説明

画像形成方法

【課題】ホットオフセット及びコールドオフセットを抑制し、良好な画像を形成することができ、折り目定着性を向上させることができる画像形成方法を提供する。
【解決手段】抵抗発熱体層112を有する発熱ベルト11と、発熱ベルト11の内側の弾性体ロール21と、弾性層を有し、発熱ベルト11の外側から発熱ベルト11を介して弾性体ロール21に押し付けられる加圧ロール16と、抵抗発熱体層に給電するための給電装置22と、を備え、発熱ベルト11と加圧ロール16との間のニップ部Nに記録材Pを通過させて、トナーを定着させる定着装置100を使用する。トナーの結着樹脂がドメイン・マトリクス型の分散構造を有し、ドメイン部は少なくとも、ポリマージオールセグメントとジイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂からなり、トナー樹脂中のドメイン部を形成するポリウレタン樹脂の割合が1.0質量%以上5.0質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等に採用されている電子写真プロセスにおける画像形成は、着色剤を含んだ樹脂であるトナーを定着装置によって紙に固定化することによって達成される。このような定着プロセスへの要請として、トナーをしっかりと紙に固定化し良質な画像を形成すること及び電子写真プロセス中において、定着プロセスで多くのエネルギーが使用されることから、プロセスの省電力化が望まれている。
定着プロセスとしては、ヒーターを内蔵した加熱ローラと、それに対向する形で設けられた加圧部材との間にニップ部を形成し、そのニップ部において搬送されてくる紙上にトナーに熱と圧力を加えて紙に固定化するローラ熱定着方式が一般的である。
このような定着プロセスにおいては、搬送されてくる紙上のトナーは定着ニップ部に入ってくると、加熱、圧縮され、より凝集した状態となる。そして、さらに定着ニップ部内へ進んでいくと、トナーの温度がガラス転移点(Tg)を超え、そこからトナーの変形が始まる。さらに温度が上昇すると、今度は溶融が始まり紙繊維間への浸透が起こる。そして、定着ニップ部を過ぎると、今度は放熱による冷却が始まり、トナーは固形化して紙に固定化される。
【0003】
上記定着プロセスにおいては、トナーへの熱供給を十分に行うには、ニップ部を長くすることが有利であることから、熱源である加熱ローラ表面に弾性層を設けることが広く行われる。これによって加圧部材による定着ローラの変形が大きくなり良好な画像形成を行うためのニップ長が確保されることになる。また、硬質のローラによる定着では定着画像の文字がつぶれ、画質が悪化するという問題もある。しかしながら、このようなプロセスにおいては、熱源から供給される熱が上記弾性層に奪われるためにエネルギー効率が悪くなるという問題があった。また、弾性層が熱、圧力により劣化し易く、定着プロセスの寿命も問題となっていた。
【0004】
そこで、トナーに供給される熱を、ニップ部を形成する、定着ローラの内部からではなく、外部の発熱ベルトからニップ部に供給する抵抗発熱体を使用した定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。抵抗発熱体を使用した定着装置では、抵抗発熱体層を有する無端状の発熱ベルトと、その内側に配置された弾性体ロールと、この弾性体ロールにより回動し発熱ベルトを介して弾性体ロールと対向する加圧部材と、を有し、発熱ベルトと加圧部材の間でニップ部を形成し、シート(記録媒体)をニップ部に通過させてシート上のトナーを熱定着させる構成となっている。このような定着装置では、従来のように定着ローラの内部からではなく、外部の発熱ベルトからニップ部に熱を供給するので、定着プロセスに供給される熱が有効に使われ、省電力化を達成することができる。また、定着ローラの熱劣化も抑制されるため、定着ベルトの長寿命化にも繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−258243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の抵抗発熱体を使用した定着装置においても、発熱ベルトと加圧部材の間で十分なニップ長を確保可能であるため、良質な画像形成は可能である。 しかしながら、発熱ベルトへの加熱は、発熱ベルトの端部から実施されることによって、定着ニップ部の長手方向の温度ばらつきが大きくなる。原理的に、小サイズ転写紙に対しても発熱領域に関わらず発熱量は一定となる。このため、転写紙サイズ変更に伴う定着性のばらつきが大きい。例えば、小サイズ転写紙連続通紙後、通常サイズの転写紙に変更すると、小サイズ転写紙非画像部に対応する領域では、トナーが過剰に溶融するため、定着ベルト側にトナーが移るホットオフセットやベルトへの巻き付きの問題が発生する。仮に、定着ベルトの温度検知手段が、小サイズ転写紙非画像部に対応する場合は、トナーの溶融不足によるコールドオフセットが発生するという問題も生じる。
本発明では、上記事情に鑑みてなされたもので、ホットオフセット及びコールドオフセットを抑制し、良好な画像を形成することができ、また、折り目定着性を向上させることができる画像形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、少なくとも抵抗発熱体層を有する発熱ベルトと、
前記発熱ベルトの内側に配置される弾性体ロールと、
弾性層を有し、前記発熱ベルトの外側から前記発熱ベルトを介して前記弾性体ロールに押し付けられる加圧ロールと、
前記抵抗発熱体層に給電するための給電装置と、を備え、
前記発熱ベルトと前記加圧ロールとの間でニップ部を形成し、
記録材を前記ニップ部に通過させて、前記記録材上のトナーを定着させる定着装置を使用し、
前記トナーの結着樹脂がドメイン・マトリクス型の分散構造を有し、
前記ドメイン部は少なくとも、ポリマージオールセグメントとジイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂からなり、トナー樹脂中のドメイン部を形成するポリウレタン樹脂の割合が1.0質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする画像形成方法が提供される。
【0008】
請求項2の発明によれば、前記ポリウレタン樹脂が分子鎖にイソシアネート基を有し、多価カルボン酸あるいはヒドロキシカルボン酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と反応させたカルボキシ変性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
上記定着装置とトナーとを組み合わせた画像形成方法においては、トナー中に、ハードセグメント部とソフトセグメント部から構成されるポリウレタン樹脂を含有しているため、トナー画像に柔軟性を付与することが可能となる。その結果、低温定着化を進めても折に対して強く、折り曲げ部のトナーが剥離しない。
また、低温定着可能なトナーであるので、ニップ部において容易にトナー変形が起こり、トナー間の接触面積増加に伴い、トナー中の熱伝達が促進される。そのため、定着装置のウォーミングアップ直後及び休止時からの再スタート時のように、定着温度が低く、ニップ部の長手方向の温度ばらつきが大きい場合であっても、熱エネルギーが有効にトナーに加えられ、熱エネルギーの効率化が図れる。その結果、コールドオフセットが発生せず、良質な定着画像が得られる。また、定着プロセス全体として省電力化も達成される。
また、上記トナーの使用によって、定着温度の設定温度が下がると、定着ベルトと紙(記録材)との間の温度差が小さくなる。このため、通紙時に定着ベルトから熱が奪われるに際し、定着ベルト温度の設定温度からの変位を小さくすることができる。これにより、連続通紙時におけるニップ部の過昇温が抑制されることになり、ホットオフセットは発生しにくくなる。
