説明

画像形成可能な物

画像形成可能な物が、紙基体の裏側に接合させた裏側の充填樹脂層を備えている。この裏側の充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含む。この裏側の充填樹脂層はさらに、充填剤を約3重量%〜約60重量%含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来の写真用基材は、原紙(未加工の基紙)の表側(画像形成側)及び裏側の両方の上にコートされた樹脂層を備えている。画像形成層は、写真用の基材表側(表面)上にコートされている。このコーティングは、最終的に得られる製品に、不平衡な応力を生じさせる。コーティング、変換及びプリンタ画像形成のプロセスを通して媒体を適切に処理するために、様々なカール制御の設計が用いられてきた。
【0002】
カール制御は、典型的には、3つの慣用の手段、すなわち、(1)未処理の基材の坪量を増大させること(繊維を増やすことにより、キャリパ/剛性が増大し、それにより、コートされた製品に生じるカールが減少する)、(2)裏側にコーティングを塗布し、裏側(裏面)上に、表側コーティングを相殺する平衡応力を生じさせること(典型的には、膨潤性のものに使用される)、並びに(3)未処理の基材の表側と裏側との間の樹脂の不平衡な比を適用する(裏側に表側と比較してより多くの樹脂を設けることによって、樹脂構造に設計されている予応力を有する不平衡な基材が生成される;また、低/高密度樹脂の比も、不平衡性の度合いを増大させるために利用することができる)によって達成される。上記の各選択肢では、材料及びプロセスのコストは一般に高い。
【発明の概要】
【0003】
本開示の態様の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】本開示による画像形成可能な物(imageable article)を得るための複数のステップの一態様を示す概略的な流れ図である。
【図2】膨潤性の写真用製品の構造を有する画像形成可能な物の従来の態様の、原紙の両面に設けた層を詳細に描く概略図である。
【図3】多孔質の写真用製品の構造の画像形成可能な物の従来の態様の、原紙の両面に設けた層を詳細に描く概略図である。
【図4】本開示の画像形成可能な物の一態様の、原紙の両面に設けた層を詳細に描く概略図である。
【図5】本開示の画像形成可能な物の一態様の、原紙の両面に設けた樹脂層、つまり充填されていない表側及び充填された裏側を詳細に描く概略図である。
【図6】本開示の画像形成可能な物の一態様の、原紙の両面に設けた充填された樹脂層を詳細に描く概略図である。
【図7】本開示の画像形成可能な物の一態様の、3つの異なる充填剤(フィラー)及びLDPEからなる個々の試料に対する、複合体の機械方向(MD)弾性率と百分率充填剤レベルとの関係をプロットしたグラフである。
【図8】本開示の画像形成可能な物の一態様の、3つの異なる充填剤及びLDPEからなる個々の試料に対する、複合体の横断方向(CD)弾性率と百分率充填剤レベルとの関係をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
インクジェット又は他の画像形成層が、画像形成可能な物の写真用基材に塗布されると力が生じ、それは、写真用基材又は非画像形成側の追加的なコーティングのいずれかによって平衡(バランス)させなければならない。表側の力と裏側の力との間の不均衡の結果は、典型的には、カールと呼ばれる。完全にコートされた製品は異なる環境条件(温度及び相対湿度)に曝されるので、画像形成可能な物上の画像形成層コーティングによって付与される力は変化することとなる。より大きな剛さを有する写真用基材は、このような力及び画像形成可能な物の画像形成層によって付与される力の変化に対してより十分に抵抗することができるだろう。
【0006】
非限定的な例では、画像形成可能な物の写真用基材として使用するための所望の品質を有する紙は、内部充填剤若しくは内填料(internal filler)を有する化学的な木質繊維(tree wood fibers)を含む繊維を含む。このような木質繊維は、バージンであっても再生されたものであってもよい。別の非限定的な例では、非充填の木質ベースの紙を使用することができる。さらに別の非限定的な例では、非木材植物繊維の製品(例えば、竹、バガス等)を使用することができる。
【0007】
カールを制御する手法は、画像形成可能な物の写真用基材の裏側に、材料の種類及び材料の量の両方に関連して表側コーティングと平衡するコーティング層を設けることである。しかし、これは、典型的には、いくらかコストのかかる選択肢である。この選択肢のより安価なバリエーション(特に、多孔質の画像形成コーティングで使用される)は、より多くのPE(ポリエチレン)を裏側に配置させることによって、写真用基材を負にバイアスすることによってカールを補償することである。高密度ポリエチレン(HDPE)、又は低密度ポリエチレン(LDPE)とHDPE(LDPEよりも剛性がある)との混合物を使用することによって、裏側層の弾性率を増大させ、その一方では、必要なPEの全量を減少させることができる。しかし、そのような場合、裏側のPEの量は、多孔質の画像コーティング塗布のための表側のPE量の2倍に簡単になり得る。
