説明

画像形成方法、熱転写シート、及び熱転写受像紙

【課題】画像形成時に排出される熱転写シートから秘密情報が認識されることを防止しつつ、黒色画像の印画物を容易に形成することができる画像形成方法、及びこの画像形成方法に用いられる熱転写シートや、熱転写受像紙を提供する。
【解決手段】熱転写方式によって画像を形成する画像形成方法であって、第1の基材2と、ロイコ染料を含むロイコ染料層3が積層されてなる熱転写シートを準備する熱転写シート準備工程と、第2の基材52と、顕色剤を含む受容層53が積層されてなる熱転写受像紙51を準備する熱転写受像紙準備工程と、ロイコ染料層と受容層が対向するように、熱転写シート1と、熱転写受像紙を重ね合わせ、熱転写シートのロイコ染料層が設けられた面とは異なる面を加熱して、熱転写受像紙上に発色画像を形成する加熱工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印画物を形成するための画像形成方法、熱転写シート、及び熱転写受像紙に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、簡便な印刷方法として熱転写方式が広く使用されている。熱転写方式は、各種画像を簡便に形成できるため、印刷枚数が比較的少なくてもよい印刷物、例えば、身分証明書などのIDカードの作成や営業写真、あるいはパーソナルコンピュータのプリンタや、ビデオプリンタなどにおいて利用されている。
【0003】
この熱転写方式には、一般的に熱転写シートと称される熱溶融型のインクリボンや、昇華型のインクリボンが使用される(例えば、特許文献1)。熱溶融型のインクリボンとは、熱溶融性着色層を備えるインクリボンであり、サーマルヘッド等の加熱手段によりこのインクリボンを加熱することで、熱溶融性着色層が溶融軟化して被転写体上に転写される。一方、昇華型のインクリボンとは、Y(イエロー)染料層、M(マゼンダ)染料層、C(シアン)染料層を備えるインクリボンであり、サーマルヘッド等の加熱手段によりこのインクリボンを加熱することで各染料層中の染料が移行して染料が被転写体上に転写される。
【0004】
このように、熱転写方式は、専用のインクリボンを用いて被転写体上へ画像形成を行うことから、被転写体上へ画像形成を行った後には、印字されて抜けた部分があるインクリボンが排出されることとなる。身分証明等のIDカードの作成等において、排出されるインクリボンの抜け部分は秘密にしたい個人情報などが含まれている場合もあり、排出されるインクリボンから個人情報などが容易に知られてしまうという危険性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−314918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現在のところ熱転写方式による画像形成に際し、上記のようなインクリボンを用いる場合には、秘密情報漏洩の防止を図ることはできていない。本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、画像形成時に排出される熱転写シートから秘密情報が認識されることを防止しつつ、黒色画像の印画物を容易に形成することができる画像形成方法、及びこの画像形成方法に用いられる熱転写シートや、熱転写受像紙を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、熱転写方式によって画像を形成する画像形成方法であって、第1の基材と、ロイコ染料を含むロイコ染料層が積層されてなる熱転写シートを準備する熱転写シート準備工程と、第2の基材と、顕色剤を含む受容層が積層されてなる熱転写受像紙を準備する熱転写受像紙準備工程と、前記ロイコ染料層と前記受容層が対向するように、前記熱転写シートと、前記熱転写受像紙を重ね合わせ、前記熱転写シートの前記ロイコ染料層が設けられた面とは異なる面を加熱して、前記熱転写受像紙上に発色画像を形成する加熱工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、前記熱転写受像紙が、前記第2の基材から前記受容層を剥離可能な熱転写受像紙であり、前記加熱工程で、前記熱転写受像紙上に発色画像を形成した後に、前記熱転写受像紙上の発色画像と、被転写体とを重ね合わせ、前記熱転写受像紙の前記発色画像が形成された面とは異なる面を加熱して、被転写体上に前記発色画像が形成された受容層を再転写する再転写工程を更に含んでいてもよい。
【0009】
また、前記加熱工程で、前記熱転写受像紙上に発色画像を形成した後に、前記熱転写受像紙上の発色画像と、透明保護層を有する保護層転写シートとを重ね合わせ、前記保護層転写シートの前記透明保護層が形成された面とは異なる面を加熱して、前記熱転写受像紙上に形成された発色画像上に透明保護層を転写する透明保護層転写工程を更に含んでいてもよい。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明は、熱転写シートであって、基材と、ロイコ染料を含むロイコ染料層が積層されてなることを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するための本発明は、熱転写受像紙であって、基材と、顕色剤を含む受容層が積層されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像形成方法によれば、熱転写後に排出される熱転写シートから秘密情報等の画像情報が認識されることを防止しつつ、黒色画像の印画物を容易に形成することができる。また、本発明の熱転写シートや熱転写受像紙によれば、上記画像形成方法によって容易に黒色画像の印画物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像形成方法に用いられる熱転写シートの一例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の画像形成方法に用いられる熱転写受像紙の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の画像形成方法に用いられる熱転写受像紙の一例を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の画像形成方法における加熱工程を説明するための図である。