さらには、上記ポリウレタン樹脂を含有したトナーは、従来のホットオフセットが発生するような定着温度域比においても、弾性を維持する特徴がある。このため、連続通紙の枚数増加、厚紙使用等の厳しい通紙条件において仮にニップ部温度が上昇しても、トナー中に高温でも溶融しにくいドメイン構造が存在しているので、トナーの過度な弾性率低下は抑制され、ホットオフセットが発生しにくくなる。
以上のように、ニップ部における過昇温の発生を抑制し、ホットオフセット及びコールドオフセットの問題が生じず、良好な画像を形成することができ、また、折り目定着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明で使用するデジタル画像形成装置の内部構成を示す図である。
【図2】定着装置の概略図である。
【図3】図2の切断線X−Xで切断した際の矢視断面図である。
【図4】発熱ベルトの構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成方法について説明する。
[トナー]
まず、本発明の画像形成方法において使用されるトナーについて説明する。
トナーは、少なくとも結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、を含み、結着樹脂がドメイン・マトリクス型の分散構造を有し、ドメイン部は少なくとも、ポリマージオールセグメントとジイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂から構成される。そして、トナー樹脂中のドメイン部を形成するポリウレタン樹脂の割合が1.0質量%以上5.0質量%以下である。
ポリウレタン樹脂の割合を1.0質量%以上5.0質量%以下としたのは、1.0質量%未満であると、折り定着性と耐オフセット性が発現しない。また、5.0質量%より多くすると、むしろ折り定着性が低下する懸念なるためである。
【0012】
(ドメイン・マトリクス構造)
ドメイン・マトリクス構造とは、連続層を構成するマトリクス層中で空間的に別個のドメイン部を形成する構造を言う。本発明のトナーにおいては、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の結着樹脂中に、上記ポリウレタン樹脂が非相溶に導入された状態を示す。
この構造は、オスミウム染色したトナー断面を透過型電子顕微鏡を用いて、定法により測定することができる。ウルトラミクロトームで切片を切り出す場合、切片の厚さは100nmに設定する。また、ドメイン部の大きさは以下のフェレ径で示すことができる。
【0013】
(フェレ径)
フェレ径は、ドメイン部の周を単に、撮影した像のX軸上に投影するものである。像を観察し撮影するとき、方向は選ばないため、X軸は任意の直線と同義になる。
フェレ径の測定は、トナー粉末の一部をエポキシ樹脂に包埋し、ミクロトームを用いて厚さ100nmに切り出し、四酸化ルテニウムを用いて染色して観察用超薄切片を作製し、この観察用超薄切片を透過型電子顕微鏡により、加速電圧80kV、倍率3万倍にて観察を行って画像を撮影し、当該画像を二値化処理し、ドメイン部100個について後述するフェレ径を測定し、その算出平均値で示す。
ポリウレタン樹脂が形成するドメイン部のフェレ径が50〜300nmであると、低温定着性、折り目定着性が改善する。
50〜300nmの範囲に微分散することで、マトリクス樹脂相との界面が増加し、結着樹脂への改質効果、すなわち本発明の効果が発現すると推察される。
特に好ましくは120〜180nmである。
トナー結着樹脂中にポリウレタン樹脂をドメイン状(すなわち非相溶)に導入することで、結着樹脂の強度及び応力緩和特性が付与され、定着画像に堅牢性を付与できる。また、マトリクスの樹脂中にポリウレタン樹脂をより微細に分散させることにより、ポリウレタン樹脂とマトリクス樹脂との接触面積が高くなり、トナー改質効果が大きい。
フェレ径は、原料となるポリウレタン樹脂を乳化重合法、あるいはミニエマルション重合法で作成し、トナーに導入することで該当する範囲のものを作成することができる。
【0014】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂とは、ポリマージオールセグメントとジイソシアネート化合物がウレタン結合させた高分子化合物をいう。
ポリウレタンはジイソシアネートと低分子量ジオールからなるハードセグメントと、ポリマージオールセグメントからなるソフトセグメントから構成されるポリマーである。ソフトセグメントを与えるポリマージオールとして、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系等がある。
本発明で使用するウレタン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるウレタンポリマー、または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーとジオール等の鎖伸長剤とを反応させて得られるウレタンポリマーが挙げられる。これらのウレタン系重合体中には酸成分(酸残基)を含有させてもよい。
なお、イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法によればよく、例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤成分とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させればよい。
前記(i)成分の1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
【0015】
(1)ジオール化合物:エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等。
(2)ポリエーテルジオール:前記のジオール化合物のアルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシドや環状エーテル(テトラヒドロフランなど)の開環(共)重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの(ブロックまたはランダム)共重合体、グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール等。
(3)ポリエステルジオール:アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸(無水物)と上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物とを水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。具体的には、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール等が例示できる。
(4)ポリエーテルエステルジオール:エーテル基含有ジオール(前記(2)のポリエーテルジオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記(3)で例示したような(無水)ジカルボン酸に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるもの、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物等。
(5)ポリカーボネートジオール:一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH
