説明

画像形成方法、画像形成装置および画像パターン

【課題】被印刷基材に、高精細かつ平坦性の高い画像パターンが形成される画像形成方法、その画像形成方法を実施するための画像形成装置およびその画像形成方法により製造される画像パターン、を提供する。
【解決手段】画像形成方法は、基板10の主表面10aにインキ層20を形成する工程と、インキに対して反撥性を有するインキ撥液部32と、インキに対して親和性を有するインキ親液部34とがパターニングされた転写面30aを有する転写ブランケット30と、基板10とを、インキ層20を介して互いに接触させつつ押圧する工程と、転写ブランケット30と基板10とを離間させることによって、インキ親液部34に接していたインキを基板10から転写ブランケット30に転写させる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、画像形成方法、画像形成装置および画像パターンに関し、より特定的には、レジスト剤もしくは導電性ペースト材料などの機能性樹脂材料、または液晶用のカラーフィルター材料などを、印刷法を用いてパターニングするための画像形成方法、その画像形成方法を実施するための画像形成装置およびその画像形成方法により製造される画像パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成方法に関して、たとえば、特開2004−249696号公報には、印刷法においてインキの糸曳き現象をなくし、フォトリソグラフィ法に近い高品質の印刷物を得ることを目的とした画像形成法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−249696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の平版オフセット印刷においては、湿し水を使用せずに、インキを画線部のみに選択的に付着させる水なし平版を用いた印刷方法が主流となっている。この印刷方法では、印刷版の非画線部が、シリコーンゴムやフッ素化合物などのインキに対して撥液性を有する材料から形成される。
【0005】
一般的に、平版オフセット印刷機は、複数の練りローラーと、印刷版面にインキを塗布するための付けローラーとを備える。インキは、練りローラー間で練り合わせることによって均一に広げられ、付けローラーを介して印刷版面に塗布される。インキが、さらに印刷版からブランケット、ブランケットから被印刷基材へと転写されることによって、被印刷基材に所望の画像パターンが形成される。このとき、インキは両側に引き裂かれて凝集破壊することによって転写されているため、インキ間に糸曳き現象が生じてしまう。このような糸曳き現象が生じると、転写後の画像パターンに膜厚ムラや体積ムラが発生するため、糸引き現象は、画像パターンの解像度や平坦性の劣化を招く原因となっている。
【0006】
糸曳き現象による解像度や平坦性の劣化を解決する方法として、インキに対する親液性および撥液性を利用して、インキを分断/転写する画像形成方法が考えられる。図26から図29は、インキの糸曳き現象を防ぐための画像形成方法の工程を示す断面図である。
【0007】
図26を参照して、この画像形成方法においては、まず、インキ親液部102およびインキ撥液部103が形成された印刷版100の表面上に、キャップコーターやダイコーター、ドクターブレード等を用いて、インキ層101を形成する。図27を参照して、次に、インキ撥液性が付与された表面を有する画像転写シート104を準備し、この画像転写シート104をインキ層101を介して印刷版100に接触させ、押圧する。画像転写シート104と印刷版100と引き離すことによって、インキ撥液部103に接していたインキ101aのみが画像転写シート104上に転写される。
【0008】
図28を参照して、次に、被印刷基材105を準備し、この被印刷基材105をインキ101aを介して画像転写シート104に接触させ、押圧する。図29を参照して、次に、被印刷基材105と画像転写シート104とを引き離すことによって、画像転写シート104上のインキ101aが被印刷基材105上に転写される。以上の工程により、被印刷基材105に所望の画像パターンが形成される。
【0009】
しかしながら、上記の画像形成方法では、印刷版100から画像転写シート104への第1転写工程と、画像転写シート104から被印刷基材105への第2転写工程との2回のインキ転写工程が実施される。この場合、各インキ転写工程における押圧歪みが積算されて最終的に得られる画像パターンの歪み量が大きくなってしまう危険性がある。また、第2転写工程においては、画像転写シート104上のインキパターンが画線部のみの孤立パターンとなっている。このため、押圧時に受ける歪み、特に押圧方向に対して直交する方向に加わる力による歪みの影響が大きくなり、高精細かつ平坦性の高い画像パターンを形成することが困難となる。
【0010】
このような問題の発生は、任意の下層画像パターンの上に上層画像パターンを精度よく形成する、つまり、段差のある表面上に画像パターンを高精度に積層することが必要となる、TFT素子や半導体デバイス、発光素子などの電子デバイスの製造プロセスにおいて、デバイスの特性低下や特性不良の原因となり、歩留まりの低下や製造コストの増大に繋がってしまう。
【0011】
さらに上記の画像形成方法においては、2回のインキ転写工程が必要であるために、印刷版100の表面上にインキ溶液を塗布してから最終的に被印刷基材105に画像パターンが形成されるまでの時間が長くなる。この場合、インキ溶液の主成分となる溶媒が低沸点を有し、その揮発性が高い場合、インキ層101の表面が早期に乾燥してしまう。これにより、第2転写工程において、画像転写シート104から被印刷基材105にインキが転写せず、画像パターンが形成されないおそれがある。
【0012】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、被印刷基材に、高精細かつ平坦性の高い画像パターンが形成される画像形成方法、その画像形成方法を実施するための画像形成装置およびその画像形成方法により製造される画像パターンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の1つの局面に従った画像形成方法は、被印刷基材の主表面にインキ層を形成する工程と、インキに対して反撥性を有するインキ撥液部と、インキに対して親和性を有するインキ親液部とがパターニングされた転写面を有する転写ブランケットと、被印刷基板とを、インキ層を介して互いに接触させつつ押圧する工程と、転写ブランケットと被印刷基材とを離間させることによって、インキ親液部に接していたインキを被印刷基材から転写ブランケットに転写させる工程とを備える。
【0014】
