説明

画像合成処理装置及びその制御方法

【課題】特別のハードウェア構成や、特別な演算処理の必要が無い簡素なシステム構成とする。そして、YUV422の画像でも境界部分を自然な色で明確に表示できるように、マスクデータ中の置換色の混色を起こさずに置換合成できる画像合成処理装置を提供する。
【解決手段】画像合成処理装置は、背景画像に対して、少なくとも前景画像をある角度だけ回転して置換合成する。元前景画像の特定手段は、前景画像を、そのままの状態で特定する。回転部G5は、前景画像を回転するある角度だけ、背景画像を逆に回転させる。置換合成部G6は、逆に回転された背景画像に対して、元前景画像を置換合成処理する。回転部G8は、置換合成処理された画像を、前景画像を回転させる正方向にある角度だけ回転させる。これにより所望の画像を完成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の置換、合成の処理を行う画像合成処理装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像を拡大または縮小し、他の画像に合成する際には、画像のデザインが変化しないように補完を行い合成後の画像が不自然にならないように処理して表示するための画像合成処理が行われている。
【0003】
このような画像合成処理には、例えば、背景画像及び前景画像が共にYUVフォーマットであるときに、背景画像に、置換色を含む前景画像を回転して合成する場合がある。
【0004】
なお、この色の表現方法であるYUV422では、隣り合う2つのピクセルを1セットとして一部の情報を共有することにより、画質の劣化を防ぎつつデータ量を削減している。また、YUV方式の一つのYUV444は、サンプリングの際に、水平方向4ピクセルから、各ピクセル毎に輝度情報(Y)、輝度と青色成分の差(U)、輝度と赤色成分の差(V)をそれぞれ1サンプル採る方式である。
【0005】
この合成を行う場合には、前景画像を回転するために、YUV444へフォーマット変換し、回転し、YUV422へフォーマット変換した結果、画素に補間処理することで、前景画像中の置換色と画像データ部分の境界で混色が起きる。このように置換合成した結果、背景画像と前景画像との境界に置換色と画像が混色した画素が出てしまい境界が汚く見える。
【0006】
そこで、このような置換合成処理を行う場合には、マスク画像の画素データと置換色の境界が混ざり置換色でなくなった画素もある程度の閾値内であれば置換色とみなし置換合成することが一般に行われている。
【0007】
従来、マスク画像中の画素と置換色が混ざり置換色でなくなった画素をアルゴリズム等により置換色へ変換して置換合成する方法が提案されている。例えば、透明部分が有る画像を拡大または縮小し、他の画像に合成する際に、画像のデザインが変化しないように補完を行い、合成後の画像が不自然感、違和感が生じないようにする処理が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、マスク画像中の置換色と画像データの境界付近の画素を、画像の境界ラインが不自然にならないように補間し、置換合成の境界を自然に合成する方法が提案されている。この方法では、まず調整或いは修正したいカラー画像中で対象とする領域を抽出し、調整或いは修正する目標色を指定し、対象領域全体の色を変化させる。この際に、調整領域の色の調整に加えて背景部分の色と調整領域との境界部分を検出し、検出した境界部分で境界色の加法混色処理を行う。この結果、調整或いは修正前の画像と同様に、境界部分のデータの連続性を保存し、自然な色の調整または画像の合成を行う。これにより調整領域とそれ以外の領域との境界部分で、擬似輪郭が発生しないようにでき、画像の自然さを損なわないようにできる。また、2つの画像を合成する場合には、合成する領域を抽出した元の画像が持っている境界部分の連続性を維持するよう合成した画像の境界部分に色を作り出して調整し、合成後の画像を自然な感じにすることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−120417号公報
【特許文献2】特開2009−94902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般のデジタルカメラ等のシステムでは、処理速度やメモリ容量に制約があるため、YUV422で画像処理を行うのが普通である。YUV422の場合には、UおよびVが2画素に1データしかないため、フォーマット変換時に1画素ごとにUVデータを作成する時に補間処理されるので、2画素単位で混色が起きる。
【0011】
つまり、YUV422で画像処理を行うと、YUV444で画像処理した場合よりも、マスク画像データと置換色の境界で混色するため、合成の境界がくっきりときれいな置換合成ができない。
【0012】
