説明

画像合成処理装置及び方法

【課題】広範囲にわたる被写体全体を精細に写すとともに高精度な画像を得ることができる画像合成処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】焦点距離が短い状態で撮影された広角画像110と、広角画像と同じ撮影位置から撮影領域の一部を、焦点距離がより長い状態で撮影された少なくとも1枚の第1望遠画像110との写真画像データを入力する画像入力手段2と、画像入力手段により入力された広角画像と第1望遠画像とに共通して写っている被写体の同一位置を示す合成基準点11a〜11d,12a〜12dを4組以上指定する基準点指定手段3aと、基準点指定手段により指定された合成基準点の座標値に基づいて射影変換式を算出する演算装置3bと、射影変換式により第1望遠画像を射影変換して第2望遠画像130を作成する座標点変換手段3eと、第2望遠画像を広角画像中に合成表示して合成画像を作成する画像合成手段3fとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離の短い状態で撮影された広角画像と、その広角画像と同じ撮影位置から撮影領域の一部を、焦点距離の長い状態で撮影された望遠画像とを合成する画像合成処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からデジタル画像を用いて当該画像に写されている被写体をコンピュータ解析する技術が、画像計測の分野などで用いられている。この画像計測の対象となる被写体は様々であるが、例えば崖の地滑りの状況や、橋梁や橋脚などのコンクリート構造物のクラック(ひび割れ)など、かなり広範囲にわたって分布するとともに当該被写体に近づいて撮影することが困難なものが多い。
【0003】
このような撮影位置から遠い距離にある被写体を広い領域で撮影するためには、焦点距離の短いカメラで広角に撮影するのが一般的である。しかしながら、そのようにして撮影された広角画像においては、被写体の単位面積あたりに相当する写真の画素数が少なくなるため、写真画像の一画素あたりに相当する被写体の領域が大きくなり、その結果、画像に写っている特徴がぼやけてしまうという問題点がある。この問題点は、特に写真画像を拡大表示した時に顕著となる。
【0004】
このような問題点を解決する方法としては、焦点距離の長いカメラで撮影した望遠画像を用いて、同じ撮影位置から撮影範囲の一部がオーバーラップするように複数枚の写真を撮影し、これを複数枚つなぎ合わせて一枚の大きな連結画像とする方法が考えられる。この方法によれば、被写体の単位面積あたりに写っている写真の画素数が多くなり、一画素あたりに投影されている被写体の領域が狭いため、写真に写っている特徴は明確になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法においては、個々の写真の光軸が異なる場合、隣り合う望遠画像をつなぎ合わせていくときに、2枚の写真の間にわずかに誤差が生じてしまうという問題点がある。特に写真画像においては、画像の端部領域においてレンズの収差に基づく被写体像のゆがみが大きいため、複数枚の写真を互いの端部に被写体が共通するように撮影して、当該複数枚の写真をつなぎ合わせた場合、その誤差(ずれ)が大きくなりやすい。すなわち、被写体全体が撮影されている連結画像ができるまで望遠画像を繰り返しつなぎ合わせていくと、最後に連結される画像の本来の画像の位置からのずれは、累積的に大きくなってしまう。したがって、広範囲にわたる被写体の全体を精細に写すとともに高精度な連結(合成)画像を得ることは困難であった。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、広範囲にわたる被写体全体を精細に写すとともに高精度な画像を得ることができる画像合成処理装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の画像合成処理装置及び方法を提供する。
【0008】
本発明の第1態様によれば、焦点距離が短い状態で撮影された広角画像と、前記広角画像と同じ撮影位置から撮影領域の一部を、焦点距離がより長い状態で撮影された少なくとも1枚の第1望遠画像との写真画像データを入力する画像入力手段と、
前記画像入力手段により入力された前記広角画像と前記第1望遠画像とに共通して写っている被写体の同一位置を示す合成基準点を、4組以上指定する基準点指定手段と、
前記基準点指定手段により指定された前記合成基準点の座標値に基づいて、対応する射影変換式を算出する演算装置と、
