説明

画像形成方法および画像形成装置

【課題】定着の際のホットオフセットの発生の抑制とトナー画像におけるドキュメントオフセットの発生の抑制とを両立する。
【解決手段】感光体10と、帯電装置20と、露光装置12と、熱可塑性エラストマーを少なくとも含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤を貯留し且つ感光体10の表面に形成された静電潜像を液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置14と、転写装置の機能を有し且つ記録媒体上のトナー像に加熱および加圧を施して記録媒体に定着されたトナー画像を形成し更に該トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減する定着装置の機能を備えた転写定着ローラ28と、定着後にトナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減する残存量調整装置としての乾燥装置32と、を有する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現像剤としてキャリア液中にトナーが分散された液体現像剤を用いた電子写真方式の画像形成方法が行なわれている。該液体現像剤による画像形成において、様々は定着方法が試されてきた。
【0003】
例えば、ウェブ流れ方向において複数設置された電子写真印刷ユニット同士の間の位置に赤外線ヒータを設置し、ウェブの印刷ユニット間に位置する部分に前記赤外線ヒータから赤外線を照射してウェブのキャリア液の一部蒸発除去およびトナーの一部定着を行う電子写真印刷機が開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、少なくともトナー粒子を中間部材からコピーシートへ転写すると同時にトナー粒子を像の形状でコピーシートへ定着して原稿書類のコピーを作成する転写定着手段を備えた電子写真式印字機が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、現像器によって感光体ドラム表面に形成された可視像を、吹き付けノズルから供給される乾燥ガスによって乾燥し、さらに可視像中に残存するキャリア液を中間転写ローラ表面で蒸発させる湿式電子写真装置が開示されている(例えば特許文献3参照)。
また、画像支持体に転写されたトナー画像の粘弾性動的測定値が強制振動1Hz、振幅応力10Paで測定したときに、貯蔵弾性率が1.0E5Paから1.0E8Paの範囲で、かつ、損失弾性率が1.0E5Paから1.0E8Paとなるよう制御する粘弾性制御手段を備え、該粘弾性制御手段として、あらかじめ、上記の粘弾性動的測定値の条件を満たすトナー画像の温度を測定しておき、画像支持体である中間転写体にヒーターを内蔵し、このヒーターにより前記温度にトナー画像を加熱する液体電子写真装置が開示されている(例えば特許文献4参照)。
【0005】
また、液体現像方式を用いる画像出力装置において、液体現像剤が付着した出力媒体の表面に沿って、乾燥風が吹付・吸引されるようにした画像出力装置が開示されている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−033650号公報
【特許文献2】特許第2614865号明細書
【特許文献3】特許第3563023号明細書
【特許文献4】特開2004−333633号公報
【特許文献5】特開平06−130823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、定着の際のホットオフセットの発生の抑制とトナー画像におけるドキュメントオフセットの発生の抑制とが両立された画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、以下の発明により達成される。
請求項1に係る発明は、
静電潜像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、
前記静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を、熱可塑性エラストマーを少なくとも含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体上の前記トナー像に加熱および加圧を施して記録媒体に定着されたトナー画像を形成し且つ該トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減する定着工程と、
前記定着工程後に前記トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を前記第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減する残存量調整工程と、
を有する画像形成方法である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記残存量調整工程が、前記記録媒体に定着された前記トナー画像に対し該記録媒体の反対の面側から加熱を施す工程である請求項1に記載の画像形成方法である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
熱可塑性エラストマーを少なくとも含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤を貯留し且つ前記静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を前記液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体上の前記トナー像に加熱および加圧を施して記録媒体に定着されたトナー画像を形成し且つ該トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減する定着装置と、
前記定着後に前記トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を前記第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減する残存量調整装置と、