本発明の目的は、特別のハードウェア構成や、特別な演算処理の必要が無い簡素なシステム構成とする。そして、YUV422の画像でも境界部分を自然な色で明確に表示できるように、マスクデータ中の置換色の混色を起こさずに置換合成できる画像合成処理装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の画像合成処理装置は、背景画像に対して、少なくとも前景画像をある角度だけ回転して置換合成する画像合成処理装置であって、前記前景画像を、そのままの状態で特定する元前景画像の特定手段と、前記前景画像を回転するある角度だけ、前記背景画像を逆に回転させる第1の画像回転処理手段と、前記逆に回転された背景画像に対して、前記元前景画像を置換合成処理する置換合成処理手段と、前記置換合成処理された画像を、前記前景画像を回転させる正方向にある角度だけ回転させる第2の画像回転処理手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の画像合成処理装置は、背景画像に対して、少なくとも前景画像をある倍率だけ拡大又は縮小する変倍を行って置換合成する画像合成処理装置であって、前記前景画像を、そのままの状態で特定する元前景画像の特定手段と、前記前景画像を変倍するある倍率だけ、前記前景画像を拡大する場合には前記背景画像を逆に縮小させ、前記前景画像を縮小する場合には前記背景画像を逆に拡大させる第1の画像変倍処理手段と、前記逆に変倍された背景画像に対して、前記元前景画像を置換合成処理する置換合成処理手段と、前記置換合成処理された画像を、前記前景画像を回転させる正の倍率で変倍させる第2の画像変倍処理手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の画像合成処理装置の制御方法は、背景画像に対して、少なくとも前景画像をある角度だけ回転して置換合成する画像合成処理装置の制御方法であって、前記前景画像を、そのままの状態で特定する元前景画像の特定ステップと、前記前景画像を回転するある角度だけ、前記背景画像を逆に回転させる第1の画像回転処理ステップと、前記逆に回転された背景画像に対して、前記元前景画像を置換合成処理する置換合成処理ステップと、前記置換合成処理された画像を、前記前景画像を回転させる正方向にある角度だけ回転させる第2の画像回転処理ステップと、を有することを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の画像合成処理装置の制御方法は、背景画像に対して、少なくとも前景画像をある倍率だけ拡大又は縮小する変倍を行って置換合成する画像合成処理装置の制御方法であって、前記前景画像を、そのままの状態で特定する元前景画像の特定ステップと、前記前景画像を変倍するある倍率だけ、前記前景画像を拡大する場合には前記背景画像を逆に縮小させ、前記前景画像を縮小する場合には前記背景画像を逆に拡大させる第1の画像変倍処理ステップと、前記逆に変倍された背景画像に対して、前記元前景画像を置換合成処理する置換合成処理ステップと、前記置換合成処理された画像を、前記前景画像を回転させる正の倍率で変倍させる第2の画像変倍処理ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、画像合成処理装置及びその制御方法を特別のハードウェア構成や、特別な演算処理の必要が無い簡素なシステム構成とできる。そして、YUV422の画像でも境界部分を自然な色で明確に表示できるように、マスクデータ中の置換色の混色を起こさずに置換合成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係わるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図2A】本発明の実施の形態に係わるデジタルカメラで前景画像を回転させて画像合成処理を行うときの動作の手順を説明するフローチャートの一部である。
【図2B】本発明の実施の形態に係わるデジタルカメラで前景画像を回転させて画像合成処理を行うときの動作の手順を説明するフローチャートの一部である。
【図3】本発明の実施の形態に係わるデジタルカメラで前景画像を回転させて画像合成処理を行うときの画像イメージを示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わるデジタルカメラで前景画像を回転させて画像合成処理を行う画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図5A】本発明の実施の形態に係わるデジタルカメラで前景画像を変倍させて画像合成処理を行うときの動作の手順を説明するフローチャートの一部である。
【図5B】本発明の実施の形態に係わるデジタルカメラで前景画像を変倍させて画像合成処理を行うときの動作の手順を説明するフローチャートの一部である。