【0008】
いずれもポリエチレン(PE)である、HDPE及び/又はLDPEは、画像形成可能な物のための剛く且つ効果的な写真用基材を提供する目的のために十分に適合している。これらは、コーティング写真用基体で時折使用される他のポリマー、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ポリカーボネート及びポリアミドの非限定的な例と対照をなす。本開示の条件下で使用するならば、PP及びPETのような材料は、コートされた基体が大抵は製造後に巻き付けられるロール芯のような形態の形状を採る傾向がある。また、PP及びPETのような材料は、本開示の画像形成可能な物のいくつかの態様で使用されるHDPE及び/又はLDPEに対して最適化されたスクリュー押出機の設計においてそれほど簡単に使用することができない。上記の全ての理由により、PEは一般に、本開示の画像形成可能な物において充填剤材料と共に使用するための樹脂材料であり、HDPE及びLDPEは特にそのような樹脂材料であり、PP及びPETはそのような樹脂材料ではない。
【0009】
曲げ剛性及び弾性率は同じものではない。弾性率は、材料の示強性の性質である。曲げ剛性は複合本体の示量性の性質である。曲げ剛性は、(1)材料(つまり弾性率)及び(2)形状及び固体本体の境界条件の両方に依存する。実施例で構成され議論された試験試料の場合には、形状及び境界条件は、その実験的設計で物理的に出来る限り一定に保持した。その結果、材料の弾性率の増加により、所与の厚みでの、より大きな曲げ剛性及び剛さ(例えば、製品構造)を有する画像形成可能な物の写真用基材が得られる。
【0010】
充填剤若しくはフィラー(例えば、炭酸カルシウム)は、画像形成可能な物の写真用基紙のための裏側又は裏側及び表側の両方に対して使用される充填樹脂のために使用されるポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)に添加される。写真用基材の裏側に使用される充填剤の場合、負のカールを生ぜしめる。充填剤が、表側及び裏側のポリエチレン層の両方に使用される場合、画像形成可能な物の写真用基材の全体的な曲げ剛性は増加するが、基材は、裏側に向かうそのカールのバイアスを失う。いくつかのコーティング応用例では、そのようなカールバイアスの消失が許容される(例えば、両面コーティング応用例)。充填剤含有量は、樹脂/充填剤の全重量の3%〜60%であってよい。充填剤は、押出しプロセス前又は押出しプロセス中に添加することができる。別の態様では、充填剤含有量は、樹脂/充填剤の全重量の約5%〜約50%であってよい。さらに別の態様では、充填剤含有量は、樹脂/充填剤の全重量の約10%〜約40%であってよい。
【0011】
押出しの前に添加するために、充填剤は、オフラインで混ぜ合わせて、それにより充填剤リッチ(充填材料の多い)のマスターバッチを生成する。続いてこのマスターバッチは、押出しホッパーにおいて、必要な他の添加剤を含む他のマスターバッチと混合し、それにより完成品の押出しフィルム配合を作る。このフィルムを、原紙に押出コートし、それにより画像形成可能な物の最適なインクジェット写真用基材を形成する。この構成の試料は、押出機によって製造することができる。
【0012】
一態様では、液体コーティング層を、画像形成可能な物の写真用基材の画像形成側及び裏側の両方の押出し層に塗布することができる。液体コーティング層は、画像形成側に画像形成層を形成し、膨潤性媒体の場合には裏側にカール制御層を形成する。
【0013】
本開示は、樹脂層内で押し出され、樹脂層の実効の曲げ剛性を増大させる安価な充填剤(その非限定的な例は、炭酸カルシウム(CaCO)、ゼオライト、焼成クレー、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)、それらの組合せ等を含む)の使用を開示している。カール制御のためには、この追加された曲げ剛性は、画像形成可能な物の写真用基材の裏(非画像形成)側で極めて有用である。本開示において記述された材料は、樹脂製写真用基材と共に通常の実施で使用される材料(例えば、二酸化チタン(TiO))を含まない。写真用基材を製造するための現存の実施では、通例では、樹脂層中の不透明化剤として二酸化チタンを使用する。これは、剛性付与材料として使用されるのではない。その粒子は、極めて小さく、炭酸カルシウムのような充填剤に対して値段も高い。
【0014】