(式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ジオール残基、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物等。これらは、飽和脂肪族ジオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ジオールとホスゲンを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ジオールを反応させる方法などにより得ることができる。
上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
前記(i)成分と反応させる(ii)多価イソシアネート成分としては、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物が使用できる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソ
シアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0017】
トナー中にポリウレタン樹脂を含有させる場合、ポリウレタン樹脂中に反応性の高い未反応イソシアネート基が多く残存していると、経時によりトナー粒子が凝集してしまい、耐ブロッキング性の悪化を招く(イソシアナート基は非常に反応性が高いため、水酸基などの活性水素を有する化合物が存在すると過熱しなくても徐々に反応が進行し、ウレタン結合を形成することでトナー粒子の凝集を招き、ブロッキング性が悪化する)可能性があり、好適には下記に示す多価カルボン酸あるいはヒドロキシカルボン酸化合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物と反応させたカルボキシ変性ポリウレタン樹脂を用いることができる。
【0018】
(多価カルボン酸)
2塩基酸としてはコハク酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アゼライン酸、メサコン酸、シトラコン酸、セバチン酸、グルタコン酸、アジピン酸、マロン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナジック酸、メチルナジック酸、オクチルコハク酸、ドデセニルコハク酸など、およびこれらの酸の無水物、低級アルキル(メチル、エチル)エステルなどが挙げられる。その他、リノレイン酸の二量体、三量体などの重合脂肪酸も使用できる。2塩基酸は単独でも2種以上の混合物としても使用できる。
これらの中では、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オクチルコハク酸およびドデセニルコハク酸に代表されるアルキルまたはアルケニル(炭素数4〜18)コハク酸が好ましい。
重縮合反応は、必要により触媒(例えばジブチル錫オキサイド、酸化第一錫およびテトラブチルチタネート)を使用することができ、通常150〜300℃の任意の温度で行うことができる。また、この反応は、常圧または減圧下、さらに不活性ガスや溶媒の存在下または不存在下で行うことができる。また、ポリエステルの末端水酸基の量を減じ、カルボキシル基の量を増やすために、重縮合反応後、酸無水物を反応させることもできる。酸無水物として好ましいのは無水コハク酸であるが、上記2塩基酸の無水物であればこれに限定されるものではない。
【0019】
(ヒドロキシ−カルボン酸)
ヒドロキシ−カルボン酸としては、ジメチロールアルカン酸(ジメチロール酢酸、ジメ
チロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸)、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(グリコール
酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸等)、芳香族ヒドロキシカルボン酸(サリチル酸、クレオソート酸、マンデル酸、バーリン酸、シリング酸等)あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
(スチレン・アクリル系の結着樹脂)
結着樹脂を構成する重合性単量体として使用されるものは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレン或いはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸或いはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独或いは組み合わせて使用することができる。
また、結着樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることがより好ましい。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
【0021】
(ポリエステル系の結着樹脂)
ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、以下において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
なお、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、前記のように示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指すが、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0022】
《酸由来構成成分》
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。直鎖型のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。中でも、炭素数6から10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジカルボン酸を、酸構成成分の95mol%以上用いることが好ましく、98mol%以上用いることがより好ましい。
その他のモノマーとしては、特に限定は無く、例えば、高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているようなモノマー成分である、従来公知の2価のカルボン酸と、2価のアルコールが挙げられる。これらのモノマー成分の具体例としては、2価のカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれているのが好ましい。
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。また樹脂全体を水に乳化或いは懸濁してトナー母粒子を作製する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能である。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。前記スルホン酸基を持つジカルボン酸の含有量は0.1mol%以上2.0mol%以下であることが好ましく、0.2mol%以上1.0mol%以下であることが好ましい。含有量が2mol%よりも多いと、帯電性が悪化する。尚、上記「構成mol%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分、アルコール由来構成成分)をそれぞれ1単位(mol)したときの百分率を指す。
【0023】
《アルコール由来構成成分》