【図5】本発明の画像形成方法における再転写工程を説明するための図である。
【図6】本発明の画像形成方法における透明保護層転写工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<画像形成方法>>
本発明の画像形成方法は、熱転写方式によって画像を形成する画像形成方法であって、第1の基材と、ロイコ染料を含むロイコ染料層と、が積層されてなる熱転写シートを準備する熱転写シート準備工程と、第2の基材と、顕色剤を含む受容層と、が積層されてなる熱転写受像紙を準備する熱転写受像紙準備工程と、ロイコ染料層と受容層が対向するように、熱転写シートと、熱転写受像紙を重ね合わせ、熱転写シートのロイコ染料層が設けられた面とは異なる面を加熱して、熱転写受像紙上に発色画像を形成する加熱工程と、を含むことを特徴とする。以下、図面を参照して、本発明の画像形成方法の各工程について具体的に説明する。
【0015】
<熱転写シート準備工程>
熱転写シート準備工程は、第1の基材と、ロイコ染料を含むロイコ染料層が積層されてなる熱転写シートを準備する工程である。
【0016】
「熱転写シート」
図1に示すように、熱転写シート準備工程で準備される熱転写シート1は、第1の基材2と、ロイコ染料を含むロイコ染料層3とから構成されている。この熱転写シート1は、第1の基材2の背面を加熱手段によって加熱することで、ロイコ染料層3に含まれるロイコ染料が、後述する熱転写受像紙51上に移行する。
【0017】
(第1の基材)
熱転写シート1に用いられる第1の基材2としては、ある程度の耐熱性と強度を有するものであれば特に限定されることはなく、従来公知の材料を適宜選択して用いることができる。このような第1の基材2として、例えば、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜10μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等が挙げられる。更に、これらの材料はそれぞれ単独でも使用できるが、他の材料と組み合わせた積層体として使用してもよい。
【0018】
(ロイコ染料層)
図1に示すように、第1の基材2上には、無色あるいは淡色のロイコ染料を含む無色あるいは白色不透明のロイコ染料層3が設けられている。なお、ロイコ染料層3は実質的に顕色剤を含まない層である。
【0019】
本発明の画像形成方法では、このロイコ染料層を備える熱転写シート1と、熱転写受像紙を重ね合わせ、熱転写シート1の背面側を画像情報に基づいて加熱し、ロイコ染料を熱転写受像紙の受容層に移行させ、受容層に含まれる顕色剤と反応させることにより受容層上に黒色の発色画像を形成している。ここで、上述したようにロイコ染料層3に含まれるロイコ染料は無色あるいは淡色であることから、該無色あるいは淡色のロイコ染料を画像情報に基づいて移行させても、ロイコ染料の移行前後において、ロイコ染料層3は無色あるいは白色不透明な状態を維持している。したがって、このロイコ染料を備える熱転写シート1を用いた本発明の画像形成方法によれば、熱転写後に排出される熱転写シートから秘密情報等の画像情報が認識されることを防止することができる。
【0020】
・ロイコ染料
ロイコ染料層に含まれるロイコ染料について特に限定はなく、無色または淡色の従来公知のロイコ染料を適宜選択して用いることができる。例えば、
(1)3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニル−3−インドリル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチル−3−インドリル)フタリド、3,3−ビス(9−エチル−3−カルバゾリル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニル−3−インドリル)−5−ジメチルアミノフタリドなどのトリアリールメタン系化合物;
(2)4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリンベンジルエーテル、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミンなどのジフェニルメタン系化合物;
(3)3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、ローダミン−β−アニリノラクタム、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(β−エトキシエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(γ−クロロプロピルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−エトキシエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(4−アニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオランなどのキサンテン系化合物;
(4)ベンゾイルロイコメチレンブル−、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブル−などのチアジン系化合物;