このように構成された画像形成方法によれば、インキ撥液部がインキに対して撥液性を有し、インキ親液部がインキに対して親液性を有する性質を利用することにより、インキ撥液部に接していたインキを選択的に被印刷基板に残すことができる。これにより、インキ撥液部のパターン形状に即した所望の画像パターンを被印刷基板に形成することができる。本発明では、転写ブランケットおよび被印刷基材の押圧工程時、インキ層は、被印刷基材の主表面に形成された当初の形態で設けられている。このため、インキ層が押圧工程時に受ける歪み、特に押圧方向に直交する方向に加わる力による歪みの影響を小さくし、高精細かつ平坦性の高い画像パターンを被印刷基材に形成することができる。
【0015】
また好ましくは、画像形成方法は、主表面よりもインキに対して高い反撥性を有する展延面を有するインキ展延材を準備し、展延面にインキ層を形成する工程をさらに備える。被印刷基材の主表面にインキ層を形成する工程は、展延面に形成されたインキ層を被印刷基材に転写する工程を含む。このように構成された画像形成方法によれば、被印刷基材の主表面に均一なインキ層を形成することができる。
【0016】
この発明の別の局面に従った画像形成方法は、インキに対して反撥性を有するインキ撥液部と、インキに対して親和性を有するインキ親液部とがパターニングされた転写面を有する転写ブランケットを準備し、転写面にインキ層を形成する工程と、転写ブランケットと被印刷基材とを、インキ層を介して互いに接触させつつ押圧する工程と、転写ブランケットと被印刷基材とを離間させることによって、インキ撥液部に接していたインキを転写ブランケットから被印刷基材に転写させる工程とを備える。
【0017】
このように構成された画像形成方法によれば、インキ撥液部がインキに対して撥液性を有し、インキ親液部がインキに対して親液性を有する性質を利用することにより、インキ撥液部に接していたインキを選択的に被印刷基材に移すことができる。これにより、インキ撥液部のパターン形状に即した所望の画像パターンを被印刷基板に形成することができる。本発明では、転写ブランケットおよび被印刷基材の押圧工程時、インキ層は、転写ブランケットの転写面に形成された当初の形態で設けられている。このため、インキ層が押圧工程時に受ける歪み、特に押圧方向に直交する方向に加わる力による歪みの影響を小さくし、高精細かつ平坦性の高い画像パターンを被印刷基材に形成することができる。
【0018】
また好ましくは、画像形成方法は、転写面よりもインキに対して高い反撥性を有する展延面を有するインキ展延材を準備し、展延面にインキ層を形成する工程をさらに備える。転写面にインキ層を形成する工程は、展延面に形成されたインキ層を転写ブランケットに転写する工程を含む。このように構成された画像形成方法によれば、転写ブランケットの転写面に均一なインキ層を形成することができる。
【0019】
この発明に従った画像パターンは、上述のいずれかに記載の画像形成方法により製造される。このように構成された画像パターンによれば、低コストな印刷法を使用して、高精細かつ平坦性の高い画像パターンを得ることができる。
【0020】
この発明に従った画像形成装置は、上述のいずれかに記載の画像形成方法を実施するための画像形成装置である。画像形成装置は、インキ撥液部およびインキ親液部がパターニングされた転写面を有する転写ブランケットと、インキ層を形成するためのインキ層形成機構部と、転写ブランケットと被印刷基材とを押圧する押圧機構部と、転写面を洗浄する洗浄機構部とを備える。
【0021】
このように構成された画像形成装置によれば、低タクトかつ低フットプリントで連続処理が可能な装置を実現することができる。これにより、生産コストの低減、特に設備投資額の低減を図ることができる。
【0022】
また好ましくは、インキ撥液部は、シリコーン樹脂材料から形成される。また好ましくは、インキ撥液部は、フッ素化合物樹脂材料から形成される。このように構成された画像形成装置によれば、高撥液性と高離型性とを併せ持つ材料からインキ撥液部を形成することにより、高精細かつ平坦性の高い画像パターンを形成することができる。
【0023】
また好ましくは、インキ親液部は、インキ撥液部よりも転写面上で凸形状となるように形成されている。このように構成された画像形成装置によれば、転写ブランケットと被印刷基板とを互いに接触させつつ押圧する工程時、被印刷基板と転写ブランケットとの間に作用する圧力が、インキ撥液部よりもインキ親液部で大きくなる。これにより、インキ親液部とインキとの密着力が増大するため、より高精細かつ平坦性の高い画像パターンを形成することができる。
【0024】
また好ましくは、洗浄機構部は、転写面に残されたインキ層を接着可能な粘着シートを有する。このように構成された画像形成装置によれば、低タクトかつ低フットプリントで連続処理が可能な装置を実現することができる。
【0025】
また好ましくは、画像形成装置は、被印刷基材を、インキ層形成機構部および押圧機構部に順に搬送する搬送機構部をさらに備える。洗浄機構部は、搬送機構部による被印刷基材の搬送ライン上で転写面を洗浄するように設けられる。このように構成された画像形成装置によれば、低タクトかつ低フットプリントで連続処理が可能な装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、この発明に従えば、被印刷基材に、高精細かつ平坦性の高い画像パターンが形成される画像形成方法、その画像形成方法を実施するための画像形成装置およびその画像形成方法により製造される画像パターンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成方法の第1工程を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における画像形成方法の第2工程を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における画像形成方法の第3工程を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1における画像形成方法の第4工程を示す断面図である。
【図5】第1実施例において用いた転写ブランケットの転写面を示す平面図である。
【図6】第1実施例において得られた画像パターンを示す斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態2における画像形成方法の第1工程を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2における画像形成方法の第2工程を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態2における画像形成方法の第3工程を示す断面図である。
【図10】この発明の実施の形態2における画像形成方法の第4工程を示す断面図である。
【図11】この発明の実施の形態3における画像形成方法の第1工程を示す断面図である。
【図12】この発明の実施の形態3における画像形成方法の第2工程を示す断面図である。
【図13】この発明の実施の形態3における画像形成方法の第3工程を示す断面図である。