前記演算装置により算出された前記射影変換式により、前記第1望遠画像を射影変換して第2望遠画像を作成する座標点変換手段と、
前記第2望遠画像を、前記広角画像中の対応位置に合成表示する画像合成手段と、
を有することを特徴とする画像合成処理装置を提供する。
【0009】
本発明の第2態様によれば、前記演算装置は、さらに、前記第2望遠画像に外接する矩形の外接枠を演算するとともに、前記第1望遠画像のX軸方向寸法及びY軸方向寸法と前記外接枠のX軸方向寸法及びY軸方向寸法の割合としてそれぞれ導かれるX軸スケール及びY軸スケールを算出し、
前記座標点変換手段は、さらに、前記第1望遠画像を、前記X軸スケール及び前記Y軸スケールと前記射影変換式とに基づいて射影変換して第3望遠画像を作成し、
前記画像合成手段は、前記第2望遠画像に代えて、前記第3望遠画像を縮小して前記広角画像中の対応位置に合成表示することを特徴とする請求項1に記載の画像合成処理装置を提供する。
【0010】
本発明の第3態様によれば、前記座標点変換手段は、前記第1望遠画像の各点を下記式により射影変換することによって前記第3望遠画像を作成することを特徴とする請求項2に記載の画像合成処理装置を提供する。
【数1】

上記式において、xは第1望遠画像中の任意の点のX座標、yは第1望遠画像中の任意の点のY座標、x16は第3望遠画像のX座標、y16は第3望遠画像のY座標、SxはX軸スケール、SyはY軸スケール、A,B,C,D,E,F,a,b,cはそれぞれ射影変換式の定数を示す。
【0011】
本発明の第4態様によれば、焦点距離が短い状態で撮影された広角画像と、前記広角画像と同じ撮影位置から撮影領域の一部を、焦点距離がより長い状態で撮影された少なくとも1枚の望遠画像とを用いて、合成表示する方法であって、
前記広角画像と前記望遠画像とに共通して写っている被写体の同一位置を示す4組以上の合成基準点を選択し、
前記広角画像及び前記望遠画像中における前記合成基準点の座標値に基づいて算出した射影変換式により、前記望遠画像を前記広角画像中の対応位置に合成表示することを特徴とする画像合成処理方法を提供する。
【0012】
本発明の第5態様によれば、焦点距離が短い状態で撮影された広角画像と、前記広角画像と同じ撮影位置から撮影領域の一部を、焦点距離がより長い状態で撮影された少なくとも1枚の第1望遠画像とを用いて、合成画像を合成する画像合成処理方法であって、
前記広角画像と前記望遠画像とに共通して写っている被写体の同一位置を示す4組以上の合成基準点を選択し、
前記広角画像及び前記望遠画像中における前記合成基準点の座標値に基づいて算出した射影変換式により、前記第1望遠画像を射影変換して第2望遠画像を作成し、
前記第2望遠画像に外接する矩形の外接枠を演算して、前記第1望遠画像のX軸方向寸法及びY軸方向寸法と前記外接枠のX軸方向寸法及びY軸方向寸法の割合としてそれぞれ導かれるX軸スケール及びY軸スケールを算出し、
前記第1望遠画像を、前記X軸スケール及び前記Y軸スケールと前記射影変換式とに基づいて射影変換して第3望遠画像を作成し、
前記第3望遠画像を縮小して前記広角画像中の対応位置に合成表示することを特徴とする画像合成処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1及び第4態様によれば、望遠画像と広角画像とを用い、望遠画像中の被写体像を広角画像中の被写体像に一致させるように、望遠画像と広角画像とを見かけ上合成する。すなわち、合成画像は、当該合成写真画像の表示において当該一致する被写体像については、望遠画像を表示する。すなわち、合成写真画像は、その被写体像全体については、望遠画像の精細な情報が用いられているので、当該領域については精細な画像情報を得ることができる。
【0014】
また、広角画像と望遠画像との光軸中心にずれが生じているような場合であっても、当該望遠画像を射影変換することにより、望遠画像を広角画像の光軸から撮影したように変形して両写真画像の被写体像を一致させることができる。したがって、合成写真画像の作成時において、当該被写体像のずれの誤差を少なくし、被写体にきわめて近い被写体像を有する高精度な合成写真画像を作成することができる。
【0015】
