klecker RW、Belanger K.Collins JM.「Incorporation of Iododeoxyuridine into DNA of Hepatic Metastases Versus Normal Human Liver」Clin.Pharmacol.Ther.1988;44:369−75を参照のこと)。メチルドナーは、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸によって提供され、これは、ホルムアルデヒドのテトラヒドロ葉酸へのインサイチュ添加によって生成した。基質(20μMの、[5−3H]dUMPまたは[5−3H]FAUMPのいずれか)の添加後の種々の時点で、その反応を、HClの添加によって終結させた。未反応の基質を、活性炭への吸着によってトリチウム化水から分離した。遠心分離後、上清のアリコートをトリチウム化水について計数した。図5に示すように、細胞抽出物におけるTSはFAUMPをメチル化し得、そしてdUMPについてよりもより遅い速度でではあるがトリチウム化水を放出し得る。
【0061】
(増殖阻害研究)
L1210を除く全ての細胞株を、30,000細胞/mLで新鮮な培地に懸濁した。L1210細胞を、10,000細胞/mLで懸濁した。細胞2mLを、24ウェルプレートのウェルの各々へ添加し、そして0〜1000μMのFAUまたは0〜300μMのFMAUのいずれかとインキュベートした。インキュベーションを、加湿5%CO2雰囲気下で37℃で72時間実施した。細胞増殖の阻害を、細胞計数によって評価した(Elzone 180、Particle Data、Inc.、Elmhurst、IL)。これらの条件下で、CEM、MOLT−4、RAJI、U−937、およびK−562細胞についてのコントロール倍加時間は21〜22時間であったが、L1210についての倍加時間は8〜10時間であった。
【0062】
(細胞内ヌクレオチド形成およびDNAへの取り込み)
L1210を除く全ての細胞株を、適切な量の放射性薬物とともに、300,000細胞/mLで新鮮な培地に再懸濁した。L1210細胞を、150,000細胞/mLで再懸濁した。加湿5%CO2雰囲気下で37℃で24時間後、細胞を、ヌクレオチド測定およびDNA取り込みにのために採取した。可溶性ヌクレオチドを、10μM FAUへの曝露後に各細胞株について決定した。FAUのDNAへの取り込み(FMAUとしての)を、1μM〜1mMのFAU濃度の範囲にわたって決定した。Klecker、RW,Katki AG、Collins JM、「Toxicity、Metabolism、DNA Incorporation with Lack of Repair、 and Lactate Production for 1−(2’−Fluoro−2’−deoxy−β−D−arabinofuranosyl)−5−iodouracil in U−937 and MOLT−4−cells」、Mol.Pharmacol.1994;46;1204−1209;and Speth PAJ、Kinsella TJ、Chang AE、Klecker
RW,Belanger K.Collins JM.「Incorporation of Iododeoxyuridine into DNA of
Hepatic Metastases Versus Normal Human Liver」 Clin.Pharmacol.Ther.1988;44:369−75により以前に記載されるように、DNase IおよびホスホジエステラーゼIを使用して、DNAから塩基を遊離させた。これらの塩基および可溶性のヌクレオチドを、Kleckerら、前出の参考文献「Toxicity、Metabolism、DNA Incorporation with Lack of Repair、 and Lactate Production for 1−(2’−fluoro−2’−deoxy−β−D−arabinofuranosyl)−5−iodouracil in U−937 and MOLT−4−cells」によって記載されるような、以前に報告されたHPLCベースの方法によって決定した。細胞DNAへの薬物取り込みを、次の式:%取り込み=100×([薬物]/([dThd]+[薬物])を用いて決定した。
【0063】
(インサイチュでのチミジル酸シンターゼ活性についてのプローブとしての脱ハロゲン化)。チミジル酸シンターゼの相対活性を、24時間にわたる細胞と3μM[3H]−IdUrdとのインキュベーション後に決定した。上記のように、DNAを採取し、消化し、そしてクロマトグラフィー分析した。いくらかのIdUrdを、DNAに取り込ませ、そのヨウ素をピリミジン環上にインタクトなままにした。IdUMPへの転化後、IdUrdの一部をTSによって脱ハロゲン化してdUMPとし、これを次いで、TSによって転化してdTMPとし、そして続いてDNAへと取り込ませ、そしてDNA消化物において[3H−dThd]として回収した。インサイチュにおける相対TS活性を、脱ハロゲン化した、DNAにおけるIdUrd由来の物質の比、すなわち、([3H]−dThd)/([3H]−dThd+[3H]−IdUrd])と定義した。これらの方法はまた、安定な同位体標識(例えば、13C、15N、または2H)が使用される場合、非放射性IdUrdとともに使用され得る。質量スペクトル検出器は、HPLC分析における放射活性検出器の代わりである。標識していないIdUrdは使用され得ない。なぜなら、その脱ハロゲン化は、非標識dThdを生成し、これは、DNA中におけるdThdの内因性プールからは識別不可能であるからである。