【図14】図11から図13中に示す工程によってインキ層が形成された基板を示す平面図である。
【図15】この発明の実施の形態4における画像形成装置を示す斜視図である。
【図16】図15中の画像形成装置に設けられた押圧機構部の第1動作を示す側面図である。
【図17】図15中の画像形成装置に設けられた押圧機構部の第2動作を示す側面図である。
【図18】図15中の画像形成装置に設けられた押圧機構部の第3動作を示す側面図である。
【図19】図15中の画像形成装置に設けられたクリーナ板を示す斜視図である。
【図20】図15中の画像形成装置を用いて画像パターンを形成する第1工程を示す斜視図である。
【図21】図15中の画像形成装置を用いて画像パターンを形成する第2工程を示す斜視図である。
【図22】図15中の画像形成装置を用いて画像パターンを形成する第3工程を示す斜視図である。
【図23】図15中の画像形成装置を用いた基板の処理シーケンスを示す表である。
【図24】図26から図29中に示す画像形成方法を実施するための画像形成装置における処理工程を示すフローチャートである。
【図25】図15中の画像形成装置における処理工程を示すフローチャートである。
【図26】インキの糸曳き現象を防ぐための画像形成方法の第1工程を示す断面図である。
【図27】インキの糸曳き現象を防ぐための画像形成方法の第2工程を示す断面図である。
【図28】インキの糸曳き現象を防ぐための画像形成方法の第3工程を示す断面図である。
【図29】インキの糸曳き現象を防ぐための画像形成方法の第4工程を示す断面図である。
【図30】この発明の実施の形態5における画像形成装置において、転写ブランケットの転写面を拡大して示す断面図である。
【図31】図30中の転写ブランケットを用いた転写時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0029】
(実施の形態1)
図1から図4は、この発明の実施の形態1における画像形成方法の工程を示す断面図である。本実施の形態における画像形成方法は、印刷法によって、基板10に画像パターンを形成するための方法である。
【0030】
図1から図4を参照して、本実施の形態における画像形成方法の基本的な工程についてまず説明すると、画像形成方法は、被印刷基材としての基板10の主表面10aにインキ層20を形成する工程(図1)と、インキに対して反撥性を有するインキ撥液部32と、インキに対して親和性を有するインキ親液部34とがパターニングされた転写面30aを有する転写ブランケット30と、基板10とを、インキ層20を介して互いに接触させつつ押圧する工程(図2,図3)と、転写ブランケット30と基板10とを離間させることによって、インキ親液部34に接していたインキを基板10から転写ブランケット30に転写させる工程(図4)とを備える。
【0031】
続いて、本実施の形態における画像形成方法の各工程について詳細な説明を行なう。
図1を参照して、基板10は、平面状に延在する主表面10aを有する。基板10は、たとえば、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルムから選択される材料により形成されている。
【0032】
図1中に示す工程においては、液体状のインキ材料(インキ溶液)を主表面10aに塗布することによって、基板10にインキ層20を形成する。インキ層20は、主表面10aの全面に形成される。インキ層20は、主表面10a上で平面的に連続して延在する形態で形成される。インキ材料を主表面10aに塗布する方法は、特に限定されず、たとえば、スリットコート法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法などの各種方法が利用される。
【0033】
インキ材料は、インキの固形分および溶媒を含んで構成されている。固形分としては、目的とする画像パターンに求める特性に応じて、種々の導電材料もしくは絶縁材料から選択される。固形分の一例としては、銀、金、銅、ITO、SiO、TiO等の金属もしくは金属酸化物の微粒子や、ポリイミド、アクリル、フッ素樹脂等の有機系樹脂、SOG(spin-on glass)などが挙げられる。また、溶媒に関しても、上記固形分を分散もしくは溶解できるものであれば特に限定されず、一例として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸イソプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0034】
図2から図4を参照して、転写ブランケット30は、転写面30aを有する。転写面30aには、インキ撥液部32およびインキ親液部34が形成されている。インキ撥液部32は、基板10に形成される画像パターンの形状に即した形状を有する。インキ親液部34は、転写面30a上においてインキ撥液部32を除いた全領域に形成されている。
【0035】
転写ブランケット30は、主表面10aの表面形状に追従して基板10に密着する必要がある。このため、転写ブランケット30として、ウレタン樹脂や織布などのクッション層材料と、インキ撥液部32を構成する表面層との積層体上に、インキ親液部34をパターニングしたものを用いることが好ましい。
【0036】
インキ撥液部32およびインキ親液部34を形成する材料は、インキに対する密着性(接着強度)に関して、インキ親液部34の表面が最も大きく、基板10の主表面10aが次に大きく、インキ撥液部32の表面が最も小さくなるように選択される。一例を挙げれば、インキ撥液部32として、シリコーン樹脂製ゴムまたはフッ素樹脂系ゴムを用いることができる。これらの材料は、高撥液性および高離型性を併せ持つため、図4中に示す工程においてインキの全量転写を実現することができる。また、インキ親液部34としては、レジスト樹脂を用いることができる。
【0037】
インキ撥液部32を形成する材料の他の一例としては、ジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン、メチルフルオロビニルシロキサンもしくはメチルフェニルビニルシロキサン等のポリマー、または、これらのポリマーと、ニトリルブタジエンゴム(以下「NBR」という)、エチレンプロピレンジエンモノマー(以下「EPDMという」もしくはスチレンブタジエンゴム(以下「SBR」という)とのブレンドおよび共重合系、または、NBR、EPDMもしくはSBR等にシリコンオイル等を混ぜ込んだもの等のゴム部材が挙げられる。また、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォンもしくはポリイミドフィルム等の有機系の樹脂材料の表面、または、金属、ゴム、樹脂もしくはセラミック等の表面に離型剤で離型処理したものが挙げられる。
【0038】
また、インキ親液部34の他の一例としては、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルム等の有機系の樹脂材料や、金属、ゴム、樹脂、セラミックが挙げられる。