を有する画像形成装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記残存量調整装置が、前記記録媒体に定着された前記トナー画像に対し該記録媒体の反対の面側から加熱を施す装置である請求項3に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、熱可塑性エラストマーを含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤を用い、且つ定着工程においてトナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減し、該定着工程後の残存量調整工程において前記第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減するとの要件を満たさない場合に比べ、定着の際のホットオフセットの発生の抑制とトナー画像におけるドキュメントオフセットの発生の抑制とが両立された画像形成方法が提供される。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、残存量調整工程において記録媒体の反対側からトナー画像に加熱を施さない場合に比べ、定着されたトナー画像の溶融が抑制された画像形成方法が提供される。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、熱可塑性エラストマーを含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤を用い、且つ定着装置においてトナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減し、該定着装置による定着の後の残存量調整装置において前記第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減するとの要件を満たさない場合に比べ、定着の際のホットオフセットの発生の抑制とトナー画像におけるドキュメントオフセットの発生の抑制とが両立された画像形成装置が提供される。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、残存量調整装置において記録媒体の反対側からトナー画像に加熱を施さない場合に比べ、定着されたトナー画像の溶融が抑制された画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態の画像形成装置の別の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<画像形成方法および画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成方法は、静電潜像保持体の表面を帯電する帯電工程と、前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を、熱可塑性エラストマーを少なくとも含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体上の前記トナー像に加熱および加圧を施して記録媒体に定着されたトナー画像を形成し且つ該トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減する定着工程と、前記定着工程後に前記トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を前記第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減する残存量調整工程と、を有する。
【0019】
また本実施形態に係る画像形成装置は、静電潜像保持体と、前記静電潜像保持体の表面を帯電する帯電装置と、前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、熱可塑性エラストマーを少なくとも含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤を貯留し且つ前記静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を前記液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体上の前記トナー像に加熱および加圧を施して記録媒体に定着されたトナー画像を形成し且つ該トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減する定着装置と、前記定着後に前記トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を前記第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減する残存量調整装置と、を有する。
【0020】
液体現像剤を用いた電子写真方式の画像形成においては、形成されたトナー画像の耐折り曲げ性を向上させる観点で、熱可塑性エラストマーを含有するトナーを分散した液体現像剤を用いる。しかし、熱可塑性エラストマーはキャリア液の吸収性が高く、形成されたトナー画像においてキャリア液の残存量が増加し、記録媒体に定着された後のトナー画像中の結着樹脂成分が溶融し記録媒体の裏面あるいは他の印字物に付着し画像欠損となるドキュメントオフセットを引き起こすことがある。尚、記録媒体にトナーを定着する際の温度を上げてキャリア液の残存量を減少させる方法も考えられるが、その場合にはより高温となった定着部材に溶融したトナーが転移してしまいトナー画像の分断となるホットオフセットが生じることがある。
【0021】