【図6】本発明の実施の形態に係わるデジタルカメラで前景画像を変倍させて画像合成処理を行うときの画像イメージを示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係わるデジタルカメラで前景画像を変倍させて画像合成処理を行う画像処理部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の画像合成処理装置の実施の形態に係わるデジタルカメラについて図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係わるデジタルカメラの構成を示すブロック図であり、図で、103はフォーカスレンズを含む撮影レンズ、101は絞り機能を備えるシャッターである。さらに、この図1で、22は光学像を電気信号に変換するCCDやCMOS素子等で構成される撮像部、23はA/D変換器である。このA/D変換器23は、撮像部22から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0021】
このデジタルカメラ100の撮影レンズ103の自由端部には、撮像部を覆うことにより撮影レンズ103、シャッター101、撮像部22を含む撮像系の汚れや破損を防止するためのバリア102が配設されている。
【0022】
この図1で、24は画像処理部であり、A/D変換器23からのデータ又はメモリ制御部15からのデータに対し所定の画素補間、縮小といったリサイズ処理や色変換処理を行う。この画像処理部24では、撮像した画像データを用いて所定の演算処理が行われ、得られた演算結果に基づいてシステム制御部50が露光制御、測距制御を行う。これにより、いわゆるTTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理が行われる。画像処理部24では更に、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいていわゆるTTL方式のAWB(オートホワイトバランス)処理を行う。
【0023】
また、A/D変換器23からの出力データは、画像処理部24及びメモリ制御部15又はメモリ制御部15を介して、ワークメモリであるメモリ32に書き込まれる。このメモリ32は、撮像部22によって得られA/D変換器23によりデジタルデータに変換された画像データや、表示部28に表示するための画像データを格納する。このメモリ32は、画像表示用のメモリ(ビデオメモリ)を兼ねている。このメモリ32は、所定枚数の静止画像や所定時間の動画像および音声を格納するのに十分な記憶容量を備えている。
【0024】
図1で、13はD/A変換器であり、メモリ32に格納されている画像表示用のデータをアナログ信号に変換して表示部28に供給する。こうして、メモリ32に書き込まれた表示用の画像データは、D/A変換器13を介して表示部28により表示される。表示部28は、LCD等の表示器上に、D/A変換器13からのアナログ信号に応じた表示を行う。
【0025】
図1で、56は、電気的に消去・記録可能なメモリであり、例えばEEPROM等の不揮発性メモリで構成されており、システム制御部50の動作用の定数、プログラム等が記憶される。ここでいう、プログラムとは、本実施の形態にて後述する各種フローチャートを実行するためのプログラムのことである。
【0026】
図1で、50はシステム制御部であり、デジタルカメラ100全体を制御する。前述した不揮発性メモリ56に記録されたプログラムを実行することで、後述する本実施の形態の各処理を実現する。また、図1で、52はシステムメモリであり、RAMが用いられる。システムメモリ52には、システム制御部50の動作用の定数、変数、不揮発性メモリ56から読み出したプログラム等を展開する。また、システム制御部50は、メモリ32、D/A変換器13、表示部28等を制御することにより表示制御も行う。
【0027】
このデジタルカメラ100には、システム制御部50に各種の動作指示を入力するための操作手段として、モード切替スイッチ60、第1シャッタースイッチ62、第2シャッタースイッチ64及び操作部70が配設されている。
【0028】
このモード切替スイッチ60は、システム制御部50の動作モードを静止画記録モード、動画記録モード、再生モード等のいずれかに切り替える指令を入力可能に構成されている。第1シャッタースイッチ62は、デジタルカメラ100に設けられたシャッターボタン61の操作途中、いわゆる半押し(撮影準備指示)でONとなり第1シャッタースイッチ信号SW1を発生する。第1シャッタースイッチ信号SW1の入力により、システム制御部50は、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理等の動作を開始する。
【0029】