【0064】
(実施例1)
FAUMPを、トリチウム化水の蓄積によって実証されるように、細胞抽出物中でTSによってFMAUMPへと転化した。FMAUMPへの転化速度は、dUMPからのdTMP形成の速度の約1%であった(図5)。dUrdアナログ、FAUとの細胞の72時間の連続的なインキュベーションは、種々の程度の増殖阻害をもたらした(図2A)。100μMにおいて、CEMおよびU−937細胞は、50%を超えて阻害され、MOLT−4およびK−562は、いくらか少なく阻害されたが、RajiおよびL1210細胞は、完全に阻害されなかった。
【0065】
(実施例2)
チミジンアナログFMAUとの細胞の72時間の連続的なインキュベーションは、より強力で、そして一貫して毒性であった。FMAUは、全ての細胞株について増殖の濃度依存性阻害を生じた(図2B)。使用した最低濃度では(0.3μM)、CEMおよびK−562の細胞増殖に対して実質的な効果が存在した。100μMでは、研究した全ての細胞株が完全に阻害された(>80%)。対応するデオキシウリジンアナログFAUは、全ての細胞株においてあまり毒性ではなく、そしてFMAUより10倍高いIC50値を有した(図2A)。最も顕著なことには、L1210細胞の増殖は、FMAUに非常に感受性であったが、FAUによっては1mMでさえも阻害されなかった。
【0066】
FMAUおよびFAUの両方が、FMAUヌクレオチドへと細胞内で転化され、そして続いて細胞DNAにFMAU(MP)として取り込まれた。以下の表Iに記載するように、CEMおよびU−937細胞株は、FAUからFMAUTPを形成するのに最も効率よい細胞株であり、そしてそれゆえFMAUは、これらの細胞株のDNAにより高い程度で取り込まれた。
(表I:10μM FAUとの24時間の各細胞株のインキュベーションから、形成された細胞内ヌクレオチドおよびDNAへの取り込み)
【0067】
【表1】

このより大きなDNA取り込みは、図2AにおけるCEMおよびU−937について認められる毒性の増加として反映された。対照的に、FAUは、L1210細胞株の細胞DNAに、より少ないFMAUの取り込みを生じた。これは、1mMにおける増殖速度でさえ、10%未満の減少として反映された。K−562細胞は、顕著により高い細胞内FAUMPプールを有した。微量のFMAUMPまたはFMAUDPのみが見い出された。
【0068】
細胞増殖がDNAにおけるFMAUの取り込み%に対してプロットされた場合(図3)、細胞外濃度について使用された同じスケールにおいて、応答曲線は、はるかにより急であった。さらに、DNAにおける取り込み%として参照される毒性において増殖阻害についての細胞株の間のIC50の変動は、細胞外濃度を参照した場合よりもはるかに少ない変動を示した。完全な曲線は、6細胞株全てにおいてFMAUについて得られた。FAUについて、必要された薬物物質のより多い量に起因して、完全曲線は2細胞株についてのみ行い、そして他の細胞株については単一点を得た。
【0069】
(実施例3)
図4は、FAUによる増殖阻害に対する細胞株の相対感受性を、IdUrdの相対脱ハロゲン化として独立に測定される、TSについての活性化の可能性に比較して示す。最も感受性のある細胞株(U−937、CEM、MOLT−4)は、50%以上の脱ハロゲン化を有する。最も感受性の低い株(RAJI、L1210)は、15%以下の脱ハロゲン化を有する。
【0070】
本発明の化合物の毒性は、動物モデル系において上昇した。FAUは、連続14日に亙って、1日に1回5g/kgの用量で経口栄養によってマウスに投与した。この投与期間の後さらに14日間の観察の後に、その動物を屠殺した。マウス組織の組織病理学的試験では薬物処置に起因した毒性は見い出されなかった。血液サンプルを、この処置の間の種々の時点で得、この薬物が適切に吸収されたことを確認した。これらのサンプルのHPLC分析は、血漿におけるFAU濃度が750マイクロモル濃度の最高レベルおよび50マイクロモル濃度の最低レベルに達したことを示した。
【0071】
(実施例4)
本発明は、画像化技術において有用な新規のヌクレオシドアナログおよびそのようなアナログを合成する方法を包含する。好ましい実施態様において、ヌクレオシドアナログは、陽電子放出部分を含む。このような部分は、単一の原子または陽電子放出原子を含有する低分子であり得る。最も好ましい実施態様では、陽電子放出部分は18F原子である。
【0072】
本発明の新規のヌクレオシドアナログは、Tann CHら、「Fluorocarbohydrates in synthesis An efficient synthesis of 1−(2−deoxy−2−fluoro−α−D−arabinofuranosyl)−5−iodouracil(β−FIAU)および1−(2−deoxy−2−fluoro−α−D−arabinofuranosyl)thymine(β−FMAU)」J.Org.Chem.50:3644−47、1985、および同じグループによる米国特許第4,879,377号(Brundidgeらに付与された)によって報告された手順の改変によって調製され得る。
【0073】
本発明に従う化合物を合成する本発明の方法は、以下の式:
【0074】
【化9】