これに対し、本実施形態に係る画像形成方法および画像形成装置では、熱可塑性エラストマーを少なくとも含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤を用いて画像形成を行なう態様において、トナー像の定着の際にトナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減し、且つ、該定着の後に前記トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を前記第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減する。定着の際にはトナー画像中のキャリア液の残存量を下げ過ぎないことにより可塑化効果が得られるため、定着部材の温度をより上げずとも良好に定着が行われて低温定着性が得られ、且つホットオフセットの発生が効果的に抑制される。また、定着の後さらにトナー画像中のキャリア液の量を低減させることにより、最終的に得られたトナー画像において結着樹脂成分の溶融により引き起こされるドキュメントオフセットが抑制され、高い画像耐久性が実現される。
【0022】
−第一および第二の残存量−
尚、記録媒体上のトナー像に加熱および加圧を施す定着工程(定着装置)では、トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量(第一の残存量)を、トナーの全量に対し15質量%以上の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで、より効果的にホットオフセットの発生が抑制される。
【0023】
また、定着後の残存量調整工程(残存量調整装置)では、トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量(第二の残存量)を、トナーの全量に対し12質量%以下の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで、最終的に得られたトナー画像においてより効果的にドキュメントオフセットの発生が抑制される。
【0024】
−キャリア液の残存量の測定−
尚、トナー画像中のキャリア液の残存量は、島津製作所製TGA−50を用いて熱分析を行うことで測定する。より具体的には、トナーを25℃から500℃の範囲で10℃/minの変化率で加熱していき、その前後での質量を測定することでトナー中に含まれる残存キャリア液の量を算出し、トナー質量に対する質量比として算出する。
【0025】
以下、本実施形態に係る画像形成方法および画像形成装置の構成について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
画像形成装置100は、感光体(静電潜像保持体)10、帯電装置20、露光装置(潜像形成装置)12、現像装置14、中間転写体16、クリーナ18、転写定着ローラ(転写および定着を兼ねた転写定着装置)28、乾燥装置(残存量調整装置)32を含んで構成される。感光体10は円柱形状を有し、前記感光体10の外周に、帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、およびクリーナ18が順次に設けられ、中間転写体16に転写されたトナー像26が用紙(記録媒体)30に転写され且つ定着される位置に転写定着ローラ28が設けられ、更に用紙30の進行方向の転写定着ローラ28よりも下流側に乾燥装置(残存量調整装置)32が設けられる。
以下、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0027】
帯電装置20が感光体10の表面を予め定められた電位に帯電させ、帯電された表面を画像信号に基づき、露光装置12が、例えばレーザ光線によって露光して静電潜像を形成する。
現像装置14は、現像ローラ14aと現像剤収納容器14bとを含んで構成される。現像ローラ14aは、現像剤収納容器14bに収納される液体現像剤24に一部が浸るようにして設けられる。液体現像剤24は、キャリア液に熱可塑性エラストマーを含むトナー粒子が分散されてなる。
液体現像剤24中では、トナー粒子は分散されているが、例えば液体現像剤24を、さらに現像剤収納容器14b内に設けられる攪拌部材によって攪拌してもよい。
【0028】
現像ローラ14aに供給された液体現像剤24は、規制部材によって一定の供給量に制限された状態で感光体10に搬送され、現像ローラ14aと感光体10とが近接(あるいは接触)する位置で静電潜像に供給される。これによって静電潜像は顕像化されてトナー像26となる。
【0029】
現像されたトナー像26は、図の矢印B方向に回転する感光体10に搬送され、用紙(記録媒体)30に転写されるが、本実施形態では、用紙30に転写する前に、記録媒体へ転写すると共に定着を行うため、一旦中間転写体16にトナー像を転写する。このとき、感光体10および中間転写体16間に周速差を設けてもよい。
【0030】
次いで、中間転写体16により矢印C方向に搬送されたトナー像は、転写定着ローラ28との接触位置において用紙30に転写されると共に定着される。
転写定着ローラ28は、中間転写体16と共に用紙30を挟んでトナー像26を加圧し、中間転写体16上のトナー像を用紙30に密着させる。これによって用紙30にトナー像を転写し、用紙上にトナー像が定着され、トナー画像29となる。尚、トナー像26の定着は、転写定着ローラ28に発熱体を設けて加圧および加熱を施すにより行う。
【0031】
中間転写体16が図1に示すようにローラ形状であれば、転写定着ローラ28とローラ対を構成するため、中間転写体16、転写定着ローラ28が各々定着装置における定着ローラ、対向ローラに準じた構成となって定着機能を発揮する。すなわち、用紙30が前記ニップを通過する際、トナー像が転写されると共に転写定着ローラ28により中間転写体16に対して加熱および加圧され、トナー像を構成するトナー粒子中の結着樹脂が軟化すると共に、トナー像が用紙30の繊維中に浸潤して、用紙30に定着されたトナー画像29が形成される。
【0032】
尚、転写定着ローラ28によってトナー像26を用紙30に定着する際、本実施形態では、定着されたトナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減する。該第一の残存量としては、前述の通りトナーの全量に対し15質量%以上の範囲とすることが好ましい。定着温度は、通常120℃以上200℃以下の範囲で調整され、この定着温度の調整によって前記第一の残存量が調整される。