(5)3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピランなどのスピロ系化合物;
(6)その他、3,5',6−トリス(ジメチルアミノ)−スピロ〔9H−フルオレン−9,1'(3'H)−イソベンゾフラン〕−3'−オン、1,1−ビス〔2−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラクロロ(3H)イソベンゾフラン−3−オンなどが挙げられ、これらの染料は1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
ロイコ染料の含有量について特に限定はないが、受容層上に形成される黒色画像の発色感度を考慮するとロイコ染料層3の固形分総量に対し30質量%〜70質量%の範囲内で含有されていることが好ましい。
【0022】
・ロイコ染料層に含まれるバインダー樹脂
ロイコ染料を担持するためのバインダー樹脂としては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース,酢酸セルロース、酢酸・酪酸セルロース等のセルロース樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等があげられるが、これらの中ではセルロース系、ポリウレタン系、ビニル系、アクリル系およびポリエステル系の樹脂が耐熱性、染料移行性などの点で好ましく用いられる。
【0023】
・その他の添加材
また、ロイコ染料層3には、必要に応じて、シリコーンオイル、リン酸エステル等の離型剤、カーボンブラック、アルミニウム、二硫化モリブデン等の無機微粒子、パラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス等有機微粒子等の添加剤を使用することもできる。
【0024】
ロイコ染料層3は、上述のロイコ染料とバインダー樹脂とを、必要に応じて添加する添加剤とともに、適当な有機溶剤や水に溶解又は分散して塗工液を調製し、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、第1の基材2の一方の面に塗工液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。有機溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド〔DMF〕等が挙げられる。
【0025】
ロイコ染料層3の厚みについても特に限定はないが、1μm〜5μm程度であることが好ましい。
【0026】
(背面層)
また、第1の基材2として、高熱に対する耐久性が欠ける材料を用いる場合、第1の基材2のロイコ染料層が形成されている面と異なる面上に、加熱手段、例えば、サーマルヘッドの滑り性を良くし、かつスティッキングを防止するための背面層(図示しない)を設けることが好ましい。背面層は、耐熱性のある樹脂と熱離型剤又は滑剤の働きをする物質とを基本的な構成成分とする。このような背面層を設けることによって、例えば、熱に弱いプラスチックフィルムを第1の基材2とした熱転写シートにおいてもスティッキングが起こることなく熱印字が可能であって、プラスチックフィルムの持つ切れにくさ、加工のし易さ等のメリットが生かせる。さらに、本発明の熱転写シート1をロール状に巻き取った時のブロッキングを防止することができる。
【0027】
背面層は、バインダー樹脂に滑り剤、界面活性剤、無機粒子、有機粒子、顔料等を添加したものを好適に使用し形成することができる。背面層に使用されるバインダー樹脂は、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、硝化綿などのセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−スチレン共重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0028】
これらのなかで、数個の反応性基、例えば、水酸基を有しているものを使用し、架橋剤として、ポリイソシアネートなどを併用して、架橋樹脂を使用することが好ましい。背面層を形成する手段は、上記のごとき、バインダー樹脂に滑り剤、界面活性剤、無機粒子、有機粒子、顔料等を添加した材料を、適当な溶剤中に溶解又は分散させて、塗工液を調製し、この塗工液をグラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバーなどの慣用の塗工手段により、塗工し、乾燥するものである。背面層の塗工量は、乾燥状態で通常、0.01g/m2〜10g/m2程度である。
【0029】
<熱転写受像紙準備工程>
熱転写受像紙準備工程は、第2の基材と、顕色剤を含む受容層と、が積層されてなる熱転写受像紙を準備する工程である。
【0030】
「熱転写受像紙」
図2に示すように、熱転写受像紙準備工程で準備される熱転写受像紙51は、第2の基材52と、顕色剤を含む受容層53とから構成されている。なお、受容層53は、実質的にロイコ染料を含まない層である。
【0031】
(第2の基材)
第2の基材52についても特に限定はなく、上記「第1の基材」をそのまま用いることができる。また、これ以外にも上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、板紙、RCペーパー等の従来公知の受像紙基材も使用可能である。なお、第1の基材2と、第2の基材52は同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0032】
(受容層)
図2に示すように、第2の基材52上には、顕色剤を含む受容層53が設けられている。
【0033】
・顕色剤
