説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】記録材料への低揮発性キャリア液の残存を抑制して、転写性を向上させるとともに裏写りを防止する、画像形成方法及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】低揮発性のキャリア液を用いた湿式現像剤を用いて現像したトナー像を記録媒体上に転写し定着させる画像形成方法であって、トナー像を記録媒体上に転写する前に、上記記録媒体表面に樹脂エマルジョン液を付与し、該樹脂エマルジョン液の溶媒成分を除去して樹脂層を形成させる。また、画像形成装置は、少なくとも、記録媒体表面に樹脂エマルジョン液を付与する付与手段を有し、トナー像を記録媒体上に転写する前に記録媒体表面に樹脂層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複写機、プリンタ、デジタル印刷機等の湿式電子写真方式を用いた画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成においては、一般的には、感光体等の静電潜像担持体に原稿画像や画像データに応じた画像露光をする等して静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して可視トナー像とし、そのトナー像を記録材に転写定着させて目的とする画像を得ている。
【0003】
湿式現像法では、電気絶縁性の分散媒(キャリア液)中に、顔料とバインダー樹脂を主要成分とするトナー粒子及び荷電制御剤、分散安定剤等を分散させた湿式現像剤が用いられている。湿式現像剤に用いるトナー粒子は、大気中に逃散する恐れがないため、微細にすることができ、平均粒径がサブミクロンのものも実用可能である。そのため、高解像度を有する画像が得られる、階調性に優れる等の利点を有している。さらに、近年、環境に配慮し、揮発性のキャリア液に代わり、低揮発性のキャリア液を用いた湿式現像剤の開発が進められている。
【0004】
しかし、低揮発性のキャリア液を用いた場合、キャリア液が揮発しにくいため、記録材料にキャリア液が残存し、転写性が低下し、また裏写りが発生するという問題がある。ここで、裏写りとは画像形成面の裏面から画像が透けて見える現象を指す。特に吸液性の高い上質紙(セルロースを主成分とする記録紙)に対しては、裏写りが顕著に起こる。これを解決するためには、液を揮発させれば良いが、低揮発性のキャリア液の沸点は100℃度以上(引火点は70℃以上)あり、揮発させるために莫大なエネルギーが必要となる。また、吸液性の低い記録材料を選択したり、吸液性の低い印字材料を選択することも考えられるが、記録材料や印字材料が制限されるという問題がある。
【0005】
これに対し、特許文献1には、多孔質弾性体を転写紙上に形成されたトナー像に接触させてキャリア液を除去する方法が提案されている。また、特許文献2には、記録媒体上の未定着画像に対して非接触で未定着画像の加熱を行う非接触加熱手段と、その非接触加熱手段の加熱により析出したキャリア液から除去する溶媒除去手段とを有する画像定着装置を用いる方法が提案されている。
【特許文献1】特開平8−16004号公報
【特許文献2】特開2003−98864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、浸透性の高い上質紙では内部にまでキャリア液が浸透するため、キャリア液を十分に除去できず、また、多孔質弾性体を直接記録媒体に接触させるため、画像が乱れるおそれがあるという問題がある。また、特許文献2の方法では、浸透性の高い上質紙では内部にまでキャリア液が浸透するため、キャリア液を十分に除去できないという問題がある。
【0007】
以上の通り、未だ、低揮発性のキャリア液を用いた場合に記録材料にキャリア液が残存し、転写性を低下させたり、裏写りを発生させるという問題に対し、十分な解決策が見出されていないのか現状である。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解決し、記録材料への低揮発性キャリア液の残存を抑制して、転写性を向上させるとともに裏写りを防止する、画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成方法は、低揮発性のキャリア液を用いた湿式現像剤を用いて現像したトナー像を記録媒体上に転写し定着させる画像形成方法であって、トナー像を記録媒体上に転写する前に、上記記録媒体表面に樹脂エマルジョン液を付与し、該樹脂エマルジョン液の溶媒成分を除去して樹脂層を形成させることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、上記樹脂エマルジョン液の溶媒成分を、記録媒体表面に浸透させて除去することが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、上記該樹脂エマルジョン液の溶媒成分を、加熱して除去することもできる。