【0033】
尚、本実施形態では用紙30への転写と共に定着を行っているが、転写工程と定着工程とを別々として、転写を行った後に定着を行ってもよい。この場合には、感光体10からトナー像を転写する転写ローラが、中間転写体16に準じた機能を有することとなる。
【0034】
転写定着ローラ28の用紙30進行方向下流には乾燥装置(残存量調整装置)32が設けてある。乾燥装置32は、板状の加熱装置であり表面が金属でなる板状体の内部にはヒータが設けてある。乾燥装置32の位置で用紙30は乾燥され、その後図示しない排出部まで搬送される。
【0035】
尚、乾燥装置(残存量調整装置)32では、トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第二の残存量にまで低減する。該第二の残存量としては、前述の通りトナーの全量に対し12質量%以下の範囲とすることが好ましい。乾燥の際の温度は、100℃以上200℃以下の範囲で調整することが好ましく、この温度および乾燥の時間の調整によって前記第二の残存量が調整される。
【0036】
一方、中間転写体16にトナー像26を転写した感光体10では、転写残トナー粒子クリーナ18との接触位置まで運ばれ、クリーナ18によって回収される。なお、転写効率が100%に近く、残留トナーが問題とならない場合は、クリーナ18は設けなくともよい。
画像形成装置100は、さらに、転写後かつ次の帯電までに感光体10の表面を除電する除電装置(図示せず)を備えていてもよい。
画像形成装置100に備えられる帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、転写定着ローラ28、クリーナ18、および、乾燥装置32は、すべて感光体10の回転速度と同期をとって動作されている。
【0037】
次いで、本実施形態に係る別の態様の画像形成装置について、図を用いて詳述する。
【0038】
図2は、本実施形態に係る別の態様の画像形成装置の一例を示す概略構成図であり、タンデム方式の画像形成装置を示す図である。
図2に示す画像形成装置は、シアン現像ユニット101−C、マゼンタ現像ユニット101−M、イエロー現像ユニット101−Y、黒現像ユニット101−Kを有する。各現像ユニットは、現像剤タンク102、現像剤供給ロール103、供給量規制手段104、現像ロール(現像装置)105、現像ロールクリーナ106、感光体(静電潜像保持体)107、帯電装置108、露光装置(潜像形成装置)109、一次転写装置110、および感光体クリーナ111を有する。また、4つの各現像ユニットの感光体107それぞれに接するよう中間転写体125が設けられ、更に中間転写体125に転写されたトナー像を用紙(記録媒体)127に転写する二次転写装置124、126が設けられる。用紙127の進行方向の二次転写装置124、126よりも下流側には定着ユニット(定着装置)131が設けられ、更に定着ユニット131の下流側には乾燥装置(残存量調整装置)135が設けられる。
【0039】
液体現像剤112は、図示しない現像剤循環手段により現像剤タンク102中において定められた量が維持され、現像剤供給ロール103によって現像剤タンク102から現像ロール105まで搬送される。現像剤供給ロール103は、表面を帯電させ静電的な力で現像剤を付着させる方式や、ロールに溝や凹みを設けて液体をくみ出すように搬送する方式等があり、供給量規制手段104によって搬送量を定められた値になるよう規制する。感光体107は、表面が定められた帯電バイアス量になるよう帯電装置108で帯電され、図示しないホストコンピュータから送られた画像信号に伴い露光装置109からの光ビームにより表面に静電潜像が形成される。現像ロール105上の液体現像剤は、静電潜像に従い感光体107に転移してトナー像が形成され、不要な現像剤は、現像ロールクリーナ106と図示しない現像剤循環手段によって現像剤タンク102に戻される。
【0040】
感光体107上に形成されたトナー像は、一次転写装置110によって中間転写体125に転写される。尚、中間転写体125は、駆動ロール121と支持ロール122、123、二次転写装置124によって支持され、駆動ロール121は図示しない駆動モータと動力伝達機構によって矢印方向に中間転写体125を駆動し、さらに図示しないバネ機構によって定められた張力を中間転写体125に与える。一次転写装置110は、静電力、圧力によってシアン・マゼンタ・イエロー・黒のトナー像を順次中間転写体125に転写していく。各色の一次転写装置110では設定電位に差をつけてもよい。感光体107上に残った液体現像剤は感光体クリーナ111で除去される。
【0041】
中間転写体125に転写されたトナー像は、二次転写装置124、126によって用紙(記録媒体)127に転写され、さらに定着ユニット131にて定着される。定着ユニット131は、ヒートロール132、プレッシャーロール133のロール対と各ロール内部に設けたヒータ134を備える。ヒートロール132、プレッシャーロール133は、金属ロールに弾性ゴム層、およびトナー離型のための離型層を形成し、定められた圧力とニップ幅が得られるように図示しない加圧機構によって用紙127を挟み込んでいる。
【0042】
尚、定着ユニット131によってトナー像を用紙127に定着する際、本実施形態では、定着されたトナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減する。該第一の残存量としては、前述の通りトナーの全量に対し15質量%以上の範囲とすることが好ましい。定着温度は、通常120℃以上200℃以下の範囲で調整され、この定着温度の調整によって前記第一の残存量が調整される。
【0043】
定着ユニット131の下流には乾燥装置(残存量調整装置)135が設けてある。乾燥装置135は、金属ロールの表面に離型層を形成した構成を有し、金属ロールの内部にはヒータが設けてある。乾燥装置135の位置で用紙127はロールに巻きつくよう経路をたどって図示しない排出部まで搬送される。
【0044】