【0039】
図2および図3中に示す工程においては、転写面30aと主表面10aとが対向するように、基板10を転写ブランケット30に対して位置決めする。次に、転写面30aと、主表面10aに形成されたインキ層20とを接触させつつ、基板10および転写ブランケット30を押圧する。
【0040】
図4中に示す工程においては、基板10および転写ブランケット30を離間させることによって、転写面30aと主表面10aとを引き離す。この際、インキ親液部34に接していたインキ層の全量が、基板10から転写ブランケット30に転写され、基板10の主表面10aには、インキ撥液部32に接していたインキ層20の全量が残留する。
【0041】
その後、基板10に対して各インキ材料に適した焼成処理を施すことによって、インキ層20に含まれる溶媒を蒸発させ、インキの固形物を固化させる。以上の工程により、基板10の主表面10aに所望の画像パターンを形成する。
【0042】
本実施の形態における画像形成方法においては、パターン形成に必要なインキの転写工程が1回であるため、複数回の転写工程を実施する場合と比較して、転写工程の押圧時に生じるインキパターンの歪みやアライメントのずれを低減させることができる。
【0043】
また、基板10から転写ブランケット30への転写工程時、インキ層20は、孤立パターンの形態ではなく、主表面10aの全面を覆う形態で設けられている。このため、転写工程時に受ける歪み(特に、押圧方向に対して直交する方向の歪み)を効果的に抑制することができる。
【0044】
また、パターン形成に必要なインキの転写工程が1回であるため、インキ材料の溶液を塗布してから最終の画像パターンが形成されるまでに要する時間を短縮化することができる。これにより、乾燥時間の短いインキであっても使用が可能となり、印刷プロセスの適用範囲を拡大することができる。
【0045】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における画像形成方法によれば、基板10に高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することができる。これにより、本実施の形態における画像形成方法を用いて製造された半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルタ、発光素子などの製品の高性能化を図ることができる。また、インキの転写工程が1回ですむため、インキ材料の溶液を塗布してから最終の画像パターンが形成されるまでに要する時間を短縮化することができる。
【0046】
このような作用、効果を奏する本発明は、液晶TFTアレイや半導体デバイスの層間絶縁膜といった平坦性の高い膜の形成が必要な用途や、非常に乾燥の速いインク材料を用いるプロセスにより好適に適用される。
【0047】
続いて、本実施の形態における画像形成方法による作用、効果を検証するために行なった第1実施例および比較例について説明する。
【0048】
図5は、第1実施例において用いた転写ブランケットの転写面を示す平面図である。図1から図5を参照して、本実施例では、基板10としてガラス基板を用いた。スリットコータを用いて、基板10の主表面10a上にインキ材料を塗布し、インキ層20を約1.5μmの膜厚で形成した。インキ材料として、CF(カラーフィルタ)用インキ(緑)と、Agナノ粒子分散インキとを用いた。
【0049】
次に、レジスト樹脂から形成され、幅L=20μmを有するインキ親液部34と、シリコーン樹脂から形成され、幅S=20μmを有するインキ撥液部32とが転写面30aに形成された転写ブランケット30を用い、転写ブランケット30と基板10とを押圧、離間させた。
【0050】
図6は、第1実施例において得られた画像パターンを示す斜視図である。図6を参照して、CF用インキ(緑)を用いた場合と、Agナノ粒子分散インキを用いた場合とのそれぞれにおいて、基板10の主表面10a上に画像パターン25を形成することができた。画像パターン25のパターン線幅L/Sおよび膜厚Tを測定した。その結果、CF用インキ(緑)を用いた場合、パターン線幅L/Sは20±1μm、膜厚Tは1.2μmとなり、Agナノ粒子分散インキを用いた場合、パターン線幅L/Sは20±1.5μm、膜厚Tは1.0μmとなった。また、画像パターン25の頂面25aの表面平坦度を測定したところ、CF用インキ(緑)およびAgナノ粒子分散インキを用いた場合のいずれにおいても、表面平坦度は約0.1μm以下となった。
【0051】
比較のため、図26から図29に示す画像形成方法の工程に従って画像パターンを形成し、得られた画像パターンのパターン線幅L/S、膜厚Tおよび表面平坦度を測定した。使用するインキ材料、塗布膜厚および画像パターンの形成条件は、上記の第1実施例の場合と同様とした。測定の結果、CF用インキ(緑)を用いた場合、パターン線幅L/Sは20±3μm、膜厚Tは1.2μmとなり、Agナノ粒子分散インキを用いた場合、パターン線幅L/Sは20±3μm、膜厚Tは1.2μmとなった。CF用インキ(緑)およびAgナノ粒子分散インキを用いた場合のいずれにおいても、表面平坦度は約0.3〜0.5μmとなった。
【0052】
以上の第1実施例および比較例による検証により、本実施の形態における画像形成方法によれば、得られる画像パターンのパターン線幅L/Sのばらつきが小さくなり、画像パターンの表面平坦度が向上することを確認できた。
【0053】
(実施の形態2)
図7から図10は、この発明の実施の形態2における画像形成方法の工程を示す断面図である。
【0054】
図7から図10を参照して、本実施の形態における画像形成方法の基本的な工程についてまず説明すると、画像形成方法は、インキに対して反撥性を有するインキ撥液部32と、インキに対して親和性を有するインキ親液部34とがパターニングされた転写面30aを有する転写ブランケット30を準備し、転写面30aにインキ層20を形成する工程(図7)と、転写ブランケット30と被印刷基材としての基板10とを、インキ層20を介して互いに接触させつつ押圧する工程(図8,図9)と、転写ブランケット30と基板10とを離間させることによって、インキ撥液部32に接していたインキを転写ブランケット30から基板10に転写させる工程(図10)とを備える。
【0055】
続いて、本実施の形態における画像形成方法の各工程について詳細な説明を行なう。なお、実施の形態1における画像形成方法と重複する内容については、説明を繰り返さない。
【0056】
本実施の形態では、図7中に示す工程において、液体状のインキ材料を転写面30aに塗布することによって、転写ブランケット30にインキ層20を形成する。転写面30aにインキ層20が設けられる形態は、実施の形態1において主表面10aに設けられたインキ層20と同様である。
【0057】
