説明

画像形成体および個人認証媒体

【課題】より高解像度、高品質な画像形成体を提供する。
【解決手段】第1基材の一方の面に剥離層と構造形成層と透明被膜層と接着層をこの順序で積層してなる転写箔から第2基材の一方の面に画像構成要素の画素を微小面積のドットとして複数転写して画像を形成した画像形成体であって、
前記ドットは、前記第2基材の一方の面に隣接するドットと部分的に重なるように転写され、
前記剥離層は、ポリエチレンワックスを含有するアクリル系樹脂からなり、かつ
前記接着層は、無機または有機の微粒子を含有するエステル系樹脂とエポキシ系樹脂の混合材料からなることを特徴とする画像形成体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成体および個人認証媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート、査証用ステッカー、またはカード類のような個人認証媒体は、従来、色々なセキュリティ手法が提案されてきている。例えば、現在使用されているパスポートは、ICAOの規定によると目視および光学文字識別方式の両方で読めなければならないとされている。ICAOは、International Civil Aviation Organizationの略である。ICAOの規定によれば、パスポートに使用する材質やセキュリティに関しては各国の自由裁量である。
【0003】
パスポートの目視確認情報としての顔写真は、従来写真を貼り合わせたものであったが、近年では写真情報をデジタル化し、これをパスポートに再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば転写リボンによる感熱転写記録法が検討されている。
【0004】
しかしながら、昨今では感熱記録方式のプリンタが広く普及している状況を考慮すると、パスポートから顔写真を取り除いた後、そこに別の顔写真を形成することは、必ずしも困難ではない。
【0005】
特許文献1には、顔写真の他に蛍光材料を用いて同じ顔写真を形成する方法が開示されている。また、特許文献2にはパール顔料を溶融型熱転写インクリボン化して顔写真を形成する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、蛍光材料を用いる前記方法では紫外線ランプ(ブラックライト)を用いる必要があるため、認証できる場面が限られている。パール顔料による顔写真は、目視による確認は可能であるが、パール顔料の粒子が大きいため、精細な画像の形成が困難になる。
【0007】
また、個人認証媒体の偽造防止技術として、顔写真等の個人情報をオンデマンドでホログラム化する方法も考えられている。例えば、特許文献3にはホログラムリボンを用いた熱転写方式で個人情報をホログラム化する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、この方法では顔写真などの画像情報を形成するにはドットを非常に微細にすることで高解像度を得る必要があるため、表現できるオンデマンドホログラムの解像度に限界がある。しかも、解像度を上げるほど画質が汚くなってしまい、目視での真偽判定が困難になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−125403号公報
【特許文献2】特開2003−170685号公報
【特許文献3】特開平10−049647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、より高解像度、高品質な画像形成体を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明は、前記画像形成体を用いて偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正がなされた場合であっても被疑不正品を観察すると容易に発見できるような高い発見容易性を備える、高セキュリティ性を必要とされるパスポート、査証、または各種のカード類のような個人認証媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1側面によると、第1基材の一方の面に剥離層と構造形成層と透明被膜層と接着層をこの順序で積層してなる転写箔から第2基材の一方の面に画像構成要素の画素を微小面積のドットとして複数転写して画像を形成した画像形成体であって、
前記ドットは、前記第2基材の一方の面に隣接するドットと部分的に重なるように転写され、
前記剥離層は、ポリエチレンワックスを含有するアクリル系樹脂からなり、かつ
前記接着層は、無機または有機の微粒子を含有するエステル系樹脂とエポキシ系樹脂の混合材料からなることを特徴とする画像形成体が提供される。
【0013】
本発明の第2側面によると、前記第1側面に記載の画像形成体と、前記第1基材から前記画像形成体が転写された第2基材とを具備することを特徴とする個人認証媒体が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より高解像度、高品質な画像形成体を提供することができる。
【0015】
また本発明によれば、前記画像形成体を用いて偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正がなされた場合であっても被疑不正品を観察すると容易に発見できるような高い発見容易性を備える、高セキュリティ性を必要とされるパスポート、査証、または各種のカード類のような個人認証媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る個人認証情報媒体を概略的に示す平面図である。