【0012】
また、本発明においては、上記樹脂エマルジョン液の溶媒成分を、吸液して除去することもできる。
【0013】
また、本発明の方法においては、上記樹脂エマルジョン液はO/W型エマルジョンであることが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、上記樹脂エマルジョン液の樹脂粒子がウレタン樹脂からなることが好ましい。
【0015】
また、本発明においては、上記樹脂エマルジョン液の樹脂粒子のガラス転移点が30℃以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、上記樹脂エマルジョン液の固形分濃度が20重量%以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明においては、上記樹脂エマルジョン液の樹脂粒子の粒径が1μm以下であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の画像形成装置は、低揮発性のキャリア液を用いた湿式現像剤を用いて現像したトナー像を記録媒体上に転写し定着させる画像形成方法に用いる画像形成装置であって、少なくとも、記録媒体表面に樹脂エマルジョン液を付与する付与手段を有し、トナー像を記録媒体上に転写する前に記録媒体表面に樹脂層を形成するようにしたことを特徴とする。
【0019】
本発明の装置においては、記録媒体表面からキャリア液を除去する除去手段を有し、その除去手段に加熱手段又は吸液手段を用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トナー像を記録媒体上に転写する前に、記録媒体表面にキャリア液の浸透を防止する樹脂層を設けるようにしたので、トナー像を記録媒体上に転写する際にキャリア液が記録媒体中に浸透することなく転写することが可能となる。これにより、転写性を向上させるとともに裏写りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の画像形成方法は、低揮発性のキャリア液を用いた湿式現像剤を用いて現像したトナー像を記録媒体上に転写し定着させる湿式現像方法であって、トナー像を記録媒体上に転写する前に、上記記録媒体表面に樹脂エマルジョン液を付与し、該樹脂エマルジョン液の溶媒成分を除去して樹脂層を形成させることを特徴とするものである。
【0022】
実施の形態1.
<現像剤>
本発明に用いる湿式現像剤は、少なくともキャリア液、着色微粒子(トナー粒子)、分散剤から構成される。キャリア液は、低揮発性で誘電率が3以下の電気的絶縁性が高い溶媒を用いることができる。例えば、炭化水素系(流動パラフィン)、シリコンオイル、動植物油、鉱物油等を挙げることができるが、流動パラフィンが好ましい。なお、本発明において低揮発性の溶媒とは、引火点が70℃以上のものをいう。
【0023】
本発明に用いるトナー粒子は少なくとも着色剤とバインダー樹脂とを含むものである。
バインダー樹脂には熱可塑性のポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂はシャープメルト性を有し、保管安定性と定着性の両立を図りやすいからである。
【0024】
ポリエステル樹脂は多塩基酸と多価アルコールの重縮合によって得ることができる。
多塩基酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びその酸無水物、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。
【0025】