図8から図10を参照して、本実施の形態においても、インキ撥液部32は、基板10に形成される画像パターンの形状に即した形状を有する。インキ親液部34は、転写面30a上においてインキ撥液部32を除いた全領域に形成されている。インキ撥液部32およびインキ親液部34を形成する材料は、インキに対する密着性(接着強度)に関して、インキ親液部34の表面が最も大きく、基板10の主表面10aが次に大きく、インキ撥液部32の表面が最も小さくなるように選択される。
【0058】
図8および図9中に示す工程において、転写面30aと主表面10aとが対向するように、基板10を転写ブランケット30に対して位置決めする。次に、主表面10aと、転写面30aに形成されたインキ層20とを接触させつつ、基板10および転写ブランケット30を押圧する。
【0059】
図10中に示す工程において、基板10および転写ブランケット30を離間させることによって、転写面30aと主表面10aとを引き離す。この際、インキ撥液部32に接していたインキ層20の全量が、転写ブランケット30から基板10に転写され、インキ親液部34に接していたインキ層の全量が、転写ブランケット30の転写面30aに残留する。
【0060】
その後、基板10に対して各インキ材料に適した焼成処理を施すことによって、インキ層20に含まれる溶媒を蒸発させ、インキの固形物を固化させる。以上の工程により、基板10の主表面10aに所望の画像パターンを形成する。
【0061】
本実施の形態における画像形成方法では、まず転写ブランケット30にインキ層20を形成し、そのあとインキ撥液部32に接していたインキ層20を転写ブランケット30から基板10に転写させることによって、基板10に画像パターンを形成する。このような画像形成方法によっても、パターン形成に必要なインキの転写工程を1回とし、実施の形態1における画像形成方法と同様の効果を得ることができる。
【0062】
続いて、本実施の形態における画像形成方法による作用、効果を検証するために行なった第2実施例について説明する。
【0063】
図7から図10中に示す画像形成方法の工程に従って画像パターンを形成し、得られた画像パターンのパターン線幅L/S、膜厚Tおよび表面平坦度を測定した。使用するインキ材料、塗布膜厚および画像パターンの形成条件は、上記の第1実施例の場合と同様とした。測定の結果、CF用インキ(緑)を用いた場合、パターン線幅L/Sは20±1μm、膜厚Tは1.3μmとなり、Agナノ粒子分散インキを用いた場合、パターン線幅L/Sは20±1.5μm、膜厚Tは1.2μmとなった。CF用インキ(緑)およびAgナノ粒子分散インキを用いた場合のいずれにおいても、表面平坦度が約0.1μm以下となった。
【0064】
実施の形態1において説明した比較例との対比により、本実施の形態における画像形成方法によれば、得られる画像パターンのパターン線幅L/Sのばらつきが小さくなり、画像パターンの表面平坦度が向上することを確認できた。
【0065】
(実施の形態3)
図11から図13は、この発明の実施の形態3における画像形成方法の工程を示す断面図である。本実施の形態では、実施の形態1における図1中の工程に替わって、図11から図13中に示す工程を実施する。以下、実施の形態1における画像形成方法と重複する内容については、説明を繰り返さない。
【0066】
図11を参照して、本実施の形態では、まず、基板10にインキ層20を形成するためのインキ展延材としてのインキ展延シート40を準備する。インキ展延シート40は、平面状に延在する展延面40aを有する。展延面40aは、基板10の主表面10aよりもインキに対して高い反撥性を有する。言い換えれば、展延面40aは、基板10の主表面10aよりもインキに対して低い密着性(接着強度)を有する。インキ展延シート40は、たとえば、シリコーン樹脂製ゴムまたはフッ素樹脂系ゴムから形成されている。
【0067】
次に、展延面40aにインキ材料を塗布し、インキ層20を形成する。インキ層20は、展延面40aの全面に形成される。展延面40aと主表面10aとが対向するように、基板10をインキ展延シート40に対して位置決めする。
【0068】
図12を参照して、次に、主表面10aと、展延面40aに形成されたインキ層20とを接触させつつ、基板10およびインキ展延シート40を押圧する。図13を参照して、次に、基板10およびインキ展延シート40を離間させることによって、インキ層20を展延面40aから主表面10aに転写させる。
【0069】
図14は、図11から図13中に示す工程によってインキ層が形成された基板を示す平面図である。
【0070】
図14を参照して、本実施の形態では、インキ層20が主表面10aの一部の領域に形成されている。このような場合、主表面10aに直接インキ材料を塗布し、その一部の領域に対して均一なインキ層20を形成することは難しい。また、主表面10aの全面にインキ層20を形成し、そのあと不要な領域のインキを転写ブランケット30に転写させる方法も考えられるが、この場合、廃棄するインキの量が増大してコスト的に不利となる。
【0071】
これに対して、図11から図13中に示すように、まず所定の広さを有するインキ展延シート40の展延面40aにインキ層20を形成し、そのインキ層20を基板10に転写させることによって、均一なインキ層20を基板10に形成することが可能となる。
【0072】
なお、インキ展延シート40を用いたインキ層20の形成工程を、図7から図10中に示す実施の形態2における画像形成方法に適用してもよい。この場合、展延面40aは、転写ブランケット30の転写面30aよりもインキに対して高い反撥性を有する。インキ撥液部32がシリコーン樹脂から形成されている場合、インキ展延シート40をフッ素を添加したシリコーン樹脂から形成してもよい。インキ撥液部32がフッ素樹脂から形成されている場合、インキ展延シート40を、インキ撥液部32よりもフッ素含有量を大きくしたフッ素樹脂から形成してもよい。
【0073】
インキ展延シート40を用いたインキ層20の形成工程を、実施の形態2における画像形成方法に適用した場合、柔軟性を有する転写ブランケット30に直接インキ層20を形成する場合と比較して、均一なインキ層20を容易に形成することができる。また、転写ブランケット30が円筒形状を有する場合であっても、均一なインキ層20を形成することができる。
【0074】
このように構成された、この発明の実施の形態3における画像形成方法によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
【0075】
(実施の形態4)
図15は、この発明の実施の形態4における画像形成装置を示す斜視図である。図15中に示す画像形成装置50は、図1から図4中に示す実施の形態1における画像形成方法を実施するための装置である。
【0076】
図15を参照して、まず画像形成装置50の基本的な構造について説明すると、画像形成装置50は、インキ撥液部32およびインキ親液部34がパターニングされた転写面30aを有する転写ブランケット30と、インキ層20を形成するためのインキ層形成機構部としてのスリットダイコータ81と、転写ブランケット30と基板10とを押圧する押圧機構部70と、転写面30aを洗浄する洗浄機構部としてのクリーナ板56とを有する。