【図2】実施形態に係る転写箔を概略的に示す断面図である。
【図3】転写箔を用いてドットを転写するプロセスを概略的に示す断面図である。
【図4】実施形態に係る画像形成体の形成にあたっての背景説明のための転写工程を概略的に示す断面図である。
【図5】実施形態に係る転写箔から画像構成要素の画像を微小面積のドットとして複数転写する工程を概略的に示す断面図である。
【図6】実施形態に係る別の個人認証情報媒体を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。図1に示す個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体である。図1は、開いた状態の冊子体を描いている。
【0019】
個人認証媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
【0020】
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には文字列および地紋などの画像I2が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11または複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11には、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0021】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0022】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0023】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は顔、指紋、静脈および虹彩の少なくとも1つの画像またはパターンである。
【0024】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属および身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0025】
図1において、表紙2は画像I1a、I1b、I2およびI3を表示している。
【0026】
画像I1a、I2およびI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2およびI3は白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2およびI3の1つ以上を省略してもよい。
【0027】
画像I1a、I2およびI3は、例えば染料および顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2およびI3の形成にはサーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、またはそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。また、画像I1a、I2およびI3は感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。さらに、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2およびI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0028】
画像I1bは、ホログラムおよび/または回折格子が表示する画像である。画像I1bは、例えばサーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプまたは熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことにより形成する。
【0029】
画像I1aおよびI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aを含む顔画像と、画像I1bを含む顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aを含む顔画像と、画像I1bを含む顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1aおよびI1bの各々は顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0030】
画像I1bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像I1bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0031】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば文字、記号、符号および標章の1つ以上を構成している。
【0032】
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像I1aおよびI1bの少なくとも一方とを組み合わせると、情報媒体100の改竄をより困難にすることができる。
【0033】
