説明

画像形成方法

【課題】深部硬化性が良好でパターンの欠損がなく、高いコントラスト性と高い画像安定性を有する塗膜を、現像液が基材に直接触れることなく形成することが可能な画像形成方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる画像形成方法は、基材上に、電子供与性染料を含有する硬化性組成物の塗膜を形成し、前記塗膜を所定パターンに硬化させて硬化部と未硬化部を形成し、酸現像により前記未硬化部を発色させ、発色部を形成し、前記発色部を含む塗膜全体を硬化処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、カラーフィルタのブラックマトリックスや、位置、変位センサー等の高いコントラストを必要とするパターン形成に用いられる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フォトリソグラフィー法による画像形成方法は、微細加工性に優れ、作業性の良さから大量生産に適しており、印刷業界やエレクトロニクス業界で幅広く用いられている。
このような画像形成方法に用いられる組成物には、その用途に応じて着色剤が含有されている。例えば、カラー液晶表示装置、カラー撮像管素子、カラーセンサー等に用いるカラーフィルタのブラックマトリックス等には、黒色の着色剤を含有する黒色感光性組成物または黒色感放射線性組成物が用いられる。そして、このような組成物を、基板上に塗布・乾燥し、得られた塗膜にフォトマスクを介して露光し、未露光部分をアルカリ現像液により溶解除去することにより現像して、所望のパターンを形成している(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
しかしながら、このような黒色の着色剤を含む組成物において、十分な黒色度を得るために、相当量の黒色の着色剤を使用する必要がある。そのため、露光の際に照射された光は、塗膜深部に透過し難くなる。そして、塗膜内部における硬化反応も、表面から深部に向かって次第に不十分となるため、形成されたパターンが、塗膜の表面から深部に向かって次第に細くなってしまい、安定したパターン形状を得ることが難しくなる。さらに、その結果、形成されたパターンの基板への密着性が低下し、現像後のパターンに剥がれ、欠落、欠損等が生じやすくなる。また、現像後に熱硬化した硬化塗膜について、十分な塗膜物性が得られないという問題がある。
【0004】
近年、フォトリソグラフィー法による画像形成方法は、基材上に反射率の異なる画像を形成し、発光素子からの反射光を受光素子等で読み取るエンコーダーや変位センサー等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野等に広く利用されている。
【0005】
しかしながら、このようなMEMS分野の適用に際して、ウエハやアルミ配線等の基材へのパターニングを要することから、アルカリ現像液が直接基材表面に触れ、絶縁劣化、或いは腐食等の問題が生じる。このため、環境負荷の高い有機溶剤系の現像液を利用せざるを得ないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−149153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、高いコントラスト性、安定性を有するパターンを、欠損を抑え、現像液が基材に直接触れることなく形成することが可能な画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、基材上に、電子供与性染料を含有する硬化性組成物の塗膜を形成し、前記塗膜を所定パターンに硬化させて硬化部と未硬化部を形成し、酸現像により前記未硬化部を発色させ、発色部を形成し、前記発色部を含む塗膜全体を硬化処理することを特徴とする画像形成方法が提供される。
このような画像形成方法により、高いコントラスト性、安定性を有するパターンを、欠損を抑え、現像液が基材に直接触れることなく形成することが可能となる。
【0009】
本発明の一態様において、パターン露光により、塗膜を所定パターンに硬化させることが好ましい。予め塗膜を所望のコントラストが得られるように着色する必要がないため、パターン露光を用いた場合でも、良好な深部硬化性により、優れた微細加工性を得ることができるとともに、作業性が良好であることから、大量生産が可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、このような画像形成方法において用いられ、エチレン性不飽和基含有化合物と電子供与性染料と光重合開始剤を含有する硬化性組成物を提供することができる。このような感光性組成物を基材上に塗布することにより、基材上に電子供与性染料を含有する硬化性組成物の塗膜を形成し、高いコントラスト性、安定性を有するパターンを、欠損を抑え、現像液が基材に直接触れることなく形成することが可能となる。
【0011】
本発明の一態様によれば、このような画像形成方法により形成され、発色部に酸と電子供与性染料を含むパターンを提供することができる。このようにして形成されたパターンにおいて、高いコントラスト性、安定性を有することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様の画像形成方法によれば、高いコントラスト性、安定性を有するパターンを、欠損を抑え、現像液が基材に直接触れることなく形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基材上に電子供与性染料を含有する硬化性組成物の塗膜を形成し、その塗膜を、所定パターンに硬化させ、硬化部と未硬化部を形成し、酸現像により未硬化部を発色させて発色部を形成し、その発色部を硬化させることにより、良好なコントラスト、安定性を有するパターンを形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、基材上に電子供与性染料を含有する硬化性樹脂の塗膜を形成し、パターン硬化により、塗膜に潜像を描く。これを酸処理して現像する(酸現像する)ことにより、酸が未硬化部に侵入して塗膜内の電子供与性染料と反応することで、未硬化部を選択的に発色させることができる。また、硬化部には酸は侵入できず反応が起こらないため、良好なコントラストを形成することができる。その後、その状態で硬化させるため、平坦なパターンを形成することができ、発色部が独立した物理形状とならない。このため、パターンの物理形状に起因する密着性不良や欠落・欠損を抑え、パターンの安定性を向上させることができる。また、現像液が基材表面に直接触れることがないため、基材を傷めることなくパターンを形成することができる。