の第一部分(ここで、R1、R2、およびR5は、同じであり得るかまたは異なり得、そしてブロック基であり、R3は、脱離基であり、そして好ましい実施態様ではトリフレート、メシレート、トシレートまたはイミダゾールスルホニルであり得、そしてR4はHである)を、R4によって占められる位置への標識の移動を生じさせる条件下でその標識を含む第二の分子と接触させる工程を包含する。得られた標識された化合物は、1位で臭素化されており、次いで以下の式の分子と縮合される:
【0075】
【化10】

ここで、
A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1−C6)、アルキル(C1−C6),アルコキシ(C1−C6);
D=O、S、NH2;
E=H、または体内で容易に切断されてHを生成する任意の置換基。
この合成は、1,3,5−トリ−O−ベンゾイル−α−D−リボフラノシドで開始され得、これは、市販されている(例えば、Aldrich Chemical Companyから)。この物質を改変して、リボ(「下方」)位置における2位でのイミダゾスルホニル部分の付加によるフッ素化のための前駆体を生成する。
【0076】
187mgの1,3,5−トリ−O−ベンゾイル−α−D−リボフラノシドを、1.54mLの乾燥塩化メチレンと混合する。この混合物を、塩氷浴で−20℃に冷却する間に塩化カルシウムまたは硫酸カルシウムの乾燥管を用いて水分から保護する。ゆっくりと70ml(110mg)の塩化スルフリルを、20分かけて滴下漏斗を通して添加する。0.44mLの乾燥塩化メチレンを添加して沈澱した固体を洗浄する。イミダゾールを5当量部分添加して、合計10当量とする(270mg)。冷却浴から反応混合物を除去し、そしてその反応を2時間継続する。反応が進行するにつれ、その混合物は、淡黄色になる。
【0077】
水での洗浄および硫酸ナトリウムでの乾燥後、0〜5℃で16時間ヘキサンを用いて結晶化させる。小さな白色の結晶を収集し、沸騰アセトン中に溶解し、そして熱いまま濾過する。沸騰水を添加し、次いで4℃で16時間結晶化させ、そして遠心分離によってその結晶を収集する。
【0078】
得られた化合物は、室温で少なくとも数ヶ月の間安定であることが示された。そして、これは、臨床の場所または地域の放射合成センターへ運搬され得、そこで、必要とされるまで保存され得る。
【0079】
(フッ素化手順)
18Fの短い半減期(110分)のために、フッ素化したヌクレオシドは、その臨床使用の日に調製されねばならない。これらの環境において、その反応工程を、短時間について、収量を二次的な考慮事項として最適化する。
【0080】
使用の日に、10mgのイミダゾスルホニル糖を、200μlのアセトニトリル中に溶解する。18Fを、サイクロトロンからKHF2の形態で調製し、そして300mCi(例えば、1.32mgの非標識KHF2と合わせて)を、50μlの1:100希釈した酢酸に溶解する。種々の有機溶媒(例えば、ジエチレングリコールまたはブタンジオール)の存在下で、KHF2からの18Fは、アラビノース環上のイミダゾスルホニル部分を置換し、そしてara−(「上方」)位置を推定する。好ましい反応溶媒は、200μlの2,3−ブタンジオールである。より少量の溶媒が使用される場合(より濃縮された反応物の溶液)、酢酸は必要とされない。好ましいインキュベーション条件は、170℃で15分である。この反応産物は、Sigma Chemical Co.から非放射標識形態で市販される標準物質を用いて確認され得る。18F取り込みに基づいて、最低8%の収量が形成される。
【0081】
イミダゾスルホニルがフッ素化について好ましい交換基であるが、他の適切な脱離基がこの目的について等価である。他の適切な基の例は、トリフレート、メシレートおよびトシレートを含むがこれらに限定されず、これらはイミダゾールスルホニル部分の代わりに用いられ得る。トリフレートおよびメシレートバージョンは、容易にフッ素化され得るが、トシレート形態の反応は、あまり満足行かない。当業者は、他の交換基が本発明の目的について等価であることを認識する。フッ素化試薬を用いた基交換反応が迅速で、効率よく、そして最小限の副産物を産生する限り、当業者に公知の任意の交換基が等価である。他の適切な交換基は、Berridgeら、(1986)Int.J.Red.Appl.Inst.第A部 37(8):685−693に開示される。
【0082】
あるいは、本発明者らは、2−フルオロ−2−デオキシ−1,3,5−トリーO−ベンゾイル−α−D−アラビノフラノースが、非誘導体化1,3,5−トリーO−ベンゾイル−α−D−アラビノフラノースのDAST(三フッ化ジエチルアミノイオウ)を用いた直接の反応を介して形成され得ることを示した。これは、18Fを用いて容易に産生され得る。18F DASTの合成は、Straatmannら(1977) J.Nucl.Med.18:151−158に記載される。
【0083】
反応時間の最後に、2mLの塩化メチレン、次いで2mLの水を添加する。塩化メチレン層を、2mLの水を含む管に移す。次いで、塩化メチレン層を、別の管に移し、そして空気または不活性気体の流れの下で乾燥させる。次いで、400μlのアセトニトリル、100μlの酢酸および30μlのHBr(酢酸中30重量%)を添加する。この反応を、125℃で5分間行い、最小50%の収量の1−Br−2−F−3,5−ジ−O−ベンゾイル−α−D−アラビノフラノースを生じさせる。
【0084】