このような個人認証媒体100の画像形成体に用いられる転写箔を図2を参照して説明する。図2は、実施形態に係る転写箔を概略的に示す断面図である。
【0034】
転写箔60は、基材50(第1基材)の一方の面に剥離層51、構造形成層52、透明被覆層53および接着層54をこの順序で積層した構造を有する。図2では透明被膜層53が構造形成層52全体を覆うように積層されているが、透明被膜層53は構造形成層52の少なくとも一部に積層されてあればよい。
【0035】
基材50、剥離層51、構造形成層52の屈折率は概ね同一であるか近い値となり、一方、透明被膜層53のみ屈折率が大きく異なるのが一般的である。その結果、図2に示す転写箔60を観察すると、透明被膜層53は構造形成層52を被覆するように積層されているため、構造形成層52の構造に起因する射出光を観察できる。
【0036】
基材50は、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)等のプラスチックシートから形成される。基材50の厚さは、一般的に10〜100μm程度である。実施形態の転写箔60における基材50は、転写性を向上させるために薄い方が良く、特に10nm〜1μm程度であることがより好ましい。
【0037】
剥離層51は、ポリエチレンワックスを含有するアクリル系樹脂から形成される。このような剥離層は、ポリエチレンワックスを含有するため、転写箔から後述するドット(画素)を転写する際、基材から転写箔を容易に剥離できる。一方、剥離層51は主要成分がアクリル系樹脂であるため、他の材料、例えば接着層との密着性が良好になる。アクリル系樹脂は、分子中にカルボキシル基を有するメタクリル酸化合物または分子中に水酸基を有するメタクリレート化合物と、分子中に少なくとも水酸基を1つ以上有するグリシジル型エポキシ化合物とを反応させて合成したエポキシ系アクリル樹脂であることが好ましい。このようなエポキシ系アクリル樹脂にポリエチレンワックスを含有する材料からなる剥離層は、他の材料との密着性に加えて転写箔の転写時の箔切れ性がより良好になるため、より高解像度の画像を表現することが可能となる。
【0038】
剥離層51のアクリル系樹脂に含有されるポリエチレンワックスは、アクリル系樹脂およびポリエチレンワックスの総量に対して10〜20質量%にすることが好ましい。
【0039】
構造形成層52の材料は、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン等の光硬化性樹脂、またはアクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂、またはポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。このような熱可塑性樹脂を所望の構造を賦型して硬化させることにより構造形成層52を成形することができる。これらの樹脂の硬化物は、全て光透過性であり、屈折率は一般的には1.5程度である。
【0040】
構造成形層52の厚さは、耐熱性、箔切れ性、熱転写性を向上させるために薄い方が好ましく、特に1.5μm以下であることが好ましい。
【0041】
透明被覆層53は、光反射層としても機能し、例えば透明被膜または金属被膜等を用いることができる。透明被覆層53が透明被膜である場合、構造形成層52と屈折率が異なる誘電体層、誘電体多層膜または高屈折率材料層を使用することができる。透明被膜は、例えば屈折率が2.0以上であるZnS、TiO2、PbTiO2、ZrO、ZnTe、PbCrO4等から形成することが好ましい。透明被膜が構造形成層52との屈折率差が小さいと、構造形成層52の凹凸による回折光の視覚効果が弱まるおそれがある。具体的には、構造形成層52と透明被膜の屈折率差は少なくとも0.5以上あることが好ましい。透明被膜の厚さは、50nm〜100nmであることが好ましい。
【0042】
透明被覆層53が金属被膜である場合、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金、銅の群からから選択される単体またはそれらの混合物、または合金等を用いることができる。このような金属被膜は、厚さを厚くし過ぎると光透過性が失われるため、20nm以下の厚さを有することが好ましい。
【0043】
接着層54は、無機または有機の微粒子を含有するエステル系樹脂とエポキシ系樹脂の混合材料からなる。このような接着層54は、エステル系樹脂とエポキシ系樹脂の混合樹脂により他の材料に対して優れた接着性を示す。また、接着層54は無機または有機の微粒子を含有するため、転写箔の転写時の箔切れ性が良好になる。
【0044】
エステル系樹脂としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルエステル、セルロースエステル等を挙げることができる。
【0045】
エポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0046】
無機微粒子としては、例えばマイクロシリカのようなシリカフィラー、もしくは、アルミナ微粒子、チタニア微粒子等を用いることができる。
【0047】
有機微粒子としては、例えばポリスチレン系エステル、メタクリル酸エステル系の材料からなる球状の有機微粒子等を用いることができる。
【0048】
無機または有機の微粒子は、平均粒径が1〜5μm程度であることが好ましい。
【0049】