多価アルコールとしては、これに限定されるものではないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール等のプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、4−ブタンジオール等のブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1、6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール(脂肪族グリコール)及びこれらのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール等のビスフェノール類及びこれらのアルキレンオキサイド付加物のフェノール系グリコール類、単環或いは多環ジオール等の脂環式及び芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0026】
以上の多塩基酸と多価アルコールを重縮合することにより所望のポリエステル樹脂を重合する。重縮合の方法としては、通常公知の重縮合の方法を用いることができる。原料モノマーの種類によっても異なるが、一般的には150℃〜300℃程度の温度下で行う。また、雰囲気ガスとして不活性ガスを用いたり、各種の溶媒を使用したり、反応容器内圧力を常圧又は減圧にする等、任意の条件で行うことができる。反応促進のためにエステル化触媒を用いてもよい。エステル化触媒としては、テトラブチルジルコネート、ジルコニウムナフテネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、3/1しゅう酸第1スズ/酢酸ナトリウムのような金属有機化合物等を使用できるが、生成物であるエステルを着色しないものが好ましい。また、アルキルホスフェイト、アリルホスフェイト等を触媒又は色相調整剤として使用してもよい。
【0027】
生成物であるポリエステル樹脂の分子量を制御するためには、重合温度、反応系圧力、反応時間等を調整すればよい。また、反応させるカルボン酸とアルコールとのモル比、重合体の分子量等により酸価を制御できる。
【0028】
また、バインダー樹脂にはポリエステル樹脂の他、必要に応じてスチレンーアクリル共重合体樹脂、スチレンーアクリル変性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン共重合体(特にエチレン系共重合体)、エポキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、パラフィンワックス等の樹脂を全重量の30重量%以下の範囲において適量混合して用いても構わない。
【0029】
顔料としては、ファーネストブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、C.I.ピグメントブラック、オルトアニリンブラック、トルイジンオレンジ、パーマネントカーミンFB、ファーストイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、C.I.ピグメントブルー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントイエロー、ジオキサンバイオレット、ピクトリアピュアブルー、アルカリブルートナー、アルカリブルーRトナー、ファーストイエロー10G、オルトニトロアニリンオレンジ、トルイジンレッド、バリウムレッド2B、カルシウムレッド2B、ピグメントスカーレッド3Bレーキ、アンソシン3Bレーキ、ローダミン6Bレーキ、メチルバイオレットレーキ、ベーシックブルー6Bレーキ、ファーストスカイブルー、レフレックスブルーG、ブリリアントグリーンレーキ、フタロシアニングリーンG、紺青、群青、酸化鉄粉、亜鉛華、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、アルミナホワイト、アルミニウム粉、昼光蛍光顔料、パール顔料等が挙げられる。
【0030】
また、顔料分散性を向上させるため、顔料誘導体を用いても良い。所望の官能基、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、アミド基等を有した顔料誘導体を使用することができる。
【0031】
顔料は、樹脂に分散されるが、その二次粒径は50nm以上1μm以下、好ましくは50nm以上300nm以下である。1μmより大きいと、一定の付着量で十分着色力、隠ぺい力、定着後の透明性が得られにくい。
【0032】
顔料の配合量は、樹脂に対して質量比で3%以上50%以下、好ましくは5%以上30%以下である。3%以下では所望の濃度が得られず、50%以上では樹脂への分散性や定着性を損なう恐れがあるからである。
【0033】
