説明

画像形成装置、その制御方法及びプログラム

【課題】電源が入ってから所定の時間内にデバイス制御ドメインへ時刻を通知する。
【解決手段】画像処理ドメインのファーム転送と共にRTCから読み出した時刻を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、その制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置におけるプリンタエンジンは起動時にプリントに必要な各機能を調整する機能を有している。プリンタエンジンは画像形成装置の電源が切れている時間によって、起動時の調整動作の振る舞いを変え、必要な調整動作、起動時間の短縮、を実現している。
【0003】
また画像形成装置全体のコストダウンのため、電源が切れていても時間を測定できるタイマハード資源(以下、RTC)は削減される傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−366413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリンタエンジンはコスト削減のため、RTCを有していない。またプリンタエンジンと接続されている画像処理ドメインも同一の理由でRTCを有していないことがある。画像形成装置のメインボードであるジョブをコントロールするコントロールドメインに画像形成装置唯一のRTCを有している。起動時にコントロールドメインから、画像処理ドメイン、プリンタエンジンと時刻を通知する必要がある。コントロールドメインと画像処理ドメインの間は、ソフトウェアによって実現されるCPU間通信を用いて通信する。しかしその通信は画像形成装置が起動してから所定の初期化作業を行うまで実行することが出来ない。画像形成装置には高速起動が要求され、CPU間通信の初期化作業を待っていては、プリンタエンジンの調整作業が高速起動で要求される時間内に完了することが出来ない。そこで本発明では、プリンタエンジンが起動時に調整作業を行うための時間を、コントロールドメインから高速に転送する方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ジョブをコントロールするコントロールドメイン(200)と、
画像処理を行う画像処理ドメイン(220)と、
プリンタエンジンを制御するデバイス制御ドメイン(240)から構成される画像形成装置において、
前記コントロールドメイン(200)は時刻を制御するRTC(211)を有し、
前記RTC(211)から時刻を取得する時刻取得手段と、
前記時刻取得手段で得られた時刻を、前記画像処理ドメイン(220)のファームと共に転送する転送手段(405)と、
前記転送手段によって転送された時刻を、前記デバイス制御ドメイン(240)へ送る、送信手段(504)と、
前記送信手段によって送信された時刻を元に、調整動作を行う調整機能と、
を有することを特徴とする、画像形成装置(1)。
【発明の効果】
【0007】
従来、電源が切られている時間によって、調整動作を変えるためには、プリンタエンジンを制御するデバイス制御ドメイン又は、画像処理ドメインにもRTCが必要であった。本技術を用いることによって、RTCは画像形成装置内で一つのみ有していれば良くコストダウンを実現できる。
【0008】
また本発明は、画像処理ドメインのファーム転送の際に、RTCの時刻をバイナリファイルに付加して転送を行う。先行技術はファイル破壊を検出するための転送コードを付加しているが、付加する情報、その目的が異なる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置のブロック図である。
【図2】画像形成装置の構成を示す図である。
【図3】画像形成装置の起動シーケンスを表す図である。
【図4】コントロールドメインのフローチャート図である。
【図5】画像処理ドメインのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、この実施の形態に記載している構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0011】

本発明に係る情報処理装置の一実施形態としての画像形成装置について説明する。
【0012】
図1は本システムのブロックである。
【0013】
画像形成装置1以下から構成される。
【0014】
原稿から光学的に画像を読み取りデジタル画像に変換するスキャナ装置2。デジタル画像を紙デバイスに出力するプリンタ装置4。本装置の操作を行うための操作部5。デジタル画像や制御プログラム等を記憶するハードでディスク6。電話回線等にデジタル画像を送信するFAX装置7と。コントローラ、スキャナ装置、プリンタ装置へ電力を給電する電源装置8。これらと接続され各モジュールに指示を出す事で画像形成装置上でジョブを実行することが可能なコントローラ。
【0015】
画像形成装置1はLAN9経由でコンピュータ9からデジタル画像の入出力、ジョブの発行や機器の指示等も行うことが可能である。
【0016】
スキャナ装置2は自動的に原稿束を自動的に逐次入れ替えることが可能な原稿給紙ユニット21、原稿を光学スキャンしデジタル画像に変換する事が可能なスキャナユニット22から成り、変換された画像データはコントローラ3に送信される。