無機または有機の微粒子は、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂および微粒子の総量に対し5〜20質量部含有し、エステル系樹脂およびエポキシ系樹脂の配合割合がエステル系樹脂40〜60質量部およびエポキシ系樹脂40〜60質量であることが好ましい。
【0050】
接着層54の厚さは、0.5〜1.0μmであることが好ましい。
【0051】
このような剥離層51、構造形成層52、透明被覆層53および接着層54をこの順序で積層した転写箔60は、光透過性を有する。転写箔60は、可視光に対する透過率が70%以上、より好ましくは75%以上、最も好ましくは80%以上であることが望ましい。
【0052】
前述した図2に示す転写箔から被転写基材に画像構成要素の画素(ドット)を転写する工程を、図3を参照して説明する。図3の(a),(b)は、転写箔60の転写工程を概略的に示す断面図である。
【0053】
図3の(a)に示すように転写箔60と被転写基材61とを密着させ、図中の破線間の領域に熱圧15を加える。その後、基材50を転写箔60から剥離することによって、図3の(b)に示すように熱圧15が加えられた転写箔60のみがドット70として被転写基材61上に転写される。このとき、ドット70は基材50と剥離層51間で剥離され、被転写基材61と接着層54を介して接着される。剥離層51は、ポリエチレンワックスを含有するアクリル系樹脂から形成されているため、ドット70を転写する転写箔60は剥離層51で基材50から容易に剥離できる。また、接着層54は無機または有機の微粒子を含有するエステル系樹脂とエポキシ系樹脂の混合材料からなるため、ドット70は被転写基材61に良好に接着できる。さらに、前記接着層54を備える転写箔60は、転写時の箔切れ性が良好であるため、高解像度でドット70を転写することが可能になる。
【0054】
このように熱圧15を加えた転写箔60の箇所のみが被転写基材61に転写されるため、被転写基材61上の所望の位置にドット70を設けることができる。図3において、ドット70を被転写基材61に転写することによって画像形成体62を構成した。
【0055】
次に、転写箔から複数のドットを転写する工程を図4を参照して説明する。なお、図4の(a),(b),(c)は実施形態に係る画像形成体の形成にあたっての背景説明のための転写工程を概略的に示す断面図である。
【0056】
まず、前述したように転写箔60への熱圧により被転写基材61にドット70aを転写する。ドット70aは、図3(b)に示すドット70と同様な層構成を有するが、ここでは簡略化して図示する。このような層構成を有するドット70aは、接着層54(図示せず)を介して被転写基材61と接着され、かつ最表面に剥離層51(図示せず)が存在する。つづいて、ドット70aを含む被転写基材61に転写箔60を接触させ、ドット70aに対応する転写箔60の箇所に熱圧15を加える(図4の(a)図示)。図4の(a)では、被転写基材61と転写箔60とが離れて描かれているが、転写時にはそれら部材は互に密着される。
【0057】
このような図4の(a)に示す転写箔60の転写により、図4の(b)に示すようにドット70bが被転写基材50のドット70a上に転写される場合、または図4の(c)に示すようにドットが被転写基材50のドット70a上に転写されない場合、が起こる。図4の(b)、図4の(c)のいずれの状態となるかは、転写箔の各層を構成している材料および膜厚、または転写時に加える熱および圧力に依存する。
【0058】
一般的に、サーマルヘッドによる熱転写方式で印字を行う場合、より高品質な画像を印字するために、印字時の熱量や圧力をドット毎に制御することにより、各ドットの径を可変して階調表現を可能にしている。ドットの有無のみの二値表現で画像を印字することも可能であるが、ドット径を制御して印字する場合と比較すると、画像の品質は劣る。すなわち、より高品位な画像を表現可能とするためには、ドット径を制御して転写箔の転写を行えることが望ましい。
【0059】
転写箔60の材料および厚さの条件を最適化するか、またはある一定の熱圧を加えた場合には、図4の(b)に示すようにドット70bがドット70a上に転写される。しかしながら、前記したようにより高品位な画像の表現を可能にするには、ドット径を制御して転写することが望ましい。換言すれば、より高品位な画像の表現を可能にするにはドット径を制御する必要があるが、このとき、印加する熱圧は一定とはならない。このため、例え転写箔60の材料および厚さ条件を最適化したとしても、ドット径を制御して転写を行うことは困難になる。この理由は、ドット70bをドット70a上に転写するとき、ドット70bが接触するドット70aの最表面には剥離層が存在しているからである。すなわち、剥離層は他の層構成に対して剥離し易く、すなわち、他の層構成と接着し難くするよう設計されている。
【0060】
また、図4の(a)に示すドット70aの表面は曲面形状として示しているが、実際には転写時に印加した熱圧のムラ、剥離時に破断した剥離層等により表面には細かな凹凸が存在する。その結果、ドット70aの最表面が剥離層であることに加え、更にその表面に凹凸を有するため、ドット70a上にドット70bを転写することが困難になる。
【0061】
径の小さなドットを印字する場合には、印加する熱量および圧力を小さくしなければならない。このため、例えドット70aと接触する転写箔60の材料や膜厚の条件を最適化したとしても、印加する熱量および圧力が小さい場合、転写箔60はドットとして被転写基材61のドット70a上に転写されず、剥離すべき基材50に接着したまま残ってしまう。
【0062】