図面を参照すると、図1には、本開示の画像形成可能な物の一態様の写真用基材を得るためのステップを示す概略的なフロー図が描かれている。まず、原紙は、基紙製造プロセスから得られる。そして、原紙は、表(画像)側及び裏側の両方の側で樹脂層により押出コートされ、それにより、画像形成可能な物の写真用基材が生成される。次のステップでは、さらに、写真用基材の表側が画像形成層で液体コートされる。いくつかの製品(例えば、膨潤性媒体)の場合には、追加的なカール制御層が、画像形成可能な物の写真用基材の裏側に液体コートされてよい。
【0015】
図2は、従来の膨潤性の写真用製品の構造における、画像形成可能な物の原紙に設けられた層の概略図である。図示のように、原紙は、まず、非充填のLDPE、HDPE又はLDPE/HDPEのブレンドの樹脂層により両側で押出コートされ、それにより、所望の表側特性及び水分バリアを提供するフィルムを得る。表(画像)側の場合には、非充填樹脂層は大抵、光沢又は艶消しの質感を有する。裏側の場合には、非充填の樹脂層は通常、材料の量に関して、表側の非充填の樹脂層と平衡されるようになっている。非充填樹脂層でコートされた紙の表側は、少なくとも単層の、できれば多層の画像形成層で液体コートされていてよい。非充填の樹脂層でコートされた紙の裏側は、少なくとも単層の、できれば多層のカール制御層で液体コートされていてよい。
【0016】
図3は、従来の多孔質の写真用製品構造における、画像形成可能な物の原紙に設けられた層の概略図である。図示されているように、原紙は、まず、LDPE、HDPE又はLDPE/HDPEのブレンドにより両面でコートされ、これにより、非充填樹脂層が得られる。表(画像)側の場合には、非充填樹脂層は大抵、光沢又は艶消しの質感を有する。裏側の場合には、非充填樹脂層は、通常、表(画像)側の非充填樹脂層に対して極めて不平衡になっている(2倍の量まで)。そして、非充填樹脂層でコートされた紙の各側は、追加的な画像形成層又はカール層でそれぞれ液体コートされる。画像形成可能な物の写真用基材の表側の非充填樹脂層は、画像形成層でコートされている。多孔質の写真用製品の裏側の非充填樹脂層は、カール制御層でコートされていてよいが、典型的には必要とされない。
【0017】
図4は、実施例で説明される態様の、画像形成可能な物の原紙に設けられた層の概略図である。図示のように、原紙は、まず非充填樹脂層により、表(画像)側でLDPE又はLDPE及びHDPEの組合せにより押出コートされ、それにより、水分バリア及び表側組織を得る。やはり図示されているように、原紙は、充填された樹脂層により裏側で、LDPE又はLDPE及びHDPEの組合せと少なくとも1つの充填剤、例えば、非限定的に、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せとにより押出コートされる。裏側の充填樹脂層は、水分バリア及びカール制御層の両方として機能し得る。別態様で、充填剤が裏側及び表側の層のいずれにも使用されていない場合の制御では、裏側の非充填樹脂層が、組成及び構造について、表側の非充填樹脂層と同じであってよい。
【0018】
図5は、本開示の一態様での、画像形成可能な物の原紙に設けられた層の概略図である。図示されているように、原紙は、まず、表(画像)側でHDPE、LDPE又はLDPE及びHDPEの組合せにより押出コートされ、それにより、水分バリア及び表側の組織が得られる。このような非充填樹脂層は、光沢又は艶消しの質感を有していてよい。やはり図示されているように、原紙は、裏側で、充填樹脂層により押出コートされ、この充填樹脂層は、HDPE、LDPE又はLDPE及びHDPEの組合せと充填剤、例えば炭酸カルシウム、ゼオライト、焼成クレー、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート、ケイ酸カルシウム又はそれらの組合せと含み、水分バリア層及びカール制御層の両方として働くことができる。非充填樹脂層でコートされた紙の表(画像)側は、続いて、画像形成層により液体コートされる。膨潤性媒体を備えた画像形成可能な物の場合には、充填樹脂層により押出コートされた紙の裏側は、追加的なカール制御のための液体コートされた外層を有していてよいが、そのようなコーティングに関する要求に応じて相対的に減少又は増加させることができる。多孔質のタイプの写真用基材を備えた画像形成可能な物の場合には、そのような裏側のカール制御コーティングは、通常、全く存在しないか、又は(存在するというのであれば)極めて低減されている。
【0019】