アルコール構成成分としては脂肪族ジアルコールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられ、中でも炭素数6から10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジアルコールを、アルコール構成成分の95mol%以上用いることが好ましく、98mol%以上用いることがより好ましい。
その他の2価のジアルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド又は(及び)プロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(着色剤)
本発明に用いられる着色剤は、公知の無機又は有機着色剤を使用することができる。具体的な着色剤を以下に示す。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、さらにマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
また、マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
また、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0025】
(離形剤)
本発明のトナーに使用可能なワックス(離形剤)としては、従来公知のものが挙げられ、具体的には、以下のものが挙げられる。
(1)炭化水素系ワックス
(2)エステル系ワックス
(3)アミド系ワックス
エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等
(4)ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトン等
(5)その他
カルナウバワックス、モンタンワックス等
【0026】
(その他)
本発明におけるトナーは、必要に応じて荷電制御剤、外添剤等を用いてもよい。
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体等が挙げられる。含有される金属としては、Al、B、Ti、Fe、Co、Ni等である。荷電制御剤として特に好ましいのはベンジル酸誘導体の金属錯体化合物である。
【0027】
外添剤としては、公知の疎水性シリカ、疎水性金属酸化物の他に、酸化セリウム粒子或いは炭素数20〜50の高級アルコール粒子を添加することが耐フィルミング性の観点から特に好ましい。酸化セリウム粒子を添加する場合、耐フィルミング性を高める観点から個数平均粒径が150〜800nmのものを用いることが好ましく、250〜700nmのものを用いることがより好ましい。また、酸化セリウム粒子の添加量は、トナーに対して0.5〜3.5質量%とすることが好ましく、0.5〜3.5質量%の範囲とすることにより、良好なクリーニング性が維持されて耐フィルミング性の効果を安定して得ることができる。また、添加量が過剰なケースでは加熱定着時に溶融したトナー粒子の接着力が抑制されて定着強度が低下するが、上記範囲とすることによりこのような定着強度低下の問題も生じない。
【0028】
[トナーの製造方法]
次に、本発明のトナーを製造する方法について説明する。
本発明に係るトナーは、粉砕法、懸濁重合法、乳化重合凝集法等の公知の製造方法により製造することができる。
以下、本発明に係るトナーの製造方法の一例として、乳化重合凝集法によるトナーの製造方法を示す。
(1)着色剤及び着色媒体樹脂を含有する着色剤担持樹脂粒子を得る着色剤担持樹脂粒子形成工程。
(2)マトリクスを形成する結着樹脂を分散させて結着樹脂微粒子分散液を作製する工程。
(3)ドメイン部を形成するポリウレタン樹脂微粒子を分散させてポリウレタン樹脂微粒子分散液を作製する工程。
(4)結着樹脂微粒子分散液と、ポリウレタン樹脂微粒子分散液と、着色剤担持樹脂微粒子とを混合し、これらを水系媒体中で塩析、凝集、融着させてトナー粒子を形成する塩析、凝集、融着工程。
(5)トナー粒子の分散系から(水系媒体)トナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程。
(6)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程。
(7)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程。
から構成される。以下に各工程の具体例を示す。
【0029】
(1)着色剤及び着色媒体樹脂を含有する着色剤担持樹脂粒子を得る着色剤担持樹脂粒子形成工程
イオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤の水溶液に代表される水系媒体中に、公知の着色剤を添加して分散機によって分散処理し、着色剤が微粒子状に分散された着色剤の分散液を調製する。着色剤の分散処理は、界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態の水系媒体中で行われる。分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械式ホモジナイザ、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザといった加圧分散機、サンドグラインダ、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミルといった媒体型分散機が挙げられる。
分散液における着色剤粒子は、体積基準のメディアン径で40〜200nmであることが好ましい。
【0030】
(2)マトリクスを形成する結着樹脂を分散させて結着樹脂微粒子分散液を作製する工程
水系媒体中に、結着樹脂を添加して分散機によって分散処理し、結着樹脂が微粒子状に分散された分散液を作製する。結着樹脂は体積基準メディアン径が60〜500nmの範囲に分散させることが好ましい。
ここで、結着樹脂を体積基準メディアン径が60〜500nmの範囲に分散させるのは、カルボキシ変性ウレタン粒子の凝集速度と結着樹脂微粒子の凝集速度に大きな解離が発生することを防ぎ、結果トナー粒子中のウレタン樹脂相が均一に分散されるためである。
【0031】
(3)ドメイン部を形成するポリウレタン樹脂微粒子を分散させてポリウレタン樹脂微粒子分散液を作製する工程
ここでは、カルボキシ変性ポリウレタン樹脂流離分散液を作製する場合について説明する。
(3−1)分子鎖にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂に、下記(a)から選ば
れる少なくとも一種以上の化合物と反応させてカルボキシ変性ポリウレタン樹脂を作製する工程
(a)多価カルボン酸、ヒドロキシ−カルボン酸化合物
ポリマージオールと持イソシアネート化合物とをウレタン化反応させることによって、ポリウレタン樹脂を調整し、その後、未反応イソシアネート基をカルボン酸に変性するために多価カルボン酸又はヒドロキシ−カルボン酸化合物を添加して反応させる。その後、脱溶剤してカルボキシ変性ポリウレタン樹脂を作製する。
【0032】
(3−2)カルボキシ変性ポリウレタン樹脂を分散させてカルボキシ変性ポリウレタン樹脂分散液を作製する工程
水系媒体中に、作製したカルボキシ変性ポリウレタン樹脂を添加して分散機によって分散処理し、カルボキシ変性ポリウレタン樹脂が微粒子状に分散された分散液を作製する。
【0033】
(4)結着樹脂微粒子分散液と、ポリウレタン樹脂微粒子分散液(上記カルボキシ変性ポリウレタン樹脂微粒子分散液)と、着色剤担持樹脂微粒子とを混合し、これらを水系媒体中で塩析、凝集、融着させてトナー粒子を形成する塩析、凝集、融着工程
上記結着樹脂微粒子分散液と、上記カルボキシ変性ポリウレタン樹脂分散液に、着色剤粒子の分散液を添加するとともに、必要に応じて離型剤粒子の分散液を添加する。次いで、凝集剤を添加し、水系媒体中に上記結着樹脂粒子及びカルボキシ変性ポリウレタン樹脂粒子と着色剤粒子、離型剤が添加されている場合にはさらに添加された離型剤粒子を凝集、融着させてトナー粒子を形成する。凝集と融着の一連の工程を会合工程と呼ぶことがある。