この反応工程の最後に、1mLのトルエンおよび0.5mLの水を添加する。トルエン層を、別の管に移し、そして空気または不活性気体の流れの下で乾燥させる。さらに0.5mLのトルエンを添加し、そして乾燥させる。ブロモ−フルオロ−糖を、ピリミジン塩基(例えば、ウラシル、チミン、ヨードウラシル)で「縮合」し、ここで、2位および4位はシリル化されて(例えば、ヘキサメチルジシラザンを用いて)、ビス−トリメチルシリル(TMS)誘導体を形成する。TMS−Uraは、Aldrichから市販されている。他のTMS保護ピリミジン塩基(例えば、TMS−ThyまたはTMS−IUra)は、イミダゾスルホニル糖を使用する場合のように、使用する日の前に調製され得、そしてその場所に運搬され得る。TMS保護塩基の調製は、Whiteら(1972)J.Org.Chem.37:430によって記載される。その産物の実質的な劣化を引き起こさない条件下での反応の後に除去され得る他の適切な保護基を、TMSの代わりに使用し得る。適切な保護基およびそれらの使用についての条件の選択は、当業者に周知である。
【0085】
200μlの溶液のTMS−Ura(または他の塩基)を乾燥させ、そして1mlの塩化メチレンを添加する。この混合物を、フルオロ−ブロモ−糖を含む管に移す。この管を、170℃で15分間加熱する。次いで、これを乾燥させ、TMS−Uraが使用される場合、少なくとも25%の2、4,−ジ−TMS−3’,5’−ジ−O−ベンゾイル−2’−アラビノ−F−2’−デオキシウリジンの収量を生じる。
【0086】
糖の3’位および5’位、ならびに塩基の2位および4位からブロック基を除去するため、メタノール中の0.3mLの2Mアンモニウムを添加する。この混合物を、130℃で30分間加熱する。最終産物(例えば、18F−FAU)を、精製する(例えば、固相もしくは液体の抽出カートリッジ、または高速液体クロマトグラフィーを用いて)。そして、これを、任意の薬学的に受容可能な溶媒中に投与のために調製する。被験体に投与したときに安全である任意の溶媒は、化合物がその中で可溶性である限り、使用され得る。その生成物の同定の確認を、化学同定についての任意の標準的な技術を用いて標準非放射性参照物質との比較によって得る。例えば、FAUおよびFIAUは、Moravek Biochemicals(Brea、CA)から入手可能である。FMAUもまた、特注によってMoravekから入手可能である(カタログには掲載されていない)。
【0087】
(実施例5)
本発明の標識ヌクレオシドを使用して、腫瘍に対する種々の処置の影響を評価し得る。伝統的には、殆どの治療(薬物および/または放射線)は、比較的非特異的な様式で腫瘍増殖を減少させることに対して指向されていた。より最近になって、腫瘍をより遅く増殖する形態へ分化させること、そしてまた腫瘍の転移を予防することのようなアプローチが強調されるようになってきた。伝統的なアプローチおよびより新たなアプローチの両方について、重要な考慮事項は、初期の処置様式の成功または失敗の早期決定であり、これは必要ならば続いての処置の改変を伴う。すべての治療が(実質的な)副作用を有するので、不正確な評価についての罰は二倍である:代替処置を見出すための価値ある時間の損失に加えて、必要のない毒性に耐えなければならない。
【0088】
評価についての標準的なツールはしばしば、時期を得た情報を提供するには不適切である。腫瘍は、実際には、増殖を停止し得、そして活性重量が減少し得るが、この成功は、非生存領域(例えば、壊死組織または石灰化した組織)の継続的な存在によってマスクされる。従って、この処置の成功は、マスクされる。なぜなら、この腫瘍は、解剖学に基づいた評価(例えば、X線またはCATスキャン)によると大きさが変化していないからである。同様に、この腫瘍が治療への応答を停止し、そして増殖を開始する場合、その失敗は、初期にはマスクされる。なぜなら、生存組織は、解剖学的に決定される病巣のほんの一部分であるからである。
【0089】
これらの問題は、本発明の標識ヌクレオシドを用いた機能的画像化によって克服され得る。この型の化合物を用いる画像化方法は、より情報に富む。なぜなら、それらは、生存組織のみに焦点を当てるという利点を有するからである。これは、非生存組織からの「ノイズ」の存在下でさえも、処置の成功または失敗の決定を可能にする。
【0090】
腫瘍を画像化するために、標識されたヌクレオシド(好ましくは、18Fで標識される)は上記に記載のように調製される。この化合物は、一般的に、画像化される被験体に、約1mCi〜約60mCiの用量で投与され得る。好ましい実施態様において、標識された化合物は、約1mCi〜約20mCiの用量で投与される。最も好ましい実施態様では、本発明の化合物は、約10mCi〜約20mCiの用量で投与される。投薬量の範囲の下限は、有用な画像を得る能力によって決定される。約1mCi未満の投薬量は、特定の場合に適応され得る。投薬量の範囲の上限は、得られる情報の潜在的な価値に対して被験体に対して放射線が誘発する害についての可能性を慮ることによって決定される。特定の場合、約60mCiを超える投薬量を投与することも必要であり得る。
【0091】
本発明の放射標識された化合物は、その化合物が可溶性である任意の薬学的に受容可能な溶媒中で投与され得る。好ましい実施態様において、この化合物は、通常の生理食塩水または緩衝化生理食塩水中に溶解される。本発明の化合物は、当業者に公知の任意の経路によって投与され得る。例えば、その投与は、経口、直腸、局所、粘膜、鼻孔、眼、皮下、静脈内、動脈内、非経口、筋肉内または画像化される組織へその化合物を送達する量に適合される任意の他の経路であり得る。好ましい実施態様において、この化合物は、静脈内ボーラスによって投与される。