第2シャッタースイッチ64は、シャッターボタン61の操作完了、いわゆる全押し(撮影指示)でONとなり、第2シャッタースイッチ信号SW2を発生する。システム制御部50は、第2シャッタースイッチ信号SW2の指令を受けると、撮像部22からの信号読み出しから記録媒体200に画像データを書き込むまでの一連の撮影処理の動作を開始する。
【0030】
また、操作部70の各操作部材は、表示部28に表示される種々の機能アイコンを選択操作することなどにより、場面ごとに適宜機能が割り当てられ、各種機能ボタンとして作用する。この機能ボタンには、例えば終了ボタン、戻るボタン、画像送りボタン、ジャンプボタン、絞込みボタン及び属性変更ボタン等がある。
【0031】
このデジタルカメラ100の操作部70は、システム制御部50に指令を入力するため、選択項目を指示する際などに使用されるコントローラホイール(いわゆるタッチホイールでも良い)73を備える。
【0032】
このデジタルカメラ100は、電池検出回路、DC−DCコンバータ、通電するブロックを切り替えるスイッチ回路等により構成され、電池の装着の有無、電池の種類、電池残量の検出を行う、電源制御部80を備える。このデジタルカメラ100は、アルカリ電池やリチウム電池等の一次電池やNiCd電池やNiMH電池、Li電池等の二次電池、ACアダプター等からなる電源部30を備える。
【0033】
図1で、18はメモリカードやハードディスク等の記録媒体200とのインターフェースである。この記録媒体200は、メモリカード等の記録媒体であり、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される。
【0034】
次に、本実施の形態に係わるデジタルカメラ100で、画像の置換、合成の処理を行う場合について説明する。例えば、前景画像をX度回転して置換合成した画像を作成する場合には、背景画像を−X度回転し、前景画像と置換合成し、合成した画像をX度回転して画像合成する。この場合の画像の置換、合成の処理に係わる動作について、図2A、図2Bの画像合成処理のフローチャート、図3の画像合成処理前後の画像イメージの説明図及び図4の画像処理部内部のブロック構成の説明図を参照して説明する。
【0035】
この画像合成処理は、背景画像と前景画像とを特定手段により特定し、前景画像をX度回転して背景画像に対して置換合成した画像を作成する指令により、開始される。この画像合成処理が開始されると、使用者が入力した指令に基づいて背景画像と前景画像とを特定する特定手段としてのメモリ制御部15は、背景画像と前景画像をメモリ32に展開する(ステップS1)。
【0036】
次に、メモリ制御部15は、図3に示す回転する範囲の背景画像R2を読み出し、図4に示す回転部G5へ入力する(ステップS2)。
【0037】
次に、回転部G5は、入力された画素をYUV422からYUV444にフォーマットを変換する(ステップS3)。
【0038】
次に、回転部G5は、―D度回転した時の位置と画素値を計算する(ステップS4)。
【0039】
次に、回転部G5は、YUV444からYUV422にフォーマット変換し出力する(ステップS5)。
【0040】
次に、メモリ制御部15は、回転された画素をメモリ32に書き出す(ステップS6)。
【0041】
次に、メモリ制御部15は、回転する領域の背景画像R2の画素を全て回転処理するまで、上述したステップS2乃至ステップS6の処理を繰り返す(ステップS7でNO)。そして、メモリ制御部15は、画素を全て回転処理したと判断したときにステップS8に進む(ステップS7でYES)。
【0042】
次に、メモリ制御部15は、図3に示す前景画像R4と回転した背景画像R3から合成領域を読み出し、図4に示す置換合成部G6へ入力する(ステップS8)。
【0043】
次に、置換合成部G6は、入力された背景画像R3と前景画像R4の画素をYUV422からYUV444へ変換する(ステップS9)。
【0044】
次に、置換合成部G6は、前景画像R4の画素が置換色R8か否かを判断し、置換色R8であれば(ステップS10でYES)、ステップS11へ進む。
【0045】
ステップS11では、置換合成部G6は、背景画像の画素をYUV444からYUV422へ変換する(ステップS11)。
【0046】
また、置換合成部G6が、前述のステップS10で、前景画像R4の画素が置換色R8か否かを判断し、置換色R8でなければ、(ステップS10でNO)ステップS12へ進む。
【0047】
次に、ステップS12では、置換合成部G6が、前景画像の画素をYUV444からYUV422へ変換してステップS13へ進む。
【0048】
次に、置換合成部G6は、前述のステップS11で変換された背景画像の合成画素のデータ又はステップS12で変換された前景画像の合成画素のデータをメモリ32に書き出す。
【0049】
次に、置換合成部G6は、背景画像R3と前景画像R4の画素を全て置換合成処理するまで、上述したステップS8乃至ステップS13の処理を繰り返す(ステップS14でNO)。そして、置換合成部G6は、画素を全て置換合成処理したと判断したときにステップS15に進む(ステップS14でYES)。