凝集・融着の方法としては、塩析融着法が好ましい。塩析融着法は、凝集と融着を並行して進め、所望の粒子径まで凝集粒子が成長したところで凝集の停止剤を添加し、粒子成長を停止させる方法である。この方法では、必要に応じて粒子形状を制御するための加熱が継続して行われる。
【0034】
トナー粒子の大きさとしては、体積基準のメディアン径で3〜10μmが好ましく、特に好ましいのは3〜7nmである。コア粒子の体積基準のメディアン径は、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピュータシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置
を用いて測定、算出する。
測定手順としては、試料0.02gを、界面活性剤溶液20ml(試料の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、試料の分散液を作製する。作製した分散液を、サンプルスタンド内のISOTON II(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定器の表示濃度が5〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定器において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出する。体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メディアン径とする。
【0035】
上記水系媒体とは、主成分(50%質量以上)が水からなるものをいう。水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0036】
なお、凝集・融着工程の後、熟成工程を経ることとしてもよい。
具体的には、凝集・融着工程で加熱温度を低めにして粒子間の融着の進行を抑制し凝集粒子の均一化を図る。その後、熟成工程において加熱温度を低めに、かつ時間を長くしてトナー粒子の表面が均一形状となるよう制御する。
【0037】
(5)冷却・洗浄工程
冷却・洗浄工程では、得られたトナー粒子の分散液を、例えば1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。所定温度まで冷却すると、冷却されたトナー粒子の分散液からトナー粒子を固液分離する。固液分離は遠心分離の他、ヌッチェ等を用いた減圧濾過、フィルタープレス等を用いた濾過等、何れの方法でもよい。次いで、固液分離によって得られたトナーケーキ(ウェット状のトナー粒子をケーキのような円筒形状に整えたもの)を洗浄し、界面活性剤や塩析剤等の付着物を除去する。
【0038】
(6)乾燥工程
乾燥工程では、洗浄されたトナーケーキを乾燥処理する。乾燥処理には、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等を用いることができる。乾燥されたトナー粒子の水分は、5%質量以下であることが好ましく、さらに好ましくは2%質量以下である。
【0039】
(7)外添処理工程
外添処理工程では、乾燥によって得られたトナー粒子に外添剤を混合し、静電荷現像用トナーを得る。
【0040】
[現像剤の作製]
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合等が考えられ、何れも好適に使用することができる。
本発明のトナーにおいては、キャリアと混合する二成分現像剤として使用する場合は、キャリアに対するトナーフィルミング(キャリア汚染)の発生を抑制することができ、一成分現像剤として使用する場合は、現像装置の摩擦帯電部材に対するトナーフィルミングの発生を抑制することができる。
【0041】
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
キャリアとしては、その体積平均粒径としては15〜100μmのものが好ましく、25〜60μmのものがより好ましい。キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0042】
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、或いは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂等を使用することができる。
【0043】
[画像形成方法]
次に、本発明の画像形成方法について、画像形成装置とともに説明する。
図1は、本発明で使用するデジタル画像形成装置の内部構成を示す図である。
デジタル画像形成装置(以下、単位「画像形成装置」と言う)1は、下部に複数の記録材収納部20を有している。記録材収納部20の上方には画像形成部40と中間転写ベルト50が設置されており、装置本体の上部には原稿読取部30が設置されている。
【0044】
記録材収納部20は、装置前面側(図1における紙面手前側)に引き出し可能となっている。
画像形成部40は、Y、M、C、Kの各色毎のトナー像を形成するための4組の画像形成手段400Y、400M、400C、400Kを有している、画像形成手段400Y、400M、400C、400Kは、この順で上から下方向に直線状に配列されており、各々同じ構成となっている。画像形成手段400Yを例にとって構成を説明すると、画像形成手段400Yは反時計方向に回転する感光体410、スコロトロン帯電手段420、露光手段430及び現像手段440を有する。
クリーニング手段450は、感光体410の最下部に対向した領域を含んで配置されている。
【0045】
装置本体の中央部に位置する中間転写ベルト50は、無端状であり、適宜の体積抵抗率を有する。また、中間転写ベルト50は、例えば、編成ポリイミド、熱硬化ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンアロイ等のエンジニアリングプラスチックに導電材料を分散した半導電性フィルム基体の外側に、フッ素コーティングを行った2層から構成されている。また、シリコンゴムあるいはウレタンゴム等に導電材料を分散したものもあり得る。
一次転写電極510は、中間転写ベルト50を挟んで感光体410と対向する位置に設置されている。
【0046】
次に、カラー画像を形成するプロセスについて説明する。
感光体410がメインモータ(図示せず)により駆動され、感光体410の表面が電源(図示せず)により電圧供給され、スコロトロン帯電手段420の放電により正極性に帯電される(本実施例では+800V)。次に、露光手段430により画像情報に応じた光書込がなされ、感光体410上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像が現像手段440を通過すると、現像手段内で正極性に帯電されたトナーが正極性現像バイアスの印加により潜像画像の部分に付着し、感光体410上にトナー像が形成される。形成されたトナー像は感光体410と圧着する中間転写ベルト50に転写される。転写後に残留した感光体410上のトナーはクリーニング手段450により清掃される。画像形成手段400Y、400M、400C及び400K各々で形成されたトナー像が中間転写ベルト50に重複して転写されることにより、中間転写ベルト50上にカラー画像が形成される。記録材Pは記録材収納部20により1枚ずつ排出され、レジストローラ60の位置まで搬送される。レジストローラ60により記録材Pの先端が整列された後、中間転写ベルト50上のトナー像と画像位置が一致するタイミングで記録材Pがレジストローラ60より給送される。レジストローラ60により給送された記録材Pは、ガイド板より案内され、中間転写ベルト50と転写部70により形成された転写ニップ部へ送り込まれる。ローラにより構成される転写部70は記録材Pを中間転写ベルト50側へ押圧している。トナーと逆極性のバイアス(−500V)が転写部70に印可されることにより、静電気力の作用で、中間転写ベルト50上のトナー像が記録材Pへ転写させる。記録材Pは、除電針からなる分離手段(図示せず)により除電されて中間転写ベルト50から分離され、発熱ベルト11を介した弾性体ロール21、加圧ロール16の対からなる定着装置100へ送られる。その結果、トナー像が記録材Pへ定着され、画像形成された記録材Pが装置外へ排出される。