【0092】
画像は、投与後約5分間から投与後約8時間まで得られ得る。画像が得られ得る最大の期間は、3つの要因によって決定される:18Fの物理的半減期(110分);画像機構における検出器の感度;および投与される用量の大きさ。当業者は、これらの要因を適切な時間での画像化取得を可能にするように調整し得る。血液サンプルもまた一般的に入手して、投与される用量の適切な送達を確認する。
【0093】
当業者は、本発明の標識化合物を用いて、有用な画像データを入手し得る。画像化手順についての詳細は周知であり、そして多数の参考文献において入手され得る。例えば、Loweらは、肺小節を分析するための陽電子射出断層撮影法の使用を実証し(J.Clin.Oncology 16:1075−88、1998)、他方、Rinneらは、全身の18Fフルオロデオキシグルコース陽電子射出断層撮影法を用いたハイリスクの黒色腫患者における治療効力を分析するための画像化プロトコルにおける18F標識プローブの使用を実証する(Cancer 82:1664−71、1998)。
【0094】
(実施例6)
本発明の標識ヌクレオシドを使用して骨髄機能を評価し得る。身体中を循環する血球は、数日から数ヶ月の範囲の寿命を有する。従って、循環を維持するために、血球は、身体によって継続的に産生される。新たな血球の主な供給源は、骨髄からである。通常、骨髄機能は、単に末梢血を試験することによって推定され得る。1mLあたりの血球の数が通常の範囲であり、そして安定のままである場合,骨髄は満足に作動している。
【0095】
いくつかの状況下では、骨髄機能が破壊されてい得る。そして、骨髄の機能を迅速かつより直接的に評価することが所望される。新たな血球の産生は、細胞分裂を介して生じるので、DNA合成は重要な工程である。従って、チミジンの標識アナログ(例えば、18F−FMAU)を使用して骨髄機能を評価し得る。
【0096】
骨髄の状態についての情報を迅速に得ることが所望される状況の一つは、従来の抗ガン化学療法においてである。多くの抗腫瘍薬物について、骨髄が実質的に損傷され、これが患者によって寛容され得る処置の量を制限する。従って、最初は、血球数が化学療法後に迅速に減少し、これは、感染と闘う主な白血球の損失を含む。これらの細胞の長期の損失は、感染の重篤な危険をもたらす。一般に、その損傷が修復され、そして血球算定は数週間以内に正常レベルに回復する。循環細胞の回復におけるこの遅延を克服するために、成長(増殖)因子(例えば、G−CSF、GM−CSF)を患者に投与して、骨髄内の細胞の間でより多くの分裂へと刺激させる。Sugawaraら(J.Clin.Oncology 16(1):173−180、1998)によって報告されるように、外部の画像化は、骨髄細胞が刺激されつつあることを示す証拠を提供し得る。Sugawaraらは、18F−フルオロデオキシグルコースを一般的なエネルギー消費のプローブとして用いて骨髄細胞の状態を評価した。チミジンアナログ(例えば、18F−FMAU)の使用が好ましい。なぜなら、これは、重要な事象であるDNA合成をより密接にモニターするからである。
【0097】
より極端な状況において、患者の骨髄が、意図的に放射線および化学療法剤で破壊される。この処置の後、その患者は、「骨髄移植」を受ける(すなわち、破壊された骨髄は、免疫学的に適合した個体からの、または処置の前にその患者から採取された供給物由来のドナー骨髄に置換される)。いずれの場合においても、その患者が処置から回復する能力は、「定着」(engraftment)(すなわち、注入した細胞が骨髄空間に進入し、そして新たな細胞の産生を開始して循環に残った細胞を置換すること)を必要とする。血球算定が回復する速度において非常に広範な変動が存在するので、できるだけ早くその定着が成功しているか否かを決定することが重要である。失敗が早くに検出される場合、第二の骨髄移植が試行され得る。血球算定が回復するか否かを決定するのを待てば待つほど、生命を脅かす感染への曝露期間が長くなる。
【0098】
より最近では、骨髄機能は、選択した末梢血球(幹細胞としても知られる)からの移植によって回復している。その細胞の起源が骨髄であれ、末梢循環であれ、定着は、18F−FMAUおよび類似の化合物を介してモニターされ得る。
【0099】
本発明の標識したヌクレオシドは、Sugawaraらの手順に置換され得る。例えば、1〜20mCiの標識ヌクレオシドが被験体に投与され得る。投与後、連続的な動的スキャンが、注入後60分間に亙って実施され得る。種々の期間の多数のスキャンが実施され得る。例えば、使用され得る1つのプロトコルは、6つの10秒画像化、3つの20秒画像化、2つの1.5分間画像化、1つの5分間画像化および5回の10分画像化を行うことである。当業者は、種々の数および期間のスキャンを用いて他の画像化プロトコルを使用して、本発明を実施し得ることを理解する。
【0100】
(実施例7)
本発明の標識ヌクレオシドを使用して、術後の肝臓の再生を評価し得る。損傷(化学的、生物学的、物理学的(手術を含む))への曝露後、肝臓は、それ自身を再生する能力を有する身体の数少ない器官の1つである。肝細胞は、それ自身を複製して、欠失した細胞を置換し始める。再生過程の最も必須である要素は、新たなDNA分子の合成である。チミジンの標識アナログ(例えば、18F−FMAU)は、再生速度を追跡するのに理想的である。より短い半減期およびより低い18Fのエネルギーが、放射性ヨウ素ベースのプローブと比較して利点である。