受容層53に含まれる顕色剤についても特に限定はなく、例えば、p−オクチルフェノ−ル、p−第三ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、α−ナフトール、β−ナフトール、p−第三オクチルカテコール、2,2'−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノール−A、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)スルホン、2,4'−ジヒドロキシフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニルチオ)エトキシ〕メタン、4−(4−イソプロポキシベンゼンスルホニル)フェノ−ル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、3,5−ジ第三ブチルサリチル酸などのフェノール系;安息香酸などの有機カルボン酸系;サリチル酸亜鉛などの金属系;2,4−ジヒドロキシ−N−2'−メトキシベンズアニリドなどのアニリド誘導体系などの顕色剤があげられ、これらの顕色剤は1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
顕色剤の配合量ついて特に限定はないが、受容層53の固形分総量に対し、5質量%〜50質量%の範囲内で含有されていることが好ましい。また、顕色剤はこの範囲内であって、熱転写シート1のロイコ染料層3に含まれるロイコ染料と、顕色剤との質量比が1:1〜1:10となるように含有されていることがさらに好ましい。
【0035】
・受容層に含まれるバインダー樹脂
また、受容層53には、熱転写時にロイコ染料層3から移行されるロイコ染料を受容するためのバインダー樹脂が含まれる。受容層53に含まれるバインダー樹脂について特に限定はなく、ロイコ染料を受容しやすい従来公知の樹脂材料を適宜選択して用いることができる。例えば、バインダー樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンもしくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーもしくはセルロースジアスターゼ等のセルロース系樹脂、ポリカーボネイト等が挙げられ、特に、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂またはポリエステル樹脂が好ましい。
【0036】
なお、熱転写受像紙を、後述する中間転写媒体として使用する場合には、受容層53に接着性を有する樹脂が含有されていることが好ましい。受容層53に接着性を有する樹脂を含有せしめることで、画像が形成された受容層を再転写する際に、被転写体との密着性を確保することができる。
【0037】
接着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル─酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン─アクリル共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0038】
・その他の材料
また、受容層53には、必要に応じて、増感剤や、保存安定剤を添加してもよい。増感剤としては、例えば、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ベヘニン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、サリチル酸ドデシルエステル亜鉛塩、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウムなどの有機酸の金属塩;ステアリン酸アミド,ステアリン酸メチロールアミド,ステアロイル尿素、アセトアニリド、アセトトルイジド、安息香酸ステアリルアミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオクチル酸アミドなどのアミド化合物;1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、m−ターフェニル、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、p−ベンジロキシビフェニル、ジフェニルカーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ジベンジルオキザレート、ビス(4−メチルベンジル)オキザレート、ビス(4−クロロベンジル)オキサレート、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸ベンジル、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸フェニル、メチレンジベンゾエート、1,4−ビス(2−ビニロキシエトキシ)ベンゼン、2−ベンジロキシナフタレン、4−ベンジロキシ安息香酸ベンジル、ジメチルフタレート、テレフタル酸ジベンジル、ジベンゾイルメタン、4−メチルフェノキシ−p−ビフェニルなどがあげられ、これらの増感剤は1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
また、保存安定剤としては、たとえば、1,1,3−トリス(2−メチル−4ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4'−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)、2,2'−チオビス(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)などのヒンダードフェノール化合物、4−ベンジルオキシ−4'−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、ナトリウム−2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートなどがあげられ、これらの保存安定剤は1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