次に、本発明の実施形態に係る画像形成体において、転写箔から画像構成要素の画像を微小面積のドットとして複数転写する工程を図5の(a),(b)を参照して説明する。
【0063】
被転写基材61に転写箔60への熱圧によりドット70aを転写する。ドット70aは、図3(b)に示すドット70と同様な層構成を有するが、ここでは簡略化して図示する。このような層構成を有するドット70aは、接着層54(図示せず)を介して被転写基材61と接着され、かつ最表面に剥離層51(図示せず)が存在する。つづいて、ドット70aを含む被転写基材61に転写箔60を接触させ、ドット70aの一部、例えば被転写基材61の領域およびこれに隣接するドット70aの一部、に対応する転写箔60の箇所に熱圧15を加える(図5の(a)図示)。図5の(a)では、被転写基材61と転写箔60とが離れて描かれているが、転写時にはそれら部材は互に密着される。
【0064】
このような図5の(a)に示す転写箔60の転写により、図5の(b)に示すようにドット70bが被転写基材50表面にドット70aと部分的に重なるように転写される。
【0065】
前述したようにドット70aの最表面は、細かな凹凸のある剥離層が存在するため、ドット70a上にドット70bを転写することは困難である。
【0066】
実施形態に係る画像形成体では、ドット70aの最表面に位置する剥離層は他の材料との密着性が良好なポリエチレンワックスを含有するアクリル系樹脂からなり、かつこのドット70aと部分的に重なるドット70bの最下層に位置する接着層は優れた接着性を示す無機または有機の微粒子を含有するエステル系樹脂とエポキシ系樹脂の混合材料からなる。このため、図5の(b)に示すようにドット70aとドット70bの重なり部分で強固な接着がなされる。その結果、ドット70bを被転写基材61にドット70aと部分的に重なるように転写することが可能となる。つまり、ドット70bはドット70aと部分的に重なった状態で被転写基材61に良好に接着して転写することが可能になる。
【0067】
ドット70bをドット70aと部分的に重なった状態で被転写基材61にすることにより、例えば本来ドットの一辺の長さが0.084mm角の300dpiでの解像度になるところを、擬似的に0.084mm×0.042mmサイズまたは0.042mm×0.042mmサイズ、つまり600dpi相当の高解像度の画像を得ることができる。
【0068】
したがって、実施形態によればサーマルヘッド等による熱転写方式を用いて転写箔から複数のドットを転写する場合、隣接するドットを部分的に重ねることができるため、ドット径が制御されたドットを精度良く転写することが可能になり、より高解像度、より高品質な画像形成体を得ることができる。
【0069】
実施形態おいてドットを転写して画像形成を行う被転写基材を第2基材として用いた。第2基材は、被転写基材の他に、ポリエチレンテレフタレートのような樹脂のフィルム上に剥離層および受像層をこの順序で形成した積層膜を用いることができる。
【0070】
剥離層の材料は、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂にシリコーンまたはフッ素系の添加剤を加えたものが好ましい。また、前述した転写箔の剥離層の材料も用いることができる。受像層の材料は、例えばプロプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。
【0071】
このような積層膜の受像層に前述した手法で複数のドット(画素)を形成し、必要に応じてインクリボンの転写を施すことにより中間転写媒体が作製される。中間転写媒体は、その印字情報を被転写用の支持体である紙面上に転写することにより画像形成が行うことができる。
【0072】
次に、ドットを転写する転写箔の光特性について説明する。
【0073】
転写箔が遮光性である場合、ドット同士が重なるように転写すると、重ねられた下層となるドット部分での画像観察に支障をきたす。
【0074】
実施形態において、転写箔を光透過性にすることによって、ドット同士が重なっていても、下層となるドット部分も画素として機能させることが可能になる。その結果、実施形態によれば前述した図5の(b)に示すように下層のドット70aに上層のドット70bを部分的に重ねて被転写基材61に配置することができる。このような光透過性を有する転写箔を用いることによって、より高解像度の画像を提供することが可能となる。
【0075】
同一の層構成のドットが重なっている場合、下層のドットは上層のドットと比較して、透過率の自乗の明るさとなる。しかし、人間が感じる感覚は変化量に対してその対数となる。例えば、透過率が70%の場合、下層のドットの輝度は上層のドットの輝度の49%となる。この場合、実際に人間が感じる感覚はその対数となるので、一般的に輝度値が半分程度であれば、それほど暗くなったようには感じない。したがって、転写層が70%以上の可視光の透過率を有すれば、ドットが重なった領域でも下層のドットからの射出光を問題なく観察することが可能となる。
【0076】
実施形態において、転写箔を光透過性にすることによって、ドット間の間隔をより小さくして解像度を高くすることが可能になる。すなわち、解像度を最も高くするにはドットの配置をドットオンドット方式とすることが考えられる。しかしながら、ドットオンドット方式の場合、後から印字するドットが被転写基材と接しないことがあるため、実施形態のように転写箔の転写性の観点からドットオンドットは好ましくない。
【0077】