【0101】
基線画像が処置によって誘発される変化と比較される殆どの治療的状況とは異なり、代表的には、再生が生じている状況においては基線は利用可能ではない。しかし、DNA合成の正常速度は非常低く、そのため再生組織は、容易に検出される。例えば、Vander Borghtらは、ラットにおいて、DNA合成の10倍までの相違が、非再生性の肝臓と比較して再生性の肝臓において見い出され得ることを実証し、このアプローチの実施可能性を実証した。Vander
Borghtらは、陽電子射出断層撮影法を用いた、肝臓再生における非侵襲性測定において放射標識したチミジンアナログを使用した(Gastroenterology、1991年9月;101(3):794−9)。さらに、18F−FMAUを用いたDNA合成の連続的な評価は、再生の刺激または抑制に関する卓越した情報を提供する。
【0102】
この手順は、18F−FMAUのボーラス静脈内注射からなり得るが、他の投与方法も使用され得る。代表的に、約1mCi〜約60mCiの標識化合物が投与され得る。好ましい実施態様において約10mCiが投与され得る。18Fの肝臓での生化学的過程および物理学的半減期に基づいて画像取得について好ましい時間は、注射後1〜10時間である。スキャンの時機および器官の選択は、当業者の十分範囲内である。
【0103】
(実施例8)
本発明の標識ヌクレオシドを使用して遺伝子治療適用の効力を評価し得る。1つの現在用いられる遺伝子治療方法は、除去されるべき細胞へ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−tk)の1コピーを導入する工程を包含する。細胞におけるHSV−tkの存在は、その細胞に、ヌクレオシドアナログであるガンシクロビルに対する感受性を付与する。ガンシクロビルの存在下でHSV−tkを発現する細胞は殺傷され、他方HSV−tk遺伝子を発現しない細胞が耐性である。Blasbergらが、米国特許第5,703,056号によって、2’−フルオロ−アラビノフラノシル−ヌクレオシドアナログFIAUが特に、HSV−tkによって特異的にリン酸化され、そして機能的なHSV−tkを発現する細胞のDNAへ取り込まれることが、以前に実証されている。従って、これらのヌクレオシドアナログは、標的細胞へのHSV−tkの取り込みを評価する手段を提供する。
【0104】
Blasbergらによって開示された放射標識FIAUは、いくつかの欠点を有する。最も顕著には、放射性ヨウ素は、数日間に亙って体内に持続するバイオハザードである。18Fのより少ないエネルギーおよびより短い半減期は、バイオハザードを実質的に減少させる。目標がその時点に起きていることを決定することである臨床的状況において、18F−FMAUまたは18F−FIAUの短い半減期は、放射性ヨウ素と比較して明らかな利点である。これは、毎日または毎週の時間的規模で生じる変化の評価を可能にする。
【0105】
遺伝子治療に対するチミジンキナーゼの直接適用に加えて、チミジンキナーゼはまた、そのベクター(通常ウイルス)が標的細胞に進入し、そして機能的になったか否かを評価するための「レポーター遺伝子」として使用され得る。これは、目的の主要な遺伝子の機能が容易に評価され得ない場合に特に重要な戦略である。この場合、18F−FMAUまたは関連化合物を用いるチミジンキナーゼの観察は、他の遺伝子の発現に対する代替物である。
【0106】
遺伝子治療適用を評価するために、18F標識ヌクレオシドを、上記のように調製する。この遺伝子治療が実施され、そして形質導入された遺伝子発現を可能にするに十分な時間後、その被験体は、本発明の標識化合物で処置され得る。その化合物は、一般的に、画像化される被験体に、約1mCiから約60mCiの用量で投与され得る。好ましい実施態様において、標識された化合物は、約1mCi〜約20mCiの用量で投与される。最も好ましい実施態様では、本発明の化合物は,約10mCi〜約20mCiの用量で投与される。投薬量の範囲の下限は、有用な画像を得る能力によって決定される。約1mCi未満の投薬量は、特定の状況において適応され得る。投薬量の範囲の上限は、得られる情報の潜在的価値に対して、その被験体に対して放射線が誘発する害についての可能性を慮ることによって決定される。特定の場合において、約60mCiより多い投薬量を投与することが必要であり得る。
【0107】
本発明の放射標識化合物は、その化合物が可溶性である任意の薬学的に受容可能な溶媒中で投与され得る。好ましい実施態様において、その化合物は、通常の生理食塩水または緩衝化生理食塩水中に溶解される。本発明の化合物は、当業者に公知の任意の経路によって投与され得る。例えば、その投与は、経口、直腸、局所、粘膜、鼻孔、眼、皮下、静脈内、動脈内、非経口、筋肉内または画像化される組織へその化合物を送達するに適合される任意の他の経路であり得る。好ましい実施態様において、この化合物は、静脈内ボーラスによって投与される。
【0108】
画像は、投与後約5分間から投与後約8時間まで得られ得る。画像が得られ得る最大の期間は、3つの要因によって決定される:18Fの物理的半減期(110分);画像機構における検出器の感度;および投与される用量の大きさ。当業者は、これらの要因を適切な時間での画像取得を可能にするように調整し得る。血液サンプルもまた入手して、投与される用量の適切な送達を確認する。
【0109】