尚、乾燥装置(残存量調整装置)135では、トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第二の残存量にまで低減する。該第二の残存量としては、前述の通りトナーの全量に対し12質量%以下の範囲とすることが好ましい。乾燥の際の温度は、100℃以上200℃以下の範囲で調整することが好ましく、この温度の調整によって前記第二の残存量が調整される。
【0045】
尚、前述の図1における乾燥装置(残存量調整装置)32、および前記図2における乾燥装置(残存量調整装置)135に示すごとく、残存量調整装置として接触して加熱する態様の乾燥装置を用いる場合には、用紙(記録媒体)の反対の面側から接触させ加熱することが望ましい。
また、残存量調整装置として、図1では板状の加熱装置を、図2ではロール状の加熱装置を示したが、これに限定されるものではなく、乾燥風を吹き付ける送風装置や、赤外光を照射する照射装置等を適用してもよい。
【0046】
ついで、本実施形態に係る画像形成方法および画像形成装置に用いられる液体現像剤について説明する。
【0047】
〔液体現像剤〕
該液体現像剤は、熱可塑性エラストマーを少なくとも含有するトナーがキャリア液中に分散されてなる。尚、さらに熱可塑性エラストマー以外の結着樹脂、着色剤、ワックス、電荷制御剤、シリカ粉末、金属酸化物など他の添加剤を含有していてもよい。これら添加剤は、結着樹脂に混練するなどして内添してもよいし、粒子としてトナーを得たのち混合処理を施すなどして外添してもよい。なお、通常、着色剤を含むが、透明のトナーとする場合は、着色剤を含まなくてもよい。
【0048】
〔トナー粒子〕
−熱可塑性エラストマー−
本実施形態のトナー粒子に含まれる熱可塑性エラストマーは、例えば、常温(25℃)においてゴムの性質を有し、高温において熱可塑性プラスチックと同じく軟化する性質を有するものが挙げられる。該熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸nブチル−ポリメタクリル酸メチルブロック共重合体、ポリメタクリル酸メチル−ポリメタクリル酸ドデシル−ポリメタクリル酸メチルブロック共重合体、ポリメタクリル酸メチル−ポリメタクリル酸2エチルヘキシル−ポリメタクリル酸メチルブロック共重合体、ポリメタクリル酸メチル−ポリメタクリル酸ラウリル−ポリメタクリル酸メチルブロック共重合体等が挙げられる。
【0049】
また、スチレン系の熱可塑性エラストマーとして、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリブタジエン/ブチレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−水添ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリスチレン−水添ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−水添ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレン等が挙げられる。
【0050】
上記熱可塑性エラストマー樹脂の重量平均分子量としては、例えば、3万以上30万以下の範囲が挙げられる。
【0051】
トナー粒子における熱可塑性エラストマーの含有率は、全結着樹脂中で10質量%以上であることが望ましく、一方50質量%以下であることがより望ましい。
【0052】
−結着樹脂−
本実施形態のトナー粒子に含まれる結着樹脂としては、まずアクリル系熱可塑性樹脂が挙げられる。該アクリル系熱可塑性樹脂としては、メタクリル酸エステル単量体の重合体やアクリル酸エステル単量体の重合体を構成単位として含有するビニル系共重合体が挙げられる。以下、「(メタ)アクリル」とはアクリルまたはメタクリルのいずれかまたは両方であることを意味する。
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの他、アクリル酸2−クロルエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、ビスグリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェートなどが挙げられる。中でも、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等が望ましく用いられる。
【0053】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外に、その他のビニル系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸およびそのα−またはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、等の不飽和ジカルボン酸およびそのモノエステル誘導体またはジエステル誘導体;コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド等が使用されてもよい。
また、スチレン系単量体との共重合体を使用してもよく、樹脂全体の10質量%以内で使用することが望ましい。
【0054】
上記ビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万以上50万以下が望ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)は2以上20以下が望ましい。
【0055】
トナー粒子に含まれる上記以外の結着樹脂としては、公知の結着樹脂が挙げられる。例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン等が挙げられる。
【0056】
トナー粒子における熱可塑性エラストマー以外の結着樹脂の含有率は、全結着樹脂中で50質量%以上90質量%以下であることが望ましい。
【0057】
着色剤としては、公知の顔料または染料が用いられる。具体的には、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各顔料が用いられる。
【0058】
イエローの顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