次いで、このようにして得られたバインダー樹脂と必要に応じ添加された着色剤等からなる着色混練物をカッターミル、ジェットミル等を用いて粗粉砕し、この粗粉砕トナーに対し、さらにキャリア液中で湿式粉砕を施し、トナーの体積平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μmになるまで微粉砕して濃厚液体現像剤を得る。このようにして得られた濃厚液体現像剤を、必要に応じて、荷電制御剤、分散剤(分散安定剤)等の添加剤等を含むキャリア液で適当な濃度になるまで希釈又は分散処理して用いる。
【0034】
塩基性の高分子分散剤として、アミノ基、イミノ基、アミド基、又はピロリドン基を有するものが好ましい。例えば、ポリアルキレンポリアミン、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、変性ポリウレタン、ポリエステルポリアミン等を用いることができる。
【0035】
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイドリン酸塩)」、「Anti−Terra−204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイドリン酸塩と酸エステル)130(ポリアマイド)、が挙げられる。アビシア社製13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000、19000(脂肪酸アミン系)、11200等を挙げることができる。さらに、ISP社のV−216、V−220、WP−660(長鎖アルキル基を持ったポリビニルピロリドン)等も挙げることができる。
【0036】
高分子分散剤はトナー粒子に対して質量比で1%〜100%添加することが好ましい。1%より小さいと分散性が低下し、100%を超えると液の導電性が上がり、帯電性に問題が生じるからである。
【0037】
<現像装置>
図1は、本実施の形態に用いる湿式画像形成装置の実験機の構成の一例を示す模式図である。ドラム状の像担持体201の周囲には、矢印で示す回転方向に順に、帯電装置203、露光装置204、現像ローラ103、中間転写体301、像担持体クリーニングブレード202がそれぞれ配設され、中間転写体301の周囲には、2次転写ローラ307が配設されている。
【0038】
像担持体201の表面を帯電装置203により、所定の表面電位に一様に帯電し、その後、露光装置204により画像情報の露光を行い、像担持体201の表面に静電潜像を形成する。次いで、像担持体201の静電潜像は、現像ローラ103によりトナー及びキャリア液を含む現像液で現像され像担持体201の表面にトナー像が形成される。この時、トナーだけでなくキャリア液も像担持体201の表面に付着する。なお、現像ローラ103表面の現像液塗布層は、規制ブレード101により一定厚さに保持される。
【0039】
次に像担持体201上のトナー像は、1次転写電圧を印加されて、中間転写体301に転写される。1次転写電圧にはトナーと逆極性の電圧が印加され、このとき像担持体との電位差は300V〜3kVである。
【0040】
図1には、中間転写体301にローラを用いた例を示したが、ベルトを用いることもできる。中間転写体がベルトの場合、ベルト材質は樹脂や弾性体であり、ラフ紙への転写性を考えると弾性体が望ましく、また耐熱性があるものが望ましい。厚さは50μm以上1mm以下、体積抵抗率は10以上1012Ω・cm以下、表面抵抗率は10以上1012Ω/□以下が望ましい。樹脂としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、フッ素系樹脂、ポリフェニルサルフェート等、弾性体としては、シリコンゴム、フッ素ゴム、EPDM、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が開示できるが、これに限らない。搬送の安定性を考えると、樹脂基体の上に弾性体がある複層タイプのベルトが望ましい。この場合、樹脂基体の厚さは50μm〜200μm、弾性体の厚さは200μm〜1mmが望ましい。また、最表層は、離型性が高いことが望まれ、そのため、表層はフッ素系、シリコン系等の低表面エネルギーの重合体や、プラズマ処理等で1μm以下の硬い層を設ける方が好ましい。
【0041】
中間転写体に転写された現像剤は、2次転写ローラ307で記録媒体320に転写される。2次転写ローラ307にトナーと逆極性の電圧が印加されている。309、310は熱ローラで、トナーが定着される。
【0042】