特定の実施例を、上記に示して当業者が本発明を理解する上での補助としてきた。これらの特定の実施例は、例示の目的にのみ提供され、そして如何ようにも本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本明細書において言及した全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的について、それら全体が参考としてその各々が援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍細胞の複製もしくは拡散を減少または阻害するのに有効な量で、以下の工程を包含する方法に従って選択されたウリジンアナログを含む、腫瘍またはがんを処置するための組成物であって、該方法は:
5位において置換されていないウリジンアナログを提供する工程;
チミジル酸シンターゼによる活性化について該ウリジンアナログを試験する工程;および、
チミジル酸シンターゼによって活性化されることが見出される場合に該ウリジンアナログを選択する工程、
を包含する、
組成物
【請求項2】
腫瘍に関連する細胞変性効果を緩和するための組成物であって、以下の工程を包含する方法に従って選択された有効量のウリジンアナログを含む、組成物であって、該方法は、
5位において置換されていないウリジンアナログを提供する工程;
チミジル酸シンターゼによる活性化について該ウリジンアナログを試験する工程;および、
チミジル酸シンターゼによって活性化されることが見出される場合に該ウリジンアナログを選択する工程、
を包含する、
組成物
【請求項3】
請求項1または2に記載される組成物であって、前記ウリジンアナログが以下:
【化1】

の一般式の化合物であって、
ここで:A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1〜C6)、アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)、
D=O、S、NH2;および、
G=置換または非置換の環式の糖、置換または非置換の非環式の糖、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖ホスフェート;置換または 非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖ホスフェート;置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖アナログ、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖アナログであって、ここで該置換基はアルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)ハロゲン、
である、組成物
【請求項4】
前記ウリジンアナログが、FAU、d−Urdおよびara−Uからなる群から選択される、請求項1または2に記載される組成物
【請求項5】
腫瘍細胞の複製を減少または阻害するための組成物であって、以下の工程を包含する方法に従って選択された有効量のウリジンアナログを含む、組成物であって、該方法は、
5位において置換されていないウリジンアナログを提供する工程;
チミジル酸シンターゼによる活性化について該ウリジンアナログを試験する工程;および、
チミジル酸シンターゼによって活性化されることが見出される場合に該ウリジンアナログを選択する工程、
を包含する、
組成物
【請求項6】
請求項5に記載される組成物であって、前記ウリジンアナログが以下:
【化1】

の一般式の化合物であって、
ここで:A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1〜C6)、アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)、
D=O、S、NH2;および、
G=置換または非置換の環式の糖、置換または非置換の非環式の糖、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖ホスフェート;置換または 非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖ホスフェート;置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖アナログ、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖アナログであって、ここで該置換基はアルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)ハロゲン、
である、組成物
【請求項7】
腫瘍細胞の複製または拡散を減少または阻害するためのウリジンアナログを選択する方法であって、以下の工程:
5位において置換されていないウリジンアナログを提供する工程;
チミジル酸シンターゼによる活性化について該ウリジンアナログを試験する工程;および、
チミジル酸シンターゼによって活性化されることが見出される場合に該ウリジンアナログを選択する工程、
を包含する方法。
【請求項8】
前記試験する工程が以下:
前記ウリジンアナログの細胞傷害性を、チミジル酸シンターゼ酵素の高い発現を有する少なくとも1つの細胞株およびチミジル酸シンターゼ酵素の低い発現を有する少なくとも1つの細胞株に関して測定する工程;