【0017】
プリンタ装置4は紙束から一枚づつ逐次給紙可能な給紙ユニット、給紙した紙に画像データを印刷するためのマーキングユニット41、印刷後の紙を排紙するための排紙ユニット43から成る。
【0018】
画像形成装置1は多彩なジョブを実行可能である。一例を以下に記載する。
・複写機能
スキャナ装置2から読み込んだ画像をハードディスク装置6に記録し、同時にプリンタ装置4を使用して印刷を行う。
・画像送信機能
スキャナ装置2から読み込んだ画像をLAN8を介してコンピュータ9に送信する。
・画像保存機能
スキャナ装置2から読み込んだ画像をハードディスク装置6に記録し、必要に応じて画像送信や画像印刷を行う
・画像印刷機能
コンピュータ9から送信された例えばページ記述言語を解析し、プリンタ装置4で印刷する。
【0019】
図2は、画像形成装置のブロック図である。本図を用いて本発明を具体的に適用するモジュールであるコントローラ2について述べる。
【0020】
プリンタ装置4内のデバイス制御ドメイン240はプリンタエンジンを制御するCPU241、CPU241がワークメモリとして使用するメモリ242。コントローラ部との通信を行うデバイスコントローラ部244と、電源断された場合でも消えない不揮発性メモリ245等から構成される。
【0021】
コントローラ2はコントロールドメイン200と、画像処理ドメイン220から構成される。
【0022】
コントロールドメイン200はいわゆる汎用的なCPUシステムである。ボード全体を制御するCPU201、ブートプログラムが含まれるブートロム202、CPU201がワークメモリとして使用するメモリ203、外部バスとのブリッジ機能を持つバスコントローラ204、不揮発性メモリ205。
さらに、ストレージ装置を制御するディスクコントローラ206と、半導体デバイスで構成された比較的小容量なストレージ装置であるフラッシュディスク(SSD等)207。USBを制御することが可能なUSBコントローラ208、電源断された場合でも時刻を刻みつづけることが出来るRTC211等から構成される。
【0023】
コントロールドメイン200には外部に、USBメモリ209、操作部5、ハードディスク装置6等が接続される。
【0024】
画像処理ドメイン220は比較的小さな汎用CPUシステムと、画像処理ハードウェアから構成される。ボード全体を制御するCPU221、CPU221がワークメモリとして使用するメモリ223、外部バスとのブリッジ機能を持つバスコントローラ224、電源断された場合でも消えない不揮発性メモリ225。
【0025】
さらに、リアルタイムデジタル画像処理を行う画像処理プロセッサ227とデバイスコントローラ226、時刻を刻むことが出来る揮発性のタイマ229を有する。
【0026】
外部スキャナ装置2と外部プリンタ装置はデバイスコントローラ226を介してデジタル画像データの受け渡しを行う。FAX装置7はCPU221が直接制御を行う。
【0027】
デバイス制御ドメイン240、コントロールドメイン200と画像処理ドメイン220の電源は電源装置8から給電される。
【0028】
電源コントローラ2433、210、228は、それぞれデバイス制御ドメイン240、コントロールドメイン200、画像処理ドメイン220上の電力が必要な各部へ電力の給電を行う。
【0029】
なお、本図はブロック図であり簡略化している。例えばCPU201、CPU221等にはチップセット、バスブリッジ、クロックジェネレータ等のCPU周辺ハードウェアが多数含まれているが、説明の粒度的に不必要であるため簡略化記載しており、このブロック構成が本発明を制限するものではない。
【0030】
コントローラ2の動作について、紙デバイスによる画像複写を例に説明する。
【0031】
ユーザが操作部5から画像複写を支持すると、CPU201がCPU221を介してスキャナ装置2に画像読み取り命令を送る。スキャナ装置2は紙原稿を光学スキャンしデジタル画像データに変換してデバイスコントローラ226を介して画像処理プロセッサ227に入力する。画像処理プロセッサはCPU221を介してメモリ223にDMA転送を行いデジタル画像データの一時保存を行う。
【0032】
CPU201はデジタル画像データがメモリ223に一定量もしくは全て入ったことが確認できると、CPU221を介してプリンタ装置4に画像出力指示を出す。CPU221は画像処理プロセッサ227にメモリ223の画像データの位置を教える。プリンタ装置4からの同期信号に従ってメモリ223上の画像データは画像処理プロセッサとデバイスコントローラ226を介してデバイス制御ドメイン240に送信され、デバイス制御ドメイン240にて紙デバイスにデジタル画像データが印刷される。
【0033】
複数部印刷を行う場合、CPU201がメモリ223の画像データをハードディスク6に対して保存を行い、2部目以降はスキャナ装置2から画像をもらわずともデバイス制御ドメイン240に画像を送ることが可能である。
【0034】
図3は、画像形成装置の起動シーケンスを示す図である。
【0035】
301で電源がOnされ、コントロールドメイン200上のソフトウェアの初期化を開始する。
【0036】