【0047】
図2は、定着装置の概略図であり、図3は、図2の切断線X−Xで切断した際の矢視断面図である。
定着装置100は、加圧ロール16と発熱ベルト11を介して内部に配置されている弾性体ロール21により形成されたニップ部Nに未定着トナー像Tが形成された記録材Pが挿入され、トナー像を定着している。
なお、図2中、矢印Aは記録材Pの搬送方向を示し、矢印Bは加圧ロール16の回転方向を示している。
【0048】
図4は、発熱ベルトの構成を説明するための断面図である。
発熱ベルト11の構成は図4に示すように4層構成になっており、弾性体ロール21に接触する側から、補強層111、発熱層112、弾性層113、離型層114となっている。補強層111は、発熱層2の形状制御、保持の目的で必要であり、例えば、ポリイミド樹脂が使われ、20〜80μmであることが好ましい。発熱層2は、例えば、ポリイミド樹脂中に導電性フィラーを均一に分散させている。導電性フィラーは、カーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子が入っていることが好ましい。この理由は、発熱ベルトの発熱特性をコントロール、例えば電気抵抗に低い発熱ベルトを得るためには、カーボンナノ材料を多量に添加する必要がある。しかし、カーボンナノ材料を多量に添加すると、ベルトの機械的強度が著しく低下するため、導電性の高いフィラメント状金属微粒子が必要となる。弾性層113は、発熱層112の外側に形成され、補強層111と同様に主にポリイミド樹脂が使われる。弾性層113は発熱層112からの熱伝導効率を上げるために、5〜50μm程度が望ましい。離型層114は、トナーの発熱ベルトからの離型性を上げるため、主にフッ素樹脂が使われ、代表的なものとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン(FEP)が挙げられ、5〜30μm程度が好ましい。
また、受電部115は、後述の電極又は導電体17に接続されている。
【0049】
発熱ベルト11の内部にある弾性体ロール21の弾性層12は、ゴム材料として、画像定着温度に必要な150℃〜250℃で耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではない。この場合最も好ましいのは、シリコンゴムである。弾性体ロール21の製造は、芯金14にアルミニウムあるいは鉄製の材料を使い、ブラスト処理等の表面処理を行った後に、弾性層12としてシリコンゴム等を3〜10mm程度の厚みで成型したものを用いて行われる。
弾性層12は、耐熱性以外には、熱伝導率と硬度を調整する必要がある。この場合は、シリコンゴムをソリッドゴムからスポンジゴムにすることで、断熱効果を上げ、発熱ベルト11の発熱効果を高めることができる。また、硬度については、画像形成装置1のプロセススピードにもよるが、5度以上60度未満、より好ましくは、30度以上50度未満の範囲であれば、発熱ベルト11と加圧ロール16間のニップ面積を広く設計でき、画像定着性に有利に働く。
【0050】
加圧ロール16は、弾性体ロール21と同様に画像定着温度150℃〜250℃で耐熱性を有するものであれば、特に限定されることはない。弾性体ロール21と同様に、弾性層としてシリコンゴムを使用し、芯金15にアルミニウムあるいは鉄製の材料を使い、ブラスト処理等の表面処理を行った後に、弾性層としてシリコンゴム等を3〜10mm程度で成型したものを用いて行われる。
【0051】
なお、図2中、符号17は、発熱ベルト11の発熱層112に給電するための電極又は導電体であり、電極又は導電体17は、発熱ベルト11の両端(受電部115)に設けられ、電極又は導電体17にはそれぞれ給電のためのコロ13が形成されている。コロ13は、交流又は直流の電源22に接続されている。なお、コロ13の代わりにブラシを使用しても構わない。
【0052】
以上のような定着装置100を有する画像形成装置1及び上述のトナーを使用して画像を形成する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)着色剤及び着色媒体樹脂を含有する着色剤担持樹脂粒子を得る着色剤担持樹脂粒子形成工程
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に攪拌、溶解させ、ここへ25質量部のC.I.ピグメントブルー15:3を徐々に添加した。この溶液を、クリアミックスWモーションCLM-0.8(エムテクニック社製)を用いて分散処理し
、着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800(大塚電子社製)」を用いて測定したところ、158nmであった。
【0054】
(2)マトリクスを形成する結着樹脂を分散させて結着樹脂微粒子分散液を作製する工程〈スチレンアクリル樹脂〉
以下に離型剤を含有するスチレンアクリル樹脂微粒子A1の調製方法を示す。
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部とイオン交換水3000質量部を添加し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら内温を80℃に昇温した。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を添加して、液温を80℃に調整した。
次に、下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体混合液を反応容器に1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌して重合を行い、樹脂微粒子を調製した。これを「樹脂微粒子(1H)」とする。
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 16質量部
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた溶液を添加した。反応容器を、98℃に加熱後、前記「樹脂微粒子(1H)」を260質量部と、下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体混合液をそのまま添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEAMIX(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散させて乳化粒子(油滴)を含有する分散液を調製した。
スチレン 245質量部
n−ブチルアクリレート 120質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.5質量部
ポリエチレンワックス(融点81℃) 190質量部
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を添加し、82℃の温度下で1時間加熱撹拌して重合を行い、樹脂微粒子を得た。これを「樹脂微粒子(1HM)」とする。