実施形態によれば、前、後に転写するドットの中心位置を互いにずらすことによって、より明るく、より色再現性の高い高品質な画像形成体を提供することが可能となる。
【0078】
ドットは、画像の画素に相当し、画像は画像データとして入力し、それをサーマルヘッド等で印字する場合、ドットは一定間隔で配置する。ドットが一定間隔で配置される場合は、画像データの情報をサーマルヘッドによって精度良く簡便に配置することが可能となる。
【0079】
実施形態における転写箔から転写されるドットサイズは、特に限定されるものではないが、個人の顔画像などを形成する場合は、ドットの一辺の長さが0.042mm(600dpi)〜0.084mm(300dpi)であることが好ましい。ドットサイズがこれよりも大きくなると、顔画像として荒くなり、実際の顔写真と比較して真偽判定が困難になるおそれがある。また、ドットサイズがこれよりも小さくなると、転写箔の箔切れ性や転写時のバラつきが大きくなり、滑らかに表現することが困難になる。
【0080】
実施形態に係る画像形成体において、転写箔の構造形成層にホログラムまたは回折格子を形成することによって、転写箔から転写されるドットにより回折光として観察できる画像を表現することが可能となる。実施形態に用いる転写箔は、熱転写方式を用いて転写できるため、この転写箔と一般的なカラーリボンを併用することによって、通常のインクによる画像と回折光として観察できる画像を同一の被転写基材上に容易に作製することが可能となる。
【0081】
構造形成層に良好な光学機能を持つホログラムまたは回折格子を形成するためには、専門的な知見・技術を必要とする。このため、転写箔の構造形成層が回折格子を備えることによって、当該転写箔の偽造または模造は困難になる。
【0082】
また、構造形成層の構成、形態が異なる複数の転写箔を用いてドットを転写することによって、より多様な視覚効果を表現することが可能となる。例えば、それぞれの構造形成層での光を射出する方向が異なっていれば、観察角度によって異なる画像を表示するチェンジング効果を持った画像形成体を提供することが可能となる。この場合、少なくとも一部の構造形成層が互に異なるドットを隣接して転写することによって、前記チェンジングをより効果的に表現することが可能となる。
【0083】
ドット径が小さく、構造が互に異なる2つのドットを隣接し、ある観察角度において一方のドットの光のみを観察でき、更に異なる観察角度において他方のドットの光のみを観察できるドット形態では、ドット径を目視で観察できないため、同一の箇所において異なる観察角度で異なる光を射出しているように観察することができる。したがって、構造が互に異なる構造形成層を有するドットを隣接して配置することによって、より高品位な画像形成体を提供することが可能となる。
【0084】
また、隣接するドットにおいて、それらを構成する構造形成層の回折格子の空間周波数を少なくとも三種類以上にすることにより、ある一定の角度でR、G、Bの三種類の色を表現することが可能となる。すなわち、空間周波数を三種類以上にすることにより、回折光として観察できるフルカラー画像を表現することが可能で、より高品質な画像形成体を提供することが可能となる。この場合、少なくとも一部においてR、G、Bが互いに隣接するようにドットを配置することにより、フルカラー表示を画素単位で表現することが可能となる。また、この場合、表示したいフルカラーの原画像のR、G、B成分を抽出して規則的に配置すればよいため、画像処理の負荷を大きく軽減することが可能となる。
【0085】
さらに、R、G、Bの他に、C、M、Y等、他の色を表示する構造があってもよい。色の種類が増えることにより、画像形成体が表示する画像の色域をより広げることが可能となる。
【0086】
実施形態に係る画像形成体において、複数のドットの少なくとも一部は、構造形成層に三種類以上の空間周波数を持つ回折格子をそれぞれ形成した複数の転写箔のうちの一種の転写箔から転写されたドットが残りの二種以上の転写箔から転写された二種以上のドットと少なくとも一部重なる形態であってもよい。このようなドットから形成される画像は、特定の角度において各々赤色、緑色、青色の回折光を射出することができる。
【0087】
なお、構造形成層の回折格子の空間周波数が三種類である3つの転写箔の転写によって前述した個人認証媒体の顔画像を形成する方法を簡単に説明する。例えば、パソコンのモニタ上で表示されるような、一般的な三原色RGBによるフルカラー画像のデータをコンピューターのプログラム上にインプットし、画像データをRGBに分解する。そしてそれぞれのデータをサーマルヘッド等の熱転写装置のプログラムにアウトプットし、予め用意した前記3つの転写箔(RGBに対応する三種類の転写箔)を用いてそれぞれの色に対応したデータ通りに例えば中間転写媒体の受像層上に転写する。これによりRGB色の回折光により、写真がそのまま発光したかのようなフルカラーの顔画像を中間転写媒体に転写できる。その後、この中間転写媒体の印字情報を被転写用の支持体である例えば紙面上に転写することにより、フルカラーの顔画像を紙上に表現できる。
【0088】
以上、実施形態ではパスポートとしての個人認証媒体100を例示したが、上述した技術はパスポート以外の個人認証媒体にも適用することも可能である。例えば、この技術は査証およびIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
【0089】