【0050】
次に、メモリ制御部15は、ワークメモリから置換合成した結果画像R5を読み出し、図4に示す回転部G8へ入力する(ステップS15)。
【0051】
次に、回転部G8は、入力された画素をYUV422からYUV444にフォーマットを変換する(ステップS16)。
【0052】
次に、回転部G8は、D度回転した時の位置と画素値を計算する(ステップS17)。
【0053】
次に、回転部G8は、算出された画素値をYUV444からYUV422にフォーマット変換する(ステップS18)。
【0054】
次に、回転部G8は、前述のステップS18でフォーマット変換された画素値のデータをメモリ32に書き出す(ステップS19)。
【0055】
次に、回転部G8は、回転する画像の画素を全て回転処理するまで、上述したステップS15乃至ステップS19の処理を繰り返す(ステップS20でNO)。そして、回転部G8は、画素を全て回転処理したと判断したときにステップS21に進む(ステップS20でYES)。
【0056】
次に、メモリ制御部15は、メモリ32上の背景画像R1から合成結果を書き戻す領域を読み出し、図4に示す高周波検出部G3へ入力する(ステップS21)。
【0057】
次に、高周波検出部G3は、システム制御部50が指定したある閾値以上の高周波を出力するHPFをかけ、検出結果をシステム制御部50へ出力する(ステップS22)。
【0058】
次に、システム制御部50は、高周波検出部G3からの入力によりある閾値以上のエッジがあるか否かを判断する。そして、システム制御部50は、ある閾値以下のエッジを検出した(ある閾値以上のエッジが無い)と判断した場合(ステップS23でNO)に、ステップS29へ進む。そして、システム制御部50は、背景画像の上に合成画像結果R6を書き出して(ステップS29)、本画像合成処理を終了する。
【0059】
また、ステップS23でシステム制御部50は、高周波検出部G3から入力によりある閾値以上のエッジを検出したと判断すると(ステップS23でYES)、ステップS24へ進む。
【0060】
次に、メモリ制御部は、背景画像R1を読み込み、図4に示すフィルタ処理部G2へ入力する(ステップS24)。
【0061】
次に、フィルタ処理部G2は、入力画素をYUV444に変換し、システム制御部50が指定したLPF(ローパスフィルタ処理)をかけた画素を出力する(ステップS25)。
【0062】
次に、メモリ制御部15は、LPFをかけた画素をメモリに書き出す(ステップS26)。
【0063】
次に、メモリ制御部15は、背景画像の画素を全てLPF処理するまで、上述したステップS24乃至ステップS26の処理を繰り返す(ステップS27でNO)。そして、メモリ制御部15は、画素を全てLPF処理したと判断したときにステップS28に進む(ステップS20でYES)。
【0064】
次に、メモリ制御部15は、フィルタをかけた背景画像の上に合成画像R6を書き出して(ステップS28)、本画像合成処理を終了する。
【0065】
以上説明したように、背景画像を−X度回転し、前景画像と置換合成し、合成した画像をX度回転して画像合成する図2A、図2Bに示す画像合成処理では、置換色R8を含む前景画像R4に画像処理を行わない。これにより、この画像合成処理では、前景画像中の置換色が混色しないため、置換合成時に境界がはっきりとした合成画像を作成することができる。さらに、上述のように背景画像から画像処理に必要な部分だけを抽出し、処理を行うことで、処理速度を向上することができる。
【0066】
なお、この画像合成処理では、必要な部分だけを抽出し、画像処理することで、補間処理により合成部分だけ高周波成分が落ちる。このため、背景画像の合成する領域周囲に高周波成分が多い場合には、合成画像と周波数に格差が出ることで、合成画像を置いた矩形領域が目立つ。
【0067】
そこで、この画像合成処理では、図2BのステップS21〜S26で説明したように、閾値以上のエッジを検出すると、背景画像にLPF処理を行い、合成画像との周波数の格差を軽減させている。
【0068】
次に、本実施の形態に係わるデジタルカメラ100で、背景画像Q1に縮小した前景画像Q4を合成した画像を作成する場合について説明する。例えば、背景画像Q1に1/N倍に縮小した前景画像Q4を合成する画像を作成する場合には、背景画像Q1をN倍に拡大し、前景画像と置換合成し、合成した画像を1/N倍に縮小して作成する。この場合の画像の置換、合成の処理について、図5A、図5Bの画像合成処理のフローチャート、図6の画像合成処理前後の画像イメージの説明図及び図7の画像処理部24内部のブロック構成の説明図を参照して説明する。
【0069】
この図5A、図5Bのフローチャートにおける各処理は、システム制御部50が不揮発性メモリ56に格納されたプログラムをシステムメモリ52に展開して実行することにより実現される。
【0070】