マゼンタの顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。
シアンの顔料としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用される。
黒の顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、鉄黒等が用いられる。
【0059】
ワックスとしては、特に制限はなく、例えば、カルナバワックス、木蝋、米糠蝋等の植物性ワックス;蜜ワックス、昆虫ワックス、鯨ワックス、羊毛ワックスなどの動物性ワックス;モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物性ワックス、エステルを側鎖に有するフィッシャートロプシュワックス(FTワックス)、特殊脂肪酸エステル、多価アルコールエステル等の合成脂肪酸固体エステルワックス;パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物等の合成ワックス;などが挙げられる。ワックスは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0060】
電荷制御剤としては、特に制限はなく、従来公知の電荷制御剤が使用される。例えば、ニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、カルボキシル基含有脂肪酸変性ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、アミン系化合物、アミド系化合物、イミド系化合物、有機金属化合物等の正帯電性電荷制御剤;オキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、金属錯塩染料やサリチル酸誘導体等の負帯電性電荷制御剤;などが挙げられる。電荷制御剤は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0061】
金属酸化物としては、特に制限はなく、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、アクリル系熱可塑性エラストマーとアクリル系熱可塑性樹脂以外の成分は、50質量%以下であることが望ましい。
【0062】
−トナー粒子の製造方法−
本実施形態のトナー粒子を製造する方法は特に限定されず、例えば、粉砕トナー、液中乳化乾燥トナー、もしくは重合トナーの製造方法で製造したトナーをキャリア液中で微粉砕して得られる。
例えば、熱可塑性エラストマーを含む結着樹脂、着色剤、必要に応じて、他の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合装置に投入して混合し、この混合物を二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミル、ニーダー等で溶融混練した後、ドラムフレーカー等で冷却し、ハンマーミル等の粉砕機で粗粉砕し、さらにジェットミル等の粉砕機で微粉砕した後、風力分級機等を用いて分級することにより、粉砕トナーが得られる。
【0063】
また、熱可塑性エラストマーを含む結着樹脂、着色剤、必要に応じて、他の添加剤を酢酸エチル等の溶剤に溶解し、炭酸カルシウムのごとき分散安定剤が添加された水中に乳化/懸濁し、溶剤を除去した後、分散安定剤を除去して得られた粒子を濾過・乾燥することによって液中乳化乾燥トナーが得られる。
【0064】
また、結着樹脂を形成する重合性単量体、着色剤、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、イソプロピルパーオキシカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、2,4−ジクロリルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等)および他の添加剤などを含有する組成物を水相中に攪拌下で加えて造粒し、重合反応後、粒子を濾過・乾燥することによって重合トナーが得られる。
【0065】
トナーを得る際の各材料(熱可塑性エラストマーを含む結着樹脂、着色剤、その他の添加剤など)の配合割合は、要求される耐折り曲げ特性、耐引っ掻き特性、低温定着性、色などを考慮して設定すればよい。得られたトナーは、ボールミル、ビーズミル、高圧湿式微粒化装置等の公知の粉砕装置を用いて、キャリアオイル中で微粉砕することにより本実施形態の液体現像剤用トナー粒子が得られる。
【0066】
トナー粒子の体積平均粒径D50vは、0.5μm以上5.0μm以下であることが望ましい。トナー粒子の体積平均粒径D50vは、0.8μm以上4.0μm以下であることがより望ましく、1.0μm以上3.0μm以下であることが更に望ましい。
【0067】
トナー粒子の体積平均粒径D50v、数平均粒度分布指標(GSDp)、体積平均粒度分布指標(GSDv)等は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置、例えば、LA920(堀場製作所社製)を用いて測定される。粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒子径を体積D16v、数D16p、累積50%となる粒子径を体積D50v、数D50p、累積84%となる粒子径を体積D84v、数D84pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0068】
[キャリア液]
キャリア液は、トナー粒子を分散させるための絶縁性の液体であり、特に制限はないが、例えば、パラフィンオイル等の脂肪族系炭化水素溶媒(市販品では、松村石油社製モレスコホワイトMT−30P、モレスコホワイトP40、モレスコホワイトP70、エクソン化学社製アイソパーL、アイソパーMなど)、ナフテン系オイル等の炭化水素系溶媒(市販品では、エクソン化学社製 エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130、日本石油化学社製 ナフテゾールL、ナフテゾールM、ナフテゾールH、Newナフテゾール160、Newナフテゾール200、Newナフテゾール220、NewナフテゾールMS−20Pなど)が挙げられ、それらの中に、トルエン等の芳香族化合物を含有させてもよい。