本実施の形態に用いる装置は、少なくとも、記録媒体表面に樹脂エマルジョン液を付与する付与手段を有し、トナー像を記録媒体上に転写する前に記録媒体表面に樹脂層を形成する。ここで、図1の態様では、記録媒体表面に樹脂エマルジョン液を付与する付与手段の一例として、塗布ローラ306を用いている。タンク313には樹脂エマルジョン液314が収容されており、塗布ローラ306に付着した樹脂エマルジョン液314は、対向ローラ305との間に供給された記録媒体320の表面に塗布された後、樹脂エマルジョン液の溶媒成分が内部に浸透して記録媒体の表面から除去されるまで十分な時間をかけて移動し樹脂層が形成された後、トナー像が中間転写体301により転写される。
【0043】
なお、本発明では、樹脂エマルジョン液を記録媒体に付与する付与手段を用いるが、その付与手段とは樹脂エマルジョン液を記録媒体表面に付着させる方法を意味し、液を吹き付ける方法や、塗布する方法が含まれる。具体的には、インクジェット方式のようにヘッドから塗布液をとばして付与する非接触手段や、ローラ、ブラシ、スポンジ等の部材を記録媒体に接触させて付与する接触手段を挙げることができる。その中では、接触手段が好ましい。その理由として、非接触手段に比べて効率良く塗布でき、より高速対応が可能なこと、より記録媒体表面近傍に液を塗布できるからである。インクジェット方式では、樹脂エマルジョン液が記録媒体の奥に浸透する結果、樹脂エマルジョン液中の樹脂微粒子が奥に到達して、浸透防止効果が低下する場合がある。
【0044】
また、本発明では、トナー像を記録媒体上に転写する前に記録媒体表面に樹脂層を形成するが、そのために、樹脂エマルジョン液の溶媒成分を除去する必要がある。図1の態様では、樹脂エマルジョン液の溶媒成分が内部に浸透して記録媒体の表面から除去されるまで十分な時間をかけて移動させ樹脂層が形成させている。この時間として、少なくとも0.5秒以上が好ましい。そのためには、例えば、塗布ローラと2次転写ローラとの間の距離を長くすれば良い。また、樹脂エマルジョン液の溶媒成分を除去する方法としては、溶媒成分を揮発させる方法あるいは吸液する方法を用いることができる。これらの態様については後で説明する。
【0045】
<樹脂エマルジョン液>
本発明では、記録媒体へのキャリア液の浸透を防止するため、樹脂エマルジョン液を用いる。その理由は、樹脂エマルジョン液は速乾性であり、その溶媒成分が除去されると瞬時に樹脂微粒子同士が固まり速やかに造膜が進むからである。樹脂エマルジョン液には、O/W型エマルジョン又はW/O型エマルジョンのいずれも用いることができるが、安全面及び環境面からO/W型エマルジョンが好ましい。
【0046】
樹脂エマルジョン液中の樹脂微粒子は、ウレタン樹脂、ニトリル樹脂、スチレン・ブタジエン樹脂等を挙げることができるがこれらに限定されない。例示した樹脂は記録媒体との接着性が高く、また可撓性が高いため記録媒体を折り曲げても樹脂が剥離したり割れたりしにくい。また、樹脂のガラス転移点は30℃以下であることが望ましい。30℃以下であると、溶媒成分を除去すると瞬時に造膜させることができるからである。また、ウレタン樹脂は、末端に反応性の高い官能基を有しており、造膜後時間が経過するとより強固な膜となるためより望ましい。より強固な膜にするため、エポキシ基、イソシアネート基、メチロール基、アミン基等反応性の官能基を一分子内に複数個有する反応促進剤(架橋剤)を樹脂エマルジョンに添加しても良い。
【0047】
樹脂微粒子の粒径は1μm以下が望ましい。より好ましくは10nm〜1μmである。1μm以下であれば、微粒子同士が自己成膜する力がより強くなる。1μmより大きいと、成膜しにくくなるおそれがあるからである。
【0048】
また、樹脂エマルジョン液の固形分比率は20〜60重量%が望ましく、30〜50重量%がより好ましい。20重量%未満であれば、液体の比率が大きくなり、成膜しにくくなるからである。
【0049】
本実施の形態によれば、トナー像を記録媒体上に転写する際にキャリア液が記録媒体中に浸透することなく転写することが可能となる。これにより、転写性を向上させるとともに裏写りを防止することができる。特に、吸液性の大きい、上質紙等のセルロースを主体とする記録紙の裏写り防止には有効である。
【0050】
実施の形態2.
本実施の形態は、記録媒体を加熱することにより、樹脂エマルジョン液の溶媒成分を除去するようにした以外は、実施の形態1と同様である。
【0051】
図2は、本実施の形態に用いる画像形成装置の実験機の構成の一例を示す模式図である。本実施の形態では、塗布ローラ306からなる付与手段の下流側に、加熱ローラ311,312からなる除去手段を設けている。
【0052】
本実施の形態によれば、実施の形態と同様な効果が得られるが、除去手段に加熱ローラを用いることにより、樹脂エマルジョン液の溶媒成分の除去をより短時間で行うことができる。
【0053】
実施の形態3.