図6に示す個人認証媒体300には、人物像からなる印刷層21が形成されている。個人認証媒体300には、画像形成体62がさらに偽造防止用または識別用として転写され、画像形成体62の画像も人物像からなっている。図6に示す個人認証媒体300の場合、印刷層21の印刷画像と画像形成体62の画像は同一となっている。この場合、印刷層21の印刷画像と画像形成体62の画像が同一であることが本物(実物)であるとすると、仮に印刷層21の印刷画像の情報を改竄したとしても、印刷層21と画像形成体62の情報は同一でなければならないため、画像形成体62も同一の絵柄に改竄する必要があり、偽造または模造は困難となる。
【0090】
また、印刷層21の印刷画像と画像形成体62の画像を見比べることで真贋判定が可能であるため、個人識別を行う審査官に対してより精度のよい認証が可能となる。また、真贋判定の方法は画像を見比べることで、比較的簡便な方法であるため、審査官に限らず、誰もが真贋判定を簡易に行うことができる。
【0091】
図6に示す個人認証媒体300に含まれる画像形成体62は人物像からなる画像で構成されている。この場合、個人認証媒体の偽造または模造をより困難とすることができるが、個人認証媒体以外の情報媒体に適用することも可能である。
【0092】
画像形成体を貼り付ける基材の材質は、天然の紙および合成紙などの紙でなくてもよい。例えば、画像形成体62を貼り付ける基材の材質は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(熱可塑性PET)、ポリ塩化ビニル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル樹脂およびポリスチレン樹脂などの合成樹脂、ガラス、陶器および磁器などのセラミックス、または、単体金属および合金などの金属材料であってもよい。
【0093】
実施形態では、パスポートおよびIDカードなどの個人認証媒体を例示したが、上述した技術は、個人認証媒体以外の情報媒体に適用することも可能である。即ち、上述した技術は、個人認証以外の目的で利用してもよい。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の実施例を説明する。この実施例では、被転写基材を中間転写媒体とした場合について説明する。
【0095】
(実施例1)
<転写箔の作製>
まず、基材として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルム上にグラビアコーターで剥離層および構造形成層をこの順序で印刷した。オーブンでの乾燥後において、剥離層の厚さは0.6μm、凹凸形成層の厚さは0.7μmであった。剥離層の材料としては、アクリル系樹脂であるACRYDICA−322(DIC社製)にポリエチレンワックスであるCERAFLOUR961(ビックケミー・ジャパン社製)を10質量%添加したものを用いた。構造形成層としては、アクリレート/イソシアネートの二液性の熱硬化樹脂を用いた。つづいて、前記フィルムの構造形成層に空間周波数1140mm(Rの回折光が出る設計)、空間周波数1310mm(Gの回折光が出る設計)、空間周波数1540mm(Bの回折光が出る設計)、の三種類からなる回折格子ホログラムベタ柄が50mm×50mmの正方形になって順番に並んでいる版を備えるロールエンボス装置にて熱プレスを行い、ベタ柄ホログラムを成形した。
【0096】
次いで、構造形成層上にZnSの蒸着を行って厚さ80nmの透明薄膜層を形成した。つづいて、透明薄膜層上にグラビアコーターを用いて厚さ0.6μmの接着層を印刷し、フィルム上に剥離層、構造形成層、透明薄膜層および接着層をこの順序で積層した。接着層には、エステル系樹脂のアラポール7012(荒川化学社製)50質量部、エポキシ系樹脂のエポトートYD−115(新日鐵化学社製)50質量部、およびシリカフィラーのサイリシア(富士シリシア)15質量部を混合したものを用いた。その後、積層フィルムを転写リボンサイズの幅にスリットして小分けし、R、G、B、R、G、Bと繰り返すようにそれぞれを繋ぎ合わせて転写箔(ホログラムリボン)を作製した。
【0097】
<中間転写媒体の作製>
基材として厚さ19μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルム上にグラビアコーターで剥離層および受像層をこの順序で印刷した。オーブンでの乾燥後において、剥離層の厚さは1.0μm、受像層の厚さは4.0μmであった。剥離層としては、三菱レーヨン製のアクリル系樹脂を用いた。受像層としては、三菱化学製のエポキシ樹脂を用いた。
【0098】
次いで、サーマルヘッドを用いて受像層上の狙った位置にあらかじめ作製したホログラムリボンを転写し、フルカラーホログラム顔画像を形成した。
【0099】
顔画像の情報は、予め被写体となる人物の顔写真を撮影し、三原色RGBのドットの構成を有する画像データに変換し、コンピューターのプログラム上にインプットし、そのデータをサーマルヘッド熱転写装置のプログラムにアウトプットした。
【0100】
また、サーマルヘッドによる前記顔画像の転写は、ホログラムリボンのRGB部分を受像層のそれぞれの場所に隣接するドットが部分的に重なるように転写して顔画像を形成した。この時の解像度は、300dpi(1ドットの一辺の長さが0.084mm)で行った。
【0101】
次いで、公知のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクリボンを用意し、同様に画像形成体の受像層上に顔写真および文字情報を印字し、中間転写媒体を作製した。
【0102】
得られた中間転写媒体の情報印字を被転写用の支持体である紙面上に転写することにより個人認証媒体を得た。