図6は、本開示の一態様で、画像形成可能な物の原紙上に設けられた層の概略図である。図示されているように、原紙は、まず、表(画像)側及び裏側で、HDPE、LDPE又はLDPE及びHDPEの組合せ並びに充填剤、例えば、非限定的に、炭酸カルシウム、ゼオライト、焼成クレー、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート、ケイ酸カルシウム又はそれらの組合せを含む充填樹脂層により押出コートされ、それにより、水分バリア層が得られる。写真用基材の裏側に設けられた樹脂層が充填されている場合には、それは、負のカールを生成する。充填剤が、表側樹脂層及び裏側樹脂層の両方に使用されていれば、これにより、全体的な曲げ剛性が増加する。しかし、そのような場合には、基材は、裏側に向かうそのカールバイアスを失う。両側で画像形成可能とするコーティング塗布の非限定的な例では、そのようなカールバイアスの消失は許容可能である。そのような充填樹脂層は、表(画像)側で、水分バリア及び光沢又は艶消しの質感の両方を提供することができる。裏側では、この充填樹脂層は、水分バリア及び光沢又は艶消しの質感の両方を提供することができる。画像形成可能な物の充填樹脂層によりコートされた表(画像)側は、画像形成層により液体コートされている。上述のように、画像形成可能な物の充填樹脂層によりコートされた裏側は、液体コートされた外側コーティング構造を有していてよい。このような態様では、裏側に設けられた充填樹脂層上の外側コーティング構造は、画像形成層として機能する。
【0020】
本出願から生成される画像形成可能な物の写真用基材は、多層画像形成システムにおいて適用することができ、その非限定的な例は、多孔質/インクジェット、膨潤性/インクジェット、染料昇華型、熱転写式、サーマル式、ピエゾ式、静電式等を含む。
【0021】
上記システムの利点は、非限定的に以下のものを含む。
【0022】
a)当該システムは、高い率の充填剤を添加することによって画像形成可能な物における樹脂層の曲げ剛性を増大させる。曲げ剛性の同様のレベルを達成及び維持するために、裏側の樹脂材料は、充填樹脂の構成を使用した場合、60%まで低減することができる。
【0023】
b)いくつかの場合には、当該システムにより、結果として得られる材料及びプロセスのコスト削減のための裏側コーティング(つまり、裏側樹脂層を覆うコーティング)の必要性がなくなる。これは、最も通例では、膨潤性の写真用画像形成配合物において見られる。多孔質のコーティングは、典型的には、裏側コーティングを必要とせずに、画像形成可能な物において不平衡な写真用基材を使用する。
【0024】
c)当該システムは、高価なポリオレフィンを安価な充填剤に代えることによって、画像形成可能な物における樹脂層中の材料のコストを低減する。原油の価格が上昇していることを考慮すると、樹脂のあらゆる除去により、製品コストは大きく削減される。全世界的な供給及び受容の問題はさらに、樹脂のコストを増大させる。例えば、典型的な材料のコストは、樹脂(PE)は$2−$3/lbであり、それに対して、充填剤(炭酸カルシウム)は$0.15/lbである。
【0025】
本開示の画像形成可能な物の態様をさらに示すために、媒体の様々な実施例をここに記載する。これらの実施例は、例示を目的とするものであって、開示の態様の範囲を限定するものとして考えらるものではないと理解されたい。
【実施例】
【0026】
炭酸カルシウムを、画像形成可能な物の写真用基紙の裏側のために使用される充填樹脂層のために使用されるLDPEに添加した。充填剤は、オフラインで混ぜ合わせ、それにより、充填剤リッチのマスターバッチを生成する。そして、このマスターバッチは、押出しホッパー中で、他の添加剤を含む他のマスターバッチと混ぜ合わせ、それにより、完成した押出しフィルム配合を生成した。このフィルムは、押し出され、原紙に装着され、それにより、画像形成可能な物の最適化されたインクジェット写真用基材が生成した。充填樹脂の1つの又は複数の層のための試料構成は、炭酸カルシウム約10%〜40%、焼成クレー約3〜10%、ケイ酸カルシウム約5〜10%、残量はLDPEであった。
【0027】
以下の表1に、図4に示す各層についての典型的な材料及び厚みを示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表2に示すように、各試料を比較した。試験バリエーションの設定は、表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
画像形成可能な物の写真用基材の構造の有用性を評価するために、引張り剛性係数(tensile stiffness index、TSI)を複合体構造に対して測定した。TSIは、機械方向(MD)及び機械を横切る方向(CD)の両方について測定された。MDは、機械においてウェブの搬送方向に平行に延びる軸である。原紙の方向性が、MDとCDとの差異に大きく寄与する。この設計において評価されるのが複合体の構造であるので、MD及びCD成分の両方からの結果を示す。充填剤の添加によって、MD及びCDの両方における弾性率に改善がもたらされた。
【0032】
個々のフィルムは、TSIについての測定をすることができなかったので、複合体の構造が使用された。弾性率は、画像形成可能な物の複合体の構造のTSI及び密度についての物理的な測定に基づいた計算値である。
【0033】