【0077】
続いて、画像形成装置50の各部構造について詳細な説明を行なう。
画像形成装置50は、基板10を搬送するための搬送機構部としての、複数のステージ51およびレール53を有する。複数のステージ51は、互いに間隔を隔ててレール53に設置されている。複数のステージ51は、レール53上でスライド移動可能に設けられている。複数のステージ51には、その配列方向に交互に基板10およびクリーナ板56が搭載される。
【0078】
複数のステージ51の移動方向における上流側には、スリットダイコータ81が設置されている。なお、インキ層20を形成するためのインキ層形成機構部は、スリットダイコータ81に限定されず、インキ材料を塗布する方法に応じて適宜変更される。複数のステージ51の移動方向における下流側には、転写ブランケット30および押圧機構部70が設置されている。このような構成により、レール53上をスライド移動するステージ51は、スリットダイコータ81に対向する位置と、転写ブランケット30および押圧機構部70に対向する位置とを順に通過する。
【0079】
図16から図18は、図15中の画像形成装置に設けられた押圧機構部の動作を示す側面図である。図16から図18中では、転写ブランケット30に対向する位置に基板10を搭載するステージ51が位置決めされている。
【0080】
図15から図18を参照して、押圧機構部70は、固定板71と、エアバルーン76と、ブランケット保持板61と、シャフト62と、コイルばね66とを有する。固定板71は、ステージ51に搭載された基板10もしくはクリーナ板56と距離を隔てて対向する位置に設けられている。固定板71は、金属から形成されている。固定板71は、印刷時に作用する圧力に対して十分な剛性を示すような構造を有する。
【0081】
ブランケット保持板61は、固定板71とステージ51との間に配置されている。ブランケット保持板61は、平板形状を有する。ブランケット保持板61は、固定支持された固定支持端61pを有する。本実施の形態では、固定支持端61pが、固定板71から延出する固定壁72に固定されている。このような形態に限られず、固定支持端61pは、固定板71とは別に設けられた部材に固定されてもよい。
【0082】
ブランケット保持板61は、支持部材としてのシャフト62により単純支持された単純支持端61qをさらに有する。ここでいう単純支持とは、その支持点での曲げモーメントの作用しない支持方法全般を意味する。固定支持端61pと単純支持端61qとは、ブランケット保持板61の両端に設けられている。
【0083】
本実施の形態では、単純支持端61qを単純支持するシャフト62が、可動部材としてのコイルばね66により移動可能に支持されている。コイルばね66の他方端は、固定板71に接続されている。このような構成により、単純支持端61qは、シャフト62およびコイルバネ66によって、固定板71とステージ51との間を結ぶ方向に移動可能に支持されるとともに、固定板71に近接する方向の圧縮力を受けている。
【0084】
ブランケット保持板61は、板ばねから形成されている。ブランケット保持板61は、固定支持端61pから遠ざかるに従ってステージ51とブランケット保持板61との間の距離Hが増大するように湾曲する状態(図16中に示す状態)と、ステージ51とブランケット保持板61との間の距離Hが一定となるように延在する状態(図18中に示す状態)との間で弾性的に変形可能である。言い換えれば、ブランケット保持板61は、固定支持端61pを固定支持点として単純支持端61qに向けて弓形に湾曲する状態と、固定支持端61pと単純支持端61qとの間で平面状に延在する状態との間で弾性的に変形可能である。
【0085】
ステージ51と対向するブランケット保持板61の表面には、転写ブランケット30が貼り合わされている。
【0086】
エアバルーン76は、固定板71とブランケット保持板61との間に設けられている。エアバルーン76は、密閉空間を形成する袋状部材から形成されている。エアバルーン76は、固定板71に密着して設けられている。固定板71には、エアバルーン76の内部空間に連通するエア管73が接続されている。エア管73を通じて空気が吸排気されることにより、エアバルーン76の容積が増大もしくは減少する。エアバルーン76の容積が増大するに従って、エアバルーン76からブランケット保持板61に対して平面的に圧力が付与される。
【0087】
図19は、図15中の画像形成装置に設けられたクリーナ板を示す斜視図である。図19を参照して、クリーナ板56は、複数枚の粘着シート57が積層されて構成されている。複数枚の粘着シート57は、最も上層に配置された粘着シート57から順に1枚ずつ引き剥がし可能なように設けられている。粘着シート57は、クリーナ板56に対して転写ブランケット30を押圧したときに、転写ブランケット30に付着したインキを粘着除去することが可能な程度の粘着性を有する。クリーナ板56は、押圧機構部70の作動に伴って転写ブランケット30に付着したインキを除去することが可能な洗浄機構部として設けられている。
【0088】
続いて、図15中の画像形成装置を用いて基板10に画像パターンを形成する工程の流れについて説明する。図20から図22は、図15中の画像形成装置を用いて画像パターンを形成する工程を示す斜視図である。図23は、図15中の画像形成装置を用いた基板の処理シーケンスを示す表である。
【0089】
図20および図23を参照して、まず、最初の基板10(基板A)を搭載したステージ51を画像形成装置50に搬入し(受け入れ)、そのステージ51をスリットダイコータ81からなる塗布装置に位置決めする。スリットダイコータ81から基板10の主表面10aにインキ材料を塗布することにより、基板10にインキ層20を形成する(図1中に示す工程)。
【0090】
図15および図23を参照して、次に、ステージ51を搬送することによって、インキ層20が形成された基板10(基板A)を搭載するステージ51を、転写ブランケット30および押圧機構部70からなる押圧・剥離装置に位置決めする(図2中に示す工程)。このとき、最初のクリーナ板56(クリーナ板A)を搭載するステージ51が、塗布装置に位置決めされる。
【0091】
図16から図18を参照して、基板10を搭載するステージ51を押圧・剥離装置に位置決めした状態で、エア管73の注入口を通じてエアバルーン76に空気を供給することによりブランケット保持板61を変形させていく。ブランケット保持板61の変形に伴って、固定支持端61p側から単純支持端61q側に順に、転写ブランケット30と基板10とが接触していく(図3中に示す工程)。次に、エアバルーン76から空気を徐々に放出させることにより、単純支持端61q側から固定支持端61p側に順に、転写ブランケット30を基板10から剥離していく(図4中に示す工程)。これにより、インキ親液部34に接していたインキが基板10から転写ブランケット30に転写され、基板10の主表面10aに画像パターンが形成される。
【0092】