また、本発明の第2及び第5態様によれば、射影変換により縮小される望遠画像の変換領域に外接する外接枠を用いて変換前後の望遠画像の倍率としてのX軸スケール及びY軸スケールを求めることにより、射影変換時に望遠画像を縮小することなく射影変換することができる。したがって、射影変換時の縮小による望遠画像の画素数の減少をなくすことができ、高精細な画像を広角画像上に重ね合わせて表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る画像合成処理装置について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態にかかる画像合成処理装置は、写真画像を入力し、画像合成するためのコンピュータで構成される。カメラは、内部標定がなされている写真計測用のものでもよいし、内部標定がなされていない汎用のデジタルカメラであってもよい。コンピュータは、汎用のものを用いることができ、当該コンピュータには、後述するような画像合成処理を行わせるためのプログラムをインストールしておけばよい。
【0018】
本装置において用いられる写真画像は、例えばCCD(Charge Coupled Device)等を撮像素子とするデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラを用いて撮影等により得られるデジタル情報であることが最も望ましいが、例えばアナログスチルカメラやアナログビデオカメラを用いた撮影等により得られるアナログ情報をスキャナなどの装置を用いてデジタル情報に変換したものを用いることもできる。デジタル情報として得た写真画像は、コンピュータで直接取り扱うことができる。また、紙やプラスチックフィルム等に形成した写真画像のハードコピーを直接用いることもでき、そのようなハードコピーを画像スキャナ等によりデジタル情報化して用いることもできる。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る画像合成処理装置1のブロック図である。本画像合成処理装置1は、カメラ7及びキーボードやマウスなどの入力装置8と接続するための画像入力手段の一例であるインターフェース部2、装置全体の制御を司る制御演算部3、写真画像などを表示する表示部4、合成される写真画像やデータなどの蓄積領域として機能する記憶部5、及び上記プログラムがインストールされることによってシステムプログラムとして機能するシステムプログラム記憶部6を備えている。
【0020】
制御演算部3には、後述するように、上記システムプログラムにより駆動され画像合成を実行するためのブロック3a〜3fが設けられている。これらの各ブロックは、それぞれ単独で、または装置内の他のブロックと協働して、以下に示す処理を行う機能ブロックとして機能する。
【0021】
次に、図2を用いて、画像合成処理装置1を用いて画像合成を行う処理の流れについて説明する。図2は、図1の画像合成処理装置1の画像合成処理のフロー図である。本画像合成処理装置1を用いて画像合成処理を行う場合には、以下に示す各ステップの処理は、主に装置の制御演算部3の各ブロック3a〜3fが処理を司る。つまり、基準点指定部3aと、演算手段の一例である射影変換式算出部3b、外接枠演算部3c、及びスケール算出部3dと、座標点変換部3eと、画像合成部3fとが処理を司る。
【0022】
まず、同一撮影位置において、カメラ7によって広角画像と望遠画像とを撮影し、当該画像を画像合成処理装置1のインターフェース部2に入力する(ステップS1)。インターフェース部2に入力された広角画像と望遠画像は、画像記憶部5に記憶され、操作時に表示部4に表示される。
【0023】
なお、望遠画像は、広角画像中の一部分を撮影したものであり、2枚以上であってもよい。さらに、望遠画像は、広角画像と同一場所からの撮影であれば、カメラの光軸の方向を変えて撮影した画像であってもよい。本実施形態において望遠画像及び広角画像は、理解の便宜のため、1枚ずつ撮影したものとして説明を進める。また、本実施形態において用いる広角画像や望遠画像は、それぞれ予めレンズの収差による歪みを補正しておくことが望ましいが、絶対条件ではない。
【0024】
また、本実施形態において、画像合成処理に用いられる写真画像は、例えば、図3,図4に示すようなものである。図3はカメラ7により焦点距離の短い状態で撮影された広角画像110を示し、図4は図3の広角画像110と同じ位置から焦点距離の長い状態でカメラ7により撮影された(第1)望遠画像120を示している。これらの写真画像は、撮影位置は同じであるが、撮影の光軸中心の位置がずれていてもよい。すなわち、広角画像110の被写体の一部が望遠画像120に撮影されている状態となっている。当該写真画像単位でXY座標系を用いて画像中の任意の点を2次元的に表すことができる。本実施形態においては、写真画像の長手方向をX軸、短手方向をY軸とし、原点は、図3,図4に示す各写真画像の左上コーナー部とする。