試験条件間の差によって、本開示から得られる製品構造ついての物理的な(構造的な)改善がもたらされる。表2に示した実験試料では、充填剤の添加により、充填剤のレベルが増大するにつれ密度及びTSIの測定値が増大することが示された。画像形成可能な物の複合体の写真用基材構造のより大きな弾性率は、画像形成層からのたわみに対してより大きな抵抗を有する基体をもたらす。
【0034】
画像形成可能な物の写真用基材は、図4に示すように構成されている。この写真用基材は、表側のLDPE層、原紙、及び充填剤を含む裏側LDPE層を含む。実験的な設計では、同じLDPE及びフィルム厚みを、表側及び裏側の層に使用した。唯一変化させたものは、裏側に添加した充填剤の種類及びレベルであった。充填剤がゼロレベルの場合には、表側及び裏側は、その構造について同一であった(純粋LDPE)。この実験のために、画像形成層は、写真用基材に塗布しなかった。
【0035】
試料は、単一のスクリュー押出機を使用して構成され、表側及び裏側PE層が原紙上に押し出された。実験は、異なる充填剤の種類及び充填剤のレベルを含んでいた。表2に、9つの試料全ての充填剤の種類及び得ようとする充填剤レベルを示す。複合体の写真用基材試料を構成した後、一連の試験を行って、画像形成可能な物の複合体の構造の物理的な特性を測定した。押し出された各フィルムについても物理的な特性を得た。
【0036】
Lorentzen&Wettre TSO装置(通例では、L&W TSOテスターと呼ばれる)を用いて、各試料についての画像形成可能な物の複合体の構造(例えば、写真用基材)のTSIを測定した。この装置は、超音波的な方法を利用して、より正確に上記特性を非破壊的に測定する。切断試料の弾性率を直接的に測定する他の破壊的な手段(例えば、Instronテスター)も存在する。しかし、試料の準備及び手段への取り付けにおける小さな変動が、試験データにに極めて大きな変動をもたらし得る。このため、L&W TSOテスターが、試料の分析のために選択された。
【0037】
画像形成可能な物の各複合体の構造の弾性率は、物理的な特定データ(複合体のTSI及び密度)から計算される。図7及び8に示す実験結果は、3つの異なる充填剤の使用をまとめている。炭酸カルシウムは、LDPEに、より高いレベルにより簡単に混ぜ合わせられ、したがって、裏側において、より高いレベルの充填剤を使用した写真用基材の設計を構成することができる。この実験実施のために選択された全ての3つの充填剤は、充填剤レベルの増大と共に改善された弾性率及び密度を示すという同様の傾向を示した。
【0038】
図7は、表2に記載されているLDPEと共に押し出された3つの異なる充填剤(炭酸カルシウム、焼成クレー及びケイ酸カルシウム)の個々の試料についての、百分率充填剤レベル(X軸)に対する複合体機械方向(MD)弾性率(Y軸)をプロットしたグラフである。炭酸カルシウム充填剤は、3つの異なるレベル及び0%で使用した。他の充填剤(焼成クレー及びケイ酸カルシウム)は、3%〜10%の充填剤レベル範囲でのみ使用した。
【0039】
図8は、表2に示されたLDPEと共に押し出される3つの異なる充填剤(炭酸カルシウム、焼成クレー及びケイ酸カルシウム)の個々の試料よる、百分率充填剤レベル(X軸)に対する複合体の横断方向(CD)弾性率(Y軸)をプロットしたグラフである。炭酸カルシウム充填剤は、3つの異なるレベル及び0%で使用した。他の充填剤(焼成クレー及びケイ酸カルシウム)は、3%〜10%の充填剤レベル範囲でのみ使用した。
【0040】
充填剤の添加により、コストのかかるポリオレフィンを充填剤に置き換えることによって、画像形成可能な物の複合の充填剤−樹脂コート層の全体的なコストが低減する。さらに、画像形成可能な物の複合の充填剤−樹脂コート層の改善された弾性率によって、カールを平衡するためのこの層の量は少量しか必要でなくなり、したがって、全体的なコストをさらに低くすることができる。
【0041】
項目1:紙基体の裏側に接合された裏側充填樹脂層を含む画像形成可能な物であって、
前記裏側充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記裏側充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%含む、画像形成可能な物。
【0042】
項目2:前記紙基体の画像側にコートされた画像形成側の非充填樹脂層と、
前記画像形成側の非充填樹脂層に接合された少なくとも1つのコーティング層とをさらに含み、
前記画像形成側の非充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される、項目1に記載の画像形成可能な物。
【0043】
項目3:前記紙基体の画像側に接合された画像側の充填樹脂層と、
前記画像側充填樹脂層及び前記裏側充填樹脂層の両方に接合された少なくとも1つのコーティング層とをさらに備えている画像形成可能な物であって、