【0015】
以下、本発明にかかる画像形成方法について詳細に説明する。
本実施形態の画像形成方法において、まず、電子供与性染料を含む硬化性組成物を、例えば回路形成されたプリント配線板等の基材上に塗布して塗膜を形成する。
電子供与性染料としては、所望の色調に応じて、公知の材料から少なくとも1種を選択して使用することができる。
【0016】
具体的には、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−メチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド等のトリアリルメタン系化合物、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等のジフェニルメタン系化合物、7−ジメチルアミノ−3−クロロフルオラン、7−ジメチルアミノ−3−クロロ−2−メチルフルオラン、2−フェニルアミノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン等のフルオラン系化合物、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー等のチアジン系化合物、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等のスピロ系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
これらの電子供与性染料は、単独で、又は必要に応じて2種類以上のものを併用することができる。そして、このような電子供与性染料の配合割合は、エチレン性不飽和基含有化合物100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、良好なコントラストを得がたくなり、30質量部を超えると、更なるコントラストの向上は見込まれ難くなる。より好ましくは、5〜20質量部である。
【0018】
また、画像安定性を高める手段として、電子供与性染料をカプセル化して使用してもよい。また、これらの電子供与性染料に、暗発色を防止するキノリノールなどの添加剤を加えてもよい。
【0019】
このような電子供与性染料を含む硬化性組成物としては、後述する硬化の方法に応じて、光硬化性成分、熱硬化性成分が用いられ、また、これらを併用することもできる。
【0020】
光硬化性成分としては、エチレン性不飽和基含有化合物と、光重合開始剤が用いられる。
エチレン性不飽和基含有化合物としては、露光により光重合が起きるものであれば特に限定されない。
【0021】
具体的には、例えば、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの多価アクリレート類;メラミンアクリレート及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類等が挙げられる。
【0022】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物等のエポキシアクリレート系樹脂が挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
これらエチレン性不飽和基含有化合物は、1種または2種以上任意に組み合わせることができる。
【0023】
光重合開始剤としては、露光によりラジカルを生成するものであればよい。具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーチル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネイト等のホスフィンオキサイド類;又はオキシムエステル類;各種パーオキサイド類等の光重合開始剤が挙げられる。
これら光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
また、光重合開始剤として、感光波長域を任意に設定できる重合開始系を用いることができ、例えば、クマリン、シアニン、スクアリウム等の色素とラジカル発生剤を組み合わせた公知の2分子複合開始系を利用することもできる。
【0025】
このような開始系は、これまで多数報告されており、例えば、ラジカル発生剤としてイミダゾール二量体、色素としてアクリジン色素(例えば、特開昭54−155292号公報)やトリアジン系色素との組み合わせ、ラジカル発生剤としてN−フェニルグリシン、色素としてケトクマリン系の組み合わせ、ラジカル発生剤としてヨードニウム塩を用い各種色素を組み合わせた系(特開昭60−76740、特開昭60−78443、特開昭60−88005号公報等)、ラジカル開始剤としてトリアジン系化合物、色素として芳香族ケトン誘導体等が知られている。また、シアニン、ローダミン、サフラニン等の色素のアルキル硼酸塩も、有効な可視光開始剤として知られており(特開昭62−143044、特開昭62−150242号公報)、これら公知の光重合開始系も用いることができる。
【0026】
このような光重合開始剤の配合割合は、エチレン性不飽和基含有化合物100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、硬化が不十分となり、30質量部を超えると、更なる硬化性向上は見込まれ難くなる。より好ましくは、5〜20質量部である。
【0027】