【0103】
(比較例1)
ホログラムリボンの剥離層の材料として一般的なアクリレート樹脂を用い、接着層の材料として一般的なポリエステル樹脂を用いた以外、実施例1と同様な方法で個人認証媒体を得た。
【0104】
実施例1で得た個人認証媒体において、RGBを部分的に重ね合わせた顔画像が通常の300dpiで形成された顔画像に比べて全体的に滑らかであり、同一面上に載った顔写真との比較による真偽判定がより容易となった。
【0105】
これに対し、比較例1で得た個人認証媒体において、通常の300dpiの顔画像は形成できたものの、重ねバージョンの顔画像ではホログラムリボンが綺麗に重ならず、逆に画像全体にムラが発生した。
【0106】
以上のように実施例1の個人認証媒体は、個別情報ホログラムの部分が目視で非常に見やすく滑らかで高解像度のものとなった。また、顔写真と個別情報ホログラムを見比べることにより、容易に真偽判定ができることも分かった。そのため、万が一偽造、改竄品が出回った際に、目視で容易に真偽判定が行える高いセキュリティ性を有する画像形成体及び個人認証媒体を提供できることが分かった。
【符号の説明】
【0107】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、15…熱圧、I1a、I1b、I2、I3…画像、21…印刷層、50…基材、51…剥離層、52…構造形成層、53…透明被膜層、54…接着層、60…転写箔、61…被転写基材、62…画像形成体、70,70a,70b…ドット(画素)、100、300…個人認証媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材の一方の面に剥離層と構造形成層と透明被膜層と接着層をこの順序で積層してなる転写箔から第2基材の一方の面に画像構成要素の画素を微小面積のドットとして複数転写して画像を形成した画像形成体であって、
前記ドットは、前記第2基材の一方の面に隣接するドットと部分的に重なるように転写され、
前記剥離層は、ポリエチレンワックスを含有するアクリル系樹脂からなり、かつ
前記接着層は、無機または有機の微粒子を含有するエステル系樹脂とエポキシ系樹脂の混合材料からなることを特徴とする画像形成体。
【請求項2】
前記剥離層の一成分である前記アクリル系樹脂は、分子中にカルボキシル基を有するメタクリル酸化合物または分子中に水酸基を有するメタクリレート化合物と、分子中に少なくとも水酸基を1つ以上有するグリシジル型エポキシ化合物とを反応させて合成したエポキシ系アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1記載の画像形成体。
【請求項3】
前記無機微粒子が、マイクロシリカであることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成体。
【請求項4】
前記無機または有機の微粒子が前記エステル系樹脂、前記エポキシ系樹脂および前記微粒子の総量に対し5〜20質量部含有し、かつ前記エステル系樹脂および前記エポキシ系樹脂の配合割合が前記エステル系樹脂40〜60質量部および前記エポキシ系樹脂40〜60質量であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の画像形成体。
【請求項5】
前記構造形成層は、回折格子が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の画像形成体。
【請求項6】
複数の前記転写箔を転写して画像を形成した画像形成体であって、前記複数の転写箔は前記構造形成層に三種類以上の空間周波数を持つ回折格子をそれぞれ形成したものであることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の画像形成体。
【請求項7】
複数の前記転写箔を転写して画像を形成した画像形成体であって、前記構造形成層に三種類以上の空間周波数を持つ回折格子をそれぞれ形成した複数の前記転写箔は、特定の角度において各々赤色、緑色、青色の回折光を射出することを特徴とする請求項6記載の画像形成体。
【請求項8】
複数の前記転写箔を転写して画像を形成した画像形成体であって、前記複数のドットの少なくとも一部は前記構造形成層に三種類以上の空間周波数を持つ回折格子をそれぞれ形成した複数の転写箔のうちの一種の転写箔から転写されたドットが残りの二種以上の転写箔から転写された二種以上のドットと少なくとも一部重なっていることを特徴とする請求項6または7記載の画像形成体。
【請求項9】
前記画像が個人情報を含んだ画像であることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載の画像形成体。
【請求項10】
前記個人情報を含んだ画像が顔画像であることを特徴とする請求項9記載の画像形成体。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれか1項記載の画像形成体と、前記第1基材から前記画像形成体が転写された第2基材とを具備することを特徴とする個人認証媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71324(P2013−71324A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212407(P2011−212407)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】