前記画像側の充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記画像側充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%含む、項目1又は2に記載の画像形成可能な物。
【0044】
項目4:前記充填樹脂層が、前記充填剤を約5重量%〜約50重量%含む、項目1から3のいずれか1つに記載の画像形成可能な物。
【0045】
項目5:前記充填樹脂層が、前記充填剤を約10重量%〜約40重量%含む、項目1から4のいずれか1つに記載の画像形成可能な物。
【0046】
項目6:前記少なくとも1つのコーティング層が、膨潤性又は多孔質の画像形成層である、項目1から5のいずれか1つに記載の画像形成可能な物。
【0047】
項目7:紙基体を充填樹脂層によりコーティングする方法であって、
紙基体の裏側上へ裏側の充填樹脂層を押し出すことを含み、
前記裏側の充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記裏側充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%含む、方法。
【0048】
項目8:画像側の非充填樹脂層を前記紙基体の画像側上へ押し出し、
前記画像側の非充填の樹脂層上に少なくとも1つのコーティング層をウエットコーティングすることをさらに含み、
前記画像側の非充填の樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される、項目7に記載の方法。
【0049】
項目9:画像側の充填樹脂層を前記紙基体の画像側上に押し出し、
画像側の充填樹脂層及び前記裏側の充填樹脂層の両方に少なくとも1つのコーティング層をウエットコーティングすることをさらに含み、
前記画像側の充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記画像側の充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%含む、項目7又は8に記載の方法。
【0050】
項目10:前記充填樹脂層が、前記充填剤を約5重量%〜約50重量%含む、項目7から9のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
項目11:前記充填樹脂層が、前記充填剤を約10重量%〜約40重量%含む、項目7から10のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
項目12:前記少なくとも1つのコーティング層が、膨潤性又は多孔質の画像形成層である、項目7から11のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
項目13:紙基体の一方又は両方の側を充填樹脂層によりコーティングするためのシステムであって、
紙基体と、
前記紙基体の裏側に接合される充填樹脂層を押し出すための樹脂層押出機とを備えており、
前記充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%を含む、システム。
【0054】
項目14:前記充填樹脂層が、前記紙基体の裏側にのみ接合されており、非充填の樹脂層が、前記紙基体の画像側に接合されており、
少なくとも1つのコーティング層が、前記非充填の樹脂層にウエットコーティングされており、
前記非充填の樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される、項目13に記載のシステム。
【0055】
項目15:前記少なくとも1つのコーティング層が、膨潤性又は多孔質の画像形成層であって、
前記充填樹脂層が、前記充填剤を約5重量%〜約50重量%含む、項目13又は14に記載のシステム。
【0056】
以上、いくつかの態様を詳細に説明したが、開示の態様が変更可能であることは当業者には自明であろう。よって、上記の説明は、制限的ではなく例示的なものであると理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基体の裏側に接合された裏側充填樹脂層を含む画像形成可能な物であって、
前記裏側充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記裏側充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%含む、画像形成可能な物。
【請求項2】
前記紙基体の画像側にコートされた画像形成側の非充填樹脂層と、
前記画像形成側の非充填樹脂層に接合された少なくとも1つのコーティング層とをさらに含み、
前記画像形成側の非充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の画像形成可能な物。
【請求項3】
前記紙基体の画像側に接合された画像側の充填樹脂層と、
前記画像側充填樹脂層及び前記裏側充填樹脂層の両方に接合された少なくとも1つのコーティング層とをさらに備えている画像形成可能な物であって、