本実施の形態は、樹脂エマルジョン液の溶媒成分を吸液して除去するようにした以外は、実施の形態1と同様である。
【0054】
図3は、本実施の形態に用いる湿式画像形成装置の実験機の構成の一例を示す模式図である。本実施の形態では、塗布ローラ306からなる付与手段の下流側に、スポンジローラ315と対向ローラ316からなる除去手段を設けている。
【0055】
本実施の形態によれば、実施の形態と同様な効果が得られるが、除去手段にスポンジローラを用いて溶媒成分を吸液するようにしたので、樹脂エマルジョン液の溶媒成分の除去をより短時間で行うことができる。
【実施例】
【0056】
本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。なお、以下の実施例中「部」とあるのは特に断らない限り「重量部」を表し、「Mw」とあるのは「重量平均分子量」を表し、「Mn」とあるのは「数平均分子量」を表し、「Tg」とあるのは「ガラス転移温度」を表す。
【0057】
以下の実施例において、Mw及びMnは、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィーの結果から算出した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフポンプ TRI ROTAR−V型(日本分光社製)、紫外分光検出器 UVIDEC−100−V型(日本分光社製)、50cm長さのカラム Shodex GPC A−803(昭和電工社製)を用いて行い、そのクロマトグラフィーの結果から、被検試料の分子量をポリスチレンを標準物質として算出することにより、ポリスチレン換算Mw及びMnとして求めた。なお、被検試料はバインダー樹脂0.05gを20mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させたものを用いた。
【0058】
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計 DSC−20(セイコー電子工業(株)製)を用い、試料量35mg、昇温速度10℃/minの条件で測定した。 酸価は、JIS K5400法の条件で測定した。
【0059】
(現像剤の製造例1)
還流冷却器、水・アルコール分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を備えた丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を1280部とビスフェノールAエチレンオキサイド付加物320部とテレフタル酸を890部を入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度で脱水重縮合又は脱アルコール重縮合を行った。生成したポリエステル樹脂の酸価又は反応溶液の粘度が所定の値になったところで反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。このようにして熱可塑性ポリエステル樹脂Aを得た。
【0060】
得られたポリエステル樹脂AはMw=7000、Mn=2200、Tg=68.3℃、酸価=7.0mgKOH/gであった。
【0061】
ポリエステル樹脂A 100重量部と、銅フタロシアニン 15重量部とを混合し、ヘンシェルミキサーにて十分混合し、二軸押出混練機で溶融混合後、冷却しその後、粗粉砕しジェット粉砕機にて平均粒径6μmに微粉砕してトナー粒子を得た。
【0062】
このトナー粒子を25重量部、分散剤としてポリビニルピロリドンV220(ISP社製)0.5重量部、流動パラフィン75重量部(引火点100℃)、ジルコニアビーズ100重量部を混合し、サンドミルにて120時間攪拌し、湿式現像剤Aを得た。湿式現像剤Aの平均粒径は2.6μmであった。
【0063】
実施例1.
図1に示す装置のタンク313にウレタン樹脂エマルジョン液(HUX−232、ADEKA社製、平均粒径0.08μm、固形分30%、ガラス転移点温度20℃)を入れた。装置のプロセス速度は500mm/sで、塗布ローラ306と2次転写ローラ307との間隔は300mmとした。記録紙は三菱製紙社製の上質紙金菱81g紙を使用した。現像剤には湿式現像剤Aを用いた。
【0064】
実施例2
図2に示す装置のタンクにウレタン樹脂エマルジョン液(HUX−320、ADEKA社製、平均粒径0.2μm、固形分33%、ガラス転移点温度15℃)を入れた。装置のプロセス速度は300mm/sで、塗布ローラ306と2次転写ローラ307との間隔は300mmとした。現像剤には湿式現像剤Aを用いた。
【0065】
実施例3
図3に示す装置のタンクにウレタン樹脂エマルジョン液(HUX−395、ADEKA社製、平均粒径2μm、固形分62%、ガラス転移点温度 −42℃)を入れた。装置のプロセス速度は300mm/sで、塗布ローラ306と2次転写ローラ307との間隔は300mmとした。現像剤には湿式現像剤Aを用いた。
【0066】
比較例1