を包含し、そして前記選択する工程が以下:
該チミジル酸シンターゼ酵素の高い発現を有する少なくとも1つの細胞株に関して測定された細胞傷害性が該チミジル酸シンターゼ酵素の低い発現を有する少なくとも1つの細胞株に関して測定された細胞傷害性よりも高い場合に、該ウリジンアナログを選択する工程、
を包含する、請求項7に記載される方法。
【請求項9】
前記チミジル酸シンターゼ酵素の高い発現を有する少なくとも1つの細胞株が、U937細胞株およびCEM細胞株からなる群から選択される、請求項7に記載される方法。
【請求項10】
前記チミジル酸シンターゼ酵素の低い発現を有する少なくとも1つの細胞株が、L1210細胞株およびRaji細胞株からなる群から選択される、請求項7に記載される方法。
【請求項11】
前記ウリジンアナログが放射性同位体を含有する、請求項7に記載される方法。
【請求項12】
前記放射性同位体が18Fまたは11Cである、請求項11に記載される方法。
【請求項13】
請求項7に記載される方法であって、前記ウリジンアナログが以下:
【化1】

の一般式の化合物であって、
ここで:A=N、C;
B=H、ヒドロキシ、ハロゲン、アシル(C1〜C6)、アルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)、
D=O、S、NH2;および、
G=置換または非置換の環式の糖、置換または非置換の非環式の糖、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖ホスフェート;置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖ホスフェート;置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−環式−糖アナログ、置換または非置換モノ、ジ、もしくはトリ−ホスホ−非環式−糖アナログであって、ここで該置換基はアルキル(C1〜C6)、アルコキシ(C1〜C6)ハロゲン、
である、方法。
【請求項14】
チミジル酸シンターゼインヒビターに耐性である腫瘍を診断するための診断用組成物であって、該組成物は、請求項7により選択されるウリジンアナログを含み、該組成物は、生検標本を入手する前に、患者に投与されること、および該生検標本におけるアナログ取り込みの程度が、腫瘍を特徴付けるものであることを特徴とする、組成物。
【請求項15】
チミジル酸シンターゼインヒビターに耐性である腫瘍を診断するための診断用組成物であって、該組成物は、請求項7により選択されるウリジンアナログを含み、該ウリジンアナログは陽電子放射体で標識され、該組成物は、外部画像化のまえに投与され、該組成物のDNA取り込みが、腫瘍を特徴付けるものであることを特徴とする、組成物。
【請求項16】
前記放射性同位体が18Fまたは11Cである、請求項15に記載される組成物。
【請求項17】
前記外部画像化が、陽子線放射体である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
ヒトまたは動物における所望されない腫瘍を処置するための組成物であって、請求項7に従って選択された、腫瘍阻害量のウリジンアナログを含む、組成物。
【請求項19】
腫瘍細胞の複製を減少または阻害するための組成物であって、請求項7に従って選択されたウリジンアナログを単独でか、あるいは腫瘍増殖を阻害するために使用される他の薬学的因子および/または他の薬剤と組み合わせて含む、組成物。
【請求項20】
チミジル酸シンターゼインヒビターを用いる腫瘍の処置の妥当性を評価するための組成物であって、請求項7に従って選択されたウリジンアナログを含み、該ウリジンアナログは陽電子放射体で標識され、外部画像化の前に該組成物が投与され、用量間での時間にわたって測定されたチミジル酸シンターゼ阻害の持続性が最大チミジル酸シンターゼ阻害の程度を特徴付けるものである、組成物。
【請求項21】
前記陽電子放射体が18Fまたは11Cである、請求項20に記載される方法。
【請求項22】
前記外部画像化が、陽電子放射体断層撮影法によって達成される、請求項20に記載される方法。
【請求項23】
チミジル酸シンターゼインヒビターに耐性である腫瘍を診断するための組成物であって、同位体標識されたIdUrdを含み、該組成物は、生検野前に投与され、該腫瘍標本におけるチミジル酸合成酵素によるIdUrdの脱ハロゲン化の程度が、腫瘍を特徴付けるものである組成物
【請求項24】
前記同位体標識が、放射性同位体14Cまたは3H;あるいは安定同位体13Cまたは2Hおよび15Nからなる群から選択される、請求項20に記載される組成物。
【請求項25】
明細書に記載のがんを処置するための組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−108108(P2009−108108A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37204(P2009−37204)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【分割の表示】特願2000−518974(P2000−518974)の分割
【原出願日】平成10年10月30日(1998.10.30)
【出願人】(305056858)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (15)
【Fターム(参考)】