前記画像側の充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記画像側充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%含む、請求項1に記載の画像形成可能な物。
【請求項4】
前記充填樹脂層が、前記充填剤を約5重量%〜約50重量%含む、請求項1に記載の画像形成可能な物。
【請求項5】
前記充填樹脂層が、前記充填剤を約10重量%〜約40重量%含む、請求項1に記載の画像形成可能な物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコーティング層が、膨潤性又は多孔質の画像形成層である、請求項2に記載の画像形成可能な物。
【請求項7】
紙基体を充填樹脂層によりコーティングする方法であって、
紙基体の裏側上へ裏側の充填樹脂層を押し出すことを含み、
前記裏側の充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記裏側充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%含む、方法。
【請求項8】
画像側の非充填樹脂層を前記紙基体の画像側上へ押し出し、
前記画像側の非充填の樹脂層上に少なくとも1つのコーティング層をウエットコーティングすることをさらに含み、
前記画像側の非充填の樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
画像側の充填樹脂層を前記紙基体の画像側上に押し出し、
画像側の充填樹脂層及び前記裏側の充填樹脂層の両方に少なくとも1つのコーティング層をウエットコーティングすることをさらに含み、
前記画像側の充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記画像側の充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記充填樹脂層が、前記充填剤を約5重量%〜約50重量%含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記充填樹脂層が、前記充填剤を約10重量%〜約40重量%含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのコーティング層が、膨潤性又は多孔質の画像形成層である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
紙基体の一方又は両方の側を充填樹脂層によりコーティングするためのシステムであって、
紙基体と、
前記紙基体の裏側に接合される充填樹脂層を押し出すための樹脂層押出機とを備えており、
前記充填樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される樹脂と、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー及びそれらの組合せからなる群から選択される充填剤とを含み、
前記充填樹脂層が、前記充填剤を約3重量%〜約60重量%を含む、システム。
【請求項14】
前記充填樹脂層が、前記紙基体の裏側にのみ接合されており、非充填の樹脂層が、前記紙基体の画像側に接合されており、
少なくとも1つのコーティング層が、前記非充填の樹脂層にウエットコーティングされており、
前記非充填の樹脂層が、低密度ポリエチレン(LDPE)並びに低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)の組合せからなる群から選択される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのコーティング層が、膨潤性又は多孔質の画像形成層であって、
前記充填樹脂層が、前記充填剤を約5重量%〜約50重量%含む、請求項14に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−512073(P2012−512073A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542088(P2011−542088)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/086898
【国際公開番号】WO2010/071632
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511076424)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (155)
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
【Fターム(参考)】