この画像合成処理は、図6に示す背景画像Q1と前景画像Q4とを特定し、背景画像Q1に縮小した前景画像Q4を合成した画像を作成する指令により、開始される。この画像合成処理が開始されると、メモリ制御部15は、背景画像と前景画像をメモリ32に展開する(ステップS50)。
【0071】
次に、メモリ制御部15は、図6に示す拡大する範囲の背景画像Q2を読み出し、図7に示す変倍部H5へ入力する(ステップS51)。
【0072】
次に、変倍部H5は、入力された画素をYUV422からYUV444にフォーマットを変換する(ステップS52)。
【0073】
次に、図7に示す変倍部H5は、N倍した時の画素値を計算する(ステップS53)。
【0074】
次に、変倍部H5は、算出した画素値をYUV444からYUV422にフォーマット変換し出力する(ステップS54)。
【0075】
次に、メモリ制御部15は、拡大された画素のデータをメモリ32に書き出す(ステップS55)。
【0076】
次に、メモリ制御部15は、拡大する範囲の背景画像Q2の画素を全て拡大処理するまで、上述したステップS51乃至ステップS55の処理を繰り返す(ステップS56でNO)。そして、メモリ制御部15は、画素を全て拡大処理したと判断したときにステップS57に進む(ステップS56でYES)。
【0077】
次に、メモリ制御部15は、図6に示す回転した背景画像Q3と前景画像Q4を読み出し、図7に示す置換合成部H6へ入力する(ステップS57)。
【0078】
次に、置換合成部H6は、入力された背景画像Q3と前景画像Q4の画素をYUV422からYUV444へ変換する(ステップS58)。
【0079】
次に、置換合成部H6は、前景画像Q4の画素が置換色Q8か否かを判断し、置換色Q8であると判別した場合(ステップS59でYES)には、ステップS60へ進み、背景画像の画素をYUV422へ変換し出力する。
【0080】
また、置換合成部H6は、置換色Q8でないと判別した場合(ステップS59でNO)に、ステップS61へ進み、前景画像の画素をYUV422へ変換し出力する。
【0081】
次に、メモリ制御部15は、ステップS60又はステップS61で変換され出力された合成画素をメモリ32に書き出す。
【0082】
次に、メモリ制御部15は、背景画像Q3と前景画像Q4の画素を全て変換処理するまで、上述したステップS57乃至ステップS61の処理を繰り返す(ステップS63でNO)。そして、メモリ制御部15は、画素を全て拡大処理したと判断したときにステップS64に進む(ステップS63でYES)。
【0083】
次に、メモリ制御部15は、置換合成した結果画像Q5を読み出し、図7に示す変倍部H8へ入力する(ステップS64)。
【0084】
次に、変倍部H8は、入力された画素をYUV422からYUV444にフォーマットを変換する(ステップS65)。
【0085】
次に、変倍部H8は、1/N倍した時の画素値を計算する(ステップS66)。
【0086】
次に、変倍部H8は、YUV444からYUV422にフォーマット変換し出力する(ステップS67)。
【0087】
次に、メモリ制御部15は、フォーマット変換され出力された変倍済みの画素値をメモリ32に書き出す(ステップS68)。
【0088】
次に、メモリ制御部15は、縮小する画像の画素を全て縮小処理するまで、上述したステップS64乃至ステップS68の処理を繰り返す(ステップS69でNO)。そして、メモリ制御部15は、画素を全て拡大処理したと判断したときにステップS70に進む(ステップS69でYES)。
【0089】
次に、メモリ制御部15は、メモリ32上の背景画像Q1から合成結果を書き戻す領域を読み出し、高周波検出部H3へ入力する(ステップS70)。
【0090】
次に、高周波検出部H3は、システム制御部50が指定したある閾値以上の高周波を出力するHPFをかけ、検出結果をシステム制御部50へ出力する(ステップS71)。
【0091】
次に、システム制御部50は、高周波検出部H3からの入力によりある閾値以上のエッジがあるか否かを判断する。そして、システム制御部50は、ある閾値以下のエッジを検出した(ある閾値以上のエッジが無い)と判断した場合(ステップS72でNO)に、ステップS73へ進む。そして、システム制御部50は、背景画像の上に合成画像結果Q6を書き出して(ステップS78)、本画像合成処理を終了する。
【0092】
また、ステップS72でシステム制御部50は、高周波検出部H3から入力によりある閾値以上のエッジを検出したと判断すると(ステップS72でYES)、ステップS73へ進む。
【0093】
次に、メモリ制御部は、背景画像Q1を読み込み、フィルタ処理部H2へ入力する(ステップS74)。
【0094】
次に、フィルタ処理部H2は、入力画素をYUV444に変換し、システム制御部50が指定したLPFをかけた画素を出力する(ステップS74)。
【0095】
次に、メモリ制御部15は、LPFをかけた画素をメモリに書き出す(ステップS75)。