本実施の形態における画像形成装置50においては、転写ブランケット30および基板10を一方の側から他方の側に順に接触させ、他方の側から一方の側に順に剥離させる構成に起因して、主表面10aに平行な方向の力がインキ層20に大きく作用する。このような場合であっても、インキ層20は、孤立パターンの形態ではなく、主表面10aの全面を覆う形態で設けられているため、転写工程時に受ける歪みを効果的に抑制することができる。
【0093】
図21および図23を参照して、次に、ステージ51を移動させることによって、画像パターンが形成された基板10(基板A)を搭載するステージ51を押圧・剥離装置から退避させるとともに、クリーナ板56(クリーナ板A)を搭載するステージ51を押圧・剥離装置に位置決めする。このとき、新たな基板10(基板B)を搭載したステージ51が、塗布装置に位置決めされる。
【0094】
図16から図18中に示す工程と同じ要領により、クリーナ板56と転写ブランケット30とを接触させ、離間させる。この工程により、転写ブランケット30に付着していたインキがクリーナ板56の粘着シート57に転写され、転写ブランケット30が洗浄される。また同時に、スリットダイコータ81から基板10(基板B)の主表面10aにインキ材料を塗布することにより、基板10にインキ層20を形成する。
【0095】
画像パターンが形成された基板10については、ステージ51から取り外した後、図示しない加熱処理装置に搬入し、焼成処理を施す。基板10が取り外されたステージ51には、新たな基板10が搭載され、再び画像形成装置50に送られる。
【0096】
図22および図23を参照して、次に、ステージ51を移動させることによって、クリーナ板56(クリーナ板A)を搭載したステージ51を押圧・剥離装置から退避させるとともに、インキ層20が形成された基板10(基板B)を搭載したステージ51を押圧・剥離装置に位置決めする。このとき、新たなクリーナ板56(クリーナ板B)を搭載するステージ51が、塗布装置に位置決めされる。
【0097】
転写ブランケット30を洗浄したクリーナ板56については、最も上層の粘着シート57が引き剥がされた後、再び画像形成装置50に送られる。以降、押圧・剥離装置による画像形成工程と、クリーナ板56によるブランケット洗浄工程および塗布装置によるインキ層形成工程とが、交互に繰り返し実施される。
【0098】
なお、本実施の形態における画像形成装置50においては、板ばねから形成されたブランケット保持板61を利用して、転写ブランケット30および基板10を一方の側から他方の側に順に接触させ、他方の側から一方の側に順に剥離させる構成としたが、画像形成装置は、このような構成に限定されず、転写ブランケット30と基板10とを全面的に同時に接触および剥離させる構成としてもよい。
【0099】
図24は、図26から図29中に示す画像形成方法を実施するための画像形成装置における処理工程を示すフローチャートである。図25は、図15中の画像形成装置における処理工程を示すフローチャートである。
【0100】
図24を参照して、図26から図29中に示す画像形成方法を実施する場合、印刷版100にインキ層101を形成した後(S201)、印刷版100から画像転写シート104への第1転写工程(S202)と、画像転写シート104から被印刷基材105への第2転写工程(S203)との2回のインキ転写工程が実施される。この場合、第1転写工程を終えた印刷版100を一旦、基板10の連続処理ラインから外して、印刷版洗浄工程(S204)を実施する必要がある。すなわち、図26から図29中に示す画像形成方法を実施するためには、印刷版100を洗浄するための装置を、基板10の連続処理ラインの外に設置する必要が生じる。
【0101】
図25を参照して、一方、本実施の形態における画像形成装置50は、基板10にインキ層20を形成する工程(S101)を実施するためのスリットダイコータ81と、転写工程(S102)を実施するための転写ブランケット30および押圧機構部70と、転写ブランケット30を洗浄する工程(S103)を実施するためのクリーナ板56とが、基板10の連続処理ライン内に一括に組み込まれたインライン型の画像形成装置として構成される。
【0102】
このように、実施の形態1における画像形成方法は印刷版を用いないため、連続処理ラインの外に設置していた印刷版の洗浄装置が不要となる。また、インキ転写工程を1回に低減できるため、アライメント精度を必要としないクリーナー板転写法を用いた転写ブランケット洗浄工程を装置内に組み込み、基板10の連続処理を行なうことが可能となる。
【0103】
このように構成された、この発明の実施の形態4における画像形成装置50によれば、生産タクトの短縮や装置フットプリントの低減を実現し、生産ラインの設備投資を大幅に低減することができる。
【0104】
なお、本実施の形態では、実施の形態1における画像形成方法の工程を実施するための画像形成装置50の構造について説明を行なったが、実施の形態2における画像形成方法を実施するための画像形成装置についても、インキ層形成機構部の設置場所を転写ブランケットにインキ材料を塗布可能な位置に変更することにより、画像形成装置50と同様に構成することができる。
【0105】
(実施の形態5)
図30は、この発明の実施の形態5における画像形成装置において、転写ブランケットの転写面を拡大して示す断面図である。本実施の形態における画像形成装置は、実施の形態4における画像形成装置50と比較して、基本的に同様の構造を備える。以下、重複する構造についてはその説明を繰り返さない。
【0106】
図30を参照して、本実施の形態における画像形成装置においては、インキに対して反撥性を有するインキ撥液部32と、インキに対して親和性を有するインキ親液部34とがパターニングされ、かつ、インキ親液部34がインキ撥液部32よりも凸形状となるように形成された転写面30aを有する転写ブランケット30が用いられる。
【0107】
転写ブランケット30に対向して基板10が位置決めされた状態で、インキ親液部34は、インキ撥液部32よりも、基板10の主表面10aに向けてより大きく突出するように形成されている。転写ブランケット30は、インキ撥液部32およびインキ親液部34がパターニングされ、平面状に延在するパターニング面30bを有する。パターニング面30bを基準としたインキ親液部34の高さTは、パターニング面30bを基準としたインキ撥液部32の高さTよりも大きい。
【0108】
図31は、図30中の転写ブランケットを用いた転写時の状態を示す断面図である。図31は、実施の形態1における図3に対応し、実施の形態2における図9に対応する図である。
【0109】
図31を参照して、本実施の形態では、転写面30a上にパターニングされたインキ親液部34がインキ撥液部32よりも凸形状となるよう形成されている。このため、インキ層20とインキ親液部34とが接する面20aに作用する圧力が、インキ層20とインキ撥液部32とが接する面に作用する圧力よりも高くなり、インキ親液部34とインキの密着力が大きくなる。これにより、実施の形態1における画像形成方法においては、図4中に示す工程時、インキ親液部34に接していたインキを基板10から転写ブランケット30により確実に転写させ、実施の形態2における画像形成方法においては、図10中に示す工程時、インキ親液部34に接していたインキをより確実に転写ブランケット30側に残留させることができる。