また、増感剤や保存安定剤以外にも、必要に応じて、顔料、ワックス類、消泡剤などの添加剤や、熱転写シート1のロイコ染料層3との熱融着を防止する為に、離型剤を添加することもできる。離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系化合物等を用いることができるが、この中でも特にシリコーンオイルが好ましく用いられる。離型剤の添加量は、受容層53に含まれるバインダー樹脂100質量部に対し0.2質量部〜30質量部が好ましい。
【0041】
受容層53は、顕色剤、バインダー樹脂、必要に応じて離型剤等の添加材を加え、水又は有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させた受容層用塗工液を、第2の基材52上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の通常の方法で塗布して形成することが可能である。
【0042】
受容層53の厚みについても特に限定はないが、1μm〜10μm程度であることが好ましい。
【0043】
「中間転写媒体としての熱転写受像紙」
また、画像が形成された受容層53を被転写体上に再転写する場合、換言すれば熱転写受像紙51を中間転写媒体として用いる場合には、図3に示すように、第2の基材52と受容層53との間に、離型層54が設けられていることが好ましい。なお、図3は、熱転写受像紙51Aの一例を示す模式的断面図であり、第2の基材52の一方面上に、離型層54、剥離層55、受容層53がこの順で積層されており、第2の基材の他方面上に背面層56が設けられている。第2の基材52、受容層53は上記で説明した通りでありここでの説明は省略する。
【0044】
(離型層)
離型層54は、熱転写時に溶融して画像が形成された受容層53の第2の基材52からの剥離性を向上させ、転写後には、第2の基材52上に残る層である。離型層54としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、もしくはそれらの混合物などが挙げられるがこれに限定されるものではない。離型層54の厚みは約0.1μm〜5.0μm程度である。
【0045】
(剥離層)
上記の離型層54にかえて、又はこれとともに、剥離層55を形成することもできる。剥離層55は、熱転写時に溶融して画像が形成された受容層53の第2の基材52からの剥離性を向上させ、転写後には、受容層53とともに、被転写体上に転写される層である。したがって、被転写体上に形成された画像に良好な滑り性を付与することができ、印画物の耐擦過性を向上させることができる。剥離層55としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーンあるいはフッ素で編成した各種樹脂、あるいはワックスを主成分として用いることが好ましい。
【0046】
ワックスとしては、加熱時に溶融して剥離性を発揮する各種のワックスが好ましい。好適に使用されるワックスとしては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種々のワックスが挙げられる。特に好ましいワックスは比較的融点が高く且つ溶剤に溶けにくいマイクロクリスタリンワックス及びカルナバワックス等である。剥離層は熱転写シートの感度を低下させることがないように薄い層、例えば、乾燥状態で、0.1g/m2〜2g/m2程度の厚みであることが好ましい。
【0047】
(背面層)
背面層56は、上記「熱転写シート」で説明した背面層をそのまま用いることができ、ここでの説明は省略する。
【0048】
<加熱工程>
加熱工程は、上記で説明した熱転写シート1と熱転写受像紙51を、ロイコ染料層3と受容層53とが対向するように重ね合わせ、熱転写シート1のロイコ染料層3が設けられた面とは異なる面を加熱して、熱転写受像紙上に発色画像を形成する工程である。
【0049】
具体的に、当該工程では、まず図4(a)に示すように、熱転写シート1と熱転写受像紙53を、ロイコ染料層3と受容層53とが対向するように重ね合わせ、熱転写シート1のロイコ染料層3が設けられた面とは異なる面を画素状に加熱する。なお、本発明において、「画素状」という場合には、最終的に製造される印画物の画像情報に対応する形状を意味し、その形状についていかなる限定もされることはない。
【0050】
図4(b)に示すようにこの加熱によって、ロイコ染料層3に含まれるロイコ染料は、受容層53に移行するとともに、受容層53に含まれる顕色剤と化学反応を起こし、黒色に発色する。これにより、熱転写受像紙51上に所望の画像が形成された印画物が得られる。また、上述したように、ロイコ染料層3は、加熱工程、すなわちロイコ染料の移行前後において無色あるいは白色不透明な状態を維持していることから、排出される熱転写シート1から画素情報を判別することが困難である。したがって、本発明の画像形成方法によれば、熱転写後に排出される熱転写シート1から秘密情報が認識されることを効果的に防止することができる。
【0051】
ロイコ染料を受容層53に移行させる加熱手段としては、従来公知の熱転写プリンタを構成するサーマルヘッドなどを挙げることができる。加熱温度について特に限定はないが、100〜200℃程度が好ましい。
【0052】