【0096】
次に、メモリ制御部15は、背景画像の画素を全てLPF処理するまで、上述したステップS73乃至ステップS75の処理を繰り返す(ステップS76でNO)。そして、メモリ制御部15は、画素を全てLPF処理したと判断したときにステップS77に進む(ステップS76でYES)。
【0097】
次に、メモリ制御部15は、フィルタをかけた背景画像の上に合成画像Q6を書き出して(ステップS77)、本画像合成処理を終了する。
【0098】
以上説明したように、この背景画像Q1に縮小した前景画像Q4を合成した画像を作成する場合の画像合成処理では、置換色Q8を含む前景画像Q4に画像処理を行わないことで、前景画像中の置換色が混色しない。このため、この場合の画像合成処理では、置換合成時に境界がはっきりとした合成画像を作成することができる。
【0099】
要するに、画像合成処理装置で、背景画像に対して、前景画像を回転、拡大又は縮小処理して置換合成する場合には、前景画像の画素に補間処理をすると、前景画像中の置換色と画像データ部分の境界で混色が起きる。このように置換合成した場合には、背景画像と前景画像との境界に、置換色と画像が混色した画素が出てしまい境界が汚く見える。
【0100】
そこで、本発明の画像合成処理装置では、前景画像を回転、拡大又は縮小処理しないそのままの状態(元前景画像)を維持して、背景画像に所要の回転、拡大又は縮小処理をしたものと画像合成処理を行う。このように前景画像を回転、拡大又は縮小処理をしない場合には、置換色がリニア補間処理により前景画像中の画像の輪郭部分に相当する境界で、前景画像の置換色と画像とが混ざることがない。これにより置換合成のときに、前景画像の置換色と背景画像の画像との境目で色が混ざり合い、境界が汚く見えることを防止する。
【0101】
そして、合成処理後の全体画像を、前景画像部分が所望の回転、拡大又は縮小処理された状態となるように、回転、拡大又は縮小の処理を行って、置換合成処理された全体画像を完成させる。
【0102】
次に、背景画像に対して、回転、拡大又は縮小された前景画像を置換合成する場合について、処理の手順を説明する。
【0103】
この場合には、元前景画像の特定手段であるメモリ制御部15により、前景画像を、回転、拡大又は縮小処理しないそのままの状態(元前景画像)で特定する。また、背景画像の特定手段であるメモリ制御部15は、背景画像を特定する。
【0104】
そして、前景画像を、ある所定角度だけ回転する場合には、第1の画像回転処理手段(回転部G5)により、前景画像の回転方向と逆方向に、背景画像を所定角度だけ回転する。また、前景画像を所定倍率だけ拡大する場合には、第1の画像変倍処理手段(変倍部H5)により、背景画像を所定倍率だけ縮小する。さらに、前景画像を所定倍率だけ縮小する場合には、第1の画像変倍処理手段(変倍部H5)により、背景画像を所定倍率だけ拡大する。
【0105】
次に、回転、拡大又は縮小された背景画像に対して、元前景画像を、置換合成処理手段(置換合成部H6又は置換合成部H6)が重畳するよう置換合成処理する。
【0106】
次に、背景画像に、元前景画像を置換合成処理された画像に対しては、第2の画像回転処理手段(回転部G8)により正方向に所定角度だけ回転する。また変倍する場合には、第2の画像変倍処理手段(変倍部H8)により、所定倍率だけ拡大し又は所定倍率だけ縮小して、所望の画像を完成させる。
【0107】
また、背景画像に、前景画像を置換合成処理する速度を向上させる場合には、背景画像における、前景画像を置換合成する領域(前景画像と同じサイズの領域)だけ置換合成処理を行う。このため、合成領域の切り出し手段(メモリ制御部15及びシステム制御部50)は、背景画像から合成範囲の画像領域を切り出す。
【0108】
この場合には、前景画像を置換合成する領域に、輪郭や境界部分が含まれていると、置換合成する画素を演算した際に、輪郭や境界部分に相当する高い空間周波数の部分の高周波成分が落ちる。すると、背景画像における置換合成のため演算された部分と、合成範囲外の部分(元の背景画像の部分)との境目が目立ち、画質の品位が低下する。
【0109】
そこで、背景画像は、高周波検出手段(高周波検出部G3又は高周波検出部H3)にかけられて高周波成分が検出される。
【0110】
そして、前景画像を置換合成する領域に高周波成分閾値以上に存在して多いと判断された場合には、フィルタ処理手段により背景画像にLPF(ローパスフィルタ処理)をかけてから置換合成し、画質の品位が低下することを抑制する。そして、背景画像における合成範囲の画像領域に対して、置換合成処理手段により、前景画像が置換合成処理された合成範囲の画像を、書き戻し手段により、背景画像の全体に書き戻して所望の画像を完成させる。
【0111】