【0110】
また、インキ親液部34が有する凸形状部分によりインキ層20を押圧するため、インキ親液部34のエッジに相当する部分20bに物理的に大きな力が作用する。これにより、インキ親液部34に接する部分とインキ撥液部32に接する部分との間でインキが分断され易くなり、パターン精度を向上させることが可能となる。
【0111】
続いて、本実施の形態における画像形成装置による作用、効果を検証するために行なった第3実施例および第4実施例について説明する。
【0112】
図30中に示す転写ブランケット30を用い、第3実施例では、図1から図4中に示す画像形成方法の工程に従って画像パターンを形成し、第4実施例では、図7から図10中に示す画像形成方法の工程に従って画像パターンを形成した。その後、各実施例で得られた画像パターンのパターン線幅L/S、膜厚Tおよび表面平坦度をそれぞれ測定した。なお、使用するインキ材料、塗布膜厚および画像パターンの形成条件は、全て上記の第1実施例の場合と同様とした。
【0113】
測定の結果、第3実施例では、CF用インキ(緑)を用いた場合、パターン線幅L/Sは20±0.8μm、膜厚Tは1.2μmとなり、Agナノ粒子分散インキを用いた場合、パターン線幅L/Sは20±1.2μm、膜厚Tは1.0μmとなった。CF用インキ(緑)およびAgナノ粒子分散インキを用いた場合のいずれにおいても、表面平坦度は約0.1μm以下となった。
【0114】
また、第4実施例では、CF用インキ(緑)を用いた場合、パターン線幅L/Sは20±0.9μm、膜厚Tは1.2μmとなり、Agナノ粒子分散インキを用いた場合、パターン線幅L/Sは20±1.3μm、膜厚Tは1.2μmとなった。CF用インキ(緑)およびAgナノ粒子分散インキを用いた場合のいずれにおいても、表面平坦度は約0.1μm以下となった。
【0115】
実施の形態1および2における第1実施例、第2実施例の結果と、本実施の形態における第3実施例、第4実施例の結果との対比により、本実施の形態における画像形成装置によれば、得られる画像パターンのパターン線幅L/Sのばらつきがさらに小さくなることを確認できた。
【0116】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
10 基板、10a 主表面、20 インキ層、20a インキ層とインキ親液部とが接する面、20b インキ親液部のエッジに相当する部分、30 転写ブランケット、30a 転写面、32 インキ撥液部、34 インキ親液部、40 インキ展延シート、40a 展延面、50 画像形成装置、51 ステージ、53 レール、56 クリーナ板、57 粘着シート、70 押圧機構部、81 スリットダイコータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷基材の主表面にインキ層を形成する工程と、
インキに対して反撥性を有するインキ撥液部と、インキに対して親和性を有するインキ親液部とがパターニングされた転写面を有する転写ブランケットと、前記被印刷基板とを、前記インキ層を介して互いに接触させつつ押圧する工程と、
前記転写ブランケットと前記被印刷基材とを離間させることによって、前記インキ親液部に接していたインキを前記被印刷基材から前記転写ブランケットに転写させる工程とを備える、画像形成方法。
【請求項2】
前記主表面よりもインキに対して高い反撥性を有する展延面を有するインキ展延材を準備し、前記展延面にインキ層を形成する工程をさらに備え、
前記被印刷基材の主表面にインキ層を形成する工程は、前記展延面に形成されたインキ層を前記被印刷基材に転写する工程を含む、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
インキに対して反撥性を有するインキ撥液部と、インキに対して親和性を有するインキ親液部とがパターニングされた転写面を有する転写ブランケットを準備し、前記転写面にインキ層を形成する工程と、
前記転写ブランケットと被印刷基材とを、前記インキ層を介して互いに接触させつつ押圧する工程と、
前記転写ブランケットと前記被印刷基材とを離間させることによって、前記インキ撥液部に接していたインキを前記転写ブランケットから前記被印刷基材に転写させる工程とを備える、画像形成方法。
【請求項4】
前記転写面よりもインキに対して高い反撥性を有する展延面を有するインキ展延材を準備し、前記展延面にインキ層を形成する工程をさらに備え、
前記転写面にインキ層を形成する工程は、前記展延面に形成されたインキ層を前記転写ブランケットに転写する工程を含む、請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成方法によって製造された、画像パターン。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成方法を実施するための画像形成装置であって、
前記インキ撥液部および前記インキ親液部がパターニングされた前記転写面を有する前記転写ブランケットと、
インキ層を形成するためのインキ層形成機構部と、
前記転写ブランケットと被印刷基材とを押圧する押圧機構部と、
前記転写面を洗浄する洗浄機構部とを備える、画像形成装置。
【請求項7】
前記インキ撥液部は、シリコーン樹脂材料から形成される、請求項6に記載に画像形成装置。
【請求項8】
前記インキ撥液部は、フッ素化合物樹脂材料から形成される、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記インキ親液部は、前記インキ撥液部よりも前記転写面上で凸形状となるように形成されている、請求項6から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記洗浄機構部は、前記転写面に残されたインキ層を接着可能な粘着シートを有する、請求項6から9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
被印刷基材を、前記インキ層形成機構部および前記押圧機構部に順に搬送する搬送機構部をさらに備え、
前記洗浄機構部は、前記搬送機構部による被印刷基材の搬送ライン上で前記転写面を洗浄するように設けられる、請求項6から10のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2010−76426(P2010−76426A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136123(P2009−136123)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】