熱硬化性成分としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びそれらの変性樹脂が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが、これらに限定されるものではない。その他、分子中に少なくとも2個のオキセタニル基を有するオキセタン化合物なども用いることができる。
これらの熱硬化性成分のなかでも、特にエポキシ樹脂を好適に用いることができ、例えば、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAのノボラック型、ビフェノール型、ビキシレノール型、トリスフェノールメタン型、N−グリシジル型、α−トリグリシジルイソシアネート、β−トリグリシジルイソシアンート、脂環式など、公知のエポキシ樹脂が挙げられるが、特定のものに限定されるものではない。また、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの熱硬化性成分の配合割合は、エチレン性不飽和基含有化合物100質量部に対して1〜60質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、熱硬化が不十分となり、60質量部を超えると、更なる熱硬化性向上は見込まれ難くなる。より好ましくは5〜40質量部である。
【0028】
さらに、本実施形態の硬化性組成物は、粘度調整を目的として、必要に応じて有機溶剤を添加してもよい。具体的には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等の公知の有機溶剤を使用することができる。
これら有機溶剤は、単独で、又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、本実施形態の硬化性組成物には、これらの成分のほか、必要に応じて種々の添加剤を含有させてもよい。例えばシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機フィラーや、アクリルビーズやウレタンビーズ等の有機フィラー等の充填剤、カップリング剤、消泡剤、レベリング剤等の塗料用添加剤等を用いることができる。
【0030】
このように構成される硬化性組成物を、基材上に塗布し、塗膜を形成する方法としては、一般的な塗布手段を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法や、バーコーター、ブレードコーダー、ディップコート等が適宜用いられる。
【0031】
このような方法により形成される硬化性組成物の塗膜は、乾燥膜厚で3〜50μmとすることが好ましい。乾燥膜厚が3μm未満の場合、塗膜にピンホールを生じる場合がある。一方、50μmを超えると、塗膜が厚くなるため、溶剤が蒸発し難くなり、乾燥が不十分となる。
【0032】
次いで、このようにして基材上に形成された塗膜を乾燥させ、タックフリーの塗膜(乾燥塗膜)を形成する。乾燥手段としては、熱風循環式乾燥炉や遠赤外線乾燥炉等を用いることができる。そして、形成された塗膜を、乾燥温度60〜120℃で5〜60分乾燥し、有機溶剤を蒸発させ、乾燥塗膜を得る。乾燥温度は、60℃未満では溶剤が蒸発し難く乾燥不足となり、一方、120℃を超えるとペースト成分の化学反応が起こり、現像の際に現像されない部分が生じる。また、乾燥時間は、5分未満では乾燥不足となり、一方、60分を超えて長時間となると、ペースト成分の化学反応が起こり、現像の際に現像されない部分が生じる。
【0033】
なお、硬化性組成物が予めフイルム状に成膜され、乾燥塗膜(ドライフィルム)が形成されている場合には、基材上に乾燥塗膜をラミネートすればよい。
【0034】
このようにして基材上に形成された乾燥塗膜を、所定パターンに硬化させて硬化部と未硬化部により、潜像を形成する。パターン硬化方法としては、光硬化や熱硬化が挙げられるが、光硬化を好適に用いることができる。
【0035】
光硬化においては、露光装置が用いられ、例えば所定の露光パターンを有するネガマスクを用いた接触露光および非接触露光等によるパターン露光が可能である。露光光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプまたはメタルハライドランブ等の公知のランプの他、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、色素レーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー等の公知のレーザーが挙げられる。
【0036】
露光量としては、30〜1000mJ/cm程度が好ましい。露光量が30mJ/cm未満では、光硬化が不十分となり、現像の際に酸が硬化部にも侵入し、硬化部が発色する場合がある。一方、1000mJ/cmを超えると、線太りやハレーションを生じる場合がある。より好ましくは、100〜800mJ/cmである。
【0037】
このようにして所定パターンに硬化させ、硬化部と未硬化部により潜像が形成された乾燥塗膜を酸現像する。すなわち、パターン硬化させた塗膜を酸処理することにより、酸が未硬化部に侵入して塗膜内の電子供与性染料と反応することで、未硬化部が発色し、発色部が形成される。このとき、硬化部には酸が進入できず反応が起こらないため発色せず、良好なコントラストを形成することができる。
現像方法としては、スプレー法、浸漬法等が用いられる。現像液は、感光性組成物の未硬化部に導入され、電子供与性染料を発色させ得るものであれば特に限定されない。
【0038】
このような現像液としては、例えば、無機酸、有機酸、リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)等が挙げられる。
無機酸としては、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸等が挙げられる。
【0039】