上述した本実施の形態に係わる画像合成処理装置によれば、特別のハードウェア構成や、特別な演算処理の必要が無い簡素なシステム構成とできる。そして、画像合成処理装置によれば、YUV422の画像でも境界部分を自然な色で明確に表示できるように、マスクデータ中の置換色の混色を起こさずに置換合成できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の画像合成処理装置は、スライドショー、画像再生効果、画像へのスタンプ合成機能等の画像の置換合成を行う画像合成処理装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
G2 フィルタ処理部
G3 高周波検出部
G5 回転部
G6 置換合成部
G8 回転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背景画像に対して、少なくとも前景画像をある角度だけ回転して置換合成する画像合成処理装置であって、
前記前景画像を、そのままの状態で特定する元前景画像の特定手段と、
前記前景画像を回転するある角度だけ、前記背景画像を逆に回転させる第1の画像回転処理手段と、
前記逆に回転された背景画像に対して、前記元前景画像を置換合成処理する置換合成処理手段と、
前記置換合成処理された画像を、前記前景画像を回転させる正方向にある角度だけ回転させる第2の画像回転処理手段と、
を有することを特徴とする画像合成処理装置。
【請求項2】
背景画像に対して、少なくとも前景画像をある倍率だけ拡大又は縮小する変倍を行って置換合成する画像合成処理装置であって、
前記前景画像を、そのままの状態で特定する元前景画像の特定手段と、
前記前景画像を変倍するある倍率だけ、前記前景画像を拡大する場合には前記背景画像を逆に縮小させ、前記前景画像を縮小する場合には前記背景画像を逆に拡大させる第1の画像変倍処理手段と、
前記逆に変倍された背景画像に対して、前記元前景画像を置換合成処理する置換合成処理手段と、
前記置換合成処理された画像を、前記前景画像を回転させる正の倍率で変倍させる第2の画像変倍処理手段と、
を有することを特徴とする画像合成処理装置。
【請求項3】
前記背景画像から、前記前景画像を置換合成する合成範囲の画像領域を切り出す合成領域の切り出し手段と、
前記合成範囲の画像領域に対して前記置換合成処理手段により前記前景画像が置換合成処理された画像を、前記背景画像の全体に書き戻す書き戻し手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の画像合成処理装置。
【請求項4】
前記背景画像から、高周波検出手段により高周波成分を検出し、
前記高周波検出手段がある閾値以上の高周波を検出した場合に、フィルタ処理手段により、前記背景画像に対してローパスフィルタ処理をしてから、前記置換合成処理手段により、背景画像に対して、前記元前景画像を置換合成処理することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像合成処理装置。
【請求項5】
少なくとも前記背景画像、前記前景画像は、YUV422の画像であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像合成処理装置。
【請求項6】
背景画像に対して、少なくとも前景画像をある角度だけ回転して置換合成する画像合成処理装置の制御方法であって、
前記前景画像を、そのままの状態で特定する元前景画像の特定ステップと、
前記前景画像を回転するある角度だけ、前記背景画像を逆に回転させる第1の画像回転処理ステップと、
前記逆に回転された背景画像に対して、前記元前景画像を置換合成処理する置換合成処理ステップと、
前記置換合成処理された画像を、前記前景画像を回転させる正方向にある角度だけ回転させる第2の画像回転処理ステップと、
を有することを特徴とする画像合成処理装置の制御方法。
【請求項7】
背景画像に対して、少なくとも前景画像をある倍率だけ拡大又は縮小する変倍を行って置換合成する画像合成処理装置の制御方法であって、
前記前景画像を、そのままの状態で特定する元前景画像の特定ステップと、
前記前景画像を変倍するある倍率だけ、前記前景画像を拡大する場合には前記背景画像を逆に縮小させ、前記前景画像を縮小する場合には前記背景画像を逆に拡大させる第1の画像変倍処理ステップと、
前記逆に変倍された背景画像に対して、前記元前景画像を置換合成処理する置換合成処理ステップと、
前記置換合成処理された画像を、前記前景画像を回転させる正の倍率で変倍させる第2の画像変倍処理ステップと、
を有することを特徴とする画像合成処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−84987(P2012−84987A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227606(P2010−227606)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】