更に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を添加し、82℃の温度下で下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体溶液を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し樹脂微粒子を得た。これを「スチレンアクリル樹脂微粒子A1」とする。
スチレン 435質量部
n−ブチルアクリレート 130質量部
メタクリル酸 33質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
【0055】
〈ポリエステル樹脂〉
以下にポリエステル樹脂微粒子B1の調製方法を示す。
(多価カルボン酸単量体)
テレフタル酸 7.8質量部
フマル酸 17.3重量部
アジピン酸 7.2重量部
(多価アルコール単量体)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンプロピレンオキサイド2モル付加物 76質量部
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンエチレンオキサイド2モル付加物 24質量部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに、上記多価カルボン酸単量体及び多価アルコール成分を合計3質量部仕込み、1時間を要して190℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、触媒Ti(OBu)4(多価カルボン酸単量体全量に対し、0.003質量%)を投入した。
更に、生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに6時間脱水縮合反応を継続し重合を行い、ポリエステル樹脂微粒子B1を得た。得られたポリエステル樹脂微粒子B1の分子量をGPCにて測定したところ、重量平均分子量20000、数平均分子量2800(東ソー社製 HLC−8 120GPC、スチレン標準物質で換算)であった。
上記で得られた「ポリエステル樹脂微粒子B1」100重量部を溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100質量部の速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で160℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記溶融状態のポリエステル樹脂微粒子B1と同時にキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に移送した。キャビトロンCD1010を回転子の回転速度が60Hz,圧力が5kg/cm2の条件で運転し、体積基準のメディアン径が297nm、固形分量が30質量部のポリエステル樹脂微粒子B1が分散されたポリエステル樹脂微粒子分散液C1を得た。
【0056】
(3)ドメイン部を形成するポリウレタン樹脂微粒子を分散させてポリウレタン樹脂微粒子分散液を作製する工程
〈ポリウレタン樹脂微粒子D1及びポリウレタン樹脂微粒子分散液E1〉
イソフォロンジイソシアネート1000部と1,4−アジペート(1,4−ブタンジオールとアジピン酸とからなるポリエステルジオール)830質量部をメチルエチルケトン中、80℃で6時間ウレタン化反応させた。
その後、未反応イソシアネート基をカルボン酸に変性するためにコハク酸10部を加えて80℃で1時間反応させた。
次に、強力に撹拌しながらイオン交換水を2128部加え、その後反応系を減圧にして脱溶剤し、ポリウレタン樹脂1270部を得た。これをポリウレタン樹脂微粒子D1とする。
上記ポリウレタン樹脂微粒子D1 400質量部をドデシルエーテル硫酸ナトリウム20質量部、イオン交換水1580質量部と共に循環経路を有する機械式分散機「CLEAMIX(エム・テクニック(株)製)」を用いて30分混合分散させて十分に撹拌、分散し、ポリウレタン樹脂の水分散液を調製した。「マイクロトラック粒度分析計UPA150」(日機装(株))で体積基準のメディアン径を測定したところ、450nmだった。これをポリウレタン樹脂微粒子分散液E1とする。
【0057】
〈ポリウレタン樹脂微粒子D2及びポリウレタン樹脂微粒子分散液E2〉
ヘキサメチレンジイソシアネート1000部とポリエチレングリコール830質量部をメチルエチルケトン中、80℃で6時間ウレタン化反応させた。
その後、未反応イソシアネート基をカルボン酸に変性するためにジメチロール酢酸を20部加えて80℃で1時間反応させた。
次に、強力に撹拌しながらイオン交換水を2128部加え、その後反応系を減圧にして脱溶剤し、ポリウレタン樹脂1270部を得た。これをポリウレタン樹脂微粒子D2とする。
上記ポリウレタン樹脂微粒子D2 400質量部をドデシルエーテル硫酸ナトリウム20質量部、イオン交換水1580質量部と共に循環経路を有する機械式分散機「CLEAMIX(エム・テクニック(株)製)」を用いて30分混合分散させて十分に撹拌、分散し、ポリウレタン樹脂の水分散液を調製した。「マイクロトラック粒度分析計UPA150」(日機装(株))で体積基準のメディアン径を測定したところ、450nmだった。これをポリウレタン樹脂微粒子分散液E2とする。
【0058】
〈ポリウレタン樹脂微粒子D3及びポリウレタン樹脂微粒子分散液E3〉
上記ポリウレタン樹脂D2を得る過程において、カルボキシ変性を行わなかったものをポリウレタン樹脂微粒子D3とする。
上記ポリウレタン樹脂微粒子D3 400質量部をドデシルエーテル硫酸ナトリウム20質量部、イオン交換水1580質量部と共に循環経路を有する機械式分散機「CLEAMIX(エム・テクニック(株)製)」を用いて30分混合分散させて十分に撹拌、分散し、ポリウレタン樹脂の水分散液を調製した。「マイクロトラック粒度分析計UPA150」(日機装(株))で体積基準のメディアン径を測定したところ、450nmだった。これをポリウレタン樹脂微粒子分散液E3とする。
【0059】
上述のマトリクスを形成するスチレンアクリル樹脂A1、ポリエステル樹脂B1及びドメイン部を形成するポリウレタン樹脂D1〜D3について下記表1にまとめた。
【表1】

【0060】
(ワックス分散液1の作製)
パラフィンワックス(HNP−9、日本精鑞株式会社製) 400質量部
ネオゲンSC(第一工業製薬) 20質量部
イオン交換水 1600質量部
上記成分を120℃に加熱し、圧力吐出型ホモジナイザーにて、50MPaの圧力ものと分散を行い、ワックス分散液1を調整した。ワックス分散液1の固形分は20%であった。またHNP−9の140℃での溶融粘度は4.8mPa・sであった。
【0061】
(4)結着樹脂微粒子分散液と、ポリウレタン樹脂微粒子分散液と、着色剤担持樹脂微粒子とを混合し、これらを水系媒体中で塩析、凝集、融着させてトナー粒子を形成する塩析、凝集、融着工程
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、下記物質を添加し、液温を30℃に調整した。
スチレンアクリル樹脂微粒子A1の分散液 300質量部(固形分換算)
ポリウレタン樹脂微粒子D1の分散液E1 9質量部(固形分換算)
イオン交換水 1400質量部
着色剤分散液1 120質量部
ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水120質量部に添加した水溶液 123部
次に、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整し、塩化マグネシウム35質量部をイオン交換水35質量部に溶解させた30℃の水溶液を、撹拌状態にある反応系中に10分間かけて添加した。そして、添加後3分経過してから昇温を開始し、反応系を60分間かけて90℃まで昇温し、凝集を進行させた。凝集により形成される粒子の大きさは「マルチサイザー3」で観察した。体積基準におけるメディアン径(D50)が6.5μmになった時、20%塩化ナトリウム水溶液750質量部を添加して凝集を停止させた。