また、有機酸としては、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、イソクエン酸、アニス酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、アゼライン酸、チリック酸、パレリック酸、カプロン酸、イソカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、ベヘニン酸、シュウ酸、マロン酸、エチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、ピルビン酸、ピペロニル酸、ピロメリット酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酒石酸、レブリン酸、乳酸、安息香酸、イソプロピル安息香酸、サリチル酸、イソカプロン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、チグリン酸、エチルアクリル酸、エチリデンプロピオン酸、ジメチルアクリル酸、シトロネル酸、ウンデセン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、メチルケイ皮酸、ナフトエ酸、アビエチン酸、アセチレンジカルボン酸、アトロラクチン酸、イタコン酸、クロトン酸、ソルビン酸、バニリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシ酪酸、ビフェニルジカルボン酸、フェニルケイ皮酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオル酸、フェノキシ酢酸、プロピオル酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ベラトルム酸、ペラルゴン酸、ベンジル酸、エナント酸、エライジン酸、エルカ酸、オキサロコハク酸、オキサロ酢酸、オクタン酸、カプリル酸、没食子酸、マンデル酸、ミリスチン酸、メサコン酸、メチルマロン酸、メリト酸、ラウリン酸、リシノール酸、リノール酸、リンゴ酸、等が挙げられる。
【0040】
無機リン酸としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、オルトリン酸、二リン酸、トリポリリン酸、ホスホン酸、等が挙げられる。
また、有機リン酸としては、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸プロピル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジフェニル、リン酸イソプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸nブチル、亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸プロピル、亜リン酸ブチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸イソプロピル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸nブチルー2−エチルヘキシルヒドロキシエチリレンジホスホン酸、アデノシン三リン酸、アデノシンリン酸、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、ジエチレングリコールアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0041】
その他の酸として、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、エタンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、タウリン、メタニル酸、スルファニル酸、ナフチルアミンスルホン酸、スルホ安息香酸、スルファミン酸等のスルホン酸系の酸も用いることができる。
これらの酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる他、水に溶解させた水溶液として用いることもできる。
【0042】
さらに、このようにして現像されて、形成された発色部を硬化させ、パターンを有する硬化塗膜を形成する。このような仕上げ硬化(ポストキュア)方法としては、光硬化、熱硬化を用いることができ、さらにこれらを併用してもよい。
【0043】
光硬化の場合、未発色部を含む全面を露光することが好ましい。このとき、露光光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプまたはメタルハライドランプ等の公知のランプの他、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、色素レーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー等の公知のレーザーを用いることができる。
【0044】
露光量としては、500〜2000mJ/cm程度が好ましい。露光量が500mJ/cm未満では、光硬化が不十分となり、硬化塗膜の耐久性が得られ難くなる。一方、2000mJ/cmを超えても、更なる硬化塗膜特性の向上は見込まれず、作業効率が低下してしまう。
【0045】
熱硬化の場合、熱風循環式乾燥炉、IR乾燥炉等を使用することができる。硬化温度としては、120℃〜230℃程度が好ましい。硬化温度が120℃未満では、熱硬化が不十分となり、パターンの安定性が得られ難くなる。一方、230℃を超えても、更なる硬化塗膜特性の向上は見込まれず、エネルギー効率が低下してしまう。より好ましくは150℃〜180℃である。
【0046】