上述した加熱工程は、熱転写シート1のロイコ染料層3が設けられた面とは異なる面を画素状に加熱することによって行われる。すなわち、ロイコ染料を移行させ、ロイコ染料と顕色剤とを化学反応させるための加熱は、第1の基材2を介して行われる。したがって、第1の基材2が厚い場合や、第1の基材2の熱伝導性が低い場合には、ロイコ染料と顕色剤との化学反応が十分に進行せず、受容層53上に形成される黒色の画像の発色感度が低くなる場合がある。そこで、本発明の画像形成方法では、加熱工程によって、熱転写受像紙51の受容層53に発色画像を形成した後に、以下に示す再転写工程、あるいは透明保護層転写工程を行うことが好ましい。これらの工程を経ることで、受容層53上に形成された黒色の発色画像には、再度熱が加わることから、発色感度を増大させることができる。
【0053】
<再転写工程>
再転写工程は、熱転写受像紙が、上記で説明した中間転写媒体としての熱転写受像紙である場合に適用可能な工程であり、熱転写受像紙上に発色画像を形成した後に、熱転写受像紙上の発色画像と、被転写体とを重ね合わせ、熱転写受像紙の発色画像が形成された面とは異なる面を加熱して、被転写体上に黒色の発色画像が形成された受容層を再転写する工程である。
【0054】
図5を用いて再転写工程について具体的に説明する。再転写工程は、熱転写受像紙51が、図3に例示される中間転写媒体としての熱転写受像紙51Aである場合に適用可能な工程である。熱転写媒体としての熱転写受像紙51Aは、「熱転写受像紙準備工程」で説明した中間転写媒体としての熱転写受像紙であり、図5(a)では、第2の基材52上に、離型層55、剥離層54、受容層53がこの順で積層され、受容層53には、上記の加熱工程によって発色画像が形成されている。
【0055】
再転写工程では、図5(a)に示すように中間転写媒体としての熱転写受像紙51Aの受容層側を、被転写体30と重ね合わせ、熱転写受像紙51Aの発色画像が形成された面とは異なる面を加熱する。加熱手段としては、従来公知の熱転写プリンタを構成するサーマルヘッドのほか、熱板、ホットスタンパー、熱ロール、ラインヒーター、アイロンなどを挙げることができる。加熱温度についても特に限定はないが、100〜200℃程度が好ましい。
【0056】
被転写体30としては、普通紙、上質紙、トレーシングペーパー、プラスチックフィルム、熱転写受像紙等を挙げることができ特に限定されない。
【0057】
図5(b)に示すように、熱転写受像紙の背面を加熱することで、発色画像が形成された受容層53は、剥離層55とともに、被転写体30上に転写され、これにより印画物100が形成される。このとき、発色画像が形成された受容層には、熱転写受像紙51の背面から熱が加わることから、ロイコ染料と顕色剤との化学反応が更に促進され、発色画像の発色感度を増大させることができる。
【0058】
なお、中間転写媒体としての熱転写受像紙51Aにおいて剥離層55は、任意の構成であるが、剥離層55を備える熱転写受像紙51Aによれば、再転写工程後に形成される印画物100は、被転写体30、発色画像が形成された受容層53、該受容層53上に形成された剥離層55がこの順で積層された構成をとる。つまり、発色画像が形成された受容層53の一方の面は被転写体30によって保護され、発色画像が形成された受容層53の他方の面は剥離層55によって保護される。したがって、水分等の影響によって、受容層53に形成された発色画像の感度が低下することを防止することができる。
【0059】
<透明保護層転写工程>
発色画像の発色感度を増大させ、また発色感度の低下を防止するために、上記で説明した再転写工程にかえて透明保護層転写工程を行うこととしてもよい。
【0060】
透明保護層転写工程は、熱転写受像紙上に発色画像を形成した後に、熱転写受像紙上の発色画像と、透明保護層を有する保護層転写シートとを重ね合わせ、保護層転写シートの透明保護層が形成された面とは異なる面を加熱して、熱転写受像紙上に形成された発色画像上に透明保護層を転写する工程である。
【0061】
透明保護層転写工程は、図6(a)に示すように、加熱工程で熱転写受像紙51の受容層53に形成された発色画像と、基材シート72上に透明保護層73が設けられた保護層転写シート71とを重ね合わせ、保護層転写シート71の基材シート72側から加熱を行う。加熱手段としては、従来公知の熱転写プリンタを構成するサーマルヘッドのほか、熱板、ホットスタンパー、熱ロール、ラインヒーター、アイロンなどを挙げることができる。加熱温度についても特に限定はないが、100〜200℃程度が好ましい。
【0062】
保護層転写シートの背面を加熱することによって、図6(b)に示すように熱転写受像紙51の受容層53に形成された発色画像上に透明保護層73が転写される。このとき、発色画像が形成された受容層53には、保護層転写シートの背面側から熱が加わることから、ロイコ染料と顕色剤との化学反応が更に促進され、発色画像の発色感度を増大させることができる。
【0063】
また、透明保護層転写工程後に得られる印画物は、図6(b)に示すように第2の基材52、発色画像が形成された受容層53、透明保護層73がこの順で積層された構成をとる。つまり、発色画像が形成された受容層53の一方の面は第2の基材52によって保護され、発色画像が形成された受容層53の他方の面は透明保護層73によって保護される。したがって、水分等の影響によって、受容層に形成された発色画像の感度が低下することを防止することができる。
【0064】
(保護層転写シート)
保護層転写シート71について特に限定はなく、透明性を有する保護層を有し、この透明保護層73を加熱手段によって転写することができる機能を奏する従来公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、図6(a)に示すように基材シート72、離型層74、透明保護層73と、がこの順で積層され、基材シート72の背面側から加熱することで、透明保護層73を被転写体に転写可能な保護層転写シート等を挙げることができるが、この構成に限定されるものではない。例えば、離型層にかえて、上記で説明した剥離層を用いることとしてもよい。