【0069】
尚、キャリア液の引火点としては50℃以上180℃以下であることが好ましく、更には70℃以上140℃以下であることがより好ましい。
上記引火点は、JIS K 2265−4(2007年)により測定される。
【0070】
本実施形態の液体現像剤に含まれるキャリア液は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。キャリア液を2種以上の混合系として用いる場合は、例えば、パラフィン系溶剤と植物油との混合系や、シリコーン系溶剤と植物油との混合系が挙げられ、パラフィン系溶剤と植物油との混合系であることが望ましい。
【0071】
キャリア液は、各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等を含んでいてもよい。
【0072】
[液体現像剤の製造方法]
液体現像剤は、既述のトナー粒子とキャリア液とを、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ビーズミル等の分散機を用いて混合し、粉砕して、トナー粒子をキャリア液中に分散することにより得られる。
なお、トナー粒子のキャリア液中への分散は分散機に限られず、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ分散してもよいし、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散してもよいし、超音波によって分散してもよい。
【0073】
キャリア液中のトナー粒子の濃度は、0.5質量%以上40質量%以下の範囲とすることが望ましく、1質量%以上30質量%以下の範囲とすることがより望ましい。
【0074】
その後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミおよび粗大粒子を除去してもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、下記の実施例は、本発明を制限するものではない。
【0076】
−実施例1−
<現像剤の作製>
スチレンアクリル樹脂(藤倉化成(株)製FSR−051、重量平均分子量38万)60質量部にシアン顔料C.I.ピグメントブルー15:3(クラリアント(株)製)40質量部を加え、加圧ニーダーで混練した。この混練物を粗粉砕して、シアン顔料マスターバッチを作製した。
【0077】
次に以下の組成の混合物をバンバリミキサーで混練した。
・上記シアン顔料マスターバッチ:25質量部
・スチレンアクリル樹脂
(藤倉化成(株)製FSR−053、重量平均分子量32万、酸価10):57質量部
・スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製「SOE−L605」、
スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加品):18質量部
以上の混練物をジェットミルで粉砕し、分級して平均粒径16μmのシアントナー1を得た。このシアントナー1:15質量部に、難揮発性のパラフィンオイル(松村石油(株)製、モレスコホワイトP40、引火点:130℃)85質量部の混合物をボールミルで微粉砕して平均粒径1.1μmの液体現像剤1を得た。
【0078】
<未定着画像の作製>
上記液体現像剤1を用い、画像単位面積当たりのトナー量が4g/mになるようテフロン(登録商標)フィルター(Millipore社製PTFE Membraneフィルター(孔径0.2μm、JGWP04700))上に濾過した後、王子製紙製OKトップコート+127gsmにトナー像を形成した。
【0079】
<定着画像、最終トナー画像の作製>
・定着工程
直径50mmのロール対を有する定着装置を用いて定着画像を作製した。各定着ロールは、ステンレス製の芯金の表面に厚さ5mm、ゴム硬度50度(JIS−A)のシリコーンゴムを形成し、厚さ30μmのフッ素樹脂(PFA)層で被覆されている。各ロールの内部にはハロゲンヒータが設けられ、ロール表面温度を加熱制御する。このロール対を最大圧力が0.3MPa、ニップ幅が10mmになるように加圧機構により荷重を調整し、速度384mm/sで駆動しているときに上記未定着像をロール間に挿入し、定着画像を得た(尚、定着温度については後述する)。
【0080】
・残存量調整工程
図1に示す板状の加熱装置を乾燥装置としてを用い、第二の残存量が下記表1に示す量となるよう乾燥の際の温度および乾燥の時間を調整して、上記定着画像に加熱を施し乾燥させた。
【0081】
<キャリア液の残存量の測定>
前記定着画像におけるキャリア液の残存量(第一の残存量)、および前記最終トナー画像におけるキャリア液の残存量(第二の残存量)を、それぞれ前述の島津製作所製TGA−50を用いた熱分析による方法によって測定した。
【0082】
<定着画像、最終トナー画像の評価>
・定着温度
前記定着工程での定着温度は、グロス測定装置としてBYK−Gardner社製Micro−TRI−Glossで60°を用いて測定された画像グロスが20となるときの温度に設定した。この定着温度を元に以下評価基準で評価を行なった。
○:145℃以下
△:145℃を超え160℃以下
×:161℃を超える
【0083】
・ホットオフセット
前記定着工程で、定着部材に溶融したトナーが転移しトナー画像の分断が生じるホットオフセットが発生しているか否かを目視にて確認し、以下の評価基準で評価した。
○:画像の定着工程より下流側の用紙にて画像の付着が確認されない
×:画像の定着工程より下流側の用紙に画像の付着がある
【0084】
・耐折り曲げ強度
前記最終トナー画像が形成された面を内側にして用紙を折り曲げ、折り曲げた部分を軽く拭きとった後の画像の破壊具合を観察して、以下の評価基準により評価した。
○:剥れがないか、軽微で不連続な画像の剥がれがある
△:不連続な破損がある
×:連続した破損がある
【0085】
・ドキュメントオフセット