20%塩化ナトリウム水溶液添加後、液温を98℃にして撹拌を継続し、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2100」で粒子の平均円形度を観察しながら、凝集した樹脂微粒子の融着を進行させた。平均円形度が0.965になった時、液温を30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを4.0に調整し、撹拌を停止した。
【0062】
(5)洗浄工程、(6)乾燥工程
凝集・融着工程にて生成した粒子をバスケット型遠心分離機「MARKIII型式番号6
0×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して粒子を作製した。
【0063】
(7)外添工程
上記で得られた粒子に、疎水性シリカ(数平均1次粒子径=12nm)を1質量%、疎水性チタニア(数平均1次粒子径=20nm)を0.3質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー1」を作製した。
トナー1の体積基準におけるメディアン径(D50)は、6.5μm、平均円形度は0.965であった。尚、体積基準におけるメディアン径(D50)、平均円形度は前記の方法で測定して得られた値である。
【0064】
上記凝集、融着工程において、マトリクス部を形成する樹脂、ドメイン部を形成する樹脂及び質量部数を表2に示したように変更し、トナー3、トナー5、トナー9に関しては
ワックス分散液1を190質量部加えた以外は同様にして、トナー2〜トナー9を作成した。
【0065】
【表2】

なお、表2中にトナー1〜9のドメイン部のフェレ径も示している。
【0066】
このトナー1〜9各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメディアン径60μmのフェライトキャリアを、前記現像剤用トナーの濃度が6質量%になるよう混合し、現像剤1〜9を作製した。
【0067】
上記定着装置と表2に記載のトナー1〜9を用いて以下に示す評価を実施した。
(1)定着装置は基本的に上述の図2〜図3に示す構成のものを使用した。
・発熱ベルト
補強層:ポリイミド樹脂(ポリイミドワニスPyre-ML RC5063 I.S.T社製)、膜厚70μm
発熱層:ポリイミド樹脂にカーボンナノファイバーとフィラメント状ニッケル微粒子添加、膜厚35μm
弾性層:ポリイミド樹脂、膜厚15μm
離型層:PFA樹脂(ポリイミドワニスPyre-ML RC5064 I.S.T社製)、膜厚15μm
(2)システムスピード(感光体410、中間転写ベルト50、発熱ベルト11の周速)を300 [mm/秒]に設定した。
【0068】
<ニップ部温度の測定>
発熱ベルトの温度を150℃及び180℃に設定し、定着初期のニップ部温度と発熱ベルト温度との温度差及び普通紙(坪量80g)連続100枚通紙後、ニップ部温度が何度まで低下するかを確認した(下記表3参照)。
【0069】
【表3】

【0070】
<ホットオフセット>
発熱ベルトの温度を150℃に設定し、紙上に転写したトナーを連続100枚通紙、定着させる。定着画像の1枚目及び100枚目において、ホットオフセット発生の有無を目視で評価した。トナーとしては、トナー1〜9を用いた。
【0071】
<コールドオフセット>
発熱ベルトの温度を150℃に設定し、紙上に転写したトナーを連続100枚通紙、定着させる。定着画像の1枚目及び100枚目において、コールドオフセット発生の有無を目視で評価した。トナーとしては、トナー1〜9を用いた。
【0072】
<折り目定着強度>
折り目定着強度は、発熱ベルトの温度を5℃刻みで変更して紙上に転写したトナーを通紙、定着させ、トナーの定着画像を内面に向けて折り曲げた時、折り曲げ部分におけるトナー剥がれの程度を定着率として評価した。定着画像の1枚目及び100枚目においてそれぞれ評価した。トナーとしては、トナー1〜9を用いた。
測定方法は、べた画像部(画像濃度が0.8)を画像面を内側にして折り、3回指で擦った後、画像を開いて「JKワイパー(株式会社クレシア製)」で3回ふき取り、べた画像の折り目個所の折り曲げ前後の画像濃度から下記式により算出した値である。
定着率(%)=(折り曲げ後画像濃度)/(折り曲げ前画像濃度)×10
得られた定着率から、下記の様に折り目定着強度を評価し、○以上となる温度を示した。評価結果を下記表4に示した。
評価基準
◎:各温度で折り目の定着率が90〜100%となった
○:各温度で折り目の定着率が80〜90%未満となった
×:折り目の定着率が80%未満となるものがあった
【0073】
【表4】

【0074】
上記表4の結果より、比較例1においては、100枚通紙時に、コールドオフセットが発生している。比較例2、3においては、100枚通紙時に、ホットオフセットが発生しているが、本発明の定着装置とトナーとを組み合わせた画像形成方法である実施例1〜5においては、コールドオフセット及びホットオフセットが抑制されていることがわかる。また、折り目定着強度においても、比較例1〜3においては悪化しているが、本発明である実施例1〜6では折り目定着強度が良好であることがわかる。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成装置
11 発熱ベルト
12 弾性層
13 コロ
15 芯金
16 加圧ロール
17 電極又は導電体
20 記録材収納部
21 弾性体ロール
22 電源(給電装置)
30 原稿読取部
40 画像形成部
50 中間転写ベルト
60 レジストローラ
70 転写部
100 定着装置
111 補強層
112 発熱層(抵抗発熱体層)
113 弾性層
114 離型層
115 受電部
400Y、400M、400C、400K 画像形成手段
410 感光体
420 スコロトロン帯電手段
430 露光手段
440 現像手段
450 クリーニング手段
P 記録材
N ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも抵抗発熱体層を有する発熱ベルトと、
前記発熱ベルトの内側に配置される弾性体ロールと、
弾性層を有し、前記発熱ベルトの外側から前記発熱ベルトを介して前記弾性体ロールに押し付けられる加圧ロールと、
前記抵抗発熱体層に給電するための給電装置と、を備え、
前記発熱ベルトと前記加圧ロールとの間でニップ部を形成し、
記録材を前記ニップ部に通過させて、前記記録材上のトナーを定着させる定着装置を使用し、
前記トナーの結着樹脂がドメイン・マトリクス型の分散構造を有し、
前記ドメイン部は少なくとも、ポリマージオールセグメントとジイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂からなり、トナー樹脂中のドメイン部を形成するポリウレタン樹脂の割合が1.0質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂が分子鎖にイソシアネート基を有し、多価カルボン酸あるいはヒドロキシカルボン酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と反応させたカルボキシ変性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−133136(P2012−133136A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285304(P2010−285304)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】