【0065】
透明保護層73は、該透明保護層73によって被覆される発色画像が目視できるように透明性を有する材料からなる。このような材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエーテルスルホン、ポレーテルエーテルケトン、ポリアミド、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0066】
また、透明保護層73と、発色画像が形成された受容層53との密着性を向上させるために、透明保護層73上に接着層が設けられていることが好ましい。なお、透明保護層73自体が、発色画像が形成された受容層53との密着性を有する場合には、接着層は不要である。
【0067】
また、上記では、透明保護層73を、保護層転写シート71を用いて転写しているが、上記で説明した熱転写シート1を、ロイコ染料層3と、透明保護層73とを面順次に設けられた熱転写シート1とし、この1つの熱転写シートによって、ロイコ染料の受容層53への移行と、透明保護層73の転写を併せて行うこともできる。
【0068】
本発明の熱転写シートは、上記「熱転写シート準備工程」で説明した熱転写シートをそのまま用いることができる。また、本発明の熱転写受像紙は、上記「熱転写受像紙準備工程」で説明した熱転写受像紙をそのまま用いることができる。
【0069】
以上説明した、本発明の画像形成方法によれば、ロイコ染料を受容層に移行させ黒色の画像を形成した後に排出される熱転写シートから秘密情報が認識されることを防止することができる。また、本発明の画像形成方法に用いられる熱転写シートや熱転写受像紙は、キック・バック等が生じることもなく保存性が高いことから、本発明の画像形成方法によって特に高品質の黒色画像を容易に形成することができる。
【0070】
以上、本発明の画像形成方法について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。なお、ロイコ染料と顕色剤との分子量を比較した場合、ロイコ染料の方が分子量は小さく、熱転写時の拡散性が良好である。したがって、本発明では、拡散性を考慮して、熱転写シート側にロイコ染料を含むロイコ染料層を設けているが、例えば、顕色剤を含有せしめた顕色剤層を含む熱転写シートとし、ロイコ染料を含有せしめた受容層を有する熱転写受像紙とし、これらを組合せて画像を形成することもできる。つまり、顕色剤層に含まれる顕色剤を、ロイコ染料を含む熱転写受像紙に移行させ、移行した顕色剤とロイコ染料との化学反応によって発色画像を形成してもよい。
【実施例】
【0071】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
【0072】
(実施例1)
<熱転写シートの準備>
基材シートとして、厚さ4.5μmの片面易接着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー)を用い、この基材シートの非易接着面に、下記組成の背面層用塗工液をワイヤーバーコーティング方式により、乾燥時の塗布量が1.0g/m2になるように塗布し、乾燥して(100℃60秒間)、背面層を形成した。次に、上記基材シートの背面層を形成した面と反対の易接着面に、下記組成のロイコ染料層用塗工液をワイヤーバーコーティング方式により、乾燥時の塗布量が2.0g/m2になるように塗布、乾燥して(90℃60秒間)、ロイコ染料層を形成して、実施例1の熱転写シートを作製した。
【0073】
(背面層用塗工液)
・ポリビニルブチラール樹脂 3.6部
(エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)
・ポリイソシアネート 8.6部
(バーノックD750、DIC(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 2.8部
(プライサーフA208S、第一工業製薬(株)製)
・タルク 0.7部
(ミクロエースP−3、日本タルク工業(株)製)
・メチルエチルケトン 32.0部
・トルエン 32.0部
【0074】
(ロイコ染料層用塗工液)
・3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン 4.5部
・バインダー樹脂 4.5部
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0075】
<熱転写受像紙の準備>
基材シートとしてRCペーパー(三菱製紙株式会社製)を用い、このRCペーパーの片面に下記の組成の断熱層用塗工液をワイヤーバーコーティング方式により、乾燥時の塗布量が12g/m2になるように塗布し、5℃にて30秒間冷却した後、乾燥して(50℃120秒間)、断熱層を形成した。次に、上記RCペーパーの断熱層を形成した面の上に受容層用塗工液1をワイヤーバーコーティング方式により、乾燥時の塗布量が3g/m2になるように塗布し、乾燥して(50℃120秒間)、受容層を形成して、実施例1の熱転写受像紙を作製した。
【0076】
(断熱層用塗工液)
・中空粒子 70部
(MH5055、日本ゼオン株式会社製、体積平均粒径0.5μm)
・ゼラチン 25部
(RR、新田ゼラチン株式会社製)
・水性ポリウレタン樹脂 5部
(AP40、DIC株式会社製)
・水 300部
【0077】
(受容層用塗工液1)
・塩酢ビ系樹脂 100部
(VB603、日信化学工業(株)製)
・ポリエーテル変性シリコーン 10.5部
(KF615A、信越化学工業(株)製)
・エポキシ架橋剤 5部
(EX512、ナガセケムテックス(株)製)
・ビスフェノール−A 20部
・p−ベンジルビフェニル 3部
・水 400部
【0078】