前記最終トナー画像が形成された用紙サンプル2枚を用い、50℃50%RH環境にて画像面同士を400Paの圧力で押しつけ、1週間放置した後にサンプルを剥がした時の画像の劣化具合を観察して、以下の評価基準により評価した。
○:画像劣化なし
△:軽微な画像剥がれが見られる
×:著しい画像剥がれが見られる
【0086】
・総合評価
前記定着温度、ホットオフセット、耐折り曲げ強度、ドキュメントオフセットの4項目での評価結果に基づき、以下の評価基準で評価した。
○:4項目で「○」評価
△:3項目で「○」、1項目で「△」評価
×:1項目でも「×」評価がある
【0087】
[実施例2]
実施例1において混合するキャリア液を「モレスコホワイトP40」から「エクソン化学社製アイソパーM(引火点92℃)」に変更した以外は、実施例1に記載の方法により液体現像剤を調製し、定着画像、最終トナー画像を作製して評価を行なった。
【0088】
[比較例1]
実施例1において「残存量調整工程」を行わなかったこと以外、実施例1に記載の方法により液体現像剤を調製し、定着画像を作製して評価を行なった。
【0089】
[比較例2]
実施例2において「残存量調整工程」を行わなかったこと以外、実施例2に記載の方法により液体現像剤を調製し、定着画像を作製して評価を行なった。
【0090】
[比較例3]
比較例1において、定着工程後における第一の残存量が下記表1の量となるよう定着温度を調整したこと以外、比較例1に記載の方法により液体現像剤を調製し、定着画像を作製して評価を行なった。
【0091】
[比較例4]
比較例2において、定着工程後における第一の残存量が下記表1の量となるよう定着温度を調整したこと以外、比較例2に記載の方法により液体現像剤を調製し、定着画像を作製して評価を行なった。
【0092】
【表1】

【0093】
定着工程後に残存量調整工程を設けていない比較例1,2では、ホットオフセットの発生は抑制されているもののドキュメントオフセットが発生していた。
一方、定着工程後に残存量調整工程を設けておらず且つ定着の際の温度を比較例1,2よりも高温とした比較例3,4では、ドキュメントオフセットの発生は抑制されているもののホットオフセットが発生していた。
これに対し、残存量調整工程を設けた実施例1,2では、ホットオフセットの発生は抑制され、且つドキュメントオフセットの発生も抑制されることが分かった。
【符号の説明】
【0094】
10 感光体(静電潜像保持体)
12 露光装置(潜像形成装置)
14 現像装置
16 中間転写体
18 クリーナ
20 帯電装置
24 液体現像剤
26 トナー像
28 転写定着ローラ(転写および定着を兼ねた転写定着装置)
29 トナー画像
30 用紙(記録媒体)
32 乾燥装置(残存量調整装置)
100 画像形成装置
101−C シアン現像ユニット
101−M マゼンタ現像ユニット
101−Y イエロー現像ユニット
101−K 黒現像ユニット
102 現像剤タンク
103 現像剤供給ロール
104 供給量規制手段
105 現像ロール
106 現像ロールクリーナ
107 感光体(静電潜像保持体)
108 帯電装置
109 露光装置(潜像形成装置)
110 一次転写装置
111 感光体クリーナ
112 液体現像剤
121 駆動ロール
122 支持ロール
124,126 二次転写装置
125 中間転写体
127 用紙(記録媒体)
131 定着ユニット(定着装置)
132 ヒートロール
133 プレッシャーロール
134 ヒータ
135 乾燥装置(残存量調整装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、
前記静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を、熱可塑性エラストマーを少なくとも含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体上の前記トナー像に加熱および加圧を施して記録媒体に定着されたトナー画像を形成し且つ該トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減する定着工程と、
前記定着工程後に前記トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を前記第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減する残存量調整工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項2】
前記残存量調整工程が、前記記録媒体に定着された前記トナー画像に対し該記録媒体の反対の面側から加熱を施す工程である請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
熱可塑性エラストマーを少なくとも含有するトナーがキャリア液中に分散された液体現像剤を貯留し且つ前記静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を前記液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体上の前記トナー像に加熱および加圧を施して記録媒体に定着されたトナー画像を形成し且つ該トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を第一の残存量にまで低減する定着装置と、
前記定着後に前記トナー画像中に含まれるキャリア液の残存量を前記第一の残存量よりも低い第二の残存量にまで低減する残存量調整装置と、
を有する画像形成装置。
【請求項4】
前記残存量調整装置が、前記記録媒体に定着された前記トナー画像に対し該記録媒体の反対の面側から加熱を施す装置である請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−72893(P2013−72893A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209664(P2011−209664)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】