【0025】
次に、入力装置8を操作して表示部に表示された広角画像と望遠画像において、被写体の同じ点を示す合成基準点をそれぞれ4点以上指定する(ステップS2)。本実施形態においては、図5に示すように、広角画像110中に合成基準点11a〜11d、望遠画像120中に合成基準点12a〜12dの4点ずつ、合計8点を指定する。すなわち、4組の合成基準点を指定する。
【0026】
当該合成基準点11a〜11d、12a〜12dの指定は、表示部4に表示されている広角画像110と望遠画像120とを参照しながらマウスなどの入力装置8を操作して入力する。当該入力された点は基準点指定部3aにより合成基準点11a〜11d、12a〜12dとして認識される。このとき、画像中に写っている被写体中の物体の端部分など被写体の特徴部分を合成基準点として指定すると、広角画像110と望遠画像120について同じ点を指定しやすい。この合成基準点の広角画像110上の座標をそれぞれ11a(x11a,y11a)、11b(x11b,y11b)、11c(x11c,y11c)、11d(x11d,y11d)とし、望遠画像120上の座標をそれぞれ、12a(x12a,y12a)、12b(x12b,y12b)、12c(x12c,y12c)、12d(x12d,y12d)とする。なお、この時、指定される合成基準点の各組の座標を取得するには、特許第3316682号公報に記載されているパターンマッチングなどの相関処理を利用して、自動化を図ることもできる。
【0027】
次に、射影変換式算出部3bが、4点以上の対応付けをして得られた4組の合成基準点の座標を下記式(1)で示される射影変換式に代入することにより、下記式(1)の9個の定数(A,B,C,D,E,F,a,b,c)を算出する(ステップS3)。
【0028】
【数2】

式(1)において、x12、y12は望遠画像120側の合成基準点の座標12a〜12dを示し、x11、y11は広角画像110側の合成基準点の座標11a〜11dを示す。
【0029】
この4組以上の合成基準点の入力により、望遠画像を広角画像に重ねるための9個の定数(A,B,C,D,E,F,a,b,c)を求めることができる。この式(1)により望遠画像120を(第2)望遠画像130に射影変換し、広角画像110中に望遠画像130を合成表示することで、被写体の全体を精細に写すとともに高精度な合成画像を作成することが可能となる。
【0030】
しかしながら、この定数をそのまま適用して、望遠画像130を広角画像110中に合成した場合、望遠画像130の縮小に伴って画素数が減ることになるため、その分、画像の精細さが失われてしまう。また、それを解決する方法として、合成画像を表示する際に望遠画像120を元画像として、上記各定数が求められた式(1)より変形しながら表示する方法が考えられるが、この方法では当該合成画像を表示する装置に過度の演算を課すことになり、合成画像の表示スピードが遅くなる。このため、以下の処理を行う。
【0031】
具体的には、座標点変換部3eが、図6に示すように、望遠画像120の外枠の座標を上記各定数(A,B,C,D,E,F,a,b,c)の値を入力した式(1)を用いて変換する。具体的には、望遠画像120の4つのコーナー部13a〜13dの座標を、式(1)により射影変換する。当該望遠画像120の4つのコーナー部13a〜13dが式(1)により変換された点を外枠変換点14a〜14dとし、その座標をそれぞれ、14a(X14a,Y14a)、14b(X14b,Y14b)、14c(X14c,Y14c)、14d(X14d,Y14d)とする(ステップS4)。
【0032】
次に、図7に示すように、外接枠演算部3cが、外枠変換点14a〜14dの各座標より、当該外枠変換点14a〜14dを結ぶ領域に外接し、かつ横方向がX軸に沿いかつ横方向がY軸に沿う矩形の外接枠15を演算する(ステップS5)。具体的には、外枠変換点14a〜14dの各座標のうち、X座標の最大値と最小値、Y座標の最大値と最小値とを検索し、それぞれ15a(X最大、Y最小)、15b(X最大、Y最大)、15c(X最小、Y最大)、15d(X最小、Y最小)の組み合わせにより4点の座標を決定し、当該座標が示す点で囲まれた範囲を外接枠15とする。
【0033】