このようにして、高いコントラスト性、安定性を有するパターンを、欠損を抑え、現像液が基材に直接触れることなく形成することが可能となる。そして、このようにして形成されたパターンは、カラー液晶表示装置、カラー撮像管素子、カラーセンサー等に用いるカラーフィルタのブラックマトリックス等の用途や、エンコーダー、変位センサー等のMEMS分野において、好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本実施形態を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではないことはもとよりである。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0048】
<感光性組成物1の調製>
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエピクロンN−680(DIC社製、エポキシ当量=215g/当量)107.5部を入れ、カルビトールアセテート108部、出光石油化学製のイプゾール(登録商標)#150 108部を加え、加熱溶解した。この樹脂溶液に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.05部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.0部を加えた。この混合物を85〜95℃に加熱し、アクリル酸36部を徐々に滴下し、24時間反応させた。このエポキシアクリレートに、予めイソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートを1:1モルで反応させたハーフウレタン257.5部を徐々に滴下し、60〜70℃で4時間反応させた。このようにして得られたエチレン性不飽和基含有化合物(不揮発分=65質量%)をA−1とした。さらに、得られたA−1、A−2、光重合開始剤、電子供与性染料、溶剤及び添加剤を表1に示す組成比にて配合し、攪拌後3本ロールミルにより分散し、感光性組成物1を得た。
【表1】

*1:エポキシアクリレート樹脂ワニス
*2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DA−600:三洋化成工業社製)
*3:(イルガキュア(登録商標)907:チバスペシャリティーケミカル社製)
*4:(S−205:山田化学工業社製)
*5:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
*6:(KS−66:信越化学工業社製)
【0049】
<評価基板の作成>
先ず、得られた感光性組成物1を、ガラスエポキシ基板上に、アプリケータを用いて全面に塗布し、熱風循環型乾燥機により80℃30分間乾燥して、乾燥塗膜を形成した。
次いで、乾燥塗膜に対し、光源としてメタルハライドランプを用い、ネガマスクを介して積算光量が800mJ/cmとなるようにパターン露光し、硬化部と未硬化部を形成した。
そして、露光後、表2に示す現像液(酸又は酸水溶液)に浸漬し、酸現像を行い、黒色部と未発色部を形成した。さらに、UV硬化又は熱硬化により、ポストキュアを行い、硬化塗膜を形成し、実施例1〜5にかかる評価基板を得た。
【0050】
<塗膜特性評価>
評価基板について、以下の塗膜特性評価を行った。
(乾燥塗膜の色調評価)
乾燥まで終了した評価基板の色調を、目視により評価した。
(酸現像による発色評価)
酸現像まで終了した評価基板の硬化部と未硬化部のそれぞれの色調を、目視により評価した。
【0051】
(硬化塗膜の剥がれ評価)
ポストキュアまで終了した評価基板の塗膜の剥がれを、セロテープピーリングにより評価した。
【0052】
(硬化塗膜の鉛筆硬度評価)
ポストキュアまで終了した評価基板の未発色部と黒色部について、それぞれの鉛筆硬度を評価した。
(硬化塗膜の耐溶剤性評価)
ポストキュアまで終了した評価基板の未発色部と黒色部のそれぞれに対し、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートを滴下し、5分間放置後、滴下した溶剤を拭き取り、硬化塗膜に変化がないかを評価した。
【0053】
これらの評価結果を表2に示す。
【表2】

*1: A;25wt%次亜リン酸水溶液
B;50wt%マロン酸水溶液
C;乳酸
D;オレイン酸
*2:UV硬化;1000mJ/cm(UVコンベア:メタルハライドランプ80W×3)
熱硬化 :150℃ 60分(熱風式循環式乾燥炉)
【0054】
それぞれ現像液を25wt%次亜リン酸水溶液とした実施例1、50wt%マロン酸水溶液とした実施例2、乳酸とした実施例3では、未硬化部分の良好な発色が得られ、オレイン酸とした実施例4では、若干発色が低下したものの、十分なコントラストが得られた。また、UVによるポストキュア後の塗膜のはがれもなく、未発色部と黒色部の鉛筆硬度及び耐溶剤性も良好であり、良好な硬化塗膜特性を有していることがわかる。また、現像液を実施例1と同様とし、熱硬化によりポストキュアを行った実施例5においても、いずれの評価結果も良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、電子供与性染料を含有する硬化性組成物の塗膜を形成し、
前記塗膜を所定パターンに硬化させて硬化部と未硬化部を形成し、
酸現像により前記未硬化部を発色させ、発色部を形成し、
前記発色部を含む塗膜全体を硬化処理することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
パターン露光により、前記塗膜を所定パターンに硬化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成方法に用いられ、エチレン性不飽和基含有化合物と電子供与性染料と光重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像形成方法により形成され、発色部に酸と電子供与性染料を含むことを特徴とするパターン。

【公開番号】特開2011−53329(P2011−53329A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200411(P2009−200411)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】