(比較例1)
<熱転写シートの準備>
実施例1の基材シートの背面層を形成した面と反対の面に、下記組成の離型層用塗工液をワイヤーバーコーティング方式により、乾燥時の塗布量が1.0g/m2になるように塗布、乾燥して(80℃60秒間)、離型層を形成し、さらに離型層の上に、下記組成の着色層用塗工液をワイヤーバーコーティング方式により、乾燥塗布量が1.0g/m2になるように塗布、乾燥して着色層を形成して、比較例1の熱転写シートを作製した。
【0079】
(離型層用塗工液)
・エポキシ基を有するシリコーン変性アクリル樹脂 40部
(セルトップ226、ダイセル化学工業(株)製、固形分50%)
・アルミ触媒 10部
(セルトップCAT−A、ダイセル化学工業(株)製、固形分10%)
・ポリエステル樹脂 1.05部
(バイロン220、ガラス転移点67℃、数平均分子量3000、東洋紡績(株)製)
・メチルエチルケトン 24部
・トルエン 24部
【0080】
(着色層用塗工液)
・着色剤 17.4部
(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 33.3部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
・アミン変性アクリル樹脂 2.47部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
・トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 46.83部
【0081】
<熱転写受像紙の準備>
受容層用塗工液1の代わりに下記組成の受容層用塗工液2をワイヤーバーコーティング方式により、乾燥塗布量が3.0g/m2になるように塗布、乾燥して受容層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして比較例1の熱転写受像紙を作製した。
【0082】
(受容層用塗布液2)
・塩酢ビ系樹脂 100部
(VB603、日信化学工業(株)製)
・ポリエーテル変性シリコーン 10.5部
(KF615A、信越化学工業(株)製)
・エポキシ架橋剤 5部
(EX512、ナガセケムテックス(株)製)
・水 300部
【0083】
(画像の形成)
昇華型熱転写プリンタ(ALTECH ADS(株)製、型式:CW−01)のメディアセットCW−MS46のY領域に、上記で得られた実施例1の熱転写シートを貼り付け、上記で得られた実施例1の熱転写受像紙に、記録速度65mm/秒(実測)で「DNP」の文字パターン(12ポイント)(255/255階調)を印画した。同様にして、昇華型熱転写プリンタのY領域に、上記で得られた比較例1の熱転写シートを貼り付け、比較例の熱転写受像紙に、「DNP」の文字パターン(12ポイント)(255/255階調)を印画した。
【0084】
(視認性評価)
上記の印字後の実施例1、及び比較例1の熱転写シートを目視で確認し、以下の評価基準に基づいて視認性評価試験を行った。評価結果を表1に示す。
「評価基準」
○:印字後の熱転写シートより文字情報が判読できない。
×:印字後の熱転写シートより文字情報が判読できる。
【0085】
【表1】

【符号の説明】
【0086】
1 熱転写シート
2 第1の基材
3 ロイコ染料層
4 感熱発色層
30 被転写体
51、51A 熱転写受像紙
52 第2の基材
53 受容層
54 離型層
55 剥離層
56 背面層
71 保護層転写シート
72 基材シート
74 離型層
73 透明保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転写方式によって画像を形成する画像形成方法であって、
第1の基材と、ロイコ染料を含むロイコ染料層が積層されてなる熱転写シートを準備する熱転写シート準備工程と、
第2の基材と、顕色剤を含む受容層が積層されてなる熱転写受像紙を準備する熱転写受像紙準備工程と、
前記ロイコ染料層と前記受容層が対向するように、前記熱転写シートと、前記熱転写受像紙を重ね合わせ、前記熱転写シートの前記ロイコ染料層が設けられた面とは異なる面を加熱して、前記熱転写受像紙上に発色画像を形成する加熱工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記熱転写受像紙が、前記第2の基材から前記受容層を剥離可能な熱転写受像紙であり、
前記加熱工程で、前記熱転写受像紙上に発色画像を形成した後に、前記熱転写受像紙上の発色画像と、被転写体とを重ね合わせ、前記熱転写受像紙の前記発色画像が形成された面とは異なる面を加熱して、被転写体上に前記発色画像が形成された受容層を再転写する再転写工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記加熱工程で、前記熱転写受像紙上に発色画像を形成した後に、前記熱転写受像紙上の発色画像と、透明保護層を有する保護層転写シートとを重ね合わせ、前記保護層転写シートの前記透明保護層が形成された面とは異なる面を加熱して、前記熱転写受像紙上に形成された発色画像上に透明保護層を転写する透明保護層転写工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
基材と、ロイコ染料を含むロイコ染料層が積層されてなる熱転写シート。
【請求項5】
基材と、顕色剤を含む受容層が積層されてなる熱転写受像紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43295(P2013−43295A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180515(P2011−180515)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】