次に、スケール算出部3dが、外接枠15のX軸方向の大きさXo(15aと15dとの差)及び外接枠15のY軸方向の大きさYo(15cと15dとの差)を求め(ステップS6)、望遠画像120全体のX軸方向の大きさXa(13aと13dとの差)および望遠画像120全体のY軸方向の大きさYa(13cと13dとの差)の情報と比較し、下記式(2)に基づいて、X軸スケールSx、及びY軸スケールSyを求める(ステップS7)。ここで、X軸スケールSx、及びY軸スケールSyは望遠画像の精細さを失わないようにするためのスケールである。
【0034】
【数3】

式(2)において、SxはX軸スケール、SyはY軸スケール、Xaは望遠画像120全体のX軸方向の大きさ、Xoは外接枠15のX軸方向の大きさ、Yaは望遠画像120全体のY軸方向の大きさ、Yoは外接枠15のY軸方向の大きさを示す。
【0035】
次に、上記において求められたX軸スケールSx、及びY軸スケールSyに基づいて、式(3)に外枠変換点14a〜14dの座標を入力することで、変換望遠画像枠16を算出する。具体的には、図8に示すように、外枠変換点の座標14a〜14dを式(3)に入力すれば、それぞれ対応する変換望遠画像枠16のコーナー部16a〜16dの座標16a(x16a,y16a),16b(x16b,y16b),16c(x16c,y16c),16d(x16d,y16d)を算出する。
【0036】
【数4】

【0037】
上述のように、望遠画像120の各座標と外枠変換点の座標14a〜14dとは、式(1)に示す関係があるから、X軸スケールSx及びY軸スケールSyにより、望遠画像120の精細さを損なうことなく、(第3)望遠画像140に変換することができる。すなわち、望遠画像120中の任意の点の座標と望遠画像140中の各点の座標との間には式(1)と式(3)から導かれる式(4)に示す関係が成り立つ。
【0038】
【数5】

式(4)において、xは望遠画像120中の任意の点のX座標、yは望遠画像120中の任意の点のY座標、x16は望遠画像140のX座標、y16は望遠画像140のY座標、SxはX軸スケール、SyはY軸スケールを示す。
【0039】
したがって、座標点変換部3eが、望遠画像120を、図9に示すように、式(4)に基づいて、射影変換して望遠画像140を作成する(ステップS8)。この処理によって、望遠画像120を広角画像110中に貼り合わせる場合に用いられる画像の射影変換を、画像の精細さを損なうことなく行うことができる。
【0040】
次に、画像合成部3fが、図10に示すように、広角画像110中の対応位置に望遠画像140を適宜縮小して合成表示し、合成画像を作成する(ステップS9)。この場合、望遠画像140のデータ(画素数)は、縮小前と同じままで減少せず、望遠画像120と同じ精細さで表示される。これにより、画像合成処理が完了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態にかかる画像合成処理装置によれば、広角画像と望遠画像との画像合成処理については、射影変換を用いて行うようにしているため、例えば、望遠画像が広角画像の端部の領域に対応する場合など、両者の光軸が大きくずれている場合であっても、望遠画像を広角画像と同じ光軸から撮影したように変換して、両写真画像の被写体像を一致させることができる。したがって、被写体像のずれが生じることなく合成写真画像を作成することができる。また、X軸スケール及びY軸スケールを用いて、射影変換時に生じる望遠画像の縮小をなくし、広角画像中に表示される望遠画像の画素数の減少をなくして、精細な合成写真画像を得ることができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、望遠画像は広角画像ごとに1枚とする必要はなく、広角画像の複数の領域を撮影した複数枚の画像で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る画像合成処理装置のブロック図である。
【図2】図1の画像合成処理装置を用いて画像合成処理を行う場合の全体的な流れを示すフロー図である。
【図3】カメラにより撮影された広角画像の例である。
【図4】カメラにより撮影された望遠画像の例である。
【図5】合成される2枚の画像の合成基準点の選択における処理の説明図である。
【図6】望遠画像の外枠を射影変換し外枠変換点を作成する処理の説明図である。
【図7】外枠変換点に外接する外接枠に基づいてX軸スケール及びY軸スケールを算出する処理の説明図である。
【図8】変換望遠画像についての概念図である。
【図9】望遠画像から変換望遠画像を作成する処理についての説明図である。
【図10】広角画像中に変換望遠画像を合成処理する説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 画像合成処理装置