302で画像処理ドメイン220のバイナリイメージの転送を開始する。画像処理ドメイン220のバイナリイメージはMemory223へ書き込まれる。バイナリイメージの書き込みが終了するとCPU221のリセットを解除し、Memory223へ書き込まれたソフトウェアが動作を開始する。303でデバイスコントローラ226を介して、プリンタエンジンの通信を行い初期化を開始する。この時点で調整動作のための時刻が必要である。304でコントロールドメイン200上のソフトウェアと画像処理ドメイン220上のソフトウェア同士の通信が可能となる。304が303に対してかなり遅く、時刻を304のタイミングで転送しているとシステムの起動時間要件を満たすことが出来ない。そこで本発明では302の画像処理ドメイン220のバイナリイメージの転送に時刻を付加して転送を行う。これにより303でデバイス制御ドメイン240に時刻を通知することが出来る。
【0037】
図4は、本実施形態におけるコントロールドメイン200上で動作するソフトゥエアの動作を示したフローチャート図である。なお本フローに関わるソフトウェアは、コントロールドメイン200のBootRom202又は、FlashDisk207、HDD5に記憶されており、Memory203に読み出されCPU201で実行される。
【0038】
ステップ401で、CPU201が、BootRom202又は、FlashDisk207、HDD5から画像処理ドメイン220上で動作するソフトウェアのバイナリイメージをMemory203に読み出す。
【0039】
ステップ402で、CPU201が、RTC211からMemory203に現在時刻を読み出す。
【0040】
ステップ403で、CPU201が、ステップ402でRTC211からMemory203に正しく時刻を読み出せたかを判断する。正しく読みだせた場合はステップ405へ進む。正しく読み出せなかった場合はステップ404へ進む。
【0041】
ステップ404で、CPU201が、Memory203に記憶されている現在時刻を、時刻取得が出来なかった情報へ更新する。
【0042】
ステップ405で、CPU201が、ステップ401でMemory203に読み出されたバイナリイメージをサブボード220上のMemory223へ書き込む。またMemory203に記憶されている現在時刻を、サブボード220上のMemory223へ書き込む。
【0043】
図5は、本実施形態におけるサブボード220上で動作するソフトゥエアの動作を示したフローチャート図である。なお本フローに関わるソフトウェアは、画像処理ドメイン220のMemory223をCPU221が読み出して実行される。
【0044】
ステップ501では、コントロールドメイン200のCPU201が、バスコントローラ204を介してCPU221のリセットを解除する。
【0045】
ステップ502では、CPU221がMemory223に記憶されている現在時刻を読み出す。
【0046】
ステップ503では、CPU221がステップ502で読み出した現在時刻を自身のタイマ229へ設定する。時刻を設定して以後、電源が切られるまでの間はRTC211から時刻を取得することなくCPU221がタイマ229から現在時刻を取得することが出来る。画像処理ドメイン220側で現在時刻が必要になった際にCPU間通信を行わず時刻を取得することが出来、時刻取得に関するパフォーマンスを向上することが出来る。
【0047】
ステップ504では、CPU221がタイマ229から時刻を取得し、デバイスコントローラ226を介して、所定の手順で時刻をデバイス制御ドメイン240に通知する。
【実施例2】
【0048】
実施例1において、CPU221がステップ503で自身のタイマ229に時刻を設定したがこのステップは無くても良い。
【0049】
ステップ504では、CPU221がMemory223から時刻を取得し、デバイスコントローラ226を介して、所定の手順で時刻をデバイス制御ドメイン240に通知する。
【符号の説明】
【0050】
200 コントロールドメイン
220 画像処理ドメイン
240 デバイス制御ドメイン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジョブをコントロールするコントロールドメイン(200)と、
画像処理を行う画像処理ドメイン(220)と、
プリンタエンジンを制御するデバイス制御ドメイン(240)から構成される画像形成装置において、
前記コントロールドメイン(200)は時刻を制御するRTC(211)を有し、
前記RTC(211)から時刻を取得する時刻取得手段と、
前記時刻取得手段で得られた時刻を、前記画像処理ドメイン(220)のファームと共に転送する転送手段(405)と、
前記転送手段によって転送された時刻を、前記デバイス制御ドメイン(240)へ送る、送信手段(504)と、
前記送信手段によって送信された時刻を元に、調整動作を行う調整機能と、
を有することを特徴とする、画像形成装置(1)。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−91460(P2012−91460A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242516(P2010−242516)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】