ウレタン樹脂エマルジョン液に代えて、アクリル樹脂溶液(アクリル樹脂を酢酸エチルに溶解した樹脂溶液、固形分20%)を用いた以外は、実施例2と同様である。
【0067】
比較例2
塗布ローラ306と対向ローラを用いなかった以外は、実施例1と同様である。
【0068】
(評価方法)
1.裏写り評価
上質紙(三菱製紙社製 金菱81g/m)にシアン単色のソリッド画像を印字(トナー量 1.5g/m)した。画像面のIDをX、裏面のIDをYとしたとき、Y/Xが0.2未満のものを○、0.2以上のものを×とした。測定には、X−Rite社の濃度計を使用した。結果を表1に示す。
【0069】
2.転写性評価
上質紙(三菱製紙社製 金菱81g/m)にシアン単色のソリッド画像を印字(トナー量 約1.5g/m)した。中間転写体上の紙への転写前トナー量をX g/m、転写後の紙上のトナー量をY g/mとした。Y/Xが90%以上のものを○、80%以上90%未満のものを△、80%未満のものを×とした。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1から3は、いずれも裏写りが抑制され、転写性も優れていた。一方、記録紙に樹脂層を形成しない比較例2では、裏写りを抑制することができなかった。また、樹脂エマルジョン液に代えて樹脂溶液を用いた比較例1では、転写性が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の画像形成装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の画像形成装置の構成の別の例を示す模式図である。
【図3】本発明の画像形成装置の構成の別の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0073】
100 現像槽
101 規制ブレード
102 現像液
103 現像ローラ
201 像担持体
202 クリーニングブレード
203 帯電装置
204 露光装置
301 中間転写ローラ
305 対向ローラ
306 塗布ローラ
307 2次転写ローラ
309 加熱ローラ
310 加熱ローラ
311 加熱ローラ
312 加熱ローラ
313 タンク
314 樹脂エマルジョン液
315 スポンジローラ
316 対向ローラ
320 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低揮発性のキャリア液を用いた湿式現像剤を用いて現像したトナー像を記録媒体上に転写し定着させる画像形成方法であって、
トナー像を記録媒体上に転写する前に、上記記録媒体表面に樹脂エマルジョン液を付与し、該樹脂エマルジョン液の溶媒成分を除去して樹脂層を形成させる画像形成方法。
【請求項2】
上記樹脂エマルジョン液の上記溶媒成分を、記録媒体表面に浸透させて除去する請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】
上記該樹脂エマルジョン液の上記溶媒成分を、加熱して除去する請求項1記載の画像形成方法。
【請求項4】
上記樹脂エマルジョン液の上記溶媒成分を、吸液して除去する請求項1記載の画像形成方法。
【請求項5】
上記樹脂エマルジョン液はO/W型エマルジョンである請求項1から4のいずれか一つに記載の画像形成方法。
【請求項6】
上記樹脂エマルジョン液の樹脂粒子がウレタン樹脂からなる請求項1から5のいずれか一つに記載の画像形成方法。
【請求項7】
上記樹脂エマルジョン液の樹脂粒子のガラス転移点が30℃以下である請求項1から6のいずれか一つに記載の画像形成方法。
【請求項8】
上記樹脂エマルジョン液の固形分濃度が20重量%以上である請求項1から7のいずれか一つに記載の画像形成方法。
【請求項9】
上記樹脂エマルジョン液の樹脂粒子の粒径が1μm以下である請求項1から8のいずれか一つに記載の画像形成方法。
【請求項10】
低揮発性のキャリア液を用いた湿式現像剤を用いて現像したトナー像を記録媒体上に転写し定着させる画像形成方法に用いる画像形成装置であって、
少なくとも、記録媒体表面に樹脂エマルジョン液を付与する付与手段を有し、
トナー像を記録媒体上に転写する前に記録媒体表面に樹脂層を形成するようにした画像形成装置。
【請求項11】
上記記録媒体表面からキャリア液を除去する除去手段を有し、該除去手段に加熱手段を用いる請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】
上記記録媒体表面からキャリア液を除去する除去手段を有し、該除去手段に吸液手段を用いる請求項10記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−72388(P2010−72388A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240363(P2008−240363)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】