2 インターフェース部
3 制御演算部
4 表示部
5 画像記憶部
6 システムプログラム
7 カメラ
8 入力装置
11a〜11d 広角側合成基準点
12a〜12d 望遠側合成基準点
13 望遠画像のコーナー部
14 外枠
14a〜14d 外枠変換点
15 外接枠
15a〜15d 外接枠のコーナー部
16 変換望遠画像枠
110 広角画像
120 第1望遠画像
130 第2望遠画像
140 第3望遠画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点距離が短い状態で撮影された広角画像と、前記広角画像と同じ撮影位置から撮影領域の一部を焦点距離がより長い状態で撮影された少なくとも1枚の第1望遠画像との写真画像データを入力する画像入力手段と、
前記画像入力手段により入力された前記広角画像と前記第1望遠画像とに共通して写っている被写体の同一位置を示す合成基準点を、4組以上指定する基準点指定手段と、
前記基準点指定手段により指定された前記合成基準点の座標値に基づいて、対応する射影変換式を算出する演算装置と、
前記演算装置により算出された前記射影変換式により、前記第1望遠画像を射影変換して第2望遠画像を作成する座標点変換手段と、
前記第2望遠画像を、前記広角画像中の対応位置に合成表示する画像合成手段と、
を有することを特徴とする画像合成処理装置。
【請求項2】
前記演算装置は、さらに、前記第2望遠画像に外接する矩形の外接枠を演算するとともに、前記第1望遠画像のX軸方向寸法及びY軸方向寸法と前記外接枠のX軸方向寸法及びY軸方向寸法の割合としてそれぞれ導かれるX軸スケール及びY軸スケールを算出し、
前記座標点変換手段は、さらに、前記第1望遠画像を、前記X軸スケール及び前記Y軸スケールと前記射影変換式とに基づいて射影変換して第3望遠画像を作成し、
前記画像合成手段は、前記第2望遠画像に代えて、前記第3望遠画像を縮小して前記広角画像中の対応位置に合成表示することを特徴とする請求項1に記載の画像合成処理装置。
【請求項3】
前記座標点変換手段は、前記第1望遠画像の各点を下記式により射影変換することによって前記第3望遠画像を作成することを特徴とする請求項2に記載の画像合成処理装置。
【数1】

上記式において、xは第1望遠画像中の任意の点のX座標、yは第1望遠画像中の任意の点のY座標、x16は第3望遠画像のX座標、y16は第3望遠画像のY座標、SxはX軸スケール、SyはY軸スケール、A,B,C,D,E,F,a,b,cはそれぞれ射影変換式の定数を示す。
【請求項4】
焦点距離が短い状態で撮影された広角画像と、前記広角画像と同じ撮影位置から撮影領域の一部を、焦点距離がより長い状態で撮影された少なくとも1枚の望遠画像とを用いて、合成表示する方法であって、
前記広角画像と前記望遠画像とに共通して写っている被写体の同一位置を示す4組以上の合成基準点を選択し、
前記広角画像及び前記望遠画像中における前記合成基準点の座標値に基づいて算出した射影変換式により、前記望遠画像を前記広角画像中の対応位置に合成表示することを特徴とする画像合成処理方法。
【請求項5】
焦点距離が短い状態で撮影された広角画像と、前記広角画像と同じ撮影位置から撮影領域の一部を、焦点距離がより長い状態で撮影された少なくとも1枚の第1望遠画像とを用いて、合成画像を合成する画像合成処理方法であって、
前記広角画像と前記望遠画像とに共通して写っている被写体の同一位置を示す4組以上の合成基準点を選択し、
前記広角画像及び前記望遠画像中における前記合成基準点の座標値に基づいて算出した射影変換式により、前記第1望遠画像を射影変換して第2望遠画像を作成し、
前記第2望遠画像に外接する矩形の外接枠を演算して、前記第1望遠画像のX軸方向寸法及びY軸方向寸法と前記外接枠のX軸方向寸法及びY軸方向寸法の割合としてそれぞれ導かれるX軸スケール及びY軸スケールを算出し、
前記第1望遠画像を、前記X軸スケール及び前記Y軸スケールと前記射影変換式とに基づいて射影変換して第3望遠画像を作成し、
前記第3望遠画像を縮小して前記広角画像中の対応位置に合成表示することを特徴とする画像合成処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−164258(P2007−164258A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356